JP3904514B2 - 合成繊維用処理剤及び合成繊維の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は合成繊維用処理剤(以下、単に処理剤という)及び合成繊維の処理方法(以下、単に処理方法という)に関し、更に詳しくは高速走行下においても合成繊維からの飛散乃至脱落を抑え、よって高品質の合成繊維糸条を得ることができる処理剤及び処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成繊維からの飛散乃至脱落を抑えた処理剤として、炭素数6〜14のアルキル基を有する有機リン酸エステルアニオンと炭素数6〜14のアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオンとの塩、脂肪酸エステル及び界面活性剤を含有するもの(例えば特許文献1参照)、パーフルオロアルキルアミンオキサイドを含有するもの(例えば特許文献2参照)、(ポリ)オキシエチレンイソオクチルエーテルを含有するもの(例えば特許文献3参照)、分子量10万〜600万の高分子ポリエチレングリコールを含有するもの(例えば特許文献4参照)等が知られている。ところが、これら従来の処理剤には、走行下における、とりわけ高速走行下における合成繊維からの飛散乃至脱落を充分に抑えることができず、結果として高品質の合成繊維糸条を得るのが難しいという問題がある。一般に処理剤はその水性液の形態で合成繊維に付着させるが、主に処理剤を合成繊維に均一付着させる観点から、通常は処理剤を15重量%前後の比較的低濃度の水性液として合成繊維に付着させている。しかし、従来の処理剤では、かかる比較的低濃度の水性液を合成繊維に付着させると、走行下において、とりわけ高速走行下において、付着させた処理剤が比較的早い時期に合成繊維から飛散乃至脱落し易く、そのために合成繊維表面を処理剤で均一被覆することができなくなり、結果として毛羽、糸切れ、染色斑等を発生し、糸品質が低下するのである。合成繊維からのこれに付着させた処理剤の飛散乃至脱落を抑えるため、処理剤を30重量%前後の比較的高濃度の水性液とし、かかる比較的高濃度の水性液を合成繊維に付着させることも試みられているが、このようにすると、従来の処理剤では、処理剤を合成繊維に均一付着させるのが難しくなるだけでなく、そもそもかかる比較的高濃度の水性液を調製しても、該水性液が経時的に不安定であるため、実用性に欠け、いずれにしても結果として高品質の合成繊維糸条を得ることができない。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−258969号公報
【特許文献2】
特開平2−47361号公報
【特許文献3】
特開平3−97961号公報
【特許文献4】
特開平2−68370号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、高速走行下においても、合成繊維からの飛散乃至脱落を充分に抑え、よって高品質の合成繊維糸条を得ることができる処理剤及び処理方法を提供する処にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者らは、上記の課題を解決するべく研究した結果、処理剤として特定のヒドロキシ化合物と潤滑剤と静電気防止剤とをそれぞれ所定割合で含有して成るものを用いることが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記の式1で示されるヒドロキシ化合物を3〜30重量%、潤滑剤を40〜96重量%及び静電気防止剤を0.1〜10重量%含有しており、且つこれらを合計で70重量%以上含有して成ることを特徴とする処理剤に係る。
【0007】
【式1】
R−O−X−OH
【0008】
式1において、
R:炭素数9の非環式分岐状飽和炭化水素基
X:オキシエチレン単位及び又はオキシプロピレン単位の合計繰り返し数1〜9の(ポリ)アルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【0009】
また本発明は、本発明の処理剤を20〜40重量%の水性液となし、この水性液を合成繊維に対し本発明の処理剤として0.1〜3重量%となるよう付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法に係る。
【0010】
本発明の処理剤は式1で示されるヒドロキシ化合物と潤滑剤と静電気防止剤とを含有して成るものである。
【0011】
本発明の処理剤に用いる式1で示されるヒドロキシ化合物には、1)(ポリ)オキシエチレンモノアルキルエーテル、2)(ポリ)オキシプロピレンモノアルキルエーテル、3)(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレンモノアルキルエーテルが包含される。これらのヒドロキシ化合物は単独で用いることもできるし、また二つ以上を混合して用いることもできる。
【0012】
式1中のRは炭素数9の非環式分岐状飽和炭化水素基である。かかる非環式分岐状飽和炭化水素基としては、3,5,5−トリメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルヘキシル基、2−エチル−5−メチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルヘプチル基、2−プロピルヘキシル基、2−ブチルペンチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプタチル基等が挙げられるが、なかでも3,5,5−トリメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基が好ましい。
【0013】
式1中のXはオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位の合計繰り返し数が1〜9の(ポリ)アルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である。かかる残基としては、1)オキシエチレン単位の繰り返し数が1〜9の(ポリ)エチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基、2)オキシプロピレン単位の繰り返し数が1〜9の(ポリ)プロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基、3)オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位との合計繰り返し数が2〜9のポリオキシアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が挙げられるが、なかでもオキシエチレン単位の繰り返し数が1〜7の(ポリ)エチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が好ましく、オキシエチレン単位の繰り返し数が3〜6のポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基がより好ましい。ポリアルキレングリコールを構成するオキシアルキレン単位がオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とから成る場合、これらの結合様式はランダム結合でも、又はブロック結合でもよい。
【0014】
式1で示されるヒドロキシ化合物は公知の方法で合成できる。これには例えば、式1中のRを形成することとなる炭素数9の非環式分岐状脂肪族アルコールに、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基性触媒存在下、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加反応させる方法が挙げられる。
【0015】
本発明の処理剤に用いる潤滑剤としては、1)ポリエーテル(ポリ)オール、2)脂肪族エステル、3)(ポリ)エーテルポリエステル、4)鉱物油、5)ポリオレフィンワックス等が挙げられる。これらの潤滑剤は単独で用いることもできるし、また二つ以上を混合して用いることもできる。
【0016】
潤滑剤として用いるポリエーテル(ポリ)オールとしては、公知のポリエーテル化合物、例えば特開昭56−31077号公報や特公昭63−57548号公報等に記載されているものが適用できる。かかるポリエーテル化合物としては、炭素数2〜4のオキシアルキレン単位を主構成単位とするポリエーテルモノオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルトリオール等のポリエーテル(ポリ)オールが好ましく、なかでも平均分子量700〜10000のものが好ましい。
【0017】
潤滑剤として用いる脂肪族エステルとしては、1)脂肪族1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とから得られる脂肪族エステル、2)脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とから得られる脂肪酸エステル、3)脂肪族1価アルコールと脂肪族ポリカルボン酸とから得られる脂肪酸エステル等が挙げられる。かかる脂肪族エステルを形成することとなる原料の脂肪族アルコールとしては、a)メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等の脂肪族1価アルコール、b)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリトリット等の脂肪族多価アルコールが挙げられる。また脂肪族エステルを形成することとなる原料の脂肪酸としては、a)酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸、b)リンデル酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸等の脂肪族モノエンモノカルボン酸、c)リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の脂肪族非共役ポリエンモノカルボン酸、d)琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。以上説明した原料としての脂肪族アルコールと脂肪酸とを適宜選択して公知の合成法により脂肪族エステルを得ることができるが、なかでも炭素数17〜60の脂肪族エステルが好ましい。かかる脂肪族エステルの具体例としては、脂肪族1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とから得られる脂肪族エステルの場合、ラウリルオレアート、ステアリルオレアート、オレイルオレアート、オクチルオレアート、トリデシルオレアート、メチルオレアート、ブチルオレアート、2−エチルヘキシルオレアート、オクチルステアラート、オレイルステアラート、オレイルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルイソステアラート、オレイルオクタノアート等が挙げられるが、なかでもラウリルオレアート、オクチルステアラートが好ましい。また脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とから得られる脂肪酸エステルの場合、エチレン=ジラウラート、プロピレン=ジステアラート、ブタン=ジパルミタート、ヘキサン=ジラウラート、グリセリン=トリ(12−ヒドロキシステアラート)、グリセリン=トリオレアート、グリセリン=パルミタート=ジステアラート、トリメチロールプロパン=トリパルミタート、ソルビタン=テトラオレアート、ペンタエリトリット=テトララウラート等が挙げられるが、なかでもグリセリン=トリ(12−ヒドロキシステアラート)、ソルビタン=テトラオレアートが好ましい。また脂肪族1価アルコールと脂肪族ポリカルボン酸とから得られる脂肪酸エステルの場合、琥珀酸ジステアリル、グルタル酸ジステアリル、アジピン酸ジセチル、ピメリン酸ジベヘニル、スベリン酸ジベヘニル、アゼライン酸ジステアリル、セバシン酸ジステアリル等が挙げられるが、なかでもアジピン酸ジセチルが好ましい。
【0018】
潤滑剤として用いる(ポリ)エーテルポリエステルとしては、1)以上説明した脂肪族エステル化合物又は芳香族エステル化合物に(ポリ)エーテル部を導入した構造を有する(ポリ)エーテルエステル化合物、2)多価有機酸と有機ポリオールとを縮重合反応させて得られるポリエーテルポリエステル化合物等が挙げられる。前記1)の(ポリ)エーテルエステル化合物としては、a)炭素数4〜26の1〜3価の脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)エーテル化合物と、炭素数4〜26の脂肪族カルボン酸とをエステル化した(ポリ)エーテルエステル化合物、b)1〜3価の芳香族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)エーテル化合物と、炭素数4〜26の脂肪族カルボン酸とをエステル化した(ポリ)エーテルエステル化合物、c)炭素数4〜26の脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)エーテル化合物と、芳香族カルボン酸とをエステル化した(ポリ)エーテルエステル化合物等が挙げられる。一方、前記2)のポリエーテルポリエステル化合物において、かかるポリエーテルポリエステル化合物を形成することとなる原料の多価有機酸としては、a)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸、b)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−スルホイソフタル酸塩、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、c)コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル等の前記a)のエステル形成性誘導体、d)フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、5−スルホイソフタル酸ジメチル塩、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の前記b)のエステル形成性誘導体が挙げられる。またポリエーテルポリエステル化合物を形成することとなる原料の有機ポリオールとしては、a)エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の炭素数2〜6のアルキレンジオール、b)グリセリン、トリメチロールプロパン等の炭素数2〜6のアルキレントリオール、c)炭素数2〜4のオキシアルキレン単位を構成単位とするポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオール、ポリオキシアルキレントリオール等が挙げられる。かかるポリエーテルポリエステル化合物は分子量1000〜20000のものが好ましい。
【0019】
潤滑剤として用いる鉱物油としては、それ自体は公知の各種が挙げられるが、なかでも30℃の粘度が1×10−6〜2×10−4m2/sのものが好ましく、30℃の粘度が1×10−6〜5×10−5m2/sのものがより好ましい。かかる好ましい鉱物油としては流動パラフィンオイルが有利に使用できる。
【0020】
潤滑剤として用いるポリオレフィンワックスとしては、酸化ポリエチレンワックス、α−オレフィンと不飽和脂肪酸との共重合体等が挙げられる。ポリオレフィンワックスを形成することとなる原料のα−オレフィンとしては、エチレン、1,2−プロピレン、1,2−ブテン、1,2−デセン、1,2−ドデセン、1,2−オクタドデセン等が挙げられ、また不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、4−ペンテノイック酸、5−ヘキセノイック酸等が挙げられる。なかでも平均分子量1000〜10000の、酸化ポリエチレンワックス、エチレン及び/又は1,2−プロピレンとアクリル酸及び/又はメタクリル酸との共重合体が好ましい。
【0021】
潤滑剤としては、以上説明したようなもののなかでも、平均分子量700〜10000のポリエーテル(ポリ)オール、炭素数17〜60の脂肪族エステル及び30℃の粘度が1×10−6〜5×10−5m2/sの鉱物油から選ばれる一つ又は二つ以上が特に好ましい。
【0022】
本発明の処理剤に用いる静電気防止剤としては、それ自体は公知の各種が挙げられるが、なかでも第4級アンモニウム塩、有機アミンオキサイド、両性化合物、脂肪酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩及び有機リン酸エステル塩から選ばれるイオン性化合物が好ましい。静電気防止剤としてのこれらのイオン性化合物は単独で用いることもできるし、また二つ以上を混合して用いることもできる。
【0023】
静電気防止剤として用いる第4級アンモニウム塩は、第4級アンモニウムカチオン基とアニオン基とから構成される。一方の第4級アンモニウムカチオン基としては、1)窒素原子に結合する有機基がいずれも炭素数1〜25のアルキル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基、2)窒素原子に結合する有機基がいずれも炭素数2〜25のアルケニル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基、3)窒素原子に結合する有機基がいずれも炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基、4)窒素原子に結合する有機基のうちで一部が炭素数1〜25のアルキル基であり、残部が炭素数2〜25のアルケニル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基、5)窒素原子に結合する有機基のうちで一部が炭素数1〜25のアルキル基であり、残部が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基、6)窒素原子に結合する有機基のうちで一部が炭素数2〜25のアルケニル基であり、残部が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基、7)窒素原子に結合する有機基のうちで一部が炭素数1〜25のアルキル基であり、他の一部が炭素数2〜25のアルケニル基であって、残部が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基等が挙げられる。
【0024】
具体的に第4級アンモニウムカチオン基としては、a)テトラメチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリプロピルメチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルイソオクチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルラウリルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム等の、窒素原子に結合する有機基がいずれも炭素数1〜25のアルキル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基、b)ジブテニルジエチルアンモニウム、ジメチルジオレイルアンモニウム、トリメチルオレイルアンモニウム、トリエチルエイコセニルアンモニウム等の、窒素原子に結合する有機基のうちで一部が炭素数1〜25のアルキル基であり、残部が炭素数2〜25のアルケニル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基、c)トリブチルヒドロキシエチルアンモニウム、ジ(ヒドロキシエチル)ジプロピルアンモニウム、トリ(ヒドロキシエチル)オクチルアンモニウム、トリ(ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウム等の、窒素原子に結合する有機基のうちで一部が炭素数1〜25のアルキル基であり、残部が炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基等が挙げられる。なかでも窒素原子に結合する四つの有機基のうちで三つ以上が炭素数1〜4のアルキル基である場合の第4級アンモニウムカチオン基が好ましい。これには例えば、トリブチルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルラウリルアンモニウム、トリメチルオレイルアンモニウム等が挙げられる。
【0025】
他方のアニオン基としては、有機リン酸エステル、有機硫酸エステル、有機スルホン酸エステル、有機カルボン酸等の1〜3価の有機酸から水素イオンを一部又は全部除いたアニオン基が挙げられる。これには例えば、a)メチルリン酸エステル、ジエチルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、メチルオレイルリン酸エステル、ノニルフェニルオキシエトキシエチル・メチルリン酸エステル等の炭素数1〜30の有機リン酸エステルから水素イオンを一部又は全部除いたアニオン基、b)メチルサルフェート、エチルサルフェート、ラウリルサルフェート、オクチルフェニルオキシポリエトキシエチルサルフェート等の炭素数1〜30の有機硫酸エステルから水素イオンを一部又は全部除いたアニオン基、c)ブチルスルホネート、ラウリルスルホネート、ステアリルスルホネート、オレイルスルホネート、p−トルエンスルホネート、ドデシルフェニルスルホネート、オレイルフェニルスルホネート、ナフチルスルホネート、ジイソプロピルナフチルスルホネート等の炭素数1〜30の有機スルホン酸エステルから水素イオンを一部又は全部除いたアニオン基、d)酢酸、カプロン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、ペンタデセニルコハク酸等の炭素数1〜30の脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸等の炭素数7〜30の芳香族カルボン酸、乳酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の炭素数3〜30の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、チオジプロピオン酸等の炭素数3〜30の含硫黄脂肪族カルボン酸等の炭素数1〜30の有機カルボン酸から水素イオンを一部又は全部除いたアニオン基が挙げられる。なかでも炭素数1〜26の脂肪族リン酸エステルから水素イオンを一部又は全部除いたアニオン基、炭素数1〜26の脂肪族スルホン酸エステルから水素イオンを一部又は全部除いたアニオン基、炭素数2〜26の脂肪族カルボン酸から水素イオンを一部又は全部除いたアニオン基が好ましい。
【0026】
静電気防止剤として用いる第4級アンモニウム塩は、いずれも公知の方法で合成できる。これには例えば、1)相当する3級アミンとトリアルキルリン酸エステルとを反応させる方法、2)相当する3級アミンとジアルキル硫酸とを反応させる方法、3)相当する3級アミンに水の存在下でエチレンオキサイドを反応させて第4級アンモニウムハイドロオキサイドとした後にスルホン酸エステルを反応させる方法、4)相当する3級アミンとアルキルハライドとを反応させて第4級アンモウムハライドとした後にカルボン酸金属塩を反応させる方法等が挙げられる。
【0027】
静電気防止剤として用いる有機アミンオキサイドとしては、1)ジメチルエチルアミンオキサイド、ジメチルプロピルアミンオキサイド、ジメチルヘキシルアミンオキサイド、ジメチルオクチルアミンオキサイド、ジメチルノニルアミンオキサイド、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルミリスチルアミンオキサイド、ジメチルセチルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジメチルエイコシルアミンオキサイド、ジヘキシルメチルアミンオキサイド、ジオクチルメチルアミンオキサイド、ジノニルメチルアミンオキサイド、ジラウリルメチルアミンオキサイド、ジミリスチルメチルアミンオキサイド、ジセチルメチルアミンオキサイド、ジステアリルメチルアミンオキサイド、ジエイコシルメチルアミンオキサイド等の、窒素原子に結合している脂肪族炭化水素基が全て炭素数1〜24の飽和脂肪族炭化水素基である有機アミンオキサイド、2)2−テトラデセニルアミンオキサイド、2−ペンタデセニルアミンオキサイド、2−オクタデセニルアミンオキサイド、15−ヘキサデセニルアミンオキサイド、オレイルアミンオキサイド、リノレイルアミンオキサイド、エレオステアリルアミンオキサイド、ジ2−テトラデセニルアミンオキサイド、ジ2−ペンタデセニルアミンオキサイド、ジ2−オクタデセニルアミンオキサイド、ジ15−ヘキサデセニルアミンオキサイド、ジオレイルアミンオキサイド、ジリノレイルアミンオキサイド、ジエレオステアリルアミンオキサイド等の、窒素原子に結合している脂肪族炭化水素基のうちで少なくとも一つが炭素数14〜24の不飽和脂肪族炭化水素基である有機アミンオキサイドが挙げられる。なかでもジメチルオクチルアミンオキサイド、ジメチルノニルアミンオキサイド、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルミリスチルアミンオキサイド、ジメチルセチルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド等の、窒素原子に結合している脂肪族炭化水素基が全て炭素数1〜18の飽和脂肪族炭化水素基である有機アミンオキサイドが好ましい。
【0028】
静電気防止剤として用いる両性化合物としては、1)分子中に少なくとも一つの炭素数が8〜22の炭化水素基を有するベタイン型両性化合物、2)分子中に少なくとも一つの炭素数が8〜22の炭化水素基を有するアラニン型両性化合物が挙げられる。具体的にかかるベタイン型両性化合物としては、オクチルジメチルアンモニオアセタート、デシルジメチルアンモニオアセタート、ドデシルジメチルアンモニオアセタート、ヘキサデシルジメチルアンモニオアセタート、オクタデシルジメチルアンモニオアセタート、ノナデシルジメチルアンモニオアセタート、オクタデセニルジメチルアンモニオアセタート、ドデシルアミノプロピルジメチルアンモニオアセタート、オクタデシルアミノプロピルジメチルアンモニオアセタート、オクタデセニルアミノプロピルジメチルアンモニオアセタート等が挙げられ、またアラニン型両性化合物としては、N,N−ビス(2−カルボキシエチル)−オクチルアミン、N,N−ビス(2−カルボキシエチル)−ドデシルアミン、N,N−ビス(2−カルボキシエチル)−テトラデシルアミン、N,N−ビス(2−カルボキシエチル)−ヘキサデシルアミン、N,N−ビス(2−カルボキシエチル)−オクタデシルアミン、N−(2−カルボキシエチル)−ドデシルアミン、N−(2−カルボキシエチル)−オクタデシルアミン等が挙げられる。
【0029】
静電気防止剤として用いる脂肪酸塩としては、1)炭素数6〜22の脂肪酸のアルカリ金属塩、2)炭素数6〜22の脂肪酸のアミン塩、3)炭素数6〜22の脂肪酸のホスホニウム塩が挙げられる。かかる炭素数6〜22の脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられる。またアルカリ金属塩を構成することとなるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。更にアミン塩を構成することとなるアミンとしては、1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン等の脂肪族アミン類、2)アニリン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン類、3)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、4)アンモニア等が挙げられる。更にまたホスホニウム塩を構成するホスホニウム基としては、1)テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム等のリン原子に結合する有機基が全て脂肪族炭化水素基であるホスホニウム基、2)トリメチルフェニルホスホニウム、トリエチルフェニルホスホニウム、トリブチルフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、トリフェニルエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等のリン原子に結合する有機基のうちで少なくとも一つが芳香族炭化水素基であるホスホニウム基等が挙げられる。なかでも、脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アルカノールアミン、脂肪酸ホスホスニウムが好ましい。
【0030】
静電気防止剤として用いる有機スルホン酸塩としては、1)炭素数6〜22の有機スルホン酸アルカリ金属塩、2)炭素数6〜22の有機スルホン酸ホスホニウム塩等が挙げられる。かかる有機スルホン酸塩を構成する炭素数6〜22の有機スルホン酸としては、a)デシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、イソトリドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸等のアルキルスルホン酸、b)ブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸、c)ジオクチルスルホコハク酸エステル、ジブチルスルホコハク酸エステル、ドデシルスルホ酢酸エステル、ノニルフェノキシポリエチレングリコールスルホ酢酸エステル等のエステルスルホン酸が挙げられる。また有機スルホン酸アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属及び有機スルホン酸ホスホニウム塩を構成するホスホニウム基は、脂肪酸塩について前記したことと同様である。なかでも、有機スルホン酸塩としては、アルキル基の炭素数が10〜18のアルキルスルホン酸ホスホニウム塩が好ましい。
【0031】
静電気防止剤として用いる有機硫酸塩としては、1)デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸リチウム、ヘキサデシル硫酸カリウム等のアルキル硫酸アルカリ金属塩、2)牛脂硫酸化油、ひまし油硫酸化油等の天然油脂の硫酸化物のアルカリ金属塩等が挙げられる。なかでも、有機硫酸塩としては、ドデシル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0032】
静電気防止剤として用いる有機リン酸エステル塩としては、1)アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩、2)アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0033】
前記のようなアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩としては、ブチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ペンチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ヘキシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ヘプチルリン酸エステルアルカリ金属塩、オクチルリン酸エステルアルカリ金属塩、イソオクチルリン酸エステルアルカリ金属塩、2−エチルヘキシルリン酸エステルアルカリ金属塩、デシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ドデシルリン酸エステルアルカリ金属塩、トリデシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ミリスチルリン酸エステルアルカリ金属塩、セチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ステアリルリン酸エステルアルカリ金属塩、エイコシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ベヘニルリン酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。なかでもアルキル基の炭素数が12〜18であるアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩が好ましい。これらのアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩には、モノエステル体の単独物、ジエステル体の単独物、モノエステル体とジエステル体との混合物が含まれ、ジエステル体には、同一のアルキル基を有するジエステル体(対称形のジエステル)と、異なるアルキル基を有するジエステル体(非対称形のジエステル)とがある。
【0034】
また前記のような(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩としては、ポリオキシアルキレンブチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンペンチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンヘキシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンヘプチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンオクチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンイソオクチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレン−2−エチルヘキシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンデシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレントリデシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンミリスチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンセチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンステアリルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンエイコシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンベヘニルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。かかるポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩において、(ポリ)オキシアルキレン基としては、(ポリ)オキシエチレン基、(ポリ)オキシプロピレン基、(ポリ)オキシエチレンオキシプロピレン基等が挙げられる。なかでもアルキル基の炭素数が8〜18であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜3個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩が好ましい。これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩には、モノエステル体の単独物、ジエステル体の単独物、モノエステル体とジエステル体との混合物が含まれ、ジエステル体には、同一のアルキル基を有するジエステル体(対称形のジエステル)と、異なるアルキル基を有するジエステル体(非対称形のジエステル)とがある。
【0035】
静電気防止剤としては、以上説明したようなイオン性化合物が好ましいが、なかでも脂肪酸塩及び/又は有機スルホン酸塩がより好ましい。
【0036】
本発明の処理剤は、以上説明した式1で示されるヒドロキシ化合物を3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%、潤滑剤を40〜96重量%、好ましくは50〜80重量%、及び静電気防止剤を0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%含有するものであって、且つこれらを合計で70重量%以上、好ましくは80重量%含有するものである。
【0037】
本発明の処理剤は、以上説明したような式1で示されるヒドロキシ化合物、潤滑剤及び静電気防止剤以外に、乳化剤、毛羽防止剤、油性向上剤、浸透性向上剤、外観調節剤等の種々の機能付与剤を含有することができる。
【0038】
本発明の処理剤は、これを合成繊維に付着させる際、その水性液として付着させる。本発明の処理剤を付着させる工程としては、紡糸工程、紡糸と延伸とを同時に行なう工程等が挙げられる。また本発明の処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等、公知の給油方法が適用できる。
【0039】
本発明の処理剤は、これを20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%の水性液となし、該水性液を合成繊維に対し本発明の処理剤として0.1〜3重量%となるよう付着させる。本発明の処理剤の合成繊維への付着に際しては、合目的的に他の成分、例えば抗酸化剤、防腐剤、防錆剤等を併用することもできるが、その使用量は可及的に少量とする。
【0040】
本発明の処理剤及び処理方法が適用される合成繊維としては、1)エチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル、2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、3)ポリアクリロニトリル、モダアクリル等のポリアクリル、4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられるが、なかでもポリエステルの部分延伸糸、ポリアミドの部分延伸糸、ポリエステルの直接紡糸延伸糸に適用する場合に効果の発現が高い。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の処理剤の実施形態としては、次の1)〜9)が挙げられる。
1)下記のヒドロキシ化合物(A−1)を19重量%、下記の潤滑剤(B−1)を58重量%、下記の静電気防止剤(C−1)を4重量%、下記のその他の成分(D−1)を19重量%含有して成る処理剤。
ヒドロキシ化合物(A−1):α−3,5,5−トリメチルヘキシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(オキシエチレン単位の繰り返し数が5、以下n=5とする)
潤滑剤(B−1):ラウリルオクタノアート/30℃の粘度が1.3×10−5m2/sの鉱物油=67/33(重量比)の混合物
静電気防止剤(C−1):デカンスルホン酸カリウム/オクタデセン酸カリウム=50/50(重量比)の混合物
その他の成分(D−1):ポリオキシエチレン(n=20)硬化ヒマシ油エーテル/α−オクタデセニル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)=80/20(重量比)の混合物
【0042】
2)前記のヒドロキシ化合物(A−1)を19重量%、下記の潤滑剤(B−2)を58重量%、前記の静電気防止剤(C−1)を4重量%、前記のその他の成分(D−1)を19重量%含有して成る処理剤。
潤滑剤(B−2):ポリオキシエチレン(n=8)モノブチルエーテルのラウリン酸エステル
【0043】
3)前記のヒドロキシ化合物(A−1)を8重量%、下記の潤滑剤(B−3)を80重量%、前記の静電気防止剤(C−1)を4重量%、前記のその他の成分(D−1)を13重量%含有して成る処理剤。
潤滑剤(B−3):ブチルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをランダム状に付加した数平均分子量10000のポリエーテルモノオール/ラウリルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをブロック状に付加した数平均分子量1800のポリエーテルモノオール/ブチルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをランダム状に付加した数平均分子量1000のポリエーテルモノオール=12/38/50(重量比)の混合物
【0044】
4)下記のヒドロキシ化合物(A−2)を10重量%、前記の潤滑剤(B−1)を60重量%、下記の静電気防止剤(C−2)を10重量%、下記のその他の成分(D−2)を20重量%含有して成る処理剤。
ヒドロキシ化合物(A−2):α−2−メチルオクチル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=4)
静電気防止剤(C−2):デカンスルホン酸カリウム/α−ラウリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=3)のリン酸エステルカリウム=42/58(重量比)の混合物
その他の成分(D−2):ポリオキシエチレン(n=20)ヒマシ油エーテル/PEG600のラウリン酸ジエステル=38/62(重量比)の混合物
【0045】
5)前記のヒドロキシ化合物(A−2)を19重量%、前記の潤滑剤(B−2)を58重量%、前記の静電気防止剤(C−2)を4重量%、前記のその他の成分(D−2)を19重量%含有して成る処理剤。
【0046】
6)前記のヒドロキシ化合物(A−2)を19重量%、前記の潤滑剤(B−3)を73重量%、前記の静電気防止剤(C−2)を2重量%、前記のその他の成分(D−2)を6重量%含有して成る処理剤。
【0047】
7)下記のヒドロキシ化合物(A−3)を12重量%、前記の潤滑剤(B−1)を60重量%、前記の静電気防止剤(C−1)を9重量%、下記のその他の成分(D−3)を19重量%含有して成る処理剤。
ヒドロキシ化合物(A−3):α−3,5,5−トリメチルヘキシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=2)
その他の成分(D−3):α−ドデシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)/エチレングリコール=63/37(重量比)の混合物
【0048】
8)前記のヒドロキシ化合物(A−3)を12重量%、前記の潤滑剤(B−2)を59重量%、前記の静電気防止剤(C−1)を10重量%、前記のその他の成分(D−3)を19重量%含有して成る処理剤。
【0049】
9)前記のヒドロキシ化合物(A−3)を7重量%、前記の潤滑剤(B−3)を75重量%、前記の静電気防止剤(C−2)を2重量%、前記のその他の成分(D−3)を16重量%含有して成る処理剤。
【0050】
また本発明の合成繊維の処理方法の実施形態としては、次の10)が挙げられる。
10)前記1)〜9)のうちでいずれかの処理剤を30重量%の水性液となし、この水性液を紡糸したポリエチレンテレフタレート繊維に対し該処理剤として0.5〜0.7重量%となるよう付着させる合成繊維の処理方法。
【0051】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、部は重量部を、また%は重量%を意味する。
【0052】
【実施例】
試験区分1(処理剤の調製)
・実施例1{処理剤(P−1)の調製}
下記のヒドロキシ化合物(A−1)19部、下記の潤滑剤(B−1)58部、下記の静電気防止剤(C−1)4部及び下記のその他の成分(D−1)19部を均一混合して、実施例1の処理剤(P−1)を調製した。
ヒドロキシ化合物(A−1):α−3,5,5−トリメチルヘキシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=5)
潤滑剤(B−1):ラウリルオクタノアート/30℃の粘度が1.3×10−5m2/sの鉱物油=67/33(重量比)の混合物
静電気防止剤(C−1):デカンスルホン酸カリウム/オクタデセン酸カリウム=50/50(重量比)の混合物
その他の成分(D−1):ポリオキシエチレン(n=20)硬化ヒマシ油エーテル/α−オクタデセニル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)=80/20(重量比)の混合物
【0053】
・実施例2〜15及び比較例1〜8{処理剤(P−2)〜(P−15)及び処理剤(R−1)〜(R−8)の調製}
実施例1の処理剤(P−1)と同様にして、実施例2〜15の処理剤(P−2)〜(P−15)及び比較例1〜8の処理剤(R−1)〜(R−8)を調製した。以上で調製した各処理剤の内容を表1にまとめて示した。
【0054】
試験区分2(処理剤の水性液の安定性の評価)
試験区分1で調製した各処理剤を水で希釈して10%、20%及び30%の水性液を調製した。ローラー式オイリング装置を30℃で65%RHの雰囲気下に設置し、調製した水性液をオイリング装置のオイリング浴及びストックタンクに満たして、合成繊維フィラメント糸条を走行させない空運転状態でローラーを回転させると共にオイリング浴の水性液をストックタンクとの間で7日間循環させた。7日間後の水性液の外観を肉眼で観察し、下記の基準で安定性を評価した。結果を表1にまとめて示した。
【0055】
安定性
○:水性液調製直後と同様な均一液状であって、変化が認められない。
△:水性液調製直後に比較して、若干のゲル状物又は固状物の浮遊が認められる。
×:水性液調製直後に比較して、多くの固状物の浮遊、もしくは液の分離が認められる。
【0056】
【表1】
【0057】
表1において、
A−1:α−3,5,5−トリメチルヘキシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=5){式1中のRが3,5,5−トリメチルヘキシル基であって、Xがオキシエチレン単位の繰り返し数が5のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
A−2:α−2−メチルオクチル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=4){式1中のRが2−メチルオクチル基であって、Xがオキシエチレン単位の繰り返し数が4のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
A−3:α−3,5,5−トリメチルヘキシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=2){式1中のRがα−3,5,5−トリメチルヘキシル基であって、Xがオキシエチレン単位の繰り返し数が5のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
A−4:α−3,5,5−トリメチルヘキシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシプロピレン)(m=3)/(ポリオキシエチレン)(n=3){式1中のRが3,5,5−トリメチルヘキシル基であって、Xがオキシプロピレン単位の繰り返し数が3及びオキシエチレン単位の繰り返し数が3のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
A−5:α−2−メチルオクチル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシプロピレン)(m=6){式1中のRが2−メチルオクチル基であって、Xがオキシプロピレン単位の繰り返し数が6のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
A−6:α−2−エチルヘプチル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=9){式1中のRが2−エチルヘプチル基であって、Xがオキシエチレン単位の繰り返し数が9のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
【0058】
a−1:α−2−エチルヘキシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=5){式1中のRが2−エチルヘキシル基であって、Xがオキシエチレン単位の繰り返し数が5のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
a−2:α−2−プロピルヘプチル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=5){式1中のRが2−プロピルヘプチル基であって、Xがオキシエチレン単位の繰り返し数が5のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
a−3:α−2−エチルヘプチル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=12){式1中のRが2−エチルヘプチル基であって、Xがオキシエチレン単位の繰り返し数が12のポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のヒドロキシ化合物}
【0059】
B−1:ラウリルオクタノアート/30℃の粘度が1.3×10−5m2/sの鉱物油=67/33(重量比)の混合物
B−2:ポリオキシエチレン(n=8)モノブチルエーテルのラウリン酸エステル
B−3:ブチルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをランダム状に付加した数平均分子量10000のポリエーテルモノオール/ラウリルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをブロック状に付加した数平均分子量1800のポリエーテルモノオール/ブチルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをランダム状に付加した数平均分子量1000のポリエーテルモノオール=12/38/50(重量比)の混合物
B−4:α−ブチル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=8)のラウリン酸エステル/ブチルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをランダム状に付加した数平均分子量3000のポリエーテルモノオール/ブチルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをランダム状に付加した数平均分子量1000のポリエーテルモノオール=21/26/53(重量比)の混合物
【0060】
C−1:デカンスルホン酸カリウム/オクタデセン酸カリウム=50/50(重量比)の混合物
C−2:デカンスルホン酸カリウム/α−ラウリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=3)のリン酸エステルカリウム=42/58(重量比)の混合物
C−3:トリブチルメチルアンモニウム=ジエチルホスフェート
C−4:テトラブチルアンモニウム=ブチルスルホネート
C−5:トリブチルメチルアンモニウム=ラクタート
C−6:ジメチルオクチルアミンオキサイド
C−7:オクチルジメチルアンモニオアセタート
C−8:ドデシル硫酸ナトリウム
【0061】
D−1:ポリオキシエチレン(n=20)硬化ヒマシ油エーテル/α−オクタデセニル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)=80/20(重量比)の混合物
D−2:ポリオキシエチレン(n=20)ヒマシ油エーテル/PEG600のラウリン酸ジエステル=38/62(重量比)の混合物
D−3:α−ドデシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)/エチレングリコール=63/37(重量比)の混合物
【0062】
試験区分3(合成繊維への処理剤の付着及び評価)
・実施例16〜30及び比較例9〜19
試験区分1で調製した各処理剤と希釈水とを均一混合して、表2に示した濃度の水性液とした。固有粘度0.64、酸化チタン含有量0.2%のポリエチレンテレフタレートチップを常法により乾燥した後、エクストルーダーを用いて295℃で紡糸し、口金から吐出して冷却固化した後の走行糸条に、調製した水性液を、計量ポンプを用いたガイド給油法にて、処理剤としての付着量が表2記載の付着量となるよう付着させた後、ガイドで集束させ、表面速度5000m/分で表面温度90℃の第1ゴテッドローラーと、表面速度5500m/分で表面温度150℃の第2ゴテッドローラーとで延伸後、5500m/分の速度で巻き取り、83デシテックス36フィラメントの延伸糸を得た。
【0063】
・飛散乃至脱落及び毛羽の評価
延伸糸550000mを製造したときに、給油ガイドの下部に認められる処理剤の飛散乃至脱落の程度を肉眼観察し、以下の基準で比較した。また延伸糸を550000m製造したときの巻き取り直前に、毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製のDT−105)にて1時間当たりの毛羽数を測定し、以下の基準で評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0064】
・飛散乃至脱落
◎:飛散乃至脱落が全く認められない
○:飛散乃至脱落が僅に認められる
△:飛散乃至脱落が明らかに認められる
×:飛散乃至脱落が著しく認められる
【0065】
・毛羽数
◎:測定された毛羽数が0個
○:測定された毛羽数が1〜2個
△:測定された毛羽数が3〜5個
×:測定された毛羽数が6個以上
【0066】
・染色斑の評価
上記の毛羽を測定した延伸糸を用い、筒編機で直径70mm、長さ1.2mの編地を作製した。作製した編地を、分散染料(日本化薬社製の商品名カヤロンポリエステルブルーEBL−E)を用い、高圧染色法により染色した。染色した編地を、常法にしたがい水洗、還元洗浄及び乾燥した後、直径70mm、長さ1mの鉄製の筒に装着して、編地表面の濃染部分の点数を肉眼で数え、以下の基準で染色斑を評価した。結果を表2にまとめて示した。
◎:濃染部分がない
○:濃染部分が1〜3点ある
△:濃染部分が4〜7点ある
×:濃染部分が8点以上ある
【0067】
【表2】
【0068】
表2において、
付着量:ガイド給油時の走行糸条に対する処理剤の付着量(%)
【0069】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、高速走行下においても合成繊維からのこれに付着させた処理剤の飛散乃至脱落を充分に抑えることができ、高品質の合成繊維糸条を得ることができるという効果がある。
Claims (8)
- ヒドロキシ化合物が、式1中のRが3,5,5−トリメチルヘキシル基又は2−メチルオクチル基である場合のものである請求項1記載の合成繊維用処理剤。
- ヒドロキシ化合物が、式1中のXがオキシエチレン単位の繰り返し数1〜7の(ポリ)エチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のものである請求項1又は2記載の合成繊維用処理剤。
- 潤滑剤が、炭素数17〜60の脂肪族エステル、平均分子量700〜10000のポリエーテル(ポリ)オール及び30℃の粘度が1×10−6〜5×10−5m2/sの鉱物油から選ばれる一つ又は二つ以上である請求項1〜3のいずれか一つの項記載の合成繊維用処理剤。
- 静電気防止剤が、下記のイオン性化合物から選ばれる一つ又は二つ以上である請求項1〜4のいずれか一つの項記載の合成繊維用処理剤。
イオン性化合物:第4級アンモニウム塩、有機アミンオキサイド、両性化合物、脂肪酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩及び有機リン酸エステル塩 - イオン性化合物が、有機スルホン酸塩及び/又は脂肪酸塩である請求項5記載の合成繊維用処理剤。
- ヒドロキシ化合物を5〜20重量%、潤滑剤を50〜80重量%及び静電気防止剤を1〜5重量%含有しており、且つこれらを合計で80重量%以上含有する請求項1〜6のいずれか一つの項記載の合成繊維用処理剤。
- 請求項1〜7のいずれか一つの項記載の合成繊維用処理剤を20〜40重量%の水性液となし、この水性液を合成繊維に対し該合成繊維用処理剤として0.1〜3重量%となるよう付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法。
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