JP6775041B2 - 難燃性マスターバッチの製造方法、及び難燃性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

難燃性マスターバッチの製造方法、及び難燃性樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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本発明は、難燃性マスターバッチ及び難燃性樹脂組成物に関する。
電気・電子機器部品や自動車内装部材等に使用される樹脂材料は、難燃性を有していなければならないことが多い。従来から、樹脂への難燃化の手法として、通常、樹脂に難燃剤を配合することが行われている。難燃剤には、塩素や臭素等を含有するハロゲン系難燃剤、含窒素化合物系難燃剤、リン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤等の様々な種類がある。
樹脂に難燃剤を配合して難燃性樹脂組成物を得る手法には、難燃性を付与する対象となる成形材料に直接難燃剤を添加し、溶融混練して難燃性樹脂組成物を得る手法や、マスターバッチ法がある。マスターバッチ法は、予め難燃剤の含有量が多い組成物を溶融混練して難燃性マスターバッチを製造し、その難燃性マスターバッチを、難燃性を付与する対象となる成形材料に添加して、難燃性樹脂組成物を得る手法である。このマスターバッチ法は、難燃性樹脂組成物を成形する際に、成形材料としての樹脂と難燃性マスターバッチを混合することで手軽に任意の難燃性樹脂組成物を得られることから、安価でかつ小量生産にも順応でき、経済的な利点もある。
難燃剤としては、環境面や安全性を考慮して、ハロゲン原子を含有せず、熱可塑性樹脂に対して効果的に難燃性を付与し得るホスファゼン化合物の使用が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1には、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエラストマー樹脂、及びホスファゼン化合物を含有することを特徴とする難燃性マスターバッチが開示されている。特許文献2には、フェノール系樹脂及びホスファゼン化合物を含む難燃剤マスターバッチが開示されている。
特開2006−307178号公報 特開2008−101035号公報
本発明者らは、ポリオレフィン系樹脂に対して難燃性を付与する難燃剤として、環境面や安全性等を考慮してホスファゼン化合物の使用を検討した。その結果、ポリオレフィン系樹脂とホスファゼン化合物とを溶融混練すると、ホスファゼン化合物の性質により、混練装置のスクリュー等の部品に混練物が固着し、混練装置が動作し難くなって操業性が低下し、製造困難となることが分かった。混練装置のスクリュー等の部品に混練物が固着することにより製造困難となる問題は、難燃剤(ホスファゼン化合物)を多く含有させることから特に難燃性マスターバッチの製造において多発する。
そこで本発明は、製造の際に用いられる混練装置の操業性が良好で、容易に製造可能な難燃性マスターバッチ及び難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ホスファゼン化合物と共にシリカ及び/又はタルクを用いることで、混練に使用する混練装置のスクリュー等の部品に混練物が固着し難くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば以下に示す難燃性マスターバッチが提供される。
[1]ポリオレフィン系樹脂、ホスファゼン化合物、並びにシリカ及び/又はタルクを含有する難燃性マスターバッチ。
[2]さらに相溶化剤を含有する前記[1]に記載の難燃性マスターバッチ。
[3]前記ホスファゼン化合物100質量部に対して、前記ポリオレフィン系樹脂100〜500質量部、前記シリカ及び/又はタルク10〜100質量部、並びに前記相溶化剤10〜150質量部を含有する前記[2]に記載の難燃性マスターバッチ。
[4]前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の難燃性マスターバッチ。
[5]前記シリカを含有し、前記シリカのJIS K5101に準じて測定される吸油量が100〜400mL/gである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の難燃性マスターバッチ。
[6]繊維状樹脂の成形に用いられる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の難燃性マスターバッチ。
また、本発明によれば以下に示す難燃性樹脂組成物が提供される。
[7]熱可塑性樹脂と、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の難燃性マスターバッチとを含有する難燃性樹脂組成物。
[8]ポリオレフィン系樹脂、ホスファゼン化合物、並びにシリカ及び/又はタルクを含有する難燃性樹脂組成物。
本発明によれば、製造の際に用いられる混練装置の操業性が良好で、容易に製造可能な難燃性マスターバッチ及び難燃性樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
(難燃性マスターバッチ)
本発明の一実施形態に係る難燃性マスターバッチ(以下、単に「マスターバッチ」と記載することがある。)は、ポリオレフィン系樹脂、ホスファゼン化合物、並びにシリカ及び/又はタルクを含有する。この難燃性マスターバッチは、ポリオレフィン系樹脂を含有する点で、難燃性の樹脂組成物ともいえるが、本明細書では、マスターバッチとして使用可能であるという観点と、後記難燃性樹脂組成物と区別する観点から、マスターバッチと称する。
(難燃性樹脂組成物)
本発明の一実施形態に係る難燃性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と記載することがある。)は、ポリオレフィン系樹脂、ホスファゼン化合物、並びにシリカ及び/又はタルクを含有する。この樹脂組成物は、前記マスターバッチを用いなくても得ることが可能であるが、溶融混練等の製造上の作業性に優れることから、前記マスターバッチを使用して得ることが好ましい。この場合、樹脂組成物は、難燃性を付与する対象となる熱可塑性樹脂と前記マスターバッチとを含有する難燃性樹脂組成物とすることができ、熱可塑性樹脂としてはマスターバッチに含有させるポリオレフィン系樹脂と同様のものを用いることが好ましい。なお、本明細書において、難燃性樹脂組成物には、その樹脂組成物を構成する各成分が配合されただけの成形前の組成物、並びにペレット状、フレーク状、及び繊維状等の各種形態に成形された後の組成物が含まれる。
以下、本実施形態に係るマスターバッチ及び樹脂組成物の各成分について説明する。
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体を単量体成分の主成分として重合された単独重合体又は共重合体である。ここで、樹脂(重合体)を構成する主成分とは、重合体を構成する全単量体成分中、50質量%以上である成分をいう。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体を全単量体成分中、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%含んでなる単独重合体又は共重合体である。
前記オレフィン系共重合体には、オレフィン系単量体と他のオレフィン系単量体との共重合体、又はオレフィン系単量体とオレフィン系単量体に共重合可能な他の単量体との共重合体が含まれる。ポリオレフィン系樹脂は、前記他の単量体を全単量体成分中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは0〜20質量%含む単量体成分から構成されていてもよい。
前記オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン及びプロピレン等のオレフィン、並びに1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセン−1等のα−オレフィン(例えば炭素数2〜12のα−オレフィン)等を挙げることができる。オレフィン系単量体は、ポリオレフィン系樹脂が重合される際、1種単独で用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
前記オレフィン系単量体に共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロペンテン及びノルボルネン等の環状オレフィン、並びに1,4−ヘキサジエン及び5−エチリデン−2−ノルボルネン等のジエン等を挙げることができる。前記他の単量体は、ポリオレフィン系樹脂が重合される際、1種単独で用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
ポリオレフィン系樹脂の好適な具体例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のプロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂;ポリブテン;並びにポリペンテン等を挙げることができる。マスターバッチにおいて、ポリオレフィン系樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂におけるプロピレンに由来する構造の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチックのいずれでもよい。ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンがさらに好ましい。
(ホスファゼン化合物)
本実施形態に係るマスターバッチ及び樹脂組成物は、難燃剤としてホスファゼン化合物を含有する。ホスファゼン化合物は、分子中に−P=N−結合、及び芳香族基を有する化合物である。
従来、ポリオレフィン系樹脂に難燃性を付与する難燃剤として、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好で、効果的に難燃性を付与できることから、N−アルコキシヒンダードアミン等の立体障害性アミンエーテル系化合物が用いられている。本発明者らは、立体障害性アミンエーテル系化合物がポリオレフィン系樹脂に難燃性を効果的に付与し得る量(例えばマスターバッチ中に10質量%以上)で含有されている組成物を、例えば押出機で成形及び紡糸して繊維状樹脂を得る場合等のように260℃以上といった高温で成形すると、異臭が発生することに気付いた。前記異臭の原因は、立体障害性アミンエーテル系化合物が熱分解したことによるものであると考えられる。これに対して、本実施形態に係るマスターバッチ及び樹脂組成物において、難燃剤として使用するホスファゼン化合物は、耐熱性が高いことから、成形時に熱分解し難く、例えば260〜280℃程度の温度で混練や成形を行う際にも熱分解による異臭の発生を抑制することができる。また、ホスファゼン化合物は、ハロゲンを含まないため、環境への負荷が小さいという利点もある。
ホスファゼン化合物としては、下記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、及び下記一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物を挙げることができる。ホスファゼン化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ホスファゼン化合物としては、難燃性を付与する対象となる熱可塑性樹脂の難燃性を効果的に高められることから、環状ホスファゼン化合物が好ましい。
Figure 0006775041
一般式(1)中、nは3〜25の整数を表し、R及びRは、それぞれ独立に、アリール基又はアルキルアリール基を表す。
Figure 0006775041
一般式(2)中、mは3〜10000の整数を表し、R及びRは、それぞれ独立に、アリール基又はアルキルアリール基を表す。Rは、−N=P(OR、−N=P(OR、−N=P(O)OR、又は−N=P(O)ORを表し、Rは、−P(OR、−P(OR、−P(O)(OR、又は−P(O)(ORを表す。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、及びナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
前記アルキルアリール基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数6〜20のアラルキル基が挙げられる。前記アルキルアリール基としては、炭素数7〜10のアラルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
一般式(1)中のR及びRは、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R及びRがいずれもフェニル基である、環状フェノキシホスファゼンがさらに好ましい。その環状フェノキシホスファゼン化合物の中でも、一般式(1)中のnが3〜8の整数である環状フェノキシホスファゼン化合物が好ましく、より好ましくはnが3〜5の整数、さらに好ましくはnが3である環状フェノキシホスファゼン化合物である。環状ホスファゼン化合物は、一般式(1)中のnが異なる化合物の混合物であってもよい。その混合物である場合、一般式(1)中のnが3である環状フェノキシホスファゼン化合物が、他の環状フェノキシホスファゼン化合物よりも多く含有されている、環状フェノキシホスファゼン化合物の混合物であることが好ましい。
一般式(2)中のR及びRは、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物としては、R及びRがいずれもフェニル基である、鎖状フェノキシホスファゼン化合物がさらに好ましい。その鎖状フェノキシホスファゼン化合物の中でも、一般式(2)中のmが3〜1000の整数である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が好ましく、より好ましくはmが3〜100の整数、さらに好ましくはmが3〜25の整数である、鎖状フェノキシホスファゼン化合物である。鎖状ホスファゼン化合物は、一般式(2)中のmが異なる化合物の混合物であってもよい。
(シリカ及びタルク)
本実施形態に係るマスターバッチ及び樹脂組成物は、シリカ及びタルクからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する。マスターバッチ及び樹脂組成物を製造する際にポリオレフィン系樹脂及びホスファゼン化合物を溶融混練すると、ホスファゼン化合物がせん断等を受けると固まりやすい性質を有することから、溶融物が混練装置のスクリュー等の部品に固着して巻き付き、操業性が低下する場合がある。この問題は、ホスファゼン化合物を多く含有させることから特にマスターバッチの製造において生じる。これに対して、マスターバッチ及び樹脂組成物の成分としてシリカ及び/又はタルクを用いることで、各成分を溶融混練する際に、溶融物が混練装置のスクリュー等に固着し難くなり、操業性が低下する問題を回避することが可能となる。この効果は、シリカの方がタルクに比べて少量でも得られやすいことから、シリカを用いることがより好ましい。
ホスファゼン化合物とシリカ及び/又はタルクとを含有するマスターバッチ及び樹脂組成物では、シリカ及び/又はタルクが、ホスファゼン化合物の周囲を取り囲むものと考えられる。このように、シリカ及び/又はタルクが、ホスファゼン化合物の固まりやすい性質に対して作用することで、溶融物のスクリュー等への固着を抑制できるものと考えられる。
シリカ及びタルクとしては、JIS K5101に準じて測定される吸油量が100〜400mL/100gであるものが好ましい。この範囲の吸油量をもつシリカ及び/又はタルクを用いることにより、少量のシリカ及び/又はタルクでも前述の溶融物のスクリュー等への固着を抑制できる。シリカ及び/又はタルクの含有量を少なくすることは、マスターバッチ及び成形後の樹脂組成物(成形体)の表面のザラツキ感及び荒れの発生の抑制に寄与できることから好ましい。また、シリカ及び/又はタルクの含有量を少なくすることは、樹脂組成物を紡糸して繊維状の成形体とする場合における糸切れ(繊維状樹脂が切れる事態)の発生を抑えられることから好ましい。これらの観点から、シリカ及びタルクの吸油量は、120mL/100g以上であることが好ましく、より好ましくは150mL/100g以上、さらに好ましくは200mL/100g以上である。成形後の樹脂組成物(成形体)の表面のザラツキ感や荒れは、樹脂組成物を薄いフィルム状の成形体とする場合や、樹脂組成物を紡糸して繊維状の成形体とする場合等に特に発生しやすく、また、その発生は、成形体の物性の低下をもたらす。そのため、成形体表面のザラツキ感や荒れの発生を抑制しうるマスターバッチに構成することで、そのマスターバッチをフィルム状や繊維状に成形するための樹脂組成物に好適に用いることができる。そのようなマスターバッチは、特に繊維状樹脂の成形に用いられることがより好ましい。
シリカ及びタルクの平均粒子径は、0.1〜10.0μmであることが好ましい。シリカ及びタルクの平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、シリカ及びタルクの平均粒子径は、マスターバッチ及び成形後の樹脂組成物(成形体)の表面のザラツキ感や荒れの発生、並びに前記糸切れの発生を抑制する観点から、10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましく、5.0μm以下がさらに好ましい。本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定される値である。
シリカ及びタルクとしては、BET法による比表面積が100〜700m/gであることが好ましく、より好ましくは200〜600m/g、さらに好ましくは250〜500m/gである。シリカ及びタルクの形状は、定形であっても不定形であってもよい。
(相溶化剤)
本実施形態に係るマスターバッチ及び樹脂組成物は、さらに相溶化剤を含有することが好ましい。この相溶化剤は、ポリオレフィン系樹脂とホスファゼン化合物との相溶性を向上させるための成分であるが、相溶化剤によりポリオレフィン系樹脂とホスファゼン化合物とが完全に相溶することまでは要しない。
マスターバッチや樹脂組成物に相溶化剤が含有されていない場合、ポリオレフィン系樹脂とホスファゼン化合物との低い相溶性に起因して、それらを押出機で混練すると、押出機のノズルからの吐出が不安定になる場合がある。マスターバッチ及び樹脂組成物を構成する成分に相溶化剤を使用することにより、押出機のノズルからの吐出を安定させることができる。そのため、マスターバッチを押出機により容易にペレット状等の形態に製造することができ、また、樹脂組成物を押出機により容易に紡糸でき、繊維状の成形体を得ることができる。
さらに相溶化剤を使用せずに、ポリオレフィン系樹脂とホスファゼン化合物とを押出機で繊維状に成形すると、樹脂組成物中のホスファゼン化合物がブリードアウトする場合があり、押出機における樹脂組成物が触れる部位が汚れる場合がある。相溶化剤を用いることにより、樹脂組成物中のホスファゼン化合物のブリードアウトを抑制することが可能となり、その結果、押出機の汚染を低減できることから生産性を高めることが可能となる。
相溶化剤としては、主鎖にポリオレフィン系ポリマーの構造を有し、その主鎖に側鎖としてビニル系ポリマーの構造が結合したグラフト共重合体、及び無水カルボン酸や無水マレイン酸等の酸で変性されたポリオレフィン、並びに立体障害性アミンエーテル系化合物等を挙げることができる。これらの相溶化剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができ、これらのうち、前記グラフト共重合体、立体障害性アミンエーテル系化合物が好ましく、前記グラフト共重合体がより好ましい。マスターバッチにおける相溶化剤として立体障害性アミンエーテル系化合物を用いる場合、前述の異臭による問題が生じないように、立体障害性アミンエーテル系化合物の含有量は、マスターバッチの全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
前記グラフト共重合体における主鎖の構造部分をなすポリオレフィン系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体等を挙げることができる。前記グラフト共重合体における側鎖の構造部分をなすビニル系ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、及びメタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体等を挙げることができる。
相溶化剤としては、主鎖にポリエチレンの構造を有し、その主鎖に側鎖としてポリスチレンの構造が結合したグラフト共重合体、及び主鎖にポリエチレンの構造を有し、その主鎖に側鎖としてスチレン−アクリロニトリル共重合体の構造が結合したグラフト共重合体、並びに主鎖にポリプロピレンの構造を有し、その主鎖に側鎖としてスチレン−アクリロニトリル共重合体の構造が結合したグラフト共重合体が好ましい。これらの相溶化剤を用いることにより、ポリオレフィン系樹脂とホスファゼン化合物との相溶性を向上させることが可能である。
(その他の成分)
本実施形態に係るマスターバッチ及び樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、上述した成分以外にその他の成分として、難燃助剤、機械物性等の諸特性を向上させるための充填材、及びその他の添加剤等を含有してもよい。難燃助剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウム等の金属水酸化物を挙げることができる。充填材としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、マイカ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、硼酸マグネシウム、炭素繊維等を挙げることができる。その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、硬化促進剤、帯電防止剤、導電性付与剤、離型剤、潤滑剤、染料、及び顔料等を挙げることができる。これらのその他の成分は、1種又は2種以上が含有されていてもよい。
(難燃性マスターバッチの製造方法)
本実施形態のマスターバッチは、前述のポリオレフィン系樹脂、ホスファゼン化合物、シリカ及び/又はタルク、並びに必要に応じて添加される相溶化剤及びその他の成分を溶融混練して得ることができる。溶融混練の方法は特に限定されず、公知の溶融混練方法をとることができる。具体例を挙げると、各成分を例えばタンブラーやヘンシェルミキサーとして知られた高速ミキサー等の各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラストグラフ、単軸押出機、二軸押出機、及びニーダー等の混練装置で溶融混練する方法が挙げられる。これらの中でも、生産効率がよいことから、押出機を用いて溶融混練する製造方法がより好ましく、二軸押出機を用いる製造方法がさらに好ましい。押出機を使用して各成分を溶融混練し、混練物をストランド状に押し出した後、ストランド状に押し出した混練物をペレット状やフレーク状等の形態に加工することができる。
溶融混練の際の温度は、例えば、150〜280℃であり、使用するポリオレフィン系樹脂に応じて適宜選択される。ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂を用いる場合、溶融混練の際の温度は、180℃〜270℃が好ましく、より好ましくは190〜230℃である。本実施形態のマスターバッチでは、難燃剤としてホスファゼン化合物を使用しているため、このような高温度条件の溶融混練においても、熱分解し難く、したがって、異臭の発生を回避することができる。また、マスターバッチの成分として、シリカ及び/又はタルクを用いているため、ホスファゼン化合物の性質に起因して、溶融物が押出機等の混練装置内の部品に固着することを抑制することができる。さらにマスターバッチの成分として、相溶化剤を用いることで、ポリオレフィン系樹脂とホスファゼン化合物との相溶性を高めることが可能となる。その結果、押出機のノズルから吐出ムラなく安定し、かつホスファゼン化合物のブリードアウトによる押出機の汚染を防止することも可能となる。
このような利点があることから、本実施形態のマスターバッチは、難燃性を付与する対象となる熱可塑性樹脂に配合され、その配合物を押出機等で紡糸し、繊維状樹脂に成形する用途に特に好適である。
(難燃性マスターバッチ中の各成分の含有量)
次に、難燃性マスターバッチを構成する各成分の好ましい含有量について説明する。なお、各成分の含有量は、その成分が2種以上用いられる場合は、2種以上の合計の含有量を意味する。
マスターバッチ中のポリオレフィン系樹脂の含有量は、マスターバッチの混練等の製造上の観点から、マスターバッチの全質量を基準として、30〜80質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましく、50〜80質量%がさらに好ましい。
また、マスターバッチにおいて、ホスファゼン化合物100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂の含有量は、100〜500質量部であることが好ましく、100〜400質量部であることがより好ましく、200〜400質量部であることがさらに好ましい。
マスターバッチ中のホスファゼン化合物の含有量は、マスターバッチの混練等の製造上の観点から、また、マスターバッチを使用する対象の熱可塑性樹脂に難燃性を付与しやすいように、マスターバッチの全質量を基準として、10〜50質量%であることが好ましい。マスターバッチ中のホスファゼン化合物の含有量は、より好ましくは10〜45質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
マスターバッチ中のシリカ及び/又はタルクの含有量は、マスターバッチの全質量を基準として、2〜20質量%であることが好ましい。シリカ及び/又はタルクの含有量は、マスターバッチの製造においてホスファゼン化合物が混練装置のスクリュー等に固着することを抑制する観点から、5質量%以上が好ましい。成形体の表面のザラツキ感や荒れの発生を抑制する観点から、シリカ及び/又はタルクの含有量は、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、ホスファゼン化合物100質量部に対して、シリカ及び/又はタルクの含有量は、10〜100質量部であることが好ましい。
マスターバッチ中の相溶化剤の含有量は、マスターバッチの全質量を基準として、2〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量%である。
また、ホスファゼン化合物100質量部に対して、相溶化剤の含有量は、10〜150質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜100質量部である。
(難燃性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物を構成する各成分をドライブレンドし、前述の押出機等の混練装置で溶融混練して成形することもできるが、混練時や成形時の作業性に優れることから、前述のマスターバッチを含有する樹脂組成物とすることが好ましい。また、難燃性を付与する対象の熱可塑性樹脂とマスターバッチとを含有する樹脂組成物とすることで、マスターバッチにはすでに難燃剤等が含有されていることから、マスターバッチを用いずに各成分を混練する場合に比べて、難燃剤のブリードアウトを生じ難くすることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、前述のマスターバッチと同様、各成分を溶融混練して得ることができる。使用できる混練装置や、混練温度も前述のマスターバッチの説明と同様である。樹脂組成物は、ペレット状又はフレーク状の形態であることが好ましい。この樹脂組成物を押出成形、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、及び発泡成形等の方法で成形することが可能である。マスターバッチを含有する樹脂組成物は、マスターバッチと同様、繊維状樹脂の成形に用いられることが好ましい。
(熱可塑性樹脂)
マスターバッチと配合する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂のほか、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABS、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、前述のマスターバッチとの相溶性が良好であることから、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂のうち、マスターバッチに含有されているポリオレフィン系樹脂と同じものがより好ましい。
樹脂組成物に前述のマスターバッチを使用する場合、マスターバッチの使用量(含有量)は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
(難燃性樹脂組成物中の各成分の含有量)
次に、難燃性を付与する対象となる熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いた場合の難燃性樹脂組成物を構成する各成分の好ましい含有量について説明する。なお、各成分の含有量は、その成分が2種以上用いられる場合は、2種以上の合計の含有量を意味する。
樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂の含有量は、樹脂組成物の全質量を基準として、70〜95質量%であることが好ましい。
樹脂組成物中のホスファゼン化合物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂に難燃性を付与する観点から、樹脂組成物の全質量を基準として、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
樹脂組成物中のシリカ及び/又はタルクの含有量は、樹脂組成物の全質量を基準として、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。
樹脂組成物中の相溶化剤の含有量は、樹脂組成物の全質量を基準として、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。
以上述べた本実施形態に係るマスターバッチ及び樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂、ホスファゼン化合物、並びにシリカ及び/又はタルクを含有するため、製造の際に、使用する混練装置におけるスクリュー等の部品への混練物の固着を抑制することができる。よって、本実施形態のマスターバッチ及び樹脂組成物は、製造の際に用いられる混練装置の操業性が良好で、容易に製造することができる。また、本実施形態のマスターバッチ及び樹脂組成物は、難燃剤としてホスファゼン化合物を含有するため、混練や成形の際に難燃剤の熱分解による異臭の発生を抑制することができる。さらに、本実施形態のマスターバッチ又は樹脂組成物を使用することにより、熱可塑性樹脂に難燃性をもたせることができる。難燃性としては、マスターバッチ又は樹脂組成物を使用して繊維状樹脂を得た場合に、JIS L1091:1999に規定される「D法(接炎試験)」に準じて測定される接炎回数が3回以上(より好適には4回以上)である難燃性が好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<マスターバッチの作製>
(実施例1)
難燃剤として環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、商品名「SPS−100」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)55部(ホスファゼン化合物100部に対して275部)、不定形のシリカ(水澤化学工業社製、商品名「ミズカシルP705」、平均粒子径:3μm、吸油量:250mL/100g、比表面積:300m/g)5部(ホスファゼン化合物100部に対して25部)、相溶化剤(日油社製、商品名「モディパーA1401」)20部(ホスファゼン化合物100部に対して100部)を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。なお、使用した環状ホスファゼン化合物は、前記一般式(1)中のnが3である環状フェノキシホスファゼン化合物を、他の環状フェノキシホスファゼン化合物よりも多く含有する、環状フェノキシホスファゼン化合物の混合物である(以下の実施例において同じである)。また、使用した相溶化剤は、主鎖にポリエチレンの構造を有し、その主鎖に側鎖としてスチレン−アクリロニトリル共重合体の構造が結合したグラフト共重合体である。配合した混合物を、二軸押出機を用いて210〜230℃で混練し、円柱状ペレットのマスターバッチ1を得た。
(実施例2)
難燃剤として環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、商品名「SPS−100」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)50部(ホスファゼン化合物100部に対して250部)、球状のシリカ(水澤化学工業社製、商品名「ミズパールK−300」、平均粒子径:2.8μm、吸油量:126mL/100g、比表面積:256m/g)10部(ホスファゼン化合物100部に対して50部)、相溶化剤(日油社製、商品名「モディパーA1401」)20部(ホスファゼン化合物100部に対して100部)を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。配合した混合物を、二軸押出機を用いて210〜230℃で混練し、円柱状ペレットのマスターバッチ2を得た。
(実施例3)
難燃剤として環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、商品名「SPS−100」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)45部(ホスファゼン化合物100部に対して225部)、タルク(浅田製粉社製、商品名「FFR」、平均粒子径:3.9μm以下)15部(ホスファゼン化合物100部に対して75部)、相溶化剤(日油社製、商品名「モディパーA1401」)20部(ホスファゼン化合物100部に対して100部)を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。配合した混合物を、二軸押出機を用いて210〜230℃で混練し、円柱状ペレットのマスターバッチ3を得た。
(実施例4)
難燃剤として環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、商品名「SPS−100」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)75部(ホスファゼン化合物100部に対して375部)、不定形のシリカ(水澤化学工業社製、商品名「ミズカシルP705」、平均粒子径:3μm、吸油量:250mL/100g、比表面積:300m/g)5部(ホスファゼン化合物100部に対して25部)を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。配合した混合物を、二軸押出機を用いて210〜230℃で混練し、円柱状ペレットのマスターバッチ4を得た。
(実施例5)
難燃剤として環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、商品名「SPS−100」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)50部(ホスファゼン化合物100部に対して250部)、球状のシリカ(水澤化学工業社製、商品名「ミズパールK−300」、平均粒子径:2.8μm、吸油量:126mL/100g、比表面積:256m/g)10部(ホスファゼン化合物100部に対して50部)、相溶化剤(日油社製、商品名「モディパーA1100」)20部(ホスファゼン化合物100部に対して100部)を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。なお、使用した相溶化剤は、主鎖にポリエチレンの構造を有し、その主鎖に側鎖としてポリスチレンの構造が結合したグラフト共重合体である。配合した混合物を、二軸押出機を用いて210〜230℃で混練し、円柱状ペレットのマスターバッチ5を得た。
(実施例6)
難燃剤として環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、商品名「SPS−100」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)70部(ホスファゼン化合物100部に対して350部)、不定形のシリカ(水澤化学工業社製、商品名「ミズカシルP705」、平均粒子径:3μm、吸油量:250mL/100g、比表面積:300m/g)5部(ホスファゼン化合物100部に対して25部)、相溶化剤として立体障害性アミンエーテル系化合物であるN−アルコキシヒンダードアミン(BASF社製、商品名「Flamestab NOR 116」)5部(ホスファゼン化合物100部に対して25部)を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。配合した混合物を、二軸押出機を用いて190〜210℃で混練し、円柱状ペレットのマスターバッチ6を得た。
(参考例1)
難燃剤として立体障害性アミンエーテル系化合物であるN−アルコキシヒンダードアミン(BASF社、商品名「Flamestab NOR 116」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)80部(難燃剤100部に対して400部)を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。配合した混合物を、二軸押出機を用いて190〜210℃で混練し、円柱状ペレットの参考マスターバッチ1を得た。
(比較例1)
難燃剤として環状ホスファゼン化合物(大塚化学製、商品名「SPS−100」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)40部(ホスファゼン化合物100部に対して200部)、水酸化マグネシウム(神島化学工業社製、商品名「マグシーズN−4」、平均粒子径:1.1μm、比表面積:4.7m/g)20部、相溶化剤(日油社製、商品名「モディパーA1401」)20部を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。配合した混合物を、二軸押出機を用いて210〜230℃で混練し、円柱状ペレットの比較マスターバッチ1を得た。
(比較例2)
難燃剤として環状ホスファゼン化合物(大塚化学製、商品名「SPS−100」)20部、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名「J105P J106」)40部(ホスファゼン化合物100部に対して200部)、硫酸バリウム(堺工業社製、商品名「バリエースB−55」、平均粒子径:0.6μm、比表面積:5.4m/g)20部、相溶化剤(日油社製、商品名「モディパーA1401」)20部を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。配合した混合物を、二軸押出機を用いて210〜230℃で混練し、円柱状ペレットの比較マスターバッチ2を得た。
<評価>
(マスターバッチの作製過程における異臭の発生)
各マスターバッチを作製した際の異臭の発生について、次の評価基準に従って評価した。
A:異臭はほとんど感じられなかった。
B:わずかに異臭の発生を感じたが、作業困難となるほどの異臭は感じられなかった。
C:はっきりと感じられる異臭が発生した。
(押出機の操業性)
各マスターバッチを作製した際に、二軸押出機のスクリューへの溶融物の固着の発生状況による、二軸押出機の操業性について、次の評価基準に従って評価した。
A:二軸押出機のスクリューに溶融物がほとんど固着することなく、二軸押出機を良好に操業できた。
B:二軸押出機のスクリューに若干の溶融物の固着が確認されたが、マスターバッチを作製することができた。
C:二軸押出機のスクリューに溶融物が固着して巻き付き、二軸押出機の操業が困難であった。
(押出機のノズルの吐出安定性)
各マスターバッチを作製した際に、二軸押出機のノズルからの材料の吐出安定性について、次の評価基準に従って評価した。
A:二軸押出機のノズルから混練物が安定して吐出された。
B:二軸押出機のノズルから混練物が時折細く吐出された。
C:二軸押出機のノズルから混練物が細く吐出されたり、途切れて吐出されたりと、不安定な吐出であった。
以上の実施例等の評価結果を表1及び表2に示す。
Figure 0006775041
Figure 0006775041
比較例1及び2では、難燃剤として使用したホスファゼン化合物の性質により、二軸押出機におけるスクリューに混練物(溶融物)が固着し、二軸押出機が動作し難くなった。これに対して、実施例1〜6では、難燃剤として環状ホスファゼン化合物を用い、さらにシリカ又はタルクを特定量の範囲で用いたため、二軸押出機の操業性が終始良好で、マスターバッチ1〜6を容易に製造することができた。
また、参考例1では、難燃剤として使用したN−アルコキシヒンダードアミンとポリプロピレンとの相溶性が良好であることから、二軸押出機の操業性が良好で、二軸押出機のノズルからの材料の吐出安定性が良好であった。しかし、N−アルコキシヒンダードアミンを難燃剤として使用したことから、マスターバッチの全質量を基準として、N−アルコキシヒンダードアミンを20質量%使用したため、参考マスターバッチ1の作製において、異臭が発生した。これに対して、実施例1〜6では、難燃剤としてホスファゼン化合物を使用したため、臭気の発生による問題が生じることなく、マスターバッチ1〜6を製造することができた。
さらに、実施例1〜3、5及び6では、相溶化剤を使用したため、二軸押出機のノズルからの材料の吐出安定性が良好であった。したがって、これらのマスターバッチ1〜3、5及び6は、樹脂組成物を押出機のノズルから紡糸して繊維状の樹脂成形体を製造する用途に好適である。
(難燃性樹脂組成物の作製・評価)
実施例2、5及び6で作製したマスターバッチ2、5及び6をそれぞれ用いて、難燃性樹脂組成物を作製した。具体的には、実施例1等で使用したポリプロピレン100部、及びマスターバッチ5部を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合し、その混合物を二軸押出機で押出し、押出物を延伸して紡糸し、繊維状樹脂を得た。この繊維状樹脂の作製を、マスターバッチ2、5及び6のそれぞれについて行った。その結果、マスターバッチ5を用いた場合では、繊維状樹脂の作製において、難燃剤のブリードアウトが僅かに確認されたが、マスターバッチ2及び6を用いた場合では、繊維状樹脂の作製において、難燃剤のブリードアウトは確認されなかった。また、マスターバッチ2、5及び6をそれぞれ用いて作製した各繊維状樹脂は、JIS L1091:1999の「繊維製品の燃焼性試験方法」で規定される「D法(接炎試験)」に準じて測定した接炎回数がいずれも3回以上であった。
本発明に係る難燃性マスターバッチ及び難燃性樹脂組成物は、例えば、電気・電子機器部品や自動車内装部材等の難燃性が求められる樹脂製品に利用することができる。

Claims (10)

  1. ポリオレフィン系樹脂と、
    ホスファゼン化合物と、
    シリカ及びタルクからなる群から選ばれる1種又は2種以上と、
    を含む混合物を溶融混練する難燃性マスターバッチの製造方法。
  2. 前記混合物は、さらに相溶化剤を含む請求項1に記載の難燃性マスターバッチの製造方法。
  3. 前記混合物は、前記ホスファゼン化合物100質量部に対して、前記ポリオレフィン系樹脂を100〜500質量部、前記シリカ及びタルクからなる群から選ばれる1種又は2種以上を10〜100質量部、並びに前記相溶化剤を10〜150質量部含む請求項2に記載の難燃性マスターバッチの製造方法。
  4. 前記相溶化剤は、主鎖にポリオレフィン系ポリマーの構造を有するとともにその主鎖に側鎖としてビニル系ポリマーの構造が結合したグラフト共重合体、及び立体障害性アミンエーテル系化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む請求項2又は3に記載の難燃性マスターバッチの製造方法。
  5. 前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性マスターバッチの製造方法。
  6. 前記混合物は、前記シリカを含み、そのシリカのJIS K5101に準じて測定される吸油量が100〜400mL/gである請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性マスターバッチの製造方法。
  7. 繊維状樹脂の成形に用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性マスターバッチの製造方法。
  8. 難燃性を付与する対象となる熱可塑性樹脂に、難燃性マスターバッチを配合して、難燃性樹脂組成物を製造する方法であって、
    前記難燃性マスターバッチは、ポリオレフィン系樹脂と、ホスファゼン化合物と、シリカ及びタルクからなる群から選ばれる1種又は2種以上と、を含有する、難燃性樹脂組成物の製造方法。
  9. 前記熱可塑性樹脂と、前記難燃性マスターバッチとの配合物を溶融混練する請求項8に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
  10. 前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記難燃性マスターバッチを1〜20質量部使用する請求項8又は9に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
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