JP6721458B2 - 難燃性マスターバッチ、難燃性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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本発明は、難燃性樹脂組成物、及びそれを用いて作製された成形品に関する。
ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂は、例えば家電製品、自動車、家庭用品、及び事務用品等の様々な分野において、幅広く使用されている。ポリオレフィン系樹脂は、燃焼し易い性質を有するといわれており、そのため、様々な用途において、安全性の面から、難燃化することが求められている。
従来、ポリオレフィン系樹脂には主に、ポリブロモビフェニル(PBB)及びポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)等の臭素化合物系難燃剤、又はそれと三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物との組み合わせが、難燃化効率及びコストの観点から、使用されてきた。しかし、近年では、臭素化合物系難燃剤等のハロゲンを含有する化合物やアンチモン系化合物の使用は、環境面及び健康面に関する問題が指摘され、それらに関する事情を考慮して、難燃性を効果的に付与し得る代替の難燃剤が求められている。難燃剤には様々な種類があり、これまで、ポリオレフィン系樹脂にも各種の難燃剤の配合が検討されてきている。
例えば、特許文献1には、難燃性に加えて、環境対応性にも優れた難燃性樹脂組成物の提供を目的として、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂、層状珪酸塩、及びヒンダードアミン系化合物がそれぞれ所定量配合されてなる難燃性樹脂組成物が開示されている。
特開2003−26938号公報
本発明者らは、高い難燃性能を有することが期待される難燃剤として、特許文献1の明細書の段落[0053]に開示されたヒンダードアミン系化合物を、ポリプロピレン樹脂に配合した難燃性樹脂組成物としての難燃性マスターバッチを検討した。その結果、難燃性樹脂組成物の成分の溶融混練時やその成分を混練して得られた難燃性樹脂組成物の成形加工時において、不快な臭気が発生することに気が付いた。不快な臭気が発生した原因は、ヒンダードアミン系化合物が熱分解したことによるものと考えられる。
一方、一般的にヒンダードアミンは、光安定剤(ヒンダードアミン光安定剤;HALS)として広く使用されている。光安定剤として使用する場合には、その使用量は、通常、難燃剤として使用する場合の量よりも少ないため、樹脂組成物から成形された成形品において臭気が問題となることはほとんどないと考えられる。しかしながら、ヒンダードアミン系化合物を難燃剤として、すなわち、難燃性の向上を目的として使用する場合には、上述の不快な臭気が発生することが懸念される。特に、難燃性を有する製品を成形する際に作業性が良い点で好適に使用され得る難燃性マスターバッチを製造する場合、難燃性マスターバッチは、通常、製品に含有させる難燃剤の量よりも高濃度に難燃剤を含有するため、上述の不快な臭気がより発生し易い状況となる。
難燃性樹脂組成物の成分の溶融混練時や当該組成物の成形加工時において不快な臭気が発生すると、当該組成物から成形される製品にも臭気が残る可能性があると考えられる。そのため、そのような難燃性樹脂組成物は、屋内や車両内装材等の密閉空間で使用される用途に採用し難くなる。
そこで本発明は、ポリオレフィン系樹脂に難燃性を付与する難燃剤としてヒンダードアミン系化合物を用いながら、溶融混練時や成形加工時等の製造時において不快な臭気が発生し難い難燃性樹脂組成物を提供しようとするものである。
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂と、下記一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物と、を含有する難燃性樹脂組成物が提供される。
Figure 0006721458
(前記一般式(1)中、R1はポリオレフィンワックスに由来するアルキル基を表し、(*1)及び(*2)は結合手を表す。)
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂に難燃性を付与する難燃剤としてヒンダードアミン系化合物を用いながら、溶融混練時や成形加工時等の製造時において不快な臭気が発生し難い難燃性樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
<難燃性樹脂組成物>
本発明の一実施形態の難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、下記一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物とを含有する。
Figure 0006721458
一般式(1)中、R1はポリオレフィンワックスに由来するアルキル基を表し、(*1)及び(*2)は結合手を表す。
(ヒンダードアミン系化合物)
まず、一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物について、本発明における前述の目的の観点からの好適例等を説明する。
ヒンダードアミン系化合物は、その一分子中に、一般式(1)で表される構造を1又は2以上有していてもよい。ヒンダードアミン系化合物が、一般式(1)で表される構造を2以上有する場合、一般式(1)中の(*1)及び(*2)で表される結合手に結合する原子又は基を介して、もう一つ以上の一般式(1)で表される構造が結合されていてもよい。
一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物は、ピペリジン環状骨格における窒素原子(N)が、酸素原子(O)を介して、ポリオレフィンワックスに由来するアルキル基(R1)に結合した、いわゆるNO−R(ポリオレフィンワックス)型のヒンダードアミン系化合物である。このヒンダードアミン系化合物は、ポリオレフィンワックスに由来するアルキル基を有することで、熱的安定性が高く、また、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好となり、難燃性樹脂組成物から得られる成形品においてブリードアウトし難くなる。この特定の構造を有するヒンダードアミン系化合物を用いることで、そのヒンダードアミン系化合物とポリオレフィン系樹脂とを溶融混練する際にも、それらを含有する難燃性樹脂組成物を成形加工する際にも、不快な臭気が発生し難くなる。
ヒンダードアミン系化合物におけるピペリジン環状骨格の4位の炭素原子に結合される原子又は基は特に限定されず、一般式(1)において結合手(*1)及び(*2)で表される。(*1)及び(*2)で表される結合手は、それぞれの単結合であってもよく、一緒に二重結合を形成してもよい。(*1)及び(*2)で表される結合手が、一緒に二重結合を形成する場合、その結合手によって結合される原子又は基としては、例えば、(C)=O、及び(C)=NR31(各(C)は一般式(1)中のピペリジン環状骨格の4位の炭素原子を表し、R31は後記R32〜34と同義である。)を挙げることができる。(*1)及び(*2)で表される結合手が、それぞれ単結合である場合、その結合手によって結合される好ましい原子又は基の例について、下記一般式(2)を用いて説明する。
Figure 0006721458
一般式(2)中、R1は一般式(1)中のR1と同義である。R21及びR22は、それぞれ独立に、H、OH、OR32、若しくはNR3334を表すか、又はR21及びR22は、それらが結合している炭素原子、並びにR21とR22との間の他の1〜4個の原子とともに4〜7員の複素環を形成することを表す。前述のR31、並びにR32、R33、及びR34は、特に限定されず、任意の有機基を表し、規定するとすれば、水素、又は総計で1〜500個の炭素原子及び0〜200個のヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、又はハロゲン原子)を有する有機基を表す。ヒンダードアミン系化合物は、一般式(2)中のR21がHであり、R22がOR32である一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物は、下記一般式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。
Figure 0006721458
一般式(3)中、R1は一般式(1)中のR1と同義であり、nは1〜4の整数を表す。R4は、n=1のとき、H又は置換されていてもよいアシル基を表し、n=2〜4のとき、一般式(3)中の括弧内で示されるn個の基が結合する、置換されていてもよい2〜4価のアシル基を表す。nは1又は2であることが好ましく、その場合の1価又は2価のアシル基の炭素原子数は20以下であることが好ましい。
1価のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、及びオクタデカノイル基等の飽和脂肪族アシル基;アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、及びオレオイル基等の不飽和脂肪族アシル基;並びにベンゾイル基、及びナフトイル基等の芳香族アシル基等を挙げることができる。
2価のアシル基としては、例えば、オキサリル基、マロニル基、サクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、オクタンジオイル基、デカンジオイル基、ドデカンジオイル基、テトラデカンジオイル基、ヘキサデカンジオイル基、及びオクタデカンジオイル基等の飽和脂肪族アシル基;マレオイル基、フマロイル基、シトラコノイル基、及びメサコノイル基等の不飽和脂肪族アシル基;並びにフタロイル基、イソフタロイル基、及びテレフタロイル基等の芳香族アシル基等を挙げることができる。
一般式(3)で表されるヒンダードアミン系化合物としては、一般式(3)におけるnが1であり、R4がアシル基である化合物、すなわち、式中のピペリジン環状骨格における4位の炭素原子に、アルカノイルオキシ基が結合した化合物がより好ましい。このヒンダードアミン系化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物がさらに好ましい。
Figure 0006721458
一般式(4)中、R1は、一般式(1)中のR1と同義である。R5は、置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。R5で表される置換されていてもよいアルキル基の炭素原子数は、5〜20であることが好ましく、10〜20であることがより好ましく、15〜18であることがさらに好ましい。
次に、上述の各一般式におけるR1で表されるポリオレフィンワックスに由来するアルキル基について、本発明における前述の目的の観点からの好適例を説明する。
1で表されるポリオレフィンワックスに由来するアルキル基の炭素原子数は、100〜500であることが好ましく、より好ましくは100〜300、さらに好ましくは150〜250である。R1で表されるポリオレフィンワックスに由来するアルキル基の炭素原子数が100〜500であることにより、そのヒンダードアミン系化合物とポリオレフィン系樹脂との相溶性がより良好となるとともに、溶融混練し易く、かつ、成形加工し易い難燃性樹脂組成物とすることができる。
ポリオレフィンワックスに由来するアルキル基は、直鎖状でもよく、分枝構造を有していてもよい。また、ポリオレフィンワックスに由来するアルキル基は、極性でも非極性でもよい。極性のアルキル基は、極性のポリオレフィンワックスに由来するアルキル基であり、そのような極性のポリオレフィンワックスとしては、例えば、ポリオレフィンの主鎖にグラフト結合した極性基を有するものを挙げることができる。極性基としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来する極性基を挙げることができる。ポリオレフィンワックスに由来するアルキル基は、分枝構造を有していることが好ましく、また、非極性であることが好ましい。
非極性のポリオレフィンワックスは、例えば、エチレン等のオレフィンモノマーの重合により、又は分枝状若しくは非分枝状のポリオレフィンの熱分解により製造され得る。非極性のポリオレフィンワックスとしては、例えば、エチレンやプロピレンのホモポリマー又はコポリマーのワックスを挙げることができる。非極性のポリオレフィンワックスとしては、エチレン若しくはプロピレンのホモポリマー、又はエチレンとプロピレンとのコポリマーが好ましく、より好ましくはポリエチレンワックスであり、さらに好ましくは分枝構造を有するポリエチレンワックス(分岐型ポリエチレンワックス)である。また、極性のポリオレフィンワックスは、例えば、エチレン等のオレフィンモノマーと、前述のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体等の極性モノマーとの共重合により製造され得る。
一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物の平均分子量は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が向上するため、2000〜7000であることが好ましく、2000〜4000であることがより好ましく、2500〜3500であることがさらに好ましい。この平均分子量は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOFMS)により測定することができる。また、ヒンダードアミン系化合物の分解開始温度は240℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。この分解開始温度は、示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物は、例えば、下記一般式(5−1)で表される構造を有する化合物(N−オキシルアミン系化合物)の少なくとも1種と、下記一般式(5−2)で表される化合物(ポリオレフィンワックス)の少なくとも1種とを反応させることで得ることができる。
Figure 0006721458
一般式(5−1)中の(*1)及び(*2)、並びに一般式(5−2)中のR1は、一般式(1)中のそれらと同義である。また、一般式(5−1)中の(*1)及び(*2)で表される結合手に結合する原子又は基の好ましい態様、及び一般式(5−2)中のR1で表されるアルキル基の好ましい態様も、上述の通りである。
一般式(5−1)で表される構造を有するN−オキシルアミン系化合物と、一般式(5−2)で表されるポリオレフィンワックスとの反応は、例えば、ヒドロペルオキシド及び触媒としての金属化合物の存在下で生じさせることができる。ヒドロペルオキシドとしては、例えば、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、及びクメンヒドロペルオキシド等を挙げることができる。触媒となる金属化合物としては、例えば、三酸化モリブデン、バナジルアセチルアセトネート、コバルトカルボニル等を挙げることができる。
また、上記N−オキシルアミン系化合物を上記ポリオレフィンワックスに添加し、得られた混合物に放射線照射する方法によっても、上記N−オキシルアミン系化合物と上記ポリオレフィンワックスとを反応させることが可能である。さらに、上記ポリオレフィンワックスに放射線照射した後、上記N−オキシルアミン系化合物を添加し、混合する方法によっても、上記N−オキシルアミン系化合物と上記ポリオレフィンワックスとを反応させることが可能である。これらの方法で用いる放射線としては、γ線、及び電子線等を挙げることができる。
(ポリオレフィン系樹脂)
難燃性樹脂組成物には、上述のヒンダードアミン系化合物とともに、ポリオレフィン系樹脂を含有させる。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体を単量体成分の主成分として重合された単独重合体又は共重合体である。ここで、樹脂(重合体)を構成する主成分とは、重合体を構成する全単量体成分中、50質量%以上である成分をいう。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体を全単量体成分中、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%含んでなる単独重合体又は共重合体である。
オレフィン系共重合体には、オレフィン系単量体と他のオレフィン系単量体との共重合体、又はオレフィン系単量体とオレフィン系単量体に共重合可能な他の単量体との共重合体が含まれる。ポリオレフィン系樹脂における前記他の単量体の含有量は、全単量体成分中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは0〜20質量%である。
オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン及びプロピレン等のオレフィン、並びに1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセン−1等のα−オレフィン(例えば炭素原子数2〜12のα−オレフィン)等を挙げることができる。オレフィン系単量体は、ポリオレフィン系樹脂が重合される際、1種単独で用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
オレフィン系単量体に共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロペンテン及びノルボルネン等の環状オレフィン、並びに1,4−ヘキサジエン及び5−エチリデン−2−ノルボルネン等のジエン等を挙げることができる。前記他の単量体は、ポリオレフィン系樹脂が重合される際、1種単独で用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
ポリオレフィン系樹脂の好適な具体例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のプロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂;ポリブテン;並びにポリペンテン等を挙げることができる。難燃性樹脂組成物は、1種又は2種以上のポリオレフィン系樹脂を含有してもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂におけるプロピレンに由来する構造の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチックのいずれでもよい。ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンがさらに好ましい。
(その他の難燃剤)
本発明の一実施形態の難燃性樹脂組成物は、前述のヒンダードアミン系化合物以外に、さらにその他の難燃剤を含有してもよい。その他の難燃剤としては、ホスファゼン化合物及び芳香族縮合リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の難燃剤が好ましい。前述のヒンダードアミン系化合物とともに、ホスファゼン化合物及び芳香族縮合リン酸エステルの少なくとも一方を難燃性樹脂組成物に含有させることで、さらなる難燃性の向上に寄与することができる。
前述のヒンダードアミン系化合物による難燃化は、ラジカルトラップ効果により、ポリマーの燃焼時に発生する活性OHラジカルが安定化することによる気相における難燃機構と考えられる。一方、ホスファゼン化合物や芳香族縮合リン酸エステルは、不燃性のチャー(ポリマーの燃焼によって形成される炭化層)の形成による固相における難燃機構と考えられる。このように、難燃機構の異なる難燃剤を併用することによって、難燃効果をさらに高められると考えられる。
ホスファゼン化合物は、P=N結合を有する化合物であり、3価のリンを含むホスファゼン化合物及び5価のリンを含むホスファゼン化合物がある。これらのうち、5価のリンを含むホスファゼン化合物が好ましい。
好適なホスファゼン化合物としては、複数の−P=N結合が互いに環状に結合したシクロホスファゼン化合物、及び複数の−P=N結合が互いに一次元鎖状に結合した鎖状ホスファゼン化合物を挙げることができる。難燃性樹脂組成物には、ホスファゼン化合物の1種又は2種以上を用いることができる。ホスファゼン化合物としては、難燃性を付与する対象となる樹脂の難燃性を効果的に高められることから、下記一般式(6)で表されるシクロホスファゼン化合物が好ましい。
Figure 0006721458
一般式(6)中、aは3〜25の整数を表し、R61及びR62は、それぞれ独立に、アリール基又はアルキルアリール基を表す。
一般式(6)中、R61及びR62で表されるアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、及びナフチル基等の炭素原子数6〜20のアリール基が好ましく、炭素原子数6〜10のアリール基がより好ましい。一般式(6)中、R61及びR62で表されるアルキルアリール基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数6〜20のアラルキル基が好ましく、炭素原子数7〜10のアラルキル基がより好ましく、ベンジル基がさらに好ましい。一般式(6)中のaは、3〜8の整数であることが好ましく、3〜5の整数であることがより好ましい。
一般式(6)中のR61及びR62はいずれも、アリール基であることがより好ましく、フェニル基であることがさらに好ましい。一般式(6)で表されるシクロホスファゼン化合物としては、R61及びR62がいずれもフェニル基である、フェノキシシクロホスファゼンがさらに好ましい。そのフェノキシシクロホスファゼンの中でも、一般式(6)中のaが3であるヘキサフェノキシシクロトリホスファゼンが特に好ましい。
本発明の一実施形態の難燃性樹脂組成物には、一般式(6)中のaが異なるシクロホスファゼン化合物の混合物を用いてもよい。その混合物である場合、一般式(6)中のaが3であるシクロトリホスファゼン化合物が、他のシクロホスファゼン化合物よりも多く含有されている混合物が好ましい。
芳香族縮合リン酸エステルは、その分子中にハロゲン原子を含んでいてもよいが、ハロゲン原子を含んでいない非ハロゲン系芳香族縮合リン酸エステルが好ましい。好適な芳香族縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、及びビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等を挙げることができる。芳香族縮合リン酸エステルの1種又は2種以上を用いることができる。
芳香族縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業社製の商品名「PX−200」、「CR−733S」及び[CR−741]、ADEKA社製の商品名「アデカスタブ FP−600」、並びにICP JAPAN社製の商品名「ファイロールフレックスRDP」等を挙げることができる。
難燃性樹脂組成物が前述のホスファゼン化合物を含有する場合、難燃性樹脂組成物は、さらにシリカ及びタルクの少なくともいずれかを含有することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂とホスファゼン化合物を溶融混練すると、ホスファゼン化合物がせん断等を受けると固まりやすい性質を有することから、溶融物が混練装置のスクリュー等の部品に固着して巻き付き、操業性が低下する場合がある。この問題は、難燃性樹脂組成物を難燃性マスターバッチとして調製する場合等のように、ホスファゼン化合物をより多く含有させる際に特に生じ得る。これに対して、難燃性樹脂組成物にシリカ及び/又はタルクを含有させることで、各成分を溶融混練する際に、溶融物が混練装置のスクリュー等に固着し難くなり、操業性が低下し難くなる。シリカ及び/又はタルクは、ホスファゼン化合物の周囲を取り囲むものと考えられ、これにより、ホスファゼン化合物の固まりやすい性質に対して作用し、溶融物のスクリュー等への固着を抑制できるものと考えられる。この効果は、シリカの方がタルクに比べて少量でも得られやすいことから、シリカを用いることがより好ましい。
シリカ及びタルクとしては、JIS K5101に準じて測定される吸油量が100〜400mL/100gであるものが好ましい。この範囲の吸油量をもつシリカ及び/又はタルクを用いることにより、少量のシリカ及び/又はタルクでも前述の溶融物のスクリュー等への固着を抑制できる。シリカ及び/又はタルクの含有量を少なくすることは、ペレット状等の形態に形成した難燃性樹脂組成物やその成形体の表面のザラツキ感及び荒れの発生の抑制に寄与できることから好ましい。また、シリカ及び/又はタルクの含有量を少なくすることは、難燃性樹脂組成物を紡糸して繊維状の成形体とする場合における糸切れ(繊維状樹脂が切れる事態)の発生を抑えられることから好ましい。これらの観点から、シリカ及びタルクの吸油量は、120mL/100g以上であることが好ましく、より好ましくは150mL/100g以上、さらに好ましくは200mL/100g以上である。ペレット状等の形態に形成した難燃性樹脂組成物やその成形体の表面のザラツキ感や荒れは、薄いフィルム状の成形体とする場合や、紡糸して繊維状の成形体とする場合等に特に発生しやすく、また、その発生は、成形体の物性の低下をもたらす。そのため、必須成分以外にホスファゼン化合物とシリカ及び/又はタルクを含有する難燃性樹脂組成物は、フィルム状又は繊維状に成形する用途として好適である。
シリカ及びタルクの平均粒子径は、0.1〜10.0μmであることが好ましい。シリカ及びタルクの平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、シリカ及びタルクの平均粒子径は、ペレット状等の形態に形成した難燃性樹脂組成物やその成形体の表面のザラツキ感や荒れの発生、並びに前記糸切れの発生を抑制する観点から、10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましく、5.0μm以下がさらに好ましい。本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定される値である。
シリカ及びタルクのBET法による比表面積は、100〜700m2/gであることが好ましく、より好ましくは200〜600m2/g、さらに好ましくは250〜500m2/gである。シリカ及びタルクの形状は、定形であっても不定形であってもよい。
(その他の成分)
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、上述した成分以外のその他の成分として、難燃助剤、機械物性等の諸特性を向上させるための充填材、及びその他の添加剤等を含有してもよい。
難燃助剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウム等の金属水酸化物を挙げることができる。充填材としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、マイカ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、硼酸マグネシウム、及び炭素繊維等を挙げることができる。その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、硬化促進剤、帯電防止剤、導電性付与剤、離型剤、潤滑剤、染料、及び顔料等を挙げることができる。これらのその他の成分の1種又は2種以上が難燃性樹脂組成物に含有されていてもよい。
(難燃性樹脂組成物の形態等)
難燃性樹脂組成物は、粉末状、顆粒状、タブレット(錠剤)状、ペレット状、フレーク状、繊維状、及び液状等の各種形態をとることができる。
難燃性樹脂組成物は、前述のポリオレフィン系樹脂を基材樹脂成分とする「難燃性マスターバッチ」として調製することもできる。難燃性マスターバッチも上述の各種形態をとることができるが、その形態は、顆粒状、タブレッド状、ペレット状、フレーク状、及び繊維状が好ましく、ペレット状がより好ましい。
難燃性マスターバッチは、難燃性を有する製品の全部又は一部を構成するための樹脂、すなわち、難燃性を付与する対象となる樹脂に、難燃性を付与するために添加されるものである。この難燃性を付与する対象となる樹脂と難燃性マスターバッチとを含有する組成物も難燃性樹脂組成物である。難燃性を付与する対象となる樹脂は、難燃性マスターバッチにおける基材樹脂成分と同様に、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、そのなかでも、難燃性マスターバッチ中の基材樹脂成分と同種のポリオレフィン系樹脂であることがより好ましい。
また、難燃性樹脂組成物は、「難燃性を有する製品の成形用の樹脂組成物」とすることができる。この場合の難燃性樹脂組成物は、前述のポリオレフィン系樹脂を、難燃性を付与する対象となる樹脂成分として含有する。ここで、「難燃性を有する製品の成形用の樹脂組成物」とは、難燃性樹脂組成物が、難燃性を有する製品の全部又は一部として成形される際にその成形にそのまま用いることが可能な組成物をいう。難燃性を有する製品の成形用の樹脂組成物は、上述の難燃性マスターバッチを使用することなく調製された難燃性樹脂組成物でもよいし、難燃性を付与する対象となる樹脂と上述の難燃性マスターバッチとを含有する難燃性樹脂組成物でもよい。
難燃性樹脂組成物中の前述のヒンダードアミン系化合物の含有量は、難燃性樹脂組成物の全質量を基準として、0.1〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜50質量%、さらに好ましくは1〜40質量%である。難燃性樹脂組成物中の前述のポリオレフィン系樹脂の含有量は、難燃性樹脂組成物の全質量を基準として、20〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜98質量%、さらに好ましくは40〜95質量%である。難燃性樹脂組成物中の成分含有量の好ましい範囲は、上述の難燃性マスターバッチの場合と、上述の難燃性を有する製品の成形用の樹脂組成物の場合とで重複する範囲はあるが異なるため、以下、それらの場合に分けて、説明する。
難燃性樹脂組成物が、上述の難燃性マスターバッチである場合、ポリオレフィン系樹脂との混合のし易さ及びマスターバッチとしての有用性の観点から、難燃性マスターバッチ中の前述のヒンダードアミン系化合物の含有量は、難燃性マスターバッチの全質量を基準として、1〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。また、難燃性マスターバッチ中の基材樹脂成分となる前述のポリオレフィン系樹脂の含有量は、20〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜90質量%、さらに好ましくは50〜85質量%である。さらに、難燃性マスターバッチが前述のホスファゼン化合物及び芳香族縮合リン酸エステルの少なくともいずれかの難燃剤を含有する場合、それらの合計の含有量は、難燃性マスターバッチの全質量を基準として、5〜50質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは5〜40質量%である。
難燃性樹脂組成物が、上述の難燃性を有する製品の成形用の樹脂組成物である場合、当該製品に良好な難燃性をもたせる観点から、前述のヒンダードアミン系化合物の含有量は、当該組成物の全質量を基準として、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また、この場合、材料費を抑える観点から、ヒンダードアミン系化合物の含有量は、当該組成物の全質量を基準として、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。また、かかる場合のポリオレフィン系樹脂の含有量は、当該難燃性樹脂組成物の全質量を基準として、40〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜98質量%である。さらに、前述のホスファゼン化合物及び芳香族縮合リン酸エステルの合計の含有量は、当該難燃性樹脂組成物の全質量を基準として、0.2〜20質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
難燃性を有する製品を成形する際に、難燃性を付与する対象となる樹脂に、前述のヒンダードアミン系化合物等の難燃剤を添加するよりも、難燃性マスターバッチを添加する方が、難燃剤等の飛散が生じ難いことや、成形に用いられる押出成形機及び射出成形機等の成形機を汚し難いこと等の作業性が良い点で好ましい。また、難燃性マスターバッチの使用により、手軽に所望の難燃性樹脂組成物を得ることができるため、安価でかつ小量生産にも対応可能な経済的利点のある難燃性樹脂組成物を得ることに寄与することができる。
(難燃性マスターバッチの製造方法)
難燃性マスターバッチは、前述のポリオレフィン系樹脂及びヒンダードアミン系化合物、並びに必要に応じて含有されていてもよいその他の難燃剤及びその他の成分を溶融混練して得ることができる。溶融混練の方法は特に限定されず、公知の溶融混練方法をとることができる。具体例を挙げると、各成分を例えばタンブラーやヘンシェルミキサーとして知られた高速ミキサー等の各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラストグラフ、単軸押出機、二軸押出機、及びニーダー等の混練装置で溶融混練する方法が挙げられる。これらの中でも、生産効率がよいことから、押出機を用いて溶融混練する製造方法がより好ましく、二軸押出機を用いる製造方法がさらに好ましい。押出機を使用して各成分を溶融混練し、混練物をストランド状に押し出した後、ストランド状に押し出した混練物をペレット状やフレーク状等の形態に加工することができる。
溶融混練の際の温度は、例えば、150〜280℃であり、使用するポリオレフィン系樹脂に応じて適宜選択される。ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂を用いる場合、溶融混練の際の温度は、180℃〜270℃が好ましく、より好ましくは190〜230℃である。
難燃性樹脂組成物をペレット状、フレーク状、及び繊維状等の形態とする場合も、上述の難燃性マスターバッチの製造方法と同様の方法で製造することができる。
<成形品>
本発明の一実施形態の難燃性樹脂組成物を用いて、成形品を作製することができる。この成形品により、難燃性を有する製品を得ることができる。難燃性樹脂組成物には、前述の難燃性マスターバッチを用いることが好ましい。成形品を製造する際には、難燃性樹脂組成物を各種成形機内で溶融させ、成形することができる。成形手法としては、成形品の形態及び用途等に応じて適宜選択でき、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、及びインフレーション成形等を挙げることできる。また、押出成形及びカレンダー成形等で得られたシート状又はフィルム状の成形品について、真空成形や圧空成形等の二次成形を行うこともできる。
本発明の一実施形態の難燃性樹脂組成物から成形される成形品としては、特に限定されず、例えば、家電製品及び自動車等の分野における電気電子部品、電装部品、外装部品、及び内装部品等、並びに各種包装資材、家庭用品、事務用品、配管、及び農業用資材等を挙げることができる。特に、前述の難燃性樹脂組成物は、難燃性の効果の観点から、フィルム状樹脂、シート状樹脂、及び繊維状樹脂等の形態に成形される用途に好適であることから、成形品は、フィルム、シート、及び繊維等がより好適である。
以上の通り、本発明の一実施形態の難燃性樹脂組成物では、ポリオレフィン系樹脂用の難燃剤として用いるヒンダードアミン系化合物として、前述の一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物を使用している。そのため、その難燃性樹脂組成物の各成分を溶融混練する際や、製品を製造するために難燃性樹脂組成物を成形加工する際に、不快な臭気が発生し難い。よって、本発明の一実施形態の難燃性樹脂組成物は、屋内や車両内装材等の密閉空間で使用される用途にも採用し易いものである。また、その難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂に効果的に難燃性を付与することができる。具体的には、難燃性樹脂組成物の使用により、JIS K7201−2:2007に規定される方法に準拠して測定される酸素指数(LOI値)が23以上である成形体を得ることが可能である。
以下、本発明を試験例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の試験例に限定されるものではない。
<使用材料>
本試験例では、難燃剤として以下の難燃剤A〜Dを使用し、ポリオレフィン系樹脂として以下のポリプロピレン樹脂A及びBを使用した。
(難燃剤A)
難燃剤Aとして、下記式(7)(式中のmは15〜18の整数を表す)で表されるヒンダードアミン系化合物(クラリアントケミカルズ社製、商品名「Hostavin Now」)を用いた。このヒンダードアミン系化合物は、[4−(アルカノイル(C15〜18)オキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イルオキシルとポリエチレンワックスの反応生成物]である。なお、下記式(7)において、ポリエチレンワックスに由来する長鎖分岐型アルキル基の炭素原子数は省略して表されている。
このNO−ポリエチレンワックス型のヒンダードアミン系化合物について、示差熱分析計(TG−DSC;リガク社製、商品名「TG−8110」)により、室温(25℃)から昇温速度10℃/分の条件で加熱していき、熱的特性を分析した。その結果、上記ヒンダードアミン系化合物の分解開始温度は約260℃であった。また、上記ヒンダーアミン系化合物について、MALDI−TOFMS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計;Bruker社製、商品名「autoflex speed」)により、そのマトリックス素材としてDCTB(trans−2−[3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチル−2−プロペニリデン]マロノニトリル)を用いて平均分子量を測定した。その結果、上記ヒンダードアミン系化合物の平均分子量は2500〜3400の範囲内であった。
Figure 0006721458
(難燃剤B)
難燃剤Bとして、芳香族縮合リン酸エステルである1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業製、商品名「PX−200」)を用いた。
(難燃剤C)
難燃剤Cとして、前述の一般式(6)で表され、当該式中のR61及びR62がいずれもフェニル基であり、かつ、aが3であるヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(大塚化学社製、商品名「SPS−100」)を用いた。
(難燃剤D)
難燃剤Dとして、前述の特許文献1に開示されている、下記式(8)及び(9)で表されるヒンダードアミン系化合物(BASF社製、商品名「Flamestab NOR116」、分子量:2261g/mol)を用いた。下記式(8)中のXは、下記式(9)で表される基であり、下記式(9)中の(*)は、下記式(8)中のXが結合しているNとの結合を表す。このヒンダードアミン系化合物は、上記示差熱分析計(TG−DSC)により、前述の難燃剤Aで述べた条件と同様の条件で測定された分解開始温度が約230℃であった。
Figure 0006721458
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂として、押出成形中の操業性を良くするため、ペレット状のポリプロピレン樹脂A(プライムポリマー社製、商品名「J106」)と、パウダー状のポリプロピレン樹脂B(プライムポリマー社製、商品名「J105P」)とを1:1(質量比)で混合したものを用いた。
<マスターバッチの作製>
(試験例1)
ポリプロピレン樹脂80質量部、及び難燃剤A20質量部を配合し、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。混合物を、二軸押出機を用いて温度190〜210℃で混練し、混練物をストランド状に押し出した。ストランド状に押し出された混練物を水冷した後、ペレタイザーを用いてペレット状に加工したマスターバッチ1を作製した。
(試験例2)
マスターバッチの配合を、ポリプロピレン樹脂80質量部、難燃剤A10質量部、及び難燃剤B10質量部に変更した以外は、試験例1と同様にして、ペレット状に加工したマスターバッチ2を作製した。
(試験例3)
マスターバッチの配合を、ポリプロピレン樹脂75質量部、難燃剤A10質量部、難燃剤C10質量部、及び定形シリカ(水澤化学工業社製、商品名「ミズパールK−300」、平均粒子径:2.8μm、吸油量:126mL/100g、比表面積:256m2/g)5質量部に変更した以外は、試験例1と同様にして、ペレット状に加工したマスターバッチ3を作製した。
(試験例4)
マスターバッチの配合を、ポリプロピレン樹脂80質量部、及び難燃剤D20質量部に変更した以外は、試験例1と同様にして、ペレット状に加工したマスターバッチ4を作製した。
(試験例5)
マスターバッチの配合を、ポリプロピレン樹脂80質量部、難燃剤B10質量部、及び難燃剤D10質量部に変更した以外は、試験例1と同様にして、ペレット状に加工したマスターバッチ5を作製した。
(試験例6〜8)
試験例6〜8では、ヒンダードアミン系化合物を用いない場合の参考として、マスターバッチの配合を、後記表1に示す配合に変更した以外は、試験例1と同様にして、ペレット状に加工したマスターバッチ6〜8をそれぞれ作製した。
<マスターバッチの評価>
(臭気)
各マスターバッチを作製した際の不快な臭気の発生について、次の評価基準に従って評価した。
A:臭気はほとんど感じられなかった。
B:わずかに臭気の発生を感じたが、作業困難となるほどの臭気は感じられなかった。
C:はっきりと感じられる臭気が発生した。
(作業性)
各マスターバッチを作製した際に、二軸押出機のスクリューへの溶融物の固着の発生状況による、二軸押出機の操業性について、次の評価基準に従って評価した。
A:二軸押出機のスクリューに溶融物がほとんど固着することなく、二軸押出機を良好に操業できた。
B:二軸押出機のスクリューに若干の溶融物の固着が確認されたが、マスターバッチを作製することができた。
C:二軸押出機のスクリューに溶融物が固着して巻き付き、二軸押出機の操業が困難であった。
(相溶性)
各マスターバッチを作製した際に、水槽へのブリード物の発生状況により、難燃剤と樹脂との相溶性について、次の評価基準に従って評価した。
A:水槽中にブリード物がほとんど発生することなく、相溶性が良好なマスターバッチを作製できた。
B:水槽中にブリード物の発生が確認されたが、発生したブリード物は少量であったため、相溶性がまずまずのマスターバッチを作製できた。
C:水槽中に多量のブリード物の発生が確認されたため、相溶性はあまり良くないがマスターバッチを作製できた。
作製したマスターバッチ1〜8の組成(単位:質量%)と評価結果を表1に示す。
Figure 0006721458
<難燃性評価用の試験片の作製>
(試験例9〜17
試験例9〜16では、上記のマスターバッチ1〜5のそれぞれについて、製品を製造する際の組成を想定した難燃性樹脂組成物を調製した。具体的には、マスターバッチと、マスターバッチに用いたポリプロピレン樹脂と同じポリプロピレン樹脂とをドライブレンドし、マスターバッチ1〜5のそれぞれについて、試験片成形用の難燃性樹脂組成物を調製した。この際、マスターバッチ1〜3のそれぞれについては、試験片成形用の難燃性樹脂組成物中の難燃剤の含有量が、その総量で1.0質量%となる組成、及び2.0質量%となる組成に調製した。また、マスターバッチ4及び5のそれぞれについては、試験片成形用の難燃性樹脂組成物中の難燃剤の含有量が、その総量で1.0質量%となる組成に調製した。
得られた各試験片成形用の難燃性樹脂組成物を用いて、難燃性評価用の厚さ約50μmのフィルム(試験片)を作製した。フィルムの作製には、Tダイを備えた20mm単軸押出機を用い、加工温度190〜210℃の条件でフィルムを作製した。なお、試験例17では、対照試験として、難燃剤を配合せず、使用したポリプロピレン樹脂100質量%のフィルム(試験片)を作製した。
<難燃試験>
作製した各フィルムについて、燃焼性試験器(スガ試験機社製、商品名「酸素指数 燃焼性試験器 ON−1」)を用いて、JIS K7201−2:2007に規定される方法に準拠して測定される酸素指数(LOI値)を測定した。
上述の試験片成形用の難燃性樹脂組成物(難燃性評価用の試験片)の組成(単位:質量%)と難燃試験の評価結果を表2に示す。
Figure 0006721458
以上の結果より、ポリプロピレン樹脂に用いる難燃剤として、前述の一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物を使用することで、不快な臭気がほとんど発生することなく、相溶性が良い難燃性マスターバッチを作業性良く製造することができることが確認された。また、前述の一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物を使用することで、ポリプロピレン樹脂の難燃性を有効に高められることが確認された。

Claims (9)

  1. ポリオレフィン系樹脂と、
    下記一般式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン系化合物と、
    ホスファゼン化合物及び芳香族縮合リン酸エステルからなる群から選ばれる難燃剤として、少なくとも、前記ホスファゼン化合物の1種であるヘキサフェノキシシクロトリホスファゼンと、
    シリカと、を含有する難燃性マスターバッチであって、
    前記難燃性マスターバッチの全質量を基準として、前記ポリオレフィン系樹脂の含有量は30〜90質量%であり、前記ヒンダードアミン系化合物の含有量は5〜50質量%であり、前記ホスファゼン化合物及び芳香族縮合リン酸エステルの合計の含有量は5〜50質量%であ、難燃性マスターバッチ。
    Figure 0006721458
    (前記一般式(1)中、Rはポリオレフィンワックスに由来するアルキル基を表し、(*1)及び(*2)は結合手を表す。)
  2. 前記ヒンダードアミン系化合物が、下記一般式(3)で表される化合物を含む請求項1に記載の難燃性マスターバッチ。
    Figure 0006721458
    (前記一般式(3)中、Rは前記一般式(1)中のRと同義であり、nは1〜4の整数を表し、Rは、n=1のとき、H又は置換されていてもよいアシル基を表し、n=2〜4のとき、前記一般式(3)中の括弧内で示されるn個の基が結合する、置換されていてもよい2〜4価のアシル基を表す。)
  3. 前記ヒンダードアミン系化合物が、下記一般式(4)で表される化合物を含む請求項1又は2に記載の難燃性マスターバッチ。
    Figure 0006721458
    (前記一般式(4)中、Rは、前記一般式(1)中のRと同義であり、Rは、置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。)
  4. 前記Rで表されるポリオレフィンワックスに由来するアルキル基の炭素原子数が、100〜500である請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性マスターバッチ。
  5. 前記Rで表されるポリオレフィンワックスに由来するアルキル基が、分枝構造を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性マスターバッチ。
  6. 前記Rで表されるポリオレフィンワックスに由来するアルキル基が、ポリエチレンワックスに由来するアルキル基である請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性マスターバッチ。
  7. 難燃性を有する製品の成形用の難燃性樹脂組成物であって、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性マスターバッチと、
    難燃性を付与する対象となる樹脂成分としてのポリオレフィン系樹脂と、を含有する、
    難燃性樹脂組成物。
  8. 繊維状樹脂の成形に用いられる請求項7に記載の難燃性樹脂組成物。
  9. 請求項7又は8に記載の難燃性樹脂組成物を用いて作製された成形品。
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