JP6769719B2 - オゾン殺菌方法 - Google Patents
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Description
殺菌可能な媒体としては、オゾン(O3)ガスも知られている。
そこで、本発明は、オゾンガスを使用し、殺菌が必要な環境を対象として、実用化に足りる殺菌能力を得ることのできる殺菌方法および殺菌装置を提供することを目的とする。
以下で説明する各実施形態では、本発明の殺菌装置を備えた無菌充填機を例に取り、説明する。
〔第1実施形態〕
まず、図1を参照し、無菌充填機1の構成を簡単に説明する。
無菌充填機1は、図示しない容器を搬送しながら洗浄・殺菌し、清涼飲料等の飲料を容器に充填した後、容器の口部を閉塞する。
無菌充填機1による処理は、大気に対して陽圧としたチャンバ2内で行われる。
無菌充填機1は、チャンバ2と、チャンバ2内に配置された殺菌装置15と、充填装置11と、キャッパ12とを備えている。殺菌装置15,充填装置11およびキャッパ12と、コンベヤ13,14および複数の回転体16等とを含んで、容器の搬送装置が構成されている。チャンバ2内は、図示しない隔壁により、殺菌装置15が配置される第1区画と、充填装置11およびキャッパ12が配置される第2区画とに区分されており、異物混入防止のため、第1区画内の圧力に対して第2区画内の圧力を高くしている。
なお、搬送装置の構成は、図示したものに限らず、適宜に構成することができる。
無菌充填機1は、環境1Eつまりチャンバ2の内側を殺菌するオゾン殺菌装置10を含んで構成されている。環境1Eは、オゾン殺菌装置10により、所定の頻度で殺菌される。
オゾン殺菌装置10による殺菌対象は、例えば、殺菌装置15、充填装置11、キャッパ12、コンベヤ13,14、回転体16等を構成する部材や、チャンバ2の内壁2W、チャンバ2内のフロア、そしてチャンバ2の内部空間である。つまり、チャンバ2内に配置される部材や、チャンバ2自体、そしてチャンバ2内の気体を含め、チャンバ2の内部の全体が、オゾン殺菌装置10により殺菌される。そうして無菌化されたチャンバ2内で、無菌充填機1は、容器を搬送しつつ、例えば、薬剤や熱水を用いて、あるいはオゾンガスを用いて容器を殺菌し、清浄な容器の内部に飲料(内容物)を充填する。
以下、チャンバ2内の環境1Eを殺菌するオゾン殺菌装置10の構成について説明する。
オゾン殺菌装置10(図1)は、上述したチャンバ2と、オゾンガス供給装置3と、水ミスト供給装置4(水散布装置)と、循環ファン5と、温水散布装置6とを備えている。
オゾンガス生成器31は、酸素(O2)ガスを原料として、酸素ガスの一部がオゾン(O3)ガスに置換されたガスを生成する。原料ガスとして、酸素を含む他のガス、例えば空気を用いることも可能である。
ステップ(1) O2+e→2O+e
ステップ(2) O+O2+M→O3+M
また、必要に応じてPSA法(Pressure Swing Adsorption: 圧力スイング法)によるオゾン濃縮が併用されることもある。
公知の適宜な方法により水をミスト化することができる。例えば、ポンプや圧縮空気等により水を圧送してノズル41からミストを噴霧することができる。あるいは、高速の空気流を利用して水を吸い上げて霧状にするジェット式や、超音波を水に照射することで水を霧状にする超音波式によっても、ノズル41から水のミストを噴霧することができる。
環境1Eの殺菌にオゾンガスと共に用いる水としては、一般の上水道からの常温の水を用いることができる。水は、安価であり、排液処理も必要ない。
水を介した反応に伴って強い殺菌力が得られるので、水自体に殺菌力は必要ないが、加温した水、あるいは過酸化水素(H2O2)や過酢酸(CH3COOOH)等の薬剤を加えた酸性水を用いることも、殺菌能力を上積みする等の目的から許容される。水を加温すると、反応が促進されて殺菌力が向上する。酸性水には、オゾン濃度を安定させる効果がある。
本明細書において、「水」には、温水や、酸性水も含まれる。
ここで、「循環」は、自然対流を含まず、強制的な流れをチャンバ2内の雰囲気2Aの全体に与えてチャンバ2内を循環させることをいうものとする。
循環ファン5として、遠心ファンや軸流ファン等の適宜な送風機、あるいはブロワを用いることができる。
また、無菌エアを無菌チャンバ2内に供給するためにチャンバ2の天井等に設置されているファンフィルターユニットの外気取り込み経路をダンパー等で閉じ、内気循環に変更することで、循環ファン5に代替することも可能である。
なお、温水散布装置6が、スプリンクラ64に代えて、チャンバ2内に温水を噴射するノズルを備えて構成されていてもよい。
まず、図2(a)に示すように、オゾンガス供給装置3により、チャンバ2内にオゾンガスを吹き込み、チャンバ2内にオゾンガスを充満させる(オゾンガス供給ステップS11)。チャンバ2内の雰囲気2Aのオゾンガス濃度が、体積%濃度で0.5%以上となるまで、チャンバ2内にオゾンガスを供給することが好ましい。環境1Eの殺菌に許容される殺菌時間も考慮する必要があるが、殺菌能力を高める観点からは、できるだけ高い濃度のオゾンガスをチャンバ2内に充満させることが好ましい。
散布される水の量は、より好ましくは、0.5〜2.0L/m2である。例示した水の量は、チャンバ2内に散布される水の合計の量であり、2つの水ミスト供給装置4が用いられる場合は、各水ミスト供給装置4により、例えば、半量ずつ散布される。
ここでいう「気液界面」は、例えば、チャンバ2の内壁2Wに付着した水と、周囲のオゾンガスとの界面に相当する。また、循環流FCに巻き込まれながら移動する水ミストの表面に存在する気液界面にも相当する。本明細書において、「気液界面」は、これらの気液界面を包含している。
オゾンガスと水とが接触している気液界面において、オゾンガスが水を介して有機物と反応し、その反応時に生成されるヒドロキシラジカル等のラジカルが発現する酸化力によって有機物が分解される。この酸化力は強力であって、芽胞菌等の殻を持つ菌をも、その殻を破壊して死滅させることができる。
本実施形態では、オゾンガスおよび水ミストが存在するチャンバ2内の雰囲気2Aを所定時間だけ循環させることに伴う殺菌作用により、チャンバ2内の全体に亘り十分に殺菌することができる。
続いて、図2(c)に示すように、温水の散布により殺菌する第2殺菌ステップS2(温水散布ステップ)を行う。この第2殺菌ステップS2では、主としてカビを殺菌対象としている。
第2殺菌ステップS2では、温水散布装置6により、60℃以上の温水をスプリンクラ64を通じてチャンバ2の天井から下方に向けて散布する。温水は、スプリンクラ64の複数のノズル64Aから、チャンバ2内の全体に散布される。
カビを含め、第1殺菌ステップS1の後に残存していた菌は、温水の熱により死滅する。
殺菌能力をより十分に確保するため、65℃以上の温水をノズル64Aから10秒間以上噴射することで、その間、チャンバ2内の全体を60℃以上に保つことが好ましい。
第2殺菌ステップS2では、循環ファン5を停止していてもよいが、循環ファン5を作動させていると、チャンバ2内の雰囲気温度の上昇を促進させることができる。
温水散布による殺菌およびリンスを確実に行う観点から、例えば、50〜200L/m2程度の温水を散布することが好ましい。
図3(a)〜(c)は、それぞれ、チャンバ2内の部材の表面7に付着したり雰囲気2A中に存在する水W1,W2と、チャンバ2内の雰囲気2Aに含まれるオゾン(O3)ガスとの或る一瞬を捉えたものである。部材の表面7に、菌(有機物)が存在するものとして説明する。
オゾンガスと水W1とが接触している気液界面100(図3(a))において、オゾンガスが水W1を介して有機物と反応する。そのとき、ヒドロキシラジカル等のラジカルを放出し、オゾンガスおよび有機物の分解を伴いながら、反応が進行する。
しかし、本実施形態では、図3(a)および(b)に示すように、チャンバ2内の循環流FCにより、反応後のガス(O2)がその場から流れ去り、それに伴い、新たにオゾンガス(O3)が流入する。つまり、有機物との反応によりオゾンガスが消費されても、循環流FCにより、次から次へとオゾンガスが供給されるので、有機物を確実に分解することができる。
上記のように循環流FCに巻き込まれつつ流動する水ミストW2により、殺菌効果を高めることができる。殺菌効果を高める観点より、水散布ステップS12の開始直後から循環ファン5を作動させて循環流FCを形成することが好ましい。
水ミストW2が互いに分離した状態で部材の表面7に存在するとき、つまり、水散布ステップS12が開始された直後は、それ以降と比べてチャンバ2内のオゾンガスの濃度が高い。オゾンガスの濃度が高い、水散布ステップS12の開始直後において殺菌効果が高いことは、殺菌能力向上への貢献度が高い。
したがって、チャンバ2内のオゾンガスの濃度が低いとしても、所定の殺菌時間内に十分に殺菌することができる。
本実施形態の殺菌方法に用いる水およびオゾンガスは、薬剤や熱水等を用いる場合と比べて、処理や装置のコストが安価であり、容器に匂いが残留しない。
次に、図4を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
以下、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。
第2実施形態では、オゾンガスおよび水を用いる殺菌方法による殺菌能力をさらに高めるため、加湿されたオゾンガスを用いる。
オゾンガス供給装置3(湿潤オゾンガス供給装置)は、オゾンガス生成器31と、生成されたオゾンガスを加湿する加湿部33と、供給部32とを備えている。
加湿部33は、オゾンガス生成器31により生成されたオゾンガスに水を含ませることで、意図的に湿度が高められた湿潤オゾンガスを得る。湿潤オゾンガスの湿度は、例えば、90%以上である。湿潤オゾンガスが供給部32によりチャンバ2内に供給される。
まず、オゾンガス供給装置3により、湿潤オゾンガスをチャンバ2内に供給する(湿潤オゾンガス供給ステップS31)。第1実施形態と同様に、オゾンガス濃度が0.5%以上となるように湿潤オゾンガスをチャンバ2内に充満させることが好ましい。また、循環ファン5を作動させ、オゾンガス濃度の均一化を図ることも好ましい。
チャンバ2内には、水ミスト供給装置4により散布される水に加えて、湿潤オゾンガス中の水分も存在するので、チャンバ2内の雰囲気2A中の水分量が第1実施形態におけるチャンバ2内の水分量よりも多い。湿潤オゾンガス中に含まれる水蒸気とオゾンガスとに有機物が接触することにより、殺菌が行われる。チャンバ2内の循環流FCにおいて、湿潤オゾンガス中の水蒸気とオゾンガスとが相対的に流動することで、水蒸気の周囲のオゾンガスが次々に入れ替わるので、オゾンガスと有機物との反応が停滞せずに継続して行われる。
第2実施形態によれば、湿潤オゾンガスに含まれる水蒸気の分だけ、殺菌能力を高めることができる。
上記の表より、オゾンガスを加湿すると、殺菌性能(能力)が向上する。
したがって、第2実施形態では、第2殺菌ステップS2としての温水散布が必要ない。そのため、無菌水や加温に要するコストを抑えることができる。また、温水散布が必要ない分、殺菌時間を短縮したり、あるいは、省略した温水散布の時間の分だけ、オゾンガスおよび水を用いる殺菌ステップに時間を掛けて、殺菌能力を高めることができる。
図6は、本発明の第3実施形態を示している。
第3実施形態では、チャンバ2内に湿潤オゾンガスを供給する。チャンバ2内には水を散布しないことが第2実施形態とは相違する。
第3実施形態のオゾン殺菌装置10は、図6に示すように、チャンバ2と、加湿機能を有するオゾンガス供給装置3と、循環ファン5とを備えている。
チャンバ2内に湿潤オゾンガスを充満させ、湿潤オゾンガスが存在するチャンバ2内の雰囲気2Aに循環流FCを形成する。そうすることで、湿潤オゾンガスに含まれる水分に対して、その水分の周囲のオゾンガスが相対的に流動するので、水を介したオゾンガスと有機物との反応が停滞せずに進行する。循環流FCにより湿潤オゾンガスがチャンバ2内の隅々にまで行き渡るので、チャンバ2の内部の全体に亘り、湿潤オゾンガスが接触した部材の表面等が殺菌される。
図7に示す例のように、チャンバ2に接続されたダクト8の一端から、ダクト8内に配置されたファン9によってチャンバ2内のガスの一部をダクト8内に吸い出し、ダクト8の他端からチャンバ2内にガスを送り込むことにより、チャンバ2内の雰囲気が循環するように構成することもできる。この場合、ダクト8およびファン9が循環手段に相当する。
1E 環境
2 チャンバ
2A 雰囲気
2W 内壁
3 オゾンガス供給装置
4 水ミスト供給装置(水散布装置)
5 循環ファン(循環手段)
6 温水散布装置
7 表面
8 ダクト
9 ファン
10 オゾン殺菌装置
11 充填装置
12 キャッパ
13,14 コンベヤ
15 殺菌装置
16 回転体
31 オゾンガス生成器
32 供給部
33 加湿部
41 ノズル
61 無菌水供給源
62 ヒータ
63 ポンプ
64 スプリンクラ
64A ノズル
100 気液界面
FC 循環流
S1 第1殺菌ステップ
S2 第2殺菌ステップ
S11 オゾンガス供給ステップ
S12 水散布ステップ
S13 循環ステップ
S31 湿潤オゾンガス供給ステップ
W1 水
W2 水ミスト
Claims (3)
- 殺菌が必要な環境を区画するチャンバの内側にオゾンガスを供給するオゾンガス供給ステップと、
前記オゾンガス供給ステップの開始に続いて、前記チャンバの内側に水を散布する水散布ステップと、
前記オゾンガスおよび前記水のミストが存在する前記チャンバ内の雰囲気を、ファンを用いて循環させる循環ステップと、を含み、
前記水散布ステップが開始された直後から、前記ファンを作動させて前記循環ステップを行うことで、前記水散布ステップおよび前記循環ステップを並行して行い、
前記循環ステップを含む第1殺菌ステップと、60℃以上に加温された温水を前記チャンバの内側に散布する第2殺菌ステップと、を行うことで、殺菌を行い、
前記第2殺菌ステップにおいて、前記ファンを作動させる、
ことを特徴とするオゾン殺菌方法。 - 前記オゾンガス供給ステップでは、
前記オゾンガスを加湿して得られた湿潤オゾンガスを前記チャンバの内側に供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載のオゾン殺菌方法。 - 前記オゾンガス供給ステップでは、
前記チャンバ内の雰囲気のオゾンガス濃度が、体積%濃度で0.5%以上となるまで前記オゾンガスまたは前記オゾンガスを加湿して得られた湿潤オゾンガスを前記チャンバの内側に供給する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のオゾン殺菌方法。
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