JP6584994B2 - 殺菌方法および殺菌装置 - Google Patents
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Description
容器の中で、PETボトルは、プリフォームと呼ばれる試験管状の前駆体に空気を吹き込んで成形される。この成形には、主に二軸延伸ブロー成形法が用いられている。二軸延伸ブロー成形法とは、加熱したプリフォームを金型に挿入後、延伸ロッドと呼ばれる棒で垂直方向に引き伸ばしながら、加圧空気を吹き込んで円周方向に膨らませる成形法である。
PETボトルを対象とする飲料充填システムは、PETボトルの成形装置を上流側に備え、成形されたPETボトルを充填装置に供給する形態もあれば、すでに成形されたPETボトルを用意して充填装置に供給する形態もある。
無菌充填方式における殺菌としては、薬剤、例えば、過酢酸(PAA)、過酸化水素(H2O2)を含む水溶液からなる過酢酸系殺菌剤を用いることがある(例えば、特許文献1,2)。
本発明における殺菌方法は、殺菌対象領域に供給される液状の水分の中に気泡を供給して水分を撹拌するので、ヒドロキシルラジカルの生成を促進できる。その結果、本発明における殺菌方法によれば、短い時間で所望する殺菌性能を得ることができる。
一つ目の形態は、オゾンを気泡として供給するものであり、具体的には、水分の中に、オゾンガスを含む気泡を供給するというものである。
二つ目の形態は、オゾンを水分として供給するものであり、具体的には、水分として、オゾンを含むオゾン水を供給するというものである。
本発明は、一つ目の形態と二つ目の形態を組み合せた三つ目の形態を含む。つまり、三つ目の形態は、オゾンを気泡と水分の両方に含ませて供給するものであり、具体的には、水分として供給されたオゾン水の中に、オゾンガスを含む気泡を供給するというものである。
飲料用の容器を殺菌の対象物とする場合には、容器が連続的に搬送されるチャンバの内部において殺菌処理できる。
また、本発明の殺菌方法において、オゾンガスは、乾燥状態のオゾンガス又は湿潤状態のオゾンガスを用いることができる。
なお、本発明において、殺菌対象領域とは、直接的に殺菌が必要な領域だけでなく、その周囲をも含む意である。例えば、PETボトルを例にすると、内面に取り囲まれるPETボトルの内部空間が殺菌対象領域に含まれる。
本実施形態は、細菌に対するヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical,以下、OHラジカル)による殺菌機構を用いている。OHラジカルは、図1(a)に示すように、オゾンガスに含まれるオゾン(O3)が水(H2O)と反応することで生成される。
ここで、細菌の細胞は、中央のコア部に遺伝情報の機能を司る染色体があり、その外側にたんぱく質と脂質からなる柔らかい細胞膜があり、さらにその外側にたんぱく質、多糖、脂質からなる細胞壁が取り囲んだ構造となっている。
細菌に対するOHラジカルによる殺菌機構は、いわゆる活性酸素と称される分子種のなかで最も強力な酸化力を有するOHラジカルが、細菌Bにアタックし、その酸化作用により、この細胞壁を酸化破壊することを起点としている。このように、オゾンを用いた殺菌は、例えば塩素が細胞壁、細胞膜を通過して酵素を破壊する機構とは異なるものと解されている。
そこで、本発明の第1実施形態は、例えば図2に示すように、先行して供給されることでPETボトル1の中に蓄えられた水分にオゾンガスを供給し、その水分の中でオゾンガスを気泡に形成させるものである。つまり、殺菌対象領域へのオゾンの供給と、撹拌作用を生じさせるための気泡の供給と、いう二つの機能を、オゾンガスを気泡として水分の中に供給することにより実現する。それにより、殺菌対象領域に存在する細菌Bを殺菌するに際し、細菌BへのOHラジカルのアタックを促進させるために、殺菌対象領域に供給された液状の水分の中で、オゾンガスの分解によりOHラジカルの生成を行わせる。それにより、そのOHラジカルを効率良く殺菌対象物の内面に接触させる。
本実施形態では、オゾンガスから効率よくOHラジカルを生成させるため、液状の水分を先行して殺菌対象領域に供給し、次いで、すでに殺菌対象領域に供給されている液状の水分の中にオゾンガスの微細な気泡Xを供給し、水分の中でオゾンガスの分解により、OHラジカルを生成させる。
つまり、オゾン(O3)の分解は、水分の存在により、OHラジカルの生成を伴いながら促進される。そしてOHラジカルは、生成されると速やかに消失する。したがって、殺菌対象領域に供給する前にオゾンと水分とが長時間にわたって触れてしまうと、殺菌対象領域に到達するまでに生成されたOHラジカルは急速に減少し、殺菌対象領域でOHラジカルが不足してしまい、殺菌に寄与することができない。一方で、殺菌対象領域に到達するまでに、OHラジカルの生成にオゾンが消費されると、殺菌対象領域において生成されるOHラジカルの量が少なくなる。これに対し、本実施形態においては、オゾンガスと水分とを個別に殺菌対象領域に供給することで、殺菌対象領域に達してから、水分の中でOHラジカルの生成を開始させる。
次に、本実施形態に用いるオゾンガスの素性について説明する。
オゾンガスは、典型的には、酸素(O2)ガスを原料としてオゾン(O3)と酸素(O2)の混合ガスとして生成される。したがって、本実施形態におけるオゾンガスは、オゾンと酸素の混合ガスを意味する。本実施形態において、オゾンガスにおけるオゾン濃度は、5〜20体積%の範囲から選択され、好ましくは8〜15体積%とされる。なお、オゾンガスを生成する原料としては、純粋な酸素に限らず、原料として酸素を含むガス、例えば空気を用いることもできる。この場合も、オゾンガスはオゾン(O3)と酸素(O2)の混合ガスであることに変わりはない。
第1段階:O2+e→2O+e
第2段階:O+O2+M→O3+M
湿気を付与する方法は任意であり、気泡式溶解法、それぞれ生成された湿潤酸素等の湿潤ガスとオゾンガスとを混合する混合法、シャワー状に散布される水にオゾンガスを供給するシャワー法等を採用することができる。また、任意の方法でオゾン水を生成した後に、これを気化して湿潤オゾンガスを生成することもできるし、任意の方法で水蒸気を生成し、これにオゾンガスを接触させることもできる。
次に、本実施形態に用いる水分について説明する。
水分は、常温で使用してもよいし、加熱された温水として使用してもよい。温水については、殺菌対象領域の例えば耐熱性を考慮して温度を設定する必要があり、例えば、PETボトルを殺菌対象領域とする場合には、現行のPETボトルの耐熱性が70℃程度であるから、温水を用いる場合には、PETボトルに供給する水分の温度が70℃を超えないようにすることが好ましい。水分としては、任意の方法で生成した、蒸留水、精製水、超純水を用いることができる。
以下、本実施形態を飲料用の容器、例えばPETボトル1に対する具体的な適用例を、図2を参照して説明する。この例は、上流工程から連続的に搬送されるPETボトル1の内面を殺菌して、下流工程にPETボトル1を受け渡すことを前提としている。
ここで、「連続的に搬送」とは、PETボトル1が搬送される時間間隔に基づいて定められるものではない。例えば、PETボトル1が均等な時間間隔で搬送される場合だけでなく、不均等な時間間隔で搬送される場合であっても、複数のPETボトル1が全体として続けて搬送されるのであれば、本発明の連続的に搬送に該当する。
第1供給ステップとして、まず、水分及びオゾンガスをPETボトル1の胴部3の内部空間に供給するための水分供給管6を用意する。この水分供給管6を、先端からPETボトル1の口部2の開口から挿入し、PETボトル1の底の近傍にまで挿入させる。
所定量の水分を供給したならば、水分供給管6をPETボトル1から抜き取った後に、第2供給ステップに移行する。第2供給ステップにおいて、オゾンガスは、先端にノズル4が設けられたガス供給管7を用いて供給される。ノズル4は、多孔質の例えば焼結金属により構成され、通気性を備えている。
第1供給ステップ及び第2供給ステップからなる殺菌工程が終了すると、リンス工程に移行する。
リンス工程は、PETボトル1の内部に残留する水分及びオゾンガスを排出するために、PETボトル1を倒立させて、PETボトル1の内部に無菌空気を供給する。これにより、引き剥がされた細菌が浮遊しているPETボトル1内の水分を、重力によりPETボトル1から排出させることができる。さらに、水分を重力により排出させた後のPETボトル1の内面に、水滴として残留している水分を、無菌空気の供給により、容易に除去することができる。
以上説明したように、オゾンガスが複数の微細な気泡Xとして、殺菌対象領域であるPETボトル1に供給された液状の水分の中に逐次供給される本実施形態によれば、気泡Xが水分の中を流動して殺菌対象物に接触する。気泡Xと水分の接触面では、OHラジカルが随時生成されているので、OHラジカルが殺菌対象物に付着している細菌Bに触れる機会が増えることになり、殺菌性能を格段に向上できる。
さらに、OHラジカルによる殺菌と並行して、細菌の引き剥がしや、熱による殺菌を行うことができるので、短時間で所望する殺菌性能を得ることができる。
したがって、本実施形態によれば、短い時間間隔でPETボトル1がチャンバ10に連続的に搬送され、個々のPETボトル1の殺菌に割ける時間が少ない場合でも、十分な殺菌効果を得ることができる。
以上説明した第1実施形態は、PETボトル1に水分を供給した後に、この水分にオゾンガスを供給するが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明は、殺菌対象領域へのオゾンの供給と、撹拌作用を生じさせるための気泡の供給と、いう二つの機能を実現するものである。そして、殺菌対象領域へのオゾンの供給は、水分に含ませて行うことができるし、気泡Xの供給はオゾンガスに限らず、他のガスであっても行うことができる。
変形例における気泡Xの供給量、粒径は、前述した第1実施形態と同様とされる。
次に、本発明の第2実施形態について、図3を用いて説明する。
なお、第2実施形態において第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。図3(a)〜(c)は、それぞれ第1実施形態における第2供給ステップに対応するものであり、それぞれ、白抜き矢印の順に左側から行われるものである。
それにより、先にPETボトル1内に水分を水面が口部2の開口の近傍になるまで供給しておき、その後、水分とオゾンガスを同時に供給することで、OHラジカルを多く含んだ水分を、PETボトル1内から溢れさせることができる。これにより、PETボトル1の内面のみならず、溢れた水分と接触する、PETボトル1の口部2などの外面も合わせて殺菌することもできる。
2 口部
3 胴部
4 ノズル
5 ノズル
6 水分供給管
7 ガス供給管
8 ガイド
9 ガイド
10 チャンバ
X 気泡
Claims (14)
- 殺菌の対象物が容器であり、オゾンを前記容器における少なくとも内面である殺菌対象領域に供給して、前記殺菌対象領域に存在する菌を殺菌するに際し、
前記殺菌対象領域に供給される液状の水分の中に、複数の細孔が設けられたシート状の素材が使用されたノズルを通じてオゾンガスを含む気泡を供給して前記水分を撹拌することで、ヒドロキシルラジカルを生成させるのであって、
前記ノズルを前記容器の内部に挿入し、前記ノズルの内側に供給される、オゾンガスを含む気体により前記ノズルを膨張させつつ、前記ノズルの内側に供給された前記気体から前記ノズルを通じて前記気泡を生成して前記容器の内部に供給する、
ことを特徴とする殺菌方法。 - 前記ノズルの外部あるいは内部に配置されるガイドとともに、前記ノズルを前記容器の内部に挿入する、
請求項1に記載の殺菌方法。 - 前記ガイドは、前記ノズル、および前記ノズルが設けられたガス供給管を周囲から覆う管状の形態とされ、
前記容器の内部に前記ノズルを残して前記ガイドを前記容器の外部に抜き取った後、前記ノズルを通じて前記気泡を生成して前記容器の内部に供給する、
請求項2に記載の殺菌方法。 - 前記ガイドは、前記ノズルが設けられたガス供給管の内空を貫通し、前記ノズルの内部に挿入される棒状の形態とされる、
請求項2に記載の殺菌方法。 - 前記水分がオゾンを含むオゾン水である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 殺菌の対象物が飲料用の容器であり、
前記容器に所定量の前記水分を供給した後に、前記水分の中に前記オゾンガスからなる前記気泡を供給する、
請求項1に記載の殺菌方法。 - 殺菌の対象物が飲料用の容器であり、
前記容器に所定量の前記オゾン水を供給した後に、前記気泡を供給する、
請求項5に記載の殺菌方法。 - 前記容器が連続的に搬送されるチャンバの内部において殺菌処理される、
請求項6又は請求項7に記載の殺菌方法。 - 前記液状の前記水分は、
常温よりも加熱されている、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 前記オゾンガスは、
乾燥状態のオゾンガス又は湿潤状態のオゾンガスである、
請求項1又は請求項6に記載の殺菌方法。 - 殺菌の対象物が容器であり、オゾンを前記容器における少なくとも内面である殺菌対象領域に供給して行われる、前記殺菌対象領域に存在する菌の殺菌に用いられる装置であって、
前記容器の内部に液状の水分を供給可能な水分供給系と、
ノズルが設けられ、前記ノズルを通じて前記容器の内部にオゾンガスを含む気体を供給可能なガス供給系と、を備え、
前記ノズルは、
複数の細孔が設けられたシート状の素材が使用され、前記容器の内部に挿入可能であって、
前記ノズルの内側に供給される、オゾンガスを含む気体により膨張可能であり、
かつ、前記ノズルの内側に供給された前記気体から当該ノズルを通じて、オゾンガスを含む気泡を生成可能である、
ことを特徴とする殺菌装置。 - 前記ガス供給系は、
前記ノズルの外部あるいは内部に配置され、前記ノズルとともに前記容器の内部に挿入されるガイドを備える、
請求項11に記載の殺菌装置。 - 前記ガイドは、前記ノズル、および前記ノズルが設けられたガス供給管を周囲から覆う管状の形態とされる、
請求項12に記載の殺菌装置。 - 前記ガイドは、前記ノズルが設けられたガス供給管の内空を貫通し、前記ノズルの内部に挿入される棒状の形態とされる、
請求項12に記載の殺菌装置。
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