WO2017065233A1 - 殺菌方法 - Google Patents
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Abstract
(A)酸化性ガスの存在下、(B)相対湿度50~100%の環境下、及び(C)絶対湿度14.0~25.0g/m3の環境下、から選ばれる1種又は2種以上を充足する条件下で、活性酸素、好ましくはプラズマを用いて発生させた活性酸素を、殺菌対象物に照射して殺菌することを特徴とする、殺菌方法。本発明の殺菌方法は、優れた殺菌活性を示すものであり、例えば、飲食品の容器、容器の口部を封鎖するキャップ、医療器具、野菜や肉などの飲食品等の殺菌に好適に用いられる。
Description
本発明は、殺菌方法に関する。より詳しくは、活性酸素を照射して殺菌処理を行う殺菌方法、及び、該殺菌方法を行う殺菌装置に関する。
食品又は飲料(飲食品)等の容器は、その内外面の殺菌が求められる。従来、殺菌剤を用いて殺菌する方法が汎用されており、殺菌剤を含有するミストを噴霧して気化させたり、エアに殺菌剤を混合したものを吹き付ける等の方法が知られている。また、殺菌剤としては、過酸化水素、過酢酸等の過酢酸系の殺菌剤や、次亜塩素酸水等の次塩素酸系の殺菌剤が知られている。
しかしながら、殺菌剤は使用後の処理が必要であるが、殺菌能力を高めるために高濃度の殺菌剤を使用すると、その処理にコストがかかったり、殺菌剤の残留量が高くなって食品衛生上問題があることから、更なる、殺菌方法が検討されている。
例えば、特許文献1は、過酸化水素等の殺菌剤のミストをボトルに向かって吹き付けると、このミストが装置の各種機器に付着し、これらを腐食させたり傷付けたりすることから、飲料用のボトルを過酸化水素のミストで殺菌後、無菌エアでエアリンスすることで、残留過酸化水素を低減しながらも滅菌効果に優れる殺菌方法を報告している。
特許文献2では、殺菌に用いる殺菌剤よりも高い温度に加熱された加熱媒体をチャンバー内に散布してチャンバー内を予熱する工程と、予熱されたチャンバー内に殺菌剤を散布してチャンバー内の殺菌を行う工程と、チャンバー内に無菌水を散布して殺菌剤を洗い流す工程と、を備える殺菌方法を開示している。このように、殺菌剤の散布に先立ってチャンバー内を予熱することで、殺菌剤を散布したときには殺菌剤の温度低下を抑えることができ、高い殺菌能力を発揮する温度範囲内で殺菌剤散布を行えると記載されている。
一方で、特許文献3には、流体中に放電を用いてプラズマ噴流を発生させ、対象物の表面に該プラズマ噴流を接触させることで、プラズマ噴流から表面へのエネルギー伝達によって殺菌(消毒)を行う方法が開示されている。ここでのプラズマ噴流は、酸素を含む作動ガス、好ましくは空気内での空中放電によって発生させている。この方法は、流体による殺菌であるため、従来の殺菌剤と異なり、滑らかな表面だけでなく、届きにくい三次元的な構造も消毒することができ、その際エッジや角に残渣が残らないという効果を奏するものである。
しかしながら、殺菌剤を用いる場合にはその耐性菌が認められるようになっており、殺菌能力の更なる向上が望まれているが、それに伴って殺菌剤の残留が依然として問題になっている。
また、特許文献3の殺菌方法においても、その効果を高めるためには、液状の消毒物質をプラズマ噴流発生元の作動ガス内に混合する方法が開示されているに過ぎず(特許文献3の[0025]参照)、プラズマ噴流そのものに影響する条件については不明であり、殺菌剤の残留がネックになるなど更なる技術が求められている。
本発明の課題は、殺菌効果に優れる殺菌方法、及び、該殺菌方法を行う殺菌装置を提供することにある。
本発明は、下記〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕 下記(A)及び/又は(B)を充足する条件下で、活性酸素を殺菌対象物に照射して殺菌することを特徴とする、殺菌方法。
(A)酸化性ガスの存在下
(B)相対湿度50~100%の環境下
〔2〕 下記(C)を充足する条件下で、活性酸素を殺菌対象物に照射して殺菌することを特徴とする、殺菌方法。
(C)絶対湿度14.1~25.0g/m3の環境下
〔3〕 活性酸素を照射する活性酸素照射ユニットと、該活性酸素照射ユニットからの活性酸素が酸化性ガスの存在下で殺菌対象物に照射されるよう酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給ユニットを含んでなる殺菌装置。
〔1〕 下記(A)及び/又は(B)を充足する条件下で、活性酸素を殺菌対象物に照射して殺菌することを特徴とする、殺菌方法。
(A)酸化性ガスの存在下
(B)相対湿度50~100%の環境下
〔2〕 下記(C)を充足する条件下で、活性酸素を殺菌対象物に照射して殺菌することを特徴とする、殺菌方法。
(C)絶対湿度14.1~25.0g/m3の環境下
〔3〕 活性酸素を照射する活性酸素照射ユニットと、該活性酸素照射ユニットからの活性酸素が酸化性ガスの存在下で殺菌対象物に照射されるよう酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給ユニットを含んでなる殺菌装置。
本発明の殺菌方法は殺菌効果に優れるという優れた効果を奏する。また、流体による殺菌のため、従来の殺菌に用いられた薬剤等の残留がないことから、工程の簡略化につながり、生産性を格段に向上することができる。
一般に、スーパーオキシドラジカル(・O2
-)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(HO・)等の活性酸素種(Reactive Oxygen Species、ROS)は、その強い酸化作用により優れた殺菌作用を奏するが、これらは空気中においては主に酸素分子や水分から生成され、そのまま殺菌対象物表面に接触して殺菌作用が発揮される。具体的には、例えば、ヒドロキシラジカルは、水分子にプラズマ電子が反応することにより得られる。かかる活性酸素を用いて、本発明では、(A)酸化性ガスの存在下、及び/又は、(B)相対湿度50~100%の環境下、を充足する条件下で照射することに特徴を有する。以降、(A)を充足する条件下での殺菌方法を態様A、(B)を充足する条件下での殺菌方法を態様Bとして説明する。なお、本発明において、「殺菌」とは、微生物の生体を破壊又は殺菌対象表面から除去することを意味し、例えば、消毒、滅菌、又は除菌することを含むものである。
〔態様A〕
態様Aの殺菌方法が、空気中で照射した場合に比べて殺菌作用が顕著に増大するメカニズムとしては、詳細は不明であるが、活性酸素が殺菌対象物表面へ移動中に酸化性ガスと接触して反応することにより、酸化性ガスが酸化力の強いヒドロキシラジカルに分解されて、該ヒドロキシラジカルが連鎖的に生成されることになり、それにより殺菌対象物表面に到着する活性酸素量が増加するためと推定される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。
態様Aの殺菌方法が、空気中で照射した場合に比べて殺菌作用が顕著に増大するメカニズムとしては、詳細は不明であるが、活性酸素が殺菌対象物表面へ移動中に酸化性ガスと接触して反応することにより、酸化性ガスが酸化力の強いヒドロキシラジカルに分解されて、該ヒドロキシラジカルが連鎖的に生成されることになり、それにより殺菌対象物表面に到着する活性酸素量が増加するためと推定される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。
以下に、態様Aで用いられる殺菌装置を図1に基づいて詳細に説明する。態様Aにおいて活性酸素は特に限定はないが、例えば、交流電流を用いてプラズマを発生させ、得られたプラズマを用いて発生させるものについて説明する。なお、図1に記載の殺菌装置は、態様Aの一態様に過ぎず本発明を限定するものではない。
図1に示すように、態様Aで用いられる殺菌装置は、交流電流の供給ユニットA-1、昇圧ユニットA-2、ガス供給ユニットA-3、ノズルA-4、ノズルの冷却ユニットA-5、ノズルへの水蒸気供給ユニットA-6、水蒸気供給ユニットへの水供給ユニットA-7、酸化性ガス供給ユニットA-8の各ユニットとチャンバーA-9を備えて構成される。
交流電流の供給ユニットA-1は、プラズマ放電の荷電発生源である。供給される交流電流としては、特に制限はなく、例えば、周波数が10~15kHz、電圧が200~500V程度のものが例示され、公知技術に従って適宜設定することができる。また、交流電流のアンペア数も特に制限はなく、供給装置の仕様によって適宜調整することができ、例えば、11Aの交流電流が用いられる。態様Aにおいては、交流電流の代わりに直流電流を用いることも可能であるが、電圧を調節する観点から、交流電流の方が好ましい。
昇圧ユニットA-2は、交流電流の供給ユニットA-1と接続しており、ユニットA-1から供給された交流電流の電圧を昇圧する装置である。昇圧可能な装置であれば特に問題なく使用できる。また、ユニットA-1と一体化したものであってもよい。昇圧後の電圧としては、特に制限はなく、例えば、10~30kV程度である。
ガス供給ユニットA-3は、ノズルA-4及び水蒸気供給ユニットA-6のそれぞれへ各種ガスを供給する装置であり、公知のガス供給装置を用いることができる。
具体的には、ノズルA-4へは、プラズマ発生のためのキャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの混合物を用いることができ、なかでも、空気と酸素の2種類を用いることが好ましい。キャリアガスの供給量は、ノズルA-4の大きさ、形状等によって一概には設定されない。例えば、空気を6L/minで、酸素を3L/minで供給する態様が例示される。
また、水蒸気供給ユニットA-6へは、プラズマから活性酸素を生成する際に必要な水蒸気と混合するための空気を供給する。水蒸気に空気を混合して含水気体として用いることで、プラズマと水蒸気との混合が促進され、効率よく水蒸気からヒドロキシラジカルを生成することができる。水蒸気供給ユニットA-6への空気供給量はノズルA-4への含水気体供給量と同じであり、例えば、3L/minで供給する態様が例示される。なお、ここでの空気とは、相対湿度が20℃において0~10体積%程度のもののことを言う。
ノズルA-4は、プラズマを発生して活性酸素を照射する装置であり、活性酸素照射ユニットともいう。装置には、内部電極及び外部電極が設けられており、両電極間に昇圧ユニットA-2からの昇圧された電圧をかけることで電界を発生させることが可能になる。また、内部電極にはコイルが接続されていてもよく、より大きな電界を形成することが可能となる。コイルの形状や大きさ等は当業者の技術常識に従って調整することができる。
また、装置には、ガス供給口及び活性酸素照射口が設けられており、ガス供給口は活性酸素照射口が存在する端部とは反対側の端部に存在する。そして、ガス供給口にはガス供給ユニットA-3からの配管が接続されており、前記のようにして発生させた電界内をキャリアガスが通り抜けることで、プラズマが生成される。このようにして生成されたプラズマは、流体でもあることからプラズマ噴流と記載することもある。一方、活性酸素照射口は、管状構造又は出口に向かって先細になる円錐構造を有するものであって、出口に至るまでの何れかの部分に水蒸気供給ユニットA-6から含水気体を供給するための配管が接続されており、前記生成されたプラズマと反応して活性酸素が生成され、活性酸素照射口の出口から照射されることになる。
ノズルA-4は、前記パーツを有するのであればその形状や大きさは特に限定されず、例えば、筒状構造の上端部にガス供給口が配置され、下端部に当該装置の径より小さい径を有する管状構造の活性酸素照射口が配置された構造が例示される。当該筒状構造は層状構造を形成していてもよく、例えば、キャリアガスが通り抜ける管の周囲に、コイルが形成され、必要により、該コイルの周囲に絶縁材料の層が更に形成される構造が例示される。管は通電素材であれば特に限定はなく、当該技術分野において公知のものを用いることができる。また、絶縁材料も特に限定はなく、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
ノズルの冷却ユニットA-5は、ノズルA-4に冷却水を供給する装置であり、公知の冷却水供給装置を用いることができる。ノズルA-4は高電圧がかかることによって発熱するため、冷却することが好ましい。冷却水は、温度が例えば5℃程度のものを用いることが好ましく、ノズルA-4と冷却ユニットA-5の間を循環させてもよい。冷却水の流量は、ノズルA-4の表面温度が25℃以下となるように適宜調整することができる。なお、ノズルA-4の表面温度は接触式温度計を用いて測定することができる。
ノズルへの水蒸気供給ユニットA-6は、ノズルA-4に含水気体を供給する装置であり、前記したようにノズルA-4の活性酸素照射口に接続されている。含水気体を供給するにあたっては、先ず、水供給ユニットA-7から供給された水を内蔵された電熱線により加熱して水蒸気を生成し、その後、ガス供給ユニットA-3から供給された空気と混合したものを、含水気体としてノズルA-4に供給している。ここで、水供給ユニットA-7は水蒸気供給ユニットA-6と一体化したものであってもよい。電熱線の加熱温度は供給される水の量によって適宜調整することができ、例えば、300℃が例示される。また、水供給ユニットA-7から供給される水の量は、活性酸素の生成に必要な水蒸気量に応じて調節することが可能であるが、態様Aにおいては、活性酸素含有気体に飽和水蒸気量以上の水分を含有させる観点から、0.5mL/min以上が好ましく、1.0mL/min以上がより好ましい。また、上限は特に設定されないが、6mL/min以下が好ましく、5mL/min以下がより好ましい。かくして得られた水蒸気をガス供給ユニットA-3から供給された空気と体積比(水蒸気/空気)で0.2~2.5程度で混合して、ノズルA-4の活性酸素照射口に供給する。水蒸気と空気の混合体積比は、例えば、上記した水の供給量を変動させることで変更することが可能であり、水供給量を増加すると含水気体に含ませる水蒸気量を増加させることが可能となる。ノズルA-4において生成されるプラズマ噴流と水蒸気供給ユニットA-6から供給される含水気体の混合体積比〔プラズマ噴流/含水気体〕としては、0.8~2.6が例示される。
酸化性ガス供給ユニットA-8は、酸化性ガスを供給する装置であるが、ノズルA-4からの活性酸素が酸化性ガス存在下で照射されるよう配置されていれば特段の限定はない。例えば、遮蔽空間を設けて、その中に少なくともノズルA-4を存在させ、該空間内に酸化性ガスを供給することが出来れば、ノズルA-4から活性酸素を酸化性ガスの存在下で照射することが可能となることから、酸化性ガス供給ユニットA-8とノズルA-4が同じ空間内に存在してもしなくてもよい。また、構造的には、酸化性ガスを供給できるのであれば、公知のガス供給装置を用いることができる。本発明で用いられる酸化性ガスとしては、特に限定はないが、殺菌効果の観点から、過酸化水素及び過酢酸から選ばれるものが好ましく、ガス同士が反応しないのであれば他の公知のガスと組み合わせて用いてもよい。また、酸化性ガスの成分を含有する液状物を公知技術に従って気化したものを供給してもよい。酸化性ガスは、活性酸素が照射される際にチャンバー内に存在すれば、一定供給される必要はなく、事前に供給しておいても間欠供給してもよい。酸化性ガス供給ユニットA-8からの供給量は適宜設定することができる。
チャンバーA-9は、前記遮蔽空間を形成するものとして備えられている。チャンバーA-9は、前記ユニットのうち少なくともノズルA-4を内部に含む態様であればよく、その大きさ及び構造は殺菌対象物によって適宜設定することができる。チャンバーA-9内には酸化性ガス供給ユニットA-8から酸化性ガスが供給されるが、酸化性ガスの存在量は、殺菌効果を向上させる観点から、好ましくは0.1ppmv以上、より好ましくは1.5ppmv以上である。上限は特に設定されないが、安全性の観点から、好ましくは2ppmv以下である。チャンバー内に存在する酸化性ガス量では、殺菌対象物の殺菌は困難であるが、本願発明では、その程度の酸化性ガス量の存在下であっても活性酸素を照射することにより顕著な殺菌効果が奏されるものである。なお、チャンバー内の温度は特に設定されず、例えば、2~40℃である。
なお、態様Aで用いられる殺菌装置は前記ユニット以外に、他のユニットを更に有するものであってもよい。他のユニットとしては、殺菌対象物を載置する照射台、活性酸素の拡散を防止する遮蔽壁等が例示される。照射台は、殺菌対象物を載置できれば特に限定はないが、ヒドロキシラジカルを高温により分解しない観点から、当該対象物を常温(40℃)以下に載置できることが好ましい。
態様Aで用いられる殺菌装置としては、前記した仕様、構成を有するものであれば特に限定はなく、例えば、活性酸素を照射する活性酸素照射ユニットと、該活性酸素照射ユニットからの活性酸素が酸化性ガスの存在下で殺菌対象物に照射されるよう酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給ユニットを含んでなる殺菌装置が好適例として挙げられる。
かくして、本発明の殺菌装置から活性酸素が照射される。活性酸素は、酸化性ガスの存在下で照射されることから、ヒドロキシラジカルの生成量も多くなり、ひいては優れた殺菌活性を有するものである。また、活性酸素が流体であることから、三次元的な構造のものでも殺菌することが可能であり、エッジや角に残渣が残らないという優れた効果を奏するものである。
〔態様B〕
態様Bの殺菌方法が、空気中で照射した場合に比べて殺菌作用が顕著に増大するメカニズムとしては、詳細は不明であるが、活性酸素を相対湿度が50%以上、好ましくは60%以上であり、100%以下、好ましくは90%以下の雰囲気下で照射すると、環境中に含まれる水蒸気がそのまま殺菌対象物と接触し、その際に温度が低下して当該対象物表面において結露を発生することになる。この結露にはヒドロキシラジカル等の活性酸素が含まれることになり、本発明者らは、結露を維持することが重要であると考えて検討を行った結果、前記特定の相対湿度下で活性酸素を照射することで、結露量が多くなって活性酸素の保持が増え、ひいては殺菌作用が顕著に増大すると推定される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。なお、本発明における、相対湿度とは、ある気温における飽和水蒸気圧に対する実際の空気の水蒸気圧の比のことであり、「%(パーセント)」で示される。
態様Bの殺菌方法が、空気中で照射した場合に比べて殺菌作用が顕著に増大するメカニズムとしては、詳細は不明であるが、活性酸素を相対湿度が50%以上、好ましくは60%以上であり、100%以下、好ましくは90%以下の雰囲気下で照射すると、環境中に含まれる水蒸気がそのまま殺菌対象物と接触し、その際に温度が低下して当該対象物表面において結露を発生することになる。この結露にはヒドロキシラジカル等の活性酸素が含まれることになり、本発明者らは、結露を維持することが重要であると考えて検討を行った結果、前記特定の相対湿度下で活性酸素を照射することで、結露量が多くなって活性酸素の保持が増え、ひいては殺菌作用が顕著に増大すると推定される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。なお、本発明における、相対湿度とは、ある気温における飽和水蒸気圧に対する実際の空気の水蒸気圧の比のことであり、「%(パーセント)」で示される。
態様Bにおける活性酸素は、公知の方法により発生させたプラズマを用いて発生させることができる。例えば、態様Bにおいては、交流電流を用いて発生させたプラズマを用いる例として、以下の構成を有する殺菌装置を用いた例を図2に基づいて説明する。なお、図2に記載の殺菌装置は、態様Bの一態様に過ぎず本発明を限定するものではない。
図2に示すように、態様Bで用いられる殺菌装置は、交流電流の供給ユニットB-1、昇圧ユニットB-2、ガス供給ユニットB-3、ノズルB-4、ノズルの冷却ユニットB-5、ノズルへの水蒸気供給ユニットB-6、水蒸気供給ユニットへの水供給ユニットB-7、照射台B-8の各ユニットを備えて構成される。
交流電流の供給ユニットB-1は、プラズマ放電の荷電発生源である。供給される交流電流としては、特に制限はなく、例えば、周波数が10~15kHz、電圧が200~500V程度のものが例示され、公知技術に従って適宜設定することができる。また、交流電流のアンペア数も特に制限はなく、供給装置の仕様によって適宜調整することができ、例えば、11Aの交流電流が用いられる。態様Bにおいては、交流電流の代わりに直流電流を用いることも可能であるが、電圧を調節する観点から、交流電流の方が好ましい。
昇圧ユニットB-2は、交流電流の供給ユニットB-1と接続しており、ユニットB-1から供給された交流電流の電圧を昇圧する装置である。昇圧可能な装置であれば特に問題なく使用できる。また、ユニットB-1と一体化したものであってもよい。昇圧後の電圧としては、特に制限はなく、例えば、10~30kV程度である。
ガス供給ユニットB-3は、ノズルB-4及び水蒸気供給ユニットB-6のそれぞれへ各種ガスを供給する装置であり、公知のガス供給装置を用いることができる。
具体的には、ノズルB-4へは、プラズマ発生のためのキャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの混合物を用いることができ、なかでも、空気と酸素の2種類を用いることが好ましい。キャリアガスの供給量は、ノズルB-4の大きさ、形状等によって一概には設定されない。例えば、空気を6L/minで、酸素を3L/minで供給する態様が例示される。
また、水蒸気供給ユニットB-6へは、プラズマから活性酸素を生成する際に必要な水蒸気と混合するための空気を供給する。水蒸気に空気を混合して含水気体として用いることで、プラズマと水蒸気との混合が促進され、効率よく水蒸気からヒドロキシラジカルを生成することができる。水蒸気供給ユニットB-6への空気供給量はノズルB-4への含水気体供給量と同じであり、例えば、3L/minで供給する態様が例示される。なお、ここでの空気とは、相対湿度が20℃において0~10体積%程度のもののことを言う。
ノズルB-4は、プラズマを発生して活性酸素を照射する装置であり、活性酸素照射ユニットともいう。装置には、内部電極及び外部電極が設けられており、両電極間に昇圧ユニットB-2からの昇圧された電圧をかけることで電界を発生させることが可能になる。また、内部電極にはコイルが接続されていてもよく、より大きな電界を形成することが可能となる。コイルの形状や大きさ等は当業者の技術常識に従って調整することができる。
また、装置には、ガス供給口及び活性酸素照射口が設けられており、ガス供給口は活性酸素照射口が存在する端部とは反対側の端部に存在する。そして、ガス供給口にはガス供給ユニットB-3からの配管が接続されており、前記のようにして発生させた電界内をキャリアガスが通り抜けることで、プラズマが生成される。このようにして生成されたプラズマは、流体でもあることからプラズマ噴流と記載することもある。一方、活性酸素照射口は、管状構造又は出口に向かって先細になる円錐構造を有するものであって、出口に至るまでの何れかの部分に水蒸気供給ユニットB-6から含水気体を供給するための配管が接続されており、前記生成されたプラズマと反応して活性酸素が生成され、活性酸素照射口の出口から照射されることになる。
ノズルB-4は、前記パーツを有するのであればその形状や大きさは特に限定されず、例えば、筒状構造の上端部にガス供給口が配置され、下端部に当該装置の径より小さい径を有する管状構造の活性酸素照射口が配置された構造が例示される。当該筒状構造は層状構造を形成していてもよく、例えば、キャリアガスが通り抜ける管の周囲に、コイルが形成され、必要により、該コイルの周囲に絶縁材料の層が更に形成される構造が例示される。管は通電素材であれば特に限定はなく、当該技術分野において公知のものを用いることができる。また、絶縁材料も特に限定はなく、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
ノズルの冷却ユニットB-5は、ノズルB-4に冷却水を供給する装置であり、公知の冷却水供給装置を用いることができる。ノズルB-4は高電圧がかかることによって発熱するため、冷却することが好ましい。冷却水は、温度が例えば5℃程度のものを用いることが好ましく、ノズルB-4と冷却ユニットB-5の間を循環させてもよい。冷却水の流量は、ノズルB-4の表面温度が25℃以下となるように適宜調整することができる。なお、ノズルB-4の表面温度は接触式温度計を用いて測定することができる。
ノズルへの水蒸気供給ユニットB-6は、ノズルB-4に含水気体を供給する装置であり、前記したようにノズルB-4の活性酸素照射口に接続されている。含水気体を供給するにあたっては、先ず、水供給ユニットB-7から供給された水を内蔵された電熱線により加熱して水蒸気を生成し、その後、ガス供給ユニットB-3から供給された空気と混合したものを、含水気体としてノズルB-4に供給している。ここで、水供給ユニットB-7は水蒸気供給ユニットB-6と一体化したものであってもよい。電熱線の加熱温度は供給される水の量によって適宜調整することができ、例えば、300℃が例示される。また、水供給ユニットB-7から供給される水の量は、活性酸素の生成に必要な水蒸気量に応じて調節することが可能であるが、態様Bにおいては、活性酸素含有気体に飽和水蒸気量以上の水分を含有させる観点から、0.5mL/min以上が好ましく、1.0mL/min以上がより好ましい。また、上限は特に設定されないが、6mL/min以下が好ましく、5mL/min以下がより好ましい。かくして得られた水蒸気をガス供給ユニットB-3から供給された空気と体積比(水蒸気/空気)で0.2~2.5程度で混合して、ノズルB-4の活性酸素照射口に供給する。水蒸気と空気の混合体積比は、例えば、上記した水の供給量を変動させることで変更することが可能であり、水供給量を増加すると含水気体に含ませる水蒸気量を増加させることが可能となる。ノズルB-4において生成されるプラズマ噴流と水蒸気供給ユニットB-6から供給される含水気体の混合体積比〔プラズマ噴流/含水気体〕としては、0.8~2.6が例示される。
殺菌対象物を載置する照射台B-8は、殺菌対象物を載置できれば特に限定はないが、ヒドロキシラジカルを高温により分解しない観点から、当該対象物を常温(40℃)以下に載置できることが好ましい。
なお、態様Bで用いられる殺菌装置は前記ユニット以外に、他のユニットを更に有するものであってもよい。他のユニットとしては、活性酸素の拡散を防止する遮蔽壁等が例示される。
態様Bにおいては、活性酸素を照射する雰囲気の相対湿度が50%以上、好ましくは60%以上であり、100%以下、好ましくは90%以下となるのであれば、その制御方法は特に限定されない。例えば、前記ユニットのうち少なくともノズルB-4と照射台B-8を内部に含む作業室内の相対湿度を、エアコン等の空調設備を用いて制御することができる。なお、作業室内の温度は特に設定されず、例えば、2~40℃である。また、態様Bで用いられる殺菌装置そのものを、湿度が制御できるチャンバー内などに設置してもよい。
かくして、特定の相対湿度条件下において活性酸素が照射されることになって、ヒドロキシラジカルがより保持されることになり、ひいては優れた殺菌活性を示すことが可能になる。また、活性酸素が流体であることから、三次元的な構造のものでも殺菌することが可能であり、エッジや角に残渣が残らないという優れた効果が奏される。
〔態様C〕
また、本発明の一態様として、活性酸素を用いて、(C)絶対湿度14.1~25.0g/m3の環境下を充足する条件下で照射する態様(態様C)を挙げることができる。態様Bにおける特定の相対湿度条件下と同様に、殺菌対象物表面に発生する結露量が多くなることによって、活性酸素の保持が増え、ひいては殺菌作用が顕著に増大すると推定される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。なお、本発明における、絶対湿度とは、大気中に含まれる水蒸気の密度(容積あたりの質量)のことであり、「g/m3」で示される。
また、本発明の一態様として、活性酸素を用いて、(C)絶対湿度14.1~25.0g/m3の環境下を充足する条件下で照射する態様(態様C)を挙げることができる。態様Bにおける特定の相対湿度条件下と同様に、殺菌対象物表面に発生する結露量が多くなることによって、活性酸素の保持が増え、ひいては殺菌作用が顕著に増大すると推定される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。なお、本発明における、絶対湿度とは、大気中に含まれる水蒸気の密度(容積あたりの質量)のことであり、「g/m3」で示される。
態様Cで用いられる殺菌装置は、絶対湿度が下限は14.1g/m3以上であればよいが、好ましくは14.6g/m3以上であり、また、上限は25.0g/m3以下であるが、好ましくは20.0g/m3以下、より好ましくは18.0g/m3以下を充足するのであれば特に限定はなく、例えば、態様Bにおいて用いられる殺菌装置を好適に用いることができる。装置の構成や仕様、使用方法、使用条件などは、態様Bを参照に適宜設定することができる。絶対湿度の制御も、態様Bにおける相対湿度の制御と同様にして行うことができる。
本発明においては、前記した態様A、態様B、態様Cの殺菌方法を行うことが出来れば特に限定はなく、これらを単独で又は2種以上組み合わせて行うことができる。組み合わせの具体例としては、例えば、態様Aと態様Bの場合、酸化性ガスの存在下と相対湿度50~100%の双方を充足する条件下で殺菌を行なう方法が挙げられる。また、態様Aと態様Cの場合、酸化性ガスの存在下と絶対湿度14.1~25.0g/m3の双方を充足する条件下で殺菌を行なう方法が挙げられる。
本発明において照射される活性酸素は、ノズル内での放電や水蒸気供給ユニットからの含水気体によって温かいものであり、温度は50~80℃程度である。これにより、照射された対象物の熱負荷は小さいものと考えられる。なお、活性酸素の温度とは、活性酸素照射口の出口における活性酸素の温度を熱電対温度計を用いて測定した温度のことである。
また、活性酸素と殺菌対象物表面との温度差は、ラジカルの反応性を高める観点から、例えば、10℃以上が好ましく、25~40℃がより好ましい。ここで、殺菌対象物表面の温度とは、殺菌対象物を接触式温度計にて測定した温度のことである。
照射スピードは、ガスの供給量及び活性酸素照射口の形状によって調節することが可能であり、例えば、50000mm/secが例示される。照射時間は、対象物によって一概には設定されず、例えば、0.05~1秒が例示される。
また、活性酸素照射口と殺菌対象物表面との距離は、例えば、5~50mmが好ましい。
本発明の殺菌方法は、殺菌を要する対象物に活性酸素を照射するために使用される。対象物としては、例えば、飲食品の容器、容器の口部を封鎖するキャップ、医療器具、野菜や肉などの飲食品等が例示される。
本発明はまた、活性酸素を照射する殺菌装置を提供する。ここで、活性酸素を照射する装置としては、本発明の殺菌方法に好適に用いられる装置が挙げられる。
具体的には、態様Aの殺菌方法に関するものとしては、活性酸素を照射する活性酸素照射ユニットと、該活性酸素照射ユニットからの活性酸素が酸化性ガスの存在下で殺菌対象物に照射されるよう酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給ユニットを含んでなる殺菌装置が挙げられる。活性酸素や酸化性ガスの発生条件や仕様、設置方法は、態様Aの殺菌方法の項に準ずる。
態様Bの殺菌方法に関するものとしては、活性酸素を照射する活性酸素照射ユニットと、該活性酸素照射ユニットからの活性酸素が相対湿度50~100%の環境下で殺菌対象物に照射されるよう湿度を調整するユニットを含んでなる殺菌装置が挙げられる。活性酸素の発生条件や仕様、湿度の調整方法、設置方法は、態様Bの殺菌方法の項に準ずる。
態様Cの殺菌方法に関するものとしては、活性酸素を照射する活性酸素照射ユニットと、該活性酸素照射ユニットからの活性酸素が絶対湿度14.1~25.0g/m3、好ましくは14.1~20.0g/m3、より好ましくは14.6~20.0g/m3、更に好ましくは14.6~18.0g/m3環境下で殺菌対象物に照射されるよう温湿度を調整するユニットを含んでなる殺菌装置が挙げられる。活性酸素の発生条件や仕様、温湿度の調整方法、設置方法は、態様Cの殺菌方法の項に準ずる。
本発明の殺菌装置は、殺菌を要する対象物に活性酸素を照射するために使用される。対象物としては、例えば、飲食品の容器、容器の口部を封鎖するキャップ、医療器具、野菜や肉などの飲食品等が例示される。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
試験例A-1
殺菌における酸化性ガスの影響を検討した。
殺菌における酸化性ガスの影響を検討した。
<菌液の調製及び菌付けキャップ作製>
芽胞菌Bacillus atrophaeusの菌液を用いて、各種濃度(2×103~2×108CFU/mL濃度範囲において3水準)の菌液を調製した。得られた菌液を図2に示すように、樹脂キャップ(素材ポリエチレン)1個あたり1μL×9spotで菌付けを行った(各濃度n=5)。なお、菌付けした樹脂キャップは24時間滅菌シャーレ内に静置して乾燥したものを用いた。
芽胞菌Bacillus atrophaeusの菌液を用いて、各種濃度(2×103~2×108CFU/mL濃度範囲において3水準)の菌液を調製した。得られた菌液を図2に示すように、樹脂キャップ(素材ポリエチレン)1個あたり1μL×9spotで菌付けを行った(各濃度n=5)。なお、菌付けした樹脂キャップは24時間滅菌シャーレ内に静置して乾燥したものを用いた。
<活性酸素の照射>
図1に示す殺菌装置を用いて、活性酸素を菌付けした樹脂キャップの上方30mmの距離から1個あたり0.2秒間照射し、照射後のキャップは滅菌シャーレに回収した。なお、殺菌装置の使用条件は次の通りであった。酸化性ガス供給ユニットA-8から酸化性ガスの供給がある場合は過酢酸200mLを入れた容器を過酢酸が沸騰するまで加熱・攪拌し、生じた蒸気をチャンバーA-9内に別途設置したビーカー内にチューブを通して導入し、該ビーカー内に滴下することでチャンバーA-9内に酸化性ガスを充満させてから活性酸素を照射した。また、活性酸素を照射しないサンプルは、菌付した樹脂キャップを酸化性ガスを充満させた殺菌装置内に0.2秒間放置した。また、キャップの表面温度(照射台表面温度)は25℃、チャンバー内温度は28℃であった。なお、酸化性ガスのチャンバー内濃度は、使用前のガス液量からビーカー内に滴下後の残存ガス液量を除いた量がチャンバー内に充満したとして算出した。
(殺菌装置の使用条件)
交流電流の供給ユニットA-1:周波数14kHz、電圧300V、電流11A
昇圧ユニットA-2:昇圧後の電圧20kV
ガス供給ユニットA-3:空気供給量6L/min、酸素供給量3L/min(以上、ノズルA-4へ)、空気供給量3L/min(水蒸気供給ユニットA-6へ)
ノズルA-4:活性酸素照射温度51℃、照射スピード50000mm/sec
冷却ユニットA-5:冷却水5℃
水蒸気供給ユニットA-6:電熱線300℃、含水気体供給量4.5L/min(プラズマ噴流/含水気体供給量(体積比)=9/4.5)
水供給ユニットA-7:水供給量1.2mL/min
チャンバーA-9:酸化性ガス濃度は表1に示す
図1に示す殺菌装置を用いて、活性酸素を菌付けした樹脂キャップの上方30mmの距離から1個あたり0.2秒間照射し、照射後のキャップは滅菌シャーレに回収した。なお、殺菌装置の使用条件は次の通りであった。酸化性ガス供給ユニットA-8から酸化性ガスの供給がある場合は過酢酸200mLを入れた容器を過酢酸が沸騰するまで加熱・攪拌し、生じた蒸気をチャンバーA-9内に別途設置したビーカー内にチューブを通して導入し、該ビーカー内に滴下することでチャンバーA-9内に酸化性ガスを充満させてから活性酸素を照射した。また、活性酸素を照射しないサンプルは、菌付した樹脂キャップを酸化性ガスを充満させた殺菌装置内に0.2秒間放置した。また、キャップの表面温度(照射台表面温度)は25℃、チャンバー内温度は28℃であった。なお、酸化性ガスのチャンバー内濃度は、使用前のガス液量からビーカー内に滴下後の残存ガス液量を除いた量がチャンバー内に充満したとして算出した。
(殺菌装置の使用条件)
交流電流の供給ユニットA-1:周波数14kHz、電圧300V、電流11A
昇圧ユニットA-2:昇圧後の電圧20kV
ガス供給ユニットA-3:空気供給量6L/min、酸素供給量3L/min(以上、ノズルA-4へ)、空気供給量3L/min(水蒸気供給ユニットA-6へ)
ノズルA-4:活性酸素照射温度51℃、照射スピード50000mm/sec
冷却ユニットA-5:冷却水5℃
水蒸気供給ユニットA-6:電熱線300℃、含水気体供給量4.5L/min(プラズマ噴流/含水気体供給量(体積比)=9/4.5)
水供給ユニットA-7:水供給量1.2mL/min
チャンバーA-9:酸化性ガス濃度は表1に示す
<殺菌活性値の測定>
活性酸素照射を行った樹脂キャップ又は活性酸素を照射せず酸化性ガスが充満する殺菌装置内に放置した樹脂キャップを滅菌シャーレから取出し、5mLのTSA液体培地(BD Falcon社製)を注入し、微生物の増殖に好適な35℃で3日間培養した。培養後、微生物増殖により培地が濁ったキャップ個数を陽性としてカウントし、最確数法(MPN法)により殺菌活性値LRV(Log Reduction Value)を算出した。結果を表1に示す。なお、殺菌活性を示す「D」値とは、キャップ1個当たりの菌数を常用対数で表し(LOG値)、処理前の菌数(LOG値)から処理後の菌数(LOG値)を減算した値のことであり、数が大きい程殺菌活性が高く、4.5D以上であれば食品容器の殺菌処理として問題ないことを示す。
活性酸素照射を行った樹脂キャップ又は活性酸素を照射せず酸化性ガスが充満する殺菌装置内に放置した樹脂キャップを滅菌シャーレから取出し、5mLのTSA液体培地(BD Falcon社製)を注入し、微生物の増殖に好適な35℃で3日間培養した。培養後、微生物増殖により培地が濁ったキャップ個数を陽性としてカウントし、最確数法(MPN法)により殺菌活性値LRV(Log Reduction Value)を算出した。結果を表1に示す。なお、殺菌活性を示す「D」値とは、キャップ1個当たりの菌数を常用対数で表し(LOG値)、処理前の菌数(LOG値)から処理後の菌数(LOG値)を減算した値のことであり、数が大きい程殺菌活性が高く、4.5D以上であれば食品容器の殺菌処理として問題ないことを示す。
表1より、比較例A-2の酸化性ガス量では殺菌効果が全く認められないが、比較例A-1と実施例A-1の対比より、活性酸素が照射される際に酸化性ガスが存在する実施例A-1は、殺菌効果が著しく向上することが明らかである。このように活性酸素を酸化性ガスの存在下で照射することで、優れた殺菌効果が得られることが示唆される。また、酸化性ガスの存在量が非常に少ないことから、殺菌剤の残留もなく、工程の簡略化につながり、生産性を格段に向上することができる。
試験例B-1
殺菌における相対湿度の影響を検討した。
殺菌における相対湿度の影響を検討した。
<菌液の調製及び菌付けキャップ作製>
芽胞菌Bacillus atrophaeusの菌液を用いて、各種濃度(2×103~2×108CFU/mL濃度範囲において3水準)の菌液を調製した。得られた菌液を図3に示すように、樹脂キャップ(素材ポリエチレン)1個あたり1μL×9spotで菌付けを行った(各濃度n=5)。なお、菌付けした樹脂キャップは24時間滅菌シャーレ内に静置して乾燥したものを用いた。
芽胞菌Bacillus atrophaeusの菌液を用いて、各種濃度(2×103~2×108CFU/mL濃度範囲において3水準)の菌液を調製した。得られた菌液を図3に示すように、樹脂キャップ(素材ポリエチレン)1個あたり1μL×9spotで菌付けを行った(各濃度n=5)。なお、菌付けした樹脂キャップは24時間滅菌シャーレ内に静置して乾燥したものを用いた。
<活性酸素の照射>
図2に示す殺菌装置を用いて、表2に示す相対湿度の環境下で、活性酸素を菌付けした樹脂キャップの上方30mmの距離から1個あたり0.5秒間照射し、照射後のキャップは滅菌シャーレに回収した。なお、殺菌装置の使用条件は次の通りであり、殺菌装置を設置した室内環境は空調設備により制御し、設定湿度を表2に示す相対湿度に設定した。
(殺菌装置の使用条件)
交流電流の供給ユニットB-1:周波数14kHz、電圧300V、電流11A
昇圧ユニットB-2:昇圧後の電圧20kV
ガス供給ユニットB-3:空気供給量6L/min、酸素供給量3L/min(以上、ノズルB-4へ)、空気供給量3L/min(水蒸気供給ユニットB-6へ)
ノズルB-4:活性酸素照射温度51℃、照射スピード50000mm/sec
冷却ユニットB-5:冷却水5℃
水蒸気供給ユニットB-6:電熱線300℃、含水気体供給量4.5L/min(プラズマ噴流/含水気体供給量(体積比)=9/4.5)
水供給ユニットB-7:水供給量1.2mL/min
図2に示す殺菌装置を用いて、表2に示す相対湿度の環境下で、活性酸素を菌付けした樹脂キャップの上方30mmの距離から1個あたり0.5秒間照射し、照射後のキャップは滅菌シャーレに回収した。なお、殺菌装置の使用条件は次の通りであり、殺菌装置を設置した室内環境は空調設備により制御し、設定湿度を表2に示す相対湿度に設定した。
(殺菌装置の使用条件)
交流電流の供給ユニットB-1:周波数14kHz、電圧300V、電流11A
昇圧ユニットB-2:昇圧後の電圧20kV
ガス供給ユニットB-3:空気供給量6L/min、酸素供給量3L/min(以上、ノズルB-4へ)、空気供給量3L/min(水蒸気供給ユニットB-6へ)
ノズルB-4:活性酸素照射温度51℃、照射スピード50000mm/sec
冷却ユニットB-5:冷却水5℃
水蒸気供給ユニットB-6:電熱線300℃、含水気体供給量4.5L/min(プラズマ噴流/含水気体供給量(体積比)=9/4.5)
水供給ユニットB-7:水供給量1.2mL/min
<殺菌活性値の測定>
樹脂キャップを滅菌シャーレから取出し、5mLのTSA液体培地(BD Falcon社製)を注入し、微生物の増殖に好適な35℃で3日間培養した。培養後、微生物増殖により培地が濁ったキャップ個数を陽性としてカウントし、最確数法(MPN法)により殺菌活性値LRV(Log Reduction Value)を算出した。結果を表2に示す。なお、殺菌活性を示す「D」値とは、キャップ1個当たりの菌数を常用対数で表し(LOG値)、処理前の菌数(LOG値)から処理後の菌数(LOG値)を減算した値のことであり、数が大きい程殺菌活性が高く、4.5D以上であれば食品容器の殺菌処理として問題ないことを示す。
樹脂キャップを滅菌シャーレから取出し、5mLのTSA液体培地(BD Falcon社製)を注入し、微生物の増殖に好適な35℃で3日間培養した。培養後、微生物増殖により培地が濁ったキャップ個数を陽性としてカウントし、最確数法(MPN法)により殺菌活性値LRV(Log Reduction Value)を算出した。結果を表2に示す。なお、殺菌活性を示す「D」値とは、キャップ1個当たりの菌数を常用対数で表し(LOG値)、処理前の菌数(LOG値)から処理後の菌数(LOG値)を減算した値のことであり、数が大きい程殺菌活性が高く、4.5D以上であれば食品容器の殺菌処理として問題ないことを示す。
表2より、比較例B-1と実施例B-1の対比より、相対湿度が高い方が優れた殺菌効果が得られることが示唆される。
試験例C-1
殺菌における絶対湿度の影響を検討した。
殺菌における絶対湿度の影響を検討した。
<菌液の調製及び菌付けキャップ作製>
芽胞菌Bacillus atrophaeusの菌液を用いて、各種濃度(2×103~2×108CFU/mL濃度範囲において3水準)の菌液を調製した。得られた菌液を図3に示すように、樹脂キャップ(素材ポリエチレン)1個あたり1μL×9spotで菌付けを行った(各濃度n=5)。なお、菌付けした樹脂キャップは24時間滅菌シャーレ内に静置して乾燥したものを用いた。
芽胞菌Bacillus atrophaeusの菌液を用いて、各種濃度(2×103~2×108CFU/mL濃度範囲において3水準)の菌液を調製した。得られた菌液を図3に示すように、樹脂キャップ(素材ポリエチレン)1個あたり1μL×9spotで菌付けを行った(各濃度n=5)。なお、菌付けした樹脂キャップは24時間滅菌シャーレ内に静置して乾燥したものを用いた。
<活性酸素の照射>
図2に示す殺菌装置を用いて、表3に示す絶対湿度の環境下で、活性酸素を菌付けした樹脂キャップの上方30mmの距離から1個あたり0.5秒間照射し、照射後のキャップは滅菌シャーレに回収した。なお、殺菌装置の使用条件は試験例B-1と同じであり、殺菌装置を設置したチャンバー内環境は、ヒーターにて温度を制御し、絶対湿度は表3になるよう設定した。
(殺菌装置の使用条件)
交流電流の供給ユニットB-1:周波数14kHz、電圧300V、電流11A
昇圧ユニットB-2:昇圧後の電圧20kV
ガス供給ユニットB-3:空気供給量6L/min、酸素供給量3L/min(以上、ノズルB-4へ)、空気供給量3L/min(水蒸気供給ユニットB-6へ)
ノズルB-4:活性酸素照射温度51℃、照射スピード50000mm/sec
冷却ユニットB-5:冷却水5℃
水蒸気供給ユニットB-6:電熱線300℃、含水気体供給量4.5L/min(プラズマ噴流/含水気体供給量(体積比)=9/4.5)
水供給ユニットB-7:水供給量0.2mL/min
図2に示す殺菌装置を用いて、表3に示す絶対湿度の環境下で、活性酸素を菌付けした樹脂キャップの上方30mmの距離から1個あたり0.5秒間照射し、照射後のキャップは滅菌シャーレに回収した。なお、殺菌装置の使用条件は試験例B-1と同じであり、殺菌装置を設置したチャンバー内環境は、ヒーターにて温度を制御し、絶対湿度は表3になるよう設定した。
(殺菌装置の使用条件)
交流電流の供給ユニットB-1:周波数14kHz、電圧300V、電流11A
昇圧ユニットB-2:昇圧後の電圧20kV
ガス供給ユニットB-3:空気供給量6L/min、酸素供給量3L/min(以上、ノズルB-4へ)、空気供給量3L/min(水蒸気供給ユニットB-6へ)
ノズルB-4:活性酸素照射温度51℃、照射スピード50000mm/sec
冷却ユニットB-5:冷却水5℃
水蒸気供給ユニットB-6:電熱線300℃、含水気体供給量4.5L/min(プラズマ噴流/含水気体供給量(体積比)=9/4.5)
水供給ユニットB-7:水供給量0.2mL/min
<殺菌活性値の測定>
樹脂キャップを滅菌シャーレから取出し、5mLのTSA液体培地(BD Falcon社製)を注入し、微生物の増殖に好適な35℃で3日間培養した。培養後、微生物増殖により培地が濁ったキャップ個数を陽性としてカウントし、最確数法(MPN法)により殺菌活性値LRV(Log Reduction Value)を算出した。結果を表2に示す。なお、殺菌活性を示す「D」値とは、キャップ1個当たりの菌数を常用対数で表し(LOG値)、処理前の菌数(LOG値)から処理後の菌数(LOG値)を減算した値のことであり、数が大きい程殺菌活性が高く、4.5D以上であれば食品容器の殺菌処理として問題ないことを示す。
樹脂キャップを滅菌シャーレから取出し、5mLのTSA液体培地(BD Falcon社製)を注入し、微生物の増殖に好適な35℃で3日間培養した。培養後、微生物増殖により培地が濁ったキャップ個数を陽性としてカウントし、最確数法(MPN法)により殺菌活性値LRV(Log Reduction Value)を算出した。結果を表2に示す。なお、殺菌活性を示す「D」値とは、キャップ1個当たりの菌数を常用対数で表し(LOG値)、処理前の菌数(LOG値)から処理後の菌数(LOG値)を減算した値のことであり、数が大きい程殺菌活性が高く、4.5D以上であれば食品容器の殺菌処理として問題ないことを示す。
表3より、絶対湿度が14.1~25.0g/m3の条件を充足する場合に特に優れた殺菌効果が得られることが示唆される。
本発明の殺菌方法は、優れた殺菌活性を示すものであり、例えば、飲食品の容器、容器の口部を封鎖するキャップ、医療器具、野菜や肉などの飲食品等の殺菌に好適に用いられる。
A-1 交流電流の供給ユニット
A-2 昇圧ユニット
A-3 ガス供給ユニット
A-4 ノズル
A-5 冷却ユニット
A-6 水蒸気供給ユニット
A-7 水供給ユニット
A-8 酸化性ガス供給ユニット
A-9 チャンバー
B-1 交流電流の供給ユニット
B-2 昇圧ユニット
B-3 ガス供給ユニット
B-4 ノズル
B-5 冷却ユニット
B-6 水蒸気供給ユニット
B-7 水供給ユニット
B-8 照射台
A-2 昇圧ユニット
A-3 ガス供給ユニット
A-4 ノズル
A-5 冷却ユニット
A-6 水蒸気供給ユニット
A-7 水供給ユニット
A-8 酸化性ガス供給ユニット
A-9 チャンバー
B-1 交流電流の供給ユニット
B-2 昇圧ユニット
B-3 ガス供給ユニット
B-4 ノズル
B-5 冷却ユニット
B-6 水蒸気供給ユニット
B-7 水供給ユニット
B-8 照射台
Claims (9)
- 下記(A)及び/又は(B)を充足する条件下で、活性酸素を殺菌対象物に照射して殺菌することを特徴とする、殺菌方法。
(A)酸化性ガスの存在下
(B)相対湿度50~100%の環境下 - 酸化性ガスが過酸化水素及び過酢酸から選ばれる、請求項1記載の殺菌方法。
- 相対湿度が60~100%である、請求項1記載の殺菌方法。
- 活性酸素が、交流電流を用いてプラズマを発生させ、得られたプラズマを用いて発生させる、請求項1~3いずれか記載の殺菌方法。
- 下記(C)を充足する条件下で、活性酸素を殺菌対象物に照射して殺菌することを特徴とする、殺菌方法。
(C)絶対湿度14.1~25.0g/m3の環境下 - 活性酸素が、交流電流を用いてプラズマを発生させ、得られたプラズマを用いて発生させる、請求項5記載の殺菌方法。
- 活性酸素を照射する活性酸素照射ユニットと、該活性酸素照射ユニットからの活性酸素が酸化性ガスの存在下で殺菌対象物に照射されるよう酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給ユニットを含んでなる殺菌装置。
- 酸化性ガスが過酸化水素及び過酢酸から選ばれる、請求項7記載の殺菌装置。
- 活性酸素が、交流電流を用いてプラズマを発生させ、得られたプラズマを用いて発生させてなる、請求項7又は8記載の殺菌装置。
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