JP6768829B2 - シートベルト装置及び、これを用いた車両用シート - Google Patents

シートベルト装置及び、これを用いた車両用シート Download PDF

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Description

本発明は車両用シートに関し、特に、リトラクタをシートに設けたシートベルト装置に関する。
車両内の乗員の安全を確保するためにシートベルトの役割は極めて大きい。シートベルト装置には、ベルト巻き取り機構(リトラクタ)が備えられており、シートベルトを自動的に巻き取るようになっている。
ところで、シートベルト装置を設置する環境は、車両によって又はシートの構造によって様々である。運転席や助手席のシートベルト装置においては、リトラクタをBピラー下方に配置するとともに、ベルトをガイドする機構をBピラーの上方に配置することが多い。このような状態では、リトラクタから、ベルトガイド機構、乗員前面、バックルという経路でベルトが延びることになる。
近年では、自動車の自動運転の開発が急速に進められており、自動運転が実現すると、シートの配置及び向きが今までより自由になることが予想される。そのような場合には、シートベルトリトラクタは車両(ピラー)に対して設置することができず、シートに設置することになる。そうなると、これまでピラーに設けられてきたシートベルト高さ調整機構を利用することができない。後部座席のシートや、Bピラーが存在しない車両の前席のシートの場合も同様である。
リトラクタを車両に組み込めない場合には、リトラクタを含めたシートベルト装置をシート自体に組み込むことになる。このような構造を採用する場合、リトラクタはシートの下側若しくはシートバック内に配置され、肩の部分(シートバックの上部)にガイド部が設けられる。そして、当該ガイド部を介してベルトが乗員の胸、腰方向に延びる。このとき、シートベルトが乗員の胸部周辺をシートバックに押し付けるような力が作用するため、乗員の胸周辺の圧迫感が増し、快適性が低下する場合がある。
特に、小柄な乗員(大人)の場合には、シートベルトが殆ど肩に接触することなく胸に直接接触するような角度でシートベルトが延びるため、通常の体格の成人男性に比べても圧迫感、不快感が相対的に強くなる。また、チャイルドシートを使用せずにシートに直接着座する子供の場合、胸への圧迫を十分に緩和することが好ましい。
他方、シートベルトによる乗員の胸部への圧迫を低減すべくシートベルトのテンションを下げてしまうと、衝突などの急な減速の際の速やかな乗員拘束に支障が生じてしまう。
本出願の発明者は、車両用シートに関して種々のプリクラッシュ装置をテストしてきたが、本発明のシートベルト装置が最も効果的であることを明らかにした。
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、乗員の拘束性と快適性をバランスよく両立させた新規なシートベルト装置、シートベルトガイド機構及び、これらを用いた車両用シートを提供することを目的とする。
本発明は、また、乗員の体格に応じて適切な拘束性能を発揮可能なシートベルト装置、シートベルトガイド機構及び、これらを用いた車両用シートを提供することを他の目的とする。
上記のような課題を解決するために、本発明は、シートクッション及びシートバックを有する車両用シートに装備されるシートベルト装置において、前記車両用シートに着座した乗員を拘束するシートベルトと;前記車両用シートの内部又は下部において、前記シートベルトを巻き取るリトラクタと;前記シートバックの上部に配置され、前記リトラクタから繰り出されて前記乗員の片方向に延びる前記シートベルトを前記シートバックの上方で支持するガイド支点を含むガイド機構とを備える。そして、前記ガイド機構は、前記シートバックを当該シートバックに着座する乗員の側方から見たときに、前記シートバックの前後厚み方向の所定の範囲内において、前記ガイド支点から前記乗員の肩方向に延びる前記シートベルトの前記シートバックの側面視で長手方向に対する傾斜角を可変とする調整機構部を備える。
ここで、シート下部とは、シートクッションやシートバックよりも下方の部分を含む。また、シートバックの上部とは、シートバックの上端部近傍及び、該上端部よりも上方の部分を含む。
上記のような本発明によれば、車両の状況や乗員の体格に応じてシートベルトの延びる方向を調整でき、乗員の胸部圧迫を回避したり、プリクラッシュ状態での乗員拘束性能を向上させることが可能となる。
好ましくは、前記調整機構部は、車両の衝突時又はその直前に作動する。これは、実際に衝突が発生してエアバッグが展開するような場合だけでなく、自動ブレーキやシートベルトプリテンショナが作動するような衝突以前の状態で、これらのプリクラッシュ安全装置と概ね同時に本発明の調整機構部を作動することを意味する。
前記調整機構部は、車両の衝突時又はその直前に、前記シートベルトの傾斜角を前記シートバックの側面視で長手方向の直交方向に近づく方向にガイドすることが好ましい。このような構成により、車両の衝突時又はその直前の状態の時に、シートベルトが乗員の肩部を下方向に押さえ込むような格好となり、シートベルトによる胸部への必要以上の圧迫を回避すると共に、乗員の拘束性能を向上させることが可能となる。特に、自動ブレーキ装置を装着する等、衝突を予見可能な機能を有する車両の場合には、衝突の前に調整機構部を作動させることにより、実際の衝突発生までに確実な準備ができるという大きなメリットがある。
前記調整機構部は、前記シートバックに対して固定されたベース部と、当該ベース部に設けられた回転軸の周りで車両前後方向にスイング可能なアームを含み、前記アームの、前記ベース部と反対側の先端近傍に前記ガイド支点を設定し、前記アームを前方又は後方にスイングさせることによって、前記ガイド支点を下方に移動させる構造を採用することができる。この場合、上下方向だけでなく前後方向へガイド支点が移動するため、シートベルトが延びるアングルの調整範囲が大きくなるメリットがある。なお、前記調整機構部として、前記ガイド支点を降下させるだけのシンプルな構成を採用することも可能である。
前記調整機構部は、前記シートに子供が着座するときに、前記アームを前方にスイングさせることによって、前記ガイド支点を下方に移動させる構造とすることができる。例えば、衝突事故のような自動車の挙動に関わりなく、子供の乗車時に予めアームを前方に倒して、シートベルトが延びるアングルを最適化することができる。なお、アームを後方に倒すことでも一定の効果を得ることが可能であるが、前方に倒すことによって、子供の胸部への圧迫をより効果的に緩和できるだけでなく、頸部にシートベルトが架かる可能性を低減可能となる。
シートに着座した乗員がシートベルトを装着した後、前記アームを作動させることで、当該乗員の体格を判定可能に構成された判定装置を更に備えることができる。前記判定装置は、前記ガイド機構と前記シートバックとの結合部付近に設けられた荷重センサ、前記リトラクタの前記シートベルトの引出量を計測するセンサ、又は、前記アームの回転軸と同心に回転可能に配置されたドラムと、前記アームを倒して、シートベルトが前記ドラムに接触した時点から前記アームが前記シートバックの側面視で長手方向に直交する位置までの角度を検出するポテンショメータとを備え、検出された前記荷重の値、前記引出量、または前記角度に基づいて乗員の体格を判定する構成とすることができる。
乗員の体格が判別されると、これに応じて、前記ガイド機構と前記リトラクタとの間における前記シートベルトの引き出し荷重を変更することができる。例えば、乗員の体格が一定の基準より大きいと判定された場合には、前記荷重調整機構部は前記シートベルトの引き出し荷重(負荷)が増やすように動作する。
前記荷重調整機構部は、回転軸が平行な一対のシャフトを備え、前記一対のシャフトの間を通る前記シートベルトのルートを変更し、前記シートベルトの引き出し荷重を調整することができる。
なお、以下の説明において、「上」、「下」という概念は、車両の垂直方向の中心から見て天井方向を「上」方向、床方向を「下」方向として、相対的な位置関係を示す。また、「前」、「後」とは、シートに正常着座している乗員の前方及び後方を示し、「側方」とは乗員の左右方向を示す。
図1は、本発明の実施例に係る車両用シートの概略構造を示す側面図(一部透視)である。 図2は、本発明の実施例に係るシートベルトガイド機構の構造を示す模式図である。 図3は、本発明の実施例に係るシートベルト装置の動作を示す説明図である。(A)は通常の使用状態、(B)は緊急作動時の状態、(C)は子供が着座した時の使用状態を示す。 図4は、本発明の実施例に係るシートベルト装置における体格判定動作を示す説明図である。(A)は動作前の状態、(B)は比較的体格の小さな乗員が着座した際の判定動作状態、(C)は比較的体格の大きな乗員が着座した際の判定動作状態を示す。 図5は、本発明の実施例に係るシートベルト装置において、乗員が小柄な成人の場合のガイド機構の動作を示す説明図である。(A)は通常状態、(B)は乗員拘束時の状態を示す。 図6は、本発明の実施例に係るシートベルト装置において、乗員が平均的な成人の場合のガイド機構の動作を示す説明図である。(A)は通常状態、(B)は乗員拘束時の状態を示す。 図7は、本発明の実施例に係るシートベルト装置において、乗員が大柄な成人の場合のガイド機構の動作を示す説明図である。(A)は通常状態、(B)は乗員拘束時の状態を示す。 図8は、本発明の実施例に係るシートベルト装置において、乗員が子供の場合のガイド機構の動作を示す説明図である。(A)は通常状態、(B)は乗員拘束時の状態を示す。 図9は、本発明に係るシートベルト装置における体格判定機構の他の例を示す説明図である。
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に係る車両用シートの概略構造を示す側面図(一部透視)である。図2は、本発明の実施例に係るシートベルトガイド機構(20)の構造を示す模式図である。
本発明の実施例に係る車両用シートは、乗員Pが着座するシートクッション10、乗員Pの背中を支えるシートバック12、シートバック12の上端に設けられたヘッドレスト16とを備えている。このような車両用シートに使用されるシートベルト装置は、シートクッション10に着座した乗員Pを拘束するシートベルト14と;シートの下部において、シートベルト14を巻き取るリトラクタ18と;シートバック12の上部に配置され、ガイド支点26においてシートベルト14を支持するガイド機構20とを備えている。
ガイド機構20は、シートバック12を乗員Pの側方から見たときに、シートバック12の前後厚み方向の所定の範囲内において、ガイド支点26から乗員Pの肩方向に延びるシートベルト14のシートバック12の側面視で長手方向に対する傾斜角を可変とする調整機構部(22,24)を備えている。ガイド機構20がシートバック12の厚みを超えて前後に大きくはみ出さないようにすることで、当該乗員Pの他にも他の搭乗者が衝突の衝撃でガイド機構20に衝突して障害を受ける可能性を抑制している。ただし、前記「シートバックの前後厚み方向の所定の範囲内」とは、必ずしもシートバックの前後厚みを厳密にはみ出さないということではなく、乗員に対して不快感を与えず、乗員の動きを妨げず、乗員に過剰に干渉しない程度のはみ出しは許容される。
本実施例に係る車両用シートは、例えば、乗用車やワゴン車の後部座席のシートに適用できる他に、Bピラーを備えない車両の運転席又は助手席のシートに適用可能である。図1において、符号40は、摩擦抵抗によってベルト14に生じる荷重(負荷)を調整するための荷重調整機構であり、後に詳述する。
図2(A)に示すように、ガイド機構20の調整機構部(22、24)は、シートバック12に対して固定されたベース部22と、当該ベース部22に設けられた回転軸22aの周りで乗員Pの前後方向にスイング可能なアーム24を含む。アーム24の、ベース部22と反対側の先端近傍には、シャフト状のガイド支点26が設けられている。アーム24のスイング動作は、図示しないモータによって行うことができ、前後への作動範囲は、例えば、180°(前方90°、後方90°)に設定することができる。
ここで、ベース部22はシートバック12の内部に設置することができるが、ガイド支点26は必ずシートバック12の外部に配置することが必要である。
図2(B)に示すように、アーム24を後方にスイングさせることで、ガイド支点26を下方に移動させることができる。この場合、上下方向だけでなく前後方向へガイド支点26が移動するため、シートベルト14が延びるアングルの調整範囲が大きくなる。なお、(B)図の場合、乗員Pが成人であることを想定している。
図2(C)に示すように、調整機構部(22,24)は、シートに子供が着座するときに、アーム24を前方にスイングさせることによって、ガイド支点26を下方に移動させる構造とすることができる。例えば、衝突事故のような自動車の挙動に関わりなく、子供の乗車時に予めアーム24を前方に倒して、シートベルト14が延びるアングルを最適化することができる。なお、アーム24を後方に倒すことでも一定の効果を得ることが可能であるが、前方に倒すことによって、子供の胸部への圧迫をより効果的に緩和できるだけでなく、頸部にシートベルト14が架かる可能性を低減可能となる。
図3は、本発明の実施例に係るシートベルト装置の動作を示す説明図であり、図2の(A),(B),(C)に各々対応する。すなわち、(A)は成人Pが着座した通常の使用状態、(B)は成人Pが着座して緊急作動時の状態、(C)は子供が着座した時の使用状態を示す。なお、説明の便宜上、ガイド支点26以外のガイド機構の構成部材の図示を省略する。
図2(A)、図3(A)の状態では、シートベルガイド支点26が最も高い位置にある。この状態から、例えば、衝突予測信号が出力された場合、図2(B)、図3(B)に示すように、アーム24を後方に倒して、ガイド支点26を低い位置に移動させ、シートベルト14が延びる角度(傾斜角)を水平(シートバックの側面視で長手方向の直交方向)に近づける。そうすると、シートベルト14が乗員Pの肩部を下方向に押さえ込むような格好となり、シートベルト14による胸部への必要以上の圧迫を回避できると共に、乗員Pの拘束性能を向上させることが可能となる。
一方、図2(C)、図3(C)に示すように、乗員Pが子供や体格が小さい成人の場合には、先の説明と重複するが、衝突事故のような自動車の挙動に関わりなく、着座時に予めアーム24を前方に倒して、シートベルト14が延びるアングル(傾斜角)を水平に近づける。
上記のように、調整機構部20は、車両の衝突時又はその直前に作動する。すなわち、実際に衝突が発生してエアバッグ(図示せず)が展開するような場合だけでなく、自動ブレーキやシートベルトプリテンショナが作動するような衝突以前の状態で、調整機構部20作動させることができる。特に、自動ブレーキ装置を装着する等、衝突を予見可能な機能を備えた車両の場合には、衝突以前に調整機構部20を作動させることにより、実際の衝突発生までに確実な準備ができるというメリットがある。
図4は、本発明の実施例に係るシートベルト装置における体格判定動作を示す説明図である。(A)は動作前の状態、(B)は比較的体格の小さな乗員が着座した際の判定動作状態、(C)は比較的体格の大きな乗員が着座した際の判定動作状態を示す。
図4(A)〜(C)に示すように、本実施例においては、アーム24を作動させることで、シートに着座した乗員Pの体格を判定可能となっている。具体的には、(A)に示すような動作前の初期状態から、アーム24を後方にゆっくり倒し、アーム24の回転軸22aと同心に回転可能に配置されたドラム44にシートベルト14が接触した時点からアーム24が水平H(シートバックの側面視で長手方向の直交方向)になるまでの角度(θ1,θ2)をポテンショメータによって検出する。(B)に示すように、比較的体格の小さな乗員Pの場合には、ドラム44の回転角度θ1が小さくなる。一方、(C)に示すように、比較的体格の大きな乗員Pの場合にはドラム44の回転角度θ2が大きくなる。
乗員Pの体格判定が終了すると、アーム24は初期位置に戻る。そして、衝突の可能性が高まった時点で、ガイド支点26とリトラクタ18との間におけるシートベルト14の引き出し荷重を調整する。例えば、乗員Pの体格が一定の基準より大きいと判定された場合には、荷重調整機構部40によってシートベルト14の引き出し荷重(負荷)が増加させる。
荷重調整機構部40は、回転軸が平行な一対のシャフト40L,40Rを備え、これらのシャフト40L,40Rの間を通るシートベルト14の経路を変更し、シートベルト14とシャフト40L,40Rとの摩擦力を変えることで、シートベルト14の引き出し荷重を調整する。このように、荷重調整機構部40は、ロードリミッタとしての役割を担うことができる。なお、荷重調整機構部40は、シートフレーム50に対して固定されている。
次に、本実施例の動作について、図2,図3に加えて、図5〜図8を参照して、更に詳細に説明する。図5〜図8は、体格判定の結果に基づくガイド機構20の動作を示す説明図である。これら図5〜図8において、(A)は通常状態、(B)は乗員拘束時の状態を示す。
まず、乗員Pが着座した時点で、上述した方法により乗員の体格を判定する。ここで、乗員Pが小柄な成人(AF05)の場合には衝突可能性が高まった時点で、図5(B)に示すように、モータによってアーム24を後方に回転させると同時又はその直後に、ツインシャフト40L,40Rを体格に応じた角度(例えば、45°)だけ回転させ、シートベルト14を半固定の状態とする。この時、ツインシャフト40L,40Rに対するシートベルト14の巻き付く範囲が短いため、シートベルト14へのフリクションは比較的小さくなる。
乗員Pが平均的な成人(AM50)の場合には、衝突可能性が高まった時点で、図6(B)に示すように、モータによってアーム24を後方に回転させると同時又はその直後に、ツインシャフト40L,40Rを体格に応じた角度(例えば、135°)だけ回転させ、シートベルト14を半固定の状態とする。この時、ツインシャフト40L,40Rに対するシートベルト14の巻き付く範囲は、図5(B)の場合より長くなるため、その分だけ、シートベルト14へのフリクションは大きくなる。
乗員Pが大柄な成人(AM95)の場合には、衝突可能性が高まった時点で、図7(B)に示すように、モータによってアーム24を後方に回転させると同時又はその直後に、ツインシャフト40L,40Rを体格に応じた角度(例えば、180°)だけ回転させ、シートベルト14を半固定の状態とする。この時、ツインシャフト40L,40Rに対するシートベルト14の巻き付く範囲は、図5(B)、図6(B)の場合より長くなるため、その分だけ、シートベルト14へのフリクションは大きくなる。
乗員Pが一定基準より小柄な子供(Q6/10))の場合には、予め、図8(A)に示すように、アーム24を前方に倒して固定する。そして、荷重調整機構部40においては、車両の衝突可能性が高まった場合にも、図8(B)に示すように、シャフト40L,40Rを回転させず、又は若干回転させてシートベルト14に加わる荷重(フリクション)を最小限とする。
その後、衝突回避が不可能と判断された場合には、リトラクタ18のプリテンショナ(火薬)が作動し、シートベルト14にテンションが加わり、乗員Pをしっかりと座席に対して拘束し、例えば、エアバッグ(図示せず)の展開範囲に乗員Pが移動しないようにして衝突に備える。上述のように、ツインシャフト40L,40Rを用いてシートベルト14に加わる荷重を調整しているため、シートベルト14に最初のプリテンションがかかった後に、体格の大きな乗員の場合にはシートベルト14が弛みにくく、拘束力が大きくなる。一方で、、体格の小さな乗員の場合にはシートベルト14が比較的弛み易く、過剰な圧迫を防ぐことが可能となる。
衝突が回避された場合には、ツインシャフト40L,40Rを回転させてシートベルト14を緩めながら、アーム24を前方に回転させて、図5(A)、図6(A)、図7(A)に示された初期位置に戻すとともに、ツインシャフト40L,40Rを更に回転させて初期位置に戻す。
なお、乗員Pの体格に応じてツインシャフト40L,40Rを回転させるタイミングとしては、乗員の体格を検知した直後や、上述したように、衝突可能性が高まった段階や、衝突の直後とすることもできる。ここで、衝突可能性が高まった段階又は、衝突の直後でツインシャフト40L,40Rを作動させる場合には、アーム24の動作と連動させることができる。
図9は、本発明に係るシートベルト装置における体格判定機構の他の例を示す説明図である。この例においては、ベース部22の内部に、回転軸22aの軸受け400に対してスラスト荷重を検出する荷重センサ402を設けている。そして、アーム24を後方に倒した時(図4参照)の荷重センサ402の出力変化に基づいて乗員の体格を判定するようになっている。また、乗員の体格判定機構に用いられるセンサとしては、他の形態のものを採用することができる。例えば、アーム24の動作によって特定の部材間に生じる歪みを検出するような機構が考えられる。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
本発明の特徴的なガイド機構20が正常に動作しない場合(例えば、必要な信号を受信しない時)を想定して、従来から使用されているような、火工技術によるプリテンショナを、例えば、シートバック12の下部に装備することで、シートベルトに対して最低限のテンションを加えることができる。また、プリテンショナを作動させる火工エネルギーを、ツインシャフト40L,40Rを回転させるために使用し、シートベルト14に適切な摩擦抵抗を付与し、シートベルト14に所望のテンションを加えることができる。

Claims (17)

  1. シートクッション及びシートバックを有する車両用シートに装備されるシートベルト装置であって
    前記車両用シートに着座した乗員を拘束するシートベルトと;
    前記車両用シートの内部又は下部において、前記シートベルトを巻き取るリトラクタと;
    前記シートバックの上部に配置され、前記リトラクタから繰り出されて前記乗員の肩方向に延びる前記シートベルトを前記シートバックの上方で支持するガイド支点を含むガイド機構と
    着座した乗員が前記シートベルトを装着した後、当該乗員の体格を判定可能に構成された判定装置と、
    前記判定装置による判定の結果に応じて、前記ガイド機構と前記リトラクタとの間における前記シートベルトの引き出し荷重を変更する荷重調整機構部とを備え、
    前記ガイド機構は、前記シートバックを当該シートバックに着座する乗員の側方から見たときに、前記シートバックの前後厚み方向の所定の範囲内において、前記ガイド支点から前記乗員の肩方向に延びる前記シートベルトの前記シートバックの側面視で長手方向に対する傾斜角を可変とする傾斜角調整機構部を備え、
    前記傾斜角調整機構部は、前記シートバックに対して固定されたベース部と、当該ベース部に設けられた回転軸の周りで車両前後方向にスイング可能なアームを含み、前記アームの、前記ベース部と反対側の先端近傍に前記ガイド支点が設けられ、前記アームを前方又は後方にスイングさせることによって、前記ガイド支点を下方に移動させる構造であり、
    前記判定装置は、前記ガイド機構と前記シートバックとの結合部付近に設けられた荷重センサ、前記リトラクタの前記シートベルトの引出量を計測するセンサ、又は、前記アームの回転軸と同心に回転可能に配置されたドラムと、前記アームを倒して、シートベルトが前記ドラムに接触した時点から前記アームが前記シートバックの側面視で長手方向に直交する位置までの角度を検出するポテンショメータとを備え、検出された前記荷重の値、前記引出量、または前記角度に基づいて乗員の体格を判定するように構成されたことを特徴とするシートベルト装置。
  2. 前記傾斜角調整機構部は、車両の衝突時又はその直前に作動することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
  3. 前記傾斜角調整機構部は、車両の衝突時又はその直前に、前記シートベルトの前記傾斜角を前記シートバックの側面視で長手方向の直交方向に近づく方向にガイドすることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト装置。
  4. 前記傾斜角調整機構部は、車両の衝突時又はその直前に、前記ガイド支点を降下させるように動作することする請求項2又は3に記載のシートベルト装置。
  5. 前記傾斜角調整機構部は、乗員の体格に応じて可動範囲を調整可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のシートベルト装置。
  6. 前記傾斜角調整機構部は、前記シートに子供が着座するときに、前記アームを前方にスイングさせることによって、前記ガイド支点を下方に移動させることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のシートベルト装置。
  7. 前記判定装置によって判定された乗員の体格が大きい場合には、前記荷重調整機構部は前記シートベルトの引き出し荷重(負荷)を大きくし、判定された乗員の体格が小さい場合には前記荷重調整機構部は前記シートベルトの引き出し荷重(負荷)を小さくするように動作することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のシートベルト装置。
  8. 前記荷重調整機構部は、回転軸が平行な一対のシャフトを備え、
    前記一対のシャフトの間を通る前記シートベルトのルートを変更し、前記シートベルトの引き出し荷重を調整することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のシートベルト装置。
  9. 請求項1乃至8の何れか1項に記載のシートベルト装置を備えた車両用シート。
  10. シートベルトを巻き取るリトラクタを有する車両用シートのシートバックの上部に配置されたシートベルトガイド機構であって
    前記シートバックに対して固定されたベース部と、当該ベース部に設けられた回転軸の周りで車両前後方向にスイング可能なアームとを含む傾斜角調整機構部
    前記アームの、前記ベース部と反対側の先端近傍において前記シートベルトを支持するガイド支点と、
    着座した乗員が前記シートベルトを装着した後、当該乗員の体格を判定可能に構成された判定装置と、
    前記判定装置による判定の結果に応じて、前記ガイド機構と前記リトラクタとの間における前記シートベルトの引き出し荷重を変更する荷重調整機構部とを備え、
    前記傾斜角調整機構部は、前記アームを前方又は後方にスイングさせることによって、前記シートバックを乗員の側方から見たときに、前記シートバッグの前後厚み方向の所定範囲内において、前記ガイド支点を下方に移動させることで、前記ガイド支点から前記乗員の肩方向に延びる前記シートベルトの前記シートバックの側面視で長手方向に対する傾斜角を水平に近づけるように構成され、
    前記判定装置は、前記ガイド機構と前記シートバックとの結合部付近に設けられた荷重センサ、前記リトラクタの前記シートベルトの引出量を計測するセンサ、又は、前記アームの回転軸と同心に回転可能に配置されたドラムと、前記アームを倒して、シートベルトが前記ドラムに接触した時点から前記アームが前記シートバックの側面視で長手方向に直交する位置までの角度を検出するポテンショメータとを備え、検出された前記荷重の値、前記引出量、または前記角度に基づいて乗員の体格を判定するように構成されたことを特徴とするシートベルトガイド機構。
  11. 前記傾斜角調整機構部は、車両の衝突時又はその直前に作動することを特徴とする請求項10記載のシートベルトガイド機構。
  12. 前記傾斜角調整機構部は、車両の衝突時又はその直前に、前記シートベルトの前記傾斜角をシートバックの側面視長手方向に直交する方向に近づく方向にガイドすることを特徴とする請求項11に記載のシートベルトガイド機構。
  13. 前記傾斜角調整機構部は、車両の衝突時又はその直前に、前記ガイド支点を降下させるように動作することする請求項11又は12に記載のシートベルトガイド機構。
  14. 前記傾斜角調整機構部は、乗員の体格に応じて可動範囲を調整可能であることを特徴とする請求項10乃至13の何れか1項に記載のシートベルトガイド機構。
  15. 前記傾斜角調整機構部は、前記シートに子供が着座するときに、前記アームを前方にスイングさせることによって、前記ガイド支点を下方に移動させることを特徴とする請求項14に記載のシートベルトガイド機構。
  16. 前記判定装置によって判定された乗員の体格が大きい場合には、前記荷重調整機構部は前記シートベルトの引き出し荷重(負荷)を大きくし、判定された乗員の体格が小さい場合には前記荷重調整機構部は前記シートベルトの引き出し荷重(負荷)を小さくするように動作することを特徴とする請求項15に記載のシートベルトガイド機構。
  17. 前記荷重調整機構部は、回転軸が平行な一対のシャフトを備え、
    前記一対のシャフトの間を通る前記シートベルトのルートを変更し、前記シートベルトの引き出し荷重を調整することを特徴とする請求項15又は16に記載のシートベルトガイド機構。
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