JP2514719Y2 - シートベルトの引出し角度調整装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は車両用座席に備えられるシートベルトの引出
し角度調整装置に関する。

〔従来の技術〕

例えば乗用車においては、衝突事故時等に乗員が座席
から前方へ飛び出さないように、乗員を座席に拘束する
ためのシートベルトが備えられている。

従来このシートベルトの引出口は車体内壁に設けら
れ、着座者はこの車体内壁に設けられた引出口よりシー
トベルトを引出して身体に装着する。そしてこのように
シートベルトを装着した状態で着座者は、スライドレー
ルを操作して座席を前後に移動させたり、リクライニン
グ装置を操作してシートバックを傾斜させたりして所望
の着座姿勢を得る。

〔考案が解決しようとする課題〕 しかしながら、この場合必ずしもシートベルトげ適切
に着座を拘束していないという問題がある。

即ち、シートベルトの引出し方向は着座者の体格によ
って異なり、例えば座高の高い着座者の場合はシートベ
ルトは比較的上方向に引出され、座高の低い着座者の場
合はシートベルトは下方向に引出されることになるが、
従来このシートベルトの引出口は固定であるためシート
ベルトの引出し角度は一定で、このため着座者を体格に
応じた最適な状態で拘束できず、また着座状態において
シートベルトを引出しにくかったり、シートベルトが引
出口で折曲げられて強く擦られる状態となりシートベル
トに傷みが生じる等、種々の不具合があった。

本考案は斯る点に鑑みてされたもので、着座者の体格
に応じてシートベルトの引出し角度を調整できる装置を
提供し、上記の問題点を解消することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上述の目的を達成するための本考案装置は、 シートバックの上部に内設され、その内部にシートベ
ルトを巻回したシートベルトリトラクターが回転自在に
支持されると共に、このシートベルトリトラクターに対
応して前面側に上下方向に大きく開放される開口を有す
るハウジングと、 このハウジング内に、開口を閉塞するようにシートベ
ルトリトラクターと同心上に上下方向に移動可能に支持
され、シートベルトリトラクターから引出されたシート
ベルトが挿通されるスリット状の通し孔を有するベルト
ガイド部材と、 このベルトガイド部材を任意の上下移動位置において
固定するロック機構と、 を備えて成るものである。

〔作用〕

このように構成される本考案装置においては、ベルト
ガイド部材を移動させてその通し孔の位置を上下に調整
することによりシートベルトの引出し角度が可変され
る。そしてシートベルトが最適の引出し角度となったと
ころでロック機構によってベルトガイド部材を固定する
ことによりシートベルトの引出し角度はその状態で固定
され、このため着座者が最適な状態で拘束される。

〔実施例〕

以下、図面を参照しながら本考案の実施例を説明す
る。

図において（１）は車両用座席を示し、（２）はその
シートクッション、（３）はシートバックで、このシー
トバック（３）の上部一端側に本考案装置（４）が内蔵
されている。

（５）はこの装置の外筐即ちハウジングで、このハウ
ジング（５）は、シートバック（３）の骨格を成すシー
トバックフレーム（3a）に固着されたベースブラケット
（６）に溶接され、その前面部には後述するシートベル
トが導出される開口（７）が設けられている。尚この開
口（７）は上下方向に大きく開放され、即ちシートベル
トの引出角度調整を行なうに十分な高さ（上下幅）を有
している。

そしてこのハウジング（５）の内部にはシートベルト
（８）を巻回したシートベルトリトラクター（９）が配
設されている。

このシートベルトリトラクター（９）は従来一般に使
用されているシートベルトリトラクターと同様の構成
で、即ちその内部には図示せずともバネによるリターン
機構が配設され、これによってシートベルト（８）は常
に巻取られる方向に付勢されており、またシートベルト
（８）が急激に引出されると直ちにシートベルト（８）
をロックするロック機構を備えている。このシートベル
トリトラクター（９）は、ベースブラケット（６）に固
定ボルト（10）によって固定された支持ブラケット（1
1）とハウジング（５）とによって支持されているもの
で、即ちハウジング（５）の両側部間には軸受筒体（1
2）を介して支軸（13）が軸支され、この支軸（13）が
支持ブラケット（11）を貫通してシートベルトリトラク
ター（９）を回転自在に支持している。

尚、このシートベルトリトラクター（９）から導出さ
れるシートベルト（８）の先端部は座席（１）の側部に
固着されており、またこのシートベルト（８）の中途部
には連結金具（14）が装着され、着座時にはシートベル
ト（８）を引出してこの連結金具（14）を車体床面側に
固定されたバックル（15）に連結する如く成されてい
る。

さらにハウジング（５）の内部においては、シートベ
ルトリトラクター（９）から引出されるシートベルト
（８）の角度を可変するためのベルトガイド部材（16）
が開口（７）を閉塞するように配されている。

このベルトガイド部材（16）は円弧状の中央板部（16
a）と、その両端から直角に折曲される両側板部（16b）
とにより成り、中央板部（16a）がシートベルトリトラ
クター（９）の前方を覆うような状態で側板部（16b）
において支軸（13）に上下方向に回動自在に支持されて
いる。尚、中央板部（16a）はこの軸支部即ち支軸（1
3）を中心とする円弧状に形成されている。

そしてこのベルトガイド部材（16）の中央板部（16
a）には、ハウジング（５）の開口（７）に対応してス
リット状の通し孔（17）が穿設されており、この通し孔
（17）にシートベルト（８）が挿通され、即ちシートベ
ルトリトラクター（９）に巻回されたシートベルト
（８）はこの通し孔（17）を介して前方へ引出される如
く成されている。従ってこのベルトガイド部材（16）の
上下回動によってシートベルト（８）の引出し角度が変
化することになる。

またハウジング（５）内においては、ベルトガイド部
材（16）を任意の回動位置で固定するためのロック機構
（18）が備えられている。

即ち、ベルトガイド部材（16）の側板部（16b）には
固定円板（19）が固着され、その周縁部の一部には所定
間隔で複数（本例では４箇所）の係合凹部（19a）が形
成されている。一方この固定円板（19）の下方において
ハウジング（５）の側部には軸受筒体（20）を介して操
作軸（21）が軸支されており、この操作軸（21）の外端
には操作ハンドル（22）が取付けられ、内端には固定円
板（19）に対応してロックアーム（23）が固定されてい
る。このロックアーム（23）はその先端部に、固定円板
（19）の係合凹部（19a）に係合する凸部（23a）が形成
され、また基端部には前方へ向って直角に突出する突片
部（23b）を有している。

また軸受筒体（20）の周囲にはねじりコイルバネ（2
4）を嵌着してあり、その一端部はロックアーム（23）
の突片部（23b）の上縁に係着され、他端部はハウジン
グ（５）の内面所定部位に当接係止されており、このね
じりコイルバネ（24）の偏倚力によってロックアーム
（23）は常にその凸部（23a）が固定円板（19）の係合
凹部（19a）に係合する方向へ付勢されている。

以上の構成によって明らかな如く、本例装置（４）に
よれば座席に着座する乗員の体格に応じてシートベルト
（８）の引出し角度を自由に調整できる。

即ち、通常の状態ではロックアーム（23）が固定円板
（19）の係合凹部（19a）に係合されることによりベル
トガイド部材（16）は固定状態にあり、このためシート
ベルト（８）の引出し角度は一定であるが、操作ハンド
ル（22）回転操作してねじりコイルバネ（24）の偏倚力
に抗してロックアーム（23）を固定円板（19）の係合凹
部（19a）から抜脱させることによりベルトガイド部材
（16）は上下方向に回動自在となる。この状態でシート
ベルトを上下動させることによってベルトガイド部材
（16）を回動させて通し孔（17）の高さ位置を移動し、
シートベルト（８）の引出し角度が所望の角度となった
状態で操作ハンドル（22）から手を離すとロックアーム
（23）がその対応している固定円板（19）の係合凹部
（19a）に係合し、このためベルトガイド部材（16）は
その回動位置でロックされる。このようにして本例装置
（４）ではシートベルト（８）の引出し角度を着座者の
体格に応じた適切な角度に段階的（本例では４段階）に
設定することができる。

例えば、座高の高い乗員が着座する場合は、第３図Ａ
に示すようにベルトガイド部材（16）の通し孔（17）を
高い位置に設定してシートベルト（８）が上方へ引出さ
れるようにし、また座高の低い乗員が着座する場合は、
同図Ｂに示すようにベルトガイド部材（16）の通し孔
（17）を低い位置に設定してシートベルト（８）が下方
へ引出されるようにすると、各着座者は体格に応じた最
も適切な状態で拘束され、またシートベルトの装着動作
においてシートベルト（８）を引出し易く、さらにはシ
ートベルト（８）が引出口即ち通し孔（17）で折曲げら
れることもないのでシートベルト（８）に傷みが生じる
ことはない。

以上、本考案の一実施例について説明したが、本考案
はこの実施例の構成に限定されるものではない。

例えば、本例においてはベルトガイド部材（16）のロ
ック機構として固定円板（19）に設けられた係合凹部
（19a）にロックアーム（23）を係合することによって
シートベルトの引出し角度を段階的に調整するようにし
た構成を示したが、これに変えて例えばいわゆるウィン
ドレギュレータ型の摩擦ロック装置や螺子機構等を用い
ることができ、この場合は無段階的調整が可能となる。

さらにその他各部の構成においても本例に示した以外
に種々の変化変更が可能であり、本例が本考案を特定す
るものではないことは勿論である。

〔考案の効果〕

以上の如く本考案装置は座席のシートバック側に配さ
れ、シートベルトの引出し角度を着座者の体格に応じて
自由に調整することができるので、着座者を常に最適な
状態で拘束でき、しかもシートベルトの装着動作におい
ては着座状態でシートベルトを引出し易く、またシート
ベルトが引出口で折曲げられることはないのでシートベ
ルトに痛みが生じにくい。また特に本考案装置では、ベ
ルトガイド部材とシートベルトリトラクターが同心上に
あるあめ、構造的にコンパクトにまとまり、しかもベル
トガイド部材の通し孔をシートベルトの引出し方向に確
実に対応させることができるので、シートベルトの引出
し、引入れがスムーズに行なわれ、さらには閉塞の見栄
えも良い。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案装置の一部切欠いた正面図、第２図は本
考案装置を備えた車両用座席の正面図、第３図Ａ及びＢ
は本考案装置の動作を説明する縦断側面図、第４図は本
考案装置の外観を示す斜視図である。 図中、（３）はシートバック、（５）はハウジング、
（８）はシートベルト、（９）はシートベルトリトラク
ター、（16）はベルトガイド部材、（17）は通し孔、
（18）はロック機構である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 渡辺 隆雄 東京都昭島市松原町３丁目２番12号 株 式会社タチエス内 (72)考案者 秋山 政己 東京都昭島市松原町３丁目２番12号 株 式会社タチエス内 (56)参考文献 実開 昭49−68120（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭62−171336（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭55−10175（ＪＰ，Ｙ２)

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シートバックの上部に内設され、その内部
   にシートベルトを巻回したシートベルトリトラクターが
   回転自在に支持されると共に、このシートベルトリトラ
   クターに対応して前面側に上下方向に大きく開放される
   開口を有するハウジングと、 このハウジング内に、上記開口を閉塞するように上記シ
   ートベルトリトラクターと同心上に上下方向に移動可能
   に支持され、上記シートベルトリトラクターから引出さ
   れたシートベルトが挿通されるスリット状の通し孔を有
   するベルトガイド部材と、 このベルトガイド部材を任意の上下移動位置において固
   定するロック機構と、 を備えて成るシートベルトの引出し角度調整装置。