JP2515542Y2 - 椅子の背もたれ支持装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、椅子の背もたれ支持装
置に関し、特に、背もたれの弾力性を調整する機構を改
良する技術に係り、例えば、オフィス用の椅子に利用し
て有効なものに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、オフィス用の回転椅子におけ
る背もたれ支持装置においては、事務の作業能率や座り
心地を改善するため、背もたれをスプリングによって懸
架することにより、背もたれが所定の反発力下でもって
後方に倒れ得るように構成されている。

【０００３】すなわち、従来の椅子の背もたれ支持装置
においては、座板の下部における脚柱支持枠に背もたれ
の支持腕が回動自在に軸支されており、前記支持腕が前
記支持枠に反力をとったスプリングによって懸架されて
いる。

【０００４】なお、この種の椅子の背もたれ支持装置を
述べてある例として、実公昭４７−２６０８４号公報、
実公昭５５−５１３０８号公報および実開昭６３−１４
２１４１号公報等がある。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
椅子の背もたれ支持装置においては、いずれもスプリン
グが垂直方向に配設されているため、次のような問題点
が発生する。

【０００６】 スプリングの弾発力の調整可能範囲を
充分に確保するためにスプリングを長く設計すると、支
持枠の厚さが大きくなるため、意匠的効果が損なわれ
る。

【０００７】 スプリングの長さを短く抑えたままで
あると、スプリングの弾発力を強く設定しなければなら
ないため、反発力についての微調整が困難になり、座り
心地が低下する。

【０００８】本考案の目的は、支持枠の厚さを小さく抑
制することができ、しかも、スプリングによる着席者へ
の反発力の調整可能範囲を広く、かつ、微妙に調整する
ことができる椅子の背もたれ支持装置を提供することに
ある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本考案に係る椅子の背も
たれ支持装置は、座板の下部における脚柱支持枠に背も
たれの支持腕が回動自在に軸支されており、前記支持腕
が前記支持枠に反力をとったスプリングによって懸架さ
れている椅子の背もたれ支持装置において、前記支持枠
に互いに略直角に交差する水平部と垂直部とを備えたレ
バーが回動自在に軸支されており、前記スプリングとし
て圧縮コイルスプリングが使用され、この圧縮コイルス
プリングが前記支持枠内に前後方向に配設されて、前記
レバーの垂直部に係止されており、他方、前記レバーの
水平部には前記支持腕がロッドを介して連動されている
ことを特徴とする。

【００１０】

【作用】前記した手段によれば、圧縮コイルスプリング
が前後方向に配設されているため、支持枠の厚さが圧縮
コイルスプリングの長さによって厚くなってしまうこと
はない。

【００１１】他方、圧縮コイルスプリングの長さによっ
て支持枠の厚さが厚くならないため、圧縮コイルスプリ
ングの長さは充分に長く設計することができる。したが
って、弾発力の弱い圧縮コイルスプリングを長く使用す
ることにより、圧縮コイルスプリングの有効長さを充分
に活用することができるため、良好な座り心地を確保す
ることができる。

【００１２】

【実施例】図１は本考案の一実施例である椅子の背もた
れ支持装置を示す側面断面図、図２はその作用を説明す
るための側面断面図、図３は平面図、図４（ａ）、
（ｂ）は背面図および部分側面図である。

【００１３】本実施例において、本考案に係る椅子の背
もたれ支持装置は、オフィス用の回転椅子１（一部のみ
が図示されている。）に使用されている。この回転椅子
１は脚柱２を備えており、脚柱２は回転足（図示せず）
に垂直に配されて、水平面内で回転し得るように支持さ
れている。脚柱２の中間部には円筒形状のカバー３が外
挿されている。

【００１４】脚柱２の上端部には支持枠７が略水平に配
されて、支持されている。すなわち、支持枠７には上方
すぼまりのテーパを有する支持パイプ４が垂直方向に配
されて溶接等の適当な手段により固定されており、この
支持パイプ４に脚柱２の上端部に形成されたテーパ部が
下から嵌入されている。支持枠７上には座板５が被せら
れて固定されている。座板５上にはひじ掛けを固定する
ためのひじ掛け取付板６が左右方向に横断するように架
設されている。

【００１５】支持枠７はアルミダイキャスト等により皿
形状に一体成形されている。この支持枠７には本実施例
に係る背もたれ支持装置１０が組み付けられている。

【００１６】すなわち、支持枠７の上部略中央位置には
背もたれ支軸１１が左右方向に水平に架設されており、
この支軸１１により背もたれの支持腕１２が一対、上下
方向に回動自在に軸支されている。両支持腕１２、１２
は左右対称に離間して配されて、その前端部が支軸１１
の左右両端部に軸支されている。また、両支持腕１２、
１２の後端部は支持枠７から後方に突出されており、そ
の突出端部は垂直方向上向きに略直角に屈曲されてい
る。そして、支持腕１２の上端部には背もたれ（図示せ
ず）が取り付けられるようになっている。

【００１７】支持枠７の底壁上には前側スプリングシー
ト１３が背もたれ支軸１１の前方位置に配されて、略垂
直に立脚されて溶接により固着されている。このスプリ
ングシート１３には圧縮コイルスプリング（以下、スプ
リングという。）１４の前端が係止されており、このス
プリング１４は水平方向（前後方向）後ろ向きに配設さ
れている。

【００１８】支持枠７にはレバー支軸１５が略中央部に
おける背もたれ支軸１１の略真後ろの位置に配されて左
右方向に水平に架設されており、このレバー支軸１５に
はパイプ１６が回転自在に外嵌されている。パイプ１６
の外周にはレバー１７が一体回転するように溶接により
固着されている。レバー１７は鋼板等が用いられて断面
形状が略Ｌ字形状の板体に一体成形されており、互いに
略直角に交差する水平部１８と垂直部１９とがそれぞれ
形成されている。

【００１９】レバー１７の垂直部１９には後側スプリン
グシート２１が、左右方向かつ水平に軸架されたピン２
０により上下方向に回動し得るように軸架されており、
このスプリングシート２１には前記スプリング１４の後
端が係止されている。そして、スプリング１４は前側シ
ート１３と後側シート２１との間において、適度に圧縮
変形されて常時蓄力状態になるように構成されている。

【００２０】他方、レバー１７の水平部１８の自由端部
には長孔２２が、左右方向の中央に配されて、前後方向
に長く延在するように一定幅に開設されており、この長
孔２２にはスプリング力調整ロッド（以下、ロッドとい
う。）２４の上端部が挿通されて係止されている。

【００２１】すなわち、このロッド２４はその上端部が
Ｔ字形状に形成されており、その縦部材２５が長孔２２
に上側から挿通されて、その横部材２６がレバー１７の
水平部１８における長孔２２の左右両側の開口縁辺部に
引っ掛けられた状態になっている。

【００２２】ロッド２４の縦部材２５の下端部は、支持
枠７の底壁における長孔２２の真下に開設された挿通孔
２３を挿通されて、支持枠７の下方に突出されており、
その突出端部には雄ねじ部２７が刻設されている。ロッ
ド２４の雄ねじ部２７にはグリップ２８が進退自在に螺
合されている。

【００２３】また、ロッド２４の縦部材２５の下端部に
は当て枠２９が支持枠７とグリップ２８との間に位置さ
れて外挿されている。すなわち、当て枠２９にはロッド
挿通孔３０が下端部の左右方向中央部に配されて円形に
開設されており、この挿通孔３０にロッド２４の縦部材
２５が摺動自在に挿通されている。

【００２４】当て枠２９は化粧鋼板が用いられて略アン
グル形状に一体成形されており、ロッド挿通孔２３を含
む支持枠７の後端部を被覆するように構成され、かつ、
配設されている。当て枠２９におけるロッド挿通孔３０
の上側近傍位置には上限ストッパ３１が上向きに突設さ
れており、当て枠２９の上端部には下限ストッパ３２が
前方向に略直角に屈曲されている。

【００２５】他方、支持枠７の底壁における後端部には
固定ストッパ３３が固定されている。この固定ストッパ
３３はゴムまたは樹脂の弾性体が用いられて略直方体形
状に一体成形されている。この固定ストッパ３３に上限
ストッパ３１が下側から当接することにより、当て枠２
９の上限位置が規定され、下限ストッパ３２が上側から
当接することにより、当て枠２９の下限位置が規定され
るようになっている。

【００２６】また、当て枠２９の上部には一対の支持腕
連結部３４、３４が左右対称に配されて、略正方形形状
に切り欠かれており、両連結部３４、３４には左右の支
持腕１２、１２がそれぞれ挿入されて溶接により固着さ
れている。したがって、当て枠２９は支持腕１２、１２
と一体移動するようになっている。

【００２７】なお、支持枠７の周囲は、樹脂等が用いら
れて一体成形されたカバー３５により適宜被覆されるよ
うになっている。

【００２８】次に作用を説明する。椅子への着席者が背
もたれにもたれると、背もたれの支持腕１２の垂直部が
後方に倒れ、図２に示されているように、支持腕１２の
水平部が支軸１１を中心にして下方に回動する。

【００２９】支持腕１２が下方に回動すると、この支持
腕１２の後端部下側に連結されている当て枠２９が押し
下げられる。この当て枠２９は下限ストッパ３２が固定
ストッパ３３に当接するまで下降することができる。そ
して、下限ストッパ３２が固定ストッパ３３に当接した
後は、当て枠２９は下降することができないため、支持
腕１２は過度の下降が阻止され、背もたれの危険な倒れ
込みが防止されることになる。

【００３０】他方、当て枠２９が押し下げられると、当
て枠２９の挿通孔３０に挿通されているロッド２４が引
き下げられるため、レバー１７の水平部１８が支軸１５
を中心にして下方に回動される。この回動に伴って、レ
バー１７の垂直部１９は支軸１５を中心にして前方に回
動されるため、スプリング１４が前側スプリングシート
１３と後側スプリングシート２１との間で支持枠７に反
力をとって圧縮変形される。

【００３１】このとき、後側スプリングシート２１がレ
バー１７の垂直部１９にピン２０によって回動自在に軸
支されていることにより、レバー１７の回動に追従して
後側スプリングシート２１がその向きを自己制御的に向
きを変更するため、スプリング１４はその中心線に沿う
方向に真っすぐ押し潰される状態になる。その結果、ス
プリング１４は適正に圧縮変形されるため、レバー１７
は垂直部１９においてスプリング１４の弾発力をきわめ
て適正かつ効果的に付勢されることになる。

【００３２】スプリング１４が圧縮変形されると、スプ
リング１４の弾発力が増強されるため、レバー１７を回
動させようとする力に対抗しようとするスプリング１４
の反発力が増強される。このスプリング１４の反発力は
レバー１７、ロッド２４および当て枠２９を介して支持
腕１２に伝達されるため、背もたれにもたれかかる着席
者に対して適度な抵抗感を与えるとともに、反発力下で
着席者を支えることになる。

【００３３】ここで、前記背もたれが着席者を支える弾
発力は、心地よく感ずる大きさについて各着席者毎に個
人差があるため、スプリング１４の弾発力は調整可能で
あることが好ましい。そして、このスプリング１４の弾
発力の調整可能範囲は広く、しかも、微妙であることが
望ましい。

【００３４】本実施例において、スプリング１４の弾発
力の調整作業は次のようにして実施することができる。

【００３５】例えば、グリップ２８が回転操作されるこ
とにより、グリップ２８がロッド２４に対して前進され
ると、ロッド２４が当て枠２９を起点にして引き下げら
れるため、ロッド２４の上端部が係止されたレバー１７
の水平部１８は支軸１５を中心にしてスプリング１４の
弾発力に抗して下方に回動される。

【００３６】レバー１７の水平部１８が下方に回動され
ると、レバー１７の垂直部１９が前方に回動されるた
め、スプリング１４が圧縮変形される。この圧縮変形に
よってスプリング１４は弾発力を増強されるため、背も
たれ時におけるスプリング１４による着席者への前記反
発力は増強されることになる。

【００３７】逆に、グリップ２８が回転されることによ
り、グリップ２８がロッド２４に対して後退されると、
ロッド２４が当て枠２９を起点にして上昇するため、ロ
ッド２４の上端部が係止されたレバー１７の水平部１８
は支軸１５を中心にしてスプリング１４の弾発力によっ
て上方に回動される。

【００３８】レバー１７の水平部１８が上方に回動され
ると、レバー１７の垂直部１９がスプリング１４の弾発
力によって後方に押し戻されるため、スプリング１４が
相対的に伸ばされる。この伸びによってスプリング１４
は弾発力を減少されるため、背もたれ時におけるスプリ
ング１４による着席者への前記反発力は減少されること
になる。

【００３９】前記実施例によれば次の効果が得られる。 スプリング１４が支持枠７内において水平方向に配
設されているため、支持枠の厚さがスプリング１４によ
って厚くなってしまうのを防止することができ、同一の
外径のスプリングが使用される場合には、従来構造のも
のに比較して支持枠７の厚さを薄く設計することができ
る。

【００４０】 スプリング１４の長さによって支持枠
の厚さが厚くならないため、スプリング１４の長さを充
分に長く設定することができる。

【００４１】 前記によって、スプリング１４の単
位長さ当りの弾発力を弱めに設計することにより、スプ
リング１４の長さの調節による弾発力の調整を微妙に実
行することができるため、スプリング１４による着席者
への反発力の調整を、微妙で、しかも、大きな範囲にわ
たって実行させることができる。

【００４２】 前記によって、着席者の背もたれ感
を向上させることができ、しいては、座り心地を向上さ
せることができる。

【００４３】 レバー１７の垂直部１９に回動自在に
軸支された後側スプリングシート２１によってスプリン
グ１４の後端が係止されているため、レバー１７の回動
に追従するスプリングシート２１の変向によってスプリ
ング１４を常に適正かつ効果的に圧縮変形させることが
できる。

【００４４】図５は本考案の他の実施例である椅子の背
もたれ支持装置を示す側面断面図である。

【００４５】本実施例２が前記実施例１と異なる点は、
レバー１７Ａがそのコーナ部がパイプ１６に巻き付けら
て固着されている点、当て枠２９Ａが略チャンネル型鋼
形状に形成されている点、にある。

【００４６】本実施例２によっても、前記実施例１と同
様の作用および効果が奏される。

【００４７】なお、本考案は前記実施例に限定されるも
のではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々
変更可能であることはいうまでもない。

【００４８】例えば、背もたれに適度な反発力を付与す
るためのスプリングは、１個に限らず、２個以上設けて
もよい。スプリングが２個以上併設される場合でも、レ
バーは１個のみ設けてもよい。

【００４９】上限ストッパ３１、下限ストッパ３２およ
び固定ストッパ３３の構成は前記実施例のように構成す
るに限らず、例えば、前記実施例における下限ストッパ
３２の屈曲部に断面コ字形状のゴム部材が嵌着され、支
持枠７の固定ストッパ３３の位置に突起状の下限ストッ
パが突設されており、上限位置でゴム部材が支持枠の上
端部に当接し、下限位置でゴム部材が突起状の下限スト
ッパに当接するように構成してもよい。

【００５０】前記実施例においては、オフィス用の回転
椅子に適用した場合につき説明したが、本考案はこれに
限らず、椅子の背もたれ支持装置全般に適用することが
できる。

【００５１】

【考案の効果】以上説明したように、本考案によれば、
支持枠の厚さを小さく抑制することができ、しかも、ス
プリングによる着席者への反発力の調整可能範囲を広く
とり、かつ、微妙に調整することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例である椅子の背もたれ支持装
置を示す側面断面図である。

【図２】その作用を説明するための側面断面図である。

【図３】平面図である。

【図４】（ａ）、（ｂ）は背面図および部分側面図であ
る。

【図５】本考案の他の実施例である椅子の背もたれ支持
装置を示す側面断面図である。

【符号の説明】

１…椅子、２…脚柱、３…脚柱カバー、４…パイプ、５
…座板、６…ひじ掛け取付板、７…支持枠、１０…椅子
の背もたれ支持装置、１１…背もたれ支持腕支軸、１２
…背もたれ支持腕、１３…前側スプリングシート、１４
…スプリング、１５…レバー支軸、１６…パイプ、１
７、１７Ａ…レバー、１８…水平部、１９…垂直部、２
０…ピン、２１…後側スプリングシート、２２、２３…
ロッド挿通孔、２４…スプリング力調整ロッド、２５…
縦部材、２６…横部材、２７…雄ねじ部、２８…グリッ
プ、２９、２９Ａ…当て枠、３０…ロッド挿通孔、３１
…上限ストッパ、３２…下限ストッパ、３３…固定スト
ッパ、３４…支持腕連結部、３５…支持枠カバー。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 平３−45754（ＪＰ，Ｕ)

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 座板の下部における脚柱支持枠に背もた
   れの支持腕が回動自在に軸支されており、前記支持腕が
   前記支持枠に反力をとったスプリングによって懸架され
   ている椅子の背もたれ支持装置において、 前記支持枠に互いに略直角に交差する水平部と垂直部と
   を備えたレバーが回動自在に軸支されており、 前記スプリングとして圧縮コイルスプリングが使用さ
   れ、この圧縮コイルスプリングが前記支持枠内に前後方
   向に配設されて、前記レバーの垂直部に係止されてお
   り、 他方、前記レバーの水平部には前記支持腕がロッドを介
   して連動されていることを特徴とする椅子の背もたれ支
   持装置。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の椅子の背もたれ支持装
   置において、前記支持腕に当て枠が前記支持枠の外側に
   て支持腕の下方から当接されているとともに、この当て
   枠と支持枠との間には上限位置を規定する上限ストッパ
   と下限位置を規定する下限ストッパがそれぞれ配設され
   ており、 さらに、この当て枠には前記レバーの水平部に上端部が
   係止されたロッドの下端部が摺動自在に挿通されている
   とともに、このロッドの挿通側端部には当て枠に下側か
   ら係合するグリップが軸心方向に進退自在に螺合されて
   いることを特徴とする椅子の背もたれ支持装置。
3. 【請求項３】 前記スプリングは、前記レバーの垂直部
   に回転自在に軸支されたスプリングシートに係止されて
   いることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の
   椅子の背もたれ支持装置。