JP6760698B2 - 液体現像剤 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる液体現像剤に関する。
電子写真用現像剤として、着色剤及び結着樹脂を含む材料からなるトナー粒子が絶縁性液体中に分散した液体現像剤が知られている。液体現像剤は、トナーの小粒径化が可能であることから、画質の面で優れている。
一般的に、液体現像剤には、絶縁性液体中でトナー粒子を分散させるための材料として、高分子アミン構造を有する分散剤が用いられている。
例えば、特許文献1では、分子量70,000以上の高分子アミンとシリコーン分散基から構成される分散剤が用いられている。
特許文献2には、分子量10,000以上70,000以下のポリアルキレンイミンとアクリルーポリシロキサン共重合体から構成される分散剤が用いられている。
このような分散剤は、トナー粒子に対する吸着力が高いために、高抵抗で高精細な印字が可能な液体現像剤を製造できる特徴を有している。
特開2014−38220号公報 特開2011−65135号公報
しかしながら、高分子量のアミンからなる分散剤を用いた液体現像剤では、印刷工程において液体現像剤が濃縮されるにつれて、分散剤によるトナー粒子間の橋かけが起こるため、凝集物が発生し、正常な連続印刷ができなくなるという課題がある。また、低分子量のアミンからなる分散剤を用いれば、濃縮時でも橋かけを起こさず分散安定性を保つことができる一方で、吸着力が弱いために、トナー粒子に吸着しない分散剤(以下、遊離分散剤とも言う)が多くなり、液体現像剤の抵抗が低下することで、例えば、印刷時に背景カブリ等が発生する印字不良が起きてしまう。
本発明の課題は、高い分散安定性を保ち、かつ高抵抗で高精細な印字を可能とする液体現像剤に関する。
本発明は、ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子、分散剤、並びに絶縁性液体を含有する液体現像剤であって、前記分散剤が、式(I):
Figure 0006760698
(式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、炭素数1以上22以下のアルキレン基である)
で表される窒素含有基を有する塩基性窒素含有基原料とポリシロキサン鎖を有する分散性基原料との反応物Xを含有し、該塩基性窒素含有基原料の数平均分子量が250以上5,000以下である、液体現像剤に関する。
本発明の液体現像剤は、高い分散安定性を保つことができ、かつ高抵抗で高精細な印字を可能とすることができるという優れた効果を奏する。特に、本発明の液体現像剤は、印刷工程において液体現像剤が濃縮された場合でも分散安定性を保つことができ、かつ高抵抗で高精細な印字を可能とすることができるという優れた効果を奏する。
液体現像において高精細な印字を達成するには、高抵抗な液体現像剤が求められる。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、液体現像剤中の遊離分散剤が抵抗を低下させることが分かった。すなわち、高抵抗な液体現像剤には、トナー粒子に対し高吸着な分散剤が望ましい。また、一般的な液体現像装置では、トナー粒子が用紙等の定着媒体に印字される工程において、液体現像剤が濃縮される。この濃縮条件において、トナー粒子の凝集物が発生すると、液体現像装置内が汚染されることで、正常な印字が困難になることが分かっている。すなわち、正常な印字には、濃縮時にも凝集せず分散安定性に優れた液体現像剤が望ましい。
一般的に、ポリエステル系樹脂を含む液体現像剤には高分子量のポリアルキレンイミン構造を有する分散剤が用いられる。ポリアルキレンイミンとは、アザシクロアルカンの開環重合により得られるポリアミンの一種である。アミン等の塩基性官能基は、ポリエステル樹脂の末端カルボキシ基に対し、静電的に相互作用する。さらにポリアルキレンイミン構造は、多数の相互作用部位を生み出すことで、多点吸着による強い吸着性を発現する。その結果、遊離分散剤が少なく高抵抗な液体現像剤となる。しかしながら、液体現像剤が濃縮された場合、トナー粒子間の距離が縮まるために、ポリアルキレンイミンによるトナー粒子の橋かけ凝集が生じてしまう。
これに対し、本発明では、低分子量のポリアルキレンイミンでも高い吸着性を示す分散剤の開発に至った。このような効果を奏する理由は、次のように考えられる。
アミンは、その置換基数によって1級から3級のアミンに分類されるが、カルボン酸に対する相互作用の大きさは、塩基性に依存し、1級アミンよりも2級アミンの方が大きく、また、2級アミンよりも3級アミンの方が大きい。また、置換基の電子供与性が強いほど、相互作用は大きい。
さらに、吸着をより進行しやすくするためには、吸着前後の形態変化(エントロピー損失)を小さくすることが重要である。鋭意検討した結果、ポリアルキレンイミン構造において、直鎖構造よりも分岐構造の方が、エントロピー損失が少なく、より高い吸着性を示すことがわかった。
さらに、ポリアルキレンイミン構造において、アルキレン基の鎖長に依って、吸着性が変化することがわかった。鋭意検討した結果、エチレンイミン構造よりもプロピレンイミン構造などのより長鎖アルキレン基を有するイミンが、高い吸着性を示した。分散剤は、トナー粒子表面に介在するポリエステル樹脂由来のカルボキシ基に対し吸着する。おそらく、カルボキシ基の分布に対し、長鎖アルキレンイミンの方が、多点吸着しやすいと考えられる。
本発明における分散剤は、分岐型のポリアルキレンイミン構造を有し、それぞれのイミン骨格は、その置換基が電子供与性のシリコーン鎖であるアミンであることから、低分子量でも高い吸着性を示すと考えられる。さらに、アルキレンイミン構造において、プロピレンイミン構造をもつことで、より高い吸着性を示すと考えられる。
本発明の液体現像剤は、トナー粒子、分散剤、及び絶縁性液体を含有する液体現像剤である。
トナー粒子は、ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂と着色剤を含有する。ポリエステル系樹脂は、低温定着性に優れている一方で、カルボキシ基、水酸基、エステル基等の極性基を有するため、非極性溶媒中では分散し難い。しかしながら、本発明では、分散剤が吸着基として分岐構造を有する窒素含有基を有することにより、ポリエステル系樹脂を用いてもトナー粒子を安定に分散できる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂と他の樹脂とを含有する複合樹脂(好ましくはポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを含有する複合樹脂)等が挙げられる。
本発明においてポリエステル樹脂は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
2価のアルコールとしては、炭素数2以上20以下、好ましくは炭素数2以上15以下のジオールや、式(III):
Figure 0006760698
(式中、R5O及びOR5はオキシアルキレン基であり、R5はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2以上20以下のジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコールとしては、炭素数3以上20以下、好ましくは炭素数3以上10以下の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
2価のカルボン酸系化合物としては、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数が1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
3価以上のカルボン酸系化合物としては、炭素数4以上30以下、好ましくは炭素数4以上20以下、より好ましくは炭素数4以上10以下の3価以上のカルボン酸、それらの無水物、又は炭素数1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、又はそれらの酸無水物等が挙げられる。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、さらに必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180℃以上250℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下である。
また、反応時間短縮のために、助触媒を使用してもよい。助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。助触媒とエステル化触媒の質量比(助触媒/エステル化触媒)は、0.01以上0.5以下が好ましい。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル系樹脂の軟化点は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下であり、そして、液体現像剤を高温下で保存した場合にトナー粒子が凝集するのを防止する観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。これらの観点を総合すると、ポリエステル系樹脂の軟化点は、好ましくは70℃以上160℃以下、より好ましくは80℃以上150℃以下である。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下であり、そして、液体現像剤を高温下で保存した場合にトナー粒子が凝集するのを防止する観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上である。これらの観点を総合すると、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは45℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上75℃以下である。
ポリエステル系樹脂の酸価は、液体現像剤中の分散剤を吸着し、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは8mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは60mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは40mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下である。ポリエステル系樹脂の酸価は、カルボン酸成分とアルコール成分の当量比を変化させる、樹脂製造時の反応時間を変化させる、又は3価以上のカルボン酸系化合物の含有量を変化させる等の方法で調整することができる。
ポリエステル系樹脂の含有量は、結着樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%、即ち、ポリエステル系樹脂のみを用いることがさらに好ましい。ただし、本発明の効果が損なわれない範囲において、ポリエステル系樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。ポリエステル系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレンもしくはスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェール系樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂等の樹脂から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒用トナー、カラー用トナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、そして、トナーの粉砕性を向上させて小粒径にできる観点、低温定着性を向上させる観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下である。
トナー粒子は、結着樹脂及び着色剤に加えて、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
トナー粒子の製造方法としては、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕、好ましくは湿式粉砕して得る方法等が挙げられる。現像性及び定着性を向上させる観点から、トナー原料を溶融混練した後に粉砕、好ましくは湿式粉砕する方法が好ましい。
先ず、結着樹脂、着色剤、必要に応じて用いる添加剤等を含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましく、結着樹脂中での着色剤の分散性を向上させる観点から、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
ヘンシェルミキサーでの混合は、攪拌の周速度、及び攪拌時間を調整しながら行う。周速度は、着色剤の分散性を向上させる観点から、好ましくは10m/sec以上30m/sec以下である。また、攪拌時間は、着色剤の分散性を向上させる観点から、好ましくは1分以上10分以下である。
次いで、トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。本発明の製造方法においては、着色剤の分散性を向上させる観点、及び粉砕後のトナー粒子の収率を向上させる観点から、オープンロール型混練機が好ましい。
次いで、溶融混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、及び必要に応じて分級工程等を経て、トナー粒子を得ることができる。
粉砕工程は、多段階に分けてもよい。例えば、溶融混練物を、約1〜5mmに粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕工程時の生産性を向上させるために、溶融混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、気流式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。なお、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
この工程で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の湿式粉砕工程の生産性を向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。トナー粒子は、分散剤及び絶縁性液体と混合後、湿式粉砕等によりさらに微細化されることが好ましい。
トナー粒子の含有量は、絶縁性液体100質量部に対して、高速印刷性の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、そして、分散安定性の向上の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
本発明における分散剤は、式(I):
Figure 0006760698
(式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、炭素数1以上22以下、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下のアルキレン基である)
で表される窒素含有基を有する塩基性窒素含有基原料とポリシロキサン鎖を有する分散性基原料との反応物Xである。
式(I)において、炭素数1以上22以下のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
なお、反応物Xは、本発明の効果を損なわない範囲で、塩基性窒素含有基原料に由来する基の末端又は中央部に、R1〜R3のうちの1個又は2個が2価の基ではなく水素原子である基を有していてもよい。
塩基性窒素含有基原料における式(I)で表される基の比率は、式(I)で表される基とこれらの基の総量中、1モル%以上80モル%以下が好ましく、R1〜R3のうちの1個が水素原子である基の比率は1モル%以上80モル%以下が好ましく、R1〜R3のうちの2個が水素原子である基の比率は1モル%以上50モル%以下が好ましい。この比率は、C-NMR測定から算出することができる。
また、塩基性窒素含有基原料における式(I)で表される基とこれらの基の存在比は、R1〜R3のうちの2個が水素原子である基/(式(I)で表される基+R1〜R3のうちの1個が水素原子である基)のモル比で、1/99以上50/50以下が好ましい。このモル比は、H−NMR測定から算出することができる。
塩基性窒素含有基原料の数平均分子量は、トナー粒子への吸着性の観点から、250以上、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、そして、トナー粒子の分散性の観点から、5,000以下、好ましくは4,000以下、より好ましくは3,000以下である。
分散性基原料におけるポリシロキサン鎖は、直鎖でも環状でもよく、また、ハロゲン原子、エポキシ基又はグリシジル基等で変性されていてもよいが、ポリシロキサン鎖を有する分散性基原料は、式(II):
Figure 0006760698
(式中、R4は反応性官能基であり、mは平均付加モル数であって、mは10以上70以下、好ましくは15以上60以下、より好ましくは20以上50以下である)
で表される化合物が好ましい。
式(II)において、反応性官能基としては、グリシジル基、エポキシ基、ハロゲン基等が挙げられ、これらの中では安全性及び反応性の観点から、グリシジル基が好ましい。従って、ポリシロキサン鎖を有する分散性基原料としては、エポキシ系化合物が好ましい。
分散性基原料の数平均分子量は、分散性の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上であり、そして、トナー粒子への吸着性の観点から、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,000以下である。
反応物Xにおける塩基性窒素含有基と分散性基の質量比(塩基性窒素含有基/分散性基)は、トナー粒子への吸着性の観点から、好ましくは1/99以上であり、より好ましくは2/98以上、さらに好ましくは3/97以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは10/90以下であり、より好ましくは8/92以下、さらに好ましくは5/95以下である。なお、反応物Xにおける塩基性窒素含有基と分散性基の質量比は、反応物XのNMRで測定できるが、塩基性窒素含有基原料と分散性基原料とを反応させる反応物Xの製造において、反応した原料化合物の質量比を、分散剤中の塩基性窒素含有基と分散性基の質量比(塩基性窒素含有基/分散性基)とみることもできる。
塩基性窒素含有基原料と分散性基原料は、常法により反応させることができる。
反応物Xの含有量は、トナー粒子100質量部に対して、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、そして、トナーの帯電性及び定着性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3.5質量部以下である。
また、分散剤中の反応物Xの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
本発明における絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、絶縁性液体の導電率は、好ましくは1.0×10-11S/m以下、より好ましくは5.0×10-12S/m以下であり、そして、好ましくは1.0×10-13S/m以上である。
絶縁性液体の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等が挙げられる。特に、臭気、無害性及びコストの点から、ノルマルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒等の脂肪族炭化水素が好ましい。具体的には、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(以上、いずれもエクソンモービル社製)、シェルゾール71(シェル石油化学社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2080(以上、いずれも出光石油化学社製)、モレスコホワイトP-55、モレスコホワイトP-70(以上、いずれも松村石油社製)、コスモホワイトP-60、コスモホワイトP-70(以上、いずれもコスモ石油ルブリカンツ社製)等が挙げられる。
絶縁性液体の25℃における粘度は、液体現像剤中でのトナー粒子の保存安定性を向上させる観点から、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは20mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下であり、そして、好ましくは0.01mPa・s以上、より好ましくは0.1mPa・s以上である。
液体現像剤は、トナー粒子を分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させて得られる。トナー粒子の粒径を小さくする観点、及び液体現像剤の粘度を低減する観点から、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させた後、湿式粉砕して液体現像剤を得ることが好ましい。
トナー粒子、分散剤、及び絶縁性液体の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、トナー粒子分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、デスパ(浅田鉄工(株)製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス(株)製)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製)、ケイディーミル(ケイディー・インターナショナル社製)等が好ましい。
高速攪拌混合装置による混合によって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子分散液を得ることができ、次の湿式粉砕による液体現像剤の生産性が向上する。
トナー粒子分散液の固形分濃度は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、デスパ(浅田鉄工(株)製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス(株)製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機又は混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
これらの中では、トナー粒子の粒径を小さくする観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及びその分散液の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
以上のように、本発明の液体現像剤は、
工程1:ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂及び着色剤を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子に分散剤を加え、絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含む方法により製造することが好ましい。
液体現像剤の固形分濃度は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤の粘度を低減する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、液体現像剤の画質を向上させる観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。
固形分濃度が25質量%の液体現像剤の25℃における粘度は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、さらに好ましくは6mPa・s以上、さらに好ましくは7mPa・s以上であり、そして、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、さらに好ましくは37mPa・s以下、さらに好ましくは35mPa・s以下、さらに好ましくは32mPa・s以下、さらに好ましくは28mPa・s以下、さらに好ましくは24mPa・s以下、さらに好ましくは20mPa・s以下、さらに好ましくは16mPa・s以下である。
また、本発明の液体現像剤は、固形分濃度が増加しても低い粘度を維持することができる。かかる観点から、例えば、固形分濃度が45質量%の液体現像剤の25℃における粘度は、現像機内のクリーニング性を向上させる観点から、好ましくは70mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは30mPa・s以下である。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔絶縁性液体と混合する前のトナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させる。その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔塩基性窒素含有基原料の数平均分子量(Mn)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mLになるように、ポリアルキレンイミンを0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液に溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の標準プルラン(昭和電工(株)製のP-5(Mw 5.9×103)、P-50(Mw 4.73×104)、P-200(Mw 2.12×105)、P-800(Mw 7.08×105))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:α+α-M+α-M(東ソー(株)製)
〔分散性基原料の数平均分子量(Mn)〕
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、分散性基原料をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー(株)製)
〔絶縁性液体の導電率〕
絶縁性液体25gを40mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.7」((株)マルエム製)に入れ、非水系導電率計「DT-700」(Dispersion Technology社製)を用いて、電極を絶縁性液体に浸し、25℃で20回測定を行って平均値を算出し、導電率を測定する。数値が小さいほど高抵抗であることを示す。
〔絶縁性液体及び固形分濃度が25質量%の液体現像剤の25℃における粘度〕
10mL容のスクリュー管に測定液を6〜7mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」((株)セコニック製)を用いて、25℃にて粘度を測定する。
〔トナー粒子分散液及び液体現像剤の固形分濃度〕
試料10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「H-201F」((株)コクサン製)を用いて、回転数25,000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
Figure 0006760698
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーL(エクソンモービル社製、イソパラフィン、25℃における粘度1mPa・s)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
樹脂製造例
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒(酸化ジブチル錫)25.0g及び助触媒(没食子酸)2.5gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応を行い、12時間後、軟化点が100℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Aを得た。
Figure 0006760698
トナー粒子製造例
結着樹脂として樹脂A 80質量部及び着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー15:3)20質量部を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業(株)製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
上記で得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック(株)製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子Aを得た。
分散剤の製造例
表2に示す塩基性窒素含有基原料、分散性基原料、及びエタノール100質量部を冷却管、窒素導入管、撹拌機、脱水管及び熱電対を装備した1L容の四つ口フラスコに入れ、75℃に加熱し12時間撹拌した。その後、75℃、8.3kPa下でエタノールを除去した。NMR分析から、エポキシ基由来のピーク(2.5ppm)が消失した時点を反応終点として、分散剤1〜6を得た。
Figure 0006760698
実施例1〜3及び比較例1〜3
トナー粒子A 25質量部と、表3に示す分散剤0.75質量部、及び絶縁性液体「アイソパーL」(エクソンモービル社製、イソパラフィン、導電率6.2×10-13S/m、25℃における粘度1mPa・s)74.25質量部を2L容のポリエチレン製容器に入れた。「T.K.ロボミックス」(プライミクス(株)製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度25質量%のトナー粒子分散液を得た。
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス(株)製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて4時間湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去し、表3に示す物性を有する液体現像剤を得た。
得られた液体現像剤について、下記の物性を測定した。結果を表3に示す。
〔吸着率〕
液体現像剤10gを遠沈管に移し、遠心分離機(シグマ社製、3-30KS)を用いて、25,000r/min、25℃の条件で2時間遠心分離を行った。上澄み4gをアルミ皿に取り出し、ADVANTEC製の真空乾燥器「DRV422DB」中で、100℃、4時間、8.3kPaの条件下で乾燥した。残留した分散剤量から、以下の式より吸着率を算出した。
Figure 0006760698
〔固形分濃度が45質量%の液体現像剤の25℃における粘度〕
印刷に伴い現像槽内で濃縮された液体現像剤を想定して、液体現像剤の固形分濃度を25質量%から45質量%に調整した。
固形分濃度が45質量%の液体現像剤を、10mL容のスクリュー管に6〜7mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」((株)セコニック製)を用いて、25℃にて粘度を測定した。粘度が高いほど、印刷を繰り返した際に生じる凝集物が多くなるため、粘度は低いことが好ましい。
〔液体現像剤の抵抗〕
固形分濃度が25質量%の液体現像剤25gを40mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.7」((株)マルエム製)に入れ、非水系導電率計「DT-700」(Dispersion Technology社製)を用いて、電極を液体現像剤に浸し、25℃で20回測定を行って平均値を算出し、導電率を測定し、その逆数を抵抗とした。数値が高いほど高抵抗であり、印刷時に生じる背景カブリが少なくなる。
Figure 0006760698
以上の結果より、実施例1〜3の液体現像剤は、分散剤の吸着率が高く、高抵抗であり、かつ固形分濃度が高くても低粘度を示し分散安定性も良好であることが分かる。これに対し、分散剤の塩基性窒素含有基原料が式(I)で表される基を有しておらず、その数平均分子量が小さすぎる比較例1の液体現像剤は、分散剤の吸着率が低く、低抵抗であり、分散剤の塩基性窒素含有基原料の数平均分子量が大きすぎる比較例2、及び塩基性窒素含有基原料が式(I)で表される基を有しておらず、その数平均分子量が大きすぎる比較例3の液体現像剤は、吸着率が低く低抵抗であるものの、特に固形分濃度が高い場合の高粘度化が顕著であり、高抵抗と低粘度、即ち分散安定性とを両立できていないことが分かる。
本発明の液体現像剤は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (6)

  1. ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子、分散剤、並びに絶縁性液体を含有する液体現像剤であって、前記分散剤が、式(I):
    Figure 0006760698
    (式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、炭素数1以上22以下のアルキレン基である)
    で表される窒素含有基を有する塩基性窒素含有基原料とポリシロキサン鎖を有する分散性基原料との反応物Xを、前記トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下含有し、該塩基性窒素含有基原料の数平均分子量が250以上5,000以下であり、該反応物Xにおける塩基性窒素含有基と分散性基の質量比(塩基性窒素含有基/分散性基)が、1/99以上10/90以下である、液体現像剤。
  2. ポリシロキサン鎖を有する分散性基原料が、式(II):
    Figure 0006760698
    (式中、R4は反応性官能基であり、mは平均付加モル数であって、mは10以上70以下である)
    で表される化合物である、請求項1記載の液体現像剤。
  3. 分散性基原料の数平均分子量が1,000以上5,000以下である、請求項1又は2記載の液体現像剤。
  4. ポリエステル系樹脂の酸価が、5mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である、請求項1〜いずれか記載の液体現像剤。
  5. ポリエステル系樹脂が、ポリエステル樹脂又はポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを含有する複合樹脂を含有する、請求項1〜いずれか記載の液体現像剤。
  6. ポリエステル樹脂が、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である、請求項記載の液体現像剤。
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