JP6756146B2 - 積層体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、積層体の製造方法に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NY)等のフィルムを基材層とした積層体を包装材料に用いた場合に、基材層の一部を除去するか膜厚を薄くして包装材料を容易に引き裂いて開封できるように形成した傷加工部を設ける技術が知られている。
傷加工部の形成には、刃物による機械的方法のほか、レーザー光の照射による方法が知られている。特に、基材層がPETなどのレーザー光のエネルギーを吸収しやすいフィルムの場合は、深さの調節も容易で安定した深さの傷加工部を設けることができる(特許文献1参照)。
特開2016−40182号公報
図3には、従来技術に係る積層体に、レーザー光105を照射して傷加工部104を形成した際の断面図を示す。レーザー光105を用いて基材層109に傷加工部104を形成する場合、形成された傷加工部104の周辺に、除去された基材層109の一部が盛り上がる等して、フィルムカス106が付着することがある。このようにフィルムカス106が表面に付着した積層体を包装材料に用いた場合、フィルムカス106が積層体から剥がれて内容物に混入するおそれがあった。
特に、最内層103を無延伸ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のシーラント層103として、表面に基材層109を形成した積層体の場合、積層体をロール状に巻き取ることにより、フィルムカスがシーラント層103に転写されて付着することがある。このような積層体は、シーラント層103が包装容器の内面に面することが多いため、よりフィルムカス106が内容物に付着しやすくなる。
また、基材層109の下層に接着層107や印刷層108を形成した場合には、基材層109が取り除かれることにより、接着層107や印刷層108が積層体表面に露出する。このため、積層体をロール状に巻き取る際に、接着剤またはインキがシーラント層103に付着して、包装容器の内容物に接着剤またはインキが付着するおそれがある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、レーザー光の照射により傷加工部を設けても、包装材料として用いた際にフィルムカス等により内容物を汚すことのない積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の局面は、ポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層からなる中間層に延伸ポリオレフィン層からなる最外層を積層する工程と、延伸ポリオレフィン層にレーザー光を照射して、延伸ポリオレフィン層を透過したレーザー光により中間層に、傷加工部を形成する工程とを含む、積層体の製造方法である。
本発明によれば、レーザー光の照射により傷加工部を設けても、包装材料として用いた際にフィルムカス等により内容物を汚すことのない積層体及びその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る積層体の断面図 本発明の一実施形態に係る積層体に傷加工部を形成した際の断面図 従来技術に係る積層体に傷加工部を形成した際の断面図
以下では、図を参照して実施形態に係る積層体100について説明する。
(積層体)
図1には、積層体100の断面図を示す。積層体100は、包装材料として使用する際の外層から内層の順に、ポリオレフィン層からなる最外層101と、最外層101に隣接するPET層またはNY層からなる中間層102と、中間層102に積層されたシーラント層103とを含み、中間層102の一部に、傷加工部104を備える。
最外層101は、PP、延伸PP、PE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等の酸コポリマー、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、アイオノマー(ION)等のエステルコポリマー、変性ポリエチレン等のポリオレフィンを用いて、中間層102の外層に積層して形成される。最外層101の厚みは、例えば、20μmである。
中間層102は、PETまたはNYを用いて、最外層101の内層に積層して形成される。中間層102の厚みは、例えば、12μmである。
シーラント層103は、無延伸PP、PE、HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE等を用いて中間層102の内層に積層して形成される。シーラント層103の厚みは、例えば、30μmである。
中間層102に形成された傷加工部104は、中間層102の一部が除去されているか膜厚が他の部分よりも薄くなっている。例えば、積層体100を包装材料に用いた場合に、傷加工部104に沿って積層体100の一部を容易に引き裂いて開封することができる。また、中間層102がガスバリア性を有す場合には、傷加工部104を形成することにより、中間層102の一部においてガスバリア性を低下させたガス透過部を形成することも可能である。
傷加工部104は、その機能に応じて任意の形状に形成できる。例えば、傷加工部104を開封手段として設けた場合は、包装材料を引き裂く方向に伸びる線状に形成したり、包装材料を任意の箇所から引裂くことができるように、所定の領域に点状の傷加工部104を多数形成したりしてもよい。また、ガス透過部として設けた場合は、必要となるガスバリア性能に応じた面積で面状の傷加工部を形成してもよい。
積層体100は、最外層101と、最外層101に隣接して傷加工部104を備えた中間層102と、最内層とを含めば、積層体100の機能に応じて、接着層、印刷層、シーラント層、バリア層等の周知の技術に係る様々な層を追加してもよい。また、各層の厚さも限定されず、適宜設定可能である。
(製造方法)
次に、図を参照して実施形態に係る積層体100の製造方法について説明する。
積層体100の製造方法は、シーラント層103にPET層またはNY層からなる中間層102を積層する工程と、中間層102にポリオレフィン層からなる最外層101を積層する工程と、最外層101にレーザー光を照射して、最外層101を透過したレーザー光により中間層102に、傷加工部104を形成する工程とを含む。
各層を積層する工程においては、ドライラミネーション、押出しラミネーション等の周知の技術を用いることができる。
傷加工部104を形成する工程においては、レーザー装置により、積層体100にレーザー光105を照射する。図2には、傷加工部104を形成する際の積層体100の断面図を示す。図2に示すように、レーザー光105は最外層の最外層101の表面に照射されるが、最外層101の材質であるポリオレフィンはレーザー光105のエネルギーを吸収しにくい性質を有するため、照射されたレーザー光105によって最外層101の温度上昇は発生しない。これに対して、中間層102の材質であるPETやNYはレーザー光105のエネルギーを吸収しやすい性質を有する。このため、ポリオレフィン層101を透過して照射されたレーザー光105によって、中間層102は温度上昇し、部分的に溶融、薄化等、変質して、傷加工部104が形成される。
この際、中間層102の外層には、最外層101が形成されているため、レーザー光105の照射によってもフィルムカスが発生しない。また、傷加工部104が形成されることにより、接着層107や印刷層108が露出することもない。このため、積層体100を包装材料として用いた際に内容物を汚すことを防止できる。
レーザー装置には、赤外線レーザーや炭酸ガスレーザー等の周知のレーザー装置を用いることができる。レーザー光105のスポット形状は、傷加工部の形状に応じて任意の形状を採用できる。レーザー光105を照射しながらレーザー装置と積層体100との相対的な位置を変えることにより、積層体100上でレーザー光105のスポットを走査することができ、任意の形状の傷加工部104を形成することができる。
製造された積層体100を用いることにより、例えば、2枚の積層体100を重ねて、周縁部にヒートシール処理を行うことで形成される四方シール袋や、1枚のフィルムを2つ折りにして、合わせた周縁部をシールして形成される三方シール袋や、2枚のフィルムの間に2つ折りにした1枚のフィルムを挟み、周縁部をシールして形成される自立性を有するフレキシブル包装袋を製造することができる。また、紙を基材層としたシートやプラスチックを用いて製造された開口部を備える容器の蓋に積層体100を用いることもできる。また、ガスバリア性を制御できる性質を利用して各種フィルタに用いることもできる。
実施例1、2、参考例3、4及び比較例1〜3に係る積層体を作製し、レーザー光の照射によりそれぞれの積層体に傷加工部を形成した際の、フィルムカスの発生状態を比較する評価を行った。
(実施例1)
実施例1に係る積層体は、外層から内層の順に延伸PP(OPP)(20μm)/PET(12μm)/PE(30μm)を積層して形成した。
(実施例2)
実施例2に係る積層体は、外層から内層の順に延伸PE(20μm)/PET(12μm)/PE(30μm)を積層して形成した。
参考例3)
参考例3に係る積層体は、外層から内層の順に無延伸PP(CPP)(20μm)/PET(12μm)/PE(30μm)を積層して形成した。
参考例4)
参考例4に係る積層体は、外層から内層の順に無延伸PE(20μm)/PET(12μm)/PE(30μm)を積層して形成した。
(比較例1)
比較例1に係る積層体は、外層から内層の順にPET(12μm)/PET(12μm)/PE(30μm)を積層して形成した。
(比較例2)
比較例2に係る積層体は、外層から内層の順にNY(15μm)/PET(12μm)/PE(30μm)を積層して形成した。
(比較例3)
比較例3に係る積層体は、外層から内層の順にセロファン(20μm)/PET(12μm)/PE(30μm)を積層して形成した。
それぞれの積層体の最外層にレーザー光を照射して傷加工部を形成した。レーザー光の照射には、最大出力30Wのレーザー装置を用いた。レーザー装置の出力は70%で固定し、直径100μmの点スポットを、3500mm/秒、3000mm/秒、2500mm/秒、2000mm/秒の各速度で走査した。その後、レーザー光の照射位置周辺におけるフィルムカスの発生状態を目視で確認した。
評価結果を表1に示す。表1では、評価の結果を、フィルムカスの発生状態に応じて次のように示した。傷加工部が形成されても最外層が損傷することなく、フィルムカスが積層体表面に発生しなかった場合には「++」を付した。また、傷加工部の形成により最外層がわずかに損傷したものの、フィルムカスが積層体表面に発生するほどではなかった場合には「+」を付した。また、傷加工部の形成により最外層が損傷し、フィルムカスが積層体表面に発生した場合には「−」を付した。
Figure 0006756146
表1に示すように、実施例1及び2に係る積層体では、レーザー光の走査速度に関わらず最外層に損傷は生じることはなく、フィルムカスが積層体表面に発生しないことが確認できた。
参考例3に係る積層体では、レーザー光の走査速度が、2000mm/秒の場合には、最外層の一部が損傷を起こしたものの、どの走査速度でもフィルムカスが積層体表面に発生するほどの損傷は発生しないことが確認できた。
参考例4に係る積層体では、レーザー光の走査速度が、2500mm/秒及び2000mm/秒の場合には、最外層の一部が損傷を起こしたものの、どの走査速度でもフィルムカスが積層体表面に発生するほどの損傷は発生しないことが確認できた。また、実施例1〜4では、2000mm/秒から3500mm/秒の一般的なレーザー光の走査速度を含む広い範囲で好適に傷加工処理ができることが確認できた。
比較例1に係る積層体では、レーザー光の走査速度が、3500mm/秒の場合には、フィルムカスが積層体表面に発生しなかったものの、3000mm/秒よりも遅くなると最外層が損傷し、フィルムカスが積層体表面に発生した。
比較例2に係る積層体では、レーザー光の走査速度が、3500mm/秒及び3000mm/秒の場合には、フィルムカスが積層体表面に発生しなかったものの、2500mm/秒よりも遅くなると最外層が損傷し、フィルムカスが積層体表面に発生した。
比較例3に係る積層体では、いずれの走査速度によっても、最外層が損傷し、フィルムカスが積層体表面に発生した。
以上、説明したように本発明によれば、レーザー光105の照射により中間層102に傷加工部104を設けても、最外層101によりフィルムカス106が積層体100表面に付着することを防止できるため、包装材料として用いた際にフィルムカス等により内容物を汚すことのない積層体100を提供することができる。
本発明の積層体は、包装材料等に有用である。
100 積層体
101 最外層
102 中間層
103 シーラント層
104 傷加工部
105 レーザー光
106 フィルムカス
107 接着層
108 印刷層
109 基材層

Claims (1)

  1. ポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層からなる中間層に延伸ポリオレフィン層からなる最外層を積層する工程と、
    前記延伸ポリオレフィン層にレーザー光を照射して、前記延伸ポリオレフィン層を透過したレーザー光により前記中間層に、傷加工部を形成する工程とを含む、積層体の製造方法。
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