以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、鋼管矢板8の掘削側41の地盤1を掘削するための各工程を示す図である。図2は、鋼管矢板8および水ジェットノズル13の概要を示す図である。
図1(a)は、地盤1に鋼管矢板8を打設する工程を示す図である。図2(a)は、図1(a)に示す鋼管矢板8を地盤1の位置で水平方向に切断した断面を示す図である。図2(a)に示すように、鋼管矢板8は、継手11を有する複数の鋼管7からなる。継手11は、鋼管7の外周面の2ヶ所において、鉛直方向のほぼ全長にわたって設けられる。
図1(a)に示す工程では、鋼管矢板8を水中の地盤1に打設する。鋼管矢板8は、隣接する鋼管7同士を継手11で連結しつつ、複数の鋼管7を順次地盤1に打設することにより構築される。鋼管矢板8の下端部付近は、支持地盤3に根入れされる。
図1(b)は、鋼管矢板8の掘削側41の水5を排水する工程を示す図である。図1(b)に示す工程では、鋼管矢板8の掘削側41の水5を外部に排出する。
図1(c)は、鋼管矢板8と鋼管矢板8の掘削側41の土との縁を切る工程を示す図である。図2(b)は、図1(c)に示す鋼管矢板8を地盤1の位置で水平方向に切断した断面を示す図である。図1(c)に示す工程では、図2(b)に示すように、鋼管矢板8の表面に形成される凹部において、鋼管矢板8の掘削側41の表面に沿って、複数の水ジェットノズル13が配置される。すなわち、水ジェットノズル13aは、鋼管矢板8の継手11付近に配置される。水ジェットノズル13bは、水ジェットノズル13aに隣接して配置される。水ジェットノズル13cは、水ジェットノズル13bから所定の間隔をおいて配置される。
図2(c)は、水ジェットノズル13の先端付近の拡大図である。図2(c)に示すように、水ジェットノズル13は、先端付近にノズル15a、ノズル15bを有する。ノズル15aからは、水平方向にジェット17aが噴射される。ノズル15bからは、鉛直方向下方にジェット17bが噴射される。
図1(c)に示す工程では、ノズル15bから鉛直方向下方にジェット17bを、ノズル15aから水平方向にジェット17aを噴射しつつ、水ジェットノズル13を鋼管矢板8の掘削側41の面に沿って地盤1の表面から掘削予定深さ23付近の深度まで鉛直方向下方に貫入する。また、水ジェットノズル13を地盤1に貫入すると同時に、水平方向のジェット17aにより、鋼管矢板8と鋼管矢板8の掘削側41の地盤1との間に縁切り部9を形成する。
図2(b)に示すように、水ジェットノズル13aは、矢印Aの方向すなわち鋼管矢板8の継手11の接線方向に沿って水平方向のジェット17aを噴射する。2本の水ジェットノズル13aから向かい合うようにジェット17aを集中して噴射することにより、隣接する鋼管7同士の継手11の表面に沿って、縁切り部9が形成される。
図2(b)に示すように、水ジェットノズル13bは、矢印Bの方向すなわち鋼管矢板8の鋼管7の接線方向に沿って水平方向のジェット17aを噴射する。また、水ジェットノズル13cは、矢印Cの方向すなわち鋼管矢板8の鋼管7の接線方向に沿って水平方向のジェット17aを噴射する。水ジェットノズル13bおよび水ジェットノズル13cから向かい合うようにジェット17aを集中して噴射することにより、鋼管矢板8の凹形状部における、鋼管7の表面に沿って、縁切り部9が形成される。
図1(d)は、鋼管矢板8の掘削側41の地盤を掘削して土べらを落とす工程を示す図である。図1(d)に示す工程では、まず、図示しないグラブバケット等を用いて、掘削側41の地盤1を図1(c)に示す掘削予定深さ23まで掘削する。鋼管矢板8と地盤1との間には縁切り部9が設けられているため、掘削側41の地盤1を掘削すると、図2(b)に示す土べら1aは掘削側41に倒れる。その後、倒れた土べら1aを撤去する。
図1(b)に示す工程で掘削側41の水5を排出した後は、図1(c)に示す工程と、図1(d)に示す工程とを、所定の区間毎に繰り返してもよい。図1(c)に示す工程と、図1(d)に示す工程とをこまめに繰り返せば、図1(c)で示す工程で縁切り部9を設けた後の、土圧による土べら1aの鋼管矢板8への再付着を抑制できる。
このように、第1の実施の形態では、鋼管矢板8の打設後、鉛直方向下方にジェット17bを、水平方向にジェット17aを噴射しつつ、鋼管矢板8に沿って水ジェットノズル13を降下させる。第1の実施の形態では、水平方向のジェット17aを鋼管矢板8の表面に沿って集中して噴射させることにより、鋼管矢板8と鋼管矢板8の掘削側41の地盤1の土や粘土との縁を容易に切り、縁切り部9を形成することができる。
第1の実施の形態では、水ジェットノズル13を複数箇所に設け、ジェット17aを複数方向から作用させる。これにより、水ジェットノズル13から離れた位置での切削、洗浄効果を低下させることなく、鋼管矢板8の表面全体をむらなく縁切りすることができる。また、縁切り部9を形成した後に鋼管矢板8の掘削側41の地盤1を掘削することにより、掘削の後で大がかりな治具を用いず容易に土べら1aを撤去することができる。
次に、第2の実施の形態について説明する。図3は、鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1を掘削するための各工程を示す図である。図4は、鋼管矢板8a、鞘管25、水ジェットノズル39の概要を示す図である。
図3(a)は、地盤1に鋼管矢板8aを打設する工程を示す図である。図4(a)は、図3(a)に示す鋼管矢板8aを地盤1の位置で水平方向に切断した断面を示す図である。図4(a)に示すように、鋼管矢板8aは、継手11および鞘管25を有する複数の鋼管7aからなる。継手11は、鋼管7aの外周面の2ヶ所において、鉛直方向のほぼ全長に沿って設けられる。
図3(a)、図4(a)に示すように、鞘管25は、鋼管7aの掘削側41の表面の6ヶ所に設けられる。鞘管25aは、鋼管矢板8aの継手11付近に固定される。鞘管25bは、鞘管25aに隣接して固定される。鞘管25cは、鞘管25bから所定の間隔をおいて固定される。鞘管25は、地盤1の表面から掘削予定深さ23と支持地盤3との間の深さまでの範囲に設けられる。
鞘管25は、鉛直方向の全長にわたってスリット27が設けられる。鞘管25aのスリット27は、隣接する他の鋼管7aに設けられた鞘管25aのスリット27と対向する位置に設けられる。鞘管25bのスリット27は、鞘管25cのスリット27と対向する位置に設けられる。
図3(a)に示す工程では、鋼管矢板8aを水中の地盤1に打設する。鋼管矢板8aは、隣接する鋼管7a同士を継手11で連結しつつ、複数の鋼管7aを順次地盤1に打設することにより構築される。鋼管矢板8aの下端部付近は、支持地盤3に根入れされる。なお、継手11に対して、鞘管25のサイズが十分に小さければ、鞘管25による打設抵抗は無視できる。
図3(b)は、鋼管矢板8aの掘削側41の水5を排水する工程を示す図である。図3(b)に示す工程では、鋼管矢板8aの掘削側41の水5を外部に排出する。
図3(c)は、鋼管矢板8aと鋼管矢板8aの掘削側41の土との縁を切る工程を示す図である。図4(b)は、図3(c)に示す鋼管矢板8aを地盤1の位置で水平方向に切断した断面を示す図である。図4(c)は、図4(b)に示す鞘管25および水ジェットノズル39の拡大図である。
図4(c)に示すように、水ジェットノズル39は、水平方向のノズル31を有する。水ジェットノズル39は、第1の実施の形態の水ジェットノズル13とほぼ同様の構成であり、先端付近にノズル15a、ノズル15bに相当する2種類のノズルが設けられる。ノズル31は、水ジェットノズル13のノズル15aに相当するが、水ジェットノズル39の本体から突出して設けられることがノズル15aとは異なる。ノズル31からは、水平方向にジェットが噴射される。水ジェットノズル13のノズル15bに相当する図示しない鉛直方向のノズルからは、鉛直方向下方にジェットが噴射される。
図3(c)に示す工程では、水ジェットノズル39の図示しないノズルから鉛直方向下方のジェットを、ノズル31から水平方向のジェットを噴射しつつ、鋼管矢板8aの掘削側41の面に沿って固定された複数の鞘管25内に水ジェットノズル39を挿入して、水ジェットノズル39を地盤1の表面から掘削予定深さ23付近の深度まで降下させる。また、水ジェットノズル39を鉛直方向下方に降下させると同時に、ノズル31からの水平方向のジェットにより、鋼管矢板8aと鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1との間に縁切り部9aを形成する。
上述した鞘管25のスリット27は、水ジェットノズル39のノズル31による水平方向のジェットの噴射方向に設けられている。図3(c)に示す工程では、鞘管25内に挿入した水ジェットノズル39を降下させる際、ノズル31が鞘管25のスリット27に沿って降下する。また、図示しないノズルから鉛直方向下方に噴射したジェットが、鞘管25内に詰まった土砂を除去する。
図4(b)に示すように、水ジェットノズル39aは、矢印Aの方向すなわち鋼管矢板8aの継手11の接線方向に沿って水平方向のジェットを噴射する。2本の水ジェットノズル39aから向かい合うようにジェットを集中して噴射することにより、隣接する鋼管7a同士の継手11の表面に沿って、縁切り部9aが形成される。
図4(b)に示すように、水ジェットノズル39bは、矢印Bの方向すなわち鋼管矢板8aの鋼管7aの接線方向に沿って水平方向のジェットを噴射する。また、水ジェットノズル39cは、矢印Cの方向すなわち鋼管矢板8aの鋼管7aの接線方向に沿って水平方向のジェットを噴射する。水ジェットノズル39bおよび水ジェットノズル39cから向かい合うようにジェットを集中して噴射することにより、鋼管7aの表面に沿って、縁切り部9aが形成される。
図3(d)は、鋼管矢板8aの掘削側41の地盤を掘削して土べらを落とす工程を示す図である。図3(d)に示す工程では、まず、図示しないグラブバケット等を用いて、掘削側41の地盤1を図3(c)に示す掘削予定深さ23まで掘削する。鋼管矢板8aと地盤1との間には縁切り部9aが設けられているため、掘削側41の地盤1を掘削すると、図4(b)に示す土べら1aは掘削側41に倒れる。その後、倒れた土べら1aを撤去する。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、鋼管矢板8aの打設後、鉛直方向下方および水平方向にジェットを噴射しつつ、鋼管矢板8aに沿って水ジェットノズル39を降下させる。第2の実施の形態においても、水平方向のジェットを鋼管矢板8aの表面に沿って集中して噴射させることにより、鋼管矢板8aと鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1の土や粘土との縁を容易に切り、縁切り部9aを形成することができる。
第2の実施の形態においても、水ジェットノズル39を複数箇所に設け、水平方向のジェットを複数方向から作用させることにより、水ジェットノズル39から離れた位置での切削、洗浄効果を低下させることなく、鋼管矢板8aの表面全体をむらなく縁切りすることができる。また、縁切り部9aを形成した後に鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1を掘削することにより、掘削の後で大がかりな治具を用いず容易に土べら1aを撤去することができる。
第2の実施の形態では、鋼管矢板8aの鋼管7aに水平方向のジェットの噴射に対して反力を取るためのガイドとなる鞘管25を設け、鞘管25内に水ジェットノズル39を挿入しつつ鞘管25に設けたスリット27に沿って水平方向のジェットを噴射するためのノズル31を降下させる。これにより、ジェットの噴射方向を制御することが可能となり、縁切りが必要な箇所に確実に水平方向のジェットを噴射できる。水ジェットノズル39の寸法は小さいため、ガイドとして設ける鞘管25の径も小さくできるので、鞘管25を設けない場合と比較して、鋼管矢板8aを地盤1に打設する際の抵抗力はほとんど増加しない。
なお、第2の実施の形態では、鞘管25のスリット27に配置される突出したノズル31を有する水ジェットノズル39を用いたが、水ジェットノズルの形状はこれに限らない。第1の実施の形態と同様の水ジェットノズル13を用い、ノズル15aからスリット27を介して水平方向のジェット17aを噴射してもよい。また、鞘管25を鋼管7aの6ヶ所に設けたが、水ジェットノズル39aを挿入するための鞘管25aは省略しても同様の効果が得られる。
さらに、水平方向のジェットの噴射に対して反力を取るためのガイドは、鞘管25に限らない。図5は、他の形状のガイドを設けた例を示す図である。
図5(a)は、平板状のガイド33b、33cを設けた例を示す図である。図5(a)に示す例では、鋼管矢板8bが、継手11および平板状のガイド33b、33cを有する複数の鋼管7bからなる。継手11は、鋼管7bの外周面の2ヶ所において、鉛直方向のほぼ全長に沿って設けられる。
ガイド33b、33cは、それぞれ、鋼管7bの掘削側41の表面の2ヶ所ずつに設けられる。ガイド33bは、継手11との間に水ジェットノズル13aの設置スペースを確保できる位置に固定される。ガイド33cは、ガイド33bから所定の間隔をおいて固定される。ガイド33b、33cは、地盤1の表面から掘削予定深さと支持地盤との間の深さまでの範囲に設けられる。
図5(a)に示す例では、鋼管矢板8bと鋼管矢板8bの掘削側41の地盤1土との縁を切る工程において、水ジェットノズル13aを、鋼管7bの継手11とガイド33bとの間に配置する。また、水ジェットノズル13bを、ガイド33bに沿って配置する。さらに、水ジェットノズル13cを、ガイド33cに沿って配置する。そして、2本の水ジェットノズル13aからの水平方向のジェットによって、継手11付近に縁切り部9bを形成する。また、水ジェットノズル13bおよび水ジェットノズル13cからの水平方向のジェットによって、鋼管7bの表面に沿って縁切り部9bを形成する。
図5(b)は、山形鋼のガイド35b、35cを設けた例を示す図である。図5(b)に示す例では、鋼管矢板8cが、継手11および山形鋼のガイド35b、35cを有する複数の鋼管7cからなる。継手11は、鋼管7cの外周面の2ヶ所において、鉛直方向のほぼ全長に沿って設けられる。
ガイド35b、35cは、それぞれ、鋼管7cの掘削側41の表面の2ヶ所ずつに設けられる。ガイド35bは、鋼管7cの継手11との間に水ジェットノズル13aの設置スペースを確保できる位置に固定される。ガイド35cは、ガイド35bから所定の間隔をおいて固定される。ガイド35b、ガイド35cは、それぞれの脚部29bと脚部29cとが対向するように設けられる。ガイド35b、35cは、地盤1の表面から掘削予定深さと支持地盤との間の深さまでの範囲に設けられる。
図5(b)に示す例では、鋼管矢板8cと鋼管矢板8cの掘削側41の地盤1土との縁を切る工程において、水ジェットノズル13aを、鋼管7cの継手11とガイド35bとの間に配置する。また、水ジェットノズル13bを、ガイド35bの内側に沿って配置する。さらに、水ジェットノズル13cを、ガイド35cの内側に沿って配置する。そして、2本の水ジェットノズル13aからの水平方向のジェットによって、継手11付近に縁切り部9cを形成する。また、水ジェットノズル13bおよび水ジェットノズル13cからの水平方向のジェットによって、鋼管7bの表面に沿って縁切り部9cを形成する。
第1および第2の実施の形態や図5に示す例では、水ジェットノズルを鋼管の表面の6ヶ所に設けたが、水ジェットノズルの設置数はこれに限らない。
図6は、鋼管7dの3か所に鞘管37および水ジェットノズル39を設けた例を示す図である。図6に示す例では、鋼管矢板8dが、継手11および鞘管37を有する複数の鋼管7dからなる。継手11は、鋼管7dの外周面の2ヶ所において、鉛直方向のほぼ全長に沿って設けられる。
鞘管37は、鋼管7dの掘削側41の表面の3ヶ所に設けられる。鞘管37aは、鋼管7dの一方の継手11付近に固定される。鞘管37bは、鞘管37aから所定の間隔をおいて固定される。鞘管37cは、鋼管7dの他方の継手11から、鞘管37aから鞘管37bまでの距離とほぼ同等の距離をおいて固定される。鞘管37は、地盤1の表面から掘削予定深さと支持地盤との間の深さまでの範囲に設けられる。
図6に示す例では、鋼管矢板8dと鋼管矢板8dの掘削側41の地盤1土との縁を切る工程において、水ジェットノズル39を、鋼管7dの鞘管37内に配置する。このとき、水ジェットノズル39の図示しないノズルを鞘管37のスリット内に配置する。そして、水ジェットノズル39aから矢印Dに示す方向すなわち継手11の接線方向に水平方向のジェットを噴射して、継手11付近に縁切り部9dを形成する。また、水ジェットノズル39bから矢印Eに示す方向すなわち鋼管7dの接線方向に水平方向のジェットを、水ジェットノズル39cから矢印Fに示す方向すなわち鋼管7dの接線方向に水平方向のジェットを噴射して、鋼管7dの表面に沿って縁切り部9dを形成する。
次に、第3の実施の形態について説明する。図7、図8は、へら47を有するグラブバケット45を用いて地盤1を掘削する工程を示す図である。第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様の鋼管矢板8aおよび水ジェットノズル39を用い、図3(a)、図3(b)、図3(c)に示す工程までは同様の作業を行うが、図3(d)に示す工程で、鋼管矢板8の掘削側41の地盤1を掘削する際に、へら47を設けたグラブバケット45を用いる。
図7に示すように、へら47は、グラブバケット45の一方のシェル46aに、溶接やボルトによって固定される。図8に示すように、へら47は、鋼管矢板8aの継手11と鋼管7a本体の表面に形成される凹凸に沿うような形状の板状材である。
第3の実施の形態では、第2の実施の形態と同様にして図3(a)、図3(b)、図3(c)に示す工程を終えた後、図3(d)に示す工程において、へら47を設けたグラブバケット45を用いて鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1を掘削する。
へら47を設けたグラブバケット45を用いて鋼管矢板8の掘削側41の地盤1を掘削するには、まず、図7(a)および図8に示すように、へら47を縁切り部9a付近まで差し込んで、図4(b)に示す土べら1aを地盤1上に落とす。そして、図7(b)に示すようにシェル46aおよびシェル46bを閉じつつ土べら1aの土砂を含む地盤1を掘削し、図7(c)に示すようにシェル46aおよびシェル46bで掘削土を持ち上げて排出する。
第3の実施の形態においても、第1、第2の実施の形態と同様に、水平方向のジェットを鋼管矢板8aの表面に沿って集中して噴射させることにより、鋼管矢板8aと鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1の土や粘土との縁を容易に切り、縁切り部9aを形成することができる。また、水ジェットノズル39を複数箇所に設け、水平方向のジェットを複数方向から作用させることにより、水ジェットノズル39から離れた位置での切削、洗浄効果を低下させることなく、鋼管矢板8aの表面全体をむらなく縁切りすることができる。
第3の実施の形態では、縁切り部9aを形成した後に、へら47を有するグラブバケット45を用いて鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1を掘削することにより、地盤1の掘削と同時に大がかりな治具を用いず容易に土べら1aを撤去することができる。
第3の実施の形態では、鋼管矢板8aの鋼管7aに水平方向のジェットの噴射に対して反力を取るためのガイドとなる鞘管25a、25b、25cを設けることにより、第2の実施の形態と同様に、ジェットの噴射方向を制御することが可能となり、縁切りが必要な箇所に確実に水平方向のジェットを噴射できる。
次に、第4の実施の形態について説明する。図9は、鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1を掘削するための各工程を示す図である。図10は、地盤1の位置での鋼管矢板8aの水平方向の断面を示す図である。第4の実施の形態では、第2の実施の形態と同様の鋼管矢板8aおよび水ジェットノズル39を用い、図3(a)、図3(b)に示す工程までは同様の作業を行うが、その後の工程が異なる。
図9(a)は、地盤1に鋼管矢板8aを打設する工程を示す図、図9(b)は、鋼管矢板8aの掘削側41の水5を排水する工程を示す図である。図9(a)、図9(b)に示す工程では、第2の実施の形態の図3(a)、図3(b)に示す工程と同様の方法で、鋼管矢板8aを水中の地盤1に打設し、鋼管矢板8aの掘削側41の水を外部に排出する。
図9(c)は、鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1を掘削する工程を示す図である。図10(a)は、図9(c)に示す鋼管矢板8aを地盤1の位置で水平方向に切断した断面を示す図である。
図9(c)に示す工程では、図示しないグラブバケット等を用いて、掘削側41の地盤1を図9(b)に示す掘削予定深さ23まで掘削する。図9(c)に示す工程が完了した段階では、図10(a)に示すように、土べら1aと鋼管矢板8aとの縁切りはされていない。
図9(d)は、鋼管矢板8aと鋼管矢板8aの掘削側41の土との縁を切る工程を示す図である。図10(b)は、図9(d)に示す鋼管矢板8aを地盤1の位置で水平方向に切断した断面を示す図である。
図9(d)に示す工程では、第2の実施の形態の図3(c)に示す工程と同様の方法で、鋼管矢板8aと鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1との間に縁切り部43を形成する。すなわち、水ジェットノズル39のノズルから鉛直方向下方および水平方向のジェットを噴射しつつ、図10(b)に示すように鋼管矢板8aの掘削側41の面に沿って固定された複数の鞘管25a、25b、25c内にそれぞれ水ジェットノズル39a、39b、39cを挿入して、水ジェットノズル39a、39b、39cを地盤1の表面から掘削予定深さ23付近の深度まで降下させる。また、水ジェットノズル39a、39b、39cを鉛直方向下方に降下させると同時に、水平方向のジェットにより、鋼管矢板8aと鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1との間に縁切り部43を形成する。
水ジェットノズル39aは、矢印Aの方向すなわち鋼管矢板8aの継手11の接線方向に沿って水平方向のジェットを噴射する。2本の水ジェットノズル39aから向かい合うようにジェットを集中して噴射することにより、隣接する鋼管7a同士の継手11の表面に沿って、縁切り部43が形成される。
水ジェットノズル39bは、矢印Bの方向すなわち鋼管矢板8aの鋼管7aの接線方向に沿って水平方向のジェットを噴射する。また、水ジェットノズル39cは、矢印Cの方向すなわち鋼管矢板8aの鋼管7aの接線方向に沿って水平方向のジェットを噴射する。水ジェットノズル39bおよび水ジェットノズル39cから向かい合うようにジェットを集中して噴射することにより、鋼管7aの表面に沿って、縁切り部43が形成される。
第4の実施の形態では、図9(d)に示す工程で縁切り部43を形成した後、図10(b)に示すように、縁切り部43内の継手11の表面や鋼管7aの表面に沿ってシート状部材61を設置する。その後、図10(b)に示す土べら1aを撤去する。
このように、第4の実施の形態では、鋼管矢板8aの打設後、鉛直方向下方および水平方向にジェットを噴射しつつ、鋼管矢板8aに沿って水ジェットノズル39a、39b、39cを降下させる。第4の実施の形態では、水平方向のジェットを鋼管矢板8aの表面に沿って集中して噴射させることにより、鋼管矢板8aと鋼管矢板8aの掘削側41の地盤1の土や粘土との縁を容易に切り、縁切り部43を形成することができる。
第4の実施の形態においても、水ジェットノズル39a、39b、39cを複数箇所に設け、水平方向のジェットを複数方向から作用させることにより、水ジェットノズル39a、39b、39cから離れた位置での切削、洗浄効果を低下させることなく、鋼管矢板8aの表面全体をむらなく縁切りすることができる。また、鋼管矢板8の掘削側41の地盤1を掘削した後、縁切り部43を形成すれば、大がかりな治具を用いず容易に土べら1aを撤去することができる。
さらに、第4の実施の形態では、縁切り部43を形成した後、縁切り部43内の鋼管矢板8aの表面にシート状部材61を配置する。これにより、縁切り部43の形成後に、土圧によって土べら1aが鋼管矢板8aの表面に再付着することを防止できる。
次に、第5の実施の形態について説明する。図11は、地盤51に打設した鋼矢板63を水平方向に切断した断面を示す図である。第5の実施の形態における各工程は、第2の実施の形態における各工程と同様であるが、第5の実施の形態では、第2の実施の形態の鋼管矢板8aの代わりに、図11に示すような、継手59および鞘管53を有するハット型等の複数の鋼製部材67からなる鋼矢板63を用いる。
第5の実施の形態では、まず、鋼矢板63を水中の地盤51に打設する。鋼矢板63は、隣接する鋼製部材67同士を継手59で連結しつつ、複数の鋼製部材67を順次地盤51に打設することにより構築される。鋼矢板63の下端部付近は、支持地盤に根入れされる。鋼矢板63を水中の地盤51に打設した後、鋼矢板63の掘削側65の水を外部に排出する。
図11に示すように、鋼矢板63は、掘削側65から見た凹部の入り口付近の2ヶ所と、凹部の底部の1ヶ所に鞘管53が固定されている。鞘管53は、鋼矢板63の掘削側65の表面に沿って固定された鉛直方向の管である。鋼矢板63と鋼矢板63の掘削側65の地盤51との縁を切るには、水ジェットノズル39から鉛直方向下方および水平方向のジェットを噴射しつつ、鋼矢板63に固定された複数の鞘管53内に水ジェットノズル39を挿入して、地盤51の表面から掘削予定深さ付近の深度まで降下させる。
鞘管53のスリット57は、が水ジェットノズル39からの水平方向のジェットの噴射方向に設けられており、水ジェットノズル39を鉛直方向下方に地盤51に貫入すると同時に、水ジェットノズル39は、スリット57から矢印Hの方向すなわち鋼矢板63の掘削側65の表面に沿った方向に水平方向のジェットを噴射する。各水ジェットノズル39からジェットを集中して噴射することにより、鋼矢板63の掘削側65の表面に沿って、縁切り部55が形成される。
鋼矢板63と鋼矢板63の掘削側65の地盤51との間に縁切り部55を形成した後、グラブバケット等を用いて掘削側65の地盤51を掘削予定深さまで掘削する。鋼矢板63と地盤51との間には縁切り部55が設けられているため、掘削側65の地盤51を掘削すると、土べら51aは掘削側65に倒れる。その後、倒れた土べら51aを撤去する。
このように、第5の実施の形態では、鋼矢板63の打設後、鉛直方向下方および水平方向にジェットを噴射しつつ、鋼矢板63に沿って水ジェットノズル39を降下させる。第5の実施の形態では、水平方向のジェットを鋼矢板63の表面に沿って集中して噴射させることにより、鋼矢板63と鋼矢板63の掘削側65の地盤51の土や粘土との縁を容易に切り、縁切り部55を形成することができる。
第5の実施の形態においても、水ジェットノズル39を複数箇所に設けてジェットを複数方向から作用させることにより、水ジェットノズル39から離れた位置での切削、洗浄効果を低下させることなく、鋼矢板63の表面全体をむらなく縁切りすることができる。また、縁切り部55を形成した後に鋼矢板63の掘削側65の地盤51を掘削することにより、掘削の後で大がかりな治具を用いず容易に土べら51aを撤去することができる。
第5の実施の形態では、第2の実施の形態等と同様に、鋼矢板63に水平方向のジェットの噴射に対して反力を取るためのガイドとなる鞘管53を設け、鞘管53内に水ジェットノズル39を挿入しつつ鞘管53に設けたスリット57に沿って水平方向のジェットを噴射するためのノズルを降下させる。これにより、ジェットの噴射方向を制御することが可能となり、縁切りが必要な箇所に確実に水平方向のジェットを噴射できる。
なお、第5の実施の形態の鋼矢板63には、水平方向のジェットの噴射に対して反力を取るためのガイドとして鞘管53を設けたが、鞘管53の代わりに、図5に示すような他のガイドを設けてもよい。
第3の実施の形態で述べた、縁切り部9aを形成した後にへら47を有するグラブバケット45を用いて掘削側41の地盤1を掘削する方法は、第1および第2の実施の形態、図5、図6で示した他の鋼管板の掘削側41の地盤1を掘削する際や、第5の実施の形態で示した鋼矢板63の掘削側65の地盤51を掘削する際にも適用できる。鋼矢板の掘削側の地盤の掘削に適用する際は、へらの形状を鋼矢板の表面形状に合わせる。
また、第4の実施の形態で述べた、縁切り部43を形成した後に縁切り部43内の鋼管矢板8aの表面にシート状部材61を設置して土圧による再付着を防ぐ方法は、第1、第2、第3、第5の実施の形態や図5、図6に示す例においても適用できる。また、シート状部材を設置する他に、水平方向のジェットに空気または砂を混ぜることによっても、縁切り部の形成後に土圧によって土べらが矢板の表面に再付着することを防止できる。第1の実施の形態で述べたように、掘削側41の水5を排出した後、矢板と掘削側の地盤との縁を切る工程と、土べらを撤去する工程とを、所定の区間毎にこまめに繰り返すことによっても、縁切り部9をの形成後の土圧による土べらの矢板への再付着を抑制できる。
第1、第3、第4の実施の形態や図5、図6に示す例では、鋼管矢板を例として示したが、鋼管矢板の代わりに鋼矢板を用いてもよい。
また、第1から第4の実施の形態や、図5、図6に示す例では、P−P型継手を有する鋼管矢板を例として示したが、継手の形状はこれに限らない。本発明の土べら落とし方法は、P−T型やL−T型の継手を有する鋼管矢板にも適用できる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。