JP6746099B2 - 非水電解質二次電池用活物質、非水電解質二次電池用活物質の製造方法、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
従来、非水電解質二次電池用正極活物質として、α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が検討され、LiCoO2を用いた非水電解質二次電池が広く実用化されていた。しかし、LiCoO2の放電容量は120〜130mAh/g程度であった。
また、前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属に対して、遷移金属(Me)中のMnのモル比Mn/Meが0.5を超え、遷移金属(Me)に対するLiのモル比Li/Meが1を超えるいわゆる「リチウム過剰型」活物質は、「LiMeO2型」活物質に比べて高い放電容量を有することから、その実用化に向けて、検討が行われている。
また、この実施例1の活物質を正極に用いたリチウム二次電池(段落[0108]、[0109])について、表1(段落[0121])には、初期効率が84.6%であり、表2(段落[0125])には、容量維持率が97.7%(10回/1回)、95.4%(30回/1回)、及び94.5%(40回/1回)であることが記載されている。
また、表1(段落[0027])には、実施例8として、正極活物質8(x:0.3、a:0.33、b:0.33、c:0.29、M:V、d:0.04)、すなわち、0.3Li2MnO3―0.7LiNi0.33Mn0.33Co0.29V0.04O2(書き換えるとLi1.3Ni0.231Mn0.531Co0.203V0.028O2.3)が示されている。この実施例8の活物質を用いた正極を有する試作電池について、表3(段落[0037])には、Vを含有しない比較例1に対する放電容量比が0.92であり、発熱量比が0.64であることが記載されている。
また、この微粉状化合物について、「リチウムリッチな層状酸化物粒子の表面にLiyVOz相が存在することが示された。」(段落[0033])と記載され、これを正極材料としたリチウム電池においては、「LiVO3相の添加のため、第1サイクルにおける不可逆容量の非常に有意な低減(23%から4%に変化)を示している。」(段落[0037])、「非常に高い比容量とまた非常に良好なサイクル性を示すことを示している。」(段落[0038])と記載されている。
特許文献2には、スプレードライにより得られたLi、Mn、Ni、Co、及びVを含む前駆体を大気中で焼成して得たリチウム遷移金属酸化物の正極活物質を有する正極材料について、高放電容量で発熱量比が低い(安全性が高い)ことが記載されている。
特許文献3には、リチウムリッチな層状酸化物をNH4VO3水溶液に懸濁させた後、空気下で熱処置して得られた微粉状化合物を正極材料としたリチウム二次電池は、第1サイクルにおける不可逆容量が低減し、高い比容量と良好なサイクル性を示すことが記載されている。
特許文献4には、Li1.2Ni0.17Co0.08Mn0.55O2である化合物とV2O5を混合し、大気中で焼成して得た、上記化合物とアスペクト比の平均値が16以上62以下である柱状のLi及びVの複合酸化物とが混在している活物質を正極に用いると、初回充放電効率が向上することが記載されている。
また、特許文献1〜4に記載の正極活物質は、V原料を他の活物質原料に混合後、大気中で熱処理しているから、5価のVを含むものである。
り、Meに対するLiのモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、3価のVを含む、非水電解質二次電池用活物質である。
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質である。
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、高い放電容量が得られる点から、遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、さらに3価のV(以下、「V(3価)」ともいう。)又はGeを含む。典型的には、組成式Li1+xMeVyO2+z、又はLi1+xMeGeyO2+zと表される。放電容量が高い非水電解質二次電池を得るために、遷移金属元素Meに対するMnのモル比Mn/Meは0.5より大きく、Meに対するLiのモル比Li/Me(上記組成式における(1+x))は、1<Li/Meのリチウム過剰型活物質とする。
Meに対するMnのモル比Mn/Meは、0.60〜0.75が好ましく、0.60〜0.70がより好ましく、0.65〜0.70が特に好ましい。この範囲であると、エネルギー密度が向上する。
リチウム遷移金属複合酸化物に含有されるCoは、初期効率を向上させ、高率放電性能を高める効果があるが、平均放電電位の低下を抑制するためには、少ない方が好ましい。また、希少資源であることからコスト高である。したがって、遷移金属元素Meに対するCoのモル比Co/Meは、0.20以下とすることが好ましく、0.10以下であることがより好ましく、0でもよい。Vを添加する場合には、Co/Meは、0.10以下とする。
Meに対するNiのモル比Ni/Meは、0.10〜0.40であることが好ましく、0.15〜0.35がより好ましい。この範囲であると、エネルギー密度が向上する。
なお、このリチウム遷移金属複合酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲で、Na,K等のアルカリ金属、Mg,Ca等のアルカリ土類金属、Fe等の3d遷移金属に代表される遷移金属など少量の他の金属を含有することを排除するものではない。
≪3価のVを含む場合≫
本実施形態において、3価のVを含むリチウム遷移金属複合酸化物を備える非水電解質二次電池用活物質は、Mn及びNi、又はMn、Ni及びCoを含む遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、前記前駆体とリチウム化合物を混合し焼成して、リチウム過剰型のリチウム遷移金属酸化物を作製し、前記リチウム遷移金属複合酸化物にリチウム化合物とV2O3とを添加し、非酸化雰囲気中で焼成することにより製造される。
前記遷移金属炭酸塩前駆体は、基本的に、活物質を構成する遷移金属元素のMe(Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo)の組成どおりに各元素を含有する原料水溶液を調製し、この水溶液を溶液中に滴下し、各元素を一粒子中に存在させた共沈物として作製することができる。
焼成温度が低すぎると、結晶化が十分に進まず、電極特性が低下する傾向がある。本実施形態においては、焼成温度は800℃以上とすることが好ましい。800℃以上とすることにより、焼結度が高い活物質粒子を得ることができ、充放電サイクル性能を向上させることができる。
一方、焼成温度が高すぎると層状α−NaFeO2構造から岩塩型立方晶構造へと構造変化がおこり、充放電反応中における活物質中のリチウムイオン移動に不利な状態となり、放電性能が低下する。本実施形態において、焼成温度は950℃以下とすることが好ましい。950℃以下とすることにより、充放電サイクル性能を向上させることができる。
したがって、本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極活物質を作製する場合、充放電サイクル性能を向上させるために、焼成温度は800〜950℃とすることが好ましい。第一の焼成時の雰囲気は酸化性ガス雰囲気が好ましく、より好ましくは通常の空気である。焼成時間は1〜30時間が好ましい。
Geを含む場合の本実施形態における水電解質二次電池用活物質は、Mn及びNi、又はMn、Ni及びCoを含む遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、前記前駆体とリチウム化合物とGeO2を混合し焼成することにより作製する。
前記前駆体は、3価のVを含む場合と同様に作製することができる。
なお、共沈前駆体作成時にGeを混合しないのは、GeがNiやMn等と共沈し難いためである。
混合後の焼成は、3価のVを含む場合の第一の焼成工程と同様の条件で行うことが好ましい。
本実施形態に係るリチウム過剰型活物質は、非水電解質二次電池用正極に用いる材料であり、以下、この正極材料と組み合わせる二次電池用負極の材料について述べる。
負極材料としては、限定されるものではなく、リチウムイオンを放出あるいは吸蔵することのできる形態のものであれば選択可能である。例えば、Li[Li1/3Ti5/3]O4に代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム−チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)等が挙げられる。
正極活物質の粉体および負極材料の粉体は、平均粒子サイズ(D50)が100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で50μm以下であることが好ましく、充放電サイクル性能を維持するためには3μm以上であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いるセパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
本発明の一側面に係る非水電解質二次電池の実施形態であるリチウム二次電池を図1に示す。図1は、矩形状のリチウム二次電池の容器内部を透視した斜視図である。電極群2が収納された電池容器3内に非水電解質(電解液)を注入することによりリチウム二次電池1が組み立てられる。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本実施形態に係るリチウム二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
測定に供する試料は、電極作製前の活物質粉末であれば、そのまま測定に供する。電池を解体して取り出した電極から試料を採取する場合には、電池を解体する前に、次の手順によって電池を放電状態とする。0.1CmAの電流で、正極の電位が3.0V(vs.Li/Li+)となる電池電圧に至るまで定電流放電を行い、放電末状態とする。金属リチウム電極を負極に用いた電池であれば、当該電池を放電末状態又は充電末状態とした後に電池を解体して電極を取り出せばよいが、金属リチウム電極を負極に用いた電池でない場合は、正極電位を正確に制御するため、放電状態で電池を解体して電極を取り出した後に、金属リチウム電極を対極としたセルを組立ててから、上記の手順に沿って、放電末状態に調整する。電極電位が3.0V(vs.Li/Li+)を下回っている場合は、一旦充電末状態としてから、上記の条件で放電末状態とする。ここでの充電条件は、充電電流0.1CmA、充電終止電圧4.3〜4.5V(vs.Li/Li+)の定電流充電とする。充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とする。電池やセルの解体から測定までの作業は露点−60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。取り出した正極板は、ジメチルカーボネートを用いて電極に付着した電解液を十分に洗浄し室温にて一昼夜の乾燥後、電極を所定サイズ(例えば2×2cm)に切り出し、XPS測定に供する。
XPS測定に使用する装置及び測定条件は以下のとおりである。
装置:KRATOS ANALYTICAL社の「AXIS NOVA」
X線源:単色化AlKα
加速電圧:15kV
分析面積:700μm×300μm
測定範囲:O1s=543〜522eV、V2p3/2=512〜520eV、V3p=38〜50eV
測定間隔:0.1eV
測定時間:O1s=52.5秒/回、V2p3/2=70.0秒/回、V3p=70.0秒/回
積算回数:O1s=8回、V2p3/2=15回、V3p=15回
<前駆体作製工程>
硫酸ニッケル6水和物36.3g及び硫酸マンガン5水和物63.1gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mLに溶解させ、Ni:Mnのモル比が34.5:65.5となる2.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2Lの反応槽に750mLのイオン交換水を注ぎ、CO2ガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCO2を溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたディスクタービン翼を用いて、邪魔板付きの反応槽内を1000rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3mL/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、1.0Mの炭酸ナトリウム及びアンモニアを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に8.0(±0.05)、アンモニア濃度が0.5g/Lを保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3時間継続した。攪拌の停止後、12時間以上静置した。
次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した共沈炭酸塩の粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、80℃にて乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体3.00gに、炭酸リチウム1.22gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いて十分混合し、Li:(Ni,Mn)のモル比が1.33:1である混合粉体を調製した。ペレットに成形した前記混合粉体をアルミナ製るつぼに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から890℃まで10時間かけて昇温し、890℃で5時間焼成した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製るつぼを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、炉の温度は5時間後には約200℃程度にまで低下するが、その後の降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、比較例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.33Ni0.345Mn0.655O2+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.33であるが、α−NaFeO2型結晶構造を有している限りzの値は必ずしも化学量論比どおりでなくてよい。以下の実施例および比較例においても同様である。
第一の焼成工程で合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、炭酸リチウム0.0108gと酸化バナジウム(V2O3)0.0219gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いて十分混合し、Li:(Ni,Mn):Vのモル比が1.34:1:0.01である混合粉体を調製した。ペレットに成形した前記混合粉体をアルミナ製るつぼに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、窒素雰囲気中、常圧下、常温から890℃まで1.5℃/minの昇温速度で昇温し、890℃で5時間焼成した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製るつぼを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、実施例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.34Ni0.345Mn0.655V0.01O2+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.35であるが、α−NaFeO2型結晶構造を有している限りzの値は必ずしも化学量論比どおりでなくてよい。以下の実施例および比較例においても同様である。
第二の焼成工程において、第一の焼成工程で合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、炭酸リチウム0.0324gと酸化バナジウム(V2O3)0.0656gを加え、Li:(Ni,Mn):Vのモル比が1.36:1:0.03である混合粉体を調製した以外は実施例1と同様にして、実施例2に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.36Ni0.345Mn0.655V0.03O2+zを作製した。前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.39である。
実施例1の第一の焼成工程で合成したLi1.33Ni0.345Mn0.655O2+zを比較例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物とした。
第二の焼成工程において、炭酸リチウム及び酸化バナジウム(V2O3)を添加しない以外は実施例1と同様にして、比較例2に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.33Ni0.345Mn0.655O2+zを作製した。
実施例1で合成した共沈炭酸塩前駆体3.00gに、炭酸リチウム1.24gと酸化ゲルマニウム(GeO2)0.0260gを加え、Li:(Ni,Mn):Geのモル比が1.35:1:0.01である混合粉体を調製した以外は実施例1の第一の焼成工程と同様の焼成を行い、実施例3に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Ge0.01O2+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.36である。
実施例1で合成した共沈炭酸塩前駆体3.00gに、炭酸リチウム1.28gと酸化ゲルマニウム(GeO2)0.0780gを加え、Li:(Ni,Mn):Geのモル比が1.39:1:0.03である混合粉体を調製した以外は実施例1の第一の焼成工程と同様の焼成を行い、実施例4に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Ge0.03O2+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.42である。
第二の焼成工程において、第一の焼成工程で合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、炭酸リチウム0.0216gと酸化モリブデン0.0374gを加え、Li:(Ni,Mn):Moのモル比が1.35:1:0.01である混合粉体を調製した以外は実施例1と同様にして、比較例3に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Mo0.01O2+zを作製した。前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.36である。
第二の焼成工程において、第一の焼成工程で合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、炭酸リチウム0.0647gと酸化モリブデン0.1121gを加え、Li:(Ni,Mn):Moのモル比が1.39:1:0.03である混合粉体を調製した以外は実施例1と同様にして、比較例4に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Mo0.03O2+zを作製した。前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.42である。
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化スズ0.0375gを添加した以外は実施例3と同様にして、比較例5に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Sn0.01O2+zを作製した。
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化スズ0.1124gを添加した以外は実施例4と同様にして、比較例6に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Sn0.03O2+zを作製した。
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化チタン0.0199gを添加した以外は実施例3と同様にして、比較例7に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Ti0.01O2+zを作製した。
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化チタン0.0596gを添加した以外は実施例4と同様にして、比較例8に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Ti0.03O2+zを作製した。
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化ルテニウム0.0331gを添加した以外は実施例3と同様にして、比較例9に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Ru0.01O2+zを作製した。
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化ルテニウム0.0992gを添加した以外は実施例4と同様にして、比較例10に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Ru0.03O2+zを作製した。
第二の焼成工程において、焼成雰囲気を窒素から大気に変更した以外は実施例1及び実施例2と同様にして、それぞれ比較例11及び比較例12に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
第二の焼成工程において、酸化バナジウム(V2O3)をメタバナジン酸アンモニウム(5価のV)に変更し、焼成雰囲気を窒素から大気に変更した以外は実施例1及び実施例2と同様にして、それぞれ比較例13及び比較例14に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
比較例1,2及び実施例1,2における前駆体を、Ni:Co:Mnのモル比が20.3:12.0:67.6である前駆体に変更し、前記前駆体にLi:Me(Ni,Co,Mn)のモル比が1.44:1となるように炭酸リチウムを混合して第一の焼成工程を行った以外はそれぞれ比較例1,2及び実施例1,2と同様にして、比較例15〜18に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
実施例1〜4及び比較例1〜18に係るリチウム遷移金属複合酸化物をエックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を用いて粉末エックス線回折測定を行った。その結果、全ての実施例及び比較例において作成したリチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO2構造を有することを確認した。
実施例1〜4及び比較例1〜18に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれ非水電解質二次電池用正極活物質に用いて、以下の手順で、非水電解質二次電池用正極を作製した。N−メチルピロリドンを分散媒とし、正極活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比90:5:5の割合で混練分散されている塗布用ペーストを作製した。該塗布ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の片方の面に塗布し、正極板を作製した。なお、全ての実施例及び比較例に係る非水電解質二次電池同士で試験条件が同一になるように、一定面積当たりに塗布されている活物質の質量及び塗布厚みを統一した。
非水電解質二次電池の負極には、正極の理論容量に対して十分に大きい容量を備える金属リチウムをニッケル集電体に貼り付けた金属リチウム電極を用いた。
それぞれの電池について、25℃にて、2サイクルの初期充放電を行った。充電は、電流0.1CmA、電圧4.7Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設け、初期放電容量を確認した。比較例電池1の初期放電容量に対する実施例1〜4及び比較例電池2〜14の初期放電容量の百分率、及び比較例電池15の初期放電容量に対する比較例電池16〜18の初期放電容量の百分率を「初期放電容量比(%)」とした。
初期放電容量を確認後、25サイクルの充放電サイクル試験を行った。充電は、電流0.1CmA、電圧4.7Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。
上記充放電サイクル試験における1サイクル目の放電容量に対する25サイクル目の放電容量の百分率を算出し、「容量維持率」とした。
上記充放電サイクル試験において、1サイクル目の平均放電電位に対する25回目の平均放電電位の百分率を「電位維持率(%)」とした。なお、上記実施例で用いた非水電解質二次電池は、負極に金属リチウムを用いているから、端子間電圧が正極電位と等しいとみなし、上記定電流放電中の非水電解質二次電池の平均電圧を「平均放電電位」として採用した。
以上の結果を表1に示す。
これに対して、異種元素としてV(3価)又はGeを含む実施例1〜4では、電位維持率が97.0%以上である。また、初期放電容量は標準品に対する容量比が95%以上であり、容量維持率も100%以上である。したがって、高い放電容量を有すると共に充放電サイクルに伴う平均放電電位の低下が抑制された活物質が得られることがわかる。
比較例2は、第二の焼成工程を有するが、異種元素を含まない点で実施例1,2と相違する。電位維持率低下の抑制に効果がないばかりでなく、標準品に対する初期放電容量が低い(容量比87%)ので、高容量を得ることができない。比較例2と実施例1,2との対比から、電位維持率の低下が抑制される効果は、第二の焼成工程によるのではなく、V(3価)の添加によることがわかる。
異種元素を添加せず、第二の焼成工程を有しない比較例15では、Coの比率が高いため、高い初期放電容量が得られているが、電位維持率は標準品と同程度であるにすぎない。
比較例15に対して、異種元素を添加せず非酸化雰囲気中での第二の焼成工程を加えた比較例16、及び3価のV(V2O3)を添加し、非酸化雰囲気中での第二の焼成工程を加えた比較例17及び比較例18では、電位維持率低下を抑制する効果がないばかりでなく、初期放電容量比を大きく低下させている。
したがって、Meに対するCoのモル比Co/Meが0.1を超える場合、3価のVの添加による効果が生じないことがわかる。
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (6)
- リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質であって、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、
α−NaFeO2構造を有し、
遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、
Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meであり、
Meに対するCoのモル比Co/MeがCo/Me≦0.1であり、
Meに対するLiのモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、
3価のVを含む、
非水電解質二次電池用活物質。 - リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質であって、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、
α−NaFeO2構造を有し、
遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、
Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meであり、
Meに対するLiのモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、
Geを含む、
非水電解質二次電池用活物質。 - リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質の製造方法であって、
遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Me、Meに対するCoのモル比Co/MeがCo/Me≦0.1である遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、
前記遷移金属炭酸塩前駆体とリチウム化合物を混合し焼成して、リチウム遷移金属複合酸化物を作製し、
前記リチウム遷移金属複合酸化物にリチウム化合物とV2O3とを添加し、非酸化性雰囲気中で焼成して、Meに対するLiモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、3価のVを含むリチウム遷移金属複合酸化物を製造することを備える非水電解質二次電池用活物質の製造方法。 - リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質の製造方法であって、
遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meである遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、
前記遷移金属炭酸塩前駆体とリチウム化合物を混合し、GeO2を添加し、焼成して、Meに対するLiモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、Geを含むリチウム遷移金属複合酸化物を製造することを備える非水電解質二次電池用活物質の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の活物質を含有する非水電解質二次電池用正極。
- 請求項5に記載の正極、負極及び非水電解質を備えた非水電解質二次電池。
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