JP6746099B2 - 非水電解質二次電池用活物質、非水電解質二次電池用活物質の製造方法、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用活物質、非水電解質二次電池用活物質の製造方法、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池用活物質、その製造方法、非水電解質二次電池用正極、及び非水電解質二次電池に関する。
リチウム二次電池に代表される非水電解質二次電池は、近年ますます用途が拡大され、より高容量の正極材料の開発が求められている。
従来、非水電解質二次電池用正極活物質として、α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が検討され、LiCoOを用いた非水電解質二次電池が広く実用化されていた。しかし、LiCoOの放電容量は120〜130mAh/g程度であった。
前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属(Me)として、地球資源として豊富なMnを用い、前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属に対するLiのモル比Li/Meがほぼ1であり、遷移金属中のMnのモル比Mn/Meが0.5以下であるいわゆる「LiMeO型」活物質が一部実用化されている。例えば、LiNi1/2Mn1/2やLiNi1/3Co1/3Mn1/3を含有する正極活物質は、150〜180mAh/gの放電容量を有する。
また、前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属に対して、遷移金属(Me)中のMnのモル比Mn/Meが0.5を超え、遷移金属(Me)に対するLiのモル比Li/Meが1を超えるいわゆる「リチウム過剰型」活物質は、「LiMeO型」活物質に比べて高い放電容量を有することから、その実用化に向けて、検討が行われている。
特許文献1には、「下記化学式1で表されるリチウム過剰層状酸化物(OLO)を含むリチウム二次電池用正極活物質。[化学式1] LiNiCoMnMeO(前記化学式1中、1.1<a<1.5、0<b<1、0≦c<1、0<d<1、0<e<1および0.8≦b+c+d+e<1であり、Mは、V、Ga、Zr、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、W、Mo、Siまたはこれらの組み合わせの陽イオン元素である。)」(請求項1)が記載されている。
そして、この活物質の実施例について、「実施例1 Ni(OH)22.21g、Co(OH)22.27g、Mn54.82gおよびNHVO0.70gの混合原料を蒸溜水に入れてボールミル(0.3mmのZrOボール)を用いて約2時間にかけて均等に分散させた。また、前記NHVOは、前記混合原料の総量に対して0.5mol%添加された。前記分散させて得られた分散物は、約100nm程度であった。次に、前記分散物を噴霧乾燥法を用いて約245℃で15mm/minで噴霧乾燥させてバナジウムがドーピングされた前駆体を得た。次に、前記バナジウムがドーピングされた前駆体61.78gとLiCO38.22gを固相合性法を用いて混合した。前記混合された混合物を空気雰囲気下で750℃で10時間にかけて熱処理して正極活物質Li1.170Ni0.164Co0.167Mn0.4980.005を製造した。」(段落[0096])と記載されている。
また、この実施例1の活物質を正極に用いたリチウム二次電池(段落[0108]、[0109])について、表1(段落[0121])には、初期効率が84.6%であり、表2(段落[0125])には、容量維持率が97.7%(10回/1回)、95.4%(30回/1回)、及び94.5%(40回/1回)であることが記載されている。
特許文献2には、「xLiMnO―(1−x)LiNiMnCo(0.3≦x≦0.7、0.33≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0≦c≦0.33、0.01≦d≦0.06)で表記され、MはV、Moから選ばれる1種類以上の元素である正極活物質を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用の正極材料。」(請求項1)が記載されている。
そして、この正極活物質の実施例について、「(正極活物質の作製) 酢酸リチウム、酢酸ニッケル、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酸化バナジウム、モリブデン酸などを精製水に溶解させた後、スプレードライ装置を用いてスプレードライし、前駆体を得た。得られた前駆体を大気中において500℃で12時間焼成し、リチウム遷移金属酸化物を得た。得られたリチウム遷移金属酸化物をペレット化した後、大気中で800〜1000℃で12時間焼成した。焼成したペレットをメノウ乳鉢で粉砕し、45μmのふるいで分級し、正極活物質とした。」(段落[0024])と記載されている。
また、表1(段落[0027])には、実施例8として、正極活物質8(x:0.3、a:0.33、b:0.33、c:0.29、M:V、d:0.04)、すなわち、0.3LiMnO―0.7LiNi0.33Mn0.33Co0.290.04(書き換えるとLi1.3Ni0.231Mn0.531Co0.2030.0282.3)が示されている。この実施例8の活物質を用いた正極を有する試作電池について、表3(段落[0037])には、Vを含有しない比較例1に対する放電容量比が0.92であり、発熱量比が0.64であることが記載されている。
特許文献3には、「Li1+x(MnNi1−x型のリチウムリッチな層状酸化物の粒子と、リチウムリッチな層状酸化物の粒子の少なくとも一部を覆うLiVO型の金属酸化物とからなり、ここで、0.1≦x≦0.25、a+b+c=1で、a、b及びcは0ではなく、Mは、Mg、Zn、Al、Na、Ca及びKからなる群から選択される金属であり、0<y≦3、及び 2.5<z<4、であるリチウム電池用の二相正極材料。」(請求項1)、「金属酸化物が式LiVOに対応することを特徴とする請求項1に記載の材料。」(請求項2)が記載されている。
そして、この二相正極材料の実施態様について、「予め合成された2グラムの層状酸化物Li1.2(Mn0.7625Ni0.225Mg0.01250.8に対応するリチウムリッチな層状酸化物を、80℃で4時間、10mlのHOに0.283gのNHVOを溶解させることにより得られた10mlの0.25MのNHVO水溶液に懸濁させ、ひとたび懸濁が実施されれば、蒸発による乾燥を実施するために、溶液を80℃で24時間、攪拌し続け、ついで、空気下で4時間、得られた粉末を300℃の温度で熱処理し、微粉状化合物を得る。」(段落[0029])と記載されている。
また、この微粉状化合物について、「リチウムリッチな層状酸化物粒子の表面にLiVO相が存在することが示された。」(段落[0033])と記載され、これを正極材料としたリチウム電池においては、「LiVO相の添加のため、第1サイクルにおける不可逆容量の非常に有意な低減(23%から4%に変化)を示している。」(段落[0037])、「非常に高い比容量とまた非常に良好なサイクル性を示すことを示している。」(段落[0038])と記載されている。
特許文献4には、「層状構造を有し、下記式(1)で表される組成の化合物と、アスペクト比の平均値が16以上62以下である柱状のLi及びVの複合酸化物と、が混在していることを特徴とする活物質。 LiyNiaCobMncMdOx ・・・(1)[上記式(1)中、元素MはAl、Si、Zr、Ti、Fe、Mg、Nb、Ba及びVからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、1.9≦(a+b+c+d+y)≦2.1、1.0<y≦1.3、0<a≦0.3、0<b≦0.25、0.3≦c≦0.7、0≦d≦0.1、1.9≦x≦2.1。]」(請求項1)が記載されている。
そして、前記活物質の実施例1について、「Li1.2Ni0.17Co0.08Mn0.55」(段落[0055])である「化合物とVを90:10の重量比率で乳鉢を用いて、10分程度混合した後、400℃で3時間大気中にて焼成することで、Li及びVの複合化合物と化合物が混在した活物質を得た。実施例1の活物質を粉体X線回折法により解析した。実施例1の被覆物はLiVOであった。」(段落[0056])と記載されている。また、この活物質を用いて作製した正極を有するリチウムイオン二次電池(段落[0058]〜[0060])について、「アスペクト比の平均値が16以上62以下のLiとVの複合酸化物と化合物を混在させたとき、初回充放電効率が向上した。」(段落[0072])と記載されている。
特開2015−15244号公報 特開2013−175401号公報 特開2014−506387号公報 特開2013−206558号公報
高い放電容量を有するリチウム過剰型活物質においては、初期効率の向上、充放電サイクルに伴う容量低下の抑制などとともに、特に高電位領域で使用した際の平均放電電位の低下が課題である。
特許文献1には、Vがドーピングされた前駆体と炭酸リチウムとを空気雰囲気下で熱処理して得られたリチウム過剰型活物質を用いた正極を有するリチウム二次電池について、初期効率及び容量維持率が向上することが記載されている。
特許文献2には、スプレードライにより得られたLi、Mn、Ni、Co、及びVを含む前駆体を大気中で焼成して得たリチウム遷移金属酸化物の正極活物質を有する正極材料について、高放電容量で発熱量比が低い(安全性が高い)ことが記載されている。
特許文献3には、リチウムリッチな層状酸化物をNHVO水溶液に懸濁させた後、空気下で熱処置して得られた微粉状化合物を正極材料としたリチウム二次電池は、第1サイクルにおける不可逆容量が低減し、高い比容量と良好なサイクル性を示すことが記載されている。
特許文献4には、Li1.2Ni0.17Co0.08Mn0.55である化合物とVを混合し、大気中で焼成して得た、上記化合物とアスペクト比の平均値が16以上62以下である柱状のLi及びVの複合酸化物とが混在している活物質を正極に用いると、初回充放電効率が向上することが記載されている。
しかし、特許文献1〜4には、リチウム過剰型活物質において、充放電サイクルに伴う放電電位低下の抑制について、何も記載されていない。
また、特許文献1〜4に記載の正極活物質は、V原料を他の活物質原料に混合後、大気中で熱処理しているから、5価のVを含むものである。
本発明は、高い放電容量を有するとともに、充放電サイクルに伴う平均放電電位の低下が抑制された非水電解質二次電池用活物質、前記活物質の製造方法、前記活物質を含有する非水電解質二次電池用正極、及び前記正極を備えた非水電解質二次電池を提供することを課題とする。
本発明の第一の側面は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO構造を有し、遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meであり、Meに対するCoのモル比Co/MeがCo/Me≦0.1であ
り、Meに対するLiのモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、3価のVを含む、非水電解質二次電池用活物質である。
本発明の第二の側面は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO構造を有し、遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCoを含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meであり、Meに対するLiのモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、Geを含む、非水電解質二次電池用活物質である。
本発明の第三の側面は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質の製造方法であって、遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCoを含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Me、Meに対するCoのモル比Co/MeがCo/Me≦0.1である遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、前記遷移金属炭酸塩前駆体とリチウム化合物を混合し焼成して、リチウム遷移金属複合酸化物を作製し、前記リチウム遷移金属複合酸化物にリチウム化合物とVとを添加し、非酸化性雰囲気中で焼成して、Meに対するLiモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、3価のVを含むリチウム遷移金属複合酸化物を製造することを備える非水電解質二次電池用活物質の製造方法である。
本発明の第四の側面は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質の製造方法であって、遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCoを含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meである遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、前記遷移金属炭酸塩前駆体とリチウム化合物を混合し、GeOを添加し、焼成して、Meに対するLiモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、Geを含むリチウム遷移金属複合酸化物を製造することを備える非水電解質二次電池用活物質の製造方法である。
本発明の第五及び第六の側面は、前記活物質を含有する非水電解質二次電池用正極、及び前記正極を備える非水電解質二次電池である。
本発明によれば、高い放電容量を有するとともに、充放電サイクルに伴う平均放電電位の低下が抑制された非水電解質二次電池用活物質、前記活物質の製造方法、前記活物質を備える非水電解質二次電池用正極、及び前記正極を有する非水電解質二次電池を提供することができる。
本発明の一側面に係る非水電解質二次電池の一実施形態を示す斜視図 本発明の一側面に係る非水電解質二次電池を複数個備えた蓄電装置を示す概略図
本発明の構成及び作用効果について、技術思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、後述の実施形態又は実施例は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
<正極活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)>
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質である。
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、高い放電容量が得られる点から、遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、さらに3価のV(以下、「V(3価)」ともいう。)又はGeを含む。典型的には、組成式Li1+xMeV2+z、又はLi1+xMeGe2+zと表される。放電容量が高い非水電解質二次電池を得るために、遷移金属元素Meに対するMnのモル比Mn/Meは0.5より大きく、Meに対するLiのモル比Li/Me(上記組成式における(1+x))は、1<Li/Meのリチウム過剰型活物質とする。
Meに対するLiのモル比Li/Meは、1.15〜1.5が好ましく、1.2〜1.45がより好ましい。この範囲であると、放電容量が特に向上する。
Meに対するMnのモル比Mn/Meは、0.60〜0.75が好ましく、0.60〜0.70がより好ましく、0.65〜0.70が特に好ましい。この範囲であると、エネルギー密度が向上する。
リチウム遷移金属複合酸化物に含有されるCoは、初期効率を向上させ、高率放電性能を高める効果があるが、平均放電電位の低下を抑制するためには、少ない方が好ましい。また、希少資源であることからコスト高である。したがって、遷移金属元素Meに対するCoのモル比Co/Meは、0.20以下とすることが好ましく、0.10以下であることがより好ましく、0でもよい。Vを添加する場合には、Co/Meは、0.10以下とする。
Meに対するNiのモル比Ni/Meは、0.10〜0.40であることが好ましく、0.15〜0.35がより好ましい。この範囲であると、エネルギー密度が向上する。
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物(リチウム過剰型正極活物質)において、V(3価)又はGeを添加することにより、充放電サイクル後の平均放電電位の低下が抑制される。その理由は必ずしも明らかではないが、V(3価)又はGeが固溶することにより、リチウム過剰型正極活物質の結晶構造を安定化させたものと推測される。
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物において、Meに対するV(3価)、及びGeの含有量は、3mol%以下(前記組成式におけるyがy≦0.03)であることが好ましい。3mol%以下とすることにより、初期放電容量の低下を抑制することができる。
前記組成式から化学量論的に計算されるzの値はz=x+yである。しかし、α−NaFeO型結晶構造を有している限りzの値は必ずしも化学量論比どおりでなくてよい。
なお、このリチウム遷移金属複合酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲で、Na,K等のアルカリ金属、Mg,Ca等のアルカリ土類金属、Fe等の3d遷移金属に代表される遷移金属など少量の他の金属を含有することを排除するものではない。
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO構造を有している。合成後(充放電を行う前)の上記リチウム遷移金属複合酸化物は、空間群P312あるいはR3−mに帰属される。このうち、空間群P312に帰属されるものには、CuKα管球を用いたエックス線回折図上、2θ=21°付近に超格子ピーク(Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶に見られるピーク)が確認される。ところが、一度でも充電を行い、結晶中のLiが脱離すると結晶の対称性が変化することにより、上記超格子ピークが消滅して、上記リチウム遷移金属複合酸化物は空間群R3−mに帰属されるようになる。ここで、P312は、R3−mにおける3a、3b、6cサイトの原子位置を細分化した結晶構造モデルであり、R3−mにおける原子配置に秩序性が認められるときに該P312モデルが採用される。なお、「R3−m」は本来「R3m」の「3」の上にバー「−」を施して表記する。
<活物質の製造方法>
≪3価のVを含む場合≫
本実施形態において、3価のVを含むリチウム遷移金属複合酸化物を備える非水電解質二次電池用活物質は、Mn及びNi、又はMn、Ni及びCoを含む遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、前記前駆体とリチウム化合物を混合し焼成して、リチウム過剰型のリチウム遷移金属酸化物を作製し、前記リチウム遷移金属複合酸化物にリチウム化合物とVとを添加し、非酸化雰囲気中で焼成することにより製造される。
前記遷移金属炭酸塩前駆体は、基本的に、活物質を構成する遷移金属元素のMe(Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo)の組成どおりに各元素を含有する原料水溶液を調製し、この水溶液を溶液中に滴下し、各元素を一粒子中に存在させた共沈物として作製することができる。
遷移金属共沈前駆体を作製するにあたって、Ni,Co,MnのうちMnは酸化されやすく、Ni,Co,Mnが2価の状態で均一に分布した共沈前駆体を作製することが容易ではないため、Ni,Co,Mnの原子レベルでの均一な混合は不十分なものとなりやすい。したがって、共沈前駆体に分布して存在するMnの酸化を抑制するために、溶存酸素を除去することが好ましい。溶存酸素を除去する方法としては、酸素を含まないガスをバブリングする方法が挙げられる。酸素を含まないガスとしては、限定されるものではないが、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素(CO)等を用いることができる。
遷移金属の共沈前駆体としては、炭酸塩前駆体と水酸化物前駆体が知られている。炭酸塩前駆体を用いると、水酸化物前駆体を用いるよりも比表面積が大きい球状の活物質粒子を得ることができる。比表面積が大きい正極活物質は、活物質/電解質界面から粒子内部への拡散距離が短いから、放電容量及び初期効率が高い正極活物質が得られる。したがって、本実施形態においては、炭酸塩前駆体を用いる製造方法を選択する。
溶液中でNi、Co及びMnを含有する化合物を共沈させて前駆体を作製する工程におけるpHは、限定されるものではないが、炭酸塩前駆体を作製する場合には、7.5〜11とすることができる。pHを9.4以下とすることにより、タップ密度を1.25g/cc以上とすることができ、高率放電性能を向上させることができる。さらに、pHを8.0以下とすることにより、粒子成長速度を促進できるので、原料水溶液滴下終了後の撹拌継続時間を短縮できる。
前記共沈前駆体の原料は、Ni化合物としては、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル等を、Co化合物としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト等を、Mn化合物としては酸化マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン等を一例として挙げることができる。
前記原料水溶液の滴下速度は、生成する共沈前駆体の1粒子内における元素分布の均一性に大きく影響を与える。好ましい滴下速度については、反応槽の大きさ、攪拌条件、pH、反応温度等にも影響されるが、30mL/min以下が好ましい。放電容量を向上させるためには、滴下速度は10mL/min以下がより好ましく、5mL/min以下が最も好ましい。
また、反応槽内にNH等の錯化剤が存在し、かつ一定の対流条件を適用した場合、前記原料水溶液の滴下終了後、さらに攪拌を続けることにより、粒子の自転および攪拌槽内における公転が促進され、この過程で、粒子同士が衝突しつつ、粒子が段階的に同心円球状に成長する。即ち、共沈前駆体は、反応槽内に原料水溶液が滴下された際の金属錯体形成反応、及び、前記金属錯体が反応槽内の滞留中に生じる沈殿形成反応という2段階での反応を経て形成される。したがって、前記原料水溶液の滴下終了後、さらに攪拌を続ける時間を適切に選択することにより、目的とする粒子径を備えた共沈前駆体を得ることができる。
原料水溶液滴下終了後の好ましい攪拌継続時間については、反応槽の大きさ、攪拌条件、pH、反応温度等にも影響されるが、粒子を均一な球状粒子として成長させるために0.5時間以上の反応時間が好ましく、1時間以上がより好ましい。また、粒子径が大きくなりすぎることで電池の低SOC領域における出力性能が充分でないものとなる虞を低減させるため、30時間以下が好ましく、25時間以下がより好ましく、20時間以下が最も好ましい。
上記のようにして得られた共沈前駆体は、基本的に、活物質を構成するMeの組成どおりに各元素を含有するから、Meに対するMnのモル比Mn/Meは0.5<Mn/Meであり、Meに対するCoのモル比Co/MeはCo/Me≦0.1である。
この共沈前駆体とリチウム化合物とを混合し焼成することでリチウム遷移金属複合酸化物粒子を作製する。次に、このリチウム遷移金属複合酸化物にリチウム化合物とVとを添加し、非酸化雰囲気中で追加焼成して、3価のVを含むリチウム遷移金属複合酸化物を作製する。以下、共沈前駆体とリチウム化合物からリチウム遷移金属複合酸化物を作製する焼成を「第一の焼成工程」といい、リチウム遷移金属複合酸化物の追加焼成を「第二の焼成工程」という。前記第一及び第二の焼成工程に用いるリチウム化合物は、水酸化リチウム、炭酸リチウム等とすることができる。
第二の焼成工程におけるVの添加量は、Meに対してVが3mol%以下であることが好ましく、リチウム化合物の添加量は、Meに対してVと同程度のmol%であることが好ましい。したがって、第一の焼成工程におけるリチウム化合物と共沈前駆体の混合比は、第二の焼成工程で添加されるリチウム化合物の量を考慮して、目的とする活物質のMeに対するLiのモル比Li/Meとなるように設定する。但し、リチウム化合物の量については、焼成中にLiの一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
前記第一及び第二の焼成温度は、活物質の可逆容量に影響を与える。
焼成温度が低すぎると、結晶化が十分に進まず、電極特性が低下する傾向がある。本実施形態においては、焼成温度は800℃以上とすることが好ましい。800℃以上とすることにより、焼結度が高い活物質粒子を得ることができ、充放電サイクル性能を向上させることができる。
一方、焼成温度が高すぎると層状α−NaFeO構造から岩塩型立方晶構造へと構造変化がおこり、充放電反応中における活物質中のリチウムイオン移動に不利な状態となり、放電性能が低下する。本実施形態において、焼成温度は950℃以下とすることが好ましい。950℃以下とすることにより、充放電サイクル性能を向上させることができる。
したがって、本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極活物質を作製する場合、充放電サイクル性能を向上させるために、焼成温度は800〜950℃とすることが好ましい。第一の焼成時の雰囲気は酸化性ガス雰囲気が好ましく、より好ましくは通常の空気である。焼成時間は1〜30時間が好ましい。
3価のVを含むリチウム遷移金属複合酸化物を作製するために、第二の焼成工程は非酸化性雰囲気中で行う。3価の化合物であるVを空気中で高温にすると、5価の化合物Vとなるためである。非酸化性雰囲気は、窒素雰囲気や不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
≪Geを含む場合≫
Geを含む場合の本実施形態における水電解質二次電池用活物質は、Mn及びNi、又はMn、Ni及びCoを含む遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、前記前駆体とリチウム化合物とGeOを混合し焼成することにより作製する。
前記前駆体は、3価のVを含む場合と同様に作製することができる。
なお、共沈前駆体作成時にGeを混合しないのは、GeがNiやMn等と共沈し難いためである。
前駆体とリチウム化合物とGeOとの混合比は、目的とする活物質の組成比どおりに設定する。Meに対するLiのモル比Li/Meが1を超えるように設定する。Meに対するGeの含有量は3mol%以下であるように設定することが好ましい。但し、リチウム化合物の量については、焼成中にLiの一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
混合後の焼成は、3価のVを含む場合の第一の焼成工程と同様の条件で行うことが好ましい。
<負極材料>
本実施形態に係るリチウム過剰型活物質は、非水電解質二次電池用正極に用いる材料であり、以下、この正極材料と組み合わせる二次電池用負極の材料について述べる。
負極材料としては、限定されるものではなく、リチウムイオンを放出あるいは吸蔵することのできる形態のものであれば選択可能である。例えば、Li[Li1/3Ti5/3]Oに代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム−チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)等が挙げられる。
<正極・負極>
正極活物質の粉体および負極材料の粉体は、平均粒子サイズ(D50)が100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で50μm以下であることが好ましく、充放電サイクル性能を維持するためには3μm以上であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
以上、正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極材料について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜50重量%が好ましく、特に0.5重量%〜30重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極材料)、およびその他の材料を混練し合剤とし、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
集電体としては、Al箔、Cu箔等の集電箔を用いることができる。正極の集電箔としてはAl箔が好ましく、負極の集電箔としてはCu箔が好ましい。集電箔の厚みは10〜30μmが好ましい。また、合剤層の厚みはプレス後において、40〜150μm(集電箔厚みを除く)が好ましい。
<非水電解質>
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
非水電解質に用いる電解質塩としては、例えば、LiClO4,LiBF4,LiAsF6,LiPF6,LiSCN,LiBr,LiI,Li2SO4,Li210Cl10,NaClO4,NaI,NaSCN,NaBr,KClO4,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF3SO3,LiN(CF3SO22,LiN(C25SO22,LiN(CF3SO2)(C49SO2),LiC(CF3SO23,LiC(C25SO23,(CH34NBF4,(CH34NBr,(C254NClO4,(C254NI,(C374NBr,(n−C494NClO4,(n−C494NI,(C254N−maleate,(C254N−benzoate,(C254N−phthalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
さらに、LiPF6又はLiBF4と、LiN(C25SO22のようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができ、より望ましい。
また、非水電解質として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
非水電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する非水電解質電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5mol/lが好ましく、さらに好ましくは、0.5mol/l〜2.5mol/lである。
<セパレータ>
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いるセパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
また、セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。非水電解質を上記のようにゲル状態で用いると、漏液を防止する効果がある点で好ましい。
さらに、セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解質の保液性が向上するため望ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、前記フィルムの微孔内に電解質を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
前記親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアナート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。該モノマーは、ラジカル開始剤を併用して加熱や紫外線(UV)を用いたり、電子線(EB)等の活性光線等を用いて架橋反応を行わせることが可能である。
その他の電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
<非水電解質二次電池>
本発明の一側面に係る非水電解質二次電池の実施形態であるリチウム二次電池を図1に示す。図1は、矩形状のリチウム二次電池の容器内部を透視した斜視図である。電極群2が収納された電池容器3内に非水電解質(電解液)を注入することによりリチウム二次電池1が組み立てられる。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本実施形態に係るリチウム二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
本発明は、他の一側面として上記のリチウム二次電池を複数個集合した蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一例を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数のリチウム二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
非水電解質電池が備える正極に用いられている正極活物質が3価のVを含むことは、次の手順に従って、X線光電子分光(XPS)分析を行うことにより確認できる。
測定に供する試料は、電極作製前の活物質粉末であれば、そのまま測定に供する。電池を解体して取り出した電極から試料を採取する場合には、電池を解体する前に、次の手順によって電池を放電状態とする。0.1CmAの電流で、正極の電位が3.0V(vs.Li/Li)となる電池電圧に至るまで定電流放電を行い、放電末状態とする。金属リチウム電極を負極に用いた電池であれば、当該電池を放電末状態又は充電末状態とした後に電池を解体して電極を取り出せばよいが、金属リチウム電極を負極に用いた電池でない場合は、正極電位を正確に制御するため、放電状態で電池を解体して電極を取り出した後に、金属リチウム電極を対極としたセルを組立ててから、上記の手順に沿って、放電末状態に調整する。電極電位が3.0V(vs.Li/Li)を下回っている場合は、一旦充電末状態としてから、上記の条件で放電末状態とする。ここでの充電条件は、充電電流0.1CmA、充電終止電圧4.3〜4.5V(vs.Li/Li+)の定電流充電とする。充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とする。電池やセルの解体から測定までの作業は露点−60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。取り出した正極板は、ジメチルカーボネートを用いて電極に付着した電解液を十分に洗浄し室温にて一昼夜の乾燥後、電極を所定サイズ(例えば2×2cm)に切り出し、XPS測定に供する。
XPS測定に使用する装置及び測定条件は以下のとおりである。
装置:KRATOS ANALYTICAL社の「AXIS NOVA」
X線源:単色化AlKα
加速電圧:15kV
分析面積:700μm×300μm
測定範囲:O1s=543〜522eV、V2p3/2=512〜520eV、V3p=38〜50eV
測定間隔:0.1eV
測定時間:O1s=52.5秒/回、V2p3/2=70.0秒/回、V3p=70.0秒/回
積算回数:O1s=8回、V2p3/2=15回、V3p=15回
(実施例1)
<前駆体作製工程>
硫酸ニッケル6水和物36.3g及び硫酸マンガン5水和物63.1gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mLに溶解させ、Ni:Mnのモル比が34.5:65.5となる2.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2Lの反応槽に750mLのイオン交換水を注ぎ、COガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCOを溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたディスクタービン翼を用いて、邪魔板付きの反応槽内を1000rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3mL/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、1.0Mの炭酸ナトリウム及びアンモニアを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に8.0(±0.05)、アンモニア濃度が0.5g/Lを保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3時間継続した。攪拌の停止後、12時間以上静置した。
次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した共沈炭酸塩の粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、80℃にて乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体を作製した。
<第一の焼成工程>
前記共沈炭酸塩前駆体3.00gに、炭酸リチウム1.22gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いて十分混合し、Li:(Ni,Mn)のモル比が1.33:1である混合粉体を調製した。ペレットに成形した前記混合粉体をアルミナ製るつぼに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から890℃まで10時間かけて昇温し、890℃で5時間焼成した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製るつぼを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、炉の温度は5時間後には約200℃程度にまで低下するが、その後の降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、比較例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.33Ni0.345Mn0.6552+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.33であるが、α−NaFeO型結晶構造を有している限りzの値は必ずしも化学量論比どおりでなくてよい。以下の実施例および比較例においても同様である。
<第二の焼成工程>
第一の焼成工程で合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、炭酸リチウム0.0108gと酸化バナジウム(V)0.0219gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いて十分混合し、Li:(Ni,Mn):Vのモル比が1.34:1:0.01である混合粉体を調製した。ペレットに成形した前記混合粉体をアルミナ製るつぼに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、窒素雰囲気中、常圧下、常温から890℃まで1.5℃/minの昇温速度で昇温し、890℃で5時間焼成した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製るつぼを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、実施例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.34Ni0.345Mn0.6550.012+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.35であるが、α−NaFeO型結晶構造を有している限りzの値は必ずしも化学量論比どおりでなくてよい。以下の実施例および比較例においても同様である。
(実施例2)
第二の焼成工程において、第一の焼成工程で合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、炭酸リチウム0.0324gと酸化バナジウム(V)0.0656gを加え、Li:(Ni,Mn):Vのモル比が1.36:1:0.03である混合粉体を調製した以外は実施例1と同様にして、実施例2に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.36Ni0.345Mn0.6550.032+zを作製した。前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.39である。
(比較例1)
実施例1の第一の焼成工程で合成したLi1.33Ni0.345Mn0.6552+zを比較例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物とした。
(比較例2)
第二の焼成工程において、炭酸リチウム及び酸化バナジウム(V)を添加しない以外は実施例1と同様にして、比較例2に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.33Ni0.345Mn0.6552+zを作製した。
(実施例3)
実施例1で合成した共沈炭酸塩前駆体3.00gに、炭酸リチウム1.24gと酸化ゲルマニウム(GeO)0.0260gを加え、Li:(Ni,Mn):Geのモル比が1.35:1:0.01である混合粉体を調製した以外は実施例1の第一の焼成工程と同様の焼成を行い、実施例3に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Ge0.012+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.36である。
(実施例4)
実施例1で合成した共沈炭酸塩前駆体3.00gに、炭酸リチウム1.28gと酸化ゲルマニウム(GeO)0.0780gを加え、Li:(Ni,Mn):Geのモル比が1.39:1:0.03である混合粉体を調製した以外は実施例1の第一の焼成工程と同様の焼成を行い、実施例4に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Ge0.032+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.42である。
(比較例3)
第二の焼成工程において、第一の焼成工程で合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、炭酸リチウム0.0216gと酸化モリブデン0.0374gを加え、Li:(Ni,Mn):Moのモル比が1.35:1:0.01である混合粉体を調製した以外は実施例1と同様にして、比較例3に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Mo0.012+zを作製した。前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.36である。
(比較例4)
第二の焼成工程において、第一の焼成工程で合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、炭酸リチウム0.0647gと酸化モリブデン0.1121gを加え、Li:(Ni,Mn):Moのモル比が1.39:1:0.03である混合粉体を調製した以外は実施例1と同様にして、比較例4に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Mo0.032+zを作製した。前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.42である。
(比較例5)
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化スズ0.0375gを添加した以外は実施例3と同様にして、比較例5に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Sn0.012+zを作製した。
(比較例6)
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化スズ0.1124gを添加した以外は実施例4と同様にして、比較例6に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Sn0.032+zを作製した。
(比較例7)
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化チタン0.0199gを添加した以外は実施例3と同様にして、比較例7に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Ti0.012+zを作製した。
(比較例8)
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化チタン0.0596gを添加した以外は実施例4と同様にして、比較例8に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Ti0.032+zを作製した。
(比較例9)
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化ルテニウム0.0331gを添加した以外は実施例3と同様にして、比較例9に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.35Ni0.345Mn0.655Ru0.012+zを作製した。
(比較例10)
第一の焼成工程において、酸化ゲルマニウムに代えて、酸化ルテニウム0.0992gを添加した以外は実施例4と同様にして、比較例10に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.39Ni0.345Mn0.655Ru0.032+zを作製した。
(比較例11,12)
第二の焼成工程において、焼成雰囲気を窒素から大気に変更した以外は実施例1及び実施例2と同様にして、それぞれ比較例11及び比較例12に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
(比較例13,14)
第二の焼成工程において、酸化バナジウム(V)をメタバナジン酸アンモニウム(5価のV)に変更し、焼成雰囲気を窒素から大気に変更した以外は実施例1及び実施例2と同様にして、それぞれ比較例13及び比較例14に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
(比較例15〜18)
比較例1,2及び実施例1,2における前駆体を、Ni:Co:Mnのモル比が20.3:12.0:67.6である前駆体に変更し、前記前駆体にLi:Me(Ni,Co,Mn)のモル比が1.44:1となるように炭酸リチウムを混合して第一の焼成工程を行った以外はそれぞれ比較例1,2及び実施例1,2と同様にして、比較例15〜18に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
[結晶構造の確認]
実施例1〜4及び比較例1〜18に係るリチウム遷移金属複合酸化物をエックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を用いて粉末エックス線回折測定を行った。その結果、全ての実施例及び比較例において作成したリチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO構造を有することを確認した。
<非水電解質二次電池用正極の作製>
実施例1〜4及び比較例1〜18に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれ非水電解質二次電池用正極活物質に用いて、以下の手順で、非水電解質二次電池用正極を作製した。N−メチルピロリドンを分散媒とし、正極活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比90:5:5の割合で混練分散されている塗布用ペーストを作製した。該塗布ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の片方の面に塗布し、正極板を作製した。なお、全ての実施例及び比較例に係る非水電解質二次電池同士で試験条件が同一になるように、一定面積当たりに塗布されている活物質の質量及び塗布厚みを統一した。
<非水電解質二次電池の作製>
非水電解質二次電池の負極には、正極の理論容量に対して十分に大きい容量を備える金属リチウムをニッケル集電体に貼り付けた金属リチウム電極を用いた。
非水電解質として、エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)が体積比6:7:7である混合溶媒に濃度が1mol/LとなるようにLiPFを溶解させた溶液を用いた。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用いた。
前記金属樹脂複合フィルムを袋状に成形し、その中に正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように前記正極及び前記負極を収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記非水電解質を注液後、注液孔を封止して、実施例1〜4及び比較例1〜14に係る非水電解質二次電池を作製した。
[初期充放電工程]
それぞれの電池について、25℃にて、2サイクルの初期充放電を行った。充電は、電流0.1CmA、電圧4.7Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設け、初期放電容量を確認した。比較例電池1の初期放電容量に対する実施例1〜4及び比較例電池2〜14の初期放電容量の百分率、及び比較例電池15の初期放電容量に対する比較例電池16〜18の初期放電容量の百分率を「初期放電容量比(%)」とした。
[充放電サイクル試験]
初期放電容量を確認後、25サイクルの充放電サイクル試験を行った。充電は、電流0.1CmA、電圧4.7Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。
上記充放電サイクル試験における1サイクル目の放電容量に対する25サイクル目の放電容量の百分率を算出し、「容量維持率」とした。
[平均放電電位の測定]
上記充放電サイクル試験において、1サイクル目の平均放電電位に対する25回目の平均放電電位の百分率を「電位維持率(%)」とした。なお、上記実施例で用いた非水電解質二次電池は、負極に金属リチウムを用いているから、端子間電圧が正極電位と等しいとみなし、上記定電流放電中の非水電解質二次電池の平均電圧を「平均放電電位」として採用した。
以上の結果を表1に示す。
表1の比較例1は、異種元素を含まない従来のリチウム過剰型活物質を正極に用いて非水電解質二次電池を作製した例であり(以下、これを「標準品」という。)、充放電サイクル試験後の電位維持率が96.8%である。
これに対して、異種元素としてV(3価)又はGeを含む実施例1〜4では、電位維持率が97.0%以上である。また、初期放電容量は標準品に対する容量比が95%以上であり、容量維持率も100%以上である。したがって、高い放電容量を有すると共に充放電サイクルに伴う平均放電電位の低下が抑制された活物質が得られることがわかる。
比較例2は、第二の焼成工程を有するが、異種元素を含まない点で実施例1,2と相違する。電位維持率低下の抑制に効果がないばかりでなく、標準品に対する初期放電容量が低い(容量比87%)ので、高容量を得ることができない。比較例2と実施例1,2との対比から、電位維持率の低下が抑制される効果は、第二の焼成工程によるのではなく、V(3価)の添加によることがわかる。
比較例3,4は、V(3価)に代えて、遷移金属であるMoを添加した以外は、それぞれ実施例1,2と同様の例である。Meに対するMo添加量が1mol%である比較例3では、電位維持率の低下抑制が標準品に及ばず、容量維持率が低い。Mo添加量が3mol%である比較例4では、電位維持率の低下抑制はされているが、標準品に対する初期放電容量が大きく低下(容量比84%)しているので高い放電容量を得ることができないことがわかる。
比較例5,6は、Geに代えて、同じ4価であるSnを添加した以外は、それぞれ実施例3,4と同様の例である。電位維持率低下の抑制には効果がみられるが、標準品に対する初期放電容量が低い(容量比88%、88%)ため、高い放電容量が得られない。
比較例7〜10は、Geに代えて、遷移金属であるTi又はRuを添加した以外は、それぞれ実施例3,4と同様の例である。いずれの例においても、電位維持率が標準品を下回っている。
比較例11,12では、活物質のV成分の原料として3価のV(V)を使用するが、第二の焼成工程を大気中で行っているから、作製された活物質に含まれるのは5価のVである。比較例13,14も、活物質のV成分の原料として5価のV(NHVO)を使用し、第二の焼成工程が大気中であるから、作製された活物質には5価のVが含まれる。比較例11〜14のいずれにおいても、電位維持率は標準品を下回るか同程度であるから、5価のVを添加しても、電位維持率低下の抑制効果がみられない。また、Meに対する5価のVの添加量が3mol%である比較例12,14では、容量比の極端な低下(61%、72%)がみられる。
比較例15〜18では、Ni:Co:Mnのモル比が20.3:12.0:67.6の前駆体を用い、前記前駆体にLi:Me(Ni,Co,Mn)のモル比が1.44:1となるように炭酸リチウムを混合して第一の焼成工程を行った以外はそれぞれ比較例1,2及び実施例1,2と同様の工程で正極活物質を作製している。
異種元素を添加せず、第二の焼成工程を有しない比較例15では、Coの比率が高いため、高い初期放電容量が得られているが、電位維持率は標準品と同程度であるにすぎない。
比較例15に対して、異種元素を添加せず非酸化雰囲気中での第二の焼成工程を加えた比較例16、及び3価のV(V)を添加し、非酸化雰囲気中での第二の焼成工程を加えた比較例17及び比較例18では、電位維持率低下を抑制する効果がないばかりでなく、初期放電容量比を大きく低下させている。
したがって、Meに対するCoのモル比Co/Meが0.1を超える場合、3価のVの添加による効果が生じないことがわかる。
以上の結果から、リチウム過剰型活物質がV(3価)又はGeを含むと、充放電サイクルに伴う平均放電電位の低下が抑制されることがわかる。また、この効果は、V(3価)を含む場合、Meに対するCoのモル比Co/Meが0.1以下である場合に発揮されることがわかる。
電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等では、電池の残存容量を推定するために、電池の充電深度(SOC)を常に把握する必要がある。電池のSOCは、電池電圧又は電極電位に基づいて推定することが多い。ここで、電池の平均放電電位が電池の使用に伴って変化すると、SOCの推定精度に影響を与える。本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極活物質を用いることにより、放電容量が高く充放電サイクルに伴う平均放電電位の低下を抑制された非水電解質二次電池を提供することができるので、この非水電解質二次電池は、特に、電気自動車(EV)用、ハイブリッド自動車(HEV)用、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)用の非水電解質二次電池として有用である。
1 非水電解質二次電池(リチウム二次電池)
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (6)

  1. リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質であって、
    前記リチウム遷移金属複合酸化物は、
    α−NaFeO構造を有し、
    遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、
    Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meであり、
    Meに対するCoのモル比Co/MeがCo/Me≦0.1であり、
    Meに対するLiのモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、
    3価のVを含む、
    非水電解質二次電池用活物質。
  2. リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質であって、
    前記リチウム遷移金属複合酸化物は、
    α−NaFeO構造を有し、
    遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、
    Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meであり、
    Meに対するLiのモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、
    Geを含む、
    非水電解質二次電池用活物質。
  3. リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質の製造方法であって、
    遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Me、Meに対するCoのモル比Co/MeがCo/Me≦0.1である遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、
    前記遷移金属炭酸塩前駆体とリチウム化合物を混合し焼成して、リチウム遷移金属複合酸化物を作製し、
    前記リチウム遷移金属複合酸化物にリチウム化合物とVとを添加し、非酸化性雰囲気中で焼成して、Meに対するLiモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、3価のVを含むリチウム遷移金属複合酸化物を製造することを備える非水電解質二次電池用活物質の製造方法。
  4. リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用活物質の製造方法であって、
    遷移金属元素としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCo(以下、「Mn及びNi、又はMn、Ni及びCo」をMeという。)を含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meである遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、
    前記遷移金属炭酸塩前駆体とリチウム化合物を混合し、GeOを添加し、焼成して、Meに対するLiモル比Li/Meが1.15≦Li/Me≦1.5であり、Geを含むリチウム遷移金属複合酸化物を製造することを備える非水電解質二次電池用活物質の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の活物質を含有する非水電解質二次電池用正極。
  6. 請求項5に記載の正極、負極及び非水電解質を備えた非水電解質二次電池。
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