JP6848333B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質、その製造方法、非水電解質二次電池用正極、及び非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極活物質、その製造方法、非水電解質二次電池用正極、及び非水電解質二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池用正極活物質、その製造方法、非水電解質二次電池用正極、及び非水電解質二次電池に関する。
リチウム二次電池に代表される非水電解質二次電池は、近年ますます用途が拡大され、より高容量の正極材料の開発が求められている。
従来、非水電解質二次電池用正極活物質として、α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が検討され、LiCoOを用いた非水電解質二次電池が広く実用化されていた。しかし、LiCoOの放電容量は120〜130mAh/g程度であった。
前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属(Me)として、地球資源として豊富なMnを用い、前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属に対するLiのモル比Li/Meがほぼ1であり、遷移金属中のMnのモル比Mn/Meが0.5以下であるいわゆる「LiMeO型」活物質が一部実用化されている。例えば、LiNi1/2Mn1/2やLiNi1/3Co1/3Mn1/3を含有する正極活物質は、150〜180mAh/gの放電容量を有する。
また、前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属に対して、遷移金属(Me)中のMnのモル比Mn/Meが0.5を超え、遷移金属(Me)に対するLiのモル比Li/Meが1を超えるいわゆる「リチウム過剰型」活物質は、「LiMeO型」活物質に比べて高い放電容量を有することから、その実用化に向けて、検討が行われている。
特許文献1には、「一般式Li1+xMn1−x−y(ここで、x及びyは、0<x<0.33、0<y<0.66の範囲であり、MはMn以外の少なくとも1つの遷移金属を示す。)で表され、かつ層状構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物であって、その表面に酸化ホウ素の層が形成されていることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。」(請求項1)が記載されている。
そして、その実施例について、「<実験1> 〔リチウム含有遷移金属酸化物の作製〕水酸化リチウム(LiOH)及びMn、Co及びNiの共沈水酸化物を出発材料として用いた。これらの材料を、所定の組成比となるように混合し、混合した粉末をペレットに形成した。このペレットを900℃で24時間焼成することにより、Li1.2Mn0.54Co0.13Ni0.13の組成を有するリチウム含有遷移金属酸化物を得た。得られたリチウム含有遷移金属酸化物の平均粒子径は、11μmであった。」(段落[0048])、「〔正極活物質の作製〕 得られたリチウム含有遷移金属酸化物の表面に、以下の実施例において記載するように酸化ホウ素の層を形成し、正極活物質とした。」(段落[0049])、「(実施例1〜5) 上記のようにして得られたリチウム含有遷移金属酸化物の表面に、以下のようにして酸化ホウ素の層を形成した。」(段落[0056])、「リチウム含有遷移金属酸化物100質量部に対し、2質量部のHBOと50質量部の水を調製し、この水溶液を、リチウム含有遷移金属酸化物と混合した。次に、この混合物を空気中80℃で乾燥した。次に、この乾燥した粉末を、空気中所定の温度で5時間熱処理した。熱処理温度は、200℃(実施例1)、300℃(実施例2)、400℃(実施例3)、500℃(実施例4)、及び600℃(実施例5)とした。」(段落[0057])と記載されている。
また、実施例及び比較例の正極活物質を用いたテストセルの評価結果として、「表1に示すように、本発明に従い、表面に酸化ホウ素の層を形成した実施例2〜4においては、表面に酸化ホウ素の層を形成していないそれぞれ同じ熱処理温度の比較例1〜3に比べ、1サイクル目の放電容量が高くなっている。」(段落[0062])と記載されている。
特許文献2には、「式Li1+x1−x2−z(Mは、非リチウム金属元素またはそれらの組み合わせであり、0.01≦x≦0.3であり、0≦z≦0.2である)で近似的に表されるリチウム金属酸化物を含み、約0.1〜約0.75重量パーセントの金属/半金属酸化物でコーティングされた、リチウムイオン電池正極材料。」(請求項1)、「前記金属/半金属酸化物が、酸化アルミニウム(Al)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ホウ素(B)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(Cr)、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、酸化ガリウム(Ga)、酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、酸化モリブデン(MoOおよびMoO)、酸化セリウム(CeO)、酸化ランタン(La)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化リチウムアルミニウム(LiAlO)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の正極材料。」(請求項2)について記載されている。
そして、その実施例について、段落[0068]〜[0103]には、表3に記載の「xLiMnO−(1−x)LiMO中のx」が0.5、0.3、0.1である組成物1〜8に、酸化アルミニウム(Al)、酸化ビスマス(Bi)又は酸化マグネシウム(MgO)をコーティングした正極材料を用いたコインセル電池が記載され、Alコーティングの場合、「0.2重量パーセントのコーティングを有するサンプルから形成した電池は、放電率のC/3で55サイクルまで驚くべき優れた性能を示した。」(段落[0086])、「0.2重量パーセントのコーティングを有するサンプルは、すべてのレートにおいて、他のコーティングされたサンプルより高い電池容量を示した。」(段落[0087])と記載され、Biコーティングの場合、「0.1重量パーセントのBiコーティングおよび0.5重量パーセントのBiコーティングを有するリチウム金属酸化物粉末から作製した電池は、コーティングされていないサンプルから作製した電池よりも高い比放電容量をあらゆるレートで有した。」(段落[0096])と記載され、MgOコーティングの場合、「コーティングされたサンプルは、充電および放電比容量の増加を示し、対応する同程度または増加した第1サイクル不可逆容量損失(IRCL)を示した。」(段落「0101」)と記載されている。
特許文献3には、「少なくとも空間群R−3mに属する結晶系と空間群C2/mに属する結晶系とを有する化合物からなる正極活物質粒子粉末であって、当該化合物は少なくともLiとMnとホウ素とCo及び/又はNiとを含有する複合酸化物であり、正極活物質粒子粉末のCu−Kα線を使用した粉末X線回折図の2θ=20.8±1°における最大回折ピークの強度(a)と2θ=18.6±1°における最大回折ピークの強度(b)との相対強度比(a)/(b)が0.02〜0.5である正極活物質粒子粉末であって、該正極活物質粒子粉末のMn含有量はモル比でMn/(Ni+Co+Mn)が0.55以上であり、ホウ素を0.001〜3wt%含むことを特徴とする正極活物質粒子粉末。」(請求項1)が記載されている。
そして、その実施例について、「実施例1 密閉型反応槽に水を14L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.2(±0.2)となるよう、攪拌しながら連続的に1.5MのNi、Co、Mnの混合硫酸塩水溶液と0.8M炭酸ナトリウム水溶液と2Mアンモニア水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら、20時間反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、105℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。得られた共沈前駆体と炭酸リチウム粉末とホウ酸を秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、エアー流通下、800℃で5hr焼成し、正極活物質粒子粉末を得た。X線回折測定の結果、得られた正極活物質粒子粉末は、空間群R−3mに属する結晶系と、空間群C2/mに属する結晶系とを含んでおり、ピーク強度比(a)/(b)が0.11であった。ICP組成分析の結果、それぞれモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.33、Ni:Co:Mn=21.6:12.4:66(Mn/(Ni+Co+Mn)=0.66)であり、B=0.05wt%であった。窒素吸着法によるBET比表面積は3.5m/gであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)によって前記正極活物質粒子粉末の粒子を観察した結果、平均一次粒子径が0.07μmの一次粒子が凝集して平均二次粒子径が12.1μmの二次粒子を形成している様子が観測された。」(段落[0063])と記載されている。また、実施例2〜13にも、Bを0.003〜1.600wt%含む正極活物質について記載されている。
特許文献4には、「金属リチウム基準で4.5V以上の電位を発現する正極活物質と、導電剤と、結着剤と、を有する正極合剤を有する正極と、負極と、リチウム塩を非水溶媒に溶解した非水電解液、とを有するリチウムイオン二次電池であって、正極合剤の表面の少なくとも一部にホウ素を含む正極被覆層を有し、かつ正極被覆層中のホウ素量が正極合剤重量に対し0.0001重量%以上0.005重量%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。」(請求項1)が記載されている。
そして、その実施例について、「本実施形態の電池である、電池A,電池B,電池Cを、以下のとおり作製した。金属リチウム基準で4.5V以上の電位を発現する正極活物質として、LiMn1.52Ni0.484を作成した。原料として、二酸化マンガン(MnO2)と酸化ニッケル(NiO)を所定の組成比になるよう秤量し純水を用い湿式混合した。乾燥後、電気炉により、昇温3℃/分、降温2℃/分で、1000℃12時間、空気雰囲気で焼成した。この焼成体を粉砕後、これと所定の組成比になるよう秤量した炭酸リチウム(Li2CO3)とを同様に湿式混合した。乾燥後、昇温3℃/分、降温2℃/分で、800℃20時間、空気雰囲気で焼成した。これを粉砕し正極活物質を得た。」(段落[0065]〜[0067])、「非水電解液は以下のとおり作製した。エチレンカーボネート,ジメチルカーボネート,及びメチルエチルカーボネートの、体積比2:4:4の非水混合溶媒に、リチウム塩として六フッ化リン酸リチウム1mol/dm3溶解した。これに、ホウ素エトキシド(B(OC253)を各々0.2重量%(電池A),1重量%(電池B)、および4重量%(電池C)を加えたものを用いた。」(段落[0071]、[0072])と記載されている。
特開2011−171113号公報 特表2013−503449号公報 特開2011−96650号公報 特開2012−94459号公報
Mn/Meが0.5を超え、Liのモル比Li/Meが1を超えるいわゆる「リチウム過剰型」活物質は、いわゆる「LiMeO型」活物質に比べて、充電上限電位をより貴な電位に設定することができるため、これに伴って高い放電容量を取り出すことができる。しかしながら、充放電サイクル性能が十分でないという課題があった。「リチウム過剰型」活物質を製造する方法としては、水酸化物前駆体を用いる方法や、炭酸塩前駆体を用いる方法が知られている。炭酸塩前駆体を用いる方法を採用することにより、大きな比表面積を有する活物質とすることができるため、活物質粒子と非水電解質の界面から粒子内部への拡散距離を短くできる。したがって、初期効率や放電容量の点で優れた非水電解質電池とすることができる。しかし、比表面積が大きい活物質は、電解質との接触面積が大きいことに伴い、副反応や遷移金属の溶出が促進される傾向があるため、充放電サイクル性能については依然として課題があった。
特許文献1には、水酸化物前駆体を用いて作成したリチウム過剰型活物質に酸化ホウ素の表面被覆を設けた活物質を用いると、初期放電容量が向上し、不可逆容量が低減することが記載されている。しかし、水酸化物前駆体由来の活物質は、通常比表面積が3m/g以下と小さいから、特許文献1の記載から、充放電サイクル時の上記の課題を窺うことはできない。
特許文献2には、リチウム過剰型活物質に酸化アルミニウム等の金属/半金属酸化物のコーティングを施すことにより、これを用いた電池の充放電サイクル性能やレート特性を向上することが記載されている。しかし、正極活物質に酸化ホウ素をコーティングする具体例は記載されていない。
特許文献3には、遷移金属炭酸塩前駆体と、リチウム化合物と、ホウ酸とを混合、焼成して製造したリチウム過剰型活物質を用いた非水電解質二次電池は、高容量でサイクル特性が向上することが記載されている。そして、Bを0.050wt%以上含み、空気中800〜950℃で焼成する実施例1、2、8〜13に係る活物質のBET比表面積は、3.5m/g以下と小さい。これは、ホウ酸が空気中の焼成で焼結を促進する焼結助剤として作用するためと考えられる。また、特許文献3の実施例に記載の製造方法では、ホウ素が活物質粒子表面を被覆するのではなく、粒子の中に取り込まれている。
特許文献4には、正極合剤の表面にホウ素を含む被覆層を有する正極を備えた非水電解質二次電池であって、放電容量およびクーロン効率が高く、サイクル寿命に優れたものが記載されている。しかし、この正極に用いる活物質として具体的に示されているのはスピネル型であって、リチウム過剰型活物質は示されていない。
本発明は、高い放電容量及び高い充放電サイクル性能を兼ね備えた非水電解質二次電池用正極活物質、前記正極活物質の製造方法、前記正極活物質を含有する非水電解質二次電池用正極、及び前記正極を備えた非水電解質二次電池を提供することを課題とする。
本発明の一側面は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用正極活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO構造を有し、遷移金属(Me)がMnを含み、且つ、Co又はNiの内の少なくとも1つを含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meであり、Meに対するLiのモル比Li/Meが1<Li/Me<1.5であり、窒素ガス吸着法を用いた吸着等温線からBJH法で求めた細孔分布における微分細孔容積が極大値を示す細孔径が10〜100nmの範囲に存在し、その極大値が0.20mm/(g・nm)以上の粒子であり、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子表面にホウ素を含む被覆(但し、「Al、Y、Ga、In、La、Pr、Nd、Gd、Dy、ErおよびYbからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属酸化物と、LiとBとを含む化合物とを含有する被覆層であって、粒子の表面層5nm以内に含まれる前記Bと前記金属元素との原子比率(前記B/前記金属元素)が、0.01〜0.25であるもの」を除く。)が存在し、Meに対して前記ホウ素を0.5mol%以上5mol%以下含む、非水電解質二次電池用活物質である。
本発明の他の一側面は、前記非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、Mnと、Co又はNiの内の少なくとも1つを含み、遷移金属(M)に対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meである遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、前記遷移金属炭酸塩前駆体とリチウム化合物を混合し焼成して、Meに対するLiモル比Li/Meが1<Li/Me<1.5であるリチウム遷移金属複合酸化物の粒子を作製し、前記粒子にホウ素化合物を混合し、熱処理して、ホウ素を含む被覆を前記粒子の表面に形成することを備える非水電解質二次電池用活物質の製造方法である。
本発明のさらに他の一側面は、前記活物質を含有する非水電解質二次電池用正極、及び前記正極を備える非水電解質二次電池である。
本発明によれば、高い充放電容量及び高い充放電サイクル性能を兼ね備えた非水電解質二次電池用正極活物質、前記正極活物質の製造方法、前記正極活物質を備える非水電解質二次電池用正極、及び前記正極を有する非水電解質二次電池を提供することができる。
本発明の実施例に係る活物質粒子の電子顕微鏡写真 本発明の比較例に係る活物質粒子の電子顕微鏡写真 本発明の一側面に係る非水電解質二次電池の一実施形態を示す斜視図 本発明の一側面に係る非水電解質二次電池を複数個備えた蓄電装置を示す概略図
本発明の構成及び作用効果について、技術思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、後述の実施形態又は実施例は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
<正極活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)>
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質である。
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、高い放電容量が得られる点から、遷移金属(Me)がMnを含み、且つ、Co又はNiの内の少なくとも1つを含み、Li1+zMeO2+z(z>0)と表記することができる、いわゆる「リチウム過剰型」であり、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、その粒子表面にホウ素を含む被覆が存在する。
この正極活物質は、典型的には、組成式Li1+zMeB2+z(Me:Mn並びにNi若しくはCoを含む遷移金属)で表される。放電容量が高い非水電解質二次電池を得るために、遷移金属元素Meに対するMnのモル比Mn/Meは0.5より大きく、遷移金属元素Meに対するLiのモル比Li/Me(上記組成式における(1+z))は、1<Li/Me<1.5のリチウム過剰型活物質とする。
遷移金属元素Meに対するLiのモル比Li/Meは、1.15〜1.45が好ましく、1.2〜1.45がより好ましい。この範囲であると、放電容量が特に向上する。
遷移金属元素Meに対するMnのモル比Mn/Meは、0.60〜0.75が好ましく、0.60〜0.70がより好ましく、0.65〜0.70が特に好ましい。この範囲であると、エネルギー密度が向上する。
リチウム遷移金属複合酸化物に含有されるCoは、初期効率を向上させる効果があるが、希少資源であることからコスト高である。したがって、遷移金属元素Meに対するCoのモル比Co/Meは0.20以下とすることが好ましく、0でもよい。
遷移金属元素Meに対するNiのモル比Ni/Meは0.15〜0.35が好ましい。この範囲であると、エネルギー密度が向上する。
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO構造を有している。合成後(充放電を行う前)の上記リチウム遷移金属複合酸化物は、空間群P312あるいはR3−mに帰属される。このうち、空間群P312に帰属されるものには、CuKα管球を用いたエックス線回折図上、2θ=21°付近に超格子ピーク(Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶に見られるピーク)が確認される。ところが、一度でも充電を行い、結晶中のLiが脱離すると結晶の対称性が変化することにより、上記超格子ピークが消滅して、上記リチウム遷移金属複合酸化物は空間群R3−mに帰属されるようになる。ここで、P312は、R3−mにおける3a、3b、6cサイトの原子位置を細分化した結晶構造モデルであり、R3−mにおける原子配置に秩序性が認められるときに該P312モデルが採用される。なお、「R3−m」は本来「R3m」の「3」の上にバー「−」を施して表記する。
なお、本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲で、Na,K等のアルカリ金属、Mg,Ca等のアルカリ土類金属、Fe,Zn等の3d遷移金属に代表される遷移金属など少量の他の金属を含有することを排除するものではない。
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物において、その粒子表面にホウ素を含む被覆を存在させることにより、充放電サイクル性能に優れた正極活物質を得ることができる。その理由は明らかではないが、正極活物質粒子表面にホウ素を含む被覆が存在することで、非水電解質との接触面積を小さくすることができ、遷移金属の溶出に伴う副反応が抑えられたためと推測される。また、ホウ素を含む被覆はLiイオンの輸送が容易であるため、放電容量を維持しつつ、充放電サイクル性能を向上させることができる。
ホウ素が、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子の中心から表面にかけて均一に存在していると、高い放電容量を備えた正極活物質とすることができない。リチウム遷移金属複合酸化物の粒子表面にホウ素を含む被覆が存在することは、EPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いて、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子の断面について、ホウ素の分布を観察することで確認できる。本発明に係る正極活物質は、ホウ素の存在比率が、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子の中心よりも表面の方が高いことが必要であり、前記粒子の中心から表面にかけて濃度傾斜を伴って存在していることが好ましく、前記粒子の表面付近に局在していることがより好ましく、前記粒子の表面のみに存在していることが最も好ましい。なお、二次粒子が複数個会合している場合、前記粒子とは、個々の二次粒子を指すものとする。
前記ホウ素の被覆量は、遷移金属元素(Me)に対するBのモル比B/Me(上記組成式におけるy)が0.005≦B/Me≦0.05、すなわち、Meに対してBが0.5〜5mol%であることが好ましい。
Li/Me、Mn/Meが上記の組成範囲を満たすリチウム遷移金属複合酸化物であれば、上記のモル比B/Meは、概ね正極活物質中のホウ素含有量0.05〜0.48質量%に換算することができる。
Meに対してホウ素を0.5mol%以上含むことによって、充放電サイクル性能を向上させることができ、5mol%以下とすることによって、高い放電容量を維持することができる。
本実施形態により得られる正極活物質粒子は、BET比表面積が4.0m/g以上であることが好ましく、5.0m/g以上であることがより好ましく、5.3m/g以上であることがさらに好ましい。また、BET比表面積が7.0m/g以下であることが好ましく、6.8m/g以下であることがより好ましい。
本願明細書において、正極活物質の比表面積の測定は、次の条件で行うものとする。正極活物質粒子を測定試料とし、ユアサアイオニクス社製比表面積測定装置(商品名:MONOSORB)を用いて、一点法により、測定試料に対する窒素吸着量[m]を求める。測定試料の投入量は、0.5g±0.01gとする。予備加熱は120℃15minとする。液体窒素を用いて冷却を行い、冷却過程の窒素ガス吸着量を測定する。測定された吸着量(m)を活物質質量(g)で除した値をBET比表面積とする。
図1は、本実施形態(後述の実施例4)に係るホウ素による被覆が存在する正極活物質粒子の電子顕微鏡写真であり、図2は、従来(後述の比較例1)のホウ素による被覆を有しない正極活物質粒子の電子顕微鏡写真である。どちらも炭酸塩前駆体由来であるため、球状の粒子である。
図2に示す比較例1のホウ素による被覆を有しない正極活物質粒子では、粒子表面に細かい凹凸を有する真球状であり、BET比表面積が大きく、7.0m/gを超える。
これに対して、図1に示すホウ素による被覆(BがMeに対して5mol%)が存在する本実施形態に係る正極活物質粒子では、二次粒子が複数個会合した粒子の生成が見られ、粒子表面の凹凸が比較例1よりも大きく、BET比表面積が小さくなり、5.0m/g程度になる。後述する比較例では、B含有量がMeに対して5mol%を超えると、BET比表面積がさらに小さくなり、5.0m/g未満となった。しかしながら、BET比表面積は他の製造条件によっても左右されるものであり、ホウ素の被覆量について、BがMeに対して5mol%以下のとき、BET比表面積が4.0m/g以上であれば、本発明の効果が奏される。
<正極活物質の製造方法>
本実施形態に係る非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、前記前駆体とリチウム化合物を混合し焼成して、リチウム過剰型のリチウム遷移金属酸化物粒子を作製し、前記粒子にホウ素化合物を混合し、熱処理して、前記粒子表面にホウ素を含む被覆を形成することを備える。
本実施形態に係る正極活物質に用いるリチウム遷移金属複合酸化物は、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Ni,Co,Mn)を目的とする活物質(酸化物)の組成どおりに含有する原料を調製し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成の複合酸化物を作製するにあたり、Li,Ni,Co,Mnのそれぞれの塩を混合し焼成するいわゆる「固相法」や、Ni、Co及びMnを含有する原料水溶液を滴下し、溶液中でNi、Co及びMnを含有する化合物を共沈させて、予めNi,Co,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合し焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはNi,Coに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難であり、「共沈法」の方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。そこで、本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法においては、遷移金属の共沈前駆体を作製する。
遷移金属の共沈前駆体としては、炭酸塩前駆体と水酸化物前駆体が知られている。炭酸塩前駆体を用いると、水酸化物前駆体を用いるよりも比表面積が大きい球状の正極活物質粒子を得ることができる。比表面積が大きい正極活物質は、活物質/電解質界面から粒子内部への拡散距離が短いから、放電容量及び初期効率が高い正極活物質が得られる。したがって、本実施形態においては、炭酸塩前駆体を用いる製造方法を選択する。
遷移金属の共沈前駆体を作製するにあたって、Ni,Co,MnのうちMnは酸化されやすく、Ni,Co,Mnが2価の状態で均一に分布した共沈前駆体を作製することが容易ではないため、Ni,Co,Mnの原子レベルでの均一な混合は不十分なものとなりやすい。したがって、共沈前駆体に分布して存在するMnの酸化を抑制するために、溶存酸素を除去することが好ましい。溶存酸素を除去する方法としては、酸素を含まないガスをバブリングする方法が挙げられる。酸素を含まないガスとしては、限定されるものではないが、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素(CO)等を用いることができる。
溶液中でNi、Co及びMnを含有する化合物を共沈させて前駆体を作製する工程におけるpHは限定されるものではないが、炭酸塩前駆体を作製する場合には、7.5〜11とすることができる。pHを9.4以下とすることにより、タップ密度を1.25g/cc以上とすることができ、高率放電性能を向上させることができる。さらに、pHを8.0以下とすることにより、粒子成長速度を促進できるので、原料水溶液滴下終了後の撹拌継続時間を短縮できる。
前記共沈前駆体の原料は、Ni化合物としては、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル等を、Co化合物としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト等を、Mn化合物としては酸化マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン等を一例として挙げることができる。
前記原料水溶液の滴下速度は、生成する共沈前駆体の1粒子内における元素分布の均一性に大きく影響を与える。好ましい滴下速度については、反応槽の大きさ、攪拌条件、pH、反応温度等にも影響されるが、30ml/min以下が好ましい。放電容量を向上させるためには、滴下速度は10ml/min以下がより好ましく、5ml/min以下が最も好ましい。
また、反応槽内にNH等の錯化剤が存在し、かつ一定の対流条件を適用した場合、前記原料水溶液の滴下終了後、さらに攪拌を続けることにより、粒子の自転および攪拌槽内における公転が促進され、この過程で、粒子同士が衝突しつつ、粒子が段階的に同心円球状に成長する。即ち、共沈前駆体は、反応槽内に原料水溶液が滴下された際の金属錯体形成反応、及び、前記金属錯体が反応槽内の滞留中に生じる沈殿形成反応という2段階での反応を経て形成される。したがって、前記原料水溶液の滴下終了後、さらに攪拌を続ける時間を適切に選択することにより、目的とする粒子径を備えた共沈前駆体を得ることができる。
原料水溶液滴下終了後の好ましい攪拌継続時間については、反応槽の大きさ、攪拌条件、pH、反応温度等にも影響されるが、粒子を均一な球状粒子として成長させるために0.5時間以上の反応時間が好ましく、1時間以上がより好ましい。また、粒子径が大きくなりすぎることで電池の低SOC領域における出力性能が充分でないものとなる虞を低減させるため、30時間以下が好ましく、25時間以下がより好ましく、20時間以下が最も好ましい。
上記のようにして得られた共沈前駆体と、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のLi化合物とを焼成することでリチウム遷移金属複合酸化物粒子を得ることができる。
焼成温度は、活物質の可逆容量に影響を与える。
焼成温度が低すぎると、結晶化が十分に進まず、電極特性が低下する傾向がある。本実施形態においては、焼成温度は800℃以上とすることが好ましい。800℃以上とすることにより、焼結度が高い正極活物質粒子を得ることができ、充放電サイクル性能を向上させることができる。
一方、焼成温度が高すぎると層状α−NaFeO構造から岩塩型立方晶構造へと構造変化がおこり、充放電反応中における正極活物質中のリチウムイオン移動に不利な状態となり、放電性能が低下する。また、焼結が進みすぎて比表面積が小さくなったり、細孔容積が減少したりするため、放電容量や初期効率が低下する。本実施形態において、焼成温度は900℃以下とすることが好ましい。900℃以下とすることにより、充放電サイクル性能を向上させることができる。
したがって、本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極活物質を作製する場合、充放電サイクル性能を向上させるために、焼成温度は800〜900℃とすることが好ましい。焼成時の雰囲気は酸化性ガス雰囲気が好ましく、より好ましくは通常の空気である。焼成時間は1〜30時間が好ましい。
炭酸塩前駆体を用いて上記の焼成を行うと、窒素ガス吸着法を用いた吸着等温線からBJH法で求めた細孔分布における微分細孔容積が極大値を示す細孔径が10〜100nmの範囲に存在し、その極大値が0.20mm/(g・nm)以上のリチウム遷移金属複合酸化物の粒子を得ることができる。
リチウム遷移金属複合酸化物の粒子の細孔容積は、次の窒素ガス吸着法を用いた測定により求める。前記測定の脱離側において得られる吸着等温線に対して、細孔が円筒形であるという仮定に基づいて、BJH法を適用して累積細孔容積カーブを求める。次に、前記累積細孔容積カーブを線形(linear)微分することにより、横軸を細孔径(nm)とし、縦軸を細孔容積(mm/(g・nm))とする微分細孔容積カーブを得る。本明細書において、「微分細孔容積が最大値を示す細孔径」とは、前記微分細孔容積カーブが最大値を示す点に対応する横軸の値をいう。また、「ピーク微分細孔容積」とは、前記微分細孔容積カーブが最大値を示す点に対応する縦軸の値をいう。
本実施形態においては、上記の焼成工程により合成されたリチウム遷移金属複合酸化物粒子にホウ素化合物を混合し、熱処理して、粒子表面にホウ素を含む被覆を形成する工程を備える。
ホウ素化合物の混合量は、リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属元素(Me)に対するモル比B/Meで0.005≦B/Me≦0.05(Meに対して0.5〜5.0mol%)とする。
前記ホウ素化合物としては、ホウ酸(HBO)又は酸化ホウ素(B)を用いることが好ましい。混合するホウ素化合物としてホウ酸を使用する場合、正極活物質に対して概ね0.29〜2.8質量%のホウ酸を混合することにより、上記のモル比B/Meが得られる。
混合後の熱処理は、空気雰囲気中、200℃〜600℃で1〜10時間行うことが好ましい。熱処理温度を600℃以下とすることにより、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子の内部へのホウ素の拡散を抑制できる。
<負極材料>
負極材料としては、限定されるものではなく、リチウムイオンを放出あるいは吸蔵することのできる形態のものであればどれを選択してもよい。例えば、Li[Li1/3Ti5/3]Oに代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム−チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)等が挙げられる。
<正極・負極>
正極活物質の粉体および負極材料の粉体は、平均粒子サイズ(D50)が100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で50μm以下であることが好ましく、充放電サイクル性能を維持するためには3μm以上であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
以上、正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極材料について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜50重量%が好ましく、特に0.5重量%〜30重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極材料)、およびその他の材料を混練し合剤とし、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
集電体としては、Al箔、Cu箔等の集電箔を用いることができる。正極の集電箔としてはAl箔が好ましく、負極の集電箔としてはCu箔が好ましい。集電箔の厚みは10〜30μmが好ましい。また、合剤層の厚みはプレス後において、40〜150μm(集電箔厚みを除く)が好ましい。
<非水電解質>
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
非水電解質に用いる電解質塩としては、例えば、LiClO4,LiBF4,LiAsF6,LiPF6,LiSCN,LiBr,LiI,Li2SO4,Li210Cl10,NaClO4,NaI,NaSCN,NaBr,KClO4,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF3SO3,LiN(CF3SO22,LiN(C25SO22,LiN(CF3SO2)(C49SO2),LiC(CF3SO23,LiC(C25SO23,(CH34NBF4,(CH34NBr,(C254NClO4,(C254NI,(C374NBr,(n−C494NClO4,(n−C494NI,(C254N−maleate,(C254N−benzoate,(C254N−phthalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
さらに、LiPF6又はLiBF4と、LiN(C25SO22のようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができ、より望ましい。
また、非水電解質として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
非水電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する非水電解質電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5mol/lが好ましく、さらに好ましくは、0.5mol/l〜2.5mol/lである。
<セパレータ>
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いるセパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
また、セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。非水電解質を上記のようにゲル状態で用いると、漏液を防止する効果がある点で好ましい。
さらに、セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解質の保液性が向上するため望ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、前記フィルムの微孔内に電解質を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
前記親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアナート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。該モノマーは、ラジカル開始剤を併用して加熱や紫外線(UV)を用いたり、電子線(EB)等の活性光線等を用いて架橋反応を行わせることが可能である。
その他の電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
<非水電解質二次電池>
本発明の一側面に係る非水電解質二次電池の実施形態であるリチウム二次電池を図5に示す。図5は、矩形状のリチウム二次電池の容器内部を透視した斜視図である。電極群2が収納された電池容器3内に非水電解質(電解液)を注入することによりリチウム二次電池1が組み立てられる。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本実施形態に係るリチウム二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
本発明は、他の一側面として上記のリチウム二次電池を複数個集合した蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一例を図6に示す。図6において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数のリチウム二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
(実施例1)
<前駆体作製工程>
硫酸コバルト7水和物13.8g、硫酸ニッケル6水和物19.9g及び硫酸マンガン5水和物66.3gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、Co:Ni:Mnのモル比が12.3:18.9:68.7となる2.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2Lの反応槽に750mlのイオン交換水を注ぎ、COガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCOを溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたディスクタービン翼を用いて、邪魔板付きの反応槽内を1000rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3ml/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、1.0Mの炭酸ナトリウム及びアンモニアを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に8.0(±0.05)、アンモニア濃度が0.5g/Lを保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3時間継続した。攪拌の停止後、12時間以上静置した。
次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した共沈炭酸塩の粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、80℃にて乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体を作製した。
<焼成工程>
前記共沈炭酸塩前駆体3.00gに、炭酸リチウム1.40gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いて十分混合し、Li:(Co,Ni,Mn)のモル比が1.42:1である混合粉体を調製した。前記混合粉体をアルミナ製るつぼに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から870℃まで10時間かけて昇温し、870℃で4時間焼成した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製るつぼを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、炉の温度は5時間後には約200℃程度にまで低下するが、その後の降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、比較例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.42Ni0.189o0.123Mn0.6872+zを合成した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.42であるが、α−NaFeO型結晶構造を有している限りzの値は必ずしも化学量論比通りでなくてよい。以下の実施例および比較例においても同様である。
<表面処理工程>
合成したリチウム遷移金属複合酸化物3.0gに、ホウ酸0.0087gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いて十分混合し、Li:(Co,Ni,Mn):Bのモル比が1.42:1:0.005である混合粉体を調製した。前記混合粉体をアルミナ製るつぼに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から400℃まで1.5℃/minの昇温速度で昇温し、400℃で5時間熱処理した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。熱処理後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製るつぼを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、実施例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6870.0052+zを作製した。ここで、前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.42であるが、α−NaFeO型結晶構造を有している限りzの値は必ずしも化学量論比通りでなくてよい。
(比較例1)
実施例1において合成したLi1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6872+zに表面処理工程を行わないリチウム遷移金属複合酸化物を比較例1とした(図2参照)。
(実施例2〜4)
実施例1において合成したLi1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6872+zに対して、遷移金属元素に対するホウ素のモル比がそれぞれ2mol%、3mol%、及び5mol%となるようにホウ酸を加えて、表面処理工程を行った以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6870.022+z、Li1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6870.032+z、及びLi1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6870.052+zを作製した(実施例4については、図1参照。)。
(比較例2,3)
実施例1において合成したLi1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6872+zに対して、遷移金属元素に対するホウ素のモル比がそれぞれ7mol%、及び10mol%となるようにホウ酸を加えて表面処理工程を行った以外は実施例1と同様にして、比較例2,3に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6870.072+z、及びLi1.42Ni0.189Co0.123Mn0.6870.102+zを作製した。
(比較例4)
硫酸コバルト7水和物、硫酸ニッケル6水和物及び硫酸マンガン5水和物をCo:Ni:Mnのモル比が1:1:1となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして共沈炭酸塩前駆体を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体に、炭酸リチウムをLi:(Co,Ni,Mn)のモル比が1.13:1になるように加えた以外は、実施例1と同様の混合工程、焼成工程を行い、表処理工程を行わずに、比較例4に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.13Ni0.33Co0.33Mn0.332+zを合成した。前記組成式から化学量論的に計算されるzの値は0.13であるが、α−NaFeO型結晶構造を有している限りzの値は必ずしも化学量論比通りでなくてよい。
(比較例5〜8)
比較例4で合成したリチウム遷移金属複合酸化物Li1.13Ni0.33Co0.33Mn0.332+zに対して、遷移金属元素に対するホウ素のモル比がそれぞれ0.5,2,3及び5mol%となるようにホウ酸を加えて表面処理工程を行った以外は比較例4と同様にして、比較例5〜8に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.13Ni0.33Co0.33Mn0.330.0052+z、Li1.13Ni0.33Co0.33Mn0.330.022+z、Li1.13Ni0.33Co0.33Mn0.330.032+z、およびLi1.13Ni0.33Co0.33Mn0.330.052+zを作製した。
[結晶構造の確認]
実施例1〜4及び比較例1〜8に係るリチウム遷移金属複合酸化物をエックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を用いて粉末エックス線回折測定を行った。
その結果、全ての実施例及び比較例において作成したリチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO構造を有することを確認した。
[比表面積の測定]
上記した測定条件を採用して、実施例1〜4及び比較例1〜3に係るリチウム遷移金属複合酸化物について、BET比表面積を測定した。測定に当たって、液体窒素を用いた冷却によるガス吸着を行った。また、冷却前に120℃15minの予備加熱を行った。また、測定試料の投入量は、0.5g±0.01gとした。
<非水電解質二次電池用正極の作製>
実施例1〜4及び比較例1〜8に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれ非水電解質二次電池用正極活物質として用いて、以下の手順で、非水電解質二次電池用正極を作製した。N−メチルピロリドンを分散媒とし、正極活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比90:5:5の割合で混練分散されている塗布用ペーストを作製した。該塗布ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の片方の面に塗布し、正極板を作製した。なお、全ての実施例及び比較例に係る非水電解質二次電池同士で試験条件が同一になるように、一定面積当たりに塗布されている活物質の質量及び塗布厚みを統一した。
<非水電解質二次電池の作製>
非水電解質二次電池の負極には、正極の理論容量に対して十分に大きい容量を備える金属リチウムをニッケル集電体に貼り付けた金属リチウム電極を用いた。
実施例1〜4及び比較例1〜に係るリチウム遷移金属複合酸化物を用いたそれぞれのリチウム二次電池用正極を用い、上記の負極を用いた非水電解質二次電池を作製した(以下、それぞれ実施例電池1〜4、比較例電池1〜という。)。


非水電解質として、エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)が体積比6:7:7である混合溶媒に濃度が1mol/lとなるようにLiPFを溶解させた溶液を用いた。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用い、正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように電極を収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記非水電解質を注液後、注液孔を封止した。
[初期充放電工程]
実施例1〜4及び比較例1〜3の電池について、25℃にて、2サイクルの初期充放電を行った。これらの電池の充電は、電流0.1CmA、電圧4.7Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設け、初期放電容量を確認した。
比較例4〜8の電池について、充電終止電圧を4.45Vとし、放電終止電圧を2.75Vとした以外は実施例1〜4及び比較例1〜3の電池と同様の条件で初期充放電を行い、初期放電容量を確認した。
[充放電サイクル試験]
初期放電容量を確認後、25サイクルの充放電サイクル試験を行った。実施例1〜4及び比較例1〜3の電池について、充電は、電流1CmA、電圧4.7Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。比較例4〜8の電池について、充電終止電圧を4.45Vとし、放電終止電圧を2.75Vとした以外は実施例1〜4及び比較例1〜3の電池と同様の条件で充放電した。
上記充放電サイクル試験における1サイクル目の放電容量に対する25サイクル目の放電容量の百分率を算出し、「容量維持率(%)」とした。
以上の結果を表1に示す。
Figure 0006848333
表1の実施例1〜4及び比較例1〜3の結果から、遷移金属(Me)中のMnのモル比Mn/Meが0.5を超え、遷移金属(Me)に対するリチウムのモル比Li/Meが1を超えるリチウム過剰型活物質において、Meに対してホウ素を0.5mol%以上添加し、活物質表面にホウ素を含む被覆を形成すると、容量維持率が向上していることがわかる。但し、ホウ素の前記添加量が5mol%を超える比較例2,3では、初期放電容量が比較例1(ホウ素非添加品)から5%以上低下し、25サイクルの充放電後の放電容量も比較例1を下回っている。また、ホウ素添加量が増加すると、BET比表面積の減少が見られる。
したがって、高い放電容量と充放電サイクル後の容量維持率の向上を兼ね備えたホウ素を含む被覆を形成するためのホウ素添加量は、0.5〜5mol%であることが好ましい。
比較例4〜8は、遷移金属中のMnのモル比Mn/Meが0.5以下であり、Ni:Co:Mnの比率が1:1:1のLiMeO型活物質を用い、ホウ素添加によるホウ素を含む被覆の影響を調べた例である。
ホウ素を添加しない比較例1と比較例4とを対比すると、LiMeO型活物質は、容量維持率が高く、充放電サイクル性能に優れているが、初期放電容量がリチウム過剰型活物質より格段に小さいことがわかる。そして、LiMeO型活物質にホウ素を添加すると、少ない添加量では容量維持率の向上に効果が無く(比較例5,6)、添加量の増大とともに放電容量が低下する結果となる(比較例7,8)。
したがって、活物質粒子の表面にホウ素を含む被覆を形成することにより、高い放電容量と充放電サイクル後の高い容量維持率とを両立する効果は、リチウム過剰型活物質に特有のものであることがわかる。
本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極活物質を用いることにより、高い放電容量と高い充放電サイクル性能を兼ね備えた非水電解質二次電池を提供することができるので、この非水電解質二次電池は、ハイブリッド自動車用、電気自動車用の非水電解質二次電池として有用である。
1 非水電解質二次電池(リチウム二次電池)
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (5)

  1. リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用正極活物質であって、
    前記リチウム遷移金属複合酸化物は、
    α−NaFeO構造を有し、
    遷移金属元素(Me)がMnを含み、且つ、Co又はNiの内の少なくとも1つを含み、
    Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meであり、
    Meに対するLiのモル比Li/Meが1<Li/Me<1.5であり、
    窒素ガス吸着法を用いた吸着等温線からBJH法で求めた細孔分布における微分細孔容積が極大値を示す細孔径が10〜100nmの範囲に存在し、その極大値が0.20mm/(g・nm)以上の粒子であり、
    前記リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子表面にホウ素を含む被覆(但し、「Al、Y、Ga、In、La、Pr、Nd、Gd、Dy、ErおよびYbからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属酸化物と、LiとBとを含む化合物とを含有する被覆層であって、粒子の表面層5nm以内に含まれる前記Bと前記金属元素との原子比率(前記B/前記金属元素)が、0.01〜0.25であるもの」を除く。)が存在し、
    Meに対して前記ホウ素を0.5mol%以上5mol%以下含む、
    非水電解質二次電池用正極活物質。
  2. 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、BET比表面積が4.0m/g以上7.0m/g以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  3. 請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    Mnと、Co又はNiの内の少なくとも1つを含み、遷移金属元素(Me)に対するM
    nのモル比Mn/Meが0.5<Mn/Meである遷移金属炭酸塩前駆体を作製し、
    前記遷移金属炭酸塩前駆体とリチウム化合物を混合し焼成して、Meに対するLiモル
    比Li/Meが1<Li/Me<1.5であるリチウム遷移金属複合酸化物の粒子を作製し、
    前記粒子にホウ素化合物を混合し、熱処理して、ホウ素を含む被覆を前記粒子の表面に形成することを備える非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の正極活物質を含有する非水電解質二次電池用正極。
  5. 請求項4に記載の正極、負極及び非水電解質を備える非水電解質二次電池。
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