JP6583662B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
そこで、近年、上記のような「LiMeO2型」活物質に対し、遷移金属(Me)に対するリチウムのモル比Li/Meが1を超え、マンガン(Mn)のモル比Mn/Meが0.5を超え、充電をしてもα−NaFeO2構造を維持できるいわゆる「リチウム過剰型」の活物質が提案された。
Coのモル比Co/Meについては、(0014)に「放電容量を大きくすると共に、高率放電性能をより向上させるためには、モル比Co/Meを0.24〜0.30とすることが好ましい。」と記載されている。また、(0068)、(0096)、(表1)には、この正極活物質の実施例として、共沈炭酸塩前駆体を用いて作製されたLi/Me=1.3、焼成温度850℃、Co/Me=0.26、Ni/Me=0.20、Mn/Me=0.54のリチウム遷移金属複合酸化物であって、BET比表面積が3.0m2/g、(003)面に帰属される半値幅が0.213°、放電容量(0.1C)が217mAh/g、高率放電性能(1C/0.1C)が90%の実施例2、及び、Ni/Me=0.25、Mn/Me=0.49である以外は実施例2と同様のリチウム遷移金属複合酸化物であって、(003)面に帰属される半値幅が0.204°、放電容量(0.1C)が210mAh/g、高率放電性能(1C/0.1C)が90%の実施例8が記載されている。
また、(0074)〜(0078)、(0102)、(表1)には、実施例1〜31として、遷移金属の共沈水酸化物前駆体と、水酸化リチウム1水和物と、炭酸ナトリウムを種々の組成となるように混合し、1000℃で焼成したリチウム遷移金属複合酸化物について、(003)面の回折ピークの半値幅が0.19〜0.21°、BET比表面積が2.3〜2.7m2/gに収束したことが示されている。
また、(0065)、(0071)、(0086)、(0126)(表2)には、実施例20、27として、共沈炭酸塩前駆体から作成され、18.6°±1°の回折ピークの半値幅が0.210°のリチウム遷移金属複合酸化物が記載されており、(0128)には、「エックス線回折図上2θ=18.6°±1°の回折ピークの半値幅が0.208°〜0.247°又は/及び、2θ=44.1°±1°の回折ピークの半値幅が0.266°〜0.335°の範囲にある実施例3〜5、8〜33に係るリチウム遷移金属複合酸化物を用いることにより、低温における放電容量を優れたものとすることができることがわかった。」([0128])と記載されている。
また、実施例には、BET比表面積が1.2〜2.0m2/gの正極活物質が記載され、初期充放電効率と高率放電容量が向上していることが記載されている。
「リチウム過剰型」活物質の自動車分野への適用に当たっては、初期効率や、放電容量、高率放電性能、低温特性、充放電サイクル性能等の向上が課題である。したがって、活物質の組成や、結晶構造、比表面積等の物理的性状が、それぞれの性能に与える影響について、種々の検討が行われていることは、先行技術文献に示されるとおりである。
本発明は、充放電サイクル時の容量維持率が優れた「リチウム過剰型」正極活物質を提供することを目的とする。
(1)α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質電池用正極活物質であって、
α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質電池用正極活物質であって、
前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成するLiと遷移金属(Me)のモル比Li/Meが1.2より大きく1.5未満であり、
前記遷移金属(Me)がMn、Ni及びNbを含み、
前記リチウム遷移金属複合酸化物が、空間群P3112又はR3−mに帰属可能なX線回折パターンを有し、CuKα線を用いたX線回折測定によるミラー指数hklにおける(003)面の回折ピークの半値幅が0.180〜0.210°であり、
さらに、前記リチウム遷移金属複合酸化物のBET比表面積が2.0以上3.8m2/g以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
(2)前記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたX線回折測定によるミラー指数hklにおける(003)面の回折ピークの半値幅が0.190〜0.210°である前記(1)の非水電解質二次電池用正極活物質。
(3)前記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたX線回折測定によるミラー指数hklにおける(114)面又は(104)面の回折ピークの半値幅に対する(003)面の回折ピークの半値幅の比が、0.731以上である前記(1)又は(2)のいずれかの非水電解質二次電池用活物質。
(4)前記リチウム遷移金属複合酸化物は、二次粒子が、平板状の一次粒子からなり、前記一次粒子は、平板方向の長さが250〜900nmである前記(1)〜(3)のいずれかの非水電解質二次電池用正極活物質。
(5)前記遷移金属(Me)がCoを含まないか、又は、前記遷移金属(Me)がCoを含み、前記Coと前記遷移金属のモル比Co/Meが0.15以下であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかの非水電解質二次電池用活物質。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかの非水電解質二次電池用活物質を製造する方法であって、前記遷移金属の炭酸塩前駆体を作製する工程と、前記炭酸塩前駆体と、リチウム化合物と、ニオブ化合物とを混合する工程と、前記混合した混合物を800〜900℃で焼成する工程とを含む非水電解質二次電池用活物質の製造方法。
(7)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の正極活物質を有することを特徴とする非水電解質二次電池用電極。
(8)前記(7)の正極と、負極と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池。
そこで、本発明者は、「リチウム過剰型」正極活物質の結晶性に着目した。
結晶子が発達して大きくなりすぎると、すなわち、FWHM(003)、FWHM(114)が小さすぎると、結晶子内にLiイオンが充分に拡散することができず、Liイオンの挿入・離脱反応の効率が悪くなるから、初期効率や充放電容量が低下する。
また、α−NaFeO2型結晶構造では、Liイオンは、ab面に沿って挿入・離脱されるから、ab面の結晶性の指標であるFWHM(003)が大きくなりすぎても、Liイオンの挿入・離脱に支障をきたすと考えられる。
したがって、BET比表面積がある程度小さくても、FWHM(003)を適度な範囲とすることができれば、初期効率や充放電容量を維持することができる。
したがって、FWHM(003)が適度な範囲であり、FWHM(003)/FWHM(114)が小さすぎないと、BET比表面積が比較的小さくても、初期効率や充放電容量性能に優れるといえる。
以下に、本発明に係る正極活物質について、詳述する。
本発明の「リチウム過剰型」正極活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物は、一般式Li1+αMe1−αO2(Meは本質的にNi、Mnよりなる遷移金属元素、α>0)で表される。高放電容量であり、高率放電性能が優れた非水電解質二次電池を得るために、Li元素と前記遷移金属元素Meの比Li/Meは、1.2より大きく1.5未満である。Li/Meが1.2以下であると、放電容量を高める効果が減衰し、また、Li/Meが1.5以上であると、充放電サイクルに伴い、α−NaFeO2型結晶構造の安定性が低下する虞がある。
本発明のα−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、放電容量を大きくし、充放電サイクル性能を向上させるために、FWHM(003)が0.180°以上0.210°以下であることが必要である。高い初期放電容量を得るためには、FWHM(003)が0.190°以上であることがより好ましい。
また、Liイオンの挿入・離脱反応が効率的に行われ、高率放電性能を向上させるためには、FWHM(003)/FWHM(114)の値は、0.730以上であることが好ましい。
本発明に係る正極活物質のBET比表面積は、初期効率、充放電性能が優れ、かつ充放電サイクル時の容量低下を抑制するために、2.0以上3.8m2/g以下であることが必要である。また、タップ密度は、高率放電性能が優れた非水電解質二次電池を得るために、1.25g/cc以上が好ましく、1.7g/cc以上がより好ましい。
本発明の非水電解質二次電池用活物質は、基本的に、活物質を構成する金属元素を、目的とする活物質(酸化物)の組成通りに含有する原料を調整し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成の酸化物を作製するにあたり、Liと、遷移金属(Ni,Mn,任意成分としてCo)のそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめ遷移金属Co,Ni,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはCo,Niに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。これまで文献などにおいては固相法によってNiやCoの一部にMnを固溶(LiNi1−xMnxO2など)しようという試みが多数なされているが、「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。そこで、後述する実施例においては、「共沈法」を採用した。
また、錯化剤を用いた晶析反応等を用いることによって、より嵩密度の大きな前駆体を作製することもできる。その際、Li源と混合・焼成することでより高密度の活物質を得ることができるので電極面積あたりのエネルギー密度を向上させることができる。
100℃乾燥品の色相は、標準色F05−20Bと比べて、赤色方向に標準色F05−40Dに至る範囲内にあり、また、標準色FN−10と比べて、白色方向に標準色FN−25に至る範囲内にあることがわかった。中でも、標準色F05−20Bが呈する色相との色差が最も小さいものと認められた。
一方、80℃乾燥品の色相は、標準色F19−50Fと比べて、白色方向に標準色F19−70Fに至る範囲内にあり、また、標準色F09−80Dと比べて、黒色方向に標準色F09−60Hに至る範囲内にあることがわかった。中でも、標準色F19−50Fが呈する色相との色差が最も小さいものと認められた。
以上の知見から、炭酸塩前駆体の色相は、標準色F05−20Bに比べて、dL,da及びdbの全てにおいて+方向であるものが好ましく、dLが+5以上、daが+2以上、dbが+5以上であることがより好ましいといえる。
Li化合物としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等を用いることで好適に製造することができる。但し、Li化合物の量については、焼成中にLi化合物の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
Nb化合物としては、酸化ニオブを用いることができる。
焼成温度が高すぎると、得られた活物質が酸素放出反応を伴って崩壊すると共に、主相の六方晶に加えて単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]O2型に規定される相が、固溶相としてではなく、分相して観察される傾向がある。このような分相が多く含まれすぎると、活物質の可逆容量の減少を導き、充放電サイクル時の容量低下を起こすので好ましくない。このような材料では、X線回折図上35°付近及び45°付近に不純物ピークが観察される。従って、焼成温度は、活物質の酸素放出反応の影響する温度未満とすることが好ましい。活物質の酸素放出温度は、本発明に係る組成範囲においては、概ね1000℃以上であるが、活物質の組成によって酸素放出温度に若干の差があるので、あらかじめ活物質の酸素放出温度を確認しておくことが好ましい。特に試料に含まれるCo量が多いと前駆体の酸素放出温度は低温側にシフトすることが確認されているのでCo量は少ない方が好ましい。活物質の酸素放出温度を確認する方法としては、焼成反応過程をシミュレートするために、共沈前駆体とリチウム化合物を混合したものを熱重量分析(DTA−TG測定)に供してもよいが、この方法では測定機器の試料室に用いている白金が揮発したLi成分により腐食されて機器を痛めるおそれがあるので、あらかじめ500℃程度の焼成温度を採用してある程度結晶化を進行させた組成物を熱重量分析に供するのが良い。
また、発明者らは、本発明活物質の回折ピークの半値幅を詳細に解析することで750℃までの温度で合成した試料においては格子内にひずみが残存しており、それ以上の温度で合成することでほとんどひずみを除去することができることを確認した。また、結晶子のサイズは合成温度が上昇するに比例して大きくなるものであった。よって、本発明活物質の組成においても、系内に格子のひずみがほとんどなく、かつ結晶子サイズが適度に成長した粒子とすることで良好な放電容量及び充放電サイクル性能を得られるものであった。具体的には、格子定数に及ぼすひずみ量が2%以下、かつab面方向の一次粒子の大きさが250〜900nmに成長しているような合成温度(焼成温度)及びLi/Me比組成を採用することが好ましいことがわかった。
したがって、初期効率、充放電容量性能を維持し、充放電サイクル時の容量維持率を向上させるために、1.2<Li/Me<1.5のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする場合、焼成温度は800〜900℃とすることが好ましい。
負極活物質としては、限定されるものではなく、リチウムイオンを放出あるいは吸蔵することのできる形態のものであればどれを選択してもよい。例えば、Li[Li1/3Ti5/3]O4に代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料リチウム金属、リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム−チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)等が挙げられる。
正極活物質の粉体および負極活物質の粉体は、平均粒子サイズ100μm以下であることが好ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で15μm以下であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
本発明に係る非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、非水電解質として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
その他の電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
図1に、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態である矩形状のリチウム二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解質二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本発明に係る非水電解質二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
本発明は、上記の非水電解質二次電池を複数個集合した蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
<実施例1>
硫酸コバルト7水和物6.74g、硫酸ニッケル6水和物10.5g及び硫酸マンガン5水和物32.7gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、Co:Ni:Mnのモル比が12:20:68となる1.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2Lの反応槽に750mlのイオン交換水を注ぎ、CO2ガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCO2を溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたディスクタービン翼を用いて、邪魔板付きの反応槽内を1000rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3ml/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、1.0Mの炭酸ナトリウム及びアンモニアを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に8.0(±0.05)、アンモニア濃度が0.5g/Lを保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3h継続した。攪拌の停止後、12h以上静置した。
実施例1と同じ前駆体を用い、Li:(Co,Ni,Mn):Nbのモル比が1.4:0.990:0.010である混合粉体を調製した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2に係るリチウム遷移金属酸化物Li1.4Ni0.198Co0.119Mn0.673Nb0.010O2+zを作製した。
実施例1と同じ前駆体を用い、Li:(Co,Ni,Mn):Nbのモル比が1.4:0.985:0.015である混合粉体を調製した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3に係るリチウム遷移金属酸化物Li1.4Ni0.197Co0.118Mn0.670Nb0.015O2+zを作製した。
実施例1と同じ前駆体を用い、Li:(Co,Ni,Mn):Nbのモル比が1.4:0.980:0.020である混合粉体を調製した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4に係るリチウム遷移金属酸化物Li1.4Ni0.196Co0.118Mn0.667Nb0.020O2+zを作製した。
実施例1と同じ前駆体を用い、Li:(Co,Ni,Mn)のモル比が1.4:1.0である混合粉体を調製した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1に係るリチウム遷移金属酸化物Li1.4Ni0.200Co0.120Mn0.680O2+zを作製した。
実施例1と同じ前駆体を用い、Li:(Co,Ni,Mn):Siのモル比が1.4:0.990:0.010である混合粉体を調製した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2に係るリチウム遷移金属酸化物Li1.4Ni0.198Co0.119Mn0.673Si0.010O2+zを作製した。
実施例1と同じ前駆体を用い、Li:(Co,Ni,Mn):Zrのモル比が1.4:0.995:0.005である混合粉体を調製した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2に係るリチウム遷移金属酸化物Li1.4Ni0.199Co0.119Mn0.677Zr0.005O2+zを作製した。
焼成温度を920℃とした以外は比較例1と同様の方法で、比較例4に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.4Ni0.200Co0.120Mn0.680O2+zを作製した。
前記実施例及び比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物について、ユアサアイオニクス社製比表面積測定装置(商品名:MONOSORB)を用いて、一点法により、活物質に対する窒素吸着量(m2)を求めた。得られた吸着量(m2)を活物質質量(g)で除した値をBET比表面積とした。測定に当たって、液体窒素を用いた冷却によるガス吸着を行った。また、冷却前に120℃、15分の予備加熱を行った。また、測定試料の投入量は、0.5g±0.01gとした。
前記実施例及び比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、次の条件及び手順に沿って半値幅の測定を行った。なお、本願明細書において、半値幅の測定は、次の条件及び手順に沿って行うものとする。
X線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を用いて粉末X線回折測定を行った。線源はCuKα、加速電圧及び電流はそれぞれ30kV及び15mAとした。サンプリング幅は0.01deg、スキャンスピードは5.0deg/分、発散スリット幅は0.625deg、受光スリット幅は開放、散乱スリットは8.0mmとした。得られたX線回折データについて、Kα2に由来するピークを除去せず、前記X線回折装置の付属ソフトである「PDXL」を用いて、X線回折図上2θ=18.6°±1°に存在する(003)面の回折ピーク及び2θ=44.1°±1°に存在する(114)面の回折ピークについて半値幅を決定し、FWHM(003)と、FWHM(003)/FWHM(114)の値を記録した。
前記実施例、及び比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、次の条件および手順に沿って走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。なお、本願明細書において、SEM観察は、次の条件及び手順に沿って行うものとする。
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型名:JSM−T200)を用いて、SEM観察を行った。前記実施例、及び比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物の一部をカーボンテープに付着させ、SEM観察に供するため、Ptスパッタリング処理を行った。SEM観察時の加速電圧は15kVとした。SEM観察は、任意に粒子(二次粒子)を選択し、20,000倍にてその二次粒子表面の任意の箇所を撮影した。この作業を二次粒子30個に対して行い、一次粒子の観察を行った。
二次粒子を十分拡大させた状態で行ったSEM観察の結果、実施例1〜4における二次粒子を構成する一次粒子は平面的な形状を有することを特徴とする平板状であった。表示スケールを用いて一次粒子の平面的に発達した面の長軸方向の長さを測定した。各実施例1〜4の一次粒子の長軸方向の長さは、250〜900nmであった。これに対して、比較例1〜4における一次粒子は、粒径50〜200nmの平面的な形状を有しない塊状であった。
前記実施例及び比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれリチウム二次電池用正極活物質として用いて、以下の手順で非水電解質二次電池を作製した。
以上の手順にて作成された非水電解質二次電池は、25℃の下、初回充放電工程に供した。充電は、電流0.1CmA、電圧4.6Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/50に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。この充放電を1サイクル行った。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。このときの放電電気量を「初期放電容量(mAh/g)」として記録し、このサイクルにおける充電電気量に対する放電電気量の百分率を「初期効率(%)」として記録した。
25℃環境下において10サイクルの充放電サイクル試験を行った。充電は、電流0.1CmAの定電流充電とし、充電終止電圧は4.45Vとした。放電は、電流0.1CmAの定電流放電とし、放電終止電圧は2.0Vとした。ここで充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止期間を設けた。この充放電サイクル試験の1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の割合を算出し、「容量維持率(%)」として記録した。
その原因は、詳細は不明であるが、FWHM(003)が0.200以上であるため、結晶子内にLiイオンが十分に拡散することができ、挿入・離脱反応の効率が高いためであると推察される。
図9から、実施例では、FWHM(003)が比較例と同程度に維持されながらも、BET比表面積を小さくすることに成功していることがわかる。したがって、本発明の活物質では、BET比表面積が小さい割には、FWHM(003)が大きく、適度な結晶子の大きさと、ab面の結晶度を保っており、Liイオンの挿入・離脱が起こり易いと推察される。
また、表1から、実施例では、BET比表面積が小さい割には、FWHM(003)/FWHM(114)の値が0.731以上と小さすぎないこともわかるから、本発明の活物質は、全方向に比べてab面が比較的発達しているといえる。このことは、実施例に係る活物質の二次粒子を構成している一次粒子が、平板状の大きな結晶子であることを示すSEM観察の結果と一致する。ab面は、Liイオンが挿入・離脱する面であるから、本発明の活物質は、Liイオンが出入りする面積比率が大きく、BET比表面積が比較的小さくても、放電容量を維持できると推察される。
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (8)
- α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質電池用正極活物質であって、
前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成するLiと遷移金属(Me)のモル比Li/Meが1.2より大きく1.5未満であり、
前記遷移金属(Me)がMn、Ni及びNbを含み、
前記リチウム遷移金属複合酸化物が、空間群P3112又はR3−mに帰属可能なX線回折パターンを有し、CuKα線を用いたX線回折測定によるミラー指数hklにおける(003)面の回折ピークの半値幅が0.180〜0.210°であり、
さらに、前記リチウム遷移金属複合酸化物のBET比表面積が2.0以上3.8m2/g以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。 - 前記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたX線回折測定によるミラー指数hklにおける(003)面の回折ピークの半値幅が0.190〜0.210°であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたX線回折測定によるミラー指数hklにおける(114)面又は(104)面の回折ピークの半値幅に対する(003)面の回折ピークの半値幅の比が、0.731以上である請求項1又は請求項2のいずれかに記載の非水電解質二次電池用活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、二次粒子が、平板状の一次粒子からなり、前記一次粒子は、平板方向の長さが250〜900nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 前記遷移金属(Me)がCoを含まないか、又は、
前記遷移金属(Me)がCoを含み、
前記Coと前記遷移金属のモル比Co/Meが0.15以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池用活物質。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池用活物質を製造する方法であって、
前記遷移金属の炭酸塩前駆体を作製する工程と、
前記炭酸塩前駆体と、リチウム化合物と、ニオブ化合物とを混合する工程と、
前記混合した混合物を800〜900℃で焼成する工程と
を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用活物質の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の正極活物質を有することを特徴とする非水電解質二次電池用電極。
- 請求項7に記載の正極と、負極と、非水電解質とを備えたことを特徴とする非水電解質二次電池。
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