以下、本発明の各実施形態に係る電流センサについて図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る電流センサの外観を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態1に係る電流センサが備える導体の外観を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態1に係る電流センサが備える磁気センサユニットの構成を示す分解斜視図である。図4は、本発明の実施形態1に係る電流センサが備える磁気センサユニットの筐体の外観を示す斜視図である。図5は、本発明の実施形態1に係る電流センサの断面図であり、図1のV−V線矢印方向から見た図である。図6は、本発明の実施形態1に係る電流センサの断面図であり、図1のVI−VI線矢印方向から見た図である。図7は、本発明の実施形態1に係る電流センサの断面図であり、図1のVII−VII線矢印方向から見た図である。図8は、本発明の実施形態1に係る電流センサの断面図であり、図1のVIII−VIII線矢印方向から見た図である。図9は、本発明の実施形態1に係る電流センサの平面図であり、図1の矢印IX方向から見た図である。図10は、本発明の実施形態1に係る電流センサの回路構成を示すブロック図である。
図1,2,5〜9においては、後述する導体110の幅方向をX軸方向、導体110の長さ方向をY軸方向、導体110の厚さ方向をZ軸方向として、図示している。なお、図5〜8においては、後述する筐体を図示していない。図9においては、後述する筐体および基板を図示していない。
図1〜9に示すように、本発明の実施形態1に係る電流センサ100は、測定対象の電流が流れ、互いに並行に配置された一方の流路部および他方の流路部を含む導体110と、一方の流路部を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する第1磁気センサ120aと、他方の流路部を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する第2磁気センサ120bとを備える。
本実施形態においては、電流センサ100は、一方の流路部を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する第3磁気センサ120cと、他方の流路部を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する第4磁気センサ120dとをさらに備える。
図10に示すように、電流センサ100の回路には、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bを含む第1磁気センサグループ10と、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dを含む第2磁気センサグループ20とが構成されている。
導体110は、表面および裏面を含み、長さ方向(Y軸方向)、長さ方向(Y軸方向)と直交する幅方向(X軸方向)、および、長さ方向(Y軸方向)と幅方向(X軸方向)とに直交する厚さ方向(Z軸方向)を有する板状である。導体110は、長さ方向(Y軸方向)における途中で、測定対象の電流が分流されて流れる一方の流路部および他方の流路部を含む。測定対象の電流は、2つの流路に分流されて導体110を矢印1で示すように導体110の長さ方向(Y軸方向)に流れる。
導体110は、導体110の厚さ方向(Z軸方向)の一方に突出するように曲がって長さ方向(Y軸方向)に延在する、一方の流路部であるアーチ状部111を含む。すなわち、一方の流路部は、幅方向(X軸方向)から見て、導体110の表面側に膨出している。導体110には、導体110の長さ方向(Y軸方向)に延在するスリット115が設けられている。スリット115は、導体110の幅方向(X軸方向)にてアーチ状部111に隣接している。
導体110にてスリット115のアーチ状部111側とは反対側に隣接して、導体110の厚さ方向(Z軸方向)の他方に突出するように曲がって導体110の長さ方向(Y軸方向)に延在する、他方の流路部である逆アーチ状部116が設けられている。すなわち、他方の流路部は、幅方向(X軸方向)から見て、導体110の裏面側に膨出している。逆アーチ状部116は、導体110の厚さ方向(Z軸方向)から見て、導体110の幅方向(X軸方向)にてアーチ状部111と並んでいる。
スリット115は、導体110の幅方向(X軸方向)にて導体110の中央に位置している。スリット115は、アーチ状部111と逆アーチ状部116とに挟まれて位置している。このように、電流センサ100においては、導体110は、一方の流路部と他方の流路部との間に、長さ方向(Y軸方向)に延在するスリット115が設けられている。アーチ状部111および逆アーチ状部116の内側に、開口部110hが形成されている。すなわち、幅方向(X軸方向)から見て、一方の流路部と他方の流路部とによって囲まれた領域である開口部110hが形成されている。
図2に示すように、本実施形態においては、アーチ状部111は、互いに間隔を置いて、導体110の主面に直交するように突出する第1突出部112および第2突出部113と、導体110の長さ方向(Y軸方向)に延在し、第1突出部112と第2突出部113とを繋ぐ延在部114とから構成されている。逆アーチ状部116は、互いに間隔を置いて、導体110の主面に直交するように突出する第3突出部117および第4突出部118と、導体110の長さ方向(Y軸方向)に延在し、第3突出部117と第4突出部118とを繋ぐ延在部119とから構成されている。
ただし、アーチ状部111および逆アーチ状部116の各々の形状はこれに限られず、たとえば、導体110の幅方向(X軸方向)から見て、C字状または半円状の形状を有していてもよい。アーチ状部111と逆アーチ状部116とは、互いに同一形状を有する。すなわち、アーチ状部111と逆アーチ状部116とは、互いに点対称な形状を有する。なお、導体110において、逆アーチ状部116の代わりに、導体110の主面が平坦に連続している平坦部が設けられていてもよい。本実施形態においては、導体110は、1つの導体で構成されているが、複数の導体で構成されていてもよい。
本実施形態においては、導体110は、電気抵抗が低く加工性に優れている銅で構成されている。より具体的には、導体110は、耐熱性に優れている無酸素銅で構成されている。ただし、導体110の材料はこれに限られず、銀、アルミニウム若しくは鉄などの金属、またはこれらの金属を含む合金でもよい。
導体110は、表面処理が施されていてもよい。たとえば、ニッケル、錫、銀若しくは銅などの金属、またはこれらの金属を含む合金からなる、少なくとも1層のめっき層が、導体110の表面に設けられていてもよい。
本実施形態においては、プレス加工により導体110を形成している。ただし、導体110の形成方法はこれに限られず、切削加工または鋳造などにより導体110を形成してもよい。
図3に示すように、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々は、アンプおよび受動素子などの図示しない電子部品と共に基板130に実装されている。ただし、アンプおよび受動素子などの電子部品は、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dが実装されている基板130とは異なる基板に、実装されていてもよい。
基板130が電気絶縁性を有する筐体150内に固定されることにより、磁気センサユニット160が構成されている。すなわち、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120c、第4磁気センサ120d、電子部品および基板130の各々は、筐体150に収容されている。
基板130は、プリント配線板であり、ガラスエポキシまたはアルミナなどの基材と、基材の表面上に設けられた銅などの金属箔がパターニングされて形成された配線とから構成されている。
図3,4に示すように、筐体150は、略直方体状の外形を有し、下部筐体151と上部筐体152とから構成されている。上部筐体152には、基板130と接続されるワイヤーハネースの取出し口152pが設けられている。
筐体150は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、LCP(液晶ポリマー)、ウレタンまたはナイロンなどのエンジニアリングプラスチックで構成されている。PPSは、耐熱性が高いため、導体110の発熱を考慮した場合、筐体150の材料として好ましい。
基板130を筐体150に固定する方法としては、螺子による締結、樹脂による熱溶着、または、接着剤による接合などを用いることができる。螺子を用いて基板130と筐体150とを締結する場合には、磁界の乱れが生じないように、非磁性の螺子を用いることが好ましい。
アーチ状部111と逆アーチ状部116とによって形成される開口部110hに、磁気センサユニット160が挿入されている。これにより、図7に示すように、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cは、アーチ状部111の内側に配置されて延在部114の裏面側に位置し、図8に示すように、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dは、逆アーチ状部116の内側に配置されて延在部119の表面側に位置している。
すなわち、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cは、導体110の幅方向(X軸方向)から見て、上記領域の内部に位置し、かつ、一方の流路部の裏面側に位置している。第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dは、導体110の幅方向(X軸方向)から見て、上記領域の内部に位置し、かつ、他方の流路部の表面側に位置している。
図9に示すように、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bは、導体110の幅方向(X軸方向)に並んで配置されている。第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dは、導体110の幅方向(X軸方向)に並んで配置されている。第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cは、導体110の長さ方向(Y軸方向)に並んで配置されている。測定対象の電流が流れる矢印1で示す方向において、第3磁気センサ120cは、第1磁気センサ120aの下流側に位置している。第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dは、導体110の長さ方向(Y軸方向)に並んで配置されている。測定対象の電流が流れる矢印1で示す方向において、第4磁気センサ120dは、第2磁気センサ120bの下流側に位置している。
上記の状態において、筐体150は、アーチ状部111の裏面の少なくとも一部と接している。たとえば、上部筐体152が、延在部114の裏面の少なくとも一部と接している。さらに、筐体150は、逆アーチ状部116の表面の少なくとも一部と接している。たとえば、下部筐体151が、延在部119の表面の少なくとも一部と接している。
本実施形態においては、基板130の実装面と導体110の主面とが平行になるように基板130が配置されているが、基板130の実装面と導体110の主面とが垂直になるように基板130が配置されていてもよい。この場合、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bは、基板130の一方の主面に実装され、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dは、基板130の他方の主面に実装される。
第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々は、導体110の幅方向(X軸方向)の磁界を検出する。具体的には、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々は、導体110の幅方向(X軸方向)に向いた検出軸2を有している。
第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々は、検出軸2の一方向に向いた磁界を検出した場合に正の値で出力し、かつ、検出軸2の一方向とは反対方向に向いた磁界を検出した場合に負の値で出力する、奇関数入出力特性を有している。
本実施形態においては、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々は、4つのAMR(Anisotropic Magneto Resistance)素子からなるホイートストンブリッジ型のブリッジ回路を有する。なお、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々が、AMR素子に代えて、GMR(Giant Magneto Resistance)、TMR(Tunnel Magneto Resistance)、BMR(Ballistic Magneto Resistance)、CMR(Colossal Magneto Resistance)などの磁気抵抗素子を有していてもよい。
また、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々が、2つの磁気抵抗素子からなるハーフブリッジ回路を有していてもよい。その他にも、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dとして、ホール素子を有する磁気センサ、磁気インピーダンス効果を利用するMI(Magneto Impedance)素子を有する磁気センサまたはフラックスゲート型磁気センサなどを用いることができる。磁気抵抗素子およびホール素子などの磁気素子は、樹脂パッケージされていてもよく、または、シリコーン樹脂若しくはエポキシ樹脂などでポッティングされていてもよい。
なお、後述するように第1磁気センサグループ10および第2磁気センサグループ20の一方が故障した場合にも、故障していない方の磁気センサグループによって測定対象の電流の値を検出することができるようにするためには、第1磁気センサ120aおよび第2磁気サンサ120bに対して、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dが、異なる構成を有していることが好ましい。たとえば、第1磁気センサ120aおよび第2磁気サンサ120bがAMR素子を有する構成である場合、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dがMI素子を有する構成であることが好ましい。若しくは、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの全てがAMR素子を有する構成である場合、AMR素子の磁化方向を決める磁石の種類が、第1磁気センサ120aおよび第2磁気サンサ120bと、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dとで、異なっていることが好ましい。
複数の磁気素子がパッケージされている場合、複数の磁気素子が1つにパッケージされていてもよいし、複数の磁気素子の各々が別々にパッケージされていてもよい。また、複数の磁気素子と電子部品とが集積された状態で、1つにパッケージされていてもよい。
本実施形態においては、AMR素子は、バーバーポール型電極を含むことによって、奇関数入出力特性を有している。具体的には、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々の磁気抵抗素子は、バーバーポール型電極を含むことにより、磁気抵抗素子における磁気抵抗膜の磁化方向に対して所定の角度(たとえば45°)をなす方向に電流が流れるようにバイアスされている。
磁気抵抗膜の磁化方向は、磁気抵抗膜の形状異方性およびバイアス磁界の少なくとも一方によって決まる。なお、AMR素子の磁化方向を決める方法として、AMR素子を構成する磁気抵抗膜の近傍に永久磁石若しくは薄膜磁石を設ける方法、磁気抵抗膜において交換結合若しくは相間結合を設ける方法、磁気抵抗膜の近傍に設けられたコイルの誘導磁界を用いる方法、または、磁気抵抗膜の近傍に設けられた磁性体の残留磁束を用いる方法などを採用してもよい。磁気抵抗膜の近傍に設けられたコイルの誘導磁界を用いる方法を採用する場合、コイルに流される電流の大きさ変更することにより、磁気抵抗膜に印加されるバイアス磁界の強さを適宜調整することができる。磁気抵抗膜は、ミアンダ状に折り返されて形成されていてもよい。永久磁石は、焼結磁石、ボンド磁石または薄膜で構成されていてもよい。永久磁石の種類は、特に限定されず、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石またはネオジム磁石などを用いることができる。
第1磁気センサ120aの磁気抵抗素子における磁気抵抗膜の磁化方向と、第2磁気センサ120bの磁気抵抗素子における磁気抵抗膜の磁化方向と、第3磁気センサ120cの磁気抵抗素子における磁気抵抗膜の磁化方向と、第4磁気センサ120dの磁気抵抗素子における磁気抵抗膜の磁化方向は、同一方向である。これにより、外部磁界の影響による出力精度の低下を小さくすることができる。
第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々のブリッジ回路に印加される電源電圧は、直流の一定電圧であってもよいし、交流電圧またはパルス電圧であってもよい。
図10に示すように、第1磁気センサグループ10は、第1磁気センサ120aに電気的に接続された第1増幅部140a、第2磁気センサ120bに電気的に接続された第2増幅部140b、第1増幅部140aおよび第2増幅部140bに電気的に接続された第1演算部141a、並びに、第1増幅部140aおよび第2増幅部140bに電気的に接続された第1比較判定部142aを含む。ただし、第1増幅部140aおよび第2増幅部140bは、必ずしも設けられていなくてもよい。第1増幅部140aは、第1磁気センサ120aの検出値が入力され、その検出値を増幅する。第2増幅部140bは、第2磁気センサ120bの検出値を増幅する。第1演算部141aは、第1磁気センサ120aの増幅された検出値と第2磁気センサ120bの増幅された検出値とが入力され、これらの検出値から演算することにより測定対象の電流の値を算出する。第1比較判定部142aは、第1磁気センサ120aの増幅された検出値と第2磁気センサ120bの増幅された検出値とが入力され、第1磁気センサ120aの増幅された検出値の大きさと第2磁気センサ120bの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定する。
したがって、第1磁気センサグループ10においては、測定対象の電流の値が第1演算部141aから出力信号10aとして、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの少なくとも一方の故障の発生の有無が第1比較判定部142aから出力信号10bとして、出力される。
第2磁気センサグループ20は、第3磁気センサ120cに電気的に接続された第3増幅部140c、第4磁気センサ120dに電気的に接続された第4増幅部140d、第3増幅部140cおよび第4増幅部140dに電気的に接続された第2演算部141b、並びに、第3増幅部140cおよび第4増幅部140dに電気的に接続された第2比較判定部142bを含む。ただし、第3増幅部140cおよび第4増幅部140dは、必ずしも設けられていなくてもよい。第3増幅部140cは、第3磁気センサ120cの検出値が入力され、その検出値を増幅する。第4増幅部140dは、第4磁気センサ120dの検出値を増幅する。第2演算部141bは、第3磁気センサ120cの増幅された検出値と第4磁気センサ120dの増幅された検出値とが入力され、これらの検出値から演算することにより測定対象の電流の値を算出する。第2比較判定部142bは、第3磁気センサ120cの増幅された検出値と第4磁気センサ120dの増幅された検出値とが入力され、第3磁気センサ120cの増幅された検出値の大きさと第4磁気センサ120dの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定する。
したがって、第2磁気センサグループ20においては、測定対象の電流の値が第2演算部141bから出力信号20aとして、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの少なくとも一方の故障の発生の有無が第2比較判定部142bから出力信号20bとして、出力される。
以下、本発明の実施形態1に係る電流センサ100の動作について説明する。図5,6に示すように、導体110を流れる測定対象の電流は、アーチ状部111を通過する一方の流路部と、逆アーチ状部116を通過する他方の流路部との、2つの流路に分かれて流れる。導体110において2つの流路に分かれて電流が流れることにより、いわゆる右ねじの法則によって、各流路を周回する磁界が発生する。
図7,8に示すように、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cはアーチ状部111の内側に配置されているため、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cには、第1突出部112を周回する磁界112eと、第2突出部113を周回する磁界113eと、延在部114を周回する磁界114eとが印加される。これにより、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの磁気抵抗素子に印加される磁界が強くなるため、導体110を流れる測定電流に対する第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの感度が高くなる。
第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dは逆アーチ状部116の内側に配置されているため、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dには、第3突出部117を周回する磁界と、第4突出部118を周回する磁界と、延在部119を周回する磁界119eとが印加される。これにより、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの磁気抵抗素子に印加される磁界が強くなるため、導体110を流れる測定電流に対する第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの感度が高くなる。
図5,6に示すように、延在部114の裏面側の位置と、延在部119の表面側の位置とでは、X軸方向の磁束の向きが互いに反対方向となる。すなわち、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cに作用する磁束の向きと、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dに作用する磁束の向きとが反対であるため、導体110を流れる測定対象の電流により発生する磁界の強さについて、第1磁気センサ120aの検出値の位相および第3磁気センサ120cの検出値の位相と、第2磁気センサ120bの検出値の位相および第4磁気センサ120dの検出値の位相とは、逆相である。よって、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの検出した磁界の強さを正の値とすると、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの検出した磁界の強さは負の値となる。
本実施形態に係る電流センサ100においては、磁気センサユニット160が開口部110hに挿入されているため、外部磁界源は、物理的に第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとの間、および、第3磁気センサ120cと第4磁気センサ120dとの間、に位置することができない。
そのため、外部磁界源から第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cに印加される磁界のうちの検出軸の方向における磁界成分の向きと、外部磁界源から第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dに印加される磁界のうちの検出軸の方向における磁界成分の向きとは、同じ向きとなる。よって、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの検出した外部磁界の強さを正の値とすると、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの検出した外部磁界の強さも正の値となる。
本実施形態においては、第1磁気センサグループ10の第1演算部141aは、第1磁気センサ120aの増幅された検出値から第2磁気センサ120bの増幅された検出値を減算する。その結果、外部磁界源からの磁界はほとんど検出されずに、導体110を流れた測定対象の電流の値が算出される。すなわち、外部磁界の影響が低減される。
第2磁気センサグループ20の第2演算部141bは、第3磁気センサ120cの増幅された検出値から第4磁気センサ120dの増幅された検出値を減算する。その結果、外部磁界源からの磁界はほとんど検出されずに、導体110を流れた測定対象の電流の値が算出される。すなわち、外部磁界の影響が低減される。
第1磁気センサグループ10の第1比較判定部142aは、第1磁気センサ120aの増幅された検出値の大きさと第2磁気センサ120bの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定する。第2磁気センサグループ20の第2比較判定部142bは、第3磁気センサ120cの増幅された検出値の大きさと第4磁気センサ120dの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定する。
ここで、第1比較判定部142aおよび第2比較判定部142bの各々を構成する比較判定部142の構成について説明する。図11は、本発明の実施形態1に係る電流センサが備える比較判定部の構成を示すブロック図である。
図11に示すように、比較判定部142は、第1閾値電圧発生部143、極性反転部144および第1ウインドウコンパレータ145を含む。なお、後述する第1変形例のように、第1磁気センサ120aの検出値の位相および第3磁気センサ120cの検出値の位相と、第2磁気センサ120bの検出値の位相および第4磁気センサ120dの検出値の位相とが、同相である場合には、極性反転部144は設けられていなくてよい。
第1閾値電圧発生部143に第1入力信号が入力されると、第1閾値電圧発生部143は、閾値電圧となる上限基準電圧および下限基準電圧を発生させる。具体的には、第1入力信号として、第1磁気センサ120aの増幅された検出値、または、第3磁気センサ120cの増幅された検出値が、第1閾値電圧発生部143に入力される。
図12は、本発明の実施形態1に係る電流センサが備える比較判定部の第1閾値電圧発生部が発生させる閾値電圧を示すグラフである。図12においては、縦軸に電圧、横軸に時間を示している。図12に示すように、第1閾値電圧発生部143は、第1入力信号の電圧値に対してVtだけ高い上限基準電圧、および、第1入力信号の電圧値に対してVtだけ低い下限基準電圧を発生させる。上限基準電圧および下限基準電圧は、第1ウインドウコンパレータ145に入力される。Vtの値は、電流センサの故障を検出可能な値に適宜設定される。
極性反転部144に第2入力信号が入力されると、極性反転部144は、第2入力信号の極性を反転させた比較信号電圧を発生させる。具体的には、第2入力信号として、第2磁気センサ120bの増幅された検出値、または、第4磁気センサ120dの増幅された検出値が、極性反転部144に入力される。
図13は、本発明の実施形態1に係る電流センサが備える比較判定部の極性反転部が発生させる比較信号電圧を示すグラフである。図13においては、縦軸に電圧、横軸に時間を示している。図13に示すように、極性反転部144は、第2入力信号とは逆位相である比較信号電圧を発生させる。比較信号電圧は、第1ウインドウコンパレータ145に入力される。
図14は、本発明の実施形態1に係る電流センサが備える比較判定部の第1ウインドウコンパレータに入力された、上限基準電圧、下限基準電圧および比較信号電圧を示すグラフである。図14においては、縦軸に電圧、横軸に時間を示している。図14に示すように、第1ウインドウコンパレータ145は、比較信号電圧が、上限基準電圧と下限基準電圧との間に位置しているかどうかを検出する。図14に示す例においては、時間T1〜T2の間に、比較信号電圧が下限基準電圧より低くなっている。すなわち、時間T1〜T2の間に、第1入力信号と第2入力信号との差異が閾値を超えている。
図15は、本発明の実施形態1に係る電流センサが備える比較判定部の第1ウインドウコンパレータの出力信号を示すグラフである。図15においては、縦軸に電圧、横軸に時間を示している。図15に示すように、第1ウインドウコンパレータ145は、比較信号電圧が上限基準電圧と下限基準電圧との間に位置している間は電圧V0のローレベルの出力信号を出力し、比較信号電圧が上限基準電圧または下限基準電圧を超えている間は電圧V1のハイレベルの出力信号を出力する。
したがって、第1ウインドウコンパレータ145の出力信号の推移によって、第1入力信号と第2入力信号との差異が閾値内であるか随時判定することができる。第1入力信号と第2入力信号との差異が閾値を超えた時点において、磁気センサグループに故障が発生したことが検出される。
本実施形態においては、第1比較判定部142aの出力信号10bの推移によって、第1磁気センサグループ10における故障の発生の有無を随時判定することができる。第2比較判定部142bの出力信号20bの推移によって、第2磁気センサグループ20における故障の発生の有無を随時判定することができる。これにより、電流センサ100の故障個所を推定することができる。
また、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々の検出値は、故障個所の推定と測定対象の電流の値の検出との両方に利用される。このため、本実施形態においては、故障個所の推定のための磁気センサグループと、測定対象の電流の値の検出のための磁気センサグループとを個別に設ける必要が無いことから、部品点数の増加を抑制できる。
また、第1演算部141aの出力信号10a、および、第2演算部141bの出力信号20aの各々によって、測定対象の電流の値が検出可能であるため、第1磁気センサグループ10および第2磁気センサグループ20の一方が故障した場合にも、故障していない方の磁気センサグループによって測定対象の電流の値を検出することができる。ただし、電流センサ100は、第1磁気センサグループ10および第2磁気センサグループ20のいずれか一方のみを備えていてもよい。
なお、本実施形態においては、アーチ状部111と逆アーチ状部116とは互いに点対称な形状を有しているため、この対称中心点に関して、第1磁気センサ120aと第4磁気センサ120dとが互いに点対称に位置し、第2磁気センサ120bと第3磁気センサ120cとが互いに点対称に位置している場合、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々の検出値の大きさを同等にすることができる。
図5に示すように第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとが互いに点対称に位置する場合、第1比較判定部142aは、第1入力信号と第2入力信号とを加算する加算器および第1ウインドウコンパレータ145で構成されていてもよい。同様に、図6に示すように第3磁気センサ120cと第4磁気センサ120dとが互いに点対称に位置する場合、第2比較判定部142bは、第1入力信号と第2入力信号とを加算する加算器および第1ウインドウコンパレータ145で構成されていてもよい。これらの場合、第1ウインドウコンパレータ145は、加算器で算出された第1入力信号と第2入力信号との和が0近傍の閾値内であるかを検出する。第1入力信号と第2入力信号との和が0近傍の閾値を超えた時点において、磁気センサグループに故障が発生したことが検出される。
本実施形態の第1変形例として、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cと、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dとにおいて、検出値が正となる検出軸の方向を互いに反対方向(180°反対)にしてもよい。この場合、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの検出する外部磁界の強さを正の値とすると、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの検出する外部磁界の強さは負の値となる。
一方、導体110を流れる測定対象の電流により発生する磁界の強さについて、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの検出値の位相と、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの検出値の位相とは同相となる。
本実施形態の第1変形例においては、第1磁気センサグループ10の第1演算部141aは、第1磁気センサ120aの増幅された検出値と第2磁気センサ120bの増幅された検出値とを加算する。その結果、外部磁界源からの磁界はほとんど検出されずに、導体110を流れた測定対象の電流の値が算出される。すなわち、外部磁界の影響が低減される。
第2磁気センサグループ20の第2演算部141bは、第3磁気センサ120cの増幅された検出値と第4磁気センサ120dの増幅された検出値とを加算する。その結果、外部磁界源からの磁界はほとんど検出されずに、導体110を流れた測定対象の電流の値が算出される。すなわち、外部磁界の影響が低減される。
本実施形態に係る電流センサ100は、導体110を流れる測定電流に対する第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々の感度を高めることによって電流センサ100の感度を高めつつ、外部磁界の影響を低減することができる。
本実施形態に係る電流センサ100においては、磁気センサユニット160を開口部110hに挿入して導体110に取り付けているため、磁性体コアを用いることなく感度低下を抑制しつつ、導体110の形状および配置の自由度が高く簡易に組立可能である。
筐体150の位置のばらつきを低減することにより、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cとアーチ状部111との間隔、および、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dと逆アーチ状部116との間隔の各々を狭くしつつ、アーチ状部111に対する第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの位置のばらつき、および、逆アーチ状部116に対する第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの位置のばらつきの各々を低減して、電流センサ100の感度を高めつつ測定精度のばらつきを低減することができる。その結果、電流センサ100の測定再現性および量産性を高めることができる。また、アーチ状部111および逆アーチ状部116によって、磁気センサユニット160の構成部品を外力から保護することができる。
本実施形態に係る電流センサ100においては、アーチ状部111の電気抵抗値と逆アーチ状部116の電気抵抗値とが略同一であるため、導体110を測定電流が流れることによるアーチ状部111の発熱量と逆アーチ状部116の発熱量とを同等にすることができる。その結果、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの磁気抵抗素子の周囲の温度と、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの磁気抵抗素子の周囲の温度とを略同じにすることができるため、磁気抵抗素子の温度特性による電流センサ100の測定値の誤差を低減することができる。
本実施形態に係る電流センサ100は、1つの導体110に、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dが実装された基板130を収容した筐体150を組み付ける構造を有しているため、電流センサ100の組み立てが容易であり、また、2つの導体を用いる場合に比較して、部品点数を削減して低コスト化を図ることができる。
なお、電流センサ100は、第1演算部141aの算出結果と第2演算部141bの算出結果との差異が閾値内であるか判定する第3比較判定部142cをさらに備えていてもよい。図16は、本発明の実施形態1の第2変形例に係る電流センサの回路構成を示すブロック図である。
図16に示すように、本発明の実施形態1の第2変形例に係る電流センサは、第1演算部141aの算出結果と第2演算部141bの算出結果との差異が閾値内であるか判定する第3比較判定部142cをさらに備えている。第3比較判定部142cからは、出力信号30bが出力される。
本発明の実施形態1の第2変形例に係る電流センサは、第1比較判定部142a、第2比較判定部142bおよび第3比較判定部142cを有しており、第1比較判定部142aの出力信号10b、第2比較判定部142bの出力信号20bおよび第3比較判定部142cの出力信号30bの組み合わせとして下記のケースがある。
表1は、第1比較判定部142aの出力信号10b、第2比較判定部142bの出力信号20bおよび第3比較判定部142cの出力信号30bの組み合わせを示す表である。
表1に示すように、第1比較判定部142aの出力信号10b、第2比較判定部142bの出力信号20bおよび第3比較判定部142cの出力信号30bの各々は、ケース1では、ローレベル、ローレベル、ローレベルであり、ケース2では、ローレベル、ローレベル、ハイレベルであり、ケース3では、ローレベル、ハイレベル、ローレベルであり、ケース4では、ハイレベル、ローレベル、ローレベルであり、ケース5では、ローレベル、ハイレベル、ハイレベルであり、ケース6では、ハイレベル、ローレベル、ハイレベルであり、ケース7では、ハイレベル、ハイレベル、ローレベルであり、ケース8では、ハイレベル、ハイレベル、ハイレベルである。
ケース1の場合は、電流センサに故障個所はないと推定される。ケース2の場合は、第1演算部141a、第2演算部141bおよび第3比較判定部142cのいずれか、または、第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとの両方、若しくは、第3磁気センサ120cと第4磁気センサ120dとの両方、が故障していると推定される。ケース3の場合は、第2比較判定部142bが故障していると推定される。ケース4の場合は、第1比較判定部142aが故障していると推定される。
ケース5の場合は、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの少なくとも一方が故障していると推定される。ケース6の場合は、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの少なくとも一方が故障していると推定される。ケース7の場合は、導体110に割れまたは破断が発生し、一方の流路および他方の流路の各々を流れる電流の比率に変化が生じているが、導体110を流れる電流値は変化していない状態が考えられ、導体110に故障が発生していると推定される。ケース8の場合は、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの少なくとも一方、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの少なくとも一方、および、導体110に故障が発生していると推定される。
なお、電流センサ100は、比較判定部として第1比較判定部142aのみを有していてもよい。図17は、本発明の実施形態1の第3変形例に係る電流センサの回路構成を示すブロック図である。
図17に示すように、本発明の実施形態1の第3変形例に係る電流センサにおいては、第2磁気センサグループ20aに第2比較判定部142bが設けられておらず、第1磁気センサグループ10aに、第1比較判定部142aと第2比較判定部142bとが一体で設けられている。第1比較判定部142aおよび第2比較判定部142bは、第1磁気センサ120aの増幅された検出値の大きさと第2磁気センサ120bの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定し、第3磁気センサ120cの増幅された検出値の大きさと第4磁気センサ120dの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定し、第1磁気センサ120aの増幅された検出値の大きさと第3磁気センサ120cの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定し、第2磁気センサ120bの増幅された検出値の大きさと第4磁気センサ120dの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定する。
本発明の実施形態1の第3変形例に係る電流センサにおいては、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々の故障の発生の有無が第1比較判定部142aおよび第2比較判定部142bから出力信号10bとして出力される。すなわち、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々の故障の発生の有無を推定することができる。すなわち、故障個所を推定することができる。
なお、電流センサ100は、第1磁気センサ120aの検出値および第2磁気センサ120bの検出値の各々が、閾値内であるか判定する第1判定部146a、並びに、第3磁気センサ120cの検出値および第4磁気センサ120dの検出値の各々が、閾値内であるか判定する第2判定部146bをさらに備えていてもよい。図18は、本発明の実施形態1の第4変形例に係る電流センサの回路構成を示すブロック図である。
図18に示すように、本発明の実施形態1の第4変形例に係る電流センサは、第1磁気センサ120aの検出値および第2磁気センサ120bの検出値の各々が、閾値内であるか判定する第1判定部146a、並びに、第3磁気センサ120cの検出値および第4磁気センサ120dの検出値の各々が、閾値内であるか判定する第2判定部146bをさらに備えている。第1判定部146aからは、出力信号10cが出力される。第2判定部146bからは、出力信号20cが出力される。
ここで、第1判定部146aおよび第2判定部146bの各々を構成する判定部146の構成について説明する。図19は、本発明の実施形態1の第4変形例に係る電流センサが備える判定部の構成を示すブロック図である。
図19に示すように、判定部146は、第2閾値電圧発生部147および第2ウインドウコンパレータ148を含む。第2閾値電圧発生部147に第3入力信号が入力されると、第2閾値電圧発生部147は、閾値電圧となる上限基準電圧および下限基準電圧を発生させる。具体的には、第3入力信号として、磁気センサのブリッジ回路に印加される正側電源電圧および負側電源電圧が、第2閾値電圧発生部147に入力される。
図20は、本発明の実施形態1の第4変形例に係る電流センサが備える判定部の第2閾値電圧発生部が発生させる閾値電圧、および、第2ウインドウコンパレータに入力された正常な第4入力信号を示すグラフである。図20においては、縦軸に電圧、横軸に時間を示している。図20に示すように、第2閾値電圧発生部147は、第3入力信号の正側電源電圧値に対してVuだけ低い上限基準電圧、および、第3入力信号の負側電源電圧値に対してVuだけ高い下限基準電圧を発生させる。上限基準電圧および下限基準電圧は、第2ウインドウコンパレータ148に入力される。Vuの値は、磁気センサの故障を検出可能な値に適宜設定される。
図19,20に示すように、第2ウインドウコンパレータ148に、第4入力信号が入力される。具体的には、第4入力信号として、磁気センサの増幅された検出値が第2ウインドウコンパレータ148に入力される。第2ウインドウコンパレータ148は、第4入力信号が、上限基準電圧と下限基準電圧との間に位置しているかどうかを検出する。図20に示す例においては、第4入力信号が上限基準電圧と下限基準電圧との間に位置している。すなわち、磁気センサの検出値は、閾値内である。
図21は、本発明の実施形態1の第4変形例に係る電流センサが備える判定部の第2ウインドウコンパレータの図20に示す状態の時の出力信号を示すグラフである。図21においては、縦軸に電圧、横軸に時間を示している。図21に示すように、第2ウインドウコンパレータ148は、第4入力信号が上限基準電圧と下限基準電圧との間に位置している間は電圧V0のローレベルの出力信号を出力する。
図22は、本発明の実施形態1の第4変形例に係る電流センサが備える判定部の第2ウインドウコンパレータに入力された、上限基準電圧、下限基準電圧および異常な第4入力信号を示すグラフである。図22においては、縦軸に電圧、横軸に時間を示している。図22に示すように、第2ウインドウコンパレータ148は、第4入力信号が、上限基準電圧と下限基準電圧との間に位置しているかどうかを検出する。図22に示す例においては、第4入力信号が上限基準電圧より高くなっている。すなわち、磁気センサの検出値は、閾値外である。なお、図22に示すような異常な第4入力信号は、たとえば、磁気センサが有する磁気抵抗素子が故障により短絡または解放状態になった場合に発生する。
図23は、本発明の実施形態1の第4変形例に係る電流センサが備える判定部の第2ウインドウコンパレータの図22に示す状態の時の出力信号を示すグラフである。図23においては、縦軸に電圧、横軸に時間を示している。図23に示すように、第2ウインドウコンパレータ148は、第4入力信号が上限基準電圧または下限基準電圧を超えている間は電圧V1のハイレベルの出力信号を出力する。
したがって、第2ウインドウコンパレータ148の出力信号の推移によって、第4入力信号が閾値内であるか随時判定することができる。第4入力信号が閾値を超えた時点において、磁気センサに故障が発生したことが検出される。
なお、電流センサ100の導体110には、アーチ状部111および逆アーチ状部116が形成されていたが、導体110の形状はこれに限られず、一方の流路部および他方の流路部の各々が平坦部で構成されていてもよい。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る電流センサについて説明する。なお、実施形態2に係る電流センサ200は、一方の流路部および他方の流路部の各々が平坦部で構成されている点のみ実施形態1に係る電流センサ100と異なるため、実施形態1に係る電流センサ100と同様である構成については同じ参照符号を付してその説明を繰り返さない。
図24は、本発明の実施形態2に係る電流センサの外観を示す斜視図である。図25は、本発明の実施形態2に係る電流センサが備える導体の外観を示す斜視図である。図26は、図24の電流センサをXXVI−XXVI線矢印方向から見た断面図である。
図24〜26に示すように、本発明の実施形態2に係る電流センサ200は、測定対象の電流が流れ、互いに並行に配置された一方の流路部および他方の流路部を含む導体210と、一方の流路部を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する第1磁気センサ120aと、他方の流路部を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する第2磁気センサ120bとを備える。
本実施形態においては、電流センサ200は、一方の流路部を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する第3磁気センサ120cと、他方の流路部を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する第4磁気センサ120dとをさらに備える。
導体210は、一方の流路部である平坦部211および他方の流路部である平坦部216を含む。導体210には、平坦部211と平坦部216との間に、長さ方向(Y軸方向)に延在するスリット215が設けられている。平坦部211と平坦部216とは、互いに線対称な形状を有する。
第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cは、アンプおよび受動素子などの図示しない電子部品と共に基板230aに実装されている。第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dは、アンプおよび受動素子などの図示しない電子部品と共に基板230bに実装されている。
基板230aの一端には支持板251aが接続され、基板230aの他端には支持板252aが接続されている。基板230bの一端には支持板251bが接続され、基板230bの他端には支持板252bが接続されている。基板230aおよび基板230bは、筐体250内に固定されている。
具体的には、基板230aは、導体210の一方の主面と間隔をあけて対向するように筐体250内に配置されている。支持板251aおよび支持板251bの各々は、導体210の一方の主面と筐体250の内周面とに挟まれている。基板230bは、導体210の他方の主面と間隔をあけて対向するように筐体250内に配置されている。支持板251bおよび支持板252bの各々は、導体210の他方の主面と筐体250の内周面とに挟まれている。
支持板251a、支持板252a、支持板251bおよび支持板252bの各々は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、LCP(液晶ポリマー)、ウレタンまたはナイロンなどのエンジニアリングプラスチックで構成されている。PPSは、耐熱性が高いため、導体210の発熱を考慮した場合、支持板251a、支持板252a、支持板251bおよび支持板252bの各々の材料として好ましい。
図24,26に示すように、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cは、平坦部211の表面側に位置し、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dは、平坦部216の裏面側に位置している。第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cは、導体210の長さ方向(Y軸方向)に並んで配置されている。第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dは、導体210の長さ方向(Y軸方向)に並んで配置されている。
平坦部211の表面側の位置と、平坦部216の裏面側の位置とでは、X軸方向の磁束の向きが互いに反対方向となる。すなわち、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cに作用する磁束の向きと、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dに作用する磁束の向きとが反対であるため、導体110を流れる測定対象の電流により発生する磁界の強さについて、第1磁気センサ120aの検出値の位相および第3磁気センサ120cの検出値の位相と、第2磁気センサ120bの検出値の位相および第4磁気センサ120dの検出値の位相とは、逆相である。よって、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの検出した磁界の強さを正の値とすると、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの検出した磁界の強さは負の値となる。
本実施形態に係る電流センサ200においては、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dが筐体250内に収容されているため、外部磁界源は、物理的に第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとの間、および、第3磁気センサ120cと第4磁気センサ120dとの間、に位置することができない。
そのため、外部磁界源から第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cに印加される磁界のうちの検出軸の方向における磁界成分の向きと、外部磁界源から第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dに印加される磁界のうちの検出軸の方向における磁界成分の向きとは、同じ向きとなる。よって、第1磁気センサ120aおよび第3磁気センサ120cの検出した外部磁界の強さを正の値とすると、第2磁気センサ120bおよび第4磁気センサ120dの検出した外部磁界の強さも正の値となる。
本実施形態においては、第1磁気センサグループ10の第1演算部141aは、第1磁気センサ120aの増幅された検出値から第2磁気センサ120bの増幅された検出値を減算する。その結果、外部磁界源からの磁界はほとんど検出されずに、導体110を流れた測定対象の電流の値が算出される。すなわち、外部磁界の影響が低減される。
第2磁気センサグループ20の第2演算部141bは、第3磁気センサ120cの増幅された検出値から第4磁気センサ120dの増幅された検出値を減算する。その結果、外部磁界源からの磁界はほとんど検出されずに、導体110を流れた測定対象の電流の値が算出される。すなわち、外部磁界の影響が低減される。
第1磁気センサグループ10の第1比較判定部142aは、第1磁気センサ120aの増幅された検出値の大きさと第2磁気センサ120bの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定する。第2磁気センサグループ20の第2比較判定部142bは、第3磁気センサ120cの増幅された検出値の大きさと第4磁気センサ120dの増幅された検出値の大きさとの差異が閾値内であるか判定する。
本実施形態に係る電流センサ200においても、電流センサ200の故障個所を推定することができる。また、第1磁気センサグループ10および第2磁気センサグループ20の一方が故障した場合にも、故障していない方の磁気センサグループによって測定対象の電流の値を検出することができる。
本実施形態においては、平坦部211と平坦部216とが互いに線対称な形状を有しているため、この対称中心線上の一点に関して、第1磁気センサ120aと第4磁気センサ120dとが互いに点対称に位置し、第2磁気センサ120bと第3磁気センサ120cとが互いに点対称に位置している場合、第1磁気センサ120a、第2磁気センサ120b、第3磁気センサ120cおよび第4磁気センサ120dの各々の検出値の大きさを同等にすることができる。
この場合、比較判定部は、第1入力信号と第2入力信号とを加算する加算器および第1ウインドウコンパレータ145で構成されていてもよい。第1ウインドウコンパレータ145は、加算器で算出された第1入力信号と第2入力信号との和が0近傍の閾値内であるかを検出する。第1入力信号と第2入力信号との和が0近傍の閾値を超えた時点において、磁気センサグループに故障が発生したことが検出される。
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。