本発明は、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、及びプリント配線板に関し、より詳細には、プリント配線板にソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の電気絶縁性の層を形成するのに適する感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を含有するドライフィルム、この感光性樹脂組成物の硬化物を含む層間絶縁層を備えるプリント配線板、及びこの感光性樹脂組成物の硬化物を含むソルダーレジスト層を備えるプリント配線板に関する。
本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」のうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとのうち少なくとも一方を意味する。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、光硬化性を有する。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂(A)と、平均一次粒子径が1μm以下であり、カルボキシル基を有する有機フィラー(B)と、ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子と、二つ以上の官能基とを有するカップリング剤(C)と、平均粒子径が1〜150nmの範囲内であるシリカフィラー(D)と、を含有する。官能基は、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を含む。
感光性樹脂組成物が有機フィラー(B)を含有することで、感光性樹脂組成物の硬化物は、高い銅めっき密着性を有する。また、感光性樹脂組成物が、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂(A)と、有機フィラー(B)と、カップリング剤(C)と、シリカフィラー(D)とを含有することで、感光性樹脂組成物は、有機フィラー(B)を含有するにもかかわらず、高い透明性を有する。このため、解像性が向上する。通常、感光性樹脂組成物にフィラーを配合すると、感光性樹脂組成物に濁りが生じ、透明性が低下する。感光性樹脂組成物の透明性が低いと、感光性樹脂組成物を露光する際に光が散乱しやすくなり、良好な解像性を得ることができない。しかし、本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂(A)と、有機フィラー(B)と、カップリング剤(C)と、シリカフィラー(D)とを含有するため、高い透明性を有することができる。このため、感光性樹脂組成物の解像性が向上し、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層に微細なスルーホールや開口パターン等を形成することができる。また、感光性樹脂組成物の硬化物をデスミア処理した後の、硬化物の表面粗さを小さくすることができる。すなわち、感光性樹脂組成物は、デスミア後荒れ性が低い硬化物を形成しうる。硬化物のデスミア後荒れ性を低減することで、この硬化物からなる層を備えるプリント配線板は、優れた高周波特性を有しうる。さらに、感光性樹脂組成物がシリカフィラー(D)を含有することで、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点を高めると共に、熱膨張係数を低減することができる。このため、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層は、熱による応力が加えられても反りにくく、また冷熱サイクルクラック耐性にも優れるため、薄型化されたプリント配線板に用いることができる。また、感光性樹脂組成物がシリカフィラー(D)を含有することで、感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低減することができる。このため、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層を備えるプリント配線板の高周波伝送性能を向上することができる。また、本実施形態では、感光性樹脂組成物が、カルボキシル基含有樹脂(A)と、有機フィラー(B)と、カップリング剤(C)と、シリカフィラー(D)とを含有するため、シリカフィラー(D)が、カップリング剤(C)を介して、カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基及び有機フィラー(B)のカルボキシル基と相互作用したり結合したりすることで、コンポジット化あるいはハイブリッド化すると考えられる。このため、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点が更に高まり、熱膨張係数及び誘電正接が更に低減される。
感光性樹脂組成物は、光硬化性を有する。感光性樹脂組成物が、光硬化性を有することで、感光性樹脂組成物に光を照射して、感光性樹脂組成物を硬化させることができる。感光性樹脂組成物の光硬化性は、例えば、カルボキシル基含有樹脂(A)が光重合性不飽和基を有することで付与される。また、感光性樹脂組成物の光硬化性は、後述のように感光性樹脂組成物が不飽和化合物(E)を含有することでも付与される。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、芳香環を有する。カルボキシル基含有樹脂(A)が芳香環を有するため、感光性樹脂組成物は良好な透明性を有することができる。カルボキシル基含有樹脂(A)は、特に限定されず、芳香環とカルボキシル基とを有する樹脂であればよい。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、水酸基を有することが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)が水酸基を有することで、カップリング剤(C)との反応性が特に高まり、感光性樹脂組成物の透明性が更に向上する。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、ポリアルコール樹脂と多価カルボン酸及びその酸無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物との反応により得られる樹脂を含むことが好ましい。この場合、ポリアルコール樹脂は、芳香環を有することが好ましく、また、多価カルボン酸及びその無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物が芳香環を有することも好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)は、ポリアルコール樹脂と酸二無水物との反応により得られる共重合体を含むことが更に好ましい。この場合、ポリアルコール樹脂は、芳香環を有することが好ましく、また、酸二無水物が芳香環を有することも好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)がポリアルコール樹脂と酸二無水物との反応により得られる共重合体を含む場合、感光性樹脂組成物に高いアルカリ現像性を付与すると共に、感光性樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性及び絶縁性を付与することができる。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)が、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことで、カルボキシル基含有樹脂(A)は光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A)を含有する感光性樹脂組成物に光硬化性を付与することができる。
エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(g1)とエチレン性不飽和化合物(g2)との反応物である中間体と、多価カルボン酸及びその無水物の群から選択される少なくとも一種の化合物(g3)との反応物である樹脂(第一の樹脂(g)という)を含有する。第一の樹脂(g)は、エポキシ化合物(g1)、エチレン性不飽和化合物(g2)、及び化合物(g3)のうちの少なくとも一つに由来する芳香環を有する。第一の樹脂(g)は、例えばエポキシ化合物(g1)中のエポキシ基と、エチレン性不飽和化合物(g2)中のカルボキシル基とを反応させて得られた水酸基を有する中間体に化合物(g3)を付加させて得られる。エポキシ化合物(g1)は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の適宜のエポキシ樹脂を含有できる。エポキシ化合物(g1)は、芳香環を有するエポキシ化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物(g1)は、エチレン性不飽和化合物(h)の重合体を含有してもよい。エチレン性不飽和化合物(h)は、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する化合物(h1)を含有し、或いは更に2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート等のエポキシ基を有さない化合物(h2)を含有する。エチレン性不飽和化合物(g2)は、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。化合物(g3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸と、これらの多価カルボン酸の無水物とからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。化合物(g3)は、酸二無水物を含有することが好ましい。また、酸二無水物が芳香環を有する酸二無水物を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の透明性がさらに向上し、それに伴い解像性がさらに向上する。
エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体とエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応物である樹脂(第二の樹脂(i)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。第二の樹脂(i)は、重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。第二の樹脂(i)は、エチレン性不飽和単量体の重合体及びエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物のうちの少なくとも一つに由来する芳香環を有する。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート等の化合物を含有する。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を含有する。エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、ベンゼン環を有することが好ましい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A)が有する芳香環は、ベンゼン環であることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)が、ベンゼン環を有することで、感光性樹脂組成物の透明性がより高くなり、感光性樹脂組成物は優れた解像性を有する。カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、及びアントラセン骨格からなる群から選ばれる少なくとも一種の多環芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことがより好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A)を含有する感光性樹脂組成物の透明性が更に高くなり、感光性樹脂組成物はより優れた解像性を有する。カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビフェニル骨格及びビスフェノールフルオレン骨格のうちの少なくとも一方を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことが更に好ましく、ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことが特に好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A)を含有する感光性樹脂組成物の硬化物における誘電正接をより低減することができる。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、下記式(1)で示され、式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンであるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)を含むカルボン酸(a2)との反応物である中間体と、酸無水物(a3)との反応物であるカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂(A1)という)を含むことが好ましい。感光性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有する場合、感光性樹脂組成物の透明性が更に向上する。
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)に由来する芳香環を有する。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)を含むカルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基を有する。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)を含むカルボン酸(a2)とを反応させ、それにより得られた中間体と、酸無水物(a3)とを反応させることで合成される。
式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンである。すなわち、式(1)におけるR1〜R8の各々は、水素でもよいが、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンでもよい。芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有樹脂(A1)の物性に悪影響は与えられず、むしろ置換されることでカルボキシル基含有樹脂(A1)を含む感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性或いは難燃性が向上する場合もあるからである。
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エポキシ化合物(a1)に由来する式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有することで、感光性樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性及び絶縁性を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)が酸無水物(a3)に由来するカルボキシル基を有することで、感光性樹脂組成物に優れた現像性を付与できる。
カルボキシル基含有樹脂(A1)について、より具体的に説明する。カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成するためには、まず式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基の少なくとも一部と、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)を含むカルボン酸(a2)とを反応させることで、中間体を合成する。中間体の合成は、第一反応と規定される。中間体は、エポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2−1)を含むカルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた二級の水酸基を有する。次に、中間体中の二級の水酸基と、酸無水物(a3)とを反応させる。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成できる。中間体と酸無水物(a3)との反応は、第二反応と規定される。酸無水物(a3)は、酸一無水物及び酸二無水物を含みうる。酸一無水物とは、一分子内における二つのカルボキシル基が脱水縮合した、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸二無水物とは、一分子内における四つのカルボキシル基が脱水縮合した、酸無水物基を二つ有する化合物である。
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、中間体中の未反応の成分を含んでいてもよい。また、酸無水物(a3)が酸一無水物及び酸二無水物を含む場合は、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、中間体中の成分と酸一無水物中の成分と酸二無水物中の成分との反応物のほか、中間体中の成分と酸一無水物中の成分との反応物、及び中間体中の成分と酸二無水物中の成分の反応物のうち、いずれか一方又は両方を含有してもよい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、これらのような構造の異なる複数の化合物を含む混合物であってよい。
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)に由来するエチレン性不飽和基を有することで光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)は感光性樹脂組成物に感光性、具体的には紫外線硬化性、を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸無水物(a3)に由来するカルボキシル基を有することで、感光性樹脂組成物に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量は700〜10000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が700以上であると、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性を向上できるとともに、誘電正接を低減することができる。また、重量平均分子量が10000以下であると、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。重量平均分子量は、900〜8000の範囲内であることが更に好ましく、1000〜5000の範囲内であることが特に好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の多分散度が1.0〜4.8の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される硬化物の良好な絶縁性を確保しながら、感光性樹脂組成物に優れた現像性を付与できる。カルボキシル基含有樹脂(A1)の多分散度が1.1〜4.0であることがより好ましく、1.2〜2.8であることが更に好ましい。
上記のようなカルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量及び分子量分布は、カルボキシル基含有樹脂(A1)が、中間体中の未反応の成分、中間体中の成分と酸一無水物中の成分と酸二無水物中の成分との反応物、中間体中の成分と酸一無水物中の成分との反応物、中間体中の成分と酸二無水物中の成分の反応物といった、多様な成分を適度に含有する混合物であることで、達成できる。より具体的には、例えばエポキシ化合物(a1)の平均分子量、エポキシ化合物(a1)に対する酸一無水物の量、エポキシ化合物(a1)に対する酸二無水物の量といったパラメータを制御することで、達成できる。
なお、多分散度は、カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値(Mw/Mn)である。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の固形分酸価は60〜140mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の現像性が特に向上する。酸価が80〜135mgKOH/gの範囲内であればより好ましく、酸価が90〜130mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量は、酸二無水物の架橋によって調整されうる。この場合、酸価と分子量とが調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。すなわち、酸無水物(a3)中に含まれる酸二無水物の量を制御することで、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量及び酸価を容易に調整できる。なお、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる次の条件での測定結果から算出される。
GPC装置:昭和電工社製 SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF−800P,KF−005,KF−003,KF−001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の原料、並びにカルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件について詳しく説明する。
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(2)に示す構造を有する。式(2)中のnは、例えば0〜20の範囲内の整数である。カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量を適切に制御するためには、nの平均は0〜1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0〜1の範囲内であれば、酸無水物(a3)が酸二無水物を含有する場合でも、過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。
カルボン酸(a2)は、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)を含む。カルボン酸(a2)は、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)のみを含んでいてもよい。あるいは、カルボン酸(a2)は、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)以外のカルボン酸を含んでいてもよい。
不飽和基含有カルボン酸(a2−1)は、例えばエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。好ましくは、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)がアクリル酸を含有する。
カルボン酸(a2)は、多塩基酸(a2−2)を含んでもよい。多塩基酸(a2−2)は、1分子内において2つ以上の水素原子が金属原子と置換可能な酸である。多塩基酸(a2−2)は、カルボキシル基を2つ以上有することが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)及び多塩基酸(a2−2)の両方と反応する。エポキシ化合物(a1)の2つの分子中に存在するエポキシ基を多塩基酸(a2−1)が架橋することで、分子量の増大が得られる。それにより、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性を向上できると共に、誘電正接を低減することができる。
多塩基酸(a2−2)は、ジカルボン酸を含むことが好ましい。例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。好ましくは、多塩基酸(a2−2)が4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸を含有する。
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させるに当たっては、公知の方法が採用されうる。例えばエポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にカルボン酸(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の温度で反応させることで、中間体を得ることができる。溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。熱重合禁止剤は例えばハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。触媒は例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基とカルボン酸(a2)との開環付加反応が特に促進され、95%以上、或いは97%以上、或いはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁性が向上する。
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対するカルボン酸(a2)の量は0.5〜1.2モルの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の優れた感光性と安定性が得られる。同様の観点から、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2−1)の量が0.5〜1.2モルの範囲内であることが好ましい。あるいは、カルボン酸(a2)が、不飽和基含有カルボン酸(a2−1)以外のカルボン酸を含む場合には、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2−1)の量が0.5〜0.95モルの範囲内であってもよい。また、カルボン酸(a2)が、多塩基酸(a2−1)を含む場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する多塩基酸(a2−1)の量は0.025〜0.25モルの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の優れた感光性と安定性が得られる。
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、不飽和基の付加重合反応を抑制して、中間体の分子量の増大及び中間体の溶液のゲル化を抑制できる。また、最終生成物であるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な着色を抑制できる。
このようにして得られる中間体は、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基とカルボン酸(a2)におけるカルボキシル基とが反応することで生成した水酸基を備える。
酸無水物(a3)は酸一無水物を含むことが好ましい。酸一無水物は、酸無水物基を一つ有する化合物である。
酸一無水物は、ジカルボン酸の無水物を含有できる。酸一無水物は、例えば1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物、及びメチルヘキサヒドロフタル酸無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。特に酸一無水物が1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性を向上できる。酸一無水物全体に対して、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸は20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、40〜100モル%の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。
酸無水物(a3)は酸二無水物を含むことが好ましい。酸二無水物は、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物は、テトラカルボン酸の無水物を含有できる。酸二無水物は、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト〔1,2−c〕フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。酸二無水物は、芳香環を有する酸二無水物を含有することが好ましい。特に酸二無水物が3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性を向上できる。また、感光性樹脂組成物の透明性が向上し、それに伴い解像性が向上する。酸二無水物全体に対して、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、40〜100モル%の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。
中間体と酸無水物(a3)とを反応させるに当たっては、公知の方法が採用されうる。例えば中間体の溶剤溶液に酸無水物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の温度で反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A1)を得ることができる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、中間体の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、中間体と、酸無水物(a3)とを反応させることが好ましい。この場合、中間体における二級の水酸基と酸無水物(a3)との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、或いはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁性が更に向上する。
中間体と、酸無水物(a3)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な分子量増大が抑制されることで、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、芳香環を有し、光重合性を有さないカルボキシル基含有樹脂を含んでもよい。芳香環を有し、光重合性を有さないカルボキシル基含有樹脂は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート等の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等と二塩基酸無水物との反応物も含有できる。エチレン性不飽和単量体は、直鎖又は分岐の脂肪族或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)のみを含んでもよく、カルボキシル基含有樹脂(A1)とカルボキシル基含有樹脂(A1)以外のカルボキシル基含有樹脂とを含んでもよく、カルボキシル基含有樹脂(A1)以外のカルボキシル基含有樹脂のみを含んでもよい。感光性樹脂組成物の高い透明性を得る観点、及び感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低減する観点から、カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を30質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、100質量%含むことが更に好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分量に対して5〜85質量%の範囲内であることが好ましく、10〜75質量%の範囲内であることがより好ましく、26〜60質量%の範囲内であることが更に好ましく、30〜45質量%の範囲内であることが特に好ましい。また、感光性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分量に対して5〜85質量%の範囲内であることが好ましく、10〜75質量%の範囲内であることがより好ましく、26〜60質量%の範囲内であることが更に好ましく、30〜45質量%の範囲内であることが特に好ましい。なお、固形分量とは、感光性樹脂組成物から溶剤などの揮発性成分を除いた、全成分の合計量のことである。
カルボキシル基含有樹脂(A)の固形分酸価は、40〜160mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の安定性が特に向上する。酸価が60〜140mgKOH/gの範囲内であればより好ましく、酸価が80〜135mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましく、酸価が90〜130mgKOH/gの範囲内であれば特に好ましい。
有機フィラー(B)は、カルボキシル基を有する。有機フィラー(B)のカルボキシル基は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の重合性不飽和二重結合を有するカルボン酸モノマーを重合あるいは架橋させることで得られる。有機フィラー(B)は、感光性樹脂組成物の硬化物に高い銅めっき密着性を付与することができる。さらに、有機フィラー(B)は、感光性樹脂組成物のチクソ性を高め、安定性(特に保存安定性)を向上させる。また、有機フィラー(B)は、カルボキシル基を有するため、感光性樹脂組成物の硬化物の現像性を向上させると共に、感光性樹脂組成物が結晶性エポキシ化合物を含む場合には、結晶性エポキシ化合物の相溶性を向上させて結晶化を防ぐことができる。有機フィラー(B)のカルボキシル基含有量は特に制限されないが、有機フィラー(B)の酸価が、酸−塩基滴定による酸価で1〜60mgKOH/gであることが好ましい。酸価が1mgKOH/gより小さいと感光性樹脂組成物の安定性及び硬化物の現像性が低下するおそれがある。酸価が60mgKOH/gより大きいと硬化物の耐湿信頼性が低下するおそれがある。有機フィラー(B)の酸価は3〜40mgKOH/gであることがより好ましい。
有機フィラー(B)は、水酸基を有することも好ましい。有機フィラー(B)が、水酸基を有することで、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)の分散性が向上する。
有機フィラー(B)の平均一次粒子径は、1μm以下である。有機フィラー(B)の平均一次粒子径が1μm以下であることで、感光性樹脂組成物のチクソ性が効率よく高まる。そのため、感光性樹脂組成物の安定性が更に向上する。有機フィラー(E1)の平均一次粒子径は、その下限は特に限定されないが、例えば、0.001μm以上であることが好ましい。有機フィラー(B)の平均一次粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により、D50として測定される。有機フィラー(B)の平均一次粒子径は、0.1μm以下であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の安定性が更に向上すると共に、露光時の散乱が抑えられるため解像性が更に向上する。
有機フィラー(B)は、感光性樹脂組成物中において、粒子径10μm以下の状態で含まれていることが好ましい。有機フィラー(B)は、感光性樹脂組成物中において凝集することで二次粒子を含有することがある。その場合、有機フィラー(B)の感光性樹脂組成物中における粒子径は、二次粒子を含む粒子の粒子径を意味する。感光性樹脂組成物中における有機フィラー(B)の粒子径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置、あるいは光学顕微鏡を用いて測定することができる。有機フィラー(B)が、感光性樹脂組成物中において粒子径10μm以下の状態で含まれていると、感光性樹脂組成物の安定性が更に向上すると共に、露光時の散乱が抑えられるため解像性が更に向上する。有機フィラー(B)は、感光性樹脂組成物中において、粒子径5μm以下の状態で含まれていることがより好ましく、粒子径1μm以下の状態で含まれていることが更に好ましく、0.5μm以下の状態で含まれていることが特に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の安定性が更に向上すると共に、露光時の散乱が抑えられるため解像性が更に向上する。感光性樹脂組成物中における有機フィラー(B)の粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば0.01μm以上であってよい。
有機フィラー(B)は、ゴム成分を含むことが好ましい。ゴム成分は、感光性樹脂組成物の硬化物に柔軟性を付与できる。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、ゴム成分を含有していても高い解像性を有することができる。ゴム成分は、樹脂により構成されうる。ゴム成分は、架橋アクリルゴム、架橋NBR、架橋MBS及び架橋SBRからなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物は高い透明性を有することができ、解像性を向上させることができる。また、ゴム成分により効果的に感光性樹脂組成物の硬化物に柔軟性を付与することができる。NBRは、一般的に、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、ニトリルゴムに分類される。MBSは、一般的に、メチルメタアクリレート、ブタジエン、スチレンの3成分で構成される共重合体であり、ブタジエン系ゴムに分類される。SBRは、一般的に、スチレンとブタジエンとの共重合体であり、スチレンゴムに分類される。有機フィラー(B)の具体例として、JSR株式会社製の品番XER−91−MEKが挙げられる。この有機フィラーは、平均一次粒子径0.07μmのカルボキシル基を有する架橋ゴム(NBR)であり、架橋ゴムの含有割合15重量%のメチルエチルケトン分散液で提供され、その酸価が10.0mgKOH/gである。このように、有機フィラー(B)は、分散液で配合されてもよい。ゴム成分は、分散液で配合されうる。また、有機フィラー(B)の具体例として、上記の他に、JSR株式会社製の品番XER−32、XER−92等が挙げられる。また、カルボキシル基及び水酸基を有する架橋ゴム(SBR)の分散液としてJSR株式会社製の品番XSK−500等が挙げられる。
有機フィラー(B)は、ゴム成分以外の粒子成分を含有してもよい。この場合、有機フィラー(B)は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂微粒子、及びカルボキシル基を有するセルロース微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子成分を含有することができる。カルボキシル基を有するアクリル樹脂微粒子は、非架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子及び架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子成分を含有することができる。非架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子の具体例として、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製の品番FS−201(平均一次粒子径0.5μm)が挙げられる。架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子の具体例として、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製の、品番MG−351(平均一次粒子径1.0μm)、及び品番BGK−001(平均一次粒子径1.0μm)が挙げられる。また、有機フィラー(B)は、上記の、ゴム成分、アクリル樹脂微粒子、及びセルロース微粒子から選択される粒子成分以外の粒子成分を含有してもよい。この場合、有機フィラー(B)は、カルボキシル基を有する粒子成分を含有することができる。すなわち、このカルボキシル基を有する粒子成分は、ゴム成分、アクリル樹脂微粒子、及びセルロース微粒子から選択される粒子成分と異なっていてよい。
感光性樹脂組成物は、有機フィラー(B)以外の有機フィラーを更に含有してもよい。有機フィラー(B)以外の有機フィラーは、カルボキシル基を有さなくてよく、平均一次粒子径が1μmより大きくてよい。感光性樹脂組成物が、有機フィラー(B)と有機フィラー(B)以外の有機フィラーとを含有する場合、有機フィラー(B)と有機フィラー(B)以外の有機フィラーとの含有量の合計に対して、有機フィラー(B)の含有量が、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
有機フィラー(B)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量100質量部に対して、1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量100質量部に対して、有機フィラー(B)の含有量が1質量部以上であることで、感光性樹脂組成物の硬化物の良好な銅めっき密着性を得ることができる。また、有機フィラー(B)の含有量が50質量部以下であることで、感光性樹脂組成物の優れた解像性を得ることができる。また、有機フィラー(B)の含有量が上記の範囲となることで、感光性樹脂組成物のチクソ性が高まり、安定性が向上する。有機フィラー(B)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量100質量部に対して、5〜30質量部の範囲内であることがより好ましく、10〜20質量部の範囲内であることが更に好ましい。
カップリング剤(C)は、ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有する。カップリング剤(C)は、更に二つ以上の官能基を有し、官能基は、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種の基を含む。カップリング剤(C)は、アルコキシ基を二つ以上有してもよく、アシルオキシ基を二つ以上有してもよく、アルコキシドを二つ以上有してもよい。また、カップリング剤(C)は、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる異なる官能基を二つ以上有してもよい。カップリング剤(C)は、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)及びシリカフィラー(D)の分散性を高めるため、感光性樹脂組成物の透明性及びチクソ性を向上させることができ、これにより、感光性樹脂組成物は優れた解像性及び安定性(特に保存安定性)を有する。アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種の基を含む二つ以上の官能基は、ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子に直接結合していることが好ましい。
カップリング剤(C)がケイ素原子を有する場合、カップリング剤(C)の例は、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N,N−ジメチル−3−(トリメトキシシリル)プロピルアミン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルクロロジメチルシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、シクロヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、1−ナフチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、11−ペンタフルオロフェノキシウンデシルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、11−アジドウンデシルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、及びビニルトリアセトキシシランを含む。
カップリング剤(C)がアルミニウム原子を有する場合、カップリング剤(C)の例は、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、及びアルミニウムトリスエチルアセトアセテートを含む。
カップリング剤(C)がチタン原子を有する場合、カップリング剤(C)の例は、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェートチタネート)、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、及びビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートを含む。
カップリング剤(C)がジルコニウム原子を有する場合、カップリング剤(C)の例は、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド及びジルコニウムテトラノルマルブトキシドを含む。
カップリング剤(C)は、上記成分からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
カップリング剤(C)は、ケイ素原子を有することが好ましい。すなわち、カップリング剤(C)は、シランカップリング剤であることが好ましい。カップリング剤(C)が、ケイ素原子を有することで、シリカフィラー(D)との反応性が特に高まり、感光性樹脂組成物におけるシリカフィラー(D)の分散性が更に効率よく高まる。そのため、感光性樹脂組成物の透明性及び安定性が更に向上する。また、カップリング剤(C)が、ケイ素原子を有することで、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点を更に高めると共に、熱膨張係数を更に低減できる。
カップリング剤(C)は、メトキシ基、エトキシ基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有することが好ましい。メトキシ基及びエトキシ基は、アルコキシ基に分類される。また、アセトキシ基は、アシルオキシ基に分類される。カップリング剤(C)は、メトキシ基のみを有してもよく、エトキシ基のみを有してもよく、アセトキシ基のみを有してもよい。また、カップリング剤(C)は、メトキシ基、エトキシ基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる異なる官能基を二つ以上有してもよい。カップリング剤(C)が、メトキシ基、エトキシ基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有することで、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂(A)、有機フィラー(B)及びシリカフィラー(D)とカップリング剤(C)との反応性が向上し、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)及びシリカフィラー(D)の凝集がより生じにくくなる。そのため、感光性樹脂組成物の透明性及び安定性が更に向上する。
カップリング剤(C)は、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる官能基を二つから四つ有することが好ましい。カップリング剤(C)は、アルコキシ基を二つから四つ有してもよく、アシルオキシ基を二つから四つ有してもよく、アルコキシドを二つから四つ有してもよい。たとえば、カップリング剤(C)は、メトキシ基を二つから四つ有してもよく、エトキシ基を二つから四つ有してもよく、アセトキシ基を二つから四つ有してもよい。また、カップリング剤(C)は、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる異なる官能基を二つから四つ有してもよい。カップリング剤(C)が、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる官能基を二つから四つ有することで、有機フィラー(B)とカップリング剤(C)との反応、あるいはカップリング剤(C)とシリカフィラー(D)との反応による過剰な架橋反応を抑制することができ、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)及びシリカフィラー(D)の分散性を向上させると同時に、ゲル化を抑制することができる。
カップリング剤(C)は、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基、及びスルフィド基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有することが好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基、及び有機フィラー(B)に含まれるカルボキシル基と反応することができ、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)の分散性が更に効率よく高まる。そのため、感光性樹脂組成物の透明性及び安定性が更に向上する。
カップリング剤(C)は、アミノアルキル基を有することでアミノ基を有してもよい。また、カップリング剤(C)は、グリシドキシ基を有することでエポキシ基を有してもよい。カップリング剤(C)がビニル基を含有する場合、ビニル基は例えば、ケイ素原子に直接結合する。カップリング剤(C)がアミノ基、エポキシ基、又はビニル基を有することで、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基、及び有機フィラー(B)に含まれるカルボキシル基との反応性が高まり、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)の分散性が更に効率よく高まる。カップリング剤(C)がエポキシ基又はビニル基を有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の絶縁性が高まり、安定性が更に向上する。
感光性樹脂組成物は、カップリング剤(C)以外のカップリング剤を更に含有してもよい。カップリング剤(C)以外のカップリング剤は、ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有さなくてもよい。カップリング剤(C)以外のカップリング剤は、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種の基を含む官能基を二つ以上有さなくてもよい。ただし、有機フィラー(B)及びシリカフィラー(D)の分散性を効率よく得る観点、また感光性樹脂組成物の透明性及び安定性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物は、カップリング剤(C)以外のカップリング剤を含まなくてよい。感光性樹脂組成物が、カップリング剤(C)とカップリング剤(C)以外のカップリング剤とを含有する場合、カップリング剤(C)とカップリング剤(C)以外のカップリング剤との含有量の合計に対して、カップリング剤(C)の含有量が、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上含有であることがより好ましい。この場合、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)及びシリカフィラー(D)の良好な分散性を得ることができる。
カップリング剤(C)の含有量は、有機フィラー(B)の含有量とシリカフィラー(D)の含有量との合計100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましい。カップリング剤(C)の含有量がこの範囲となることで、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)及びシリカフィラー(D)の凝集を防ぎ、分散性が向上する。カップリング剤(C)の含有量は、有機フィラー(B)の含有量とシリカフィラー(D)の含有量との合計100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲内であることがより好ましい。
シリカフィラー(D)は、平均粒子径が1〜150nmの範囲内である。シリカフィラー(D)の平均粒子径がこの範囲内であることで、有機フィラー(B)を含有する感光性樹脂組成物の透明性が効率よく高まる。そのため、感光性樹脂組成物の解像性が更に向上する。シリカフィラー(D)の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定される。シリカフィラー(D)は、平均粒子径が1〜60nmの範囲内であることがより好ましく、1〜30nmの範囲内であることが更に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の透明性及び解像性が更に向上する。
シリカフィラー(D)は、シリカゾル由来のシリカ粒子を含むことが好ましい。この場合、有機フィラー(B)を含有する感光性樹脂組成物の透明性が更に高くなり、感光性樹脂組成物の解像性が更に向上する。シリカゾルの例は、球状シリカゾル及び鎖状シリカゾルを含む。シリカフィラー(D)の具体例として、日産化学工業株式会社製のオルガノシリカゾル:品番MA−ST−M、MA−ST−L、IPA−ST,IPA−ST−ZL、IPA−ST−UP、EG−ST、NPC−ST−30、PGM−ST、DMAC−ST、MEK−ST−40、MIBK−ST、MIBK−ST−L、CHO−ST−M、EAC−ST、TOL−ST、MEK−AC−4130Y、MEK−AC−5140Z、PGM−AC−2140Y、PGM−AC−4130Y、MIBK−AC−2140Z、MIKB−SD−L、MEK−EC−6150P、MEK−EC−7150P、EP−F2130Y、EP−F6140P、EP−F7150P、PMA−ST、MEK−EC−2130Y、MEK−AC−2140Z、MEK−ST−L、MEK−ST−ZL、MEK−ST−UP;Hanse−Chemie社製のNANOCRYL:品番XP0396、XP0596、XP0733、XP0746、XP0765、XP0768、XP0953、XP0954、XP1045;Hanse−Chemie社製のNANOPOX:品番XP0516、XP0525、XP0314等が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、シリカフィラー(D)以外の無機フィラーを更に含有してもよい。シリカフィラー(D)以外の無機フィラーは、平均粒子径が1〜150nmの範囲内でないシリカフィラーを含んでもよく、シリカフィラー以外の無機フィラーを含んでもよい。シリカフィラー(D)以外の無機フィラーの例は、硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び酸化チタンを含む。例えば、感光性樹脂組成物が酸化チタン、酸化亜鉛等の白色の材料を含有する場合、感光性樹脂組成物及びその硬化物を白色化することができる。ただし、感光性樹脂組成物の良好な透明性及び解像性を得る観点から、感光性樹脂組成物は、シリカフィラー(D)以外の無機フィラーを含有しなくてよい。感光性樹脂組成物が、シリカフィラー(D)とシリカフィラー(D)以外の無機フィラーとを含有する場合、シリカフィラー(D)とシリカフィラー(D)以外の無機フィラーとの含有量の合計に対して、シリカフィラー(D)の含有量が、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上含有であることがより好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な透明性及び解像性を得ることができる。
シリカフィラー(D)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量100質量部に対して、5〜200質量部の範囲内であることが好ましい。シリカフィラー(D)の含有量が5質量部以上であることで、感光性樹脂組成物の透明性がより高まる。また、シリカフィラー(D)の含有量が200質量部以下であることで、感光性樹脂組成物は更に優れた解像性を有しうる。また、シリカフィラー(D)の含有量がこの範囲内となることで、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点を更に高めると共に、熱膨張係数及び誘電正接を更に低減させることができる。さらに、感光性樹脂組成物の硬化物をデスミア処理した後の、硬化物の表面粗さをより小さくすることができる。シリカフィラー(D)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量100質量部に対して20〜150質量部の範囲内であることがより好ましく、40〜100質量部であることが特に好ましい。
感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(E)を更に含有することが好ましい。不飽和化合物(E)は、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与することができる。不飽和化合物(E)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
不飽和化合物(E)は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。この場合、不飽和化合物(E)は、感光性樹脂組成物中で高い溶解性を有するため、感光性樹脂組成物は優れた透明性及び安定性を有することができる。不飽和化合物(E)は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接を更に低減させることができる。
不飽和化合物(E)が、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を三つ有する化合物を含むことも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の解像性が更に向上すると共に、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート及びε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
不飽和化合物(E)が、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。
不飽和化合物(E)は、プレポリマーを含んでもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
感光性樹脂組成物が不飽和化合物(E)を含有する場合、不飽和化合物(E)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量に対して、1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜45質量%の範囲内であることがより好ましく、21〜40質量%の範囲内であることが更に好ましい。
感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(F)を更に含有することが好ましい。光重合開始剤(F)は、例えばアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む。すなわち、感光性樹脂組成物は例えばアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する。この場合、感光性樹脂組成物を露光する場合に感光性樹脂組成物に高い感光性を付与できる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁性が更に向上する。
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分を含む。特にアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含むことが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドのみを含んでもよい。
光重合開始剤(F)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤に加えてヒドロキシケトン系光重合開始剤を含むことが好ましい。すなわち感光性樹脂組成物がヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有することが好ましい。この場合、ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有しない場合と比べて、感光性樹脂組成物に更に高い感光性を付与できる。これにより、感光性樹脂組成物を露光によって硬化させる場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の表面から深部に亘って十分に硬化させることが可能となる。ヒドロキシケトン系光重合開始の例は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを含む。
感光性樹脂組成物がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有する場合、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とヒドロキシケトン系光重合開始剤との質量比は、1:0.01〜1:10の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の表面付近における硬化性と深部における硬化性とを、バランス良く向上させることができる。
光重合開始剤(F)がビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含有することも好ましい。すなわち、感光性樹脂組成物がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含有し、或いはアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ヒドロキシケトン系光重合開始剤及びビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を部分的に露光してから現像する場合、露光されない部分の硬化が抑制されることで、解像性が特に高くなる。このため感光性樹脂組成物の硬化物で非常に微細なパターンを形成することが可能となる。特に、感光性樹脂組成物から多層プリント配線板の層間絶縁層を作製すると共にこの層間絶縁層にスルーホールのための小径の穴をフォトリソグラフィー法で設ける場合(図1参照)、小径の穴を精密且つ容易に形成することが可能となる。
感光性樹脂組成物がビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する場合、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの含有量は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤に対して0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの含有量が0.5質量%以上であると、解像性が特に高くなる。また、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの含有量が20質量%以下であると、感光性樹脂組成物の硬化物の電気絶縁性をビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが阻害しにくい。
光重合開始剤(F)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量に対して0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、1〜25質量%の範囲内であることがより好ましい。
感光性樹脂組成物は、エポキシ化合物(G)を更に含有することが好ましい。エポキシ化合物(G)は、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。エポキシ化合物(G)は、結晶性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。結晶性エポキシ樹脂は、融点を有するエポキシ樹脂である。結晶性エポキシ樹脂は、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。さらに、結晶性エポキシ樹脂は、硬化物の耐熱性及び現像性を向上させる。
結晶性エポキシ樹脂は、例えば、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名YX−4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR−1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として式(2)に示す構造を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される一種以上の成分を含むことが好ましい。
結晶性エポキシ樹脂は、一分子中に二つのエポキシ基を有していてもよい。この場合、温度変化が繰り返される中で、硬化物にクラックを生じ難くさせることができる。
結晶性エポキシ樹脂は150〜300g/eqのエポキシ当量を有することが好ましい。このエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する結晶性エポキシ樹脂のグラム重量である。
結晶性エポキシ樹脂の融点としては、例えば70〜180℃が挙げられる。特に結晶性エポキシ樹脂が、融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。融点が110℃以下の結晶性エポキシ樹脂は、例えばビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、及びビスフェノール型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学製の品番YSLV−80XY)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として式(2)に示す構造を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含む。
エポキシ化合物(G)は、結晶性エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物を含有してもよい。結晶性エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物には、非晶性エポキシ樹脂が含まれる。非晶性エポキシ樹脂は、融点を有さないエポキシ樹脂である。非晶性エポキシ樹脂は、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。非晶性エポキシ樹脂は、一分子中に少なくとも二つのエポキシ基を有することが好ましい。
非晶性エポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX−156)、並びにゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX−136)からなる群から選択される一種以上の成分を含むことが好ましい。
エポキシ化合物(G)は、リン含有エポキシ樹脂を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂としては、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−9726、及びEPICLON EXA−9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX−305等が挙げられる。
エポキシ化合物(G)は、結晶性エポキシ樹脂のみ、又は結晶性エポキシ樹脂と非晶性エポキシ樹脂とを含むことが好ましい。エポキシ化合物(G)は、結晶性エポキシ樹脂を10質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましく、50質量%含むことが更に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性を向上することができ、感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性及び絶縁性を特に向上させることができる。
エポキシ化合物(G)の含有量は、エポキシ化合物(G)に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.7〜2.5の範囲内であることが好ましく、0.7〜2.3の範囲内であることがより好ましく、0.7〜2.0の範囲内であることが更に好ましい。また、エポキシ化合物(G)が結晶性エポキシ樹脂を含む場合、結晶性エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.7〜2.5の範囲内であることが好ましく、0.7〜2.3の範囲内であることがより好ましく、0.7〜2.0の範囲内であることが更に好ましい。
感光性樹脂組成物はメラミンを含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物と銅などの金属との間の密着性が高くなる。このため、感光性樹脂組成物が、プリント配線板用の絶縁材料として特に適する。また、感光性樹脂組成物の硬化物の耐メッキ性、すなわち無電解ニッケル/金メッキ処理時の白化耐性が向上する。
感光性樹脂組成物がメラミンを含有する場合、メラミンはカルボキシル基含有樹脂(A)の含有量に対して、0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲内であることがより好ましい。
感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、感光性樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含む。
感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の量は、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に速やかに有機溶剤が揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、感光性樹脂組成物全体に対して、有機溶剤が0〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜60質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、感光性樹脂組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
感光性樹脂組成物は、更に公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えば感光性樹脂組成物は、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;並びに2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。感光性樹脂組成物が、光重合開始剤(C)と共に、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤や増感剤等を含有してもよい。感光性樹脂組成物が、必要に応じて、可視光露光用の光重合開始剤及び近赤外線露光用の光重合開始剤のうちの少なくとも一種を含有してもよい。感光性樹脂組成物が、光重合開始剤(F)と共に、レーザ露光法用増感剤である7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン誘導体、カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
感光性樹脂組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
感光性樹脂組成物がエポキシ化合物(G)を含有する場合、感光性樹脂組成物は、エポキシ化合物(G)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含む。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、メラミン以外の密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、並びに2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体が、挙げられる。
感光性樹脂組成物は、硬化促進剤;着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有してもよい。
感光性樹脂組成物中のアミン化合物の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層の電気絶縁性が損なわれにくい。特にカルボキシル基含有樹脂(A)の含有量に対してアミン化合物が8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
上記のような感光性樹脂組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、感光性樹脂組成物が調製されうる。感光性樹脂組成物の原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、感光性樹脂組成物を調製してもよい。また、混練によらず、原料の攪拌混合、または攪拌溶解等により、感光性樹脂組成物を調整してもよい。
保存安定性等を考慮して、感光性樹脂組成物の成分の一部を混合することで第一剤を調製し、成分の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、感光性樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。この場合、例えば、感光性樹脂組成物の成分のうち一部を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、感光性樹脂組成物の成分のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合して混合液を調製し、この混合液を硬化させて硬化物を得ることができる。
本実施形態による感光性樹脂組成物は、プリント配線板用の電気絶縁性材料として適している。特に感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の、電気絶縁性の層を形成するために適している。
以下に、本実施形態による感光性樹脂組成物から形成された層間絶縁層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を、図1Aから図1Eを参照して説明する。本方法では、層間絶縁層にフォトリソグラフィー法でスルーホールを形成する。
まず、図1Aに示すようにコア材1を用意する。コア材1は、例えば少なくとも一つの絶縁層2と少なくとも一つの導体配線3とを備える。コア材1の一面上に設けられている導体配線3を、以下、第一の導体配線3という。図1Bに示すように、コア材1の第一の導体配線3が設けられている面上に、感光性樹脂組成物から皮膜4を形成する。皮膜4の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。
塗布法では、例えばコア材1上に感光性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。感光性樹脂組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、感光性樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60〜120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、皮膜4を得ることができる。
ドライフィルム法では、まずポリエステル製などの適宜の支持体上に感光性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に感光性樹脂組成物を含むドライフィルムを形成する。これにより、ドライフィルムと、ドライフィルムを支持する支持体とを備える支持体付きドライフィルムが得られる。この支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、ドライフィルムとコア材1に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上からコア材1上へ転写する。これにより、コア材1上に、ドライフィルムからなる皮膜4が設けられる。
皮膜4を露光することで図1Cに示すように部分的に光硬化させる。そのために、例えばネガマスクを皮膜4に当てがってから、ネガマスクを介して皮膜4に紫外線を照射する。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部はスルーホール10の位置と合致する位置に設けられる。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。
なお、露光方法として、ネガマスクを用いる方法以外の方法が採用されてもよい。例えば光源から発せられる紫外線を皮膜4上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で皮膜を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。
また、ドライフィルム法では、支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、支持体を剥離することなく、支持体を透過させて紫外線をドライフィルムからなる皮膜4に照射することで皮膜4を露光し、続いて現像処理前に皮膜4から支持体を剥離してもよい。
続いて、皮膜4に現像処理を施すことで、図1Cに示す皮膜4の露光されていない部分5を除去し、これにより、図1Dに示すようにスルーホール10が形成される位置に穴6を設ける。現像処理では、感光性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
続いて、皮膜4を加熱することで熱硬化させる。加熱の条件は、例えば加熱温度120〜200℃の範囲内、加熱時間30〜150分間の範囲内である。このようにして皮膜4を熱硬化させると、層間絶縁層7の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜4に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜4の光硬化を更に進行させることができる。
層間絶縁層7の厚みは、特に限定されないが、10〜50μmの範囲内であってよい。
以上により、コア材1上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層間絶縁層7が設けられる。この層間絶縁層7上に、アディティブ法などの公知の方法で、第二の導体配線8及びホールめっき9を設けることができる。これにより、図1Eに示すように、第一の導体配線3、第二の導体配線8、第一の導体配線3と第二の導体配線8との間に介在する層間絶縁層7、並びに第一の導体配線3と第二の導体配線8とを電気的に接続するスルーホール10を備えるプリント配線板11が得られる。なお、図1Eにおいて、ホールめっき9は穴6の内面を覆う筒状の形状を有するが、穴6の内側全体にホールめっき9が充填されていてもよい。
本実施形態による感光性樹脂組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
まず、コア材を用意する。コア材は、例えば少なくとも一つの絶縁層と少なくとも一つの導体配線とを備える。コア材の導体配線が設けられている面上に、感光性樹脂組成物から皮膜を形成する。皮膜の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。塗布法とドライフィルム法としては、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。皮膜を露光することで部分的に光硬化させる。露光方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。続いて、皮膜に現像処理を施すことで、皮膜の露光されていない部分を除去し、これにより、コア材上に、皮膜の露光された部分が残存する。続いて、コア材上の皮膜を加熱することで熱硬化させる。現像方法及び加熱方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜の光硬化を更に進行させることができる。
ソルダーレジスト層の厚みは、特に限定されないが、10〜50μmの範囲内であってよい。
以上により、コア材上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるソルダーレレジスト層が設けられる。これにより、絶縁層とその上の導体配線とを備えるコア材、並びにコア材における導体配線が設けられている面を部分的に覆うソルダーレジスト層を備える、プリント配線板が得られる。
(1)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の合成:
[合成例A−1]
合成例A−1の芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は次のように調製した。還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、式(2)で示され、式(2)中のR1〜R7がすべて水素であるビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量250g/eq)250質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート140質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン1.5質量部を加えて、混合物を調製した。この混合物を、フラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、115℃の温度で12時間加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8質量部、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート38.7質量部を投入し、エアバブリング下で攪拌しながら、115℃で6時間加熱し、さらに、80℃で1時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂A−1の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂A−1の重量平均分子量は3096、酸価は105mgKOH/gであった。
[合成例A−2]
合成例A−2の芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は次のように調整した。還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC−3000−H、エポキシ当量288g/eq)288質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン3質量部を加えて、混合物を調製した。この混合物を、フラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、115℃の温度で12時間加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に、テトラヒドロフタル酸無水物91.2質量部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート90質量部を投入し、エアバブリング下で攪拌しながら、90℃で4時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂A−2の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂A−2の重量平均分子量は8120、酸価は76mgKOH/gであった。
(2)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂の合成:
[合成例B−1]
合成例B−1の芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂は次のように調整した。還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、メタクリル酸77質量部、メチルメタクリレート123質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル370質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル5質量部を加えて、混合物を調製した。この混合物を、フラスコ内において、窒素気流下で、80℃の温度で5時間加熱し、重合反応を進行させた。これにより、濃度35%の共重合体溶液を得た。
続いて、フラスコ内の共重合体溶液に、ハイドロキノン0.1質量部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート50質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル47質量部、及びジメチルベンジルアミン0.8質量部を投入し、110℃で6時間加熱し、付加反応を進行させた。これにより、カルボキシル基含有樹脂B−1の38質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂B−1の重量平均分子量は61324、酸価は132mgKOH/gであった。
(3)芳香環を有するカルボキシル基非含有樹脂の合成:
[合成例B−2]
合成例B−2の芳香環を有するカルボキシル基非含有樹脂は次のように調整した。還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、式(2)で示され、式(2)中のR1〜R7がすべて水素であるビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量250g/eq)250質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート173質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン1.5質量部を加えて、混合物を調製した。この混合物を、フラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、115℃の温度で12時間加熱した。これにより、カルボキシル基非含有樹脂B−2の65質量%溶液を得た。
(4)感光性樹脂組成物の調製:
実施例1〜18及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物は次のように調製した。後掲の表に示す成分をフラスコ内で配合し、35℃の温度で2時間撹拌混合することで、感光性樹脂組成物を得た(表1〜表3参照)。感光性樹脂組成物は300メッシュのフィルターでろ過した後、更に穴径10μmのフィルターでろ過した。
なお、表中の配合量は、表記成分の固形分量の質量部を示す。また、表中には記載していないが、感光性樹脂組成物に希釈剤としてメチルエチルケトンを配合している。
表に示される成分の詳細は次の通りである。
・有機フィラーAの分散液:平均一次粒子径0.07μmのカルボキシル基を有する架橋ゴム(NBR)、JSR株式会社製、品番XER−91−MEK、架橋ゴムの含有割合15重量%のメチルエチルケトン分散液、酸価10.0mgKOH/g。
・有機フィラーBの分散液:平均一次粒子径0.07μmのカルボキシル基及び水酸基を有する架橋ゴム(SBR)、JSR株式会社製、品番XSK−500、架橋ゴムの含有割合15重量%のメチルエチルケトン分散液。
・カップリング剤A:テトラエトキシシラン。
・カップリング剤B:メチルトリメトキシシラン。
・カップリング剤C:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
・カップリング剤D:N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン。
・カップリング剤E:ビニルトリメトキシシラン。
・シリカフィラーA:日産化学工業株式会社製、品番PMA−ST、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散シリカゾル、固形分濃度30質量%、粒子径10〜15nm。
・シリカフィラーB:日産化学工業株式会社製、品番MEK−EC−2130Y、メチルエチルケトン分散シリカゾル、エポキシ樹脂との相溶性を高めたグレード、固形分濃度30質量%、粒子径10〜15nm。
・シリカフィラーC:日産化学工業株式会社製、品番MEK−AC−2140Z、メチルエチルケトン分散シリカゾル、アクリル樹脂との相溶性を高めたグレード、固形分濃度40質量%、粒子径10〜15nm。
・シリカフィラーD:日産化学工業株式会社製、品番MEK−ST−L、メチルエチルケトン分散シリカゾル、固形分濃度30質量%、粒子径40〜50nm。
・シリカフィラーE:日産化学工業株式会社製、品番MEK−ST−ZL、メチルエチルケトン分散シリカゾル、固形分濃度30質量%、粒子径70〜100nm。
・シリカフィラーF:日産化学工業株式会社製、品番MEK−ST−UP、メチルエチルケトン分散鎖状シリカゾル、固形分濃度20質量%、粒子径40〜100nm。
・シリカフィラーG:株式会社龍森製、品番イムシルA8、結晶性シリカ、粒子径2μm。
・不飽和化合物A:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート。
・不飽和化合物B:トリメチロールプロパントリアクリレート。
・不飽和化合物C:ジペンタエリストールペンタアクリレート及びジペンタエリストールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬株式会社製、品番KAYARADDPHA。
・光重合開始剤A:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASF社製、品番IrgacureTPO。
・光重合開始剤B:1−ヒドロキシ-シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製、品番Irgacure184。
・光重合開始剤C:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン。
・エポキシ化合物:ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製、品番YSLV−80XY、融点75〜85℃、エポキシ当量192g/eq。
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製、品番IRGANOX 1010。
・表面調整剤:DIC株式会社製、品番メガファックF−477。
(5)テストピースの作製
各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を用いて、次のようにテストピースを作製した。
感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、95℃で25分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み30μmのドライフィルムを形成した。
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR−4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/スペース幅が50μm/50μmであるくし型電極を形成し、これによりコア材を得た。このコア材の導体配線における厚み1μm程度の表層部分を、エッチング剤(メック株式会社製の有機酸系マイクロエッチング剤、品番CZ−8101)で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。このコア材の一面全面にドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、コア材上にドライフィルムからなる膜厚30μmの皮膜を形成した。この皮膜に、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上から、直径30μm、40μm、及び50μmの円形形状を含むパターンの非露光部を有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して皮膜に250mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。なお、露光後、現像前に、ドライフィルム(皮膜)からポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて皮膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射することで洗浄した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して、穴を形成した。続いて、皮膜を180℃で60分間加熱した後、皮膜に1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。これにより、コア材上に感光性樹脂組成物の硬化物(ドライフィルムの硬化物ともいえる)からなる層を形成した。これによりテストピースを得た。
(6)評価試験
(6−1)粒度分布
各実施例及び比較例について、300メッシュのフィルターでろ過した後の感光性樹脂組成物の粒度分布をマイクロトラック・ベル株式会社製のMT3300EXIIで計測した。実施例1〜18、比較例3、及び5では、感光性樹脂組成物のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置により、D50として測定される粒子径が1μm以下であり、最大粒子径が10μm以下であった。比較例1、2、4、及び6では、感光性樹脂組成物のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置により、D50として測定される粒子径が1μmより大きく、最大粒子径が10μmより大きかった。
(6−2)透明性
各実施例及び比較例について、感光性樹脂組成物を目視で観察し、その結果を次のように評価した。
A:濁りが観察されず、透明性が高い。
B:若干の濁りが観察されるが、透明性がある。
C:濁りが観察されるが、若干の透明性がある。
D:濁りが観察され、透明性がない。
(6−3)安定性
各実施例及び比較例について、感光性樹脂組成物を25℃で保存した後、感光性樹脂組成物を観察し、その結果を次のように評価した。
A:25℃で4週間保存した後、成分の分離は生じなかった。
B:25℃で3週間保存した後、成分の分離は生じなかったが、25℃で4週間保存した後、成分の分離が生じた。
C:25℃で2週間保存した後、成分の分離は生じなかったが、25℃で3週間保存した後、成分の分離が生じた。
D:25℃で2週間保存した後、成分の分離が生じた。
(6−4)現像性
各実施例及び比較例について、テストピースを作製する過程において、現像処理後の皮膜の非露光部を観察し、その結果を次のように評価した。
A:皮膜が全て除去されている。
B:皮膜の一部がコア材上に残存した。
C:現像できなかった。
現像性の評価がCである比較例5については、下記(6−5)〜(6−11)の評価を行っていない。また、現像性の評価がBである実施例17及び比較例6については、下記(6−6)のデスミア後荒れ性の評価試験において、コア材上の非露光部に残存した皮膜が全て除去される。
(6−5)開口性
実施例1〜18及び比較例1〜4、6について、テストピースにおける硬化物からなる層に形成された開口部を観察し、その結果を次のように評価した。
A:直径30μmの開口部が形成されている。
B:直径35μmの開口部が形成されているが、直径30μmの開口部は形成されていない。
C:直径40μmの開口部が形成されているが、直径35μmの開口部は形成されていない。
D:直径50μmの開口部が形成されているが、直径40μmの開口部は形成されていない。
E:直径50μmの開口部が形成されていない。
(6−6)デスミア後荒れ性
実施例1〜18及び比較例1〜4、6について、テストピースにおける硬化物からなる層の表面を、公知のデスミア処理方法に基づいて、下記のようにデスミア処理した。市販の膨潤液(アトテックジャパン株式会社製、スウェリング・ディップ・セキュリガンスP)をデスミア用膨潤液として用いて、硬化物からなる層の表面に70℃で15分間膨潤処理を行い、硬化物からなる層の表面を膨潤させた。膨潤された硬化物からなる層の表面を湯洗した。次いで、過マンガン酸カリウムを含有する市販の酸化剤(アトテックジャパン株式会社製、コンセントレート・コンパクトCP)をデスミア液として用いて、硬化物からなる層の表面に70℃で10分間粗化処理を行い、硬化物からなる層の表面を粗化した。粗化された硬化物からなる層の表面を湯洗した。次いで、中和液(アトテックジャパン株式会社製、リダクションソリューション・セキュリガントP)を用いて、硬化物からなる層の表面におけるデスミア液の残渣を40℃で5分間除去した。その後、硬化物からなる層の表面を水洗した。デスミア処理により粗化された硬化物からなる層の表面の表面粗さRaを、レーザ顕微鏡を用いて測定し、デスミア後荒れ性を次のように評価した。
A:Raが0.2μm未満である。
B:Raが0.2μm以上、0.25μm未満である。
C:Raが0.25μm以上、0.3μm未満である。
D:Raが0.3μm以上である。
(6−7)銅めっき密着性
実施例1〜18及び比較例1〜4、6について、上記(6−6)の評価試験におけるデスミア処理後のテストピースの硬化物からなる層に、市販の薬液を用いて無電解銅めっき処理を行い、初期配線を形成した。初期配線が形成されたテストピースを150℃で1時間加熱した。次に、市販の薬液を用いて2A/dm2の電流密度下で電解銅めっき処理を行い、初期配線に厚さ33μmの銅を直接析出させた。銅を析出させたテストピースを180℃で30分間加熱し、銅めっき層を形成した。銅めっき層とテストピース上の硬化物からなる層との密着性を次のように評価した。なお、無電解銅めっき処理後及び電解銅めっき処理後の両方の加熱時に、テストピースにブリスターが確認されないテストピースについては、銅めっき層と硬化物からなる層とのピール強度を、JIS−C6481に準拠して測定した。
A:銅めっき層のピール強度が0.4kN/m以上である。
B:銅めっき層のピール強度が0.3kN/m以上、0.4kN/m未満である。
C:銅めっき層のピール強度が0.3kN/m未満である。
D:無電解銅めっき処理後の加熱時、又は電解銅めっき処理後の加熱時に、ブリスターが発生した。
(6−8)絶縁性
実施例1〜18及び比較例1〜4、6のテストピースにおける導体配線(くし型電極)にDC30Vのバイアス電圧を印加しながら、テストピースを130℃、85%R.H.の試験環境下に100時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層のくし型電極間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次のように評価した。
A:試験開始時から100時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に106Ω以上を維持した。
B:試験開始時から85時間経過するまでは電気抵抗値が常に106Ω以上を維持したが、試験開始時から100時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
C:試験開始時から70時間経過するまでは電気抵抗値が常に106Ω以上を維持したが、試験開始時から85時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
D:試験開始時から70時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
(6−9)熱膨張係数
熱膨張係数の評価試験では、実施例1〜18及び比較例1〜4、6の感光性樹脂組成物を用いて、次のようにテストピースを作製した。
感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、95℃で25分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み30μmのドライフィルムを形成した。このドライフィルムを、テフロン(登録商標)製のフィルムの一面全面に真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、テフロン(登録商標)製のフィルム上にドライフィルムからなる膜厚30μmの皮膜を形成した。この皮膜に、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上から、3mm×15mmの長方形形状の露光部を有するマスクを直接当てがった状態で、マスクを介して皮膜に250mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。なお、露光後、現像前に、ドライフィルム(皮膜)からポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて皮膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射することで洗浄した。続いて、皮膜を180℃で60分間加熱した後、皮膜に1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。これにより、テフロン(登録商標)製のフィルム上に感光性樹脂組成物の硬化物を形成した。この硬化物を、テフロン(登録商標)製のフィルムから剥離して、テストピースを得た。
TMA試験装置(株式会社リガク製、Thermoplus EVOII TMA8310)を用いて、温度範囲25〜250℃、10℃/分、荷重5gの条件で、2サイクル目の30〜150℃におけるテストピースの熱膨張係数(CTE)を測定した。その結果を次のように評価した。
A:CTEが60ppm/℃未満である。
B:CTEが60ppm/℃以上、65ppm/℃未満である。
C:CTEが65ppm/℃以上、70ppm/℃未満である。
D:CTEが70ppm/℃以上である。
(6−10)ガラス転移点
ガラス転移点の評価試験では、実施例1〜18及び比較例1〜4、6の感光性樹脂組成物を用いて、上記(6−9)と同様の方法でテストピースを作製し、テストピースを得た。
TMA試験装置(株式会社リガク製、Thermoplus EVOII TMA8310)を用いて、温度範囲25〜250℃、昇温冷却速度10℃/分、荷重5gの条件で測定を行い、2サイクル目の測定結果からテストピースのガラス転移点(Tg)を求めた。その結果を次のように評価した。
A:Tgが160℃以上である。
B:Tgが145℃以上、160℃未満である。
C:Tgが130℃以上、145℃未満である。
D:Tgが130℃未満である。
(6−11)誘電正接
誘電正接の評価試験では、実施例1〜18及び比較例1〜4、6の感光性樹脂組成物を用いて、次のようにテストピースを作製した。
感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、95℃で25分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み50μmのドライフィルムを形成した。このドライフィルムを、テフロン(登録商標)製のフィルムの一面全面に真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、テフロン(登録商標)製のフィルム上にドライフィルムからなる膜厚50μmの皮膜を形成した。この皮膜に、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上から、3mm×85mmの長方形形状の露光部を有するマスクを直接当てがった状態で、マスクを介して皮膜に250mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。なお、露光後、現像前に、ドライフィルム(皮膜)からポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて皮膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射することで洗浄した。続いて、皮膜を180℃で60分間加熱した後、皮膜に1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。これにより、テフロン(登録商標)製のフィルム上に感光性樹脂組成物の硬化物を形成した。この硬化物を、テフロン(登録商標)製のフィルムから剥離して、テストピースを得た。
誘電率測定装置(株式会社エーイーティー製、ADMS01O)を用いて、空洞共振器法により周波数1GHzでのテストピースの誘電正接を測定した。その結果を次のように評価した。
A:tanδが0.020未満である。
B:tanδが0.020以上、0.025未満である。
C:tanδが0.025以上、0.030未満である。
D:tanδが0.030以上である。
以上述べた実施形態から明らかなように、本発明に係る第1の態様の感光性樹脂組成物は、光硬化性を有する感光性樹脂組成物であり、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂(A)と、平均一次粒子径が1μm以下であり、カルボキシル基を有する有機フィラー(B)と、ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子と、二つ以上の官能基とを有し、前記官能基は、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種の基を含むカップリング剤(C)と、平均粒子径が1〜150nmの範囲内であるシリカフィラー(D)と、を含有する。
第1の態様によれば、高い銅めっき密着性を有し、且つデスミア後荒れ性が低い硬化物を形成しうるとともに、解像性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
本発明に係る第2の態様の感光性樹脂組成物では、第1の態様において、前記カップリング剤(C)は、ケイ素原子を有する。
第2の態様によれば、感光性樹脂組成物におけるシリカフィラー(D)の分散性が効率よく高まり、感光性樹脂組成物の透明性及び安定性が向上する。感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点を高めると共に、熱膨張係数を低減できる。
本発明に係る第3の態様の感光性樹脂組成物では、第1または第2の態様において、前記シリカフィラー(D)は、シリカゾル由来のシリカ粒子を含む。
第3の態様によれば、感光性樹脂組成物の透明性が高くなり、感光性樹脂組成物の解像性が向上する。
本発明に係る第4の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記シリカフィラー(D)は、平均粒子径が1〜60nmの範囲内である。
第4の態様によれば、感光性樹脂組成物の透明性及び解像性が向上する
本発明に係る第5の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第4のいずれか1つの態様において、前記有機フィラー(B)の含有量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量100質量部に対して、1〜50質量部の範囲内である。
第5の態様によれば、感光性樹脂組成物の硬化物の良好な銅めっき密着性を得ることができる。また、感光性樹脂組成物の優れた解像性を得ることができる。さらに、感光性樹脂組成物のチクソ性が高まり、安定性が向上する。
本発明に係る第6の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記シリカフィラー(D)の含有量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量100質量部に対して、5〜200質量部の範囲内である。
第6の態様によれば、感光性樹脂組成物の透明性がり高まり、感光性樹脂組成物は優れた解像性を有しうる。また、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点を高めると共に、熱膨張係数及び誘電正接を低減させることができる。さらに、感光性樹脂組成物の硬化物をデスミア処理した後の、硬化物の表面粗さをより小さくすることができる。
本発明に係る第7の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第6のいずれか1つの態様において、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂を含む。
第7の態様によれば、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与することができる。
本発明に係る第8の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第7のいずれか1つの態様において、前記カップリング剤(C)の含有量は、前記有機フィラー(B)の含有量と前記シリカフィラー(D)の含有量との合計100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲内である。
第8の態様によれば、感光性樹脂組成物における有機フィラー(B)及びシリカフィラー(D)の凝集を防ぎ、分散性が向上する。
本発明に係る第9の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第8のいずれか1つの態様において、前記有機フィラー(B)は、前記感光性樹脂組成物中において、粒子径10μm以下の状態で含まれている。
第9の態様によれば、感光性樹脂組成物の安定性が向上すると共に、露光時の散乱が抑えられるため解像性が向上する。
本発明に係る第10の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第9のいずれか1つの態様において、前記有機フィラー(B)は、ゴム成分を含む。
第10の態様によれば、感光性樹脂組成物の硬化物に柔軟性を付与できる。
本発明に係る第11の態様の感光性樹脂組成物では、第10の態様において、前記ゴム成分は、架橋アクリルゴム、架橋NBR、架橋MBS及び架橋SBRからなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含む。
第11の態様によれば、感光性樹脂組成物は高い透明性を有することができ、感光性樹脂組成物の解像性を向上させることができる。
本発明に係る第12の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第11のいずれか1つの態様において、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、ベンゼン環を有するカルボキシル基含有樹脂を含む。
第12の態様によれば、感光性樹脂組成物の透明性が高くなり、感光性樹脂組成物は優れた解像性を有する。
本発明に係る第13の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第12のいずれか1つの態様において、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、ポリアルコール樹脂と酸二無水物との反応により得られる共重合体を含む。
第13の態様によれば、感光性樹脂組成物に高いアルカリ現像性を付与すると共に、感光性樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性及び絶縁性を付与することができる。
本発明に係る第14の態様の感光性樹脂組成物では、第13の態様において、前記酸二無水物は芳香環を有する酸二無水物を含有する。
第14の態様によれば、感光性樹脂組成物に高いアルカリ現像性を付与すると共に、感光性樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性及び絶縁性を付与することができる。
本発明に係る第15の態様の感光性樹脂組成物では、第1から第14のいずれか1つの態様において、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビフェニル骨格及びビスフェノールフルオレン骨格のうちの少なくとも一方を有するカルボキシル基含有樹脂を含む。
第15の態様によれば、感光性樹脂組成物の硬化物における誘電正接をより低減することができる。
本発明に係る第16の態様の感光性樹脂組成物は、第1から第15のいずれか1つの態様において、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(E)と、光重合開始剤(F)と、を更に含有する。
第16の態様によれば、感光性樹脂組成物に高い感光性を付与できる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁性が向上する。
本発明に係る第17の態様の感光性樹脂組成物では、第16の態様において、前記不飽和化合物(E)は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
第17の態様によれば、感光性樹脂組成物は優れた透明性及び安定性を有することができる。
本発明に係る第18の態様の感光性樹脂組成物は、第1から第17のいずれか1つの態様において、エポキシ化合物(G)を更に含有する。
第18の態様によれば、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。
本発明に係る第19の態様のドライフィルムは、第1から第18のいずれか1つの態様の感光性樹脂組成物を含有する。
第19の態様によれば、高い銅めっき密着性を有し、且つデスミア後荒れ性が低い硬化物を形成しうるとともに、解像性に優れたドライフィルムを得ることができる。
本発明に係る第20の態様のプリント配線板は、第1から第18のいずれか1つの態様の感光性樹脂組成物の硬化物を含む層間絶縁層を備える。
第20の態様によれば、高い銅めっき密着性を有し、且つデスミア後荒れ性が低い層間絶縁層を備えるプリント配線板を得ることができる。
本発明に係る第21の態様のプリント配線板は、第1から第13のいずれか1つの態様の感光性樹脂組成物の硬化物を含むソルダーレジスト層を備える。
第21の態様によれば、高い銅めっき密着性を有し、且つデスミア後荒れ性が低いソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を得ることができる。