(1)実施形態
次に、上述の導電部材について、例示的な実施形態を挙げて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて図中に併記した上下左右前後の各方向を利用して説明を行う。ただし、これらの各方向は、導電部材が有する各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するために規定した方向に過ぎず、実際に導電部材が利用される際、導電部材がどのような方向に向けられるかは任意である。例えば、図中に示す上下方向が重力との関係で鉛直方向とされていなくてもかまわない。
(1.1)第一実施形態
まず、第一実施形態について説明する。図1A及び図1Bに示すように、導電部材12は、基部12Aと、折り曲げ部12Bとを有する。本実施形態の場合、折り曲げ部12Bは、基部12Aの両端(図1A及び図1B中でいう左端及び右端。)に設けられている。折り曲げ部12Bは、基部12Aとの境界を折り目として基部12Aに対して折り曲げ可能に構成されている。これにより、折り曲げ部12Bは、折り曲げ前の位置である第一位置(図1A及び図1B参照。)から折り曲げ後の位置である第二位置(図2A及び図2B参照。)へ変位可能に構成されている。
これら基部12A及び折り曲げ部12Bは、導電部14及びエラストマー部16によって構成されている。導電部14は、導電性を有する面状体によって構成されている。より詳しくは、本実施形態の場合、導電部14は、図3Aに示すような網状円筒体14Aを、直径方向(図3A中に矢印で示す方向。)に押し潰すことにより、厚さ方向に直交する面の形状が四角形とされた面状体14B(図3B参照。)によって構成されている。
網状円筒体14Aは、円筒状に編まれた金属線によって構成され、本実施形態の場合、直径0.04mmのステンレス鋼製線材がメリヤス編みによって円筒状に編成されている。このような面状体14Bによって構成される導電部14が、基部12Aから折り曲げ部12Bにわたる範囲(図1A及び図1B中でいう導電部材12の上面側。)に設けられている。導電部14のうち、折り曲げ部12Bに設けられた部分は、図2A及び図2Bに示すように、折り曲げ部12Bを折り曲げて第二位置へ変位させた際、図2A及び図2B中でいう左方及び右方に向けられる。
エラストマー部16は、エラストマー材料によって構成されている。本実施形態の場合、エラストマー部16を構成するエラストマー材料としては、アクリルゴムやシリコーンゴムなどの母材に対して、アルミナやマグネシアなどの微粒子によって構成された熱伝導性フィラーが配合された熱伝導性エラストマー材料が使用されている。エラストマー部16は、基部12Aから折り曲げ部12Bにわたる範囲(図1A及び図1B中でいう導電部材12の下面側。)に設けられている。
このようなエラストマー部16は、例えばインサート成形等によって導電部14を構成する面状体14Bに対して付加される。具体的には、エラストマー部16の形状に対応したキャビティを有する金型(図示略。)内に、導電部14を構成する面状体14Bが設置され、そのキャビティ内に上述のエラストマー材料が射出される。射出されたエラストマー材料は、加熱されて溶融状態にあるため、面状体14Bの網目内へと入り込む。その後、放熱に伴ってエラストマー材料の流動性が低下すると、導電部14と一体化された状態のエラストマー部16が形成されることになる。
エラストマー部16において、基部12Aと折り曲げ部12Bとの境界となる箇所には、図1B及び図4Aに示すように、前後方向に延びる溝18Aが設けられている。これにより、溝18Aがある箇所を折り目として、折り曲げ部12Bを基部12Aに対して折り曲げやすい構造にしてある。この溝18Aは、図1B及び図4Aでいう前後方向中央付近にある不連続部18Bにおいて途切れている。そのため、溝18Aがある箇所を折り目として折り曲げ部12Bを基部12Aに対して折り曲げた際には、不連続部18Bにおいてエラストマー部16が圧縮されて弾性変形し、その際に生じる弾性力は折り曲げ部12Bを第二位置から第一位置へと押し戻す方向に作用する。したがって、折り曲げ部12Bが第二位置にあり、かつ折り曲げ部12Bが第一位置へ変位するのを妨げる位置に接触対象箇所がある場合、上述の弾性力により、折り曲げ部12Bを接触対象箇所に向かって押圧することができる。
エラストマー部16は、上述の通り、導電部14(面状体14B)が有する網目内に入り込んでいる。具体的には、例えば、図4B中に示すIVC部においては、図4Cに拡大して示すように、範囲A1にエラストマー部16が設けられ、範囲A2に導電部14が設けられている。そのため、範囲A3においては、導電部14が有する網目内にエラストマー部16が入り込んでいる。このような構造となっているため、導電部14は、大部分がエラストマー部16に埋設され、図4B及び図4Cでいう上面側において、導電部14の表層にある金属線の一部がエラストマー部16の外側に露出する構造になっている。
導電部14を構成する四角形の面状体14B(図3B参照。)は、網状円筒体14Aの軸方向両端に相当する箇所が構成する二辺と、網状円筒体14Aの外周面に相当する箇所が構成する二辺とを含む。これら四辺のうち、網状円筒体14Aの軸方向両端に相当する箇所が構成する二辺は、他の二辺に比べ、金属線がほつれやすい構造になっている。ただし、上述の通り、導電部14は、大部分がエラストマー部16に埋設された構造になっているため、このエラストマー部16により金属線のほつれを抑制することができる。
また、上述のように、導電部14が有する網目内にエラストマー部16が入り込んでいると、折り曲げ部12Bを折り曲げた際には、折り曲げ箇所の内側においてエラストマー部16が圧縮されて弾性変形する。あるいは、折り曲げ箇所の外側においてエラストマー部16が伸長されて弾性変形する。そのため、そのような弾性変形に伴って生じる弾性力は、折り曲げ部12Bを第二位置から第一位置へと押し戻す方向に作用する。したがって、折り曲げ部12Bが第二位置にあり、かつ折り曲げ部12Bが第一位置へ変位するのを妨げる位置に接触対象箇所がある場合、上述の弾性力により、折り曲げ部12Bを接触対象箇所に向かって押圧することができる。
以上のように構成された導電部材12は、例えば、図5A,図5B,及び図5Cに示すように、電子部品1を収容する筐体2に対して装着され、筐体2から電磁波が漏出するのを抑制する導電性ガスケットとして利用される。
より詳しくは、筐体2は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとを有する。筐体蓋部2Bは、筐体本体部2Aの開口を閉鎖可能に構成されている。筐体本体部2Aには、電子部品1が実装された電子回路基板3が収容されている。本実施形態の場合、導電部材12は、図5Aに示すように、筐体蓋部2Bに対して装着される。導電部材12が筐体蓋部2Bに対して取り付けられる際には、折り曲げ部12Bを第二位置へ変位させた状態で、筐体蓋部2Bが有する凹部5に導電部材12が嵌め込まれる。
この導電部材12の場合、折り曲げ部12Bを基部12Aに対して所定の折り目で折り曲げることができる。そのため、折り目の位置が定まらない面状導電部材とは異なり、凹部5の内底面5Aと内壁面5Bとによって構成されるコーナー部において、それら凹部5の内底面5Aと内壁面5Bに導電部14が接する位置に容易に導電部材12を配設することができる。
また、折り曲げ部12Bを第二位置へ変位させると、上述の通り、エラストマー部16が弾性変形し、折り曲げ部12Bには、折り曲げ部12Bを第二位置から第一位置へと押し戻す方向へ弾性力が作用する。そのため、折り曲げ部12Bは、凹部5の内壁面5Bに向かって押圧され、凹部5の内壁面5Bにしっかりと接触し、その状態を維持することができる。
そして、筐体蓋部2Bは、図5Bに示すように、導電部材12とともに筐体本体部2Aに対して取り付けられる。これにより、導電部材12は、図5Cに示すように、筐体2の内部に配設される。その際、導電部14は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの境界において筐体2の内面に接触する。上述の通り、折り曲げ部12Bには、折り曲げ部12Bを第二位置から第一位置へと押し戻す方向へ弾性力が作用する。そのため、導電部14は、筐体2の内面に向かって押圧され、筐体2の内面にしっかりと接触し、その状態を維持することができる。これにより、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの境界を通じて筐体2の内外間で電磁波が透過するのを抑制することができる。また、導電部14は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとを電気的に接続し、筐体2の電位を安定させることができる。
なお、本実施形態の場合、導電部14は金属製とされ、エラストマー部16は熱伝導性エラストマー材料製とされている。そのため、電子部品1が発熱性の高い電子部品であっても、その熱が導電部材12に伝わると、導電部材12全体に熱が拡散し、その熱が筐体2へと伝わる。したがって、断熱性の高い導電部材が筐体2内に設けられる場合に比べ、電子部品1の放熱を促すことができる。
(1.2)第二実施形態
次に、第二実施形態について説明する。図6A及び図6Bに示すように、導電部材22は、基部22Aと、折り曲げ部22Bとを有する。折り曲げ部22Bは、基部22Aとの境界を折り目として基部22Aに対して折り曲げ可能に構成されている。これらの点は第一実施形態と同様である。
ただし、導電部材22の場合、基部22Aは、導電部24のみによって構成されており、この点で第一実施形態とは相違する。折り曲げ部22Bは、導電部24及びエラストマー部26によって構成されている。導電部24そのものは、第一実施形態で例示した導電部14と同様に構成されている。また、エラストマー部26を構成するエラストマー材料も、第一実施形態と同様のものである。エラストマー部26が、インサート成形等によって導電部24を構成する面状体に対して付加されている点も第一実施形態と同様である。
また、第二実施形態で例示する導電部材22は、図7Aに示すように、第一実施形態で例示した溝18A相当の構成が設けられていない点で、第一実施形態とは相違する。エラストマー部26は、図7B及び図7Cに示すように、折り曲げ部22B相当の範囲(図7Cに例示する範囲A4。)に設けられ、当該範囲では導電部24が有する網目内にエラストマー部26が入り込んでいる。一方、基部22A相当の範囲(図7Cに例示する範囲A5。)には、エラストマー部26が設けられていない。
以上のように構成された導電部材22は、例えば、図8A,図8B,及び図8Cに示すように、電子部品を収容する筐体2に対して装着され、筐体2から電磁波が漏出するのを抑制する導電性ガスケットとして利用される。この点も第一実施形態と同様である。導電部材22は、図8Aに示すように、筐体蓋部2Bに対して装着される。その際、折り曲げ部22Bを第二位置へ変位させた状態で、筐体蓋部2Bが有する凹部5に導電部材22が嵌め込まれる。そのため、折り目の位置が定まらない面状導電部材とは異なり、凹部5の内底面5Aと内壁面5Bとによって構成されるコーナー部において、それら凹部5の内底面5Aと内壁面5Bに導電部24が接する位置に容易に導電部材22を配設することができる。
筐体蓋部2Bは、図8Bに示すように、導電部材22とともに筐体本体部2Aに対して取り付けられる。これにより、導電部材22は、図8Cに示すように、筐体2の内部に配設される。その際、導電部24は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの境界において筐体2の内面に接触する。また、第二実施形態においては、筐体本体部2A内に押さえ部7が設けられている。押さえ部7は、折り曲げ部22Bに接触し、折り曲げ部22Bを押圧する。そのため、折り曲げ部22Bに設けられたエラストマー部26は、押さえ部7から作用する力によって圧縮されて弾性変形し、折り曲げ部22Bを第二位置から第一位置へと押し戻す方向へ弾性力が作用する。
したがって、折り曲げ部22Bに設けられた導電部24は、筐体2の内面に向かって押圧され、筐体2の内面にしっかりと接触し、その状態を維持することができる。これにより、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの境界を通じて筐体2の内外間で電磁波が透過するのを抑制することができる。また、導電部24は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとを電気的に接続し、筐体2の電位を安定させることができる。
なお、第二実施形態では、基部22Aが導電部24のみによって構成される例を示したが、基部22Aには、エラストマー部26が設けられてもよい。例えば、図9A,図9B,及び図9Cに例示するように、折り曲げ部22B相当の範囲(図9A,図9B,及び図9Cに例示する範囲A4。)に加え、基部22A相当の範囲(図9A,図9B,及び図9Cに例示する範囲A5。)にも、エラストマー部26が設けられていてもよい。
図9Aに例示する基部22Aの場合、基部22Aの上下両面において導電部24の一部がエラストマー部26の表面に露出している。図9Bに例示する基部22Aの場合、基部22Aの上面において導電部24の一部がエラストマー部26の表面に露出し、基部22Aの下面には導電部24が露出していない。図9Cに例示する基部22Aの場合、基部22Aの下面において導電部24の一部がエラストマー部26の表面に露出し、基部22Aの上面には導電部24が露出していない。これらのような構成を採用しても、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの境界を通じて筐体2の内外間で電磁波が透過するのを抑制することができる。また、導電部24は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとを電気的に接続し、筐体2の電位を安定させることができる。
(1.3)第三実施形態
次に、第三実施形態について説明する。図10A及び図10Bに示すように、導電部材32は、基部32Aと、折り曲げ部32Bとを有する。折り曲げ部32Bは、基部32Aとの境界を折り目として基部32Aに対して折り曲げ可能に構成されている。これらの点は第一実施形態と同様である。
ただし、導電部材32の場合、基部32Aは、導電部34のみによって構成されており、この点で第一実施形態とは相違する。折り曲げ部32Bは、導電部34及びエラストマー部36によって構成されている。導電部34そのものは、第一実施形態で例示した導電部14と同様に構成されている。また、エラストマー部36を構成するエラストマー材料も、第一実施形態と同様のものである。エラストマー部36が、インサート成形等によって導電部34を構成する面状体に対して付加されている点も第一実施形態と同様である。
第三実施形態の場合、基部32Aにおいて導電部34の一部が部分的にエラストマー部36の表面に露出しており、導電部34の残りの一部がエラストマー部36の表面に露出していない点で、第一実施形態や第二実施形態とは相違する。このような導電部材32であっても、筐体本体部と筐体蓋部との境界を通じて筐体の内外間で電磁波が透過するのを抑制することができる。また、導電部34は、筐体本体部と筐体蓋部とを電気的に接続し、筐体の電位を安定させることができる。
なお、図10A及び図10Bでは、エラストマー部36の表面における導電部34の露出範囲が特定の形状になっているものを例示してあるが、この形状は特に限定されるものではない。また、露出範囲が何か所となっているかも、特に限定されるものではない。更に、基部32Aの上下両面のうち、どちらの面に導電部34の露出範囲が設けられるのかについても特に限定されない。
(1.4)補足
以上、導電部材について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本発明の一態様として例示されるものに過ぎない。すなわち、本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、熱伝導性エラストマー材料でエラストマー部を構成する例を示したが、エラストマー部を構成するエラストマー材料は、目的に応じて最適な材料を選定すればよい。具体的な例を挙げれば、エラストマー材料中には、絶縁性、放熱性、熱拡散性、防水性、防塵性、導電性、磁性、及び誘電性の中から選ばれる少なくとも一種の特性を、未配合の場合よりも向上させる機能性フィラーが配合されていてもよい。
例えば、エラストマー材料中には、導電材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部に導電性を付与することができる。導電材として機能するフィラーとしては、例えば、銀、アルミニウム、銅、カーボンなどのフィラーを挙げることができる。
あるいは、エラストマー材料中には、磁性材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部に磁性を付与することができる。磁性材として機能するフィラーとしては、例えば、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al合金、アモルファス合金などのフィラーを挙げることができる。
あるいは、エラストマー材料中には、誘電材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部の誘電率を向上させることができる。誘電材として機能するフィラーとしては、例えば、チタン酸バリウム、炭化ケイ素などのフィラーを挙げることができる。
あるいは、エラストマー材料中には、熱伝導材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部の熱伝導率を向上させることができる。熱伝導材として機能するフィラーとしては、例えば、アルミナ、マグネシアなどのフィラーを挙げることができる。どの程度の熱伝導率を確保すべきかは、目的に応じて適宜調整されていればよいが、例えばエラストマー部が1W/m・K以上の熱伝導率を有していればよい。
あるいは、エラストマー材料中には、熱放射材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部の熱放射率を向上させることができる。熱放射材として機能するフィラーとしては、例えば、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどのフィラーを挙げることができる。どの程度の熱放射率を確保すべきかは、目的に応じて適宜調整されていればよいが、例えばエラストマー部の熱放射率が0.8以上に構成されていればよい。
また、エラストマー材料としては、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマー(例えば、合成ゴムや天然ゴム。)、どちらも利用できる。熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーを挙げることができ、更に、これら各種熱可塑性エラストマーの水添、その他による変性物などを挙げることができる。熱硬化性エラストマーの具体例としては、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等を挙げることができる。これらのエラストマー材料は、単独で用いてもよいし、相性のよいもの同士であれば、2種以上をブレンドして用いてもよい。
また、上記実施形態では、導電部14について、ステンレス鋼製線材をメリヤス編みによって円筒状に編成して網状円筒体14Aとし、網状円筒体14Aを押し潰して四角形の面状体14Bを構成していたが、導電部の具体的な構造は限定されない。例えば、縦糸相当の金属線と横糸相当の金属線を平織り又は綾織りにすることによって網状面状体を構成し、そのような網状面状体を導電部として採用してもよい。あるいは、いわゆるエキスパンドメタルのように、金属の薄板に千鳥状に切れ目を入れて、その切れ目が菱形や亀甲形となるように金属の薄板を延ばすことにより、網状面状体を構成し、そのような網状面状体を導電部として採用してもよい。あるいは、いわゆるパンチングメタルのように、金属の薄板に所定の配列パターンで配列された複数の孔を打ち抜くことにより、網状面状体を構成し、そのような網状面状体を導電部として採用してもよい。さらに、導電部の素材については、ステンレス鋼以外の金属であってもよく、例えば、銅又は銅合金、アルミ又はアルミ合金、それらのめっき品等であってもよい。
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本明細書で説明した導電部材は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
まず、本明細書で説明した導電部材において、折り曲げ部は、基部を挟んで両側となる箇所それぞれに設けられていてもよい。
このように構成された導電部材によれば、基部を挟んで両側となる箇所それぞれに折り曲げ部が設けられているので、基部の一端に折り曲げ部が設けられている場合に比べ、より多箇所で折り曲げ部を接触対象箇所に接触させることができる。
また、本明細書で説明した導電部材において、エラストマー部は、基部から折り曲げ部にわたる範囲に設けられ、折り曲げ部が基部に対して折り曲げられるのに伴って弾性変形し、当該弾性変形に伴って生じる弾性力により、折り曲げ部を第二位置から第一位置へ変位させる方向へ押圧可能に構成されていてもよい。
このように構成された導電部材によれば、折り曲げ部を基部に対して折り曲げるだけでエラストマー部を弾性変形させることができる。したがって、エラストマー部を弾性変形させるための部材を導電部材とは別に用意しなくても済むので、より簡便に折り曲げ部を接触対象箇所に向かって押圧することができる。
また、本明細書で説明した導電部材において、導電部は、円筒状に編まれた金属線によって構成される網状円筒体を直径方向に押し潰すことにより、厚さ方向に直交する面の形状が四角形とされた面状体によって構成され、四角形が有する四辺には、網状円筒体の軸方向両端に相当する箇所が構成する二辺と、網状円筒体の外周面に相当する箇所が構成する二辺とを含み、少なくとも網状円筒体の軸方向両端に相当する箇所が構成する二辺は、エラストマー部に埋設されていてもよい。
このように構成された導電部材によれば、少なくとも網状円筒体の軸方向両端に相当する箇所が構成する二辺は、エラストマー部に埋設されているので、これら二辺から金属線がほつれるのを抑制することができる。
(2)参考技術
次に、上述の実施形態に関連する技術について、参考技術として開示する。
(2.1)参考技術が解決しようとする課題
上記特許文献1に記載の導電部材の場合、導電部を構成する網状体の端部にほつれが生じることがあった。そのため、ほつれた箇所から延びる導電性の線材(フィラメント)が、その近傍に存在する電子部品や通電箇所に接触すると、電子部品と通電箇所が短絡するなどの問題を招くおそれがあった。
以上のような事情から、導電部を構成する網状体の端部にほつれが生じにくい導電部材を提供することが望ましい。
(2.2)参考技術における課題を解決するための手段
以下に説明する導電部材は、導電性を有する網状体によって構成された導電部と、エラストマー材料によって構成されたエラストマー部とを有し、導電部及びエラストマー部は、それぞれが面状に構成され、それぞれの厚さ方向を一致させた状態で、導電部の一部がエラストマー部を構成するエラストマー材料中に埋め込まれた構造とされ、導電部の周縁には、導電部の周縁の少なくとも一部がエラストマー部の周縁よりも外側へはみ出した構造とされたはみ出し部を有し、はみ出し部では、網状体が折り曲げられて、その折り目となる部分ではみ出し部の端縁の一部が構成されている。
このように構成された導電部材によれば、上述のような導電部及びエラストマー部を備えている。そのため、導電性を有する網状体のみによって構成されたものとは異なり、エラストマー部を利用して、必要箇所には絶縁性、防水性、防塵性、制振性、緩衝性、磁性、あるいは誘電性等を付与するなど、導電性を有する網状体のみでは得られない機能を持たせることができる。また、エラストマー部のみによって構成されたものとは異なり、導電部を利用して、導電性を向上させることができ、また、熱伝導性の高い材料で導電部を構成してあれば、熱伝導性を向上させることもできる。
また、導電部には、上述のようなはみ出し部が設けられている。そのため、はみ出し部を二つの部材間に挟持することにより、二つの部材間を電気的に接続することができ、はみ出し部が二つの部材間の隙間を埋める導電性ガスケットとして機能することで、隙間から電磁波が漏出するのを抑制することができる。
しかも、はみ出し部においては、網状体が折り曲げられて、その折り目となる部分ではみ出し部の端縁の一部が構成されている。これにより、はみ出し部の端縁の一部において網状体がほつれるのを抑制することができる。そのため、導電部となる網状体の周縁がカットされ、そのカットされた箇所が、そのままはみ出し部相当箇所の端縁となっているものとは異なり、カットされた箇所において網状体がほつれるといったことがない。したがって、例えば、ほつれた導電性の線材が原因で、その近傍に存在する電子部品と通電箇所とが短絡する、といったトラブルが発生するのを抑制することができる。
(2.3)参考技術を実施するための形態
次に、上述の導電部材について、例示的な参考例を挙げて説明する。
(2.3.1)第一参考例
まず、第一参考例について説明する。図11A,図11B,及び図11Cに示すように、導電部材10は、導電部11と、エラストマー部13とを有する。導電部11は、導電性を有する網状体11Aによって構成されている。本参考例の場合、網状体11Aは、直径0.04mmのステンレス鋼製線材によって編成されている。また、本参考例の場合、エラストマー部13は、アクリルゴムやシリコーンゴムなどの母材に対して、アルミナやマグネシアなどの微粒子によって構成された熱伝導性フィラーが配合された熱伝導性エラストマー材料によって構成されている。
導電部11及びエラストマー部13は、それぞれが平面視で略四角形に見える面状に構成され、それぞれの厚さ方向を一致させた状態で、導電部11の一部がエラストマー部13を構成するエラストマー材料中に埋め込まれた構造とされている。導電部11の周縁には、導電部11の周縁の少なくとも一部がエラストマー部13の周縁よりも外側へはみ出した構造とされたはみ出し部15を有する。
はみ出し部15では、網状体11Aが折り曲げられて、その折り目となる部分ではみ出し部15の端縁の一部が構成されている。本参考例の場合、図11Cに示す導電部11の左端111,前端112,及び右端113では、網状体11Aが折り曲げられ、その折り目となる部分ではみ出し部15の端縁が構成されている。これにより、導電部11の左端111,前端112,及び右端113において網状体11Aがほつれるのを抑制可能に構成されている。
なお、本参考例の場合、導電部11の後端114では、網状体11Aが折り曲げられていないが、導電部11の後端114は大部分がエラストマー部13に埋め込まれているので、この埋め込まれた部分において網状体11Aがほつれることはない。また、導電部11の後端114には、左右両端付近にエラストマー部13に埋め込まれていない部分が僅かに存在するものの、この部分でも大きなほつれは生じないので実用上の問題はない。
本参考例において、導電部11を構成する網状体11Aは、以下のような手順で構成されたものである。まず、図12Aに示すように、ステンレス鋼製線材がメリヤス編みによって円筒状に編成される。そして、その円筒状の網状体11Aに対し、図12A中に矢印で示したような向きの外力が加えられ、図12Bに示すように、網状体11Aが直径方向に押し潰されて、面状の網状体11Aが構成される。
続いて、網状体11Aは、図12B中に一点鎖線で示す折り曲げ位置において、更に図12B中に矢印で示す方向へと折り曲げられる。その結果、網状体11Aは、図12Cに示すように、厚さ方向に直交する面の形状が四角形に構成され、その四角形が有する四辺のうち、三辺に相当する箇所(導電部11の左端111,前端112,及び右端113に相当する箇所。)に折り目となる部分が設けられる。
このように構成された網状体11Aに対し、インサート成形によってエラストマー部13が付加される。具体的には、エラストマー部13の形状に対応したキャビティを有する金型(図示略。)内に網状体11Aが設置され、そのキャビティ内に上述のエラストマー材料を射出する。射出されたエラストマー材料は、加熱されて溶融状態にあるため、網状体11Aの網目へと入り込む。その後、放熱に伴ってエラストマー材料の流動性が低下すると、図13Aに示すように、導電部11と一体化された状態のエラストマー部13が形成される。
本参考例の場合は、図13Aに一点鎖線で示す切断箇所において導電部11及びエラストマー部13がカットされる。これにより、図13Bに示すように、導電部11の後端114がエラストマー部13とともに切り揃えられる。このようにすれば、金型から取り出されたインサート成形品において網状体11Aに多少のほつれがあったとしても、そのような部分はカットされるので、導電部11の後端114を確実にエラストマー部13の内部に埋め込むことができる。ただし、ここまで精密に切り揃える必要がない用途を想定する場合には、このようなカット加工は必須ではない。また、網状体11Aのほつれを抑制することだけを考える場合は、例えば、エラストマー部13が、導電部11の端部を十分に包み込むことができる程度の寸法に成形されていてもよい。
以上のように構成された導電部材10は、例えば、図14A,図14B,及び図14Cに示すように、電子部品1を収容する筐体2に対して装着され、筐体2から電磁波が漏出するのを抑制する導電性ガスケットとして利用される。
より詳しくは、筐体2は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとを有する。筐体本体部2Aには、電子部品1が実装された電子回路基板3が収容されている。本参考例の場合、導電部材10は、図14Aに示すように、筐体本体部2Aに対して装着される。そして、筐体蓋部2Bが、図14Bに示すように、筐体本体部2Aに対して取り付けられる。これにより、導電部材10は、図14Cに示すように、はみ出し部15において筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの間に挟持され、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bは導電部11を介して電気的に接続される。この状態において、はみ出し部15は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの隙間を埋めるので、そのような隙間から筐体2の外部へ電磁波が漏れるのを抑制することができる。
このような導電部材10であれば、筐体本体部2Aの開口形状に合わせた寸法ではみ出し部15を設けておくことにより、導電部材10を筐体本体部2Aの開口部に配置するだけで、はみ出し部15をぴったりと筐体本体部2Aの開口部に沿った位置に配置することができる。したがって、紐状ないしはコイルスプリング状などの形状に形成された導電性ガスケットに比べ、きわめて簡単にはみ出し部15を所期の位置に配置することができる。
また、はみ出し部15を構成している網状体11Aは、網状に構成されている上に、その網状に構成された部分が多重に重なる構造となっているので、筐体本体部2Aや筐体蓋部2Bに対して多点で接触する。したがって、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの間には、きわめて短いピッチで多数の導電経路が構成され、これにより、筐体2の外部へ電磁波が漏れるのを効果的に抑制できる。
また、本参考例の場合、エラストマー部13は、上述のような熱伝導性エラストマーによって構成され、電子部品1に接触する位置に配置されているので、電子部品1において発生する熱をエラストマー部13へと伝え、更に導電部11へと伝えることができる。そのため、電子部品1において発生する熱を電子部品1の外部へと拡散させることができ、電子部品1の温度が上昇するのを抑制することができる。
また、本参考例の場合、エラストマー部13は、絶縁性の高い(すなわち、導電性が低い。)エラストマー材料によって構成されている。そのため、エラストマー部13が電子部品1に接触する位置に配置されても、エラストマー部13を介して電子部品1と導電部11が電気的に接続されるのを防止することができる。
(2.3.2)第二参考例
次に、第二参考例について説明する。ただし、第二参考例以降の参考例は、第一参考例と共通する構成が多いので、第一参考例との相違点を中心に詳述し、第一参考例と同様な部分に関しては、その詳細な説明を省略する。
図15A,図15B,及び図15Cに示すように、第二参考例において例示する導電部材20は、導電部21と、エラストマー部23とを有し、その具体的構造は第一参考例で示した導電部材10とほぼ同様に構成されている。ただし、第二参考例におけるエラストマー部23は、防水性・防塵性を重視して、第一参考例よりも接触箇所に対する密着性が高いエラストマー材料を採用している。
このような導電部材20も、図15Aに示すように、筐体本体部2Aに対して装着される。そして、筐体蓋部2Bが、図15Bに示すように、筐体本体部2Aに対して取り付けられる。これにより、導電部材20は、図15Cに示すように、はみ出し部25において筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの間に挟持され、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bは導電部21を介して電気的に接続される。この状態において、はみ出し部25は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの隙間を埋めるので、そのような隙間から筐体2の外部へ電磁波が漏れるのを抑制することができる。これらの作用は、第一参考例と同様である。
一方、本参考例の場合は、エラストマー部23も、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの間に挟持される。これにより、エラストマー部23は、電子部品1の配設空間を密閉し、これにより、電子部品1の配設空間へ水や塵が侵入するのを抑制することができる。
(2.3.3)第三参考例
次に、第三参考例について説明する。図16A,図16B,及び図16Cに示すように、第三参考例において例示する導電部材30は、導電部31と、エラストマー部33とを有し、その具体的構造は第一参考例で示した導電部材10とほぼ同様に構成されている。ただし、第三参考例におけるエラストマー部33は、粘着性を有するエラストマー材料を採用している。
このような導電部材30は、第一,第二参考例とは異なり、図16Aに示すように、エラストマー部33の粘着性を利用して、筐体蓋部2Bに対して装着することができる。この場合、導電部材30を筐体蓋部2Bに装着したら、それら筐体蓋部2B及び導電部材30が、図16Bに示すように、筐体本体部2Aに対して取り付けられる。これにより、導電部材30は、図16Cに示すように、はみ出し部35において筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの間に挟持され、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bは導電部11を介して電気的に接続される。この状態において、はみ出し部35は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの隙間を埋めるので、そのような隙間から筐体2の外部へ電磁波が漏れるのを抑制することができる。これらの作用は、第一参考例と同様である。
このように構成された導電部材30によれば、あらかじめ筐体蓋部2Bに対して導電部材30を取り付けておいて、筐体蓋部2B及び導電部材30を筐体本体部2Aに取り付けることができるので、このような手順の方が作業効率がよい場合に採用すると好ましい。
(2.3.4)第四参考例
次に、第四参考例について説明する。図17に示すように、第四参考例において例示する導電部材40は、導電部41と、エラストマー部43とを有する。導電部41の具体的構造は第一参考例で示した導電部材10とほぼ同様に構成されている。ただし、第四参考例におけるエラストマー部43には、開口部43Aが設けられている。開口部43A内においては、導電部41の一部が露出している。
このような導電部材40は、図18Aに示すように、筐体本体部2Aに対して装着される。そして、筐体蓋部2Bが、図18Bに示すように、筐体本体部2Aに対して取り付けられる。これにより、導電部材40は、図18Cに示すように、はみ出し部45において筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの間に挟持され、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bは導電部41を介して電気的に接続される。この状態において、はみ出し部45は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの隙間を埋めるので、そのような隙間から筐体2の外部へ電磁波が漏れるのを抑制することができる。これらの作用は、第一参考例と同様である。
一方、第四参考例の場合、筐体蓋部2Bにはスリット2Cが設けられていて、上述の開口部43Aは、スリット2Cと重なる位置に形成されている。そのため、筐体2内の温度が上昇すれば、その熱気は開口部43Aが形成された箇所において導電部41を構成する網状体41Aの網目を通過し、更にスリット2Cを介して筐体2の外部へと放出される。したがって、これらの構成により、筐体2の内部から外部へ熱気を放出することができ、筐体2内の温度上昇を抑制することができる。
(2.3.5)第五参考例
次に、第五参考例について説明する。図19に示すように、第五参考例において例示する導電部材50は、導電部51と、エラストマー部53とを有する。ただし、第五参考例における導電部51及びエラストマー部53には、複数(本参考例の場合は六つ。)の取り付け孔57が設けられている。これらの取り付け孔57は、導電部51及びエラストマー部53の双方を厚さ方向に貫通している。ちなみに、第四参考例において例示した開口部43Aの場合、エラストマー部43は貫通するものの、導電部41は貫通していないので、この点で第四参考例とは相違する。
このような導電部材50は、図20Aに示すように、筐体蓋部2Bに設けられたボス2Dを利用して、筐体蓋部2Bに対して装着することができる。すなわち、導電部材50が筐体蓋部2Bに装着される点は、第三参考例と同様である。導電部材50を筐体蓋部2Bに装着したら、それら筐体蓋部2B及び導電部材50が、図20Bに示すように、筐体本体部2Aに対して取り付けられる。これにより、導電部材50は、図20Cに示すように、はみ出し部55において筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの間に挟持され、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bは導電部11を介して電気的に接続される。この状態において、はみ出し部55は、筐体本体部2Aと筐体蓋部2Bとの隙間を埋めるので、そのような隙間から筐体2の外部へ電磁波が漏れるのを抑制することができる。これらの作用は、第一参考例と同様である。
このように構成された導電部材50によれば、あらかじめ筐体蓋部2Bに対して導電部材50を取り付けておいて、筐体蓋部2B及び導電部材50を筐体本体部2Aに取り付けることができるので、このような手順の方が作業効率がよい場合に採用すると好ましい。また、第三参考例とは異なり、エラストマー部53の粘着性に頼ることなく、筐体蓋部2Bに導電部材50を取り付けることができる。したがって、エラストマー部53を構成するエラストマー材料に配合される成分を選定するに当たっては、粘着性にこだわることなく、他の機能(例えば、熱伝導性等。)を重視した配合にすることができ、そのような配合にした場合でも、導電部材50を筐体蓋部2Bに装着することができる。
(2.3.6)第六参考例
次に、第六参考例について説明する。図21Aから図21Dまでの各図に示すように、第六参考例において例示する導電部材60は、導電部61と、エラストマー部63とを有する。図21Aに示す導電部61を構成する網状体61Aは、第一参考例において図12Cに示した網状体11Aと同様に構成されたものである。
第六参考例においては、網状体61Aを、図21A中に一点鎖線で示す折り曲げ位置において折り曲げることにより、図21Bに示すように、導電部61の後端614の左右両端にも折り目を構成する。その上で、このような網状体61Aに対し、図21Cに示すように、インサート成形によってエラストマー部63が付加される。図21Cに示すエラストマー部63は、導電部61の後端614を完全に内部に包含するので、このままでも導電部61の後端614におけるほつれを抑制することができる。ただし、第一参考例等と同様に、更に図21Cに一点鎖線で示す切断位置でカットすることにより、図21Dに示すような構造にしてもよい。
第一参考例においては、導電部11の後端114において、はみ出し部15の端縁に折り目となっていない箇所が僅かに残されていたが、第六参考例の導電部材60であれば、はみ出し部65の端縁は、全て折り目となる部分で構成されるので、第一参考例以上にほつれ抑制効果を高めることができる。
(2.3.7)第七参考例
次に、第七参考例について説明する。図22Aから図22Cまでの各図に示すように、第七参考例において例示する導電部材70は、導電部71と、エラストマー部73とを有する。図22Aに示す導電部71を構成する網状体71Aは、第一参考例において図12Bに示した網状体11Aと同様に構成されたものである。すなわち、図22Aに示す網状体71Aは、円筒状の網状体71Aを直径方向に押し潰したものであるが、図12Cに示した網状体11Aとは異なり、二つ折りにはされていない。
このような網状体71Aに対し、図22Bに示すように、インサート成形によってエラストマー部73が付加される。
そして、図22Bに一点鎖線で示す切断位置でカットすることにより、図22Cに示すように、導電部71の前端711及び後端714が、エラストマー部73とともに切り揃えられ、エラストマー部73の内部に埋め込まれる。
このような導電部材70でも、はみ出し部75の左右両側にある端縁は、折り目となる部分で構成されるので、ほつれの発生を抑制することができる。また、導電部71の前端711及び後端714は、大部分がエラストマー部73の内部に埋め込まれるので、ほつれの発生を抑制することができ、エラストマー部73の内部に埋め込まれない部分は僅かに残るものの、その範囲を実用上問題がない程度まで少なくすることができる。
(2.3.8)第八参考例
次に、第八参考例について説明する。図23Aから図23Cまでの各図に示すように、第八参考例において例示する導電部材80は、導電部81と、エラストマー部83とを有する。図23Aに示す導電部81を構成する網状体81Aは、第一参考例において図12Bに示した網状体11Aと同様に構成されたものである。すなわち、図23Aに示す網状体81Aは、円筒状の網状体81Aを直径方向に押し潰したものであるが、図12Cに示した網状体11Aとは異なり、二つ折りにはされていない。
このような網状体81Aが、図23A中に一点鎖線で示す折り曲げ位置において折り曲げられ、図23Bに示すように、厚さ方向に直交する面の形状が四角形に構成される。これにより、その四角形が有する四辺に相当する箇所全てに折り目となる部分が設けられる。このような網状体81Aに対し、図23Cに示すように、インサート成形によってエラストマー部83が付加される。
このような導電部材80であれば、はみ出し部85を導電部材80の周縁全周にわたって設けることができる。しかも、そのようなはみ出し部85の端縁は、全てが折り目となる部分によって構成されるので、ほつれの発生を抑制することができる。
(2.3.9)第九参考例
次に、第九参考例について説明する。図24Aから図24Cまでの各図に示すように、第九参考例において例示する導電部材90は、導電部91と、エラストマー部93とを有する。図24Aに示す導電部91を構成する網状体91Aは、第一参考例において図12Bに示した網状体11Aと同様に構成されたものである。すなわち、図24Aに示す網状体91Aは、円筒状の網状体91Aを直径方向に押し潰したものであるが、図12Cに示した網状体11Aとは異なり、二つ折りにはされていない。
このような網状体91Aが、図24A中に一点鎖線で示す折り曲げ位置において折り曲げられ、図24Bに示すように、厚さ方向に直交する面の形状が四角形に構成される。これにより、その四角形が有する四辺に相当する箇所全てに折り目となる部分が設けられる。このような網状体91Aに対し、図24Cに示すように、インサート成形によってエラストマー部93が付加される。
このような導電部材90であれば、はみ出し部95を導電部材90の周縁全周にわたって設けることができる。しかも、そのようなはみ出し部95の端縁は、全てが折り目となる部分によって構成されるので、ほつれの発生を抑制することができる。
(2.4)補足
以上、導電部材について、例示的な参考例を挙げて説明したが、上述の参考例は先に説明した参考技術の一態様として例示されるものに過ぎない。すなわち、先に説明した参考技術は、上述の例示的な参考例に限定されるものではなく、先に説明した参考技術の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
例えば、上記各参考例では、図25Aに示すように、導電部101の片面がエラストマー部103の片面において露出するように配置される例を示したが、これに限らない。例えば、図25Bに示すように、導電部101の両面がエラストマー部103に埋め込まれていてもよいし、図25Cに示すように、導電部101の両面がエラストマー部103の両面において露出していてもよい。これらの構成は、導電部101を他の部材に接触させたいか、導電部101と他の部材との接触を避けたいか、いずれかに応じて任意に採用すればよい。
また、上記各参考例では、円筒状に編成された網状体をベースにして導電部を構成する例を示したが、平板状に編まれた網状体や平板状に織られた網状体をベースにして導電部を構成してもよい。平板状に編まれた網状体や平板状に織られた網状体の場合は、例えば、周縁部を全周にわたって折り曲げることにより、端縁を折り目となる部分で構成し、折り返された網状体本来の端縁については、エラストマー部に埋め込めばよい。
なお、以上説明した例示的な参考例から明らかなように、参考技術として説明した導電部材は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
まず、参考技術として説明した導電部材において、エラストマー部は、厚さ方向に貫通する開口部を有し、当該開口部内において導電部が露出していてもよい。
このように構成された導電部材によれば、開口部を介して放熱を図ることができ、その場合でも、開口部には網状体からなる導電部が配置されているので、同様な導電部が存在しない場合に比べ、電磁波が漏れるのを抑制することができる。
また、参考技術として説明した導電部材において、導電部は、円筒状に編まれた網状体が直径方向に押し潰されて、厚さ方向に直交する面の形状が四角形に構成されることにより、当該四角形が有する四辺のうち、二辺に相当する箇所に折り目となる部分が設けられた構造とされていてもよい。
このように構成された導電部材によれば、円筒状に編まれた網状体を直径方向に押し潰すだけで、二辺に相当する箇所に折り目となる部分が設けられた四角形の面状網状体を構成することができる。したがって、四辺全てがカットされた端面となっている面状網状体とは異なり、四辺全てにおいてほつれ対策を施さなくても済み、簡便に所期の導電部材を構成することができる。
また、参考技術として説明した導電部材において、導電部は、二辺に相当する箇所に折り目となる部分を有する構造とされてから、更に折り曲げられることにより、二辺とは別の一辺以上に相当する箇所にも折り目となる部分が設けられた構造とされていてもよい。
このように構成された導電部材によれば、円筒状に編まれた網状体を直径方向に押し潰してから、更に折り曲げるだけで、三辺に相当する箇所に折り目となる部分が設けられた四角形の面状網状体を構成することができる。したがって、四辺全てがカットされた端面となっている面状網状体とは異なり、四辺全てにおいてほつれ対策を施さなくても済み、簡便に所期の導電部材を構成することができる。
また、参考技術として説明した導電部材において、エラストマー部は、粘着性を有していてもよい。
このように構成された導電部材によれば、エラストマー部の粘着性を利用して導電部材を所期の取り付け位置に貼着することができる。
この他、参考技術として説明した導電部材において、エラストマー部を構成するエラストマー材料中には、絶縁性、放熱性、熱拡散性、防水性、防塵性、導電性、磁性、及び誘電性の中から選ばれる少なくとも一種の特性を、未配合の場合よりも向上させる機能性フィラーが配合されていてもよい。
例えば、エラストマー材料中には、導電材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部に導電性を付与することができる。導電材として機能するフィラーとしては、例えば、銀、アルミニウム、銅、カーボンなどのフィラーを挙げることができる。
あるいは、エラストマー材料中には、磁性材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部に磁性を付与することができる。磁性材として機能するフィラーとしては、例えば、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al合金、アモルファス合金などのフィラーを挙げることができる。
あるいは、エラストマー材料中には、誘電材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部の誘電率を向上させることができる。誘電材として機能するフィラーとしては、例えば、チタン酸バリウム、炭化ケイ素などのフィラーを挙げることができる。
あるいは、エラストマー材料中には、熱伝導材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部の熱伝導率を向上させることができる。熱伝導材として機能するフィラーとしては、例えば、アルミナ、マグネシアなどのフィラーを挙げることができる。どの程度の熱伝導率を確保すべきかは、目的に応じて適宜調整されていればよいが、例えばエラストマー部が1W/m・K以上の熱伝導率を有していればよい。
あるいは、エラストマー材料中には、熱放射材として機能するフィラーが配合されていてもよい。この場合、エラストマー部の熱放射率を向上させることができる。熱放射材として機能するフィラーとしては、例えば、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどのフィラーを挙げることができる。どの程度の熱放射率を確保すべきかは、目的に応じて適宜調整されていればよいが、例えばエラストマー部の熱放射率が0.8以上に構成されていればよい。
[参考技術における符号の説明]
10,20,30,40,50,60,70,80,90…導電部材、11,21,31,41,51,61,71,81,91,101…導電部、11A,41A,61A,71A,91A…網状体、13,23,33,43,53,63,73,83,93,103…エラストマー部、15,25,35,45,55,65,75,85,95…はみ出し部、43A…開口部、57…取り付け孔。
[参考技術の要約]
(課題)導電部を構成する網状体の端部にほつれが生じにくい導電部材を提供すること。
(解決手段)導電部材10は、導電性を有する網状体11Aによって構成された導電部11と、エラストマー材料によって構成されたエラストマー部13とを有し、導電部11及びエラストマー部13は、それぞれが面状に構成され、それぞれの厚さ方向を一致させた状態で、導電部11の一部がエラストマー部13を構成するエラストマー材料中に埋め込まれた構造とされ、導電部11の周縁には、導電部11の周縁の少なくとも一部がエラストマー部13の周縁よりも外側へはみ出した構造とされたはみ出し部15を有し、はみ出し部15では、網状体11Aが折り曲げられて、その折り目となる部分ではみ出し部15の端縁の一部が構成されている。
(選択図)図11