JP4152181B2 - 電磁波シールド材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気的な隙間を通過する電磁波をシールドするために用いられる電磁波シールド材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子機器が外部に放射する電磁波や、外部から電子機器に侵入する電磁波を遮蔽し、電子機器が他の電子機器に影響を与えたり、周囲に存在する電磁波の影響を受けたりしないようにする方法の一つとして、電子機器の筐体を導電性を有する部材で構成することが行われている。
【0003】
また、このような筐体に形成された開口部の周縁部と、その開口部を覆う蓋体との間等に生じる隙間を電気的に塞ぐために、様々な電磁波シールド材が提案されている。
その一つとして、プラスチック等からなり断面形状がV字形に成形された基材の表面に、導電層が形成されたプラスチックシートからなる導電性被覆材を覆設してなる電磁波シールド材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この電磁波シールド材は、隙間を形成する二つの導電部材間に配置して使用され、両導電部材により両側から押圧されると、基材の持つ弾性力により両導電部材に密着して、両者間の隙間を塞ぐと共に両者間の導通を確保する。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第5070216号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような電磁波シールド材は、基材によって決まった形状を有しているため、その形状に適合しない場所で使用すると、充分なシールド性能が得られなかったり、基材に無理な力が加わって劣化を早めたり破損したりしてしまうという問題があった。
【0007】
このような問題は、様々な形状の基材を予め用意しておけば解決するが、それぞれ少量ずつしか使用しない場合には、製造コストが非常に高いものとなってしまうという問題があった。
本発明は、こうした問題点に鑑みなされたものであり、製造が容易で様々な形状に対応可能な電磁波シールド材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、シート状に形成された基材と、該基材の周囲に覆設される導電性被覆材とを備えた電磁波シールド材において、前記基材の表面には、切り込み又は溝からなる折曲案内部が形成され、該折曲案内部の形成箇所にて該折曲案内部の形成面を外側にして前記基材を折り曲げた形状が、該折曲案内部に融入した熱融着性材によって保持され、且つ該熱融着性材が前記折曲案内部を補強する補強材となっていることを特徴とする。
【0009】
なお、熱融着性材とは、所定の温度以上に加熱すると融解して接着力が低下し、そこから冷却する段階で接着力を発揮する熱融着性をもつ材料であり、具体的には、例えば、ホットメルト、熱可塑性接着剤、熱接着テープ、アイロン接着のり等を用いることができる。
【0010】
このように構成された本発明の電磁波シールド材は、熱融着性材が基材と導電性被覆材とを一体化する接着剤として作用すると共に、折曲案内部を補強する補強材ともなる。
【0011】
って、本発明の電磁波シールド材によれば、電磁波を遮断したい導電部材間の状態に適した形状に適宜成形することができ、しかも、成形後の強度や形状の保持力も十分に確保することができる。
【0012】
つまり、簡単な手作業にて所望の屈曲形状を有した電磁波シールド材を得ることができ、しかも、加熱するだけで何度でも成形し直すことができるため、微妙な角度調整なども簡単に行うことができる。
なお、基材や導電性被覆材の具体的な材料は、使用用途、使用箇所の環境等に応じたものを適宜選択すればよいが、熱融着性材を融解させる際に加えられる熱に耐え得る材料を選定する必要がある。
【0013】
また、折曲案内部を構成する切り込みや溝の数は、一本でも複数本でもよい
【0014】
更に、折曲案内部を構成する切り込み及び溝の深さは、基材を折り曲げる時に応力集中が起こる程度で良く、できるだけ浅い方が望ましい。但し、切り込みとは、例えば、ナイフなどで切り目をつけることで形成されるものであり、また、溝とは、例えば、切削加工や押圧などで形成されるものである。
【0018】
本発明の電磁波シールド材は、例えば、折曲案内部に熱融着性材を融入した基材を作製した後で、導電性被覆材を覆設することで作製してもよい。ここで、折曲案内部に熱融着性材を融入した基材とは、加熱により融解した熱融着性材を、折曲案内部に流し込み、その状態で熱融着性材を冷却したもののことである。また、この場合、基材の表面の一部又は全体が熱融着性材で覆われるように構成されていてもよい。
【0019】
ころで、請求項1に記載の電磁波シールド材において、基材は、請求項2記載のように、部分的に他の部位より大きな弾性力を有した弾性部位を有するように構成されていてもよい。
【0020】
この場合、弾性部位を覆う導電性被覆材を、当該電磁波シールド材を取り付けるべき導電部材に当接させれば、導電性被覆材と導電部材とを密着させることができ、両者間の良好な導通状態を確保できる。
また、弾性部位は、請求項3記載のように、基材の他の部位より肉厚に形成されていてもよい。この場合、例えば、弾性部位の厚さより狭い隙間であれば、その隙間に弾性部位を挿入するだけで、その弾性力によって、導電性被覆材が両導電部材に挟持されるため、導電性接着剤などを用いなくても、両導電部材間の導通を確保した状態での取付を行うことができる。
【0021】
また、このように接着剤を使用することなく取り付けることができれば、例えば、導電部材と電磁波シールド材との位置関係が振動等によってずれることがあっても、電磁波シールド材を破損してしまうことがなく、安定した導通を確保できる。
【0022】
なお、弾性部位は、基材の他の部位と最初から一体に形成されたものでもよいが、請求項4に記載のように、基材の他の部位とは別体に形成され、接着により一体化されているものであってもよい。
この場合、弾性部位として、芯材としての強度が要求される他の部位とは異なる材質のものを用いることができるため、材料の選択範囲を広げることができ、例えば、大きな弾性力が得られるウレタンやシリコーンゴム等でも問題なく用いることができる。
【0023】
次に請求項5記載の電磁波シールド材のように、基材が長尺状に形成され、且つ折曲案内部及び弾性部位が、その基材の長手方向に沿って形成されてれば、これを所望の長さにて適宜切断することができ、用途に適した大きさの電磁波シールド材を簡単に得ることができる。
【0024】
ところで、加熱により熱融着性材を一旦融解させた後、冷却された電磁波シールド材では、基材と導電性被覆材とが接着されているため、使用時の変形によって、導電性被覆材に引っ張り又は圧縮の応力が加わり、特に屈曲形状に成形された折曲案内部の近傍では、その応力は大きなものとなる。
【0025】
そこで、導電性被覆材としては、このような応力を充分に吸収できるような伸縮性を有することが好ましく、例えば、請求項6記載のように、導電布、又は少なくとも一方の面に導電面が形成された導電性プラスチックフィルム等を好適に用いることができる。
【0026】
また、導電性被覆材の表面の一部には、請求項7記載のように、両面粘着テープが貼付されていてもよい。
この場合、電磁波シールド材を取り付けるべき場所に、電磁波シールド材を保持するための構造が無くても、両面粘着テープによって、任意の場所に簡単に取り付けることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
[第1実施例]
図1は、(a)が本実施例の電磁波シールド材1の構成を示す斜視図、(b)が電磁波シールド材1を成形した状態を示す説明図、(c)は成形した電磁波シールド材1の使用例を示す説明図である。
【0028】
図1(a)に示すように、本実施例の電磁波シールド材1は、長尺状に形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)シートからなる基材20と、金属コート繊維を編成した導電布からなり、基材20の全周に覆設された導電性被覆材40と、熱可塑性および熱融着性(約130〜160℃に加熱すると融解し、冷却により接着性を発揮する)を有したホットメルトからなり、基材20と導電性被覆材40との間に介在する熱融着性材50とにより構成されている。
【0029】
そして、基材20の片面には、基材20の長手方向に沿って折曲案内部としての一本の溝20aが形成されている。また、導電性被覆材40には、当該電磁波シールド材1の表面を形成する面に、溝20aの位置を外部から視認できるようにするための目印である折り目線40aが記されている。
【0030】
なお、本実施例では、基材20としてPETシートを用いているが、PET以外の材料からなるプラスチック板を用いてもよい。このプラスチック板の材料としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、ポリアセタール、ポリアレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサロファイド等を用いることができる。また、基材として、プラスチック板の代わりに、アルミニウム等からなる金属板を用いてもよい。
【0031】
また、本実施例では、導電性被覆材40として金属コート繊維を編成した導電布を用いているが、基材20の外形に適合する充分な柔軟性を有するものであれば、どのような織導電布又は不織導電布を用いてもよい。また、アルミ箔などの金属箔、スパッタリング,真空蒸着,メッキ等によりプラスチックフィルムに金属膜を成膜したものなどを用いてもよい。
【0032】
ここで、この電磁波シールド材1の製造方法を説明する。
まず、基材20には、使用の際に折り曲げられたときに、その折り曲げによって山折りの稜となるべき部分に、所定深さの溝20aを形成する。
なお、溝20aは、バイト等の刃物で切り欠いたり、細長い型を押しつけて圧痕を残すことで形成する。また、溝20aの深さは、電磁波シールド材1を折り曲げる時に応力集中が起こり、しかも、折り曲げ成形後に千切れや極端な強度低下のない程度のものとする必要がある。具体的に、例えばPETシートからなる基材20の厚さが0.1mm程度であれば、その厚みの20%〜50%の深さにすればよい。
【0033】
次に、導電性被覆材40の片面に、加熱して柔らかくした熱融着性材50を塗布することで熱融着性材50の層を形成し、この熱融着性材50の積層面が基材20に当接するようにして導電性被覆材40を基材20に巻き付けることにより、導電性被覆材40を基材20の周囲に覆設する。
【0034】
次に、導電性被覆材40を巻き付けた基材20をローラにより繰り出し、その繰り出された基材20を、熱融着性材50が融解する温度(130〜160℃)に熱せられた型を通過させる。すると、型の持つ熱により融解した熱融着性材50が、型の通過後に冷却することにより、導電性被覆材40が基材20に貼着される。
【0035】
次に、基材20の溝20aを覆う箇所の導電性被覆材40の表面に、溝20aの位置をなぞるように着色ペンで折り目線40aを記す。
最後に、導電性被覆材40が覆設された基材20を、ハサミなどにより所定の長さ(例えば1m)に切断して電磁波シールド材1が完成する。
【0036】
このようにして作製された本実施例の電磁波シールド材1は、そのままの形状で使用してもよいし、以下に説明する折り曲げ作業を行って、例えば、図1(b)に示すような断面形状を有するよう成形して使用してもよい。
即ち、折り曲げ作業では、まず、電磁波シールド材1の全体を、アイロンなどを用いて加熱して、熱融着性材50を融解させ、折り目線40aを目印にして、溝20aが山折りの稜となるように折り曲げる。その折り曲げにより形成される2つの電磁波シールド材片1a、1bが、所望の角度を為すように形状を保持したまま熱融着性材50を冷却する。なお、冷却の際には、所望の形状を有する型に、電磁波シールド材1を填め込むようにしてもよい。
【0037】
なお、熱融着性材50が融解している間に、基材20と導電性被覆材40との位置関係(接着位置)が、折り曲げにより生じた応力が解消されるように変化すると共に、折り曲げにより開かれた溝20aに、融解した熱融着性材50が融入し、その状態で、熱融着性材50は硬化する。
【0038】
その結果、図1(b)に示すように、溝20aに沿って所望の曲げ量にて折り曲げられた形状を有する電磁波シールド材1が得られる。
以下では、成形された電磁波シールド材1において、溝20aにより仕切られた二つの部分を、それぞれ電磁波シールド材片1a,1bと呼ぶものとする。
【0039】
このように成形された電磁波シールド材1は、例えば、図1(c)に示すように、電子装置の筐体を構成する2つの導電部材60、61の継ぎ目などにて使用され、ここでは、電磁波シールド材片1aの端縁部が、両面粘着テープ90により、一方の導電部材61に固定されている。
【0040】
そして、電磁波シールド材片1aの固定面に対する電磁波シールド材片1bの端縁部の高さが、導電部材60,61が形成する隙間の幅より高くなるように成形されていれば、導電部材60,61に挟み込まれた時に、電磁波シールド材片1b側の端縁部が導電部材60に当接する。その結果、電磁波シールド材1の屈曲形状を保持しようとする弾性力により、電磁波シールド材1の折り目部分、及び電磁波シールド材片1bの端縁部が、それぞれ導電部材60,61に圧接され、互いに導通する。
【0041】
つまり、電磁波シールド材1を構成する導電性被覆材40が、両導電部材60、61が形成する隙間を電気的に塞いだ状態となるため、この間を通過しようとする電磁波は、電磁波シールド材1によって遮断されることになる。
以上説明したように、本実施例の電磁波シールド材1では、基材20に溝20aが形成されているため、手作業であっても、この溝20aの形成位置にて簡単折り曲げることができ、しかも、加熱によって熱融着性材50を融解させた後、これを冷却することにより、その折り曲げた形状を保持することができる。つまり、本実施例の電磁波シールド材1によれば、折り曲げ角度を簡単な作業にて任意に設定できるため、様々な大きさの隙間にて使用することができる。
【0042】
また、折り曲げ作業の際には、熱融着性材50を一旦溶融させているため、基材20と導電性被覆材40との接着状態が導電性被覆材40に無理な応力が加わらないように変化し、また、溝20aの形成部分が溝20aに融入した熱融着性材50によって補強されるため、導電性被覆材40の破損や溝20a形成部位での基材20の破損を防止できる。
【0043】
また、本実施例では、電磁波シールド材1の表面に、折り目線40aが記されているため、折り曲げ作業の際に、誤った部位を折り曲げようとしたり、折り曲げるべき場所を逆方向に折り曲げてしまうことによる電磁波シールド材1の不要な変形や溝20a形成部位の破損を防止できる。
【0044】
特に、図1(b)(c)に示したように、電磁波シールド材1の折り曲げ角度を鈍角にして使用した場合には、折り曲げ角度を鋭角にした場合とは異なり、導電部材60,61によって両側から押圧された時に、溝20aを開く方向の力が加わることがないため、より大きな押圧力に対しても、基材20の折り目部分が破損してしまうことがなく、安定した性能を長期間に渡って得ることができる。
【0045】
なお、本実施例では、折曲案内部として溝20aを用いたが、溝20aに代えて、カッターナイフなどによって基材20を所定の深さに切ることによって形成された切り込みを用いてもよい。
また、本実施例では、電磁波シールド材1の製造方法として、導電性被覆材40に、加熱して柔らかくした熱融着性材50を塗布する行程が含まれているが、予め熱融着性材50が積層された導電性被覆材40を使用して、熱融着性材50を塗布する行程を省略してもよい。
【0046】
また、電磁波シールド材1の成形のために行う加熱及び冷却の工程は、工場において製造の段階で行ってもよいし、電磁波シールド材1を装置などに組み付ける作業者が、その作業現場にて行ってもよい。
[第2実施例]
次に第2実施例について説明する。
【0047】
図2は、(a)が本実施例の電磁波シールド材2の構成を示す斜視図、(b)が電磁波シールド材2を成形した状態を示す説明図、(c)は成形した電磁波シールド材2の使用例を示す説明図である。
図2(a)に示すように、本実施例の電磁波シールド材2は、第1実施例の電磁波シールド材1と比較して、基材20に形成された溝20aの本数が異なるだけであり、本実施例では、基材20の同一面に2本の溝20aが形成されている。
【0048】
このように構成された電磁波シールド材2は、図2(b)に示すように、2本の溝20aがそれぞれ山折りの稜となるよう折り曲げ、その形状を保持したまま、加熱して熱融着性材50を融解させた後、これを冷却することにより、折り曲げた形状を固定する。
【0049】
このように成形された電磁波シールド材2は、第1実施例の電磁波シールド材1と同様に、例えば、図2(c)に示すように、電子装置の筐体を構成する二つの導電部材60,61の継ぎ目などにて使用される。ここでは、電磁波シールド材2の二本の溝20aに挟まれた部分が、両面粘着テープ90等により導電部材61に固定されている。
【0050】
この電磁波シールド材2は、導電部材60、61の間に挟み込まれた時に、両端縁部が導電部材60に当接して、断面形状が略W字形となるように変形する。すると、電磁波シールド材2の両端縁部が導電部材60に圧接されると共に、成形により形成された折り目部分が導電部材61に圧接され、電磁波シールド材2を介して導電部材60,61が導通する。
【0051】
この時、両面粘着テープ90の厚みが、両導電部材60,61が形成する隙間の大きさに近いものとされていれば、両面粘着テープ90が貼着された電磁波シールド材2の中央付近も、導電部材60に当接する。
以上説明したように、本実施例の電磁波シールド材2によれば、第1実施例の場合と同様の作用,効果が得られるだけでなく、特に図2(b)に示すように成形し、図2(c)に示すように使用した場合には、導電部材60と導電部材61との隙間に、この隙間を塞ぐ導電性被覆材40による導電面が多重に形成されることになるため、導電部材60と導電部材61との隙間を通過しようとする電磁波を、より確実に遮蔽することができる。
[第3実施例]
次に第3実施例について説明する。
【0052】
図3は、(a)が本実施例の電磁波シールド材3の構成を示す斜視図、(b)が電磁波シールド材3を成形した状態を示す説明図、図4は、(a)が成形した電磁波シールド材3の使用例を示す説明図、(b)が(a)中の範囲A部分の拡大図である。図中の右向き斜線は導電部位を表している。
【0053】
なお、本実施例の電磁波シールド材3は、第2実施例の電磁波シールド材2とは、基材20の構成が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
即ち、本実施例の電磁波シールド材3では、図3(a)に示すように、導電性被覆材40に覆設された基材20が、長尺状に形成されたPETシートからなる本体21と、断面が長方形の長尺紐状に形成されたウレタンからなる弾性体22とからなる。なお、弾性体22は、溝20aの形成面とは反対側の面に設けられ、本体21の長手方向に沿った一方の縁部に、両面粘着テープ35によって貼着されている。以下では、この弾性体22が貼着された基材20の部位を肉厚部と称する。
【0054】
そして、導電性被覆材40には、第1実施例の場合と同様に、当該電磁波シールド材3の表面を形成する面に、2本の溝20aの位置を外部からそれぞれ視認できるようにするための折り目線40a(図示せず)が記されている。その他の構造及び製法は、第1実施例と同様である。
【0055】
このように構成された電磁波シールド材3は、例えば、図3(b)に示すように、折り目線40aを目印にして、溝20aの形成箇所を、その溝20aが山折りの稜となるようにほぼ直角に折り曲げることにより、断面コの字形に成形する。この状態で第1実施例の場合と同様に、加熱により熱融着性材50を融解させた後、冷却することで電磁波シールド材3の形状を固定する。
【0056】
以下では、断面コの字形を形成する電磁波シールド材3の三つの部分のうち、弾性体22を含む部分を電磁波シールド材片3a、この電磁波シールド材片3aに対向する部分を電磁波シールド材片3c、この両者を連結する部分を電磁波シールド材片3bと称する。
【0057】
このように成形された電磁波シールド材3は、例えば、図4に示すように、片面に導電面62aを有する方形板状のガラス板62を、導電性を有する固定フレーム80に、導電面62aと固定フレーム80とを導通させた状態で取り付ける際に使用される。
【0058】
即ち、まず、電磁波シールド材3を、電磁波シールド材片3a,3cにて、ガラス板62の周縁部を挟み込むようにして、ガラス板62の全周に取り付ける。この時、電磁波シールド材片3bをガラス板62の端面、電磁波シールド材片3cをガラス板62の非導電面に接着し、電磁波シールド材片3a(肉厚部)と導電面62aとは単に当接した状態となるように取り付ける。
【0059】
このように、電磁波シールド材3が取り付けられたガラス板62を、固定フレーム80が形成する開口を塞ぎ、且つガラス板62の非導電面が固定フレーム80側を向くようにして配置する。なお、固定フレーム80の開口縁部には、ガラス板62に取り付けられた電磁波シールド材3(特に、電磁波シールド材片3c)が当接する位置に、導電性ガスケット91が固定されている。
【0060】
そして、断面形状がL形の絶縁性材料からなる部材で四辺が構成されたカバー70により、ガラス板62の周縁部を4辺とも覆い、その状態で、カバー70を図示しないネジなどにより固定フレーム80に固定する。
これにより、電磁波シールド材3が取り付けられたガラス板62の周縁部は、固定フレーム80とカバー70とによって把持され、ガラス板62が固定フレーム80に取り付けられる。
【0061】
また、この時、電磁波シールド材3が取り付けられたガラス板62の周縁部は、導電性ガスケット91と、電磁波シールド材片3aの肉厚部を構成する弾性体22とで両面から付勢されることにより、電磁波シールド材片3aと導電面62a、電磁波シールド材片3cと導電性ガスケット91がそれぞれ密着する。
【0062】
その結果、電磁波シールド材3及び導電性ガスケット91を介したガラス板62の導電面62aと固定フレーム80との導通が、ガラス板62の全周に渡って確保されると共に、ガラス板62の端面が電磁波シールド材3で覆われることになる。
【0063】
従って、電磁波シールド材3を、このように使用した場合には、ガラス板62の端面から侵入又は漏出しようとする電磁波を確実に遮断することができる。
以上説明したように、本実施例の電磁波シールド材3によれば、第1及び第2実施例と同様に、基材20に溝20aが形成されているため、手作業であっても、この溝20aの形成位置にて簡単に折り曲げることができ、しかも、加熱によって熱融着性材50を融解させた後、冷却することにより、その折り曲げた形状を保持することができる。
【0064】
また、電磁波シールド材3の成形時には、熱融着性材50を一旦融解させているため、基材20と導電性被覆材40との接着状態が導電性被覆材40に無理な応力が加わらないように変化し、また、溝20aの形成部分が溝20aに融入した熱融着性材50によって補強されるため、導電性被覆材40の破損や溝20a形成部位での基材20の破損を防止できる。
【0065】
また、本実施例では、電磁波シールド材3の表面に、折り目線40aが記されているため、折り曲げ作業の際に、誤った部位を折り曲げようとしたり、折り曲げるべき場所を逆方向に折り曲げてしまうことによる電磁波シールド材3の不要な変形や溝20a形成部位の破損を防止できる。
【0066】
更に、本実施例では、基材20に弾性体22が設けられているため、この弾性体22の弾性力を利用して、外部の導電部材との導通性及び密着性を確保することができる。その結果、本実施例の電磁波シールド材3は、例えば、がたつきを許容したり、リサイクル時の分解性を良くするために、接着を用いることができない場所にて、電磁波の遮蔽を行う必要がある場合などに、好適に用いることができる。
【0067】
なお、本実施例では、基材20に2本の溝20aを形成したが、例えば、図6(a)に示す電磁波シールド材5のように、基材20には溝20aを一本だけ形成し、弾性体22として、本体21から突出量が大きいものを使用してもよい。このように構成された電磁波シールド材5では、溝20aの形成箇所にて、溝20aが山折りの稜となるようにほぼ直角に折り曲げれば、断面コの字形に成形されるため、図4に示すような用途では、電磁波シールド材3の代わりとして用いることができる。
【0068】
また、本実施例では、弾性体22を一つだけ設けたが、例えば、図6(b)に示す電磁波シールド材6のように、本体21の両端縁部の互いに異なる面にそれぞれ弾性体22を設けたり、図6(c)に示す電磁波シールド材7のように、本体21の両端縁部の同一面にそれぞれ弾性体22を設けたりしてもよい。これらを用いた場合、図4に示すような用途では、ガスケット91を省略することができる。
【0069】
更に、図6(d)に示す電磁波シールド材8のように、本体21の一方の端縁部にて本体21を挟むようにして一対の弾性体22を設けてもよいし、図示しないが、本体21の両端縁部にてそれぞれ本体21を挟むように各一対の弾性体22を設けてもよい。
[第4実施例]
次に第4実施例について説明する。
【0070】
図5は、(a)が本実施例の電磁波シールド材4の構成を示す説明図、(b)は成形した電磁波シールド材4の使用例を示す説明図である。
図5(a)に示すように、本実施例の電磁波シールド材4は、第3実施例の電磁波シールド材3と比較して、基材20を構成する弾性体22の取付位置が異なるだけであり、本実施例では、2本の溝20aによって3分割される電磁波シールド材片4a〜4cのうち、中央に位置する電磁波シールド材片4bに取り付けられている。なお、第3実施例の場合と同様に、溝20aの形成面と弾性体22の取付面とは互いに異なるようにされている。
【0071】
このように構成された電磁波シールド材4は、溝20aの形成箇所にて、2本の溝20aがそれぞれ山折りの稜となるようにほぼ直角に折り曲げ、断面コの字形に成形し、その形状を保持したまま、加熱して熱融着性材50を融解させた後、これを冷却することで電磁波シールド材4の形状を固定する。
【0072】
このように成形された電磁波シールド材4は、例えば、図5(b)に示すように、端面に導電面72aを有する方形板状のガラス板72を、第3実施例にて図4を用いて説明したものと同じ固定フレーム80に、導電面72aと固定フレーム80とを導通させた状態で取り付ける際に使用される。
【0073】
即ち、まず、電磁波シールド材4を、電磁波シールド材片4a,4cにて、ガラス板72の周縁部を挟み込むようにして、ガラス板72の全周に取り付ける。これにより、電磁波シールド材片4bの肉厚部とガラス板72の導電面72aとが当接した状態となる。
【0074】
以下、第3実施例の場合と全く同様に、電磁波シールド材4が取り付けられたガラス板72を、カバー70を用いて固定フレーム80に取り付ける。
これにより、電磁波シールド材4が取り付けられたガラス板72の周縁部は、固定フレーム80とカバー70とによって把持され、ガラス板72が固定フレーム80に取り付けられる。
【0075】
また、この時、電磁波シールド材4が取り付けられたガラス板72の周縁部を、導電性ガスケット91が付勢することにより、電磁波シールド材片4cと導電性ガスケット91とが密着する。また、電磁波シールド材片4aの肉厚部を構成する弾性体22が、ガラス板72の端面を四方から付勢し合うことにより、電磁波シールド材片4bと導電面72aとが密着する。
【0076】
その結果、電磁波シールド材4及び導電性ガスケット91を介したガラス板72の導電面72aと固定フレーム80との導通が、ガラス板72の全周に渡って確保される。
以上説明したように、本実施例の電磁波シールド材4によれば、第3実施例の場合と同様の作用,効果が得られるだけでなく、特に図5(b)に示すように成形して使用した場合には、ガラス板72の端面を四方から付勢する弾性体22により、固定フレーム80に取り付けられたガラス板72のガラス面に沿った方向のがたつきも防止することができる。
【0077】
以上、本発明のいくつかの実施例について説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものでなく、様々な態様にて実施することができる。
例えば、上記実施例では、基部20に1又は2本の溝20aを形成し、全ての溝20aを折り曲げて使用しているが、溝20aは3本以上形成してもよい。また、複数の溝20aを有する場合は、必ずしも全ての溝20aを使用する必要はなく、適宜必要な溝20aのみを選択して折り曲げに使用すればよい。
【0078】
また、上記実施例では、導電部材61への固定を行う際に両面粘着テープ90を使用しているが、この両面粘着テープ90は、予め電磁波シールド材に貼着しておいてもよい。
なお、上記実施例では、弾性体22として断面が長方形のものを用いたが、図7(a)に示す電磁波シールド材9のように、断面が半楕円形又は半円形の弾性体22を用いてもよい。
【0079】
また、上記実施例では、弾性体22を、本体21の板面に設けたが、図7(b)に示す電磁波シールド材10のように、本体21の端面に設けたり、図7(c)に示す電磁波シールド材11のように、本体21の端縁部を覆うように設けたりしてもよい。
【0080】
更に、複数本の溝20aを形成する場合は、必ずしも一方の面にのみ形成する必要はなく、図7(b)に示すように、異なる面に形成してもよい。
なお、図8(a)〜(c)は、図7(a)〜(c)に示す電磁波シールド材9〜11の成形例である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は第1実施例の電磁波シールド材1の構成を示す斜視図、(b)はその成形例を示す説明図、(c)はその使用例を示す説明図である。
【図2】 (a)は第2実施例の電磁波シールド材2の構成を示す斜視図、(b)はその成形例を示す説明図、(c)はその使用例を示す説明図である。
【図3】 (a)は第3実施例の電磁波シールド材3の構成を示す斜視図、(b)はその成形例を示す説明図である。
【図4】 (a)は第3実施例の電磁波シールド材3の使用例を示す説明図、(b)は(a)中の領域Aの拡大図である。
【図5】 (a)は第4実施例の電磁波シールド材4の構成を示す説明図、(b)はその使用例を示す説明図である。
【図6】 第3実施例の変形例である電磁波シールド材5〜8の構成を示す説明図である。
【図7】 他の実施例である電磁波シールド材9〜11の構成を示す説明図である。
【図8】 電磁波シールド材9〜11の使用例を示す説明図である。
【符号の説明】
1〜11…電磁波シールド材、20…基材、20a…溝、21…本体、22…弾性体、35…両面粘着テープ、40…導電性被覆材、40a…折り目線、50…熱融着性材、60,61…導電部材、62,72…ガラス板、62a,72a…導電面、70…カバー、80…固定フレーム、90…両面粘着テープ、91…導電性ガスケット。

Claims (7)

  1. シート状に形成された基材と、
    該基材の周囲に覆設される導電性被覆材と、
    を備えた電磁波シールド材において、
    前記基材の表面には、切り込み又は溝からなる折曲案内部が形成され、
    該折曲案内部の形成箇所にて該折曲案内部の形成面を外側にして前記基材を折り曲げた形状が、該折曲案内部に融入させた熱融着性材によって保持され、且つ該熱融着性材が前記折曲案内部を補強する補強材となっていることを特徴とする電磁波シールド材。
  2. 前記基材は、部分的に他の部位より大きな弾性力を有した弾性部位を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド材。
  3. 前記弾性部位は、前記基材の他の部位より肉厚に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁波シールド材。
  4. 前記弾性部位は、前記基材の他の部位とは別体に形成され、接着により一体化されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電磁波シールド材。
  5. 前記基材は長尺状に形成され、
    前記折曲案内部及び前記弾性部位は、前記基材の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項2〜請求項4いずれかに記載の電磁波シールド材。
  6. 前記導電性被覆材は、導電布、又は少なくとも一方の面に導電面が形成された導電性プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかに記載の電磁波シールド材。
  7. 前記導電性被覆材で覆われた当該電磁波シールド材の表面の一部に、両面粘着テープが貼付されていることを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかに記載の電磁波シールド材。
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