JP6729370B2 - 金属担持触媒、金属担持触媒の製造方法及び保存方法、並びにアルコールの製造方法 - Google Patents

金属担持触媒、金属担持触媒の製造方法及び保存方法、並びにアルコールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属担持触媒及びその保存方法、並びにこの金属担持触媒を用いたアルコールの製造方法に関する。
金属担持触媒は、従来広く検討され、各種触媒反応に用いられている。例えば、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを直接水素化(還元)し、対応するアルコールを製造する方法においても各種の金属担持触媒の利用が提案されている。このようなカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを、対応するアルコールへと還元する触媒としては、担体に、ルテニウム及びスズを担持させ、これを水素等で還元処理した触媒が提案されている(例えば特許文献1及び2)。これらの触媒はカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルの還元において、高い反応活性及び反応選択率を示し、良好な触媒となる。
日本国特開2000−007596号公報 日本国特開2001−157841号公報
しかしながら、従来知られている製造方法で調製された特許文献1及び2に記載の触媒を用いてカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルの還元反応を実施した際に、原料残や反応選択率の低下等の触媒性能の低下が発生してしまうという課題があった。また、これらの触媒は安定性が低く、触媒を保存する際や触媒を繰り返し使用する際に劣化したり、空気中での取り扱いができないといった課題があった。
本発明は、上記の状況を鑑み、触媒活性及び選択率が高く、空気中での取り扱いが可能な金属担持触媒とその保存方法、並びにその金属担持触媒を用いたアルコールの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、ルテニウム及びスズを担体に担持させた金属担持物(以下、「金属担持物」ともいう。)を水素で還元処理(以下、「水素還元」ともいう。)し、金属担持触媒を製造する際の反応挙動を詳細に解析した。その結果、前記金属担持物は水素還元時に水素を吸収するが、比較的低い温度域で急激に水素を吸収し、かつその際の水素吸収量が非常に大きく、大きな発熱を伴うことを見出した。前記金属担持物が水素還元時にこのような挙動を示す理由は未だ明らかではないが、前記金属担持物が前記のような発熱特性を有するために、上記のような触媒性能の低下が起こると推察した。
具体的には、前記金属担持物の水素還元時に、水素の供給量が不十分である場合、前記金属担持物は、その急激な水素吸収と水素吸収に伴う急激な発熱により、水素欠乏状態で高温条件下にさらされ、不均一な蓄熱、シンタリング、粒子径の増大といった現象が起こり、水素還元により得られた金属担持触媒が劣化し、性能低下が著しくなる。従って、高活性の触媒を製造するためには、水素還元時に、触媒の発熱挙動を制御して、局所的発熱に伴うホットスポットの発生を如何に回避するかが、触媒活性を高め、触媒機能の劣化を抑える上で重要であると考えた。また、水素還元後の触媒を空気中に取り出す際にも発熱を伴うことから、上記の還元処理時と同様の現象により、触媒の劣化が起こると考えた。
本発明者らは、以上の知見に基づき鋭意検討した結果、金属担持物を、特定の還元処理工程、及び特定の酸化安定化工程に供することによって、上記課題を解決した固有の物性を有する金属担持触媒が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]金属を担体に担持させた金属担持触媒であって、
前記金属としてルテニウム及びスズを含み、
粉末X線回折分析の2θ=43°のピークの半値幅が3.61°以下であり、かつ
下記式(1)で表される酸化率が38%以上であることを特徴とする金属担持触媒。
酸化率(%)=[X/Y]×100 ・・・(1)
(上記式(1)において、Xは、前記金属担持触媒を昇温還元に供した後、引き続き常温酸化を行なった際に、前記金属担持触媒を酸化するために要した酸素のモル数を表す。
Yは、前記金属担持触媒に担持された金属の総モル数を表す。)
[2]前記半値幅が、3.60°以下である、前記[1]に記載の金属担持触媒。
[3]金属担持触媒中のハロゲン濃度が0.005重量%以上、0.8重量%以下である、前記[1]又は[2]に記載の金属担持触媒。
[4]前記金属として、さらに白金を含む、前記[1]〜[3]のいずれか1に記載の金属担持触媒。
[5]前記担体が炭素質担体である、前記[1]〜[4]のいずれか1に記載の金属担持触媒。
[6]金属担持触媒の総質量に対する前記金属の金属原子換算での合計担持量が、5質量%以上である、前記[1]〜[5]のいずれか1に記載の金属担持触媒。
[7]金属担持触媒が、酸化工程を経て調製されている、前記[1]〜[6]のいずれか1に記載の金属担持触媒。
[8]金属担持触媒を酸素濃度15体積%以下の雰囲気下で保存することを特徴とする、前記[1]〜[7]のいずれか1に記載の金属担持触媒を保存する方法。
[9]前記[1]〜[7]のいずれか1に記載の金属担持触媒を用いて、カルボン酸及びカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1の化合物を還元して、前記化合物から誘導されるアルコールを得る工程を有することを特徴とするアルコールの製造方法。
[10]前記化合物を形成するカルボン酸が有する炭素数が14以下である、前記[9]に記載のアルコール製造方法。
[11]前記化合物を形成するカルボン酸が、ジカルボン酸である、前記[9]または[10]に記載のアルコールの製造方法。
本発明の金属担持触媒は、活性及び選択率が高く、空気中での取り扱いが可能である。さらには、本発明の金属担持触媒は、還元触媒であって、特にカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを還元してアルコールを製造するのに有用である。
図1(a)及び図1(b)は本発明の金属担持触媒の粉末X線回折図であり、図1(a)は実測図、図1(b)はバックグラウンド処理後の図を表す。 図2は金属担持物のTPR測定結果を表すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお本願において、担体に担持させて用いる金属(ルテニウム、スズ、その他必要に応じ用いる白金等の金属)を総称して「金属成分」ということがある。また前記金属成分を担体に担持したものを「金属担持物」、前記金属担持物を還元処理したものを「金属担持触媒」とそれぞれいうことがある。また、“重量%”と“質量%”とは同義である。
[触媒]
本発明の触媒は、金属を担体に担持させた金属担持触媒であって、
前記金属としてルテニウム及びスズを含み、
粉末X線回折分析の2θ=43°のピークの半値幅が3.61°以下であり、かつ
下記式(1)で表される酸化率が38%以上であることを特徴とする。
酸化率(%)=[X/Y]×100 ・・・(1)
(上記式(1)において、Xは、前記金属担持触媒を昇温還元に供した後、引き続き常温酸化を行なった際に、前記金属担持触媒を酸化するために要した酸素のモル数を表す。
Yは、前記金属担持触媒に担持された金属の総モル数を表す。)
本発明の金属担持触媒(以下、単に「本触媒」ということがある。)は、通常、前記金属成分を担持させた金属担持物を、還元性気体により還元処理した後、酸化安定化処理して得られる。
(金属)
本発明の金属担持触媒に担持される金属は、ルテニウムとスズを必須元素とし、ルテニウムとスズ以外に、本触媒を用いた還元反応等の反応に悪影響を及ぼさない限り、必要に応じ、さらにその他の金属を含んでいてもよい。他の金属として、好ましくはロジウム、白金、金、モリブデン、タングステン、レニウム、バリウム及びホウ素等の金属種から選ばれる少なくとも1種類の金属を含み、より好ましくはレニウム、白金及び金から選ばれる少なくとも1種類の金属を含み、さらに好ましくは白金を含む。その中で、ルテニウム、スズ及び白金を含む触媒は、これら3つの金属成分の組み合わせにより、高い触媒活性を得ることができる。
本触媒の金属の担持量は、特に限定されるものではないが、ルテニウム担持量は、金属担持触媒の総質量に対する質量比で、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下である。スズ担持量は、金属担持触媒の総質量に対する質量比で、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下である。必要に応じて用いられる白金等のその他の金属の担持量は、金属担持触媒の総質量に対する質量比で、通常0.5質量%以上、通常7質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
また金属担持触媒の総質量に対するルテニウム、スズ及びその他の金属の合計の担持量は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
なお上記金属の担持量は、担持した金属がすべて金属原子であると換算して求める値である。これらの条件を満たすことにより、本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御することができる。金属の担持量は、例えば金属担持触媒から酸を用いて金属成分を溶出させ、溶液中の濃度を原子吸光分析や誘導結合プラズマ発光分析で分析したり、金属担持触媒を50μm以下に粉砕した後、固体状態でケイ光X線分析を用いて測定することができる。
(担体)
本発明において用いられる担体としては、特に限定されるものではないが、例えば活性炭、カーボンブラック等の炭素質担体;アルミナ、シリカ、珪藻土、ジルコニア、チタニア、ハフニア等の無機多孔質担体;炭化ケイ素、窒化ガリウム等が用いられる。中でも、炭素質担体、チタニア、ジルコニアが好ましく、炭素質担体がより好ましく、活性炭が特に好ましい。なお担体は、1種類を用いても、2種類以上併用しても構わない。
担体は、そのまま用いても、担持に適した形に前処理して用いてもよい。例えば炭素質担体を用いる場合であれば、日本国特開平10−71332号公報に記載のように、炭素質担体を硝酸で加熱処理してから用いることもできる。前記方法により、担体上での金属成分の分散性を良好にすることができ、得られる触媒の活性が向上するため好ましい。
本発明において用いられる担体の形状、担体の大きさは特に限定されるものではないが、その形状を球状に換算した場合、平均粒子径は通常50μm以上、5mm以下であり、好ましくは4mm以下である。なお粒子径は、JIS規格 JIS Z8815(1994年)に記載の篩分け試験方法で測定する。平均粒子径を上記範囲とすることにより、単位重量当たりの活性が高く、さらに取扱いやすい触媒となる。
本触媒を使用する反応が、完全混合型反応の場合は、担体の粒子径は、通常50μm以上、好ましくは100μm以上、通常3mm以下、好ましくは2mm以下である。担体の粒子径は、小さいほど得られる触媒の単位質量あたりの活性が高くなる点で好ましいが、前記下限値よりも小さくなり過ぎると、反応液と触媒の分離が困難になる場合がある。担体の形状が球状ではない場合は、その担体の体積を求め、同一の体積の球状粒子の直径として換算するものとする。
本触媒を使用する反応が固定床反応の場合は、担体の粒子径は、通常0.5mm以上、5mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下である。前記下限値より粒子径が小さすぎる場合、差圧により運転が困難になる場合があり、前記上限値より大きすぎると反応活性が低下してしまう場合があるためである。
(酸化率)
本触媒は、下記式(1)で表される酸化率が38%以上である。
酸化率(%)=[X/Y]×100 ・・・(1)
(上記式(1)において、Xは、前記金属担持触媒を昇温還元に供した後、引き続き常温酸化を行なった際に、前記金属担持触媒を酸化するために要した酸素のモル数を表す。
Yは、前記金属担持触媒に担持された金属の総モル数を表す。)
<酸化率の測定方法>
前記酸化率とその測定方法について、以下により具体的に説明する。
(i)昇温還元
前記酸化率の測定においては、まず本触媒を昇温還元に供する。本発明の触媒の製造方法の詳細については後述するが、通常、前記金属担持物を還元処理した後、酸化安定化処理して得られる。本発明の触媒中の金属の少なくとも一部は酸化された状態にあるが、本触媒を昇温還元に供することで、本触媒は再度還元され、前記金属成分は金属状態になる。
前記の昇温還元方法は、特に限定はされないが、通常は単位時間当たりの水素の供給量を調整し、かつ単位時間当たりの昇温温度を調整しながら還元を行なう方法、すなわち、Temperature Programmed Reduction法(以下TPR法という。)で行なう。この方法を用いることで、本触媒の水素吸収量と、吸収温度を精密に測定することができる。具体的には密閉容器内に測定する触媒を置き、一定流量の水素を流しながら密閉容器を昇温し、前記密閉容器の入口と出口の水素量を連続的に測定する。このような方法により、金属担持触媒の還元状態を確認することができる。
この触媒を昇温還元する工程で消費される水素の量は、本触媒1gあたり、通常40〜130ml、好ましくは70〜130mlである。この範囲の水素消費量を示す本発明の触媒は、空気中でも安定であり、空気中での取り扱いが可能である。従って、触媒反応の際の触媒導入時や触媒抜出時の操作性が向上し、触媒の繰り返し使用も容易となり、しかも、触媒の持ち運びも容易となる。
(ii)常温酸化
前記昇温還元をおこなった触媒は、次に常温で酸化を行なう。測定した酸素吸収量から、前記金属担持触媒を酸化するに要した酸素のモル数Xを求める。
前記酸化の方法は通常は単位時間当たりの酸素の供給量を調整し、酸化を行なう方法が用いられる。具体的には、前記TPR法で用いた密閉容器内に、昇温還元後の触媒を置き、常温で酸素を流しながら密閉容器の入口と出口の酸素量を連続的に測定することで、触媒を酸化するために反応した酸素量を測定する方法である。酸素を含む気体の流通下、昇温還元で還元された金属担持触媒を、前記TPR法で用いた密閉容器内に触媒を置き、常温で酸素を流しながら密閉容器の入口と出口の酸素量を連続的に測定する。これにより金属担持触媒が吸収した酸素量を測定することができる。
尚、本明細書において常温とは25℃をいう。この温度は、本触媒を緩やかに酸化することができる温度であり、表面以外の部分が酸化されにくい温度域である。
(iii)Y
前記式(1)におけるYは、前記金属担持触媒に担持された金属の総モル数を表す。具体的には前記金属担持触媒中に含まれる前記金属成分がすべて金属原子であるとして換算した際の金属の総モル数を表す。
本触媒の酸化率は、触媒調製時の水素還元方法、及び還元した触媒の酸化安定化の方法の調整により得ることができる。
(iv)酸化率測定の具体例
本発明で規定する酸化率の測定方法を、以下に説明する。
乾燥した評価用触媒約0.1gを秤量してU字型石英管(以下、反応管)に入れ、昇温還元に供する。前記反応管に10体積%水素/ヘリウムを20mL/分の流量で流通下、質量分析計で出口ガス中の水素の検出量が低位安定したことを確認した後、10℃/分で室温から550℃まで昇温し、550℃で0.5時間ホールドする。前記U字石英管の出口から排出されるガス(以下、出口ガス)は、連続的に質量分析計にて水素濃度を測定する。
前記反応管中に通ずるガスの組成はそのままで、前記反応管を25℃まで冷却する。その後、反応管中に通じるガスをヘリウムに切り替え、20mL/分の流量で流通し、反応管内の水素がヘリウムに置換されたことを確認する。
引き続き触媒を25℃での酸化に供する。前記反応管に2.5体積%酸素/ヘリウムを20mL/分の流量で流通させる。酸素流通開始初期は、ほとんどの酸素は反応により消費されているがその後に急激に酸素の検出量が増え、検出量の立ち上がり挙動が観察される。2.5体積%酸素/ヘリウムに切り替えてから立ち上がりまでの見かけの酸素吸収量をAmolとする。
その後、ヘリウム20mL/分に切り替えて、系内の酸素をヘリウムに置換する。
酸素が完全にヘリウムに置換したことを確認した後に、再度2.5体積%酸素/ヘリウムに切り替えて、2回目の酸素検出量の立ち上がり挙動を20分間観測する。2回目の立ち上がり挙動までの見かけの酸素吸収量をBmolとし、その差(A−B)molを実際の酸素吸収量Cmolとする。
吸収した酸素吸収量Cmolを最初に秤量した触媒中の担持金属のモル数で割り、100を乗じて酸化率を算出する。
尚、質量分析計としては、キャノンアネルバ社製 M−400等を使用する。
<酸化率の意義>
本発明で規定する酸化率が38%以上の場合に、反応活性及び選択率に優れる理由は、下記の通りに推定できる。
酸化率が上記範囲になることで、ルテニウムならびにスズが担体に高分散化された状態となる。このように高分散化された金属担持触媒は、触媒調製ならびに反応時に発生する発熱を、均質で温和に制御することが出来る。その結果、担持された金属微粒子の不均質性に伴う局所的な発熱によるホットスポットの形成が起こりにくくなり、金属のシンタリング、担持された金属微粒子径の増大といった触媒の劣化が回避される。
前記酸化率は、反応活性の観点からは高い方が好ましく、好ましくは40%以上、より好ましくは42%以上であり、通常100%以下であるが、選択性の観点からは、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。前記酸化率を上記範囲とすることで、反応活性及び選択性に優れる。
<酸化率の制御方法>
本発明のRuならびにスズを含有する触媒はこれまで種々報告されているが、これらの触媒の中で前記酸化率の値は、主として後に詳述する以下の方法を組み合わせることにより調整・制御される。
(i’)前記金属担持物を水素還元する際に、金属担持物の水素吸収と温度を適切に制御し、前記金属担持物を均一に還元処理する。
(ii’)水素還元により得られた金属担持触媒を、特定の酸素濃度条件下で適切に処理する。
それ以外にも、後述の金属担持工程の担体への金属の担持方法や該金属担持触媒の脱ハロゲン処理時の洗浄方法、還元処理後の触媒中のハロゲン含量を制御することにより、本発明で規定される酸化率に制御することが出来る。
(半値幅)
本発明の金属担持触媒は、粉末X線回折分析において2θ=43°のピークの半値幅が3.61°以下である。
本触媒は、粉末X線回折分析により得られたX線回折図において、2θ=43°付近にブロードなピークが検出される(図1参照)。本発明においては、このブロードなピークの半値幅を測定する。半値幅は、標準偏差を含む上下の値の平均値とする。この半値幅は、小さい方が好ましく、好ましくは3.60°以下、より好ましくは3.55°以下、より好ましくは3.50°以下であるが、通常2.0°以上である。
<半値幅の意義>
本発明において、半値幅は小さい方が好ましい。本発明の触媒では、担体に「Ru及びSnを含む微粒子」が担持され、その微粒子の中に「Ru及びSnを含む結晶子」が詰まっている。本発明の金属としてRu及びSnを含む金属担持触媒(Ru−Sn系触媒)においては、この結晶子径が大きい方が半値幅が小さく、触媒活性は高いという特徴を有する。従来、触媒の結晶子径が小さい、すなわち半値幅が大きい方が触媒活性は高いと考えられているが、本発明のRu−Sn系触媒では、それとは逆の傾向を示した。
また、一般に、ピーク幅は結晶の不完全さによって広がり、触媒が多成分系の場合は、組成の違いによってピークがシフトするが、回折結果はそれらの重なりとなるため、ピーク幅は見かけ上広がる。このことから、Ru−Sn系触媒は、結晶性が高く、均一組成である方がよいと考えられる。
<半値幅の制御方法>
本触媒の半値幅の値は、上記の触媒調製時の担体の前処理方法、金属化合物の種類、金属化合物の溶解する溶媒の種類及びその量、金属化合物の担持方法、乾燥方法、アルカリの種類及びその量、アルカリの溶解する溶媒の種類及びその量、アルカリ処理方法、水素還元時の水素量、水素還元方法、及び還元した触媒の酸化安定化の方法を調整することで調整することができる。
[触媒の製造方法]
本発明の触媒の製造方法は、通常、以下の工程を有するが、中でも(iii’’)に示す酸化工程を経て調製されることが好ましい。
(i’’)担体に、前記金属成分を担持させる工程(以下、「金属担持工程」という。))
(ii’’)得られた金属担持物を還元性気体により還元処理する工程(以下、「還元処理工程」という。))
(iii’’)還元処理後に酸化する工程(以下、「酸化安定化工程」という。))
以下、工程毎に順に説明する。
(i’’ 金属担持工程)
金属担持工程は、上記した担体に、上記の金属成分を担持させ、金属担持物を得る工程である。金属成分の担持方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。担持の際には、上記金属成分の原料となる各種金属化合物の溶液又は分散液を用いることができる。
<金属担持方法>
担体への金属成分の担持方法は、特に限定されるものではないが、通常各種の含侵法が適用できる。たとえば、金属イオンの担体への吸着力を利用して飽和吸着量以下の金属イオンを吸着させる吸着法、飽和吸着量以上の溶液を浸し過剰の溶液を取り除く平衡吸着法、担体の細孔容積と同じ溶液を添加して全て担体に吸着させるポアフィリング法、担体の吸水量に見合うまで溶液を加え、担体表面が均一に濡れた状態かつ過剰な溶液が存在しない状態で終了するincipient wetness法、担体に含侵させ撹拌しながら溶媒を蒸発させる蒸発乾固法、担体を乾燥状態にして溶液を吹き付ける噴霧法などがあり、この中でも、ポアフィリング法、incipient wetness法、蒸発乾固法、噴霧法が好ましく、ポアフィリング法、incipient wetness法、蒸発乾固法がより好ましい。前記の方法により、ルテニウム、スズ、さらに必要に応じて用いられる白金等のその他金属成分が比較的均一に分散した上で担持させることができる点で有利であるためである。
用いる金属化合物としては、特に限定されるものではなく、担持方法により適宜選択することができるが、例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物;硝酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;酢酸塩等の有機酸塩;金属水酸化物、金属酸化物、有機金属化合物、金属錯体等を用いることができる。この中では、ハロゲン化物、鉱酸塩、有機酸塩等が好ましく、ハロゲン化物、鉱酸塩がより好ましく、ハロゲン化物を用いるのが更に好ましく、ハロゲン化物のうち特に塩酸塩等の塩化物が好ましい。また上記金属化合物の少なくとも1種が塩化物であることが好ましく、そのすべてが塩化物であることがより好ましい。塩化物を用いることにより、溶液状態で金属が錯化し、担持した担体上での各金属の分散状態が均一になるものと考えられ、安定的に担持されることから好ましい。また得られる触媒中のルテニウム、スズ、さらに必要に応じて用いられる白金等のその他金属成分による合金粒子の成長が抑制され、活性、選択性が向上するとともに、反応中の触媒の安定性が向上する。これらの条件を満たすことにより本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御することができる。
<溶媒>
前記金属化合物を担体に担持する際、各種溶媒を用いて金属化合物を溶解、又は分散して、各種担持方法に用いることができる。このとき用いる溶媒の種類は、金属化合物を溶解または分散することができ、後に実施する金属担持物の焼成及び水素還元、さらには本触媒を用いた水素化反応に悪影響を及ぼさなければ特に限定されるものではなく、例えばアセトン等のケトン溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール溶媒;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;水等が用いられる。これらは単独で用いても、混合溶媒として用いてもよく、安価であり、前記金属化合物、好ましくはハロゲン化物、より好ましくは塩化物の溶解度が高いため、好ましくは水が用いられる。
また、金属化合物を溶解又は分散する際、溶媒以外に、各種の添加剤を加えてもよい。例えば、日本国特開平10−15388号公報に記載のように、カルボン酸及び/又はカルボニル化合物溶液を添加することで、担体に担持させた際、担体上での各金属成分の分散性を改良することができる。
前記金属担持物は、必要に応じ、乾燥して用いることができ、乾燥して用いることが好ましい。金属担持物を未乾燥で後続する還元処理を実施した場合、反応活性が低くなる場合があることや、特に、引き続き後述する脱ハロゲン処理を実施する場合、脱ハロゲン処理に通常用いるアルカリ存在下での金属塩の溶出を抑制することができる点で、乾燥することが好ましい。
乾燥方法は、特に限定はされず、担持時に使用した溶媒等が除去されればよく、通常は不活性ガス流通下で行なう。
乾燥する圧力は、特に限定はされないが、通常、常圧下、または減圧条件下で行なう。
乾燥する温度は、特に限定はされないが、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、通常80℃以上で実施する。これらの条件を満たすことにより本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御することができる。
<脱ハロゲン処理>
前記金属担持物は、後述する還元工程の前に、必要に応じて脱ハロゲン処理を行なうことができる。前述の金属担持工程の際に、特に金属成分の原料として、塩化物等のハロゲン化物を用いた場合、後述する還元工程において、ハロゲン化合物が還元装置内で発生することがある。実験室スケールの処理量では問題とならないが、特に工業的に大量に還元処理をする場合、大量のハロゲン化合物が還元装置内で発生し、排気ガスの処理が必要になる場合があると共に、装置の腐食がおこる場合がある。そのため還元工程を実施する前には、脱ハロゲン処理をすることが好ましい。
脱ハロゲン処理の方法としては、特に限定されないが、通常は、前記金属担持物を、気相又は液相でアルカリ性化合物と接触させ、金属担持物中のハロゲン化物を反応させた後、気相処理又は洗浄にて除去することができる。中でも、操作の容易性、金属担持物からのハロゲン化物除去の効率のよさから、液相でアルカリ性化合物と接触させて処理し、その後洗浄により除去することが好ましい。具体的にはアルカリ性水溶液と接触させた後、水洗することがより好ましい。これらの条件を満たすことにより本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御することができる。
脱ハロゲン処理温度は、特に限定されるものではないが、通常10℃以上、好ましくは20℃以上、通常150℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下で行う。前記下限値よりも低すぎる場合、冷却操作が必要となる場合があり、また、前記上限値より高すぎる場合、溶媒、処理に用いるアルカリ化合物の揮散、熱分解等が起こることがある。
脱ハロゲン処理にアルカリ性水溶液を使用する場合、アルカリ性水溶液のpHは、特に限定はされないが、通常pHは7.5以上、好ましくは8.0以上、通常13.0以下、好ましくは12.5以下である。前記上限値よりpHが高すぎるアルカリを用いた場合は、担持金属の変質、又は後述する洗浄で担持金属の溶出が起こる場合がある。また下限値よりpHが低すぎると、十分に脱ハロゲン処理が行なわれない場合がある。
アルカリ化合物の種類としては、たとえば,アルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、アンモニア又は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム塩等を用いる。これらは、単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。好ましくは、アンモニアやアンモニウム塩などの弱塩基性のアルカリ化合物を用いた方が、強塩基性のアルカリ化合物を用いるよりも活性の高い触媒が得られる傾向がある。
アルカリ化合物の量としては、担体に含有されているハロゲンイオンに対して通常は0.1〜50当量、好ましくは1〜20当量、さらに好ましくは1〜10当量用いる。アルカリ化合物は、通常水溶液として用いるが、メタノール、エタノール、アセトン、更にはエチレングリコールジメチルエーテルの様な水溶性の溶媒や、さらにはこれらと水との混合溶媒を用いても良い。アルカリ性水溶液は、金属担持物の金属成分を担持している担体の細孔を完全に充填する量、すなわち担体の細孔容量以上用いるのが好ましい。アルカリ性水溶液の使用量は、アルカリ性水溶液の濃度にも依存する為、特に限定はされないが、通常、用いる金属担時物の担体の細孔容量の0.8倍以上20倍以下、好ましくは1倍以上10倍以下、更に好ましくは1倍以上5倍以下である。
<洗浄>
アルカリ化合物による処理を経た金属担持物は、過剰のアルカリ化合物や生成したハロゲン化物を洗浄除去する。洗浄には、過剰のアルカリ化合物、生成したハロゲン化物を溶解する溶液ならば使用可能であるが、その中でも水が好ましい。その場合、洗浄温度は特に限定されず、通常10℃以上、100℃以下で洗浄を実施するが、温水での洗浄効率が良いことから好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上で実施する。
前記アルカリ処理後は、必要に応じ、さらに乾燥をおこなってもよい。乾燥条件としては、上記の金属担持物の乾燥と同様の条件が用いられる。
これらの条件を満たすことにより本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御することができる。
(ii’’ 還元処理工程)
前記金属担持物は、還元性気体により、還元処理を行なう。
還元処理工程は、通常、下記の第一還元処理工程及び第二還元処理工程を有する。
<還元性気体>
還元処理工程に用いられる還元性気体は、還元性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、水素、メタノール、ヒドラジン等が用いられ、好ましくは水素である。
なお、本発明における還元処理では、還元性気体の種類によらず還元反応が起こり、金属担持触媒となり、水素以外の還元性気体を用いても、実際に消費され、触媒に吸収される気体は水素である。従って還元処理に必要な還元性気体の量は、「水素吸収量」として表現する。
<第一還元処理工程>
前記金属担持物は、まず還元性気体の雰囲気流通下、第一の還元処理に供される。第一の還元処理は、前記金属担持物が、上記の通り、比較的低い温度域で急激に大きな水素吸収を生じ、かつその際に大きな発熱を生じるために施す処理である。すなわち、前記金属担持物の急激な水素吸収による水素欠乏を防ぐため、比較的低い温度域で、十分に水素を吸収させることを目的とする。還元処理は還元性気体の存在下であればよいが、通常還元性気体を流通させて行うのが好ましい。
第一の還元処理温度は、前記金属担持物の急激な水素吸収が見られる温度領域に対応した温度範囲であり、通常金属担持物のTPR分析による水素吸収量測定において最大吸収量を示す温度をピーク温度としたとき、ピーク温度±100℃の範囲で行う。好ましくはピーク温度±50℃の範囲、より好ましくはピーク温度±30℃の範囲である。
具体的には通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、通常350℃未満、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下である。
前記ピーク温度近辺では、最も多くの水素を吸収するため、最も還元処理した際の発熱量が大きい。そのため、このピーク温度前後で第一の還元処理を行うと大きな発熱が起こり、その熱により還元処理がスムーズに行われる。前記下限値よりも温度が低すぎると、還元反応が十分に進まない場合がある。一方、前記上限値よりも温度が高すぎる場合には、急激な発熱領域に金属担持物が置かれることにより、さらに激しい発熱を伴い、還元性気体の欠乏状態が起こり、触媒のシンタリングが進行して活性が低下する場合がある。
また、第一の還元処理温度は、一定温度であっても、変化させても良い。具体的には上記の好ましい温度範囲の特定の温度に、一定時間保持した状態で、第一の還元処理を行っても良いし、上記の好ましい温度範囲を一定時間昇温しながら第一の還元処理を行っても良い。反応時間の効率化の観点では、還元処理によって、金属担持物の発熱に伴い反応系の温度が上昇するため、一定の時間で昇温しながら還元処理を行うことが好ましい。一方で激しい発熱を伴うため、反応の制御を正確に行う目的においては、一定の温度で保持することが好ましい。
<第二還元処理工程>
前記第一の還元処理を施した金属担持物は、第二の還元処理に供される。還元処理は還元性気体の存在下であればよいが、通常還元性気体を流通させて行うのが好ましい。
第二の還元処理では、第一の還元処理により水素吸収を起こす温度よりも、より高い温度で発生する水素吸収を十分に行なう。後述するTPR分析にて、本発明における金属担持物の水素吸収挙動を観測した際、100℃近辺で急激、かつ大量の水素吸収が観察されるが、第二の還元処理は、より高温で観察される水素吸収挙動に対応するために行なう処理である。
前記第二の還元処理温度は、前記第一の還元処理温度より高温である。第一の還元処理温度よりも高温であれば、第二の還元処理温度は特に限定はされないが、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、通常650℃以下、好ましくは600℃以下、より好ましくは580℃以下である。前記上限温度よりも還元処理温度が高すぎる場合には、得られる触媒のシンタリングや、担体への悪影響が懸念されるためである。
また第二の還元処理温度は、一定の温度であっても、変化していてもよい。
これらの条件を満たすことにより本発明で規定する金属担持触媒の酸化率に制御することができる。
<還元処理時間>
第一還元処理及び第二還元処理に必要とされる時間は、処理する金属担持物等の量や、使用する装置等によって異なるが、各々、通常7分以上、好ましくは15分以上、より好ましく30分以上、更に好ましくは1時間以上、最も好ましくは3時間以上であり、通常40時間以下、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下である。
<還元性気体中の水素濃度>
本触媒の第一還元処理及び第二還元処理時の還元性気体の濃度は、特に限定されるものではないが、100体積%の還元性気体であっても、不活性ガスで希釈されていても良い。ここで言う不活性ガスとは金属担持物、又は還元性気体と反応しないガスであり、窒素、水蒸気等が上げられるが、通常窒素が用いられる。
不活性ガスで希釈された際の還元性気体濃度は、全気体成分に対し、通常5体積%以上、好ましくは15体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、更に好ましくは50体積%以上が好適に用いられるが、還元初期に低濃度の水素を使用して、その後徐々に濃度を上げて使用しても良い。これらの条件を満たすことにより本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御することができる。
<還元性気体の流量>
本触媒の第一還元処理及び第二還元処理時、還元性気体は、反応器中に密閉して用いても、反応器中を流通させて用いてもよいが、反応器中を流通していることが好ましい。流通させることにより局所的な水素欠乏状態を回避することができるためまた還元処理により反応器中に、水や塩化アンモニウム等が副生し、これら副生成物が、還元処理前の金属担持物、還元処理された金属担持物や、得られた触媒への悪影響を及ぼす場合がある。これを防止するため、還元性気体を流通させることで、副生成物を反応系外に排出することができるためである。
<還元性気体の量>
第一還元処理及び第二還元処理に必要とされる還元性気体の合計量は、本発明の目的を満たす限りにおいて特に限定されるものではなく、還元する装置や、還元時の反応器の大きさや水素の流通方法、触媒を流動させる方法等に応じて、適宜設定することができる。通常は、前記TPR法で求めた水素吸収量に対して、水素が触媒層を流通するような接触効率が高い条件で、各還元処理で必要な水素量の1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上の流量とする。前記下限値より少なすぎる場合、特に水素との接触効率が低い場合は還元が十分に行なわれない場合がある。上限は特に制限はないが、多すぎると排気ガスの処理の問題、さらには還元性気体により金属担持物や製造された触媒が飛散する場合があり、余分な還元性気体の浪費となるため、通常500倍以下、好ましくは200倍以下とする。これらの条件を満たすことにより本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御することができる。
<金属担持物の還元の程度>
前記金属担持物の還元の程度は、還元処理後に酸化安定化した前記金属担持触媒中のハロゲン濃度により判断することができる。前記ハロゲン濃度は特に限定されないが、前記金属担持触媒中のハロゲン濃度は、通常0.8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。前記ハロゲン濃度は低い方が、本触媒を用いた還元反応の際に、反応液中へのハロゲンの溶出が抑えられるため好ましく、下限は特に限定はされないが、通常0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上である。前記範囲内にハロゲン濃度がある場合、金属担持物の還元処理が十分に行われ、反応液中へのハロゲンの溶出が低く抑えられると共に、本触媒を用いた還元反応の活性が向上し、反応選択性も向上さらに触媒の安定性も向上するため好ましい。
これらの条件を満たすことにより本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御することができる。
本発明の還元後の金属担持触媒の大きさは特に限定されるものではないが、基本的に上記した担体の大きさと同じである。
<好ましい還元処理の態様>
好ましい還元処理の態様として、固定床で、還元性のガスを金属担持物に通過させる方法、トレイまたはベルト上に静置している金属担持物に還元性のガスを流通させる方法、流動した金属担持物中に還元性のガスを流通させる方法があるが、その中では、還元処理における金属担持物を流動させながら還元処理をさせることが好ましい。流動させながら還元処理をすることにより、還元処理時の金属担持物と、還元性気体の接触する表面積が増えるため、還元処理の効率が向上するためである。
具体的に流動させる方法としては、特に限定されるものではなく、還元処理する金属担持物等が、還元性気体との接触表面積が増えるような動きを伴っていればよく、例えば還元処理する金属担持物等の入った反応器を回転させる方法や、反応器中の金属担持物等が、攪拌されたり、上下動をするような装置構成を組み込むといった方法がある。
具体的な流動方法としては、各種のキルン(加熱炉)を用いて処理する方法が挙げられる。
具体的な好ましい製造方法としては、例えば連続式キルンや、バッチ式キルンを用いる態様が挙げられる。
<連続式キルン>
連続式キルンとは、連続的に金属担持物を供給して還元を実施し、連続的に還元された触媒を排出できるものをいう。具体的には連続式ロータリーキルン、ローラーハースキルン、ベルトキルン、トンネルキルン等があるが、なかでも本発明の製造方法においては、金属担持物の流動性が高く、還元性気体との接触効率が高くなることから連続式ロータリーキルンが好ましい。
(a)連続式キルンの運転条件
連続式キルンの運転条件については、前記した還元処理、酸化安定化処理の条件を満たせば特に限定されるものではなく、使用する装置に応じ適宜設定することができる。通常は、連続式キルン中であれば、その還元性気体の流量や温度管理により、前記の還元処理条件を満たすように運転することができる。
連続式キルンは、連続的に金属担持物や還元性気体を供給できることから、連続式キルン内への金属担持物の供給方法や、還元性気体の流量をコントロールすることができる。
連続式キルンにおける還元性気体流量は、特に限定はされないが、金属担持物のTPR測定により算出される、還元に必要な水素量を「水素吸収量A(m/kg)」とし、連続式キルンに投入される金属担持物の投入量をB(kg/時間)としたとき、通常、水素流量は(1.5×A×B)m/時間以上であり、好ましくは(2×A×B)m/時間以上、より好ましくは(5×A×B)m/時間以上である。前記下限値よりも水素流量が少ない場合、第一の還元処理にて水素欠乏を起こし、得られる触媒の性能が低下する場合がある。
上限は特に制限されるものではないが、無駄な水素量を低減するため(1000×A×B)m/時間以下、好ましくは(500×A×B)m/時間以下、より好ましくは(300×A×B)m/時間以下である。
連続式キルンにおける還元処理を施す金属担持物の流動方向と、水素等の還元性気体の流通方向は、還元処理の状況により適宜調整可能であり、還元性気体の流通方向が、金属担持物の流動方向に対して併流、向流どちらでも実施可能であるが、連続式キルンの出口に到達した触媒が、新鮮な水素と接触できる点で、水素の流通方向が、金属担持物の流動方向に対して向流である(互いに対向方向である)ことが好ましい。
連続式ロータリーキルンの回転速度は、特に限定されるものではない。早ければ金属担持物と水素との接触効率が良くなるが、触媒の摩耗が起きることから、通常は0.5rpm以上、10rpm以下、好ましくは5rpm以下である。
<バッチ式キルン>
バッチ式キルンとは、あらかじめ所定量の金属担持物をキルン内に仕込んでおき、還元性気体の流通下、目的の還元温度まで順次温度を上げていき所定温度で還元を実施することができるものをいい、具体的には、金属担持物を充填して処理する固定床式加熱炉、棚に乗せて加熱する棚段式加熱炉、焼成用台車が電気炉に出入りするシャトルキルン、バッチ式ロータリーキルン等が挙げられる。
金属担持物の還元性気体との接触効率から考えると、金属担持物を充填して処理する固定床式加熱炉、バッチ式ロータリーキルンが好ましく、均一に還元する上で、触媒を流動させる装置を有するバッチ式ロータリーキルンを用いて行なうことが好ましい。
連続式キルンが、装置上の制約から、通常、還元性気体を導入する際には流量一定で運転するのに対し、バッチ式キルンは、各バッチ毎に反応槽が存在するため、昇温方法、還元性気体の流量、濃度等を各バッチ毎に変えることができる。
(b)バッチ式キルンの運転条件
バッチ式キルンの運転条件については、特に限定されるものではなく、装置の構成等に応じ適宜設定することができる。
本発明で使用するバッチ式ロータリーキルンは、あらかじめ所定量の金属担持物を仕込んだ後に昇温を開始することから、最終的な還元温度までの昇温時間を連続式ロータリーキルンより詳細にコントロールすることが可能である。還元処理の時間は特に限定はされないが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、通常40時間以下、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下である。
前記下限よりも短すぎると、急激な水素吸収が起きた場合、大量の金属担持物を一度に還元しているため、激しい発熱と共に、膨大な水素吸収が起きて触媒のシンタリングが進行すると共に、安定操作が困難になる場合がある。また、還元が不十分となり、反応活性、選択性に悪影響が出る場合がある。
前記上限よりも長すぎると触媒の生産性の悪化、水素のロスが発生し、工業的に不利になる場合がある。
バッチ式ロータリーキルンを用いた場合、還元性気体の濃度、流量等をバッチ毎に適宜、還元処理の状況次第で変えることができる。
バッチ式ロータリーキルンの運転における好ましい還元性気体の濃度は、上記記載と同様である。
還元性気体の流量は、特に限定されず、還元反応の状況に応じ適宜設定することができるが、還元終了までの必要な水素量を未還元触媒のTPR分析により算出し、通常その必要水素量の5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは20倍以上を使用する。また通常5000倍以下、好ましくは1000倍以下とする。前記下限値より少なすぎれば、水素欠乏が起こる場合があり、前記上限値より多すぎれば、余計な還元性気体を消費することになる。
バッチ式ロータリーキルンの回転速度は、特に限定されないが、速いほど水素との接触効率が良くなる一方で触媒の摩耗が起きることから、通常0.5〜10rpm、好ましくは0.5〜5rpmで実施する。
(iii’’ 酸化安定化工程)
本発明の金属担持物の製造においては、前記金属担持物を還元して得られた金属担持触媒に対し、通常、酸化状態の制御(以下、「酸化安定化」という。)を行なう。酸化安定化を行うことより、活性及び選択性に優れ、且つ空気中で取扱い可能な触媒を製造することができる。本触媒は、空気中で取扱い可能なため、大量の触媒を搬送するのに便利である。
前記酸化安定化の方法は、特に限定はされないが、水を添加する方法または水に投入する方法、不活性ガスで希釈された低酸素濃度のガスで酸化安定化する方法、二酸化炭素で安定化する方法等があるが、中でも水を添加する方法または水に投入する方法、低酸素濃度のガスで酸化安定化する方法が好ましく、低酸素濃度のガスで酸化安定化(徐酸化)する方法(以下、「徐酸化法」という。)がより好ましい。さらに低酸素濃度ガスの流通下で酸化安定化することが好ましい。
低酸素濃度のガスで酸化安定化するときの初期酸素濃度は、特に限定はされないが、徐酸化開始時の酸素濃度は、通常0.2体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、通常10体積%以下、好ましくは8体積%以下、さらに好ましくは7体積%以下とする。前記下限値よりも酸素濃度が低すぎる場合は、完全に酸化安定化するための時間が非常に長時間となるばかりか、安定化が不十分になることがある。前記上限値よりも酸素濃度が高すぎる場合は、触媒が高温となり失活する場合がある。
低酸素濃度のガスを作るためには、空気を不活性ガス希釈するのが好ましく、さらに不活性ガスとしては窒素が好ましい。
徐酸化時の酸素濃度は、徐酸化開始時の酸素濃度のままで実施しても良いが、触媒内温が高温となり、触媒の変質が起きないのであれば、徐酸化を開始後、徐々に酸素濃度を上げていっても良い。最終的には空気で徐酸化しても良い。
低酸素濃度ガスでの徐酸化安定時は、触媒の温度が、通常130℃を超えないように、好ましくは120℃を超えないように、さらに好ましくは110℃を超えないように、酸素濃度、流量をコントロールし、このコントロールは発熱が収まるまで実施する。
触媒の温度が130℃を超えると、急激な酸化が進行し、触媒のシンタリングが進行するとともに担体の強度が低下する可能性がある。
酸化安定化の条件は、本発明で規定する金属担持触媒の酸化率を制御する要因の一つとなる。
低酸素濃度のガスで酸化安定化する方法としては、固定床で低酸素濃度のガスを触媒に通過させる方法、トレイまたはベルト上に静置している触媒に低酸素濃度ガスを流通させる方法、流動した触媒中に低酸素濃度のガスを流通させる方法がある。
金属担持触媒上の担持金属の分散性が良好であるほど酸化安定化が急激進行し、かつ多量の酸素が反応するので、固定床で低酸素濃度のガスを触媒に通過させる方法、流動した触媒中に低酸素濃度のガスを流通させる方法が好ましい。
尚、本発明の触媒の製造方法は、本発明の触媒が製造できる限り、上記の製造方法に限定されない。例えば、本発明の触媒が製造できる限り、他の工程を組み合わせてもよい。
[触媒の保存方法]
本発明の金属担持触媒を保存する際は、酸素濃度15体積%以下の雰囲気下で保存することが好ましい。前記の雰囲気下で保存することで、酸化安定化を経ても酸化が緩やかに進行する場合、密閉容器内で緩やかに酸化を進行させることができる。酸素濃度の下限は特に限定はされないが、通常酸化を進行させるために0.2体積%以上であることが好ましい。
また、ガスで安定化した触媒は非常に吸湿性が高く、非水系の反応では大きな問題となることから、密閉容器内で保存することが好ましい。
[触媒を用いた還元反応/用途]
本発明の触媒は、還元反応用の触媒として好適である。本触媒を用いた還元反応の好ましい態様として、例えば、カルボン酸及びカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1の化合物を還元して、前記化合物から誘導されるアルコールを得る工程を有するアルコールの製造方法が挙げられる。
還元反応の対象とするカルボン酸又はカルボン酸エステルとしては、工業的に容易に入手しうる任意のものを用いることができる。
本発明の触媒を用いる還元反応に供することのできるカルボン酸及び/またはカルボン酸エステルのカルボン酸としては、酢酸、酪酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪族鎖状カルボン酸類;シクロヘキサンカルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸等の脂肪族環状カルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,4−シクロヘキサントリカルボン酸、ビシクロヘキシルジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸類等が挙げられる。
カルボン酸及び/またはカルボン酸エステルを形成するカルボン酸としては特に限定はされないが、好ましくは鎖状または環状の飽和脂肪族カルボン酸であり、より好ましくはカルボキシル基以外の炭素数が20以下のカルボン酸であり、カルボン酸が有する炭素数が14以下であることがより好ましい。また、該カルボン酸はジカルボン酸であることが好ましく、さらに好ましくは、カルボキシル基以外の炭素数が20以下であり、下記式(2)で表されるジカルボン酸である。
HOOC−R−COOH (2)
(式中Rは、置換基を有していても良い、置換基以外の炭素数が1〜20である脂肪族もしくは脂環式の炭化水素基を表す。)
カルボン酸及び/またはカルボン酸エステルとして特に好ましくは、炭素数4から炭素数14の脂肪族もしくは脂環式のポリカルボン酸、またはそのエステルが、還元反応における、活性が高く、かつ選択率が高いことから好適である。
またこれらカルボン酸のエステルを用いる場合にはそのアルコール成分としてメタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。
また還元されて得られるアルコールでエステル化することもできる。
本発明の触媒を用いた還元反応は無溶媒で行なっても、溶媒の存在下でも行なうこともできるが、通常は溶媒の存在下で行われる。
溶媒としては、通常、水、メタノールやエタノールなどの低級アルコール類、反応生成物のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、デカリンなどの炭化水素類などの溶媒を使用できる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いることもできる。
特にカルボン酸及び/またはカルボン酸エステルを還元する際には、溶解性等の理由から水を含む混合溶媒を用いるのが好ましい。溶媒の使用量は特に限定されないが、通常原料となるカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルに対して0.1〜20重量倍量程度であり、好ましくは0.5〜10重量倍量、より好ましくは1〜10重量倍量程度用いるのが好ましい。
本発明の触媒を用いた還元反応は、通常、水素ガス加圧下で行われる。反応は通常100〜300℃で行われるが、150〜300℃で行うのが好ましい。反応圧力は1〜30MPaであるが1〜25MPaが好ましく、5〜25MPaが更に好ましい。
本発明の触媒を用いた還元反応は、液相、気相共に実施できるが、液相で実施することが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<触媒の酸化率の算出方法>
(質量分析計):キャノンアネルバ社製 M−400
乾燥した評価用触媒約0.1gを秤量してU字型石英管(以下、反応管)に入れ、昇温還元に供した。前記反応管に10体積%水素/ヘリウムを20mL/分の流量で流通下、質量分析計で出口ガス中の水素の検出量が低位安定したことを確認した後、10℃/分で室温から550℃まで昇温し、550℃で0.5時間ホールドした。前記U字石英管の出口から排出されるガス(以下、出口ガス)は連続的に質量分析計にて水素濃度を測定した。
前記反応管中に通ずるガスの組成はそのままで、前記反応管を25℃まで冷却した。その後、反応管中に通じるガスをヘリウムに切り替え、20mL/分の流量で流通し、反応管内の水素がヘリウムに置換されたことを確認した。
引き続き触媒を25℃での酸化に供した。前記反応管に2.5体積%酸素/ヘリウムを20mL/分の流量で流通した。酸素流通開始初期は、ほとんどの酸素は反応により消費されているがその後に急激に酸素の検出量が増え、検出量の立ち上がり挙動が観察される。2.5体積%酸素/ヘリウムに切り替えてから立ち上がりまでの見かけの酸素吸収量をAmolとする。
その後、ヘリウム20mL/分に切り替えて、系内の酸素をヘリウムに置換した。
酸素が完全にヘリウムに置換したことを確認した後に、再度2.5体積%酸素/ヘリウムに切り替えて、2回目の酸素検出量の立ち上がり挙動を20分間観測した。2回目の立ち上がり挙動までの見かけの酸素吸収量をBmolとし、その差(A−B)molを実際の酸素吸収量Cmolとした。
吸収した酸素吸収量Cmolを最初に秤量した触媒中の担持金属のモル数で割り、100を乗じて酸化率を算出した。
<粉末X線回折半値幅の測定方法>
(測定装置仕様)
装置名:PANalytical社製X’Pert Pro MPD
光学系:集中法光学系
光学系仕様
入射側 :封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit(0.04rad)
Divergence Slit(Variable Slit)
試料台 :回転試料台(Spinner)
受光側 :半導体アレイ検出器(X’Celerator)
ゴニオ半径:243nm
(測定条件)
X線出力:40kV 30mA
操作軸 :θ/2θ
操作範囲:10〜70度
測定モード:Continuous
読み込み幅:0.016度
計数時間:59.7秒
自動可変スリット:10nm(照射幅)
横発散マスク:10nm(照射幅)
(X線回折図処理方法)
X線回折図のバックグラウンド処理、及び半値幅の測定には、Peason−VII関数を用いたプロファイルフィッティング法を用いた。
上記測定条件に基づき、粉末X線回折を測定し、X軸が回折角度、Y軸が回折強度のX線回折図を得る。得られたX線回折図から、以下の手順で半値幅を求める。
得られたX線回折図において、回折角度2θ=43°付近に検出されるブロードなピークのピークトップを決定すると共に、ベースラインを引く。次にベースラインがX軸と平行になるように回折強度からバックグラウンドを差し引く。そしてあらかじめ決定した2θ=43°のピークトップからベースラインに垂線を下ろす。このときピークトップとベースラインを結ぶ垂線の長さをピーク高さとする。そして前記垂線上、ピーク高さの1/2の長さの位置を通過するベースラインと平行な線を引き、ブロードな前記ピークと交わる2点間の距離を半値幅として求める。
<触媒の反応活性確認方法>
本発明で得られた触媒の反応活性は、下記の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の水素化反応による、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)の生成反応を用いて確認をおこなった。
ハステロイC(登録商標)製200mLの誘導撹拌式オートクレーブ(以下、反応器)内に、水40g、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス体、トランス体の混合物:東京化成工業株式会社製)10g、評価する触媒2gを仕込み、前記反応器内を水素置換した後、水素分圧1MPaとし、1000rpm撹拌下、前記反応器を加熱し、所定温度で反応圧8.5MPaとし、240℃で反応を開始した。前記反応器内には蓄圧器から連続的に水素を供給し、240℃で反応圧一定で3時間反応を実施した。反応終了後、目視にて触媒の割れの有無を確認した。この時点で撹拌が速すぎたり、撹拌不良で割れが顕在化するような触媒となった反応は、みかけの反応速度が高くなるため活性比較ができないので評価からは除外する。
得られた生成物をNaOH中和滴定することでカルボキシル基の転化率を求めた。蓄圧器のガス吸収曲線から反応初期1時間の一次速度定数k(h−1)を算出した。
なおいずれの実施例、比較例でも、カルボキシル基の転化率が全て99%以上であった。
またガスクロマトグラフを用いて生成物の分析を実施した。主生成物は、目的物である1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)であり、主な副生成物はシクロヘキサンメタノール(CHM)、4−メチルシクロヘキサンメタノール(MCHM)の2種類であった。前記2種類の副生成物以外は、ほぼ全量がCHDMであったため、触媒性能の比較は、2種類の副生物の収率、及び反応速度定数でおこなった。
<基準活性に対する触媒活性の割合の測定>
原料である金属担持物によって、同一の還元処理及び酸化処理を行っても、製造される触媒の性能は異なる。
そこで、実施例及び比較例の原料である金属担持物について、下記の「基準活性の測定方法1」又は「基準活性の測定方法2」により、基準活性(速度定数(h−1))を測定した。
基準活性に対する「実施例又は比較例の触媒活性」の割合を計算した。
尚、下記の「基準活性の測定方法1」と「基準活性の測定方法2」では、還元処理条件が若干異なるが、本発明者らの経験上、この程度の違いは、触媒性能に影響しないことが解っている。
(基準活性の測定方法1)
金属担持物2.5gを内径25mmのガラス管に仕込み、電気炉にセットしてアルゴン置換後、100%水素5L/分でフローした。電気炉を昇温し、金属担持物を100℃まで9分で昇温し、100℃から450℃まで、31分一定速度で昇温した。そのまま450℃で2時間還元処理を実施し、2時間後、アルゴン流通下冷却し、室温下6%O/N、2.1L/時間で1時間フローして安定化を実施した。安定化した触媒を用い、上述の<触媒の反応活性確認方法>で、基準活性を確認した。
(基準活性の測定方法2)
金属担持物2.5gを内径25mmのガラス管に仕込み、電気炉にセットしてアルゴン置換後、100%水素5L/分でフローした。電気炉を昇温し、金属担持物を100℃まで11分で昇温し、100℃から550℃まで、47分一定速度で昇温した。そのまま550℃で2時間還元処理を実施し、2時間後、アルゴン流通下冷却し、室温下6%O/N、2.1L/時間で1時間フローして安定化を実施した。安定化した触媒を用い、上述の<触媒の反応活性確認方法>で、基準活性を確認した。
(金属担持物の還元に必要な水素量に対する供給水素量の倍率の算出方法)
実施例1と同様な方法で調製した金属担持物に対し、<触媒の酸化率の算出方法>の昇温還元と同様の操作を行い、反応管からの出口ガス中の水素濃度を連続的に測定し、水素吸収をピークとして検出した。その検出結果を図2に示す。図2では3つのピークがみられ、この3つのピークの合計面積から、金属担持物の還元に必要な水素量を計算した所、111ml/g(金属担持物)であった。
実施例又は比較例において、金属担持物が加熱帯に滞留している時間内に、ロータリーキルン内に流通させた水素の量を、上記の金属担持物の還元に必要な水素量(111ml/g)で割った値を、金属担持物の還元に必要な水素量に対する供給水素量の倍率とした。
(実施例1)
担体として1mm円柱状活性炭(NORIT社製 R1 EXTRA)担体を用い、日本国特開2001−9277号公報の実施例4に準じた方法で、塩化ルテニウム水和物、塩化白金酸(IV)・6水和物、塩化スズ(II)・2水和物を用いてルテニウム、白金、スズを活性炭に担持させた、金属担持物(以下、金属担持物1)を調製した。金属担持物1の調製方法の中で、金属塩化物の溶解水は、使用する活性炭の細孔容量と同じとした。金属塩化物の仕込み量は、仕込み量全量が担持され、水素還元し、酸化安定化した場合に、金属担持触媒中の含有量が、Ru6質量%、Pt3質量%、Sn7質量%となる量とした。また、使用する重炭酸アンモニウムは、金属塩化物の塩素に対して2倍モル量を、12%濃度の水溶液として用いた。
前記金属担持物1を、連続式ロータリーキルンを用いて還元処理を行なった。連続式ロータリーキルンは、炉全長2m、炉の中心部分に加熱帯が設置され、加熱帯の長さが0.95m、内径0.25mであり、回転数0.5rpmで回転させ、加熱帯の直径方向の中心部の温度は480℃〜530℃であった。
スクリューフィーダーを用いて連続式ロータリーキルン入口より、かさ比重が約0.5kg/Lの金属担持物1を、0.5kg/時間の供給速度で、キルン内部に連続的に3時間供給した。連続式ロータリーキルン入口の温度は、120℃であった。ロータリーキルンの傾斜角を1%に調整し、金属担持物1は、キルン入口より加熱帯まで約30分(この一部が二段の工程で還元する場合の一段目の還元工程に相当し、100℃から300℃の温度領域にあった時間は約14分であった。)、加熱帯内での滞留時間が1時間(これが二段の工程で還元する場合の二段目の還元工程となる。)、加熱帯からキルン出口まで約40分となるように供給した。また水素濃度は100%で、キルン出口側から金属担持物に対し向流で、50L/分で連続的に供給した。
金属担持物1が加熱帯に滞留している時間内に、ロータリーキルン内に流通させた水素の量は、還元に必要な水素の55倍であった。
上記の還元処理により得られた触媒をロータリーキルンの出口で3つに分けて回収した。最初の1時間回収(これを「前部」という。)、その次の1時間回収(これを「中部」という。)その後の残りの触媒を回収(これを「後部」という。)した。
この様にして得られた前部420gを1.9体積%酸素/窒素4.4L/分流通下で、2時間酸化安定化を実施し、6.1質量%Ru−2.9質量%Pt−6.7質量%Sn/活性炭担持触媒を得た。また得られた触媒中の塩素含量は0.38質量%であった。酸化安定化操作の際の、触媒内部の温度は60℃以下であった。
この触媒を上記の分析方法により粉末X線回折分析を行い、得られたX線回折図から上記に記載の算出方法により2θ=43°のブロードなピークの半値幅を測定したところ3.55°であった。またこの触媒を上記の測定方法で酸素吸収量を測定したところ0.55mmol酸素/g−触媒であり、触媒の酸化率は41%であった。
得られた触媒の反応活性を、上記方法で確認した。
また、実施例1で調製した金属担持物1について、上記の<基準活性の測定方法1>で基準活性を測定し、基準活性に対する触媒活性の割合を算出した。その結果を表1に示す。なお、表中M.B.(マテリアルバランス)とは反応後検出した原料及び生成物の合計のモル数を、仕込み原料のモル数で割り100を乗じた値である。このM.B.を100%になるように1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シクロヘキサンメタノール(CHM)及び4−メチルシクロヘキサンメタノール(MCHM)の検出量を換算し、仕込み原料のモル数で割り、100を乗じて収率を算出した。
(実施例2)
実施例1で回収した中部297gを実施例1と同様の条件で酸化安定化を実施し、6.2質量%Ru−3.0質量%Pt−7.1質量%Sn/活性炭担持触媒を得た。また得られた触媒中の塩素含量は0.06質量%であった。酸化安定化操作の際の、触媒内部の温度は60℃以下であった。
この触媒を実施例1と同様な方法で分析したところ、粉末X線回折分析において2θ=43°のブロードなピークの半値幅は3.36°、酸素吸収量は0.57mmol酸素/g−触媒、酸化率は42%であった。
得られた触媒の反応活性を、上記方法で確認した。
また、実施例1で調製した金属担持物1について、上記の<基準活性の測定方法1>で基準活性を測定し、基準活性に対する触媒活性の割合を算出した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1で回収した後部139gを、酸化安定化時間を73分とした以外は実施例1同様の条件で酸化安定化を実施し、6.2質量%Ru−3.0質量%Pt−7.3質量%Sn/活性炭担持触媒を得た。また得られた触媒中の塩素含量は0.07質量%であった。酸化安定化操作の際の、触媒内部の温度は60℃以下であった。
この触媒を実施例1と同様な方法で分析したところ、粉末X線回折分析において2θ=43°のブロードなピークの半値幅は3.19°、酸素吸収量は0.62mmol酸素/g−触媒、酸化率は45%であった。
得られた触媒の反応活性を、上記方法で確認した。
また、実施例1で調製した金属担持物1について、上記の<基準活性の測定方法1>で基準活性を測定し、基準活性に対する触媒活性の割合を算出した。その結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1と同様な方法で金属担持物を調製した。得られた金属担持物を用い、金属担持物供給速度を2.6kg/時間、連続式ロータリーキルンの回転数を1.6rpm、連続式ロータリーキルンの加熱帯への滞留時間を0.5時間とした以外は実施例1と同様な方法で還元を実施した(この時キルン入口から加熱帯までは約15分であった。)。
金属担持物が加熱帯に滞留している時間内に、ロータリーキルン内に流通させた水素の量は、還元に必要な水素の10.5倍であった。
上記の還元処理により得られた中部2591gを7体積%酸素/窒素36L/分流通下で、3時間55分酸化安定化を実施し、6.1質量%Ru−2.6質量%Pt−6.9質量%Sn/活性炭担持触媒を得た。また得られた触媒中の塩素含量は0.23質量%であった。酸化安定化操作の際の、触媒内部の温度は110℃以下であった。
この触媒を実施例1と同様な方法で分析したところ、粉末X線回折分析において2θ=43°のブロードなピークの半値幅は3.50°、酸素吸収量は0.57mmol酸素/g−触媒、酸化率は43%であった。
また、実施例4で使用した金属担持物について、上記の<基準活性の測定方法2>で基準活性を測定し、基準活性に対する触媒活性の割合を算出した。その結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1と同様な方法で金属担持物を調製した。
得られた金属担持物2.5gを内径25mmのガラス管に仕込み、電気炉にセットし、アルゴン置換後、100%水素5L/時間でフローした。電気炉を加熱し金属担持物を100℃まで11分で昇温し、100℃から550℃まで47分間一定速度で昇温した。そのまま550℃で2時間還元処理を実施し、その後、アルゴン流通下冷却し、室温下6%酸素/窒素、2.1L/時間で1時間フローして安定化を実施し5.9質量%Ru−2.2質量%Pt−6.8質量%Sn/活性炭担持触媒を得た。酸化安定化操作の際の、触媒内部の温度は60℃以下であった。
この触媒を実施例1と同様な方法で分析したところ、粉末X線回折分析において2θ=43°のブロードなピークの半値幅は3.46°、酸素吸収量は0.71mmol酸素/g−触媒、酸化率は56%であった。
また、実施例5で使用した金属担持物について、上記の<基準活性の測定方法2>で基準活性を測定し、基準活性に対する触媒活性の割合を算出した。その結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1と同様な方法で金属担持物を調製した。
得られた金属担持物を用い、金属担持物供給速度を1.5kg/時間とした以外は実施例1と同様な方法で還元を実施した。金属担持物が加熱帯に滞留している時間内に、ロータリーキルン内に流通させた水素の量は、還元に必要な水素の18倍であった。
上記の還元処理により得られた後部949gを6.6体積%酸素/窒素18.2L/分流通下で、77分酸化安定化を実施し、5.8質量%Ru−2.2質量%Pt−6.7質量%Sn/活性炭担持触媒を得た。また得られた触媒中の塩素含量は0.17質量%であった。
この触媒を実施例1と同様な方法で分析したところ、粉末X線回折分析において2θ=43°のブロードなピークの半値幅は3.61°、酸素吸収量は0.49mmol酸素/g−触媒、酸化率は39%であった。
また、実施例6で使用した金属担持物について、上記の<基準活性の測定方法1>で基準活性を測定し、基準活性に対する触媒活性の割合を算出した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で用いた金属担持物1を用い、50体積%水素/窒素を4.4L/分とした以外は、実施例1と同様な方法で還元を実施した。金属担持物1が加熱帯に滞留している時間内に、ロータリーキルン内に流通させた水素の量は、還元に必要な水素の2.4倍であった。
上記の還元処理により得られた触媒411gを1.9%体積%酸素/窒素4.4L/分流通下で、2時間酸化安定化を実施し、5.8質量%Ru−2.9質量%Pt−6.7質量%Sn/活性炭担持触媒を得た。また得られた触媒中の塩素含量は0.26質量%であった。
なおこの酸化安定化操作の際の、触媒内部の温度は60℃以下であった。
この触媒を実施例1と同様な方法で分析したところ、粉末X線回折分析において2θ=43°のブロードなピークの半値幅は3.64°、酸素吸収量は0.46mmol酸素/g−触媒、酸化率は36%であった。
また、比較例1で使用した金属担持物1について、上記の<基準活性の測定方法1>で基準活性を測定し、基準活性に対する触媒活性の割合を算出した。その結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1と同様な方法で金属担持物を調製した。
得られた金属担持物を用い、金属担持物供給速度を2.5kg/時間とした以外は実施例1と同様な方法で還元を実施した。金属担持物が加熱帯に滞留している時間内に、ロータリーキルン内に流通させた水素の量は、還元に必要な水素の11倍であった。
上記の還元処理により得られた後部2412gを7体積%酸素/窒素36L/分流通下で、4時間9分酸化安定化を実施し、6.2質量%Ru−2.9質量%Pt−7.2質量%Sn/活性炭担持触媒を得た。また得られた触媒中の塩素含量は0.98質量%であった。
この触媒を実施例1と同様な方法で分析したところ、粉末X線回折分析において2θ=43°のブロードなピークの半値幅は3.67°、酸素吸収量は0.48mmol酸素/g−触媒、酸化率は35%であった。
また、比較例2で使用した金属担持物について、上記の<基準活性の測定方法1>で基準活性を測定し、基準活性に対する触媒活性の割合を算出した。その結果を表1に示す。
実施例1〜6、及び比較例1、2より、本発明の触媒は、基準活性に対する触媒活性の割合が高く、高活性であることが解る。また、本発明の触媒を用いると、目的物であるCHDMが高収率及び高純度で得られることが分かった。
尚、実施例1〜6は、触媒を酸化安定化操作の後に一旦空気中に取出してから反応活性を確認している。このことから、本発明の触媒は、空気中での取扱いが可能であることが分かる。
Figure 0006729370
(実施例7)
実施例1と同様な方法で金属担持物を調製した。
得られた金属担持物5gを内径25mmのガラス管に仕込み、電気炉にセットし、アルゴン置換後、100%水素10L/時間でフローした。電気炉を加熱し金属担持物を100℃まで9分で昇温し、100℃から550℃まで36分間一定速度で昇温した。そのまま500℃で2時間還元処理を実施し、その後、アルゴン流通下冷却し、室温下6%酸素/窒素、2.1L/時間で1.5時間フローして安定化を実施し活性炭担持触媒を得た。酸化安定化操作の際の、触媒内部の温度は60℃以下であった。
この触媒を実施例1と同様な方法で分析したところ、粉末X線回折分析において2θ=43°のブロードなピークの半値幅は3.46°、酸素吸収量は0.60mmol酸素/g−触媒、酸化率は46%であった。
この触媒2gを、10%酸素/窒素の雰囲気下10mlのサンプル瓶に密閉し、室温で保存した。
37日経過後、保存していた触媒を用い、反応圧力を10MPa、反応温度を200℃とした以外は、<触媒の反応活性の確認方法>と同様な方法で反応を実施して速度数を算出した。結果を表2に示す。
(参考例1)
実施例7で酸化安定化した触媒のうち2gを大気(酸素濃度21%)下室温で保存した。
36日経過後、保存していた触媒を用い、実施例7と同様な条件で反応を実施し、速度定数を算出した。結果を表2に示す。
実施例7及び参考例1より、本発明の触媒は、酸素濃度が低い雰囲気下で保存することにより、保存後の触媒活性を高く維持できることが分かった。
Figure 0006729370
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は2014年5月23日出願の日本特許出願(特願2014−107283)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明により、金属担持触媒を工業スケールに拡大して製造しても高活性な触媒を得ることができる。

Claims (10)

  1. 金属を担体に担持させた金属担持触媒であって、
    カルボン酸及びカルボン酸エステルの少なくとも一方の水素化に用いられ、
    前記金属としてルテニウム、スズ及び白金を含み、
    CuKα線を用いた粉末X線回折分析の2θ=43°のピークの半値幅が3.61°以下であり、かつ
    下記式(1)で表される酸化率が38%以上であることを特徴とする金属担持触媒。
    酸化率(%)=[X/Y]×100 ・・・(1)
    (上記式(1)において、Xは、前記金属担持触媒を昇温還元に供した後、引き続き常温酸化を行なった際に、前記金属担持触媒を酸化するために要した酸素のモル数を表す。
    Yは、前記金属担持触媒に担持された金属の総モル数を表す。)
  2. 前記半値幅が、3.60°以下である、請求項1に記載の金属担持触媒。
  3. 金属担持触媒中のハロゲン濃度が0.005重量%以上、0.8重量%以下である、請求項1又は2に記載の金属担持触媒。
  4. 前記担体が炭素質担体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属担持触媒。
  5. 金属担持触媒の総質量に対する前記金属の金属原子換算での合計担持量が、5質量%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属担持触媒。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属担持触媒を製造する方法であって、
    担体に金属成分を担持させて得られた金属担持物を、還元性気体により80℃以上350℃未満の温度範囲にて還元処理を行う第一還元処理工程と、次ぐ、350℃以上600℃以下の温度範囲にて還元処理を行う第二還元処理工程と、の二段階の還元処理を行い、還元処理後に、触媒の温度が130℃を超えないように、酸化する酸化工程を経て調製される金属担持触媒の製造方法。
  7. 金属担持触媒を酸素濃度15体積%以下の雰囲気下で保存することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属担持触媒を保存する方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属担持触媒を用いて、カルボン酸及びカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1の化合物を還元して、前記化合物から誘導されるアルコールを得る工程を有することを特徴とするアルコールの製造方法。
  9. 前記化合物を形成するカルボン酸が有する炭素数が14以下である、請求項8に記載のアルコール製造方法。
  10. 前記化合物を形成するカルボン酸が、ジカルボン酸である、請求項8または9に記載のアルコールの製造方法。
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