JP3572589B2 - カルボン酸エステルの水素化反応用触媒および該触媒の製造方法ならびに飽和アルコール化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、カルボン酸エステル還元能を有する触媒および該触媒の製造方法ならびに飽和アルコール化合物の製造方法に関する。詳しくは、カルボン酸エステル還元能に加え、不飽和結合および芳香環の水素化能を有する触媒を使用することにより不飽和結合等の残存しない飽和アルコールを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カルボン酸エステル化合物からアルコール化合物を製造する方法としては、銅−クロム酸化物触媒等を用いて200℃以上の高温200kg/cm2 以上の高圧条件下において水素化分解する方法が最も一般的かつ汎用的である。
【0003】
しかしながら、上記の方法は、カルボン酸エステル部位の水素化に、銅−クロム系触媒を使用しているため作業環境上での毒性、安全性に問題点があった。また、反応中触媒の主成分である銅が析出し、触媒やリアクター内壁へ付着したり配管を閉塞する等の問題がしばしば起こる。さらには、反応圧力が高いことから、作業時の安全性に加えてプラントの建設コスト、ランニングコストの面で好ましくない。
【0004】
更には、銅−クロム系触媒は不飽和結合や芳香環などの水素化還元能力が一般的に貴金属触媒より劣っており、不飽和カルボン酸エステル化合物等を水素化分解して直接飽和アルコールを製造する方法には適用できない。従って、不飽和カルボン酸エステル化合物等を水素化分解して飽和アルコールを得るためには、不飽和カルボン酸エステル等をいったん周期律表第▲8▼族の金属からなる触媒でまず不飽和結合等を水素化して飽和カルボン酸エステルにした後に、引き続いてカルボン酸エステル部分を銅−クロム触媒で還元するという2つの工程を経る必要があった。
【0005】
前記銅系以外の触媒元素としては周期律表第▲8▼族の金属元素の利用が考えられる。しかし、周期律表第▲8▼族の金属元素の単独系触媒では、液相において、ほとんどカルボン酸エステルの水素化分解は進行せず、かつ反応の選択性が非常に悪い。また、特公表2−504363号公報及び特公表3−500657号公報には、パラジウム−亜鉛系触媒を用いてカルボン酸エステルを還元してアルコールを製造する方法が開示されているが、その反応性、選択性は満足すべきものではない。更には、高活性のカルボン酸直接還元触媒として、ゾル−ゲル法で調製したルテニウム−スズ系触媒が特開平4−82852号公報に開示されているが、該公報にはカルボン酸エステルの還元については記載されておらず、またルテニウム−スズ系触媒は不飽和結合等の部位の水素化能力も甚だ低い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、作業環境上での毒性、安全性に問題点がなく、しかも穏和な反応条件下で、カルボン酸エステルを選択性良く水素化分解することができ、更には不飽和結合等も水素化しうる触媒を提供することにより、プラントの運転やメンテナンスが容易で、プラント建設コストやランニングコストを低減できる飽和アルコール化合物の製造方法を確立することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す特定の処方により調製されてなるルテニウム−スズ系触媒によれば、前記課題を悉く解決しうることを見出した。本発明はかかる新たな知見により完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、担体にスズ化合物及びルテニウム化合物を担持してなるカルボン酸エステルの水素化反応用触媒であって、該触媒の調製にあたり、担体にスズ化合物を担持した後に、酸素存在下で焼成する工程(1)およびアルカリ性溶液にて処理する工程(2)、ならびに担体にスズ化合物及びルテニウム化合物を担持し、かつ前記工程(1)および工程(2)の後に、活性化処理を施す工程(3)を設けてなるカルボン酸エステルの水素化反応用触媒、および該触媒の製造方法、ならびに、前記触媒の存在下で、飽和カルボン酸エステル含有化合物のカルボン酸エステル部位を水素化分解することを特徴とする飽和アルコール化合物の製造方法、および前記触媒の存在下で、不飽和結合および/または芳香環を有するカルボン酸エステル含有化合物のカルボン酸エステル部位の水素化分解ならびに不飽和結合および/または芳香環の水素化を行うことを特徴とする飽和アルコール化合物の製造方法に関する。
【0009】
本発明のカルボン酸エステルの水素化反応用触媒は、担体にスズ化合物及びルテニウム化合物を担持してなる触媒である。
【0010】
前記担体としては、各種公知のものを使用でき、たとえばアルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア等があげられる。これらのなかでも特にアルミナ、チタニアが好ましい。また担体の形状は特に限定はされず粒状、球状、押し出し成型状、ペレット状、ハニカム状などの成型品、粉末状などの非成型品のいずれの形状のものを使用してもよい。
【0011】
スズ化合物としては塩化第1スズ、塩化第2スズ、スズ酸カリウム、スズ酸ナトリウム、オクチル酸スズ、塩化トリブチルスズ、テトラエトキシスズおよび酸化ビス−トリブチルスズから選ばれる少なくとも1種を使用するのが、高活性な触媒が得られる点で好ましい。なお、かかるスズ化合物の担体への担持方法は特に限定されず含浸法、共沈法、イオン交換法等の各種公知の方法によればよい。
【0012】
ルテニウム化合物としては、たとえば、硝酸ルテニウムニトロシル錯体、硝酸ルテニウム、塩化ルテニウム等のルテニウム塩、アセチルアセトンルテニウム等や、エチレンジアミン、フェナンスロリン、ビピリジル等のキレート化剤と結合したルテニウムキレート錯体、カルボニルルテニウム錯体等の有機ルテニウム錯体、ルテニウムアルコキシド等があげられる。なお、ルテニウム化合物の担体への担持方法はスズ化合物と同様の含浸法、共沈法、イオン交換法等の各種公知の方法を採用できる。
【0013】
本発明の触媒におけるルテニウム化合物およびスズ化合物の担持量は、ルテニウム化合物の担持量が金属換算で通常0.01〜20重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%である。また、ルテニウム化合物とスズ化合物との担持量の割合は、金属のモル比で1:0.1〜1:20、好ましくは1:1〜1:10である。スズ化合物およびルテニウム化合物の担持量が前記範囲を外れる場合にはカルボン酸エステル還元能を有する触媒として十分な活性を示さず好ましくない。
【0014】
本発明の触媒の調製にあたっては、担体にスズ化合物を担持した後に、酸素存在下で焼成する工程(1)およびアルカリ性溶液にて処理する工程(2)を経由させることが必須とされる。かかる工程(1)および工程(2)の順序は、アルカリ性溶液処理時に、スズ化合物が担体から剥離し、スズ担持量の減少を防ぐため、工程(1)に次いで工程(2)を経由させる調製法を採用するのが好ましい。
【0015】
なお、触媒の調製にあたり、工程(1)または工程(2)を経ない場合には、エステルの水素化能力を十分に発現しうる触媒は得られず、また担体にスズ化合物を担持する前に工程(1)または工程(2)を経ても触媒上のスズ化合物を高活性にすることはできない。
【0016】
また、触媒の調製にあたっては、担体にスズ化合物及びルテニウム化合物を担持し、かつ前記工程(1)および工程(2)を経た後に、活性化処理を施す工程(3)が必須とされる。工程(3)を経ない場合にはエステルの水素化能力を十分に発現しうる触媒は得られない。
【0017】
また、担体へのスズ化合物及びルテニウム化合物の担持の順序は、スズ化合物担持の後にルテニウム化合物担持、ルテニウム化合物担持の後にスズ化合物担持、スズ化合物及びルテニウム化合物共担持のいずれを採用してもよい。だたし、担体にルテニウム化合物が担持された状態で工程(1)を経由すると毒性を有する酸化ルテニウムが調製工程において生成するといった不利があるため、スズ化合物担持の後にルテニウム化合物担持を行うのが好ましい。
【0018】
従って、本発明の触媒の調製の順序としては、例えば、次の調製順序を採用できる。
【0019】
▲1▼スズ化合物担持→工程(1)→工程(2)→ルテニウム化合物担持→工程(3)
【0020】
▲2▼スズ化合物担持→工程(1)→ルテニウム化合物担持→工程(2)→工程(3)
【0021】
▲3▼ルテニウム化合物担持→工程(1)→スズ化合物担持→工程(1)→工程(2)→工程(3)
【0022】
▲4▼ルテニウム化合物担持→工程(3)→スズ化合物担持→工程(1)→工程(2)→工程(3)
【0023】
▲5▼スズ化合物及びルテニウム化合物共担持→工程(1)→工程(2)→工程(3)
【0024】
前記調製順序の中でも▲1▼または▲2▼の調製順序が好ましい。特に、調製順序▲1▼の場合にエステル還元能および不飽和結合の水素化能等を有する高活性な触媒が得られる。
【0025】
前記酸素存在下で焼成する工程(1)における、焼成条件は特に限定されないが、焼成温度は通常300℃程度以上とされる。300℃よりも低い温度では焼成の効果がほとんどなく高活性な触媒が得られないことがある。また焼成温度の上限は特に限定されないが、金属酸化物の凝集(シンタリング)や担体構造が破壊されること等を考慮すれば通常1200℃程度以下とされる。また、焼成時間は通常0.5〜10時間程度とされる。焼成方法は特に限定されず、たとえば、マッフル炉などを用いる方法、流通式の方法等を採用できる。なお、酸素存在下とは空気、人工酸素、純酸素、酸素を含む混合気体等の酸素を含む気流下または雰囲気下をいう。
【0026】
前記アルカリ性溶液にて処理する工程(2)おける、アルカリ性溶液は特に限定されないが、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの周期律表第I族金属の水酸化物等の水溶液等を使用するのが好ましい。アルカリ溶液にて触媒を処理する方法は特に限定されず、たとえば、回分式処理を採用してもよいし、流通式処理を採用してもよい。また、アルカリ性溶液にて触媒を処理する時間は通常0.5〜10時間程度とされ、温度は通常室温から100℃程度とされる。
【0027】
アルカリ性溶液処理の後は、十分に触媒を洗浄し、触媒のpHを中性付近まで戻す必要がある。ここでいう中性付近とはpH6からpH9程度の範囲であり、pHの値は洗浄後に、触媒そのものを滴定して求めても良いし、洗浄に用いた洗い水の液性で代用してもよい。
【0028】
アルカリ性溶液の濃度は特に限定されないが、通常0.001モル/l〜3モル/l程度の溶液濃度とするのが好ましい。3モル/l以上の濃度になると使用する担体が溶解したり、担体の微細構造が変化が生じる場合があり好ましくない。また、アルカリ性溶液で処理した後に水洗浄をおこない中性付近に戻す場合に多大な水量と時間を要することとなり実用的ではない。一方、0.001モル/l以下の濃度とするとアルカリ溶液にて触媒を処理する効果が十分に発現しない場合があり好ましくない。
【0029】
前記活性化処理を施す工程(3)における活性化処理としては、例えば、気相還元法、液相還元法などを採用できる。気相還元法としては、たとえば水素ガス流通還元法や水蒸気気流中でヒドラジン等の還元剤を流通し還元する方法等があげられる。具体的には、前記水素ガス流通還元法による場合は、水素気流下に通常200℃程度以上の条件で還元処理を行うのがよい。前記以下の条件では還元強度が不十分であり高活性な触媒が得られない。なお、還元強度が大きい場合は特に限定されないが、エネルギーロス、金属のシンタリング等を考慮すれば250〜1000℃程度の条件で還元処理を行うのが好ましい。還元処理の時間は通常0.1時間程度以上、好ましくは0.5〜20時間とするのがよい。また、液相還元法としては、たとえばホルマリン還元法、ヒドラジン還元法、リチウムアルミニウムハイドライド還元法等があげられ、前記気相還元法と同等またはそれ以上の還元強度となるような還元処理を行えばよい。
【0030】
かくして得られた本発明の触媒表面の活性金属の分布状態、活性化状態を、ガスの化学吸着量で表せば、本発明の触媒1gあたりの水素吸着量は通常室温において0〜0.5ml程度、一酸化炭素吸着量は0.005ml〜5ml程度である。一般的に触媒表面のガスの化学吸着量がこれらの範囲であれば、触媒表面にルテニウムとスズがバランスよく存在しており、高活性なカルボン酸エステル還元能を有するとともに、不飽和結合の水素化能等を有する。
【0031】
かかる本発明のカルボン酸エステルの水素化反応用触媒によれば、飽和カルボン酸エステル含有化合物のカルボン酸エステル部位を水素化分解して、飽和カルボン酸エステル含有化合物に対応する飽和アルコール化合物を高収率で製造することができる。
【0032】
飽和カルボン酸エステル化合物としては、各種公知の化合物を使用できる。具体的には、ギ酸エステル、酢酸エステル、イソ酪酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、ピバル酸エステル、1−ヘキサン酸エステル、2−エチルヘキサン酸エステル、デカン酸エステル、ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル、アラキン酸エステル、ミスチリン酸エステル、パルミチン酸エステル、エイコセン酸エステルの直鎖もしくは分岐鎖状の飽和脂肪族カルボン酸エステル類;シュウ酸ジエステル、マロン酸ジエステル、メチレンマロン酸ジエステル、グルタル酸ジエステル、アジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエスエル、ドデカン2酸ジエステル、1,15−ペンタデカン酸ジエステル等の直鎖もしくは分岐鎖状の飽和脂肪族カルボン酸ジエステル類;ナフテン酸エステル、シクロペンタンカルボン酸エステル、シクロヘキサンカルボン酸エステル、メチルシクロヘキサンカルボン酸エステル、シクロヘプタンカルボン酸エステル等の飽和脂環族カルボン酸エステル類;シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル等の飽和脂環族カルボン酸ジエステル類;乳酸エステル、ヒドロキシ酪酸エステル等の飽和ヒドロキシカルボン酸エステル類等があげられる。
【0033】
なお、前記エステルは特に限定されず、例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、2エチルヘキシルエステル、ビニルエステル等があげられるが、本発明では工業製品として入手しやすいメチルエステルを使用するのが好ましい。
【0034】
また、本発明のカルボン酸エステルの水素化反応用触媒は、不飽和結合や芳香環の水素化能も有するため、不飽和結合および/または芳香環を有するカルボン酸エステル含有化合物から対応する飽和アルコール化合物を一段階で製造することができる。なお不飽和結合とは炭素−炭素の二重結合および/または三重結合をいう。
【0035】
不飽和結合および/または芳香環を有するカルボン酸エステル含有化合物としては各種公知の化合物を使用できる。具体的には、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、エライジン酸エステル等の直鎖もしくは分岐鎖状の不飽和脂肪族カルボン酸エステル類;イタコン酸ジエステル、アセチレンジカルボン酸ジエステル等の直鎖もしくは分岐鎖状の不飽和脂肪族ジカルボンジ酸エステル類;ロジンエステル類、アビエチン酸エステル等の不飽和脂環族カルボン酸エステル類;ダイマー酸ジエステル、シクロヘキセン−1,4−ジカルボン酸ジエステル等の不飽和脂環族カルボン酸ジエステル類;アクリル酸エステル等の共役基を有する不飽和カルボン酸エステル類;安息香酸エステル、フェニル酢酸エステル、ベンジル酸エステル、ベンゾイル安息香酸エステル等の芳香族カルボン酸エステル類;テレフタル酸ジエステル、イソフタル酸ジエステル、ジフェニルエーテルジカルボン酸ジエステル、ナフタレンジカルボン酸ジエステル等の芳香族カルボン酸ジエステル類;マンデル酸エステル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸エステル類;トリメリット酸トリエステル等の脂環族カルボン酸トリエステル類等があげられる。なお、ここに示したエステル類も前記と同様のエステル類を使用できる。
【0036】
前記水素化分解の反応形式は回分式または流通式(固定床式、流動床式等)のいずれの方法も採用できる。
【0037】
水素化分解反応の圧力は、反応形式として回分式を採用する場合は通常10〜300Kg/cm2 程度、好ましくは50〜200Kg/cm2 であり、一方、流通式を採用する場合には通常1〜300Kg/cm2 程度、好ましくは1〜200Kg/cm2 であり、いずれの反応形式を採用した場合にも比較的低圧の条件下でも水素化分解を行うことができる。また、反応温度は、いずれの反応形式の場合にも、通常150〜400℃程度、好ましくは200〜300℃である。
【0038】
回分式による場合には、触媒の使用量は、カルボン酸エステル化合物1重量部に対して通常0.1〜50重量部程度、好ましくは1〜20重量部である。また反応時間は通常1〜100時間程度、好ましくは1〜50時間である。
【0039】
また、流通式の場合には、(単位時間あたりの水素供給量)/(単位時間あたりのカルボン酸エステル含有化合物供給量)の体積比が通常1〜5000程度、好ましくは20〜3000となるように水素およびカルボン酸エステル含有化合物を供給する。前記体積比が1未満の場合には、反応性が低下するため好ましくない。一方、前記体積比が5000を越える場合には反応性に影響を及ぼすものではないが無駄な水素を供給することになりコスト高となる。また、原料の液空間速度(LHSV)は、通常0.01〜25程度、好ましくは0.1〜2である。LHSVが0.01未満の場合には、反応時間が長くなりコストの面で不利である。一方、LHSVが25を越える場合には、反応性が低下するため好ましくない。
【0040】
また、本発明の飽和アルコールの製造にあたり、溶媒の使用は任意である。溶媒を使用する場合、溶媒としてはデカリン、ジオキサン、ジグライム、n−ヘプタン、水、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を使用できる。また、溶媒は2種類以上の組成からなる混合溶媒を使用してもよい。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば以下の効果を奏する。
【0042】
(1)ルテニウム−スズ触媒に特定の処理を施しているため、単に担体に担持したルテニウム−スズ触媒に比べて、カルボン酸エステルを選択性良く水素化分解することがきる。また、作業環境上での毒性、安全性に問題点がなく、比較的低圧力の穏和な反応条件下で使用できる。また、本発明の触媒は製造工程上の問題もない。
【0043】
(2)さらに、本発明の触媒によれば、従来のルテニウム−スズ触媒では認められていない不飽和結合や芳香環などの水素化も完結させうることができる。
【0044】
(3)このように本発明の触媒を使用することにより、飽和カルボン酸エステル化合物から飽和アルコール化合物を高収率で製造できる。また不飽和結合や芳香環などを有するカルボン酸エステル化合物からも飽和アルコール化合物を一段階で製造できる。かかる本発明の触媒を用いれば、プラントの運転やメンテナンスが容易で、プラント建設コストやランニングコストを低減できる。
【0045】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中の%は、特記しない限りモル%を表す。
【0046】
実施例1
(1)触媒の調製
アルミナ10.1gをイソプロパノール15.1gに分散した後、塩化第一スズ2水和物6.21gをイソプロパノール10.0gに溶解した溶液を加え、15時間撹拌して含浸した。ロータリーエバポレーターにてイソプロパノールを留去し後、18リットル/時間(25℃換算)の空気気流下で、400℃で2時間焼成した後、放冷した。得られたスズ担持アルミナを0.1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液500mlを使って、室温で1時間撹拌してアルカリ溶液処理した。このアルカリ溶液処理を再度同様におこなった後、洗い液のpHが8になるまで充分蒸留水で洗浄した。洗浄後スズ担持アルミナを115℃で2時間オーブン中で乾燥した。スズ担持アルミナをイソプロパノール12.0gに室温で分散した後、次いで5%硝酸エステルルテニウムニトロシル溶液10.1gを加え15時間撹拌して含浸した後、溶媒をロータリーエバポレーターで留去した。最後に10リットル/時間(25℃換算)の水素気流下、300℃で4時間還元処理して触媒を調製した。
【0047】
(2)水素化分解
内容積200mlの電磁撹拌式オートクレーブ中に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル20.0gおよびジグライム50gを仕込み、前記(1)で製造した触媒3.0gを加え、水素圧100Kg/cm2 、温度280℃、4時間の反応条件で反応を行った。反応液は濾別の後、ガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、原料に対して、87モル%のシクロヘキサンジメタノールを得た。
【0048】
実施例2
実施例1の(1)において担体をチタニアにかえた以外は実施例1の(1)と同様に触媒を製造した。また、実施例1の(2)において、触媒として前記触媒を用いた他は、実施例1の(2)と同様の方法により水素化分解を行った。その結果、原料に対して、80%のシクロヘキサンジメタノールを得た。
【0049】
実施例3
実施例1の(1)においてスズ化合物としてスズ酸カリウム3.65gを使用し、スズ酸カリウム含浸時の溶媒を水にかえた以外は実施例1の(1)と同様に触媒を製造した。また、実施例1の(2)において、触媒として前記触媒を用いた他は、実施例1の(2)と同様の方法により水素化分解を行った。その結果、原料に対して、79%のシクロヘキサンジメタノールを得た。
【0050】
実施例4〜9
実施例1(1)で調製した触媒を用いて、実施例1(2)と同様の条件、触媒量で表1に示す各種の飽和カルボン酸エステルの水素化分解を行った。結果を表1に示す。
【0051】
実施例10〜13
実施例1(1)で調製した触媒を用いて、実施例1(2)と同様の条件、触媒量で表2に示す各種の不飽和または芳香族カルボン酸エステルの水素化分解を行った。結果を表2に示す。
【0052】
比較例1
(1)触媒の調製
チタニア10.0gをイソプロパノール15.1gに分散した後、塩化第一スズ2水和物6.20gをイソプロパノール10.0gに溶解した溶液を加え、15時間撹拌して含浸した。その後、ロータリーエバポレーターにてイソプロパノールを留去した。得られたスズ担持チタニアをイソプロパノール12.0gに室温で分散した後、次いで5%硝酸エステルルテニウムニトロシル溶液10.1gを加え15時間撹拌して含浸した。溶媒をロータリーエバポレーターで留去した。最後に10リットル/時間(25℃換算)水素気流下、300℃で4時間還元処理して触媒を調製した。
【0053】
(2)水素化分解
内容積200mlの電磁撹拌式オートクレーブ中に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル20.0gおよびジグライム50gを仕込み、前記(1)で製造した触媒3.0gを加え、水素圧100Kg/cm2 、温度280℃、4時間の反応条件で反応を行った。反応液は濾別の後、ガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、原料に対して、5%のシクロヘキサンジメタノールを得た。
【0054】
比較例2
(1)触媒の製造方法
塩化第一スズ・2水和物、2.783gをイソプロピルアルコール10gに溶解した後、予めイソプロピルアルコール15g中で30分浸漬させたアルミナ10gに加え一晩室温下で撹拌した。次いで、イソプロピルアルコールを減圧下で留去し乾燥させた後、空気気流下、600℃で5時間焼成し、再びイソプロピルアルコール15g中で30分浸漬させた。次に、5重量%ルテニウム含有硝酸ルテニウムニトロシル溶液12gを2.4gまで濃縮し、イソプロピルアルコール10gに溶解させてから加え、一晩室温下で撹拌した。次いで、イソプロピルアルコールを減圧下で留去し乾燥させた後、窒素気流下で再度乾燥、置換した後に、水素気流下で300℃、4時間還元した。還元終了後、室温まで放冷し窒素で置換して目的とする触媒を得た。
【0055】
(2)水素化分解
前記(1)で調製した触媒を用いて、比較例1(2)と同様の条件、触媒量で1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステルの水素化分解を行った。反応液は濾別の後、ガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、原料に対して、57%のシクロヘキサンジメタノールを得た。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
Claims (11)
- 担体にスズ化合物及びルテニウム化合物を担持してなるカルボン酸エステルの水素化反応用触媒であって、該触媒の調製にあたり、担体にスズ化合物を担持した後に、酸素存在下で焼成する工程(1)およびアルカリ性溶液にて処理する工程(2)、ならびに担体にスズ化合物及びルテニウム化合物を担持し、かつ前記工程(1)および工程(2)の後に、活性化処理を施す工程(3)を設けてなるカルボン酸エステルの水素化反応用触媒。
- 担体に担持されるスズ化合物が、塩化第1スズ、塩化第2スズ、スズ酸カリウム、スズ酸ナトリウム、オクチル酸スズ、塩化トリブチルスズ、テトラエトキシスズおよび酸化ビス−トリブチルスズから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の触媒。
- 担体が、チタニアおよび/またはアルミナである請求項1または2記載の触媒。
- 触媒の調製にあたり、酸素存在下で焼成する工程(1)の後に、アルカリ性溶液にて処理する工程(2)を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の触媒。
- 触媒の調製にあたり、担体にスズ化合物を担持した後に、担体にルテニウム化合物を担持することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の触媒。
- 前記酸素存在下で焼成する工程(1)における焼成温度が300℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の触媒。
- 前記アルカリ性溶液にて処理する工程(2)におけるアルカリ性溶液が水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムの水溶液である請求項1〜6のいずれかに記載の触媒。
- 前記活性化処理工程(3)において、水素気流下に温度200℃以上の条件で還元処理を施してなる請求項1〜7のいずれかに記載の触媒。
- 担体にスズ化合物を担持した後に、酸素存在下で焼成する工程(1)およびアルカリ性溶液にて処理する工程(2)、ならびに担体にスズ化合物及びルテニウム化合物を担持し、かつ前記工程(1)および工程(2)の後に、活性化処理を施す工程(3)を設けてなることを特徴とする請求項1記載のカルボン酸エステルの水素化反応用触媒の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のカルボン酸エステルの水素化反応用触媒の存在下で、飽和カルボン酸エステル含有化合物のカルボン酸エステル部位を水素化分解することを特徴とする飽和アルコール化合物の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のカルボン酸エステルの水素化反応用触媒の存在下で、不飽和結合および/または芳香環を有するカルボン酸エステル含有化合物のカルボン酸エステル部位の水素化分解ならびに不飽和結合および/または芳香環の水素化を行うことを特徴とする飽和アルコール化合物の製造方法。
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- 1994-01-31 JP JP02904594A patent/JP3572589B2/ja not_active Expired - Lifetime
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