JP4791203B2 - 酸化物触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、特許文献8では、乾燥粉体は水の他、アンモニウム根、有機酸、無機酸を含むため、焼成途中でこれらが蒸発、分解などする際、触媒構成元素が還元されることを報告しており、焼成終了時での触媒の還元率を制御するために前段焼成温度を変更する方法、焼成時の気相中の酸素などの酸化性成分濃度を変更する方法、または焼成時の気相中のアンモニアなどの還元成分濃度を変更する方法が開示されている。
(1)プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に用いる、テルル及び/又はアンチモン、モリブデン、バナジウム及びニオブを含む酸化物触媒の製造方法であって、テルル化合物及び/又はアンチモン化合物、モリブデン化合物、バナジウム化合物及びニオブ化合物を含む原料調合液を調製する工程と、該原料調合液の乾燥工程と、該乾燥工程で得られた触媒前駆体の焼成工程とからなり、該焼成工程が少なくとも5分間にわたりシアン化水素を10〜500ppm含有する雰囲気下で該触媒前駆体を焼成する工程を含むことを特徴とする酸化物触媒の製造方法。
(2)上記酸化物触媒が、下記の一般組成式(1)で示されることを特徴とする上記(1)に記載の酸化物触媒の製造方法。
Mo1VaNbbXcOn (1)
(式(1)中、成分XはTe及び/又はSbであり、a、b、c及びnはMo1原子当たりの原子比を表し、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、nは構成金属の酸化状態によって決まる数である。)
(3)成分XがSbであることを特徴とする上記(2)に記載の酸化物触媒の製造方法。
(4)上記酸化物触媒がシリカを担体とするものであって、担体シリカの含有量が、触媒成分と担体シリカとからなるシリカ担持触媒の全重量の20〜80重量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
(5)上記原料調合液を調製するためのニオブの原料が、ジカルボン酸とニオブ化合物を含むものであり、該原料中のジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
(6)シアン化水素を含有する雰囲気下での触媒前駆体の焼成を、200〜400℃で実施することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
本発明の酸化物触媒の製造方法は、(I)原料を調合する工程、(II)工程(I)で得られた原料調合液を乾燥し、触媒前駆体を得る工程、及び(III)工程(II)で得られた触媒前駆体を焼成する工程の3つの工程から成る。
以下、各工程について説明する。
本発明における調合とは、溶媒に、触媒構成元素の原料を溶解または分散させることである。また、原料調合液とは、触媒構成金属及び担体成分を全て含有する溶液、またはスラリーを表す。調合工程を経て乾燥工程に入る前に幾つかの触媒成分を添加する場合、その添加成分以外の全ての触媒構成金属及び担体成分を含有する溶液、またはスラリーを原料調合液とする。
原料調合工程で得られた調合液を噴霧乾燥法によって乾燥させ、乾燥粉体を得る。噴霧乾燥法における噴霧化は遠心方式、二流体ノズル方式、または高圧ノズル方式によって行うことができる。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。熱風の乾燥機入口温度は150〜300℃が好ましい。得られた乾燥粉体は、通常すみやかに次の焼成工程に供給される。乾燥粉体を保管する必要がある場合は、吸湿しないように保管することが好ましい。
乾燥工程で得られた乾燥粉体を焼成に供することによって酸化物触媒を得る。
本発明では、焼成を終了するまでの過程において少なくとも5分間にわたりシアン化水素を含有する雰囲気下で焼成を実施することにより、目的物の収率が高く、かつ目的物の生産性が高い触媒を製造する。
本発明において熱処理雰囲気中にシアン化水素を共存させる方法に特に限定はなく、焼成炉内にシアン化水素を供給する方法、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸水素アンモニウムのように加熱による分解等によりシアン化水素を生成する物質を乾燥粉体と混合して焼成する方法、シュウ酸アンモニウムを予め原料調合液に添加する方法が採用できる。
焼成雰囲気中のシアン化水素濃度は、例えばガスクロマトグラフ分析、ピリジンピラゾロン法、シアン化水素検知管、硝酸銀滴定法などによって測定することが可能である。
プロパンまたはイソブタンとアンモニアの供給原料は必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのガスを使用できる。供給酸素源としては、空気、純酸素または純酸素で富化した空気を用いることができる。さらに、希釈ガスとしてヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気、窒素などを供給してもよい。
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)
ここで、
W=充填触媒量(g)
F=標準状態(0℃、1.013×105Pa)での原料混合ガス流量(Ncc/sec)、
T=反応温度(℃)
本発明の製造方法によって製造されるテルル及び/又はアンチモン、モリブデン、バナジウム及びニオブを含む酸化物触媒の好ましい具体例としては下記の一般組成式(1)で示されるものを例示することが出来る。
Mo1VaNbbXcOn (1)
式(1)中、成分XはTe及び/又はSbであり、a、b、c及びnはMo1原子当たりの原子比を表し、それぞれ0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、そしてnは構成金属の酸化状態によって決まる数である。
Moの原料は、ヘプタモリブデン酸アンモニウムを好適に用いることができる。Vの原料は、メタバナジン酸アンモニウムを好適に用いることができる。
Nbの原料は、ニオブ酸、ニオブの無機酸塩、及びニオブの有機酸塩の少なくとも1種を用いることができる。特にニオブ酸がよい。ニオブ酸はNb2O5・nH2Oで表され、ニオブ水酸化物または酸化ニオブ水和物とも称される。中でも、特開平11−47598号公報に記載されている様に、Nbの原料がジカルボン酸とニオブ化合物とを含むものであり、ジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4、アンモニア/ニオブのモル比が2以下のニオブ原料液を用いることが好ましい。
成分XとしてTeを用いる場合、Teの原料はテルル酸を好適に用いることができる。成分XとしてSbを用いる場合、Sbの原料はアンチモン酸化物を好適に用いることができるが、特に三酸化二アンチモンが好ましい。
まず、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、三酸化二アンチモンを水に添加し、加熱して原料液(A)を調製する。この時、容器内は窒素雰囲気でもよい。三酸化二アンチモンに代えテルル酸を用いても良いし、同時に使用しても良い。ニオブ酸とジカルボン酸を水中で加熱撹拌して原料液(B)を調製する。このニオブ原料液(B)の少なくとも一部に、更にシュウ酸及び/または過酸化水素水を添加することができる。この時、H2O2/Nbのモル比は0.5〜20、特に1〜20が好ましく、シュウ酸/Nbのモル比は1〜4が好ましい。更には、原料液(B)の少なくとも一部に過酸化水素、三酸化二アンチモンを添加してもよい。この時、H2O2/Nbのモル比は0.5〜20、特に1〜20が好ましく、Sb/Nbモル比は0〜5、特に0.01〜2が好ましい。
この様にして得られた原料調合液を前記したような乾燥工程及び焼成工程で処理して前記一般式(1)で示される酸化物触媒を得る。
(ニオブ原料液の調製)
以下の方法でニオブ原料液を調製した。
水1740gにNb2O5として80.5重量%を含有するニオブ酸250.7gとシュウ酸二水和物〔H2C2O4・2H2O〕1009.1gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.510(mol−Nb/kg−液)である。
また、300mlのガラスビーカーにこのニオブ混合液2.69gを精秤し、約80℃の熱水200mlを加え、続いて1:1硫酸10mlを加えた。得られた溶液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO4を用いて滴定した。KMnO4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って計算した結果、1.51(mol−シュウ酸/kg)であった。
2KMnO4+3H2SO4+5H2C2O4
→ K2SO4+2MnSO4+10CO2+8H2O
この結果から、シュウ酸/ニオブのモル比は1.51/0.69=2.19である。
得られたニオブ原料液を、下記の触媒調製のニオブ原料液(B0)として用いた。
水4365gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を1004.8g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を145.5g、三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を206.9g加え、攪拌しながら90℃で1時間加熱して混合液A−1とした。
ニオブ混合液(B0)736.5gを氷冷下で撹拌しながら、H2O2として30wt%を含有する過酸化水素水115.3gをゆっくり添加した。その後、攪拌混合して、混合液B−1とした。
一方、水3696gに平均一次粒子径が12nmの粉体シリカ264gを添加し、室温で3時間攪拌して粉体シリカ懸濁液を得た。
前記のように原料調合液にシュウ酸アンモニウム一水和物を添加するのは、後の焼成工程において、シュウ酸アンモニウム一水和物を加熱によって分解させシアン化水素を発生させ、焼成雰囲気中にシアン化水素を含有させるためである。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥機に供給して乾燥し、触媒前駆体である微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、出口温度は120℃であった。
得られた乾燥粉体500gを直径3インチのSUS製焼成管に充填し、1.0Nm3/HRの窒素ガス流通下、管を回転させながら、室温から350℃まで一定の昇温速度にて1時間で昇温させた。
焼成炉内の温度が200℃に到達したときの焼成炉内雰囲気のシアン化水素濃度をガスクロマトグラフで測定したが検出されなかった。さらにその5分後、10分後及び15分後に焼成炉内雰囲気のシアン化水素濃度をガスクロマトグラフで測定したところそれぞれ211ppm、84ppm及び32ppmであった。
350℃に到達後4時間保持し、次いで650℃まで4時間で昇温し、650℃で2時間保持することによって焼成を実施して触媒を得た。
このようにして得られた触媒30gを、内径25mmのバイコールガラス流動床型反応管に充填し、反応温度440℃、反応圧力1.513×105Paでプロパン:アンモニア:酸素:ヘリウム=1:1:3.0:12のモル比の混合ガスを接触時間を調整しながら供給した。反応開始後12時間後、240時間後及び1200時間後のアクリロニトリル収率とアクリロニトリル生産性を表1に示す。反応開始から1200時間に渡り、高いアクリロニトリル収率を保ちつつ、アクリロニトリル生産性は安定に推移した。
このようにして得られた触媒を用いて、実施例1と同様の方法でプロパンのアンモ酸化反応を行った。得られた結果を表1に示す。実施例1と同様、反応開始から1200時間に渡り、高いアクリロニトリル収率を保ちつつアクリロニトリル生産性は安定に推移した。
このようにして得られた触媒を用いて、実施例1と同様の方法でプロパンのアンモ酸化反応を行った。得られた結果を表1に示す。実施例1と同様、反応開始から1200時間に渡り、アクリロニトリル収率及びアクリロニトリル生産性は安定に推移した。実施例1と同様、反応開始から1200時間に渡り、高いアクリロニトリル収率を保ちつつアクリロニトリル生産性は安定に推移した。
焼成工程において、室温から350℃まで一定の昇温速度にて10時間で昇温させた以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。焼成炉内の温度が200℃に到達したとき、その5分後、10分後及び15分後の焼成炉内雰囲気のシアン化水素濃度をガスクロマトグラフで測定したが、いずれにおいてもHCNは検出されなかった。
これは、本比較例では実施例1に比べて昇温速度が遅くなり、単位時間あたりのシアン化水素発生量が測定機器の検出限界より少なくなったためと考えられる。
このようにして得られた触媒を用いて、実施例1と同様の方法でプロパンのアンモ酸化反応を行った。得られた結果を表1に示す。反応開始から1200時間の間、低いアクリロニトリル収率のまま推移し、アクリロニトリル生産性は徐々に低下した。
Claims (6)
- プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に用いる、テルル及び/又はアンチモン、モリブデン、バナジウム及びニオブを含む酸化物触媒の製造方法であって、テルル化合物及び/又はアンチモン化合物、モリブデン化合物、バナジウム化合物及びニオブ化合物を含む原料調合液を調製する工程と、該原料調合液の乾燥工程と、該乾燥工程で得られた触媒前駆体の焼成工程とからなり、該焼成工程が少なくとも5分間にわたりシアン化水素を10〜500ppm含有する雰囲気下で該触媒前駆体を焼成する工程を含むことを特徴とする酸化物触媒の製造方法。
- 上記酸化物触媒が、下記の一般組成式(1)で示されることを特徴とする請求項1に記載の酸化物触媒の製造方法。
Mo1VaNbbXcOn (1)
(式(1)中、成分XはTe及び/又はSbであり、a、b、c及びnはMo1原子当たりの原子比を表し、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、nは構成金属の酸化状態によって決まる数である。) - 成分XがSbであることを特徴とする請求項2に記載の酸化物触媒の製造方法。
- 上記酸化物触媒がシリカを担体とするものであって、担体シリカの含有量が、触媒成分と担体シリカとからなるシリカ担持触媒の全重量の20〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
- 上記原料調合液を調製するためのニオブの原料が、ジカルボン酸とニオブ化合物を含むものであり、該原料中のジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
- シアン化水素を含有する雰囲気下での触媒前駆体の焼成を、200〜400℃で実施することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
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