JP4014863B2 - 酸化またはアンモ酸化用触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカンまたはアルケンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒の製造方法、酸化物触媒、および該酸化物触媒を用いる不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プロピレンまたはイソブチレンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化して対応する不飽和カルボン酸または不飽和ニトリルを製造する方法が良く知られており、プロピレンとアンモニアを原料としたアクリロニトリルの製造など、既に多くの企業で工業化されている。
一方、近年、プロピレンまたはイソブチレンに替わってプロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化によって対応する不飽和カルボン酸または不飽和ニトリルを製造する方法が着目されており、種々の酸化物触媒製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、Mo−V−Nb−(Te/Sb)を含む酸化物触媒の製造方法が、特開平6−279351号公報、特開平6−285372号公報、特開平7−315842号公報、特開平8−141401号公報、特開平9−157241号公報、特開平10−330343号公報、特開平11−42434号公報、特開平11−43314号公報、特開平11−226408号公報、特開平10−57479号公報、特開2000−70714号公報、特開2000−143244号公報、特開2001−58827号公報などに開示されている。
【0004】
また、Mo−V−Sbを含むアクリル酸製造用の酸化物触媒の製造方法が、特開10−45664号公報、特開2000−354765号公報、特開2000−317309号公報、特開2000−254496号公報、特開2000−256257号公報、特開2000−246108号公報、特開2000−51693号公報、特開平11−285636号公報、特開平11−285637号公報、特開平10−230164号公報、特開2001−70788号公報などに開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ニオブと他の複数種の金属イオンから成る混合溶液は、各々の金属イオンが異なるpH安定領域を持つため、溶液としての安定性が極めて低く、析出を生じやすい。そのため、特開平7−315842号公報では、Mo−V−Nb−(Te/Sb)から成る混合溶液が析出する前に溶液から水分を除去する製造方法が提案されている。しかしながら、混合溶液の溶液としての安定時間が短いため、この方法での大量製造は実質不可能であった。
【0006】
一方、Mo−V−Nb−(Te/Sb)から成る原料調合液は、無攪拌状態において非常にゲル化しやすい特性を有する。原料調合液がゲル化しやすい特性を有すると、攪拌状態の悪い局所的な領域で成分組成の不均一化が生じ、それによる触媒性能の低下が起こる恐れがあるばかりか、流速の低下しやすい配管の屈曲部などにおいて、ゲル化によるつまりを生じ、強いては原料調合工程から乾燥工程への送液が不可能となる場合さえあり得る。
【0007】
特に、工業的な規模で触媒を製造する場合、大量に再現性よく優れた性能を有する触媒を製造する必要があるが、小型設備を用いた製造と比較して、原料調合液の配管部での滞留時間が長く、実質的な無攪拌状態がより長く続くため、よりゲル化が顕著に生じやすい。
従って、原料調合液のゲル化を抑制し、大量に再現性よく優れた性能を有する酸化物触媒の製造方法が切望されていた。
【0008】
本発明の第1の課題は、不飽和酸または不飽和ニトリルの製造に用いる酸化物触媒の製造方法において、原料調合液のゲル化を抑制することである。
第2の課題は、上記の製造方法により得られる酸化物触媒を用いて、アルカンまたはアルケンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させ、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アルカンまたはアルケンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒の製造方法について鋭意検討した結果、原料調合工程および/または乾燥工程の原料調合液が流通する配管部において、該原料調合液の最長配管滞留時間を3秒以上1時間以内とすることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は次の態様からなるものである。
[1]アルカンまたはアルケンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒の製造方法であって、(I)原料調合工程、(II)乾燥工程、(III)焼成工程から成り、(I)原料調合工程は、過酸化水素/ニオブをモル比0 . 5〜20で含有するニオブ混合液と、ニオブ以外の触媒成分とを混合する工程を含み、(I)原料調合工程および/または(II)乾燥工程における原料調合液が流通する配管部において、該原料調合液の最長配管滞留時間が3秒以上1時間以内であることを特徴とする酸化物触媒の製造方法。
【0011】
[2]上記最長配管滞留時間が3秒以上20分以内であることを特徴とする[1]に記載の酸化物触媒の製造方法。
[3]上記乾燥工程における乾燥方法が、噴霧乾燥法であることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
[4]上記原料調合液がニオブを含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法。
【0012】
[5]上記酸化物触媒が、下記の一般組成式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法;
Mo1VaNbbXcOn (1)
(式中、成分Xはテルルまたはアンチモンから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。)
[6]成分Xがアンチモンであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法。
【0013】
[7]上記ニオブの原料が、ジカルボン酸とニオブの化合物を含み、ジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4のニオブ含有液であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法。
[8]上記酸化物触媒が、上記一般組成式(1)で表される触媒構成元素酸化物とこれを担持するシリカとからなるものであって、該シリカの含有割合が、該触媒構成元素酸化物とシリカの全重量に対し、SiO2換算で20〜60重量%のシリカに担持されていることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法。
【0014】
[9][1]〜[8]のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法により製造したことを特徴とするプロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒。
[10]プロパンまたはイソブタンを気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造するにあたり、[9]に記載の酸化物触媒を用いることを特徴とする不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
【0015】
[11][1]〜[8]のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法により製造したことを特徴とするプロピレンまたはイソブチレンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒。
[12]プロピレンまたはイソブチレンを気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造するにあたり、[11]に記載の酸化物触媒を用いることを特徴とする不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の酸化物触媒の製造方法は、(I)原料を調合する工程、(II)工程(I)で得られた原料調合液を乾燥し、触媒前駆体を得る工程、(III)工程(II)で得られた触媒前駆体を焼成する工程の3つの工程を経て製造することができる。
本発明における調合とは、水性溶媒に、触媒構成元素の原料を溶解または分散させることである。また、原料調合液とは、触媒構成金属および担体成分を全て含有する溶液、水性混合物またはスラリーを表す。乾燥機入口近傍で幾つかの触媒成分を添加する場合、その添加成分以外の全ての触媒構成金属および担体成分を含有する溶液、水性混合液またはスラリーを原料調合液とする。
【0017】
本発明における原料調合液が流通する配管部とは、原料調合工程と乾燥工程を接続し、原料調合液が流通する可能性のある配管内の領域を表す。その配管部の途中には、送液量を安定させるためのバッファータンクを設けてもよく、その場合、ゲル化の抑制を目的として、バッファータンク内を攪拌することが好ましい。またバッファータンクから原料調合槽への戻りの送液配管を設置し、原料調合液を循環させ、原料調合槽で十分な攪拌を与えることにより、配管部やバッファータンク内でのゲル化を抑制することもできる。
【0018】
本発明の配管滞留時間とは、原料調合液の配管部における滞留時間である。
上記のように、バッファータンクや戻りラインを設けている場合は、原料調合槽とバッファータンクを接続する配管部の滞留時間(a)、バッファータンク間を接続する配管部での滞留時間(b)、バッファータンクと乾燥機入口を接続する滞留時間(c)、バッファータンクと原料調合液の戻り配管部での滞留時間(d)をそれぞれに考慮しなければならない。
【0019】
本発明の最長配管滞留時間とは、(a)〜(d)の滞留時間の中での最大値を表す。この最大値は触媒固形分濃度や攪拌方法に強く依存するものであるが、1時間以内とすることが好ましく、20分以内とすることが更に好ましい。また、下限については、調製した原料調合液の組成均一性を向上させるために、3秒以上であることが好ましく、10秒以上であることが更に好ましい。
本発明の製造方法により得られる触媒は下記の一般組成式(1)で示される酸化物触媒である。
【0020】
Mo1VaNbbXcOn (1)
(式中、成分Xはテルルまたはアンチモンから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。)
また、Mo1原子当たりの原子比a〜cは、それぞれ、0.1〜0.4、0.01〜0.2、0.1〜0.5が好ましい。
【0021】
本発明の製造方法により得られる酸化物触媒は、シリカ担持触媒が好ましい。酸化物触媒がシリカ担持触媒の場合、高い機械的強度を有するので、流動床反応器を用いた気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に好適である。シリカ担体の含有量は、触媒構成元素の酸化物とシリカ担体から成るシリカ担持酸化物触媒の全重量に対して、SiO2換算で20〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜55重量%である。
また、本発明で用いられる触媒固形分とは、原料調合液を乾燥し、次いで焼成した際に残る固形分を表し、触媒活性成分および担体成分を含有するものである。触媒固形分濃度とは、原料調合液中の触媒固形分を重量分率で表したものであり、得られる触媒の性能および触媒生産性を考慮すると、10%〜50%が好ましい。
【0022】
原料とは、工程(I)で用いるものである。本発明の調製方法で用いる原料は特に限定されないが、触媒性能を悪化させる成分を実質的に含まないものが好ましい。また担体成分の原料や水などの溶媒についても、触媒性能を悪化させる成分を実質的に含まないものが好ましい。
原料には、例えば下記の化合物を用いることができる。
Moの原料は、ヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を好適に用いることができる。
Vの原料は、メタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]を好適に用いることができる。
【0023】
Nbの原料としては、ニオブ酸、ニオブの無機酸塩およびニオブの有機酸塩を用いることができる。特にニオブ酸が良い。ニオブ酸はNb2O5・nH2Oで表され、ニオブ水酸化物または酸化ニオブ水和物とも称される。更に、ジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4のNb原料液として用いることが好ましい。ジカルボン酸/ニオブのモル比を上記の値にすることにより、触媒構成金属の酸化還元状態を調整し触媒性能を特に優れたものとすることができる。また、このジカルボン酸はシュウ酸が好ましい。
【0024】
Sbの原料としては三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕が好ましい。更に、Sbの水性溶媒に対する溶解速度を向上させるためには、平均粒径が1μm以下のSb2O3を用いることが好ましい。Teの原料としてはテルル酸〔H6TeO6〕が好ましい。シリカの原料はシリカゾルが好ましい。
以下に、工程(I)〜(III)からなる本発明の好ましい触媒調製例を説明する。
【0025】
(工程I:原料調合工程)
先に述べた原料を用い、原料調合液を得る。以下に一例を示す。ヘプタモリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、三酸化二アンチモンを水に添加し、70℃以上に加熱して混合液(A)を調製する。この時、容器内は窒素雰囲気でもよい。ニオブ酸とシュウ酸を水中で加熱撹拌してニオブ含有液(B0)を調製する。含有液(B0)は特開平11−253801号公報に教示されている方法で得られる含有液を用いることができる。更に、含有液(B0)の少なくとも一部に、過酸化水素、三酸化二アンチモンを添加し、ニオブ混合液(B)を調製する。この時、H2O2/Nb(モル比)は0.5〜20とする。特に、1〜10が好ましく、Sb/Nb(モル比)は0〜5、特に0.01〜2が好ましい。混合液(B)にはシュウ酸を加えることもできる。
【0026】
目的とする組成に合わせて、混合液(A)、混合液(B)、含有液(B0)を好適に混合して、原料調合液を得る。
本発明のアンモ酸化用触媒がシリカ担持触媒の場合、シリカゾルを含むように原料調合液が調製される。シリカゾルは適宜添加することができる。
また、アンチモンを用いる場合は、混合液(A)、または、調合途中の混合液(A)の成分を含む液に、過酸化水素を添加することが好ましい。この時、H2O2/Sb(モル比)は0.01〜5、特に、1〜3が好ましい。また、この時、30℃〜70℃で、30分〜2時間攪拌を続けることが好ましい。
【0027】
(工程II:乾燥工程)
工程(I)で得られた原料調合液を噴霧乾燥法によって乾燥させ、乾燥粉体を得る。噴霧乾燥法における噴霧化は遠心方式、二流体ノズル方式または高圧ノズル方式を採用することができる。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。熱風の乾燥機入口温度は150〜300℃が好ましい。
【0028】
(工程III:焼成工程)
乾燥工程で得られた乾燥粉体を焼成することによって酸化物触媒を得る。焼成は窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの実質的に酸素を含まない不活性ガス雰囲気下、好ましくは、不活性ガスを流通させながら、500〜800℃、好ましくは600〜700℃で実施する。焼成時間は0.5〜20時間、好ましくは1〜8時間である。
【0029】
焼成は、回転炉、トンネル炉、管状炉、流動焼成炉等を用いて行うことができるが、大量焼成では回転炉を用いることが好ましい。
焼成は反復することができる。焼成工程の前に、乾燥粉体を大気雰囲気下または空気流通下で200〜400℃、1〜5時間で前焼成することもできる。
このようにして製造された酸化物触媒の存在下、アルカンまたはアルケンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する。
【0030】
アルカンまたはアルケンとアンモニアの供給原料は必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのガスを使用できる。
供給酸素源として空気、酸素を富化した空気または純酸素を用いることができる。更に、希釈ガスとしてヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気、窒素などを供給してもよい。
アルカンまたはアルケンの気相接触酸化は以下の条件で行うことが出来る。
【0031】
反応に供給する酸素のアルカンまたはアルケンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.5〜4である。
反応温度は300℃〜500℃、好ましくは350℃〜450℃である。
反応圧力は5×104〜5×105Pa、好ましくは1×105〜3×105Paである。
接触時間は0.1〜10(sec・g/cc)、好ましくは0.5〜5(sec・g/cc)である。本発明において、接触時間は次式で決定される。
【0032】
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)
ここで
W=充填触媒量(g)
F=標準状態(0℃、1.013×105Pa)での原料混合ガス
流量(Ncc/sec)
T=反応温度(℃)
である。
【0033】
アルカンまたはアルケンの気相接触アンモ酸化は以下の条件で行うことが出来る。
反応に供給する酸素のアルカンまたはアルケンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.5〜4である。
反応に供給するアンモニアのアルカンまたはアルケンに対するモル比は0.3〜1.5、好ましくは0.8〜1.0である。
【0034】
反応温度は350℃〜500℃、好ましくは380℃〜470℃である。
反応圧力は5×104〜5×105Pa、好ましくは1×105〜3×105Paである。
接触時間は0.1〜10(sec・g/cc)、好ましくは0.5〜5(sec・g/cc)である。
反応方式は、固定床、流動床、移動床など従来の方式を採用できるが、反応熱の除去が容易な流動床反応器が好ましい。
また、本発明の反応は、単流式であってもリサイクル式であってもよい。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の製造方法により得られた酸化物触媒について、触媒の調製実施例およびプロパンの気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリルの製造実施例を用いて説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれら実施例に限定されるものではない。
プロパンのアンモ酸化反応の成績は反応ガスを分析した結果を基に、次式で定義されるプロパン転化率およびアクリロニトリル選択率を指標として評価した。
【0036】
プロパン転化率(%)=(反応したプロパンのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
アクリロニトリル選択率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(反応したプロパンのモル数)×100
【0037】
(ニオブ含有液の調製)
特開平11−253801号公報に倣って、以下の方法でニオブ含有液を調製した。水5640gにNb2O5として80.2重量%を含有するニオブ酸795.1gとシュウ酸二水和物〔H2C2O4・2H2O〕3120gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.24、仕込みのニオブ濃度は0.502(mol−Nb/Kg−液)である。この混合液を95℃で1時間加熱撹拌することによって、ニオブが溶解した水溶液を得た。この水溶液を静置、氷冷後、固体を吸引濾過によって濾別し、均一なニオブ含有液を得た。このニオブ含有液のシュウ酸/ニオブのモル比は下記の分析により2.395であった。
【0038】
るつぼにこのニオブ含有液10gを精秤して、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、Nb2O50.849gを得た。この結果から、ニオブ濃度は0.639(mol−Nb/Kg−液)であった。
300mlのガラスビーカーにこのニオブ含有液3gを精秤して、約80℃の熱水200mlを加え、続いて1:1硫酸10mlを加えた。得られた溶液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO4を用いて滴定した。KMnO4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って計算した結果、1.530(mol−シュウ酸/Kg)であった。
2KMnO4+3H2SO4+5H2C2O4→K2SO4+2MnSO4+10CO2+8H2O
得られたニオブ含有液は、シュウ酸/ニオブのモル比を調整することなく、下記の触媒調製のニオブ原料として用いた。
【0039】
【実施例1】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.22Nb0.11Sb0.28On/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
水2323gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を442.7g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を64.53g、三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を80.39g加え、容器内に窒素ガスを流通させ、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱して混合液A−1を得た。
【0040】
ニオブ含有液(B0)431.6gに、H2O2として30wt%を含有する過酸化水素水を96.63g添加し、さらに少量ずつ三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を21.92g加え、室温で10分間攪拌混合して、混合液B−1を調製した。
得られた溶液A−1を70℃に冷却した後にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル1471gを添加し、更にH2O2として30wt%を含有する過酸化水素水125.1gを添加し、45℃で1時間攪拌を続けた。次に混合液B−1を添加して原料調合液を得た。
【0041】
得られた原料調合液を、送液量が1時間当たり10.6リットル、配管滞留時間が2分43秒の条件で遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。得られた乾燥粉体480gを直径3インチのSUS製焼成管に充填し、5.0NL/minの窒素ガス流通下、管を回転させながら、640℃で2時間焼成して触媒を得た。
【0042】
(プロパンのアンモ酸化反応)
内径25mmのバイコールガラス流動床型反応管に調製して得られた触媒を45g充填し、反応温度440℃、反応圧力常圧下にプロパン:アンモニア:酸素:ヘリウム=1:0.6:1.5:5.6のモル比の混合ガスを接触時間3.0(sec・g/cc)で供給した。得られた反応結果は、プロパン転化率50.5%、AN選択率66.7%であった。
【0043】
【比較例1】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.22Nb0.11Sb0.28On/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を、実施例1で配管部での滞留時間を120分とした以外は実施例1と同様に製造していたところ、配管部でつまりを生じて、乾燥粉体を得ることができなかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明の第1の効果は、不飽和酸または不飽和ニトリルの製造に用いる酸化物触媒の製造方法において、原料調合液のゲル化を抑制できることである。また、この効果により、大量に再現性よく酸化物触媒を製造することができる。
第2の効果は、上記の製造方法により得られる酸化物触媒を用いて、アルカンまたはアルケンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させ、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを高い選択率で製造することができる。
Claims (12)
- アルカンまたはアルケンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒の製造方法であって、(I)原料調合工程、(II)乾燥工程、(III)焼成工程から成り、(I)原料調合工程は、過酸化水素/ニオブをモル比0 . 5〜20で含有するニオブ混合液と、ニオブ以外の触媒成分とを混合する工程を含み、(I)原料調合工程および/または(II)乾燥工程における原料調合液が流通する配管部において、該原料調合液の最長配管滞留時間が3秒以上1時間以内であることを特徴とする酸化物触媒の製造方法。
- 上記最長配管滞留時間が3秒以上20分以内であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物触媒の製造方法。
- 上記乾燥工程における乾燥方法が、噴霧乾燥法であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
- 上記酸化物触媒が、下記の一般組成式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法;
Mo1VaNbbXcOn(1)
(式中、成分Xはテルルまたはアンチモンから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。) - 成分Xがアンチモンであることを特徴とする請求項4に記載の酸化物触媒の製造方法。
- 上記ニオブの原料が、ジカルボン酸とニオブの化合物を含み、ジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4のニオブ含有液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法。
- ニオブ混合液が、アンチモン/ニオブをモル比0〜5で含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法。
- 上記酸化物触媒が、上記一般組成式(1)で表される触媒構成元素酸化物とこれを担持するシリカとからなるものであって、該シリカの含有割合が、該触媒構成元素酸化物とシリカの全重量に対し、SiO2換算で20〜60重量%のシリカに担持されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化物触媒の製造方法。
- 配管部がバッファータンクを有し、前記最長配管滞留時間を、原料調合槽とバッファータンクを接続する配管部の滞留時間(a)、バッファータンク間を接続する配管部での滞留時間(b)、バッファータンクと乾燥機入口を接続する滞留時間(c)、バッファータンクと原料調合液の戻り配管部での滞留時間(d)のうちの最大値とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の酸化物触媒の製造方法。
- 前記バッファータンク内を攪拌することを特徴とする請求項9に記載の酸化物触媒の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により酸化物触媒を製造し、得られた酸化物触媒にプロパンまたはイソブタンを接触させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により酸化物触媒を製造し、得られた酸化物触媒にプロピレンまたはイソブチレンを接触させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する方法。
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