JP4118056B2 - 酸化またはアンモ酸化用触媒の製造方法 - Google Patents

酸化またはアンモ酸化用触媒の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒、及び該酸化物触媒を用いる不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロピレンまたはイソブチレンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化して対応する不飽和カルボン酸または不飽和ニトリルを製造する方法がよく知られているが、近年、プロピレンまたはイソブチレンに替わってプロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化によって対応する不飽和カルボン酸または不飽和ニトリルを製造する方法が着目されており、種々の触媒が提案されている。
【0003】
例えば、Mo−V−Nb−(Te/Sb)を含む酸化物触媒が、特開平5−148212号公報、特開平7−232071号公報、特開平8−141401号公報、特開平9−157241号公報、特開平10−330343号公報、特開平10−28862号公報、特開平11−42434号公報、特開平11−43314号公報、特開平11−226408号公報、特開平10−57479号公報、特開2000−70714号公報、特開2000−143244号公報、特開2001−58827号公報などに開示されている。
【0004】
また、Mo−V−Sbを含むアクリル酸製造用の酸化物触媒が、特開2000−354765号公報、特開2000−317309号公報、特開2000−254496号公報、特開2000−256257号公報、特開2000−246108号公報、特開2000−51693号公報、特開平11−285636号公報、特開平11−285637号公報、特開平10−230164号公報、特開2001−70788号公報などに開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に所望の触媒性能は、成分組成比を適切な値とすること、製造方法を適正化すること等により発現する。しかしながら、触媒の成分組成と製造方法を適正化しても、わずかな不純物元素の混入により、触媒が本来有する優れた性能を発現できないことが多い。
【0006】
特に、工業的な規模で触媒を製造する場合、大量に再現性よく優れた性能を有する触媒を製造する必要があるが、安価な工業グレードの原料に起因する成分、各種設備内壁から溶出する成分、設備部材の摩耗等で混入する成分など、小型設備を用いた製造では起こらなかった原因により性能が低下してしまうことがある。従って、それらの不純物成分を特定し、性能低下が起こらない程度の含有量まで不純物濃度を低下させた触媒の開発が切望されていた。
【0007】
そこで、本発明の第1の目的は、目的物の選択率が高い、不飽和酸または不飽和ニトリルの製造に用いる、不純物濃度の低い新規な酸化物触媒及びその製造方法を提供することである。第2の目的は、上記の製造方法により得られる酸化物触媒を用いて、プロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させ、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒について鋭意検討した結果、モリブデン、バナジウム、ニオブ、テルル及び/またはアンチモンを含む触媒固形分中において、不純物元素(銅、銀、タンタル)の重量分率を1000ppm以下とすることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。即ち、本発明は次の態様からなるものである。
【0009】
[1]プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に用いる下記の一般組成式(1)
Mo1aNbbcn (1)
(式(1)中、成分Xはテルル及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素であり、a、b、c、d及びnはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、そしてnは構成金属の原子価及び組成によって決まる数である。)
で表される成分組成を有し、触媒固形分に対する銅、銀及びタンタルのそれぞれの割合が、重量分率で100ppm以下である酸化物触媒を製造する方法であって、
(I)原料調合工程、(II)乾燥工程及び(III)焼成工程から成り、
前記(I)原料調合工程及び前記(II)乾燥工程に用いる設備の接液部及び/又は回転部に銅、銀及びタンタルを含まない材質を用いることを特徴とする酸化物触媒の製造方法。
]上記原料調合工程において、酸化物触媒のニオブの原料が、ジカルボン酸とニオブの化合物を含み、ジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4のニオブ含有液であることを特徴とする上記[1]に記載の酸化物触媒の製造方法。
]上記[1]又は[2]に記載の酸化物触媒の製造方法により酸化物触媒を製造し、得られた酸化物触媒を用いてプロパンまたはイソブタンを気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する方法。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の触媒は下記の一般組成式(1)で示される酸化物触媒である。
Mo1aNbbcn (1)
式(1)中、成分Xはテルルまたはアンチモンから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c及びnはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、そしてnは構成金属の原子価及び組成によって決まる数である。Mo1原子当たりの原子比a〜cはさらに、それぞれ、0.1〜0.4、0.01〜0.2、0.1〜0.5が好ましい。成分Xとしては、アンチモンがより好ましい。
【0020】
本発明の酸化物触媒において、触媒固形分に対する金属元素Z(銅、銀、タンタルから選ばれる少なくとも1種の元素)の割合は、重量分率で100ppm以下である。
【0021】
すなわち、酸化物触媒中に不純物として含まれる元素の中でも特に銅、銀及びタンタルは本発明の酸化物触媒に対する影響が大きいので、これらの元素のそれぞれを100ppm以下とする。また、銅、銀及びタンタルの中でも特に銅は酸化物触媒の性能を大幅に低下させる
【0022】
これら元素はなるべく少ない方が好ましく、下限について得に制限はない。より好ましくは、一般に金属の分析方法として実施される原子吸光法、ICP分析法、蛍光X線分析法等における検出限界以下である。ここで、触媒固形分とは、原料調合液を乾燥し、次いで焼成した際に残る固形分を表し、触媒活性成分及び担体成分を含有するものである。
【0023】
本発明の製造方法により得られる酸化物触媒は、シリカ担持触媒であることが好ましい。酸化物触媒がシリカ担持触媒の場合には、高い機械的強度を有するので、流動床反応器を用いた気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に好適である。シリカ担体の含有量は、触媒構成元素の酸化物とシリカ担体から成るシリカ担持酸化物触媒の全重量に対して、SiO2換算で20〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜55重量%である。
【0024】
本発明の酸化物触媒の製造方法は次の工程からなる。すなわち、(I)原料調合工程、(II)工程(I)で得られた原料調合液を乾燥し、触媒前駆体を得る工程、(III)工程(II)で得られた触媒前駆体を焼成する工程の3つの工程からなる
【0025】
本発明の酸化物触媒の製造方法における調合とは、水性溶媒に、触媒構成元素の原料を溶解または分散させることである。原料とは、工程(I)で用いるものである。本発明の調製方法で用いる原料は特に限定されないが、触媒性能を悪化させる成分である金属元素Zを実質的に含まないものを用いる。また、担体成分の原料や水などの溶媒についても、触媒性能を悪化させる成分を実質的に含まないものが好ましい。原料には、例えば下記の化合物を用いることができる。
【0026】
Moの原料は、ヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を好適に用いることができる。Vの原料は、メタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]を好適に用いることができる。
【0027】
Nbの原料としては、ニオブ酸、ニオブの無機酸塩及びニオブの有機酸塩を用いることができる。特にニオブ酸がよい。ニオブ酸はNb25・nH2Oで表され、ニオブ水酸化物または酸化ニオブ水和物とも称される。更に、ジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4のNb原料液として用いることが好ましい。ジカルボン酸/ニオブのモル比を上記の値にすることにより、触媒構成金属の酸化還元状態を調整し触媒性能を特に優れたものとすることができる。また、このジカルボン酸はシュウ酸が好ましい。
【0028】
Sbの原料としては三酸化二アンチモン〔Sb23〕が好ましい。更に、Sbの水性溶媒に対する溶解速度を向上させるためには、平均粒径が1μm以下のSb23を用いることが好ましい。Teの原料としてはテルル酸〔H6TeO6〕が好ましい。シリカの原料はシリカゾルが好ましい。
【0029】
以下に、工程(I)〜(III)からなる本発明の製造方法による好ましい触媒調製例を説明する。
(工程I:原料調合工程)
先に述べた原料を用い、原料調合液を得る。
以下に原料混合液調製の一例を示す。ヘプタモリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、三酸化二アンチモンを水に添加し、70℃以上に加熱して混合液(A)を調製する。この時、容器内は窒素雰囲気でもよい。ニオブ酸とシュウ酸を水中で加熱撹拌して混合液(B0)を調製する。混合液(B0)は特開平11−253801号公報に教示されている方法で得られるニオブ含有液を用いることができる。更に、混合液(B0)の少なくとも一部に、過酸化水素、三酸化二アンチモンを添加し、混合液(B)を調製する。この時、H22/Nb(モル比)は0.5〜20、特に、1〜10が好ましく、Sb/Nb(モル比)は0〜5、特に0.01〜2が好ましい。混合液(B)にはシュウ酸を加えることもできる。
【0030】
次に、目的とする組成に合わせて、混合液(A)、混合液(B)、混合液(B0)を好適に混合して、原料調合液を得る。本発明のアンモ酸化用触媒がシリカ担持触媒の場合、シリカゾルを含むように原料調合液が調製される。シリカゾルは適宜添加することができる。
また、アンチモンを用いる場合は、混合液(A)、または、調合途中の混合液(A)の成分を含む液に、過酸化水素を添加することが好ましい。この時、H/Sb(モル比)は0.01〜5、特に、1〜3が好ましい。また、この時、30℃〜70℃で、30分〜2時間攪拌を続けることが好ましい。
【0031】
上述の原料調合工程では、用いる設備の接液部及び/または回転部に用いる材質として、材質構成成分の溶出や摩耗による異成分の混入が生じないものを選定するのはもちろんであるが、特に、金属元素Zの混入が生じない材質を用いることが好ましい。本発明の製造方法で言う接液部とは、原料を含有する液状物質と常時接触するか、または接触する可能性のある、設備または設備上の領域を表し、原料調合槽や送液管のみに限定されず、攪拌翼、加熱コイル、冷却コイル、送液ポンプの液状物質流通部なども含む。また、原料調合工程における回転部とは、攪拌機、攪拌機軸受、送液ポンプの液状物質流通部等において、回転摩耗により生じる物質が原料を含有する液状物質中に混入する可能性のある設備または設備上の領域を表す。また、本発明の製造方法で言う材質とは、触媒製造工程で用いる設備を構成する材料のことである。原料調合工程における接液部及び/または回転部に用いる材質として、例えば、SUS304などのステンレスを好適に用いることができる。
【0032】
(工程II:乾燥工程)
工程(I)で得られた原料調合液を噴霧乾燥法によって乾燥させ、乾燥粉体を得る。噴霧乾燥法における噴霧化は遠心方式、二流体ノズル方式または高圧ノズル方式を採用することができる。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。熱風の乾燥機入口温度は150〜300℃が好ましい。また、乾燥工程の触媒製造設備における接液部及び/または回転部に用いる材質にも、原料調合工程と同じ考えで材質を選定するのが好ましい。
【0033】
(工程III:焼成工程)
工程(III)では、工程(II)すなわち乾燥工程で得られた乾燥粉体を焼成することによって酸化物触媒を得る。焼成は窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの実質的に酸素を含まない不活性ガス雰囲気下、好ましくは、不活性ガスを流通させながら、500〜800℃、好ましくは600〜700℃で実施する。焼成時間は0.5〜20時間、好ましくは1〜8時間である。焼成は、回転炉、トンネル炉、管状炉、流動焼成炉等を用いて行うことができるが、大量焼成では回転炉を用いることが好ましい。焼成は反復することができる。焼成工程の前に、乾燥粉体を大気雰囲気下または空気流通下で200〜400℃、1〜5時間で前焼成することもできる。
【0034】
上記焼成工程において用いる焼成管及び/または回転部の材質としては、実質的に金属元素Zを含有せず、摩耗によって生じる物質の触媒への混入がなく、更に高温での触媒との接触により起こり得る固相反応で触媒中に異成分を混入しない材質を用いることが好ましい。例えば、SUS304などのステンレスを用いることができる。ここで、焼成工程における回転部とは、回転炉において、回転摩耗により生じる物質が触媒中に混入してしまう恐れのある部位を表す。
【0035】
上記の工程(I)〜(III)に従って製造された酸化物触媒の存在下、プロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する。
【0036】
プロパンまたはイソブタンとアンモニアの供給原料は必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのガスを使用できる。供給酸素源として空気、酸素を富化した空気または純酸素を用いることができる。更に、希釈ガスとしてヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気、窒素などを供給してもよい。
【0037】
プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化は以下の条件で行うことが出来る。反応に供給する酸素のプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.5〜4である。反応温度は300℃〜500℃、好ましくは350℃〜450℃である。反応圧力は5×104〜5×105Pa、好ましくは1×105〜3×105Paである。接触時間は0.1〜10(s・g/ml)、好ましくは0.5〜5(s・g/ml)である。本発明において、接触時間は次式で決定される。接触時間は、下記式に示すとおりである。
接触時間(s・g/ml)=(W/F)×273/(273+T)
ここで
W=充填触媒量(g)
F=標準状態(0℃、1.013×105Pa)での原料混合ガス流量(Nml/s)
T=反応温度(℃)
である。
【0038】
プロパンまたはイソブタンの気相接触アンモ酸化は以下の条件で行うことが出来る。反応に供給する酸素のプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.5〜4である。反応に供給するアンモニアのプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.3〜1.5、好ましくは0.8〜1.0である。反応温度は350℃〜500℃、好ましくは380℃〜470℃である。反応圧力は5×104〜5×105Pa、好ましくは1×105〜3×105Paである。接触時間は0.1〜10(s・g/ml)、好ましくは0.5〜5(s・g/ml)である。反応方式は、固定床、流動床、移動床など従来の方式を採用できるが、反応熱の除去が容易な流動床反応器が好ましい。また、本発明の反応は、単流式であってもリサイクル式であってもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の酸化物触媒について、触媒の調製例及びプロパンの気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリルの製造例を実施例を用いて説明するが、本発明はその要旨を変えない限りこれら実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例及び比較例の触媒を調製するに際しては、スラリーの送液ポンプ、送液ポンプ内液状物質流通部に関しては金属元素を含まないシリコーンチューブを用い、その他の装置部材は全てSUS製のものを用いた。
【0040】
(反応成績の評価方法)
プロパンのアンモ酸化反応の成績は、反応ガスを分析した結果を基に、次式で定義されるプロパン転化率及びアクリロニトリル選択率を指標として評価した。
プロパン転化率(%)=(反応したプロパンのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
アクリロニトリル選択率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(反応したプロパンのモル数)×100
【0041】
(ニオブ原料液の調製)
特開平11−253801号公報に倣って、以下の方法でニオブ原料液を調製した。まず、水5640gにNb25として80.2重量%を含有するニオブ酸795.1gとシュウ酸二水和物〔H224・2H2O〕3120gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.24、仕込みのニオブ濃度は0.502mol(Nb)/kg(液)である。この混合液を95℃で1時間加熱撹拌することによって、ニオブが溶解した水溶液を得た。この水溶液を静置、氷冷後、固体を吸引濾過によって濾別し、均一なニオブ含有液を得た。このニオブ含有液のシュウ酸/ニオブのモル比は下記の分析により2.395であった。
【0042】
るつぼにこのニオブ含有液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、Nb250.849gを得た。この結果から、ニオブ濃度は0.639mol(Nb)/kg(液)であった。次いで、別に300mlのガラスビーカーにこのニオブ含有液3gを精秤し、約80℃の熱水200mlを加え、続いて1:1硫酸10mlを加えた。得られた溶液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO4を用いて滴定した。KMnO4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って計算した結果、1.530mol/kgであった。2KMnO4+3H2SO4+5H224→K2SO4+2MnSO4+10CO2+8H2
得られたニオブ含有液は、シュウ酸/ニオブのモル比を調整することなく、下記の触媒調製のニオブ原料液(B0)として用いた。
【0043】
【実施例1】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
水2242gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を447.5g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を62.27g、三酸化二アンチモン〔Sb23〕を77.57g加え、容器内に窒素ガスを流通させ、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱して混合液A−1を得た。
【0044】
ニオブ混合液(B0)436.3gに、H22として30wt%を含有する過酸化水素水を97.69g添加し、さらに少量ずつ三酸化二アンチモン〔Sb23〕を28.50g加え、室温で10分間攪拌混合して、混合液B−1を調製した。
【0045】
得られた溶液A−1を70℃に冷却した後にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル1471gを添加し、更にH22として30wt%を含有する過酸化水素水90.51gを添加し、45℃で1時間攪拌を続けた。次に混合液B−1を添加して原料調合液を得た。得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
【0046】
得られた乾燥粉体480gを直径3インチ(約7.6cm)のSUS製焼成管に充填し、5.0NL/minの窒素ガス流通下、管を回転させながら、640℃で2時間焼成して触媒を得た。得られた触媒を蛍光X線分析により組成分析したところ、銅重量含有量は検出限界以下であった。
【0047】
(プロパンのアンモ酸化反応)
内径25mmのバイコールガラス流動床型反応管に調製して得られた触媒を45g充填し、反応温度440℃、反応圧力常圧下にプロパン:アンモニア:酸素:ヘリウム=1:0.6:1.5:5.6のモル比の混合ガスを接触時間3.0(s・g/ml)で供給した。得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0048】
【実施例2】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
実施例1で得られた原料調合液に硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)0.075gを添加した後、10分間攪拌を行った以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。焼成後の触媒を蛍光X線分析により組成分析した結果、触媒中の銅重量含有率は19ppmであった。実施例1と同様のプロパンのアンモ酸化反応について、得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0049】
【実施例3】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
実施例1で得られた原料調合液に硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)0.21gを添加した後、10分間攪拌を行った以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。焼成後の触媒を蛍光X線分析により組成分析した結果、触媒中の銅重量含有率は52ppmであった。実施例1と同様のプロパンのアンモ酸化反応について、得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0050】
【比較例1】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
実施例1で得られた原料調合液に硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)18.7gを添加した後、10分間攪拌を行った以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。焼成後の触媒を蛍光X線分析により組成分析した結果、触媒中の銅重量含有率は4988ppmであった。実施例1と同様のプロパンのアンモ酸化反応について、得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0051】
【比較例2】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
実施例1で得られた原料調合液に硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)76.3gを添加した後、10分間攪拌を行った以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。焼成後の触媒を蛍光X線分析により組成分析した結果、触媒中の銅重量含有率は20025ppmであった。実施例1と同様のプロパンのアンモ酸化反応について、得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0052】
【実施例4】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
不純物である銅が焼成工程において混入したと仮定し、実施例1と同様にして得られた乾燥粉体480gと銅粉0.014gを混合して焼成した。銅粉の混合以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。焼成後の触媒を蛍光X線分析により組成分析した結果、触媒中の銅重量含有率は26ppmであった。実施例1と同様のプロパンのアンモ酸化反応について、得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0053】
【比較例3】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
不純物である銅が焼成工程において混入したと仮定し、実施例1と同様にして得られた乾燥粉体480gと銅粉2.44gを混合して焼成した。銅粉の混合以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。焼成後の触媒を蛍光X線分析により組成分析した結果、触媒中の銅重量含有率は5020ppmであった。実施例1と同様のプロパンのアンモ酸化反応について、得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0054】
【比較例4】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
不純物である銅が焼成工程において混入したと仮定し、実施例1と同様にして得られた乾燥粉体480gと銅粉9.90gを混合して焼成した。銅粉の混合以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。焼成後の触媒を蛍光X線分析により組成分析した結果、触媒中の銅重量含有率は20110ppmであった。実施例1と同様のプロパンのアンモ酸化反応について、得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0055】
【比較例5】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo10.21Nb0.11Sb0.27n/45.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして製造した。
実施例1で得られた原料調合液に炭酸銀(AgCO3)26.3gを添加した後、10分間攪拌を行った以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。焼成後の触媒を蛍光X線分析により組成分析した結果、触媒中の銅重量含有率は16100ppmであった。実施例1と同様のプロパンのアンモ酸化反応について、得られた反応結果を下記の表1に示す。
【0056】
【表1】
Figure 0004118056
【0057】
【発明の効果】
本発明により得られる酸化物触媒を用いることによって、プロパンまたはイソブタンから高い選択率で不飽和カルボン酸または不飽和ニトリルを製造することができる。また本発明の製造方法により、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に有効な酸化物触媒を大量にかつ再現性よく得ることができる。

Claims (3)

  1. プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に用いる下記の一般組成式(1)
    Mo1aNbbcn (1)
    (式(1)中、成分Xはテルル及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素であり、a、b、c、d及びnはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、そしてnは構成金属の原子価及び組成によって決まる数である。)
    で表される成分組成を有し、触媒固形分に対する銅、銀及びタンタルのそれぞれの割合が、重量分率で100ppm以下である酸化物触媒を製造する方法であって、
    (I)原料調合工程、(II)乾燥工程及び(III)焼成工程から成り、
    前記(III)焼成工程に用いる焼成管及び回転部に銅、銀及びタンタルを含まない材質を用いることを特徴とする酸化物触媒の製造方法。
  2. 上記原料調合工程において、酸化物触媒のニオブの原料が、ジカルボン酸とニオブの化合物を含み、ジカルボン酸/ニオブのモル比が1〜4のニオブ含有液であることを特徴とする請求項に記載の酸化物触媒の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の酸化物触媒の製造方法により酸化物触媒を製造し、得られた酸化物触媒を用いてプロパンまたはイソブタンを気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する方法。
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