JP4413368B2 - 酸化またはアンモ酸化用触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いる酸化物触媒、およびこれを用いる不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロピレンまたはイソブチレンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化して対応する不飽和カルボン酸または不飽和ニトリルを製造する方法が良く知られているが、近年、プロピレンまたはイソブチレンに替わってプロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化によって対応する不飽和カルボン酸または不飽和ニトリルを製造する方法が着目されており、種々の触媒および反応方法が提案されている。
【0003】
例えば、Mo−V−Nb−SbまたはMo−V−Nb−Teを含む酸化物触媒が、特開平9−157241号公報、特開平10−28862号公報、特開平10−330343号公報、特開平11−57479号公報、特開平11−226408号公報、特開平11−47598号公報、特開平5−148212号公報、特開平5−279313号公報、特開平6−228074号公報、特開平6−279351号公報、特開平10−45664号公報、特開平10−57813号公報、特開平9−316023号公報などに開示されている。
【0004】
これらの公報のうち、特開平5−279313号公報において、Mo−V−Nb−Te系酸化物触媒に特定の酸化物を混合する方法が開示されており、ホウ酸を添加、混合する実施例が記載されている。すなわち、実験式Mo1V0.3Nb0.12Te0.23Onを有する複合酸化物にオルトホウ酸0.3g〜0.9gを添加し、混合する。この混合物を打錠成型器を用いて成形した後、粉砕、篩別し、再度窒素気流中で焼成して触媒を得ている。しかし、この方法では、調製方法が非常に煩雑で、工業的に有利ではない上、触媒の耐摩耗性についても不満足である。
【0005】
その他の公報においては、ホウ素の使用を開示している公報もあるが、ホウ素の効果については何ら言及されておらず、実施例もない。
更には、上記何れの公報においても、Ti、Sn、Ge、Ga、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる1種以上の元素とホウ素との組み合わせについても何ら言及していない。
上記の公報などに開示された触媒は、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いるとき、未だ目的物の選択率は不十分であった。特に、流動床反応に好適な担持触媒は、目的物の選択率が低下しがちである。
【0006】
更に、流動床反応に用いるためには、耐摩耗性が要求される。従来触媒では耐摩耗性が低く、触媒が摩耗して微粉末が飛散するため、配管の閉塞、熱交換器の汚れ、飛散物処理の必要、反応成績の変化など多くの問題が発生し、工業的な連続運転が難しいという問題点があった。
以上の点から、目的物の選択率が高く、耐摩耗性の高い、気相接触酸化または気相接触アンモ酸化用触媒の開発が切望されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、目的物の選択率が高く、耐摩耗性の高い、不飽和酸または不飽和ニトリル製造用の新規な酸化物触媒を提供することである。
更に本発明の第2の目的は、上記の優れた触媒を用いて、プロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させ、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いる触媒について鋭意検討した結果、SbまたはTeから選ばれる少なくとも1種以上の元素、Mo、V、NbおよびBを含む触媒、更に好ましくは、SbまたはTeから選ばれる少なくとも1種以上の元素、Ti、Sn、Ge、Ga、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1種以上の元素、Mo、V、NbおよびBを含む触媒を用いることによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、(1)プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いる触媒であって、下記の一般組成式(2)で表されることを特徴とする酸化物触媒、
Mo1VaNbbBcXdZeOn (2)
(式中、成分XはSbまたはTeから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはTi、Sn、Ge、Ga、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c、d、e、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.1≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.1<c≦3、dは0.01≦d≦1、eは0<e≦3、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。)
【0011】
(2)成分ZがTi、Snから選ばれる少なくとも1種以上の元素であることを特徴とする前記(2)に記載の酸化物触媒、
(3)成分XがSbであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の酸化物触媒、
(4)該酸化物触媒が、触媒構成元素の酸化物とシリカの全重量に対し、SiO2換算で20〜60重量%のシリカに担持されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の酸化物触媒、
【0013】
(5)プロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させ、不飽和酸または不飽和ニトリルを製造するにあたり、下記の一般組成式(2)で表される酸化物触媒を用いることを特徴とする不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法、
Mo1VaNbbBcXdZeOn (2)
(式中、成分XはSbまたはTeから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはTi、Sn、Ge、Ga、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c、d、e、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.1≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.1<c≦3、dは0.01≦d≦1、eは0<e≦3、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。)
【0014】
(6)成分ZがTi、Snから選ばれる少なくとも1種以上の元素である酸化物触媒を用いることを特徴とする前記(5)に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法、
(7)成分XがSbである酸化物触媒を用いることを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法、
(8)該酸化物触媒が、触媒構成元素の酸化物とシリカの全重量に対し、SiO2換算で20〜60重量%のシリカに担持されていることを特徴とする前記(5)〜(7)のいずれか1項に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法に関するものである。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の酸化物触媒は下記の一般組成式(2)で示される酸化物触媒である。
【0016】
Mo1VaNbbBcXdZeOn (2)
(式中、成分XはSbまたはTeから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはTi、Sn、Ge、Ga、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c、d、e、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.1≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.1<c≦3、dは0.01≦d≦1、eは0<e≦3、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。)
成分XはSbが好ましい。成分ZはTi、Snが好ましい。
【0017】
また、Mo1原子当たりの原子比a〜eは、それぞれ、0.2〜0.5、0.01〜0.2、0.2〜1.5、0.1〜0.5、0.2〜2が好ましい。
本発明の酸化物触媒は、シリカ担持触媒が好ましい。本発明の酸化物触媒がシリカ担持触媒の場合、高い機械的強度を有するので、流動床反応器を用いたアンモ酸化反応に好適である。シリカ担体の含有量は、触媒構成元素の酸化物とシリカ担体から成るシリカ担持酸化物触媒の全重量に対して、SiO2換算で20〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。
【0018】
本発明の酸化物触媒を製造するための成分金属の原料は特に限定されないが、例えば、下記の化合物を用いることができる。
MoとVの原料は、それぞれ、ヘプタモリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O]とメタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]を好適に用いることができる。
Nbの原料としては、ニオブ酸、ニオブの無機酸塩およびニオブの有機酸塩を用いることができる。特にニオブ酸が良い。ニオブ酸はNb2O5・nH2Oで表され、ニオブ水酸化物または酸化ニオブ水和物とも称される。更にジカルボン酸/ニオブのモル比が2〜4のNb原料液として用いることが好ましい。ジカルボン酸はシュウ酸が好ましい。
【0019】
Bの原料としてはオルトホウ酸〔H3BO3〕が好ましい。
Sbの原料としては三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕が好ましい。
Teの原料としてはテルル酸〔H6TeO6〕が好ましい。
成分Zの原料は、酸化物や硝酸塩を用いることができる。
シリカの原料はシリカゾルが好ましい。
本発明の酸化物触媒の製造方法は、一般的な方法で調製することができる。例えば、(1)原料混合液の調合工程、(2)工程(1)で得られた原料混合液を乾燥し、触媒前駆体を得る工程、(3)工程(2)で得られた触媒前駆体を焼成する工程の3つの工程を経て製造することができる。
【0020】
以下に、工程(1)〜(3)からなる本発明の酸化物触媒の好ましい調製例を説明する。
(工程1:原料調合工程)
ヘプタモリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、三酸化二アンチモン粉末、オルトホウ酸を水に添加し、80℃以上に加熱して混合液(A)を調製する。三酸化二アンチモンに代えテルル酸を用いても良いし、同時に使用しても良い。成分Z、例えば酸化チタンを用いる場合は、同時に添加することができる。
【0021】
ニオブ酸とシュウ酸を水中で加熱撹拌して混合液(B)を調製する。混合液(B)は特開平11−253801号公報に教示されている方法で得られるニオブ含有液を用いることができる。
目的とする組成に合わせて、混合液(A)、混合液(B)を好適に混合して、原料調合液を得る。
本発明のアンモ酸化用触媒がシリカ担持触媒の場合、シリカゾルを含むように原料調合液が調製される。シリカゾルは適宜添加することができる。
【0022】
また、アンチモンを用いる場合は、混合液(A)、または、調合途中の混合液(A)の成分を含む液に、過酸化水素を添加することが好ましい。この時、H2O2/Sb(モル比)は0.01〜2、特に1〜1.5が好ましい。また、この時、30℃〜70℃で、30分〜2時間撹拌を続けることが好ましい。
この様にして得られる原料調合液は均一な溶液の場合もあるが、大抵はスラリーである。
【0023】
(工程2:乾燥工程)
原料調合工程で得られた原料調合液を噴霧乾燥法によって乾燥させ、乾燥粉体を得る。噴霧乾燥法における噴霧化は遠心方式、二流体ノズル方式または高圧ノズル方式を採用することができる。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。熱風の乾燥機入口温度は150〜300℃が好ましい。
【0024】
(工程3:焼成工程)
乾燥工程で得られた乾燥粉体を焼成することによって酸化物触媒を得る。焼成は窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの実質的に酸素を含まない不活性ガス雰囲気下、好ましくは、不活性ガスを流通させながら、500〜800℃、好ましくは600〜700℃で実施する。焼成時間は0.5〜20時間、好ましくは1〜8時間である。
【0025】
焼成は、回転炉、トンネル炉、管状炉、流動焼成炉等を用いて行うことができる。焼成は反復することができる。
焼成工程の前に、乾燥粉体を大気雰囲気下または空気流通下で200〜400℃、1〜5時間で前焼成することも好ましい。
このようにして製造された酸化物触媒の存在下、プロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させて、対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する。
【0026】
プロパンまたはイソブタンとアンモニアの供給原料は必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのガスを使用できる。
供給酸素源として空気、酸素を富化した空気または純酸素を用いることができる。更に、希釈ガスとしてヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気、窒素などを供給してもよい。
プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化は以下の条件で行うことが出来る。
【0027】
反応に供給する酸素のプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.5〜4である。
反応温度は300℃〜500℃、好ましくは350℃〜450℃である。
反応圧力は5*104〜5*105Pa、好ましくは1*105〜3*105Paである。
【0028】
接触時間は0.1〜10(sec・g/cc)、好ましくは0.5〜5(sec・g/cc)である。本発明において、接触時間は次式で決定される。
【0029】
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)
ここで
W=充填触媒量(g)
F=標準状態(0℃、1.13*105Pa)での原料混合ガス流量(Ncc/sec)
T=反応温度(℃)
である。
【0030】
プロパンまたはイソブタンの気相接触アンモ酸化は以下の条件で行うことが出来る。
反応に供給する酸素のプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.5〜4である。
反応に供給するアンモニアのプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.3〜1.5、好ましくは0.8〜1.0である。
【0031】
反応温度は350℃〜500℃、好ましくは380℃〜470℃である。
反応圧力は5*104〜5*105Pa、好ましくは1*105〜3*105Paである。
接触時間は0.1〜10(sec・g/cc)、好ましくは0.5〜5(sec・g/cc)である。
反応方式は、固定床、流動床、移動床など従来の方式を採用できるが、反応熱の除去が容易な流動床反応器が好ましい。
また、本発明の反応は、単流式であってもリサイクル式であってもよい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の酸化物触媒について、触媒の調製実施例およびプロパンの気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリルの製造実施例、およびプロパンの気相接触酸化反応によるアクリル酸の製造実施例を用いて説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれら実施例に限定されるものではない。
プロパンのアンモ酸化反応の成績は反応ガスを分析した結果を基に、次式で定義されるプロパン転化率およびアクリロニトリル選択率を指標として評価した。
【0033】
プロパン転化率(%)=(反応したプロパンのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
アクリロニトリル選択率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(反応したプロパンのモル数)×100
プロパンの酸化反応の成績は反応ガスを分析した結果を基に、次式で定義されるプロパン転化率およびアクリル酸選択率を指標として評価した。
【0034】
プロパン転化率(%)=(反応したプロパンのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
アクリル酸選択率(%)=(生成したアクリル酸のモル数)/(反応したプロパンのモル数)×100
(ニオブ原料液の調製)特開平11−253801号公報に倣って、以下の方法でニオブ原料液を調製した。水16890gにNb2O5として80.2重量%を含有するニオブ酸2580gとシュウ酸二水和物〔H2C2O4・2H2O〕9810gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.53(mol−Nb/Kg−液)である。この混合液を95℃で1時間加熱撹拌することによって、ニオブが溶解した水溶液を得た。この水溶液を静置、氷冷後、固体を吸引濾過によって濾別し、均一なニオブ含有液を得た。このニオブ含有液のシュウ酸/ニオブのモル比は下記の分析により2.34であった。
【0035】
るつぼにこのニオブ含有液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、Nb2O50.8734gを得た。この結果から、ニオブ濃度は0.6572(mol−Nb/Kg−液)であった。
300mlのガラスビーカーにこのニオブ含有液3gを精秤し、約80℃の熱水200mlを加え、続いて1:1硫酸10mlを加えた。得られた溶液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO4を用いて滴定した。KMnO4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って計算した結果、1.5389(mol−シュウ酸/Kg)であった。
2KMnO4+3H2SO4+5H2C2O4→K2SO4+2MnSO4+10CO2+8H2O
得られたニオブ含有液は、シュウ酸/ニオブのモル比を調整することなく、下記の触媒調製のニオブ原料液(B)として用いた。
【0036】
【実施例1】
(参考例)
(触媒の調製)仕込み組成式がMo1V0 . 31Nb0 . 07Sb0 . 20B1 . 0On/46.2wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。水13300gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を2014.2g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を413.8g、三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を332.5g、オルトホウ酸〔H3BO3〕708.2gを加え、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱した後、約70℃まで冷却して混合液A−1を得た。
【0037】
得られた混合液A−1にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル7843.1gを添加した。更に、H2O2として15wt%を含有する過酸化水素水516.8gを添加し、50℃で1時間撹拌を続けた。次にニオブ含有液(B)を1213.9g添加して原料調合液を得た。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
【0038】
得られた乾燥粉体500gを直径3インチのSUS製キルン炉に充填し、1800Ncc/minの窒素ガス流通下、660℃で2時間焼成して触媒を得た。
得られた触媒のSEM写真を図1に示す。
(触媒の耐摩耗度試験)ここで得られた触媒の耐摩耗度試験を行った。触媒の摩耗度は通常FCC触媒の試験方法として行われている様に、底部に1/64インチの3つのオリフィスを有する孔開き円盤を備え、上部に5インチの筒を設けた内径1.5インチの垂直チューブに触媒約50gを精秤し、孔開き円盤の孔部分で音速となるように空気を流し、触媒を激しく流動させた。
触媒の摩耗度を初期の摩耗度として摩耗度1、その後の摩耗度として摩耗度2として、次の式で評価した。
【0039】
摩耗度1(%)=(0から5時間の間に微細化して垂直チューブ上部の5インチの筒上部から逸散した重量)/(初期投入量)*100
摩耗度2(%)=(5時間から20時間の間に微細化して垂直チューブ上部の5インチ筒上部から逸散した触媒重量)/(初期投入量−(0から5時間の間に垂直チューブ上部の5インチ筒上部から逸散した触媒重量))*100
結果を表1に示す。
【0040】
(プロパンのアンモ酸化反応)
内径25mmのバイコールガラス流動床型反応管に調製して得られた触媒を45g充填し、反応温度440℃、反応圧力常圧下にプロパン:アンモニア:酸素:ヘリウム=1:0.6:1.5:5.6のモル比の混合ガスを接触時間3.0(sec・g/cc)で供給した。得られた結果を表1に示す。
【0041】
【実施例2】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.07Sb0.20B1.0Ti0.85On/40.2wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
水13300gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を2014.2g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を413.8g、三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を332.5g、オルトホウ酸〔H3BO3〕を708.2g、酸化チタン〔TiO2〕を773.8g加え、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱した後、約70℃まで冷却して混合液A−2を得た。
【0042】
得られた混合液A−2にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル7843.1gを添加した。更に、H2O2として15wt%を含有する過酸化水素水516.8gを添加し、50℃で1時間撹拌を続けた。次にニオブ含有液(B)を1213.9g添加して原料調合液を得た。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
得られた乾燥粉体480gを直径3インチのSUS製キルン炉に充填し、1800Ncc/minの窒素ガス流通下、660℃で2時間焼成して触媒を得た。
【0043】
(触媒の耐摩耗度試験)
ここで得られた触媒の耐摩耗度試験を実施例1と同様な方法で行った。結果を表1に示す。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【比較例1】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Sb0.20Nb0.07On/50.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のように調製した。
実施例1の仕込み水量を8300gとし、オルトホウ酸を添加しなかった以外は実施例1と同様にして調製した。
得られた触媒のSEM写真を図2に示す。
【0045】
(触媒の耐摩耗度試験)
ここで得られた触媒の耐摩耗度試験を実施例1と同様な方法で行った。結果を表1に示す。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0046】
【比較例2】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Sb0.20Nb0.07B0.05On/49.8wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のように調製した。
実施例1の仕込み水量を8500gとし、オルトホウ酸の添加量を35.4gとした以外は実施例1と同様にして調製した。
【0047】
(触媒の耐摩耗度試験)
ここで得られた触媒の耐摩耗度試験を実施例1と同様な方法で行った。結果を表1に示す。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0048】
【実施例3】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.07Sb0.23B1.0Ti0.85On/40.4wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
水13000gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を1973.2g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を405.4g、三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を374.7g、オルトホウ酸〔H3BO3〕を693.8g、酸化チタン〔TiO2〕を758.1g加え、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱した後、約70℃まで冷却して混合液A−3を得た。
【0049】
得られた混合液A−3にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル7843.1gを添加した。更に、H2O2として15wt%を含有する過酸化水素水582.4gを添加し、50℃で1時間撹拌を続けた。次にニオブ含有液(B)を1189.2g添加して原料調合液を得た。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
【0050】
得られた乾燥粉体480gを直径3インチのSUS製キルン炉に充填し、1800Ncc/minの窒素ガス流通下、660℃で2時間焼成して触媒を得た。(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0051】
【実施例4】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.10Sb0.23B1.0Ti0.85On/40.5wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
水13000gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を1937.3g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を398.0g、三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を367.8g、オルトホウ酸〔H3BO3〕を681.2g、酸化チタン〔TiO2〕を744.3g加え、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱した後、約70℃まで冷却して混合液A−4を得た。
【0052】
得られた混合液A−4にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル7843.1gを添加した。更に、H2O2として15wt%を含有する過酸化水素水571.8gを添加し、50℃で1時間撹拌を続けた。次にニオブ含有液(B)を1667.9g添加して原料調合液を得た。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
【0053】
得られた乾燥粉体480gを直径3インチのSUS製キルン炉に充填し、1800Ncc/minの窒素ガス流通下、660℃で2時間焼成して触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0054】
【実施例5】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.12Sb0.23B1.0Ti0.85On/40.6wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
水13000gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を1914.1g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を393.2g、三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を363.4g、オルトホウ酸〔H3BO3〕を673.0g、酸化チタン〔TiO2〕を735.3g加え、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱した後、約70℃まで冷却して混合液A−5を得た。
【0055】
得られた混合液A−5にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル7843.1gを添加した。更に、H2O2として15wt%を含有する過酸化水素水564.8gを添加し、50℃で1時間撹拌を続けた。次にニオブ含有液(B)を1977.5g添加して原料調合液を得た。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
【0056】
得られた乾燥粉体480gを直径3インチのSUS製キルン炉に充填し、1800Ncc/minの窒素ガス流通下、660℃で2時間焼成して触媒を得た。(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0057】
【実施例6】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.07Sb0.20B0.8Ti0.85On/40.7wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
実施例2のオルトホウ酸使用量を566.6gとした以外は実施例2と同様にして調製した。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0058】
【実施例7】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.07Sb0.20B0.3Ti0.85On/42.2wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
実施例2のオルトホウ酸使用量を212.5gとした以外は実施例2と同様にして調製した。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0059】
【実施例8】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.07Sb0.20B1.0Ti0.60On/41.8wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
実施例2の酸化チタン使用量を546.2gとした以外は実施例2と同様にして調製した。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0060】
【実施例9】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.07Sb0.20B1.0Ti1.2On/38.2wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
実施例2の酸化チタン使用量を1092.4gとした以外は実施例2と同様にして調製した。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0061】
【実施例10】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.07Sb0.20B1.0Ti0.55Sn0.30On/38.6wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
水13300gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を2014.2g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を413.8g、三酸化二アンチモン〔Sb2O3〕を332.5g、オルトホウ酸〔H3BO3〕を708.2g、酸化チタン〔TiO2〕を500.7g、二酸化スズ〔SnO2〕を515.2g加え、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱した後、約70℃まで冷却して混合液A−10を得た。
【0062】
得られた混合液A−10にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル7843.1gを添加した。更に、H2O2として15wt%を含有する過酸化水素水516.8gを添加し、50℃で1時間撹拌を続けた。次にニオブ含有液(B)を1213.9g添加して原料調合液を得た。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
【0063】
得られた乾燥粉体480gを直径3インチのSUS製キルン炉に充填し、1800Ncc/minの窒素ガス流通下、660℃で2時間焼成して触媒を得た。(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0064】
【実施例11】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.07Sb0.20B1.0Ti0.85Sn0.30On/37.0wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
実施例10の酸化チタン使用量を773.8gとした以外は実施例10と同様にして調製した。
(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0065】
【実施例12】
(触媒の調製)
仕込み組成式がMo1V0.31Nb0.12Te0.23B0.3On/29.1wt%−SiO2で示される酸化物触媒を次のようにして調製した。
水13000gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4)6Mo7O24・4H2O〕を2599.2g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を533.9g、テルル酸〔H6TeO6〕を777.4g、オルトホウ酸〔H3BO3〕を274.2g加え、攪拌しながら90℃で2時間30分間加熱した後、約70℃まで冷却して混合液A−12を得た。
【0066】
得られた混合液A−12にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル4705.9gを添加した。次にニオブ含有液(B)を2685.3g添加して原料調合液を得た。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
【0067】
得られた乾燥粉体500gを直径3インチのSUS製キルン炉に充填し、1800Ncc/minの窒素ガス流通下、640℃で2時間焼成して触媒を得た。(プロパンのアンモ酸化反応)
得られた触媒を用いて、実施例1と同様な方法でアンモ酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0068】
【実施例13】
(プロパンの酸化反応)
実施例1で得られた触媒2.0gを内径10mmの固定床型反応管に充填した。反応温度380℃反応圧力常圧下に、プロパン:酸素:ヘリウム:水蒸気=1:3.3:12:14のモル比の混合ガスを接触時間4.0(sec・g/cc)で供給した。結果を表3に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【発明の効果】
本発明の触媒は耐摩耗性が高く、また、この触媒を用いることによって、高い選択率で不飽和酸または不飽和ニトリルを製造することが出来る。また、耐磨耗性が高い為、粉末飛散の減少により、工程での詰まりを減少することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例1の触媒の焼成後のSEM写真である。
【図2】本発明比較例1の触媒の焼成後のSEM写真である。
Claims (8)
- プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応に用いる触媒であって、下記の一般組成式(2)で表されることを特徴とする酸化物触媒;
Mo 1 V a Nb b B c X d Z e O n (2)
(式中、成分XはSbまたはTeから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはTi、Sn、Ge、Ga、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c、d、e、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.1≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.1<c≦3、dは0.01≦d≦1、eは0<e≦3、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。) - 成分ZがTi、Snから選ばれる少なくとも1種以上の元素であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物触媒。
- 成分XがSbであることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物触媒。
- 該酸化物触媒が、触媒構成元素の酸化物とシリカの全重量に対し、SiO2換算で20〜60重量%のシリカに担持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化物触媒。
- プロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化反応させ、不飽和酸または不飽和ニトリルを製造するにあたり、下記の一般組成式(2)で表される酸化物触媒を用いることを特徴とする不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法;
Mo 1 V a Nb b B c X d Z e O n (2)
(式中、成分XはSbまたはTeから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはTi、Sn、Ge、Ga、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、a、b、c、d、e、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.1≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.1<c≦3、dは0.01≦d≦1、eは0<e≦3、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。) - 成分ZがTi、Snから選ばれる少なくとも1種以上の元素である酸化物触媒を用いることを特徴とする請求項5に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
- 成分XがSbである酸化物触媒を用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
- 該酸化物触媒が、触媒構成元素の酸化物とシリカの全重量に対し、SiO2換算で20〜60重量%のシリカに担持されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
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