JP4640748B2 - カルボン酸直接水素添加用触媒 - Google Patents

カルボン酸直接水素添加用触媒 Download PDF

Info

Publication number
JP4640748B2
JP4640748B2 JP2001211994A JP2001211994A JP4640748B2 JP 4640748 B2 JP4640748 B2 JP 4640748B2 JP 2001211994 A JP2001211994 A JP 2001211994A JP 2001211994 A JP2001211994 A JP 2001211994A JP 4640748 B2 JP4640748 B2 JP 4640748B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
catalyst
activated carbon
primary alcohol
active metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001211994A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003024791A (ja
Inventor
満月男 小西
春行 三ノ浦
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Chemicals Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Chemicals Corp filed Critical Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority to JP2001211994A priority Critical patent/JP4640748B2/ja
Publication of JP2003024791A publication Critical patent/JP2003024791A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4640748B2 publication Critical patent/JP4640748B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Landscapes

  • Catalysts (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術的分野】
本発明は、カルボン酸の直接水素添加用触媒およびこの触媒を用いてカルボン酸または酸無水物をエステルに変換することなく、直接水素添加して第一級アルコールを製造する方法に関する。より詳細には、ルテニウムおよび錫を含む活性金属種を担持した特定の活性炭を含有してなるカルボン酸の直接水素添加用触媒およびこの触媒を用いて第一級アルコールを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルコール類は、種々の産業分野で広範に使用されている有用な物質である。
例えば、1個の水酸基を有するアルコール(一価アルコール)には、メタノール、エタノール、n−プロパノールなど、合成原料や溶媒として多用されるものが多い。2個の水酸基を有するアルコール(二価アルコールまたはジオール)には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなど、ポリエステルやポリウレタンの原料として有用なものが多い。
【0003】
アルコールを製造する方法は数多く知られているが、第一級アルコール(ヒドロキシメチル基(−CH2OH)を有するアルコール)の工業的な製造は、主としてオレフィンを水和する方法、及び銅系触媒の存在下、高温、高圧下でカルボン酸エステルを水素添加する方法のいずれかによって行われている。
このうち、オレフィンを水和する方法は、主にエタノールの製造に用いられている。しかし、この方法では、炭素数が3以上の第一級アルコール、例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、1,4−ブタンジオールなどを製造することができない。したがって、それらのアルコールはカルボン酸エステル(以下、「エステル」、という)を水素添加する方法で製造する必要がある。以下、この方法による第一級アルコールの製造に関し、1,4−ブタンジオールの製造を例として説明する。
【0004】
現在、1,4−ブタンジオールは、n−ブタンを原料として製造されており、n−ブタンを空気酸化してコハク酸、マレイン酸、またはそれらの無水物、特にマレイン酸または無水マレイン酸を製造し、それを原料として1,4−ブタンジオールを製造する、という方法が用いられている。
一般に、カルボン酸は還元反応に付すことにより容易に第一級アルコールに変換することができる。この還元反応は、通常、適当な還元剤を用いて行われる。しかし、カルボン酸の還元反応には、通常、反応性が極めて高い強力な還元剤(例えば水素化アルミニウムリチウム)が必要であり、そのような還元剤は取り扱いや保存などに関して特別な注意を要するため、工業的な規模での使用には適していない。
【0005】
一方、適当な触媒の存在下で、水素ガスを還元剤として用いて行われる、いわゆる水素添加反応は、工業的な規模での実施に適している。しかし、水素添加反応は、通常、カルボン酸の還元には適用できない。これは、水素添加反応において、従来用いられていた触媒はカルボン酸に溶解するため、酸の存在下では活性が維持されないことによるものである。
そのため、上記の1,4−ブタンジオールの製造においては、n−ブタンの空気酸化によって得られたマレイン酸または無水マレイン酸を、更に適当なアルコールと反応させて一旦エステルに変換し、得られたマレイン酸エステルを、銅系触媒の存在下、高温、高圧下で水素添加し、1,4−ブタンジオールに変換する、という方法が用いられている。
【0006】
銅系触媒の存在下、高温、高圧下でエステルを水素添加し、アルコールを製造する方法に関しては、特公表2000−510837号公報(米国特許第6,100,410号明細書に対応)、特公表2000−510475号公報(米国特許第6,077,964号明細書に対応)、特公表2000−506134号公報(米国特許第5,981,769号明細書に対応)、特開平7−196558号公報(米国特許第5,414,159号明細書に対応)、米国特許第5,334,779号明細書などに記載されている。
【0007】
しかし、この方法は、カルボン酸の製造、カルボン酸のエステル化およびエステルの水素添加という3段階の反応が必要であり、必然的に製造工程が長くなる。このことに伴い、この方法を実施するためには多くの設備が必要となるという問題が生じる。例えば、カルボン酸をエステル化するための設備が必要であり、またエステルを水素添加する際、エステル化の際に用いたアルコールが副生するので、この副生アルコールを反応混合物から分離・回収して再利用するための設備も必要となる。
【0008】
このような問題のため、エステルを水素添加する方法による第一級アルコールの製造は、製造コストなどの点において明らかに不利である。そこで、第一級アルコールの工業的製造工程の短縮を可能とするための手段が種々検討されている。
そのような手段の一例として、酸の存在下でも活性が維持される触媒を用い、(エステル化されていない)カルボン酸そのものを直接水素添加することによって、第一級アルコールを製造する、という手段を挙げることができる。
【0009】
この手段によれば、カルボン酸の製造およびカルボン酸の直接水素添加という2段階の反応で第一級アルコールを製造することができる。この場合、従来の方法では必要とされたカルボン酸のエステル化工程は不要であり、したがって、エステル化のための設備も不要である。更に、カルボン酸のエステル化を行わないので、エステル化の際に用いたアルコールが水素添加の際に副生することもなく、その副生アルコールを回収・再利用するための設備も不要である。この結果、第一級アルコールの製造工程は短縮され、必要な設備も大幅に減らすことができる。
【0010】
このような理由により、カルボン酸をエステル化することなく、直接水素添加するのに使用できる触媒であって、活性が高く、汎用性に優れ、また酸の存在下でも活性が維持される触媒、およびそのような触媒を用いてカルボン酸を直接水素添加し、第一級アルコールを効率よく製造する方法の開発が望まれている。
カルボン酸を直接水素添加して第一級アルコールを製造するための触媒や、それを用いる第一級アルコールの製造方法については多くの提案がなされており、その中には、上記のコハク酸またはマレイン酸を直接水素添加し、1,4−ブタンジオールを製造する方法もいくつか含まれている。これらの方法では、通常水の存在下で直接水素添加を行う。以下、それらの方法において用いられている触媒系のみ列挙する。
(イ)ルテニウム−鉄酸化物からなる触媒(米国特許第4,827,001号明細書)。
(ロ)ルテニウム−錫をBET比表面積が2000m2/g以上の多孔質炭素に担持した触媒(特開平5−246915号公報)。
(ハ)ルテニウム及び錫をチタン及び/又はアルミナで修飾したシリカに担持した触媒(特開平6−116182号公報)。
(ニ)ルテニウム及び錫、並びにアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属を担体に担持した触媒(特開平6−239778号公報)。
(ホ)ルテニウムと白金及びロジウムから選ばれた少なくとも1種の金属並びに錫を担体に担持した触媒(特開平7−165644号公報)。
(へ)ルテニウムと錫を担体に担持した触媒(特開平9−12492号公報)(この触媒を用いる方法においては、過剰の水素を反応系に流通させ、同伴してくる生成物を系外に除去しながら反応を行う)。
(ト)ルテニウム−錫−白金を担体に担持した触媒(特開平9−59190号公報)。
(チ)炭素数5以下のカルボニル化合物と担持すべき金属成分を含有する溶液を活性炭に含浸させて調製した、ルテニウム−錫−白金を活性炭に担持した触媒(特開平10−15388号公報)。
(リ)ルテニウム−錫−白金をあらかじめ硝酸と接触させた活性炭に担持した触媒(特開平10−71332号公報)。
【0011】
しかし、上記いずれの触媒を用いた方法においても、相当量のテトラヒドロフランやγ−ブチロラクトンが副生し、目的物である1.4−ブタンジオールの選択率が十分でなく、したがって1,4−ブタンジオールの収率が不十分であった。
また特開平7−82190号公報には、パラジウムとレニウム化合物からなる触媒の存在下、三級アルコールを溶媒として用い、カルボン酸を直接水素添加する方法が提案されているが、この方法は反応速度が不十分であった。
【0012】
一般に、触媒成分を担体に担持させた触媒の活性は、担体の特性、例えば、細孔分布、比表面積、触媒成分を担持させる前に行う処理(前処理)の方法などを変化させることにより大幅に変化することが知られている。そのため、カルボン酸を直接水素添加して第一級アルコールを製造するための触媒に関しても、第一級アルコールの収率の向上を目的として、担体、特に、活性炭の比表面積や前処理の方法などについて検討がなされている。
【0013】
しかし、このような担体を用いて得られた触媒は、ある特定のカルボン酸の直接水素添加には有効であることが知られているが、それらの触媒が他のカルボン酸の直接水素添加において有効であるか否かは知られていなかった。
例えば、米国特許第5,698,749号明細書には、パラジウム−銀−レニウムをあらかじめ硝酸酸化処理した活性炭に担持した触媒を用いてマレイン酸を直接水素添加すると、1,4−ブタンジオールが比較的高収率で得られるとの記載がある。しかし、この触媒を用いて他のカルボン酸、例えば、グルタル酸やアジピン酸の直接水素添加を行った際の反応成績については何も記載されていない。
【0014】
特開平11−60523号公報(米国特許第5,969,194号明細書に対応)には、あらかじめ酸処理した活性炭に、ルテニウム−錫−白金を担持した触媒を用いてアジピン酸を直接水素添加すると、1,6−ヘキサンジオールが高収率で得られるとの記載がある。しかし、この触媒は、上記特開平10−71332号公報に記載の触媒と同じく、ルテニウム−錫−白金を活性炭に担持した触媒であるため、この触媒を用いて、コハク酸またはマレイン酸から1,4−ブタンジオールを選択的、かつ、高収率で得ることは困難である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カルボン酸を、エステル化することなく、直接水素添加するのに使用できる触媒であって、活性が高く、汎用性に優れ、酸の存在下でも活性が維持される触媒を提供することである。
本発明の他の目的は、そのような触媒を用いてカルボン酸を直接水素添加し、第一級アルコールを効率よく製造する方法を提供することである。特に、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸のいずれを原料に用いてもジオール類を高収率で得ることができる触媒、およびその触媒を用いる直接水素添加によるジオール類の製造方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに、ルテニウムおよび錫を含む活性金属種を担持した特定の活性炭を含有してなる触媒が、カルボン酸を直接水素添加して第一級アルコールに変換する活性を示し、その活性が酸の存在下でも維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0017】
(1)ルテニウムおよび錫を含む活性金属種を担持した活性炭を含有してなり、活性炭は、炭素質原料をリン酸およびリン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する液と混合した後、焼成することを含む方法によって製造され、活性金属種を担持する前の活性炭がリン元素を0.1〜5質量%含有する、ことを特徴とするカルボン酸直接水素添加用触媒。
(2)活性金属種が、レニウムを更に含有することを特徴とする(1)に記載のカルボン酸直接水素添加用触媒。
(3)活性金属種を担持する前の活性炭の細孔半径が10×10 -12 m以上100×10 -12 m以下に関しての細孔容積が0.45cm 3 /g以上1.30cm 3 /g以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のカルボン酸直接水素添加用触媒。
【0018】
(4)カルボン酸および酸無水物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の出発物質を、水および触媒の存在下で水素ガスと反応させて出発物質の直接水素添加反応を行うことを含む第一級アルコールの製造方法であって、触媒は、ルテニウムおよび錫を含む活性金属種を担持した活性炭を含有してなり、活性炭は、炭素質原料をリン酸およびリン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する液と混合した後、焼成することを含む方法によって製造され、活性金属種を担持する前の活性炭がリン元素を0.1〜5質量%含有する、ことを特徴とする第一級アルコールの製造方法。
【0019】
(5)活性金属種が、レニウムを更に含有することを特徴とする(4)に記載の第一級アルコールの製造方法。
(6)活性金属種を担持する前の活性炭の細孔半径が10×10 -12 m以上100×10 -12 m以下に関しての細孔容積が0.45cm 3 /g以上1.30cm 3 /g以下であることを特徴とする(4)または(5)に記載の第一級アルコールの製造方法。
)出発物質は、炭素数が2〜20であるジカルボン酸および炭素数が2〜20である環状酸無水物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれか1つに記載の第一級アルコールの製造方法。
)出発物質は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、無水コハク酸および無水マレイン酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項(4)〜()のいずれか1つに記載の第一級アルコールの製造方法。
【0020】
)出発物質は、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸を含むジカルボン酸混合物であることを特徴とする(4)〜()のいずれか1つに記載の第一級アルコールの製造方法。
10)ジカルボン酸混合物は、シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を酸化反応に付すことによって得られる反応混合物に由来することを特徴とする()に記載の第一級アルコールの製造方法。
【0021】
(1)直接水素添加反応を、温度100℃〜300℃、水素圧力1MPa〜25MPaの条件下で行うことを特徴とする請求項(4)〜(10)のいずれか1つに記載の第一級アルコールの製造方法。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のカルボン酸直接水素添加用触媒は、ルテニウムおよび錫を含む活性金属種を担持した活性炭を含有してなり、活性炭は、炭素質原料をリン酸およびリン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する液と混合した後、焼成することを含む方法によって製造される。
一般に、活性炭の製造には、賦活という、吸着能を付与するための工程が必須である。この賦活を行う方法は大きく2つに分類される。
【0023】
1つは、炭素質原料を各種の酸化性ガス(水蒸気、二酸化炭素、空気など)を用いて処理する方法であり、「ガス賦活法」と呼ばれる。このガス賦活法は、現在、活性炭の製造において主流を占める賦活法であり、米国をはじめ世界的に広く、かつ、最も多く採用されている。
もう1つは、炭素質原料を各種の脱水性の塩または酸(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、リン酸、硫酸、苛性ソーダ、苛性カリなどのアルカリ類など)を用いて処理する方法であり、「薬品賦活法」とよばれる。現在、薬品賦活法は、特殊用途向けの活性炭の製造においてのみ採用されている。
【0024】
本発明のカルボン酸直接水素添加用触媒は、リン酸および/またはリン酸塩を用いて処理する方法により製造された活性炭(以下、「リン酸賦活炭」、という)を担体として用い、後述する活性金属種を担持させることによって得られる。このような活性炭をカルボン酸直接水素添加触媒の担体として用いることは、これまで知られていなかったことである。
リン酸賦活炭は、公知の方法によって製造することができる。リン酸賦活炭の製造方法の詳細に関しては、例えば、次の2つの文献を参照することができる。
1)「活性炭 第3版」(J.W.ハスラー著 織田孝訳、江口良友訳、共立出版株式会社発行(1976))、及び
2)「新版 活性炭」(真田雄三ら共著、講談社発行(1992))。
【0025】
これらの文献に記載されているように、リン酸賦活炭は、のこくず、低灰分の泥炭、麦わら、あし、堅果およびそのカラなどの炭素質原料に、リン酸、リン酸ナトリウムなどのリン酸塩の水溶液を含浸した後に焼成することを含む方法によって製造することができる。より具体的には、上記炭素質原料に、例えば、50%リン酸水溶液を炭素質原料に対して質量比率で1.7前後になるように含浸した後に、不活性ガス雰囲気下、400〜750℃で加熱することにより焼成した後、繰り返し水洗し、残留しているリン酸塩の大半を除去する方法によって製造することができる。
【0026】
リン酸塩の例としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムなどが挙げられる。リン酸と濃硫酸の混合物を用いてもよい。所望であれば、リン酸および/またはリン酸塩を用いる賦活処理の後、さらに水蒸気などのガス賦活処理を行ってもよい。また、不純物を除去することを目的として、後述する活性金属種を担持する前に、上記の活性炭を熱水で処理してもよい。
賦活法の違いにより、活性炭の物性、特に、活性炭の細孔分布(活性炭の細孔半径と、ある半径を有する細孔に関する細孔容積の関係)が変化する。
【0027】
例えば、最も一般的に用いられている活性炭の製造においては、賦活法として、炭素質原料を水蒸気で処理する方法が採用されている。そのような方法で製造された活性炭(水蒸気賦活炭)は、細孔半径の大きな細孔が少ない。すなわち、水蒸気賦活炭では、細孔半径10〜100×10-12mである細孔(このような細孔は、細孔半径10×10-12m未満の細孔であるミクロ孔、細孔半径が100×10-12mを越える細孔であるマクロ孔に対して「トランジショナル孔」とよばれる)に関しての細孔容積が0.02cm3/g以上0.4cm3/g以下である。
【0028】
リン酸賦活炭においては、主に、リン酸化合物を含有する液の含浸量及び焼成時の温度により細孔分布を制御することができることが知られている。
本発明においては、活性金属種を担持する前のリン酸賦活炭が以下の条件(a)および(b)を満たすことが好ましい。
(a)リン元素を0.1〜5質量%含有する。
(b)細孔半径が10×10-12m以上100×10-12m以下である細孔に関しての細孔容積が0.45cm3/g以上1.30cm3/g以下である。
【0029】
本発明において、担体として用いられる活性炭が上記の条件(b)を満たす、すなわち、本発明において用いられる活性炭のトランジショナル孔に関しての細孔容積が大きいことにより、本発明の触媒は、広範囲におよぶカルボン酸、特に、ジカルボン酸の直接水素添加に有利に適用することのできる触媒となる。
上記の条件(b)を満たす活性炭が、広範囲に及ぶカルボン酸、特にジカルボン酸の直接水素添加用触媒の担体として有効である理由は明らかではないが、水蒸気賦活炭などのガス賦活炭に比較して、トランジショナル孔に関しての細孔容積が大きい(すなわち、トランジショナル孔をより多く有する)ために、カルボン酸および水素(ジカルボン酸を原料とする場合には、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸(反応中間体)および水素)が触媒の細孔内へ速やかに拡散し、細孔内において水素添加が効率よく進行するためと推定される。
【0030】
一方、リン酸賦活炭中には、炭素質原料を賦活処理する際に用いたリン酸化合物に由来するものと考えられるリン元素が残留する。本発明において、担体として用いられる活性炭が上記の条件(a)を満たす量のリン元素を含有することにより、驚くべきことに本発明の触媒は、直接水素添加反応における活性が高くなり、短時間で、高収率で第一級アルコールを得ることができる触媒となる。
上記の条件(a)を示す活性炭を担体に用いた触媒が、直接水素添加反応における活性が高くなる理由は明らかではないが、本発明の触媒中の活性金属種とリン元素との何らかの相互作用により、活性金属種の直接水素添加活性が高まるものと推定される。
【0031】
本発明の触媒の直接水素添加活性をより高くすると共に、本発明の触媒に、反応中、触媒の形状を維持するに足る強度を与えるためには、活性金属種を担持する前の活性炭が以下の条件(c)〜(d)を示すことがより好ましい。
(c)リン元素を0.1〜3質量%含有する。
(d)細孔半径が10×10-12m以上100×10-12m以下である細孔に関しての細孔容積が0.60cm3/g以上1.10cm3/g以下である。
【0032】
本発明において、活性炭の細孔容積(細孔半径が10×10-12m以上100×10-12m以下である細孔に関しての細孔容積)は、窒素吸着法によって求め、細孔容積を計算するためのデータ処理は、Barrett−Joyner−Halenda法(BJH法)によって行う。BJH法の詳細については、触媒講座第3巻(基礎編3)・固体触媒のキャラクタリゼーション(触媒学会編、講談社発行(1985))に記載されている。
【0033】
上記の特性を求めるとき、使用する測定装置によって測定値に差が生じることがある。本発明においては、上記の特性は、米国マイクロメリテックス社製のBET多点式細孔分布測定装置アサップ−2400型(商標)を用いて測定する。
本発明において用いられる活性炭の形状については特に限定はなく、粉末状のものでもよく、粉末状の活性炭に結合剤など適当な添加剤を加えて、顆粒状、円柱状、球状、ペレット状になどに成形したものでもよい。また、適当な粒度の炭素質原料にリン酸および/またはリン酸塩を用いて焼成したものを所望の粒径にふるい分けて得られる顆粒状のものでもよい。
【0034】
粉末状の活性炭は、本発明の触媒を用いる第一級アルコールの製造の際、攪拌混合槽を反応器として用いる場合に適している。成形された活性炭は、本発明の触媒を用いる第一級アルコールの製造の際、固定床反応器を用いる場合に適している。
粉末状の活性炭を用いる場合、その平均粒径は、0.5〜100μmであることが好ましい。顆粒状の活性炭の場合には、その平均粒径は約1〜5mm程度が好ましい。円柱状に成形した活性炭の場合には、その平均直径は約1〜5mm程度、その平均長は約5mm〜3cm程度であることが好ましい。球状に成形した活性炭の場合には、その平均直径は約1mm〜1cm程度であることが好ましい。ペレット状に成形した活性炭の場合には、その平均直径は約5mm〜1cm程度、その平均厚さは約1mm〜1cm程度であることが好ましい。
【0035】
本発明のカルボン酸直接水素添加触媒は、上記のようなリン酸賦活炭に、ルテニウムおよび錫を含む活性金属種を担持させることによって得られる。
活性金属種は、ルテニウムおよび錫に加えて、更にレニウムを含有することが好ましい。
本発明の触媒において、ルテニウムと錫の担持量は、各々独立に、担体の質量に対する金属としての質量の比で、0.5〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。触媒質量あたりの直接水素添加反応の活性を上げることにより、水素添加反応装置を小型にできることから、金属あたりの水素添加反応の活性を落とさない範囲で金属の担持量をなるべく高くすることが好ましい。このような見地から、担持量はより好ましくは5〜20質量%である。ルテニウムと錫の量比は、元素比(ルテニウム:錫)で1:0.1〜1:2が好ましく、より好ましくは1:0.2〜1:1.3である。
【0036】
活性金属種が、ルテニウムおよび錫に加えて、レニウムを含有する場合、レニウムの量は、ルテニウムを1として元素比で0.1〜5が好ましく、より好ましくは0.2〜2である。
活性炭に活性金属種を担持させる方法としては、担持触媒の調整に一般的に用いられている任意の方法を用いることができる、その例としては、浸漬法、イオン交換法、含浸法などを挙げることができる。
【0037】
浸漬法によって活性炭に活性金属種を担持させるときは、活性金属種として用いる金属を含む化合物(以下、「金属化合物」という)を、それぞれ水などの溶媒に溶解して金属化合物溶液を調製し、この溶液に活性炭を浸漬して担体に金属化合物を担持させる。金属化合物を担持させた活性炭を乾燥した後、還元処理に付すことにより本発明の触媒を得ることができる。所望であれば、還元処理に付す前に、金属化合物を担持させた後、乾燥させた活性炭を焼成してもよい。
【0038】
金属化合物としては、触媒の調製法にもよるが、通常は硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などの鉱酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、水酸化物、酸化物、有機金属化合物などを用いることができ、中でも水溶性の化合物が好ましい。
ルテニウムを含む金属化合物の例として、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、ルテニウムアセチルアセトナート、ルテニウムカルボニルなどが挙げられ、中でも塩化ルテニウムが好ましい。
【0039】
錫を含む金属化合物の例として、塩化錫(II)、錫酸ナトリウム、酢酸錫(II)などが挙げられ、中でも塩化錫および酢酸錫が好ましい。
レニウムを含む金属化合物の例として、七酸化二レニウム(VII)、過レニウム(VII)酸(酸化レニウム(VII)の水溶液)などが挙げられ、中でも過レニウム(VII)酸が好ましい。
浸漬法による場合の金属化合物を溶解した金属化合物溶液中の金属化合物の濃度は特に限定されず、金属の種類にもよって異なるが、10〜20質量%程度が好ましい。担体に金属化合物を担持させる順序については特に制限はなく、全ての金属化合物を同時に担持させてもよく、各金属化合物を個別に担持させてもよい。
【0040】
金属成分を担持させた活性炭の乾燥は、通常、100℃未満の温度で減圧下に保持するか、窒素、空気などの乾燥気体を流通させて行う。
乾燥させた活性炭の還元処理は、気相還元および液相還元のいずれの方法で行ってもよい。
気相還元は、上記の乾燥した活性炭(金属化合物が担持されている)を容器に仕込み、適当な温度まで昇温した後に、還元ガスを容器に充填する、または容器に還元ガスを流通させることにより行うことができる。所望であれば、この還元操作を繰り返し行ってもよい。還元ガスとしては、水素、ヒドラジン蒸気、ホルムアルデヒドなどを用いることができる。温度は、150℃〜500℃が好ましい。
【0041】
液相還元は、上記の乾燥した活性炭(金属化合物が担持されている)を適当な溶媒中に懸濁させ、常圧〜20MPaの圧力下、室温〜250℃の温度で、適当な還元剤を用いて処理することにより行うことができる。還元剤としては、水素化硼素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、ジエチル亜鉛、ヒドラジン水溶液、ホルムアルデヒド水溶液などの他、上記の気相還元に用いられる還元ガスを用いることもできる。液相還元において用いられる溶媒に特に制限はなく、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ヘキサン、ベンゼン、ナフタレンなどの炭化水素類などを用いることができる。ただし、水素化アルミニウムリチウムやジエチル亜鉛などの水やアルコール類と反応する還元剤を用いる場合には、非水系の水酸基を持たない化合物、例えば、ヘキサン、ベンゼン、ナフタレンなどの炭化水素類を溶媒として用いる。
【0042】
所望により行われる乾燥させた活性炭の焼成は、上記の還元処理の前に通常100〜600℃の温度で窒素、空気などを流通させながら行う。
本発明の触媒の形状については特に限定はなく、本発明において担体として用いられる活性炭の形状に起因する任意の形状の触媒を用いることができる。
本発明の触媒は、水素添加反応の様式により、種々の形状を有するものを適宜選択して用いることが好ましい。例えば、本発明の触媒を用いる第一級アルコールの製造において、攪拌混合槽を反応器として用いる場合には、活性炭として平均粒径0.2〜200μm、好ましくは平均粒径0.5〜100μmの粉末状の活性炭を用いて製造した触媒を用いることが好ましい。これは、触媒の粒子径が大きすぎると攪拌の際に触媒粒子が徐々に破砕されることにより目的物である第一級アルコールの収率が変動するためである。
【0043】
一方、本発明の触媒を用いる第一級アルコールの製造において固定床反応器を用いる場合には、活性炭として粒子径1mm〜1cm、好ましくは粒子径2mm〜5mmの顆粒状、円柱状、球状、ペレット状などに成形した活性炭を用いて製造した触媒を用いることが好ましい。これは、触媒の粒子径が小さすぎると、圧力損失が大きくなり、後述する出発物質、反応溶媒(水)、水素ガスなどの供給が困難になるためである。
【0044】
本発明の触媒を長期保存する場合には、触媒中の活性金属種が酸素、水分などによって経時的に変化を受けることがあるので、窒素などの不活性ガス下、湿度1%以下、室温以下の環境で保存することが好ましい。
以上のようにして得た触媒を用いてカルボン酸から直接、第一級アルコールを製造することができる。以下、その方法について説明する。
本発明においては、カルボン酸および酸無水物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の出発物質を水および触媒の存在下で水素ガスと反応させ、出発物質の直接水素添加反応を行うことを含む方法によって第一級アルコールを製造する。
【0045】
出発物質として用いることができるカルボン酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、メチルマロン酸、α−メチルグルタル酸、β−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,4−ジメチルグルタル酸、3.3−ジメチルグルタル酸、2−エチル−2−メチルコハク酸、2,2,5,5−テトラメチルヘキサン二酸、3−メチルアジピン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸;アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、ムスコン酸、2−メチルムスコン酸、アセチレンジカルボン酸、1−プロピン−1,3−ジカルボン酸類などの脂肪族不飽和ジカルボン酸;メタントリカルボン酸、エチレントリカルボン酸などの脂肪族ポリカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸、コラン酸、リトコール酸、コール酸などの脂環式モノカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、3,3−テトラメチレングルタル酸などの脂環式ジカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、クミン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸などが挙げられる。これらのカルボン酸は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
カルボン酸に加え、酸無水物を出発物質として用いることができる。後述する通り、本発明の方法においては、水の存在下、好ましくは加温しながら直接水素添加反応を行う。このような条件下では、酸無水物は加水分解されて対応するカルボン酸となる。したがって本発明の方法においては、酸無水物を対応するカルボン酸と同様の方法で出発物質として用いることができる。
出発物質として用いることができる酸無水物の例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、アジピン酸無水物、ポリアジピン酸無水物、無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、無水安息香酸、無水フタル酸などが挙げられる。これらの酸無水物は単独で用いてよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明においては、出発物質として上記の酸無水物のみを用いることもでき、上記のカルボン酸と酸無水物を併用することができる。
不飽和カルボン酸(または対応する酸無水物)を出発物質として用いた場合には、本発明の触媒を用いた直接水素添加反応によって飽和アルコールが得られる。また芳香族カルボン酸(または対応する酸無水物)を原料に用いた場合には、本発明の触媒を用いた直接水素添加反応によって脂環式アルコールが得られる。
【0048】
上記のカルボン酸および酸無水物は種々の置換基を有していてもよいが、当然ながら、置換基の種類によっては、その置換基が本発明の触媒の作用により変化を起こす場合がある。例えば、ニトロ基は還元されてアミノ基に変換される。
また上記のカルボン酸および酸無水物は、分子内に硫黄原子を含む場合は、触媒活性の低下に配慮することが好ましい。
本発明の方法においては、出発物質として炭素数が2〜20であるジカルボン酸および炭素数が2〜20である環状酸無水物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を用いることが好ましい。
【0049】
炭素数が2〜20であるジカルボン酸の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸などを挙げることができる。炭素数が2〜20である環状酸無水物の例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸などを挙げることができる。このような出発物質の多くは市販されており、比較的容易に入手することができるが、種々の化合物を製造する際に生じる、カルボン酸や酸無水物を多く含む廃棄物をそのまま、または適宜処理した後、出発物質として用いることもできる。
【0050】
例えば、ナイロンなどの原料として有用なアジピン酸は、シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を酸化剤(主に硝酸)を用いる酸化反応に付すことにより製造されているが、この酸化反応の際、相当量のコハク酸やグルタル酸が副生する。目的物であるアジピン酸の大半は、この酸化反応によって得られた反応混合物から晶析によって回収される。この晶析の際に得られる濾液には、回収されなかったアジピン酸の他、副生したコハク酸やグルタル酸が含まれているが、通常は廃棄物として処理されている。
【0051】
この濾液に由来する、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸を含むジカルボン酸混合物を、本発明の方法の出発物質として用いることができる。上記の濾液をそのままジカルボン酸混合物として用いることもできるが、この場合には、濾液中に残存する酸化剤(主に硝酸)などの影響により、触媒の活性が低下する結果、目的物であるジオールの収率が低下することがあるので、上記の濾液は硝酸などの酸化剤を除去するなど、適宜処理した後に、ジカルボン酸混合物として用いることが好ましい。
【0052】
本発明の方法において用いられる触媒は、広範囲におよぶカルボン酸の直接水素添加に適用することができるので、上記のジカルボン酸混合物を出発物質として用いると、この混合物に含まれるコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸はそれぞれ1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールに変換される。これらは、所望であれば通常の方法、例えば、蒸留によって分離・精製することができる。
【0053】
1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールは、いずれも種々の樹脂原料などとして用いられる、工業的に極めて有用な化合物である。したがって、上記のジカルボン酸混合物は、本発明の方法における出発物質として特に好ましい。
以上から明らかなように、本発明の方法を用いるとアジピン酸の製造の際に生じる廃棄物(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を酸化反応に付すことによって得られる反応混合物に由来)を原料として、工業的に有用な化合物である1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールを同時に製造することができる上、上記の廃棄物の量を減らすことができる。
【0054】
本発明の方法においては、以上のような出発物質を水および上記の触媒の存在下で水素ガスと反応させ、出発物質の直接水素添加反応を行う。
通常、水は液体状態のものを溶媒として用いるが、上記の直接水素添加反応を気相反応によって行う場合にはその限りではない。液体状態の水を溶媒として用いる場合、他の溶媒を併用することもできる。この溶媒は水溶性であっても非水溶性であってもよい。溶媒としては、本発明の触媒の作用によって還元されることのないものが好ましい。
水と併用することができる溶媒の好ましい例としては、メタノール、エタノールなどのアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル、ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素などを挙げることができる。
【0055】
水を使用しない場合、特にカルボン酸を出発物質として用いる場合、直接水素添加反応が極めて進行しにくくなり、また、触媒の劣化が早くなる。
更に、ジカルボン酸を出発物質として用いる場合、水を使用しないと、目的物である第一級アルコールの収率が低下する。これは、水は使用しないと反応中間体であるヒドロキシカルボン酸からラクトンが生成し、そのラクトンから環状エーテルが副生することによる。
水の使用量は特に限定されないが、直接水素添加反応を行う温度において、出発物質の全量を溶解させるに足る量の水を用いることが好ましい。通常、出発物質1質量部に対し0.5〜100質量部、好ましくは1〜20質量部の水を用いる。
【0056】
本発明の方法において、触媒の使用量は特に限定されないが、好ましくは、出発物質であるカルボン酸または酸無水物の質量に対し0.1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%である。
上記の直接水素添加反応は、好ましくは100〜300℃、より好ましくは130〜250℃の温度、および好ましくは1〜25MPa、より好ましくは5〜20MPa、最も好ましくは10〜20MPaの水素圧の下で行う。
【0057】
反応条件や出発物質の種類などを適切に選択することにより、直接水素添加反応は液相で行うことも、気相反応で行うこともできるが、通常は液相反応で行う。直接水素添加反応は連続的に行ってもよく、回分(バッチ)式で行ってもよい。その際、反応器は特に限定されず、種々のものを用いることができる。例えば、攪拌混合槽を反応器として用いて液相懸濁反応を行ってもよく、固定床反応器を用いて固定床流通反応を行ってもよい。
【0058】
本発明の方法において、出発物質の転化率は高い方が好ましく、好ましくは90%以上、より好ましくは97%以上である。本発明の方法において得られた反応混合物中に未変化の(または酸無水物から生じた)カルボン酸が多く含まれていると、そのカルボン酸が目的物である第一級アルコールと反応してエステル化し、第一級アルコールの収率が低下する場合がある。ただし、実質的に全てのカルボン酸が直接水素添加されて第一級アルコールとなった後、長時間に渡って直接水素添加反応を継続すると、上記した第一級アルコールの過水素化分解によって第一級アルコールの収率が低下する場合がある。このようなことを考慮し、目的物である第一級アルコールの収率が最高となるよう、直接水素添加反応の条件を適切に選択することが好ましい。
【0059】
本発明の方法において、反応時間は特に限定されず、原料である(または原料の酸無水物から生じた)カルボン酸のほとんどが転化し、目的物である第一級アルコールの収率が最大となるよう適切に選択することができる。そのような反応時間は反応条件(温度や水素圧力)によって異なるが、通常1〜50時間である。直接水素添加を上記の好ましい条件下、すなわち、温度130〜250℃、水素圧力10〜20MPaの条件下で行う場合、反応時間は通常3〜20時間である。反応時間が長すぎると、反応温度によっては生成した第一級アルコール(目的物)が過水素化分解されてアルカンとなり、第一級アルコールの収率が低下する場合がある。反応時間の最適化は、定期的に直接水素添加によって得られた反応混合物の一部を取って分析し、第一級アルコールの収率を求めることを繰り返し、第一級アルコールの収率が最高となる反応時間を求めることによって行うことができる。
【0060】
本発明の方法で第一級アルコールを製造する場合、使用した原料や反応条件にもよるが、種々の副生物が生じることがある。例えば、出発物質としてモノカルボン酸(または対応する環状酸無水物)を用いた場合には、次のような副生物が生じる可能性がある。
(A)目的物である第一級アルコールが過水素化分解されて生じるアルカン(目的物と炭素数が同じ)、および
(B)出発物質である(または出発物質である酸無水物から生じる)カルボン酸の脱炭酸反応によって生じるアルカン(目的物より炭素数が少ない)。
出発物質としてジカルボン酸(または対応する環状酸無水物)を用いた場合には、上記のアルカンに加え、次のような副生物が生じる可能性がある。
(C)ヒドロキシカルボン酸(ジカルボン酸の2つのカルボキシル基のうち一方のみ還元されたもの)、
(D)ラクトン(上記ヒドロキシカルボン酸の脱水・環化反応により生じたもの)、
・環状エーテル(上記ラクトンが還元されたもの、または目的物であるジオールの脱水・環化反応により生じたもの)、および
(E)一価アルコール(目的物であるジオールが部分過水素化分解されて生じたもの)。
これらの副生物は、公知の方法、例えば、蒸留、分別再結晶、クロマトグラフィーなどにより容易に除去することができる。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例、比較例および参考例によってさらに具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
本発明において用いる測定報法および解析法は下記の通りである。
(1)活性炭中のリン元素濃度
活性炭と微結晶性セルロースを活性炭/微結晶性セルロース質量比1/9で混合し、乳鉢で混合・粉砕した後に、プレス(20t)で直径25mmのタブレットに成型して測定試料を作成する。この測定試料を用いて蛍光X線分析装置(RIX−3000(商標)、理学電機株式会社製)に付し、Fundamental Parameter オーダー分析法(FPオーダー分析法)により濃度を算出する。なお、蛍光X線分析における分析範囲は直径20mmとする。
(2)活性炭の細孔分布
米国マイクロメリテックス社製のBET多点式細孔分布測定装置アサップ−2400型(商標)を用いて、窒素吸着法により、細孔半径が10×10-12m以上100×10-12m以下である細孔に関しての細孔容積を測定する。
細孔容積を計算するためのデータ処理は、Barrett−Joyner−Halenda法(BJH法)によって行う。BJH法の詳細については、触媒講座第3巻(基礎編3)・固体触媒のキャラクタリゼーション(触媒学会編、講談社発行(1985))の記載にしたがう。
【0062】
(3)出発物質の転化率
出発物質の直接水素添加反応によって得られた反応混合物を蒸留水で希釈する。その際、得られる希釈液の質量が、用いた出発物質の質量の約10倍となるようにする。得られた希釈液に、ピメリン酸を内部標準物質として添加し(試料の質量部に対し約0.1質量部を精秤して添加)、試料溶液とする。この試料溶液を下記の条件下で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付し、得られた分析値から転化率を算出する。
・HPLCの条件
装置:高速液体クロマトグラフ(LC−6A型(商標)、島津製作所製)
カラム:SCR−101H(商標)(島津製作所製)
移動相:過塩素酸水溶液(pH2.3)
流速:0.8ml/min
検出:示差屈折率検出器
【0063】
(4)第一級アルコールの収率
直接水素添加反応によって得られた反応混合物を第一級アルコールの濃度が約1質量%となるよう適宜ジオキサンで希釈した後、ジエチレングリコールジエチルエーテルを内部標準物質として濃度が約1質量%となるよう添加し、試料溶液とする。この試料を下記の条件下でガスクロマトグラフィー(GC)に付し、得られた分析値から収率を算出する。
・GCの条件
カラム(DB−WAX(商標)、J&W Scientific社製:カラム長30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)
装置:ガスクロマトグラフ(GC−14B型(商標)、島津製作所製)
キャリヤーガス:ヘリウム
検出:水素炎イオン化検出器(FID)
【0064】
【参考例1】
60質量%硝酸1670gに、銅(金属)8.35gおよび五酸化バナジウム1.20gを加えて溶解し、得られた溶液を攪拌機、滴下漏斗、冷却管、温度計を取り付けたガラスフラスコに入れた。この溶液に水冷下、シクロヘキサノール(市販品を蒸留により精製したのもの)250gを2時間かけて添加した。この際、ガラスフラスコ内の溶液の温度が80℃以下に保った。シクロヘキサノールの添加が終了した後、80℃で1時間攪拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、析出した粗アジピン酸を濾過により濾液と分離した。
得られた粗アジピン酸を90℃のイオン交換水450gに溶解し、ゆっくり室温まで冷却した。析出したアジピン酸を濾過により濾液と分離した。
【0065】
以上のアジピン酸合成操作を更に5回繰り返し、計6回のアジピン酸合成操作により得られた濾液を全て合わせ、合わせた濾液のうち5000gを常圧下、約120℃で加熱することにより、水と大部分の硝酸を留去し、残留物を得た。
得られた残留物を残留物の2倍の質量のイオン交換水に溶解して、水分含有量67質量%の水溶液を得、この水溶液にスチレン系イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR−120B(オルガノ(株)社製)、陽イオン交換基としてスルホン酸基を有する)100gを加え、室温下で2時間緩く攪拌した後、濾過により上記のイオン交換樹脂を除去した。この操作により、上記水溶液中の銅及びバナジウムが実質的に全て除去された。
【0066】
その後、上記水溶液を120℃で1時間、次いで、170℃で15分間加熱して水を留去し、残留物を得た。この残留物を上記の条件下、HPLCで分析した結果、この残留物はコハク酸23質量%、グルタル酸60質量%およびアジピン酸17質量%を含むジカルボン酸混合物であることがわかった。
以上のようにして得たジカルボン酸混合物を後述する直接水素添加反応の出発物質として用いた。
【0067】
【実施例1】
<触媒の調製>
100mlのなす型フラスコに塩化ルテニウム(III)塩酸水溶液(ルテニウム10質量%)23.47gを入れ、これに塩化錫(II)二水和物(和光純薬製、純度97%)3.34gを加えて溶解し、得られた溶液を、80℃真空下1晩保持して乾燥した活性炭(BAX1500(商標)、ウエストベーコ社製)20.0gに加え、約1時間静置した。
その後、エバポレーターを用いて60℃て、減圧度を約1時間かけて徐々に下げ、8kPaにして水を留去し、得られた残留物を窒素雰囲気下、150℃で2時間更に乾燥処理し、次いで、水素雰囲気下、450℃で2時間還元処理した。
その後、窒素雰囲気下で室温まで冷却した後、酸素/窒素混合ガス(0.1体積%酸素)雰囲気下で2時間静置した。
以上の方法により、9.7質量%のルテニウムおよび7.1質量%の錫が活性炭に担持されてなる触媒(担持金属量はいずれも得られた触媒の質量に対する値である。以下も同様)を得た(以下、この触媒を「Ru−Sn触媒」という)。
上記の活性炭「BAX1500(商標)」は、リンの濃度が2質量%、細孔半径が10×10-12m以上100×10-12m以下である細孔に関しての細孔容量が0.82cm3/gであった。
【0068】
<ジカルボン酸混合物の直接水素添加反応>
参考例1で得たジカルボン酸混合物をイオン交換水に溶かし、ジカルボン酸混合物20質量%の水溶液を調製した。容量100mlのオートクレーブに、このジカルボン酸混合物水溶液30gおよび上記Ru−Sn触媒1.0gを仕込み、室温下、オートクレーブ内を窒素置換した後、オートクレーブ内に水素を2.0MPa圧入し、180℃まで昇温した。温度が180℃に達した時点で更に水素を圧入して7MPaとし、この温度及び水素圧で4時間直接水素添加反応を行った。
【0069】
反応終了後、オートクレーブの内容物をデカンテーションにより上清と触媒に分離し、得られた触媒をイオン交換水1mlで5回洗浄し、得られた洗液を上清と合わせ、反応混合物とした。
得られた反応混合物を、上記の条件下、HPLCおよびGCで分析し、出発物質の転化率と第一級アルコールの収率を求めた。その結果、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の転化率は、それぞれ95%、99%および99%であり、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの収率は、それぞれ43%、73%および61%であった。
【0070】
【実施例2】
<触媒の調製>
100mlのなす型フラスコに塩化ルテニウム(III)塩酸水溶液(エヌ・イーケムキャット社製、ルテニウム10質量%)23.47gを入れ、これに塩化錫(II)二水和物(和光純薬製、純度97%)3.34gを加えて溶解し、更に過レニウム酸水溶液(アルドリッチ社製、HReO4の純度71.1質量%)を加え、攪拌した後、得られた溶液を、80℃真空下1晩保持して乾燥した活性炭(BAX1500(商標)、ウエストベーコ社製)20.0gに加え、約1時間静置した。
その後、エバポレーターを用いて60℃で、減圧度を約1時間かけて徐々に下げ、8kPaにして水を留去し、得られた残留物を窒素雰囲気下、150℃で2時間更に乾燥処理した。次いで、水素雰囲気下、450℃で2時間還元処理した。その後、窒素雰囲気下で室温まで冷却し、酸素/窒素混合ガス(0.1体積%酸素)雰囲気下で2時間静置した。
以上の方法により、8.8質量%のルテニウム、6.4質量%の錫および9.8質量%のレニウムが活性炭に担持されてなる触媒(担持金属量はいずれも得られた触媒の質量に対する値である。以下も同様)を得た。以下、この触媒を「Ru−Sn−Re触媒」という。
【0071】
<ジカルボン酸混合物の直接水素添加反応>
参考例1で得たジカルボン酸混合物をイオン交換水に溶かし、ジカルボン酸混合物の20質量%水溶液を調製した。容量100mlのオートクレーブに、このジカルボン酸混合物水溶液30gおよび上記Ru−Sn−Re触媒1.0gを仕込み、室温下、オートクレーブ内を窒素置換した後、オートクレーブ内に水素を圧入して2.0MPaとし、180℃まで昇温した。温度が180℃に達した時点で更に水素を圧入して7MPaとし、この温度及び水素圧の下で4時間、直接水素添加反応を行った。
【0072】
反応終了後、オートクレーブの内容物をデカンテーションにより上清と触媒に分離し、得られた触媒をイオン交換水1mlで5回洗浄し、得られた洗液を上清と合わせ、反応混合物とした。
得られた反応混合物を、上記の条件下、HPLCおよびGCで分析し、出発物質の転化率と第一級アルコールの収率を求めた。その結果、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の転化率は、それぞれ99%、99%および99%であり、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの収率は、それぞれ46%、84%および75%であった。
【0073】
【比較例1】
<触媒の調製>
100mlのなす型フラスコに塩化ルテニウム(III)塩酸水溶液(エヌ・イーケムキャット社製、ルテニウム10質量%)23.47gを入れ、これに塩化錫(II)二水和物(和光純薬製、純度97%)3.34gを加えて溶解し、更に過レニウム酸水溶液(アルドリッチ社製、HReO4の純度71.1質量%)を加えて攪拌した。次いで、得られた溶液を、80℃真空下、1晩保持して乾燥した活性炭(NORIT R3 EXTRA(商標)、日本ノリット社製)20.0gに加え、約1時間静置した。
その後、エバポレーターを用いて60℃、減圧度を約1時間かけて徐々に下げ、8kPaにして水を留去した。得られた残留物を窒素雰囲気下、150℃で2時間更に乾燥処理し、次いで、水素雰囲気下、450℃で2時間還元処理した。
その後、窒素雰囲気下で室温まで冷却し、酸素/窒素混合ガス(0.1体積%酸素)雰囲気下で2時間静置した。
以上の方法により、8.8質量%のルテニウム、6.4質量%の錫および9.8質量%のレニウムが活性炭に担持されてなる触媒(担持金属量はいずれも得られた触媒の質量に対する値である。以下も同様)を得た(以下、この触媒を「比較触媒1」という)。
上記の活性炭「NORIT R3 EXTRA(商標)」は、リン濃度が0.07質量%であり、細孔半径が10×10-12m以上100×10-12m以下である細孔に関しての細孔容量が0.05cm3/gである。
【0074】
<ジカルボン酸混合物の直接水素添加反応>
触媒として上記比較触媒1を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、反応混合物を得た。
得られた反応混合物を、上記の条件下、HPLCおよびGCで分析し、出発物質の転化率と第一級アルコールの収率を求めた。その結果、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の転化率は、それぞれ88%、93%および96%であり、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの収率は、それぞれ17%、57%および50%であった。
【0075】
【発明の効果】
本発明の触媒を用いると、カルボン酸の種類にかかわらず高い収率で直接アルコール類を製造することができる。
またコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸を含むジカルボン酸の混合物から1,4−ブタンジオール、1.5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールを含むジオール混合物を高収率で製造することができる。特に、シクロヘキサンノンおよび/又はシクロヘキサノールを硝酸酸化してアジピン酸を製造する際の副生物であるコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸を含むジカルボン酸の混合物から1,4−ブタンジオール、1.5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物を高収率で製造することができる。

Claims (11)

  1. ルテニウムおよび錫を含む活性金属種を担持した活性炭を含有してなり、活性炭は、炭素質原料をリン酸およびリン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する液と混合した後、焼成することを含む方法によって製造され、活性金属種を担持する前の活性炭がリン元素を0.1〜5質量%含有する、ことを特徴とするカルボン酸直接水素添加用触媒。
  2. 活性金属種が、レニウムを更に含有することを特徴とする請求項1記載のカルボン酸直接水素添加用触媒。
  3. 活性金属種を担持する前の活性炭の細孔半径が10×10 -12 m以上100×10 -12 m以下に関しての細孔容積が0.45cm 3 /g以上1.30cm 3 /g以下であることを特徴とする請求項1または2記載のカルボン酸直接水素添加用触媒。
  4. カルボン酸および酸無水物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の出発物質を、水および触媒の存在下で水素ガスと反応させて出発物質の直接水素添加反応を行うことを含む第一級アルコールの製造方法であって、触媒は、ルテニウムおよび錫を含む活性金属種を担持した活性炭を含有してなり、活性炭は、炭素質原料をリン酸およびリン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する液と混合した後、焼成することを含む方法によって製造され、活性金属種を担持する前の活性炭がリン元素を0.1〜5質量%含有する、ことを特徴とする第一級アルコールの製造方法。
  5. 活性金属種が、レニウムを更に含有することを特徴とする請求項4記載の第一級アルコールの製造方法。
  6. 活性金属種を担持する前の活性炭の細孔半径が10×10 -12 m以上100×10 -12 m以下に関しての細孔容積が0.45cm 3 /g以上1.30cm 3 /g以下であることを特徴とする請求項4または5記載の第一級アルコールの製造方法。
  7. 出発物質は、炭素数が2〜20であるジカルボン酸および炭素数が2〜20である環状酸無水物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項4〜のいずれか1項に記載の第一級アルコールの製造方法。
  8. 出発物質が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、無水コハク酸および無水マレイン酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項4〜のいずれか1項に記載の第一級アルコールの製造方法。
  9. 出発物質は、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸を含むジカルボン酸混合物であることを特徴とする請求項4〜のいずれか1項に記載の第一級アルコールの製造方法。
  10. ジカルボン酸混合物は、シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を酸化反応に付すことによって得られる反応混合物に由来することを特徴とする請求項記載の第一級アルコールの製造方法。
  11. 直接水素添加反応を、温度100℃〜300℃、水素圧力1MPa〜25MPaの条件下で行うことを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の第一級アルコールの製造方法。
JP2001211994A 2001-07-12 2001-07-12 カルボン酸直接水素添加用触媒 Expired - Fee Related JP4640748B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001211994A JP4640748B2 (ja) 2001-07-12 2001-07-12 カルボン酸直接水素添加用触媒

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001211994A JP4640748B2 (ja) 2001-07-12 2001-07-12 カルボン酸直接水素添加用触媒

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003024791A JP2003024791A (ja) 2003-01-28
JP4640748B2 true JP4640748B2 (ja) 2011-03-02

Family

ID=19047227

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001211994A Expired - Fee Related JP4640748B2 (ja) 2001-07-12 2001-07-12 カルボン酸直接水素添加用触媒

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4640748B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109305883A (zh) * 2017-07-28 2019-02-05 中国石油化工股份有限公司 1,4-环己烷二甲醇的生产方法

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9018127B2 (en) * 2012-01-12 2015-04-28 Bioamber International S.A.R.L. Preparation of catalyst for selective hydrogenation of hydrogenatable precursors
US9108895B2 (en) 2012-10-26 2015-08-18 Eastman Chemical Company Promoted ruthenium catalyst for the improved hydrogenation of carboxylic acids to the corresponding alcohols
CN111715221B (zh) * 2014-05-23 2023-10-31 三菱化学株式会社 负载金属催化剂、负载金属催化剂的保存方法以及醇的制造方法
JP2019107590A (ja) * 2017-12-15 2019-07-04 株式会社ダイセル 触媒、アルデヒド類および/またはアルコール類の製造方法
DE102018215394A1 (de) * 2018-09-11 2020-03-12 Rheinisch-Westfälische Technische Hochschule Aachen Verfahren zur chemischen Umsetzung von Zuckern oder Zuckeralkoholen zu Glykolen
CN111097417B (zh) * 2018-10-25 2024-01-26 中国石油化工股份有限公司 基于改性镍系负载型催化剂的1,5-戊二醇制备方法
CN115254158B (zh) * 2022-08-22 2023-12-22 中国科学院兰州化学物理研究所 一种纳米团簇金属磷化物-磷-碳催化剂及其制备和应用

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000007596A (ja) * 1998-06-22 2000-01-11 Mitsubishi Chemicals Corp 1,4−シクロヘキサンジメタノールの製造方法
JP2000313611A (ja) * 1999-04-26 2000-11-14 Mitsubishi Chemicals Corp 活性炭及びその製造方法
JP2001002604A (ja) * 1999-06-17 2001-01-09 Asahi Chem Ind Co Ltd ジオール類の製法
JP2001002603A (ja) * 1999-06-17 2001-01-09 Asahi Chem Ind Co Ltd ジオール類の製造方法
JP2001002605A (ja) * 1999-06-17 2001-01-09 Asahi Chem Ind Co Ltd ジオール類の製造法
JP2001157840A (ja) * 1999-09-21 2001-06-12 Asahi Kasei Corp カルボン酸水添触媒

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11349320A (ja) * 1998-06-04 1999-12-21 Mitsubishi Chemical Corp 活性炭の製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000007596A (ja) * 1998-06-22 2000-01-11 Mitsubishi Chemicals Corp 1,4−シクロヘキサンジメタノールの製造方法
JP2000313611A (ja) * 1999-04-26 2000-11-14 Mitsubishi Chemicals Corp 活性炭及びその製造方法
JP2001002604A (ja) * 1999-06-17 2001-01-09 Asahi Chem Ind Co Ltd ジオール類の製法
JP2001002603A (ja) * 1999-06-17 2001-01-09 Asahi Chem Ind Co Ltd ジオール類の製造方法
JP2001002605A (ja) * 1999-06-17 2001-01-09 Asahi Chem Ind Co Ltd ジオール類の製造法
JP2001157840A (ja) * 1999-09-21 2001-06-12 Asahi Kasei Corp カルボン酸水添触媒

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109305883A (zh) * 2017-07-28 2019-02-05 中国石油化工股份有限公司 1,4-环己烷二甲醇的生产方法
CN109305883B (zh) * 2017-07-28 2021-11-30 中国石油化工股份有限公司 1,4-环己烷二甲醇的生产方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003024791A (ja) 2003-01-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100460371B1 (ko) 카르복실산 수소첨가용 촉매
JP4472109B2 (ja) カルボン酸水添用触媒
US4628129A (en) Process for the preparation of ethylene glycol
EP0147219B1 (en) Pd/re hydrogenation catalyst and process for making tetrahydrofuran and 1,4-butanediol
JP2018521844A (ja) 改良された銅含有多元金属触媒およびバイオベースの1,2−プロパンジオールを製造するためにこれを使用する方法
EP2248793A2 (en) Production method for a monohydric alcohol from a monocarboxylic acid or from a derivative thereof
KR20090037902A (ko) 프탈레이트의 고리 수소화를 위한 루테늄 촉매의 재생 방법
JP4640748B2 (ja) カルボン酸直接水素添加用触媒
CA1150317A (en) Process for prolonging the life of ester hydrogenation catalyst
KR100264544B1 (ko) 말레산을 1,4-부탄디올로 수소화 하기 위한 개선 방법
US10597344B2 (en) Method for preparing 1,3-cyclohexanedimethanol
EP3036213B1 (en) Production of 1,6-hexanediol from adipic acid
JP4472108B2 (ja) カルボン酸水添触媒
JP4282832B2 (ja) ジオール類の製造法
US5777155A (en) Process for producing unsaturated glycol diester
JP4282831B2 (ja) ジオール類の製法
JPH05246915A (ja) 有機カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルの水素化方法
EP0033589A1 (en) Method of preparing a catalyst for synthesizing unsaturated esters
JP4282830B2 (ja) ジオール類の製造方法
JP4497457B2 (ja) メタクリル酸エステル製造用触媒の製造方法
JP4282153B2 (ja) ジオール混合物の製造法
JP2001097904A (ja) 1,6−ヘキサンジオールの製造方法
KR20190049131A (ko) 2,2,4,4-테트라메틸-1,3-사이클로부탄다이올의 제조방법
JP3873389B2 (ja) 1,6−ヘキサンジオールの製造法
JP4282154B2 (ja) ジオール混合物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080516

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100830

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100907

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101104

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101124

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101124

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131210

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees