JP6728883B2 - 転写用ハードコートフィルム及びその製造方法、ハードコート層積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂基体上に熱転写によってハードコート層を転写するための、転写用ハードコートフィルム及びその製造方法、及び、転写用ハードコートフィルムを用いたハードコート層積層体に関する。
樹脂成形品の表面に耐傷性を付与するために、ハードコート層を樹脂成形品(樹脂基体)の表面に形成することが行われている。耐傷性以外の特性として、ハードコート層付樹脂成型品には、耐侯性や透明性が必要とされる。
例えば、下記の特許文献1には、転写用基材上に、ハードコート層、プライマー層及び接着層がこの順に積層された三次元成形用転写フィルムであって、ハードコート層が、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及びイソシアネート化合物を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されている構成が開示されている。
特開2015−193248号公報
ところで、ハードコート層付樹脂成型品を車両窓として使用する場合、耐傷性、耐侯性、透明性のほか、極めて高い耐燃焼性が求められる。特に、鉄道車両の窓については、社団法人日本鉄道車両機械技術協会によって、耐燃焼性の規格が厳格に定められている。しかしながら、ハードコート層は、樹脂基体、接着層及びプライマー層に比べて耐燃焼性が低く、特許文献1に記載の発明は、耐燃焼性の観点において改良の余地がある。
耐燃焼性を高めるため、ハードコート層を構成する材料として難燃剤を含めることが考えられる。しかしながら、ハードコート層に難燃剤を加えることで、ハードコート層の耐傷性が劣ることが懸念される。
また、樹脂基体上に熱転写によってハードコート層を転写する際、熱により樹脂基体が軟化する。熱転写によって転写用ハードコートフィルムにかかる温度は、接着層及びプライマー層のガラス転移温度を超えているため、接着層及びプライマー層は、熱によって軟化した樹脂基体に追従できる。これに対し、ハードコート層は、接着層及びプライマー層ほど柔軟性を有していないため、熱により樹脂基体が軟化すると、ハードコート層は、熱によって軟化した樹脂基体に追従できず、樹脂基体から剥離する可能性がある。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐傷性、耐侯性、透明性、耐燃焼性のいずれにも優れ、熱転写によるハードコート層の剥離を抑えることの可能な転写用ハードコートフィルム及びその製造方法、転写用ハードコートフィルムを用いたハードコート層積層体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ハードコート層を構成する硬化性樹脂組成物を、難燃剤を所定量含有する構成とし、硬化性樹脂組成物の硬化物の高温での破断伸び率を所定範囲に設定することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を開発するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明は、基材フィルム上に、少なくとも、ハードコート層とプライマー層と接着層とがこの順に配置されており、前記ハードコート層は、硬化性樹脂100質量部と、難燃剤20質量部以上35質量部以下とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、前記ハードコート層は、以下の測定方法により、JIS K 7127に準拠して測定した150℃での伸び率が10%以上50%以下である、転写用ハードコートフィルムである。
(150℃での伸び率の測定方法)
表面が未処理であり、厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)の一方の面にハードコート層形成用樹脂組成物を塗布し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、厚さ3μmの塗膜を形成する。そして、表面に塗膜が形成されたフィルムを、幅25mm、長さ150mmにカットして試験用シートとし、該試験用シートの伸びを、引張圧縮試験機を用い、温度150℃の温度環境下にて、引張速度100mm/分、チャック間間隔100mmの条件で、JIS K 7127に準拠した引張試験を行い、ハードコート層が破断する際の伸び率を測定する。ハードコート層の破断は、目視によるクラック発生、及び伸度−応力曲線の変曲点により判断する。
(2)また、本発明は、前記硬化性樹脂が電離放射線硬化性樹脂である、(1)に記載の転写用ハードコートフィルムである。
(3)また、本発明は、樹脂基体上に、少なくとも、接着層とプライマー層とハードコート層がこの順に配置されており、前記ハードコート層は、硬化性樹脂100質量部と、難燃剤20質量部以上35質量部以下とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、前記ハードコート層は、上記(150℃での伸び率の測定方法)に記載の測定方法により測定した150℃での伸び率が10%以上50%以下である、ハードコート層積層体である。
(4)また、本発明は、社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用材料の燃焼規格に基づく区分判定が、不燃性又は極難燃性である、(3)に記載のハードコート層積層体である。
(5)また、本発明は、少なくとも以下の工程を順に有する転写用ハードコートフィルムの製造方法である。
a)基材フィルム上にハードコート層を形成する工程であって、前記ハードコート層は、硬化性樹脂100質量部と、難燃剤20質量部以上35質量部以下とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、前記ハードコート層は、上記(150℃での伸び率の測定方法)に記載の測定方法により測定した150℃での伸び率が10%以上50%以下である。
b)前記ハードコート層上にプライマー層形成用組成物を用いてプライマー層を形成する工程。
c)前記プライマー層上に接着層形成用組成物を用いて接着層を形成する工程。
本発明によると、耐傷性、耐侯性、透明性、耐燃焼性のいずれにも優れ、熱転写によるハードコート層の剥離を抑えることの可能な転写用ハードコートフィルム及びその製造方法、転写用ハードコートフィルムを用いたハードコート層積層体を提供できる。
本発明の転写用ハードコートフィルムの一実施形態であって、層構成を表す断面模式図である。 本発明のハードコート層積層体の一実施形態であって、(a)基材フィルムが存在する実施態様、(b)基材フィルムを剥離した実施態様、を表す断面模式図である。 社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用材料の燃焼試験方法を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<転写用ハードコートフィルム>
本実施形態の転写用ハードコートフィルム10は、基材フィルム11上に、少なくとも、ハードコート層12と、プライマー層13と、接着層14とがこの順に配置されている積層体である(図1参照)。本実施形態の転写用ハードコートフィルム10を用いることにより、樹脂基体20(図2)にハードコート層12を含む転写層が積層されたハードコート層積層体を製造することができる。
本実施形態の転写用ハードコートフィルム10は、本発明の転写用ハードコートフィルムの一実施態様である。本発明における「この順に配置」とは、基材フィルム11とハードコート層12とプライマー層13と接着層14のみが積層されている構成に限定されない意味である。例えば、本発明の効果を妨げない範囲で、基材フィルム11とハードコート層12との間に離型層や着色層(加飾層)などの他の層が積層されていても本発明の積層順を充足する限り本発明の範囲である。
また、本発明における「転写層」とは、ハードコート層12から接着層14までのすべての層を含む意味であり、3層に限定されない。よって、転写層が4層以上で構成される場合には、転写層の厚さとは4層以上の総厚さを意味するものである。
以下、本実施形態の転写用ハードコートフィルムを構成する基材フィルム11と、ハードコート層12と、プライマー層13と、接着層14について各々説明する。
〔基材フィルム〕
基材フィルム11は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂フィルム又はポリオレフィン樹脂フィルムにより構成されることが好ましい。また、上記フィルムのうち延伸フィルムであることが好ましい。基材フィルム11がこれらの樹脂フィルムにより構成されることにより、その上にハードコート層12などを容易に形成でき、また、転写用ハードコートフィルム10を製造する際に熱収縮や、ハードコート層12の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという優れた耐収縮性を有し、転写用ハードコートフィルム10を優れた安定性と効率とで製造することが可能となる。更に、転写用ハードコートフィルム10を樹脂基体20に転写する際の加熱温度による熱収縮が生じることもないので、容易にハードコート層積層体10を製造することができる。
ポリエステル樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体などのポリエステル樹脂からなるフィルムが好ましく挙げられる。これらの中でも、本実施形態の転写用ハードコートフィルム10を製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ポリオレフィン樹脂フィルムとしては、転写用ハードコートフィルム10を製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、オレフィン熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン樹脂からなり、延伸された樹脂フィルムが好ましく挙げられる。また、これらの中でも、延伸ポリプロピレン樹脂フィルムであることが好ましい。
延伸ポリオレフィン樹脂は、一軸延伸されたもの、二軸延伸されたもののいずれでもよいが、転写用ハードコートフィルムを製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、二軸延伸されたものであることが好ましい。二軸延伸ポリオレフィン樹脂のシートは、通常、長手方向延伸機を用いてガラス転移温度(Tg)以上に加熱して、好ましくは5倍以上30倍以下程度延伸し、次いで、幅方向延伸機を用いてガラス転移温度(Tg)以上に加熱して幅方向へ好ましくは5倍以上30倍以下延伸して得られる。また、延伸倍率が上記範囲内であると、転写用ハードコートフィルム10を製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくくなる。
基材フィルム11の厚さは、特に限定されないが、4μm以上200μm以下であればよい。4μm以上であればカールやシワが入りにくくなり、200μm以下であればコストを安価に抑えられ、熱伝導効率が低下することがなく、転写後に基材フィルム11を剥離する際に各層がとられることがないため、優れた転写性が得られる。基材フィルム11は、複層構成でもよい。その場合、複層構成全体で上記厚みの範囲にあることが好ましい。
なお、基材フィルム11は、転写する際のハードコート層12との間の離型性を確保するために、必要に応じて基材フィルム11表面に公知の離型処理を施したり、シリコーン樹脂などの離型層を設けてもよい。また、逆にハードコート層12との密着性を向上させるためにコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン/紫外線処理、易接着コート剤を塗布するなどの表面処理を施してもよい。
〔ハードコート層〕
ハードコート層12は、硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、樹脂基体20に耐傷性を付与する層である。上記硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂100質量部と、難燃剤20質量部以上35質量部以下とを含有する。
[硬化性樹脂組成物]
硬化性樹脂組成物は、所望に応じて、耐候剤、耐傷粒子、非反応性シリコーン化合物などの滑剤がハードコート層積層体への耐候性及び耐傷性を付与する性能を損なわない範囲で含まれていてもよい。
(硬化性樹脂)
ハードコート層12は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、電離放射線硬化性樹脂等、の硬化物からなる層を好ましく挙げることができる。耐候性や耐傷性の観点から電離放射線硬化性樹脂の硬化物であることが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線を照射することにより硬化する硬化性樹脂であり、電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるほか、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も用いられる。
ハードコート層12に使用できる電離放射線硬化性樹脂としては、従来から電離放射線硬化性を有する樹脂として慣用されている重合性オリゴマー(プレポリマー)、重合性ポリマーの中から適宜選択して用いることができ、良好な硬化特性を得る観点から、ブリードアウトしにくく、かつ、硬化させてハードコート層12を形成する際に硬化収縮を生じにくいものが好ましい。また、無溶剤系で塗布する場合は、固形分基準として95%以上100%以下程度としても塗布性を有することが好ましい。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが好ましく挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート系がより好ましい。なお、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
これらのオリゴマーのうち、多官能の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、2以上15以下が高架橋密度による耐傷性付与の点で好ましく、硬化収縮を生じにくいという点から、2以上8以下がより好ましく、さらに好ましくは2以上6以下である。また、単官能の重合性オリゴマーとしては、例えば、カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得られるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートや、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレートなどのような高分子ウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
重合性ポリマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つポリマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやポリカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のポリマーなどが好ましく挙げられ、ポリカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレート系がより好ましい。なお、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。これらのポリマーを単独で、あるいは複数を組合せて用いてもよい。
本実施形態に関するハードコート層12に含まれる樹脂の重量平均分子量(Mw)については、その種類に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば200〜100,000、好ましくは500〜50,000、更に好ましくは1,000〜30,000が挙げられる。重量平均分子量(Mw)が過小であると、ハードコート層12の硬度が不足する結果、十分な耐傷性や耐溶剤性が得られない可能性がある。これに対し、重量平均分子量(Mw)が過大であると、種類によっては、架橋密度を十分に高めることができず、ハードコート層12の硬度が不足する結果や、硬化前のインキの粘度が上昇し、塗布適正が低下する可能性がある。また、重量平均分子量(Mw)が過小、過大であると、ハードコート層12に含まれる難燃剤の含有量が適正であったとしても、十分な耐燃焼性が得られない。これは、難燃剤のブリードアウトや、層内で偏在化しているためと推測される。
なお、本明細書における樹脂の重量平均分子量は、GPC法によって測定し、かつ、標準ポリスチレン換算された値である。
(難燃剤)
また、ハードコート層12を形成する硬化性樹脂組成物には、難燃剤が含有される。
難燃剤の種類は、特に限定されない。難燃剤として、ハロゲン系化合物、リン系化合物、無機水酸化物、シリコーン系化合物が挙げられる。
ハロゲン系化合物は、ラジカルトラップ効果を有し、硬化性樹脂組成物の硬化物の熱分解生成物(気相)の活性ラジカルの安定化ならびに酸素との反応を遮断する機能を有する。ハロゲン系化合物として、塩素系化合物、臭素系化合物等が挙げられる。塩素系化合物として、塩化アンモニウム、デクロラン等が挙げられる。また、臭素系化合物として、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ペンタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモエタン、臭化アンモニウム等が挙げられる。
リン系化合物は、リン酸によるラジカルトラップ効果ならびに、脱水、炭化によってハードコート層12の表面にバリア層を形成する機能を有する。これにより、バリア層が断熱層として機能し、硬化物の熱分解を抑制するとともに、硬化性樹脂組成物の硬化物の熱分解生成物がハードコート層12の層外に拡散するのを防止できる。リン系化合物として、リン酸水素二アンモニウム、リン酸エステル、リン酸二水素アンモニウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸グアニジン等が挙げられる。
無機水酸化物は、吸熱反応により、硬化性樹脂組成物の硬化物の熱分解を防ぐ機能を有する。無機水酸化物に熱が加わると、無機水酸化物は、脱水分解し、その際に大きな吸熱を伴う。そのため、硬化性樹脂組成物の硬化物に熱が加わるのを抑えることができ、結果として、硬化性樹脂組成物の硬化物の熱分解を防ぐことができる。無機水酸化物の例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
シリコーン系化合物は、ハードコート層12の表面に、ケイ素系表面バリア層を形成する機能を有する。これにより、バリア層が断熱層として機能し、硬化物の熱分解を抑制するとともに、硬化性樹脂組成物の硬化物の熱分解生成物がハードコート層12の層外に拡散するのを防止できる。
中でも、ハロゲン系リン酸エステルは、ハロゲン系化合物とリン系化合物の双方の難燃機能を有するため、同一添加量あたりの難燃効果が高い傾向にある。難燃剤のハードコート層12への添加箇所が特に限定されず、難燃剤の添加量も比較的少なく抑えられることから、難燃剤添加による、硬化層の物性低下ならびに難燃剤の揮発生成物による環境負荷を抑えることができる観点から、難燃剤は、ハロゲン系リン酸エステルであることが好ましい。
ハロゲン系リン酸エステルの例として、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)エチレンジホスフェート、2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−プロパンビス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート等が挙げられる。
難燃剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以上35質量部以下である。難燃剤の含有量が、硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以上であると、後に説明する150℃でのハードコート層12の伸び率が適正な範囲内にあれば、社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用材料の燃焼規格に基づく区分判定において、極難燃性以上の判定が得られる。
難燃性の含有量は、25質量部以上であることがより好ましい。難燃剤の含有量が、硬化性樹脂100質量部に対して25質量部以上であると、上記伸び率が適正な範囲内にあれば、上記区分判定において、不燃性の判定が得られる。
難燃性の含有量は、30質量部以上であることが特に好ましい。難燃剤の含有量が、硬化性樹脂100質量部に対して30質量部以上であると、上記伸び率が20%以上30%以下であれば、上記区分判定の条件において、耐燃焼性を評価した後、純エチルアルコールの量を0.7ccに増量し、上記区分判定と同様の試験を実施し燃焼時間120秒までの状況を観察しても、ハードコート層12への着火が認められない。
難燃剤の含有量が過少であると、ハードコート層12に十分な耐燃焼性を付与できないため、好ましくない。また、難燃剤の含有量が過大であると、ハードコート層12の耐傷性ならびに耐候性、密着性に影響するため、好ましくない。
(耐傷粒子)
また、ハードコート層12を形成する硬化性樹脂組成物には、耐傷粒子が含有されていてもよい。耐傷粒子としては、無機系と有機系の粒子があり、無機系粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの粒子が挙げられる。該無機系粒子の形状としては、例えば、球状、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、ハードコート層12の硬度がより高くなり優れた耐傷性が得られる点で、球状が好ましい。耐傷粒子の粒子径としては特に制限されないが、ハードコート層12の硬度及び平滑性の観点から、0.1μm以上4μm以下、好ましくは0.5μm以上3μm以下が挙げられる。本実施形態において、粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径であるものとする。体積平均粒子径は、レーザー回折式、又はレーザー散乱式粒子径分布測定により測定することができる。
[厚さ]
ハードコート層12の厚さは、特に限定はないが、1μm以上20μm以下程度である。優れた耐候性とその持続性、更には透明性を得る観点から、好ましくは2μm以上20μm以下であり、より好ましくは2μm以上10μm以下であり、更に好ましくは2μm以上6μm以下である。また、ハードコート層12の厚さをより薄くすることにより硬化収縮の発生を低減することができ、また製造安定性や製造効率を向上させることができるため、特に2μm以上4μm以下とすることが好ましい。
[破断伸び率]
表面が未処理であり、厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)の一方の面にハードコート層形成用樹脂組成物を塗布し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、厚さ3μmの塗膜を形成した後、表面に塗膜が形成されたフィルムを、幅25mm、長さ150mmにカットして試験用シートとし、該試験用シートの伸びを、引張圧縮試験機を用い、温度150℃の温度環境下にて、引張速度100mm/分、チャック間間隔100mmの条件で、JIS K 7127に準拠した引張試験を行い、ハードコート層12が破断する際の伸び率が所定範囲内である。
破断伸び率は、150℃において10%以上50%以下であり、15%以上40%以下であることがより好ましく、20%以上30%以下であることが特に好ましい。高い透明性を有する樹脂として、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等があるが、特に有機ガラスの樹脂基体として好適に用いられる、ポリカーボネート樹脂は150℃近傍に軟化温度を有するため、ハードコート層12に含まれる難燃剤の含有量が適正であったとしても、150℃における破断伸び率が過小であると、ハードコート層積層体の燃焼試験時において樹脂基体20が熱によって軟化された際にハードコート層12が追従できず、ハードコート層12が樹脂基体20から剥離し、剥離したハードコート層12に着火が発生するため好ましくない。
また、破断伸び率が過小であると、樹脂基体20上に熱転写によってハードコート層12を転写する際、熱によって軟化された樹脂基体20にハードコート層12が追従できず、ハードコート層12の樹脂基体20からの剥離やハードコート層12にクラックが発生する可能性があるため、好ましくない。これに対し、破断伸び率が過大であると、ハードコート層12の硬度が不足する結果、ハードコート層12の耐傷性に影響するため、好ましくない。
〔プライマー層〕
プライマー層13は、バインダー樹脂及びブロッキング防止剤を含むプライマー層形成用樹脂組成物により構成され、ハードコート層12に対する応力緩和層として機能するとともに、ハードコート層12の密着性を向上させる役割を果たす層である。
[バインダー樹脂]
本実施形態に関するプライマー層13を構成するバインダー樹脂は、主剤と硬化剤とからなる2液硬化型樹脂を含有することが好ましい。
[主剤]
主剤としては、特に限定はなく、例えば、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、プチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのバインダー樹脂の中でも、密着性及び耐候性の観点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン樹脂の高分子鎖中に更にアクリル骨格を有するポリウレタン樹脂であることが、耐候性及び耐久性の観点からより好ましい。高分子鎖中にアクリル骨格を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、ウレタン成分とアクリル成分との共重合体であるウレタンアクリル共重合体、ポリウレタンを構成するポリオール成分又はポリイソシアネート成分としてヒドロキシル基又はイソシアネート基を有するアクリル樹脂があり、なかでもウレタンアクリル共重合体が好ましい。ウレタンアクリル共重合体は、例えば、1分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するアクリル樹脂にポリオール化合物及びイソシアネート化合物を反応させる方法(特開平6−100653号公報等参照)や、不飽和二重結合を両末端に有するウレタンプレポリマーにアクリルモノマーを反応させる方法(特開平10−1524号公報等参照)等によって得ることができる。
上記の高分子鎖中にアクリル骨格を有するポリウレタン樹脂のなかでも、高分子鎖中に、更にポリカーボネート骨格又はポリエステル骨格を有するものが、ハードコート層との密着性の観点から好ましい。高分子鎖中にアクリル骨格を有し、更にポリカーボネート骨格又はポリエステル骨格を有するポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ウレタン成分とアクリル成分の共重合体であるポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体、又は、ポリエステル系ウレタン成分とアクリル成分の共重合体であるポリエステル系ウレタンアクリル共重合体がより好ましく、より一層優れた耐候性を備えさせるという観点から、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を用いることが特に好ましい。これらのポリウレタンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、例えば、カーボネートジオールとジイソシアネートを反応させて得られたポリカーボネート系ウレタンと、アクリル骨格を有するジオールを共重合させることにより得ることができる。また、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、アクリル骨格を有するジオールに、カーボネートジオールとジイソシアネートを反応させることによっても得ることができる。ここで、上記アクリル骨格を有するジオールとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が1〜6程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、或いはこれらがラジカル重合したオリゴマー又はプレポリマー(重合度2以上10以下程度)に、2つの水酸基が導入されている化合物が挙げられる。
上記ジイソシアネートとしては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系インシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素転化キシリレンジイソシアネート等の脂環式系インシアネートが挙げられる。また、上記カーボネートジオールとしては、具体的には、下記一般式(1)に示される化合物(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の複素環基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の脂環基であり、mは、1以上10以下の整数である)等が挙げられる。
HO−[R−O−(C=O)−O]m−R−OH (1)
また、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、ラジカル重合する基が導入されているポリカーボネート系ポリウレタンプレポリマーを、アクリルモノマーとラジカル重合させることによって得ることもできる。前記アクリルモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸やアルキル基の炭素数が1以上6以下程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
上記ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体は、例えば、エステルジオールとジイソシアネートを反応させて得られたポリエステル系ウレタンと、アクリル骨格を有するジオールを共重合させることにより得ることができる。あるいは、アクリル骨格を有するジオールに、エステルジオールとジイソシアネートを反応させることによっても得ることができる。ここで、アクリル骨格を有するジオール及びジイソシアネートは、前記ポリカーポネート系ウレタンアクリル共重合体の製造に使用されるものと同様である。また、エステルジオールとしては、具体的には、下記一般式(2)に示される化合物(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の複素環基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の脂環基であり、mは、1以上10以下の整数である)等が挙げられる。
HO−[R−O−(C=O)]m−R−OH (2)
また、ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体は、ラジカル重合する基が導入されているポリエステル系ポリウレタンプレポリマーを、アクリルモノマーとラジカル重合させることによって得ることもできる。アクリルモノマーとしては、上記ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体の製造に使用されるものと同様である。
上記プライマー層に用いられるポリウレタンは、優れた耐候性を備えさせるために、アクリル成分の含有量が1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。ここで、ポリウレタンにおけるアクリル成分の含有量とは、ポリウレタンの総質量当たり、アクリル骨格を構成するモノマーが占める割合(質量%)である。より一層優れた耐候性を備えさせるという観点から、ポリウレタンにおけるアクリル成分の含有量として、好ましくは5質量%以上20質量%以下が挙げられる。ポリウレタンにおけるアクリル成分の含有量は、ポリウレタンのNMRスペクトルを測定し、全ピーク面積に対するアクリル成分に帰属されるピーク面積の割合を求めることによって算出される。
上記プライマー層において、上記ポリウレタンと他のバインダー樹脂を組み合わせて使用する場合、これらの混合比については、特に制限されないが、例えば、バインダー樹脂の総量100質量部当たり、上記ポリウレタンが50質量部以上、好ましくは70質量部以上、更に好ましくは85質量部以上となるように設定すればよい。
[硬化剤]
上記の主剤の硬化を促進する観点から、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネートなどのイソシアネート硬化剤が挙げられる。
硬化剤の使用量は、応力緩和性能や表面保護層と接着層との密着性を向上の観点から、主剤となる樹脂100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部以上30質量部以下がより好ましく、20質量部以上30質量部以下がさらに好ましい。
[各種添加剤]
本実施形態に関するプライマー層13は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の各種添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、赤外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。
[厚さ]
本実施形態に関するプライマー層13の厚さについては、特に制限されないが、例えば、0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.1μm以上5μm以下、更に好ましくは1μm以上4μm以下が挙げられる。
[破断伸び率]
ハードコート層12の破断伸び率と同様の手法で、プライマー層13の破断伸び率を測定した場合、プライマー層13の破断伸び率は、150℃において10%以上であり、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが特に好ましい。150℃における破断伸び率が過小であると、ハードコート層積層体の燃焼試験時において樹脂基体20が熱によって軟化された際にプライマー層13が追従できず、プライマー層13が樹脂基体20から剥離し、剥離したプライマー層13に着火が発生するため好ましくない。
これに対し、破断伸び率が過大であったとしても、プライマー層13は最表層に存在しないため、硬度が低下しても問題は発生しないため、密着性などその他物性に鑑みて、材料を選定できる。
〔接着層〕
本実施形態に関する接着層14は、ハードコート層12を樹脂基体20の表面に形成するために、ハードコート層12を樹脂基体20に接着するために設けられる層であり、このようなハードコート層12を樹脂基体20に接着するという機能を有する。また、プライマー層13に粒子が含まれており、プライマー層13の表面に突き出す、いわゆる頭出しが発生している場合は、表面の平坦性を向上させて、透明性の低下を抑制し、優れた光学的性能を確保するという機能をも有する。
本実施形態に関する接着層14に使用できる接着性の樹脂としては、樹脂基体20の材質や転写の際の転写温度や圧力に応じて定められるものであるが、一般に、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂などの熱融着樹脂が好ましく、樹脂基体20の材質や転写製品の用途に応じて、上記樹脂の中から1種又は2種以上の樹脂が選定される。プライマー層13に含まれる粒子との屈折率差が小さく透明性に優れ、透明性と耐候性向上の点から、上記熱融着樹脂としては、アクリル樹脂を単体で用いることが特に好ましい。
上記接着層14の厚さについては、プライマー層13よりも厚いことが好ましいが、上記ハードコート層12を含む転写層を樹脂基体20に接着するという機能と、優れた透明性を確保するという観点から、1μm以上7μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上6μm以下である。
また、本実施形態の転写用ハードコートフィルム10は、接着層14の上にポリエチレン樹脂などの樹脂からなるカバーフィルム(保護フィルム)を貼り付けて表面を保護しておくことも可能である。本実施形態の転写用ハードコートフィルム10は、カバーフィルムを設ける場合、このカバーフィルムを剥がし、接着層14を露出し、この接着層14の面を介して樹脂基体20に転写される。
[破断伸び率]
ハードコート層12の破断伸び率と同様の手法で、接着層14の破断伸び率を測定した場合、接着層14の破断伸び率は、150℃において10%以上であり、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが特に好ましい。150℃における破断伸び率が過小であると、ハードコート層積層体の燃焼試験時において樹脂基体20が熱によって軟化された際に接着層14が追従できず、接着層14が樹脂基体20から剥離し、剥離した接着層14に着火が発生するため好ましくない。
これに対し、破断伸び率が過大であったとしても、接着層14は最表層に存在しないため、硬度が低下しても問題は発生しないため、密着性などその他物性に鑑みて、材料を選定できる。
[着色層]
本発明の転写用ハードコートフィルムでは必須ではないが、ハードコート層積層体の意匠性を向上させるため、必要に応じて転写用ハードコートフィルムの一部又は全面に、更に着色層(加飾層)を設けてもよい。着色層の柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる柄や絵柄等を設けることもできる。
着色層は、例えばプライマー層と接着層との間に積層されるが、これに限定されず、接着性を有する材料の場合には接着層の上に形成されていてもよい。
着色層の形成方法は、例えば、プライマー層13の上に、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適当な色の顔料又は染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成することができる。印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷法が挙げられる。着色層の厚みは、意匠性の観点から5μm以上40μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。
[破断伸び率]
ハードコート層12の破断伸び率と同様の手法で、着色層の破断伸び率を測定した場合、着色層の破断伸び率は、150℃において10%以上であり、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが特に好ましい。150℃における破断伸び率が過小であると、ハードコート層積層体の燃焼試験時において樹脂基体20が熱によって軟化された際に着色層が追従できず、着色層が樹脂基体20から剥離し、剥離した着色層に着火が発生するため好ましくない。
<転写用ハードコートフィルムの製造方法>
本実施形態に関する転写用ハードコートフィルム10の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、少なくとも以下の工程を順に有する転写用ハードコートフィルムの製造方法を挙げることができる。
a)基材フィルム11上にハードコート層12を形成する工程
b)ハードコート層12上にプライマー層形成用組成物を用いてプライマー層13を形成する工程
c)プライマー層13上に接着層形成用組成物を用いて接着層14を形成する工程
以下各工程について説明する。
〔a)基材フィルム上に、ハードコート層を形成する工程〕
基材フィルム11上に、ハードコート層12を含む転写層形成する方法としては、ハードコート層形成用樹脂組成物を、硬化後の厚さが通常1μm以上20μm以下程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、硬化して行う方法がある。樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗工後、熱風乾燥機などにより塗布層を予め加熱乾燥してから、さらに加熱処理、あるいは電離放射線を照射することが好ましい。
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70kV以上300kV以下、照射線量は5Mrad以上10Mrad以下程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
〔b)プライマー層形成用組成物を用いてプライマー層を形成する工程〕
次に、ハードコート層12上プライマー層形成用組成物を用いてプライマー層13を形成する。プライマー層13は、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの塗布方式、或いは転写コーティング法により形成することができる。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層13の塗膜を形成し、その後にハードコート層12の表面に被覆する方法である。好ましくはグラビアコートにより行うのがよい。
また、本実施形態に関するプライマー層13を形成する際に、ハードコート層12とプライマー層13との間の密着性を向上させるために、ハードコート層12の硬化を半硬化の状態にとどめ、その後、プライマー層13形成用の樹脂組成物を塗布した後にハードコート層12の硬化を完全硬化することにより、ハードコート層12とプライマー層13との間の密着性を高めることもできる。
プライマー層13は、未硬化の状態を維持できる範囲で、表面の乾燥を行ってもよい。ここで、未硬化の状態とは、プライマー層中に未反応の硬化剤が残存している状態であり、その残存率が多い程、プライマー層13の透明性低下を防止する観点から好ましい。硬化剤のイソシアネート部分に該当する赤外スペクトル2260cm−1のピーク強度が、プライマー層塗布直後のピーク強度を基準として50%以上である状態が好ましい。
〔c)接着層形成用組成物を用いて接着層を形成する工程〕
次に、プライマー層13上に接着層形成用組成物を用いて接着層14を形成する。接着層14を形成する方法は、上記b)と同様の方法を用いることができ、特に限定されない。
〔d)プライマー層を硬化する工程〕
任意ではあるが、プライマー層13を硬化させてもよい。ここでの硬化とは、プライマー層13に残存している硬化剤を主剤と完全に反応させてしまう工程である。具体的には、従来公知の方法で硬化反応を促進させればよく、硬化剤の種類にもよるが、典型的には、40℃以上60℃以下の温度で、24時間以上72時間以下置くとよい。
<ハードコート層積層体、基材フィルム付ハードコート層積層体>
ハードコート層積層体とは、樹脂基体20上に、接着層14とプライマー層13とハードコート層12と必要に応じて基材フィルム11とが、この順に配置されて積層された積層体である。樹脂基体20にハードコート層12を含む転写層が積層されることで、樹脂基体20に十分な耐傷性を付与することができる(図2参照)。「樹脂基体上」とは、樹脂基体20上に直接に転写層が積層される場合はもちろん、印刷層などを介して間接的に積層される場合も含む意味である。
〔樹脂基体〕
樹脂基体20を構成する樹脂は、用途に応じて適宜選択できる。中でも、本実施形態の転写用ハードコートフィルムは、耐傷性、耐侯性、透明性、耐燃焼性のいずれにも優れ、熱転写によるハードコート層12の剥離を抑えられることから、樹脂基体20は、有機ガラスであることが好ましく、車両用の有機ガラスであることがより好ましく、鉄道車両用の有機ガラスであることが特に好ましい。
樹脂基体20が有機ガラスである場合、樹脂基体20を構成する樹脂は、高い透明性を有することが好ましい。高い透明性を有する樹脂として、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、耐衝撃性に優れることから、樹脂基体20を構成する樹脂は、ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
樹脂基体20の厚さは、通常1mm以上20mm以下であることが好ましく、2mm以上10mm以下であることがより好ましい。樹脂基体20が薄すぎると、面剛性などの実用的な強度が不十分となり、樹脂基体20が厚すぎると、樹脂基体20の加工性に影響する。
樹脂基体20の形状は、有機ガラスの用途に応じて適宜選択すればよく、板状のものには限られない。
〔燃焼性規格〕
本実施形態のハードコート層積層体は、極めて高い耐燃焼性を有する。具体的に、社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用材料の燃焼規格に基づいた区分判定に準拠した燃焼性規格が、極難燃性以上である。
[燃焼試験方法]
図3は、社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用材料の燃焼試験方法を示す模式図である。
B5判の供試材(182mm×257mm)を45°傾斜に保持し、燃料容器の底の中心が、供試材の下面(燃焼面)中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台にのせ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置する(燃焼時間約90秒)。
燃焼判定は、アルコールの燃焼中と燃焼後とに分けて、燃焼中は供試材への着火、着炎、発煙状態、炎の状態等を観察し、燃焼後は、残炎、残じん、炭化、変形状態を調査する。評価基準は、下表のとおりである。
Figure 0006728883
耐燃焼性をさらに確認するため、純エチルアルコールの量を0.7ccに増量し、同様の試験を実施し燃焼時間120秒までの状況を観察する、追加試験を実施することが好ましい。
〔ハードコート層積層体の製造方法〕
ハードコート層積層体の製造方法は、特に制限されるものではないが、押出成形や射出成形により樹脂基体20を得た後、樹脂基体20の表面に本実施形態の転写用ハードコートフィルム10の接着層14と対向するようにニップロール等によって、加熱加圧することで積層し(熱転写方法)、基材フィルム付ハードコート層積層体を製造することができる。また、その後、基材フィルム11を剥離することでハードコート層積層体を製造することができる。なお、樹脂基体20の両面に耐傷性を付与する観点から樹脂基体20の両面から転写用ハードコートフィルム10をそれぞれ用いて、樹脂基体20の両面にハードコート層12を含む転写層を積層させてもよい。
以下、実施例、比較例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<転写用ハードコートフィルムの製造>
基材フィルムとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)からなるフィルム(製品名:A4100,東洋紡株式会社製)を用い、該基材フィルムの一方の面に、表2及び表3に示すハードコート層形成用の硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、該未硬化樹脂層を架橋硬化させることにより、ハードコート層(層厚:3μm)を形成した。
Figure 0006728883
(単位は、質量部である。)
Figure 0006728883
(単位は、質量部である。)
表2及び表3における材料は、以下の通りである。
(A)硬化性樹脂
(A1)6官能以上の硬化性樹脂
6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量(Mw):約1,000)
多官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量(Mw):22,000)
ペンタエリスリトール多官能アクリレート
(A2)3官能以下の硬化性樹脂
2官能カプロタクトン系ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量(Mw):数千)
3官能ポリカーボネートジオールウレタンアクリレート
(B)難燃剤
ハロゲン系リン酸エステル難燃剤(製品名:CR−570,大八化学社製)
(C)紫外線吸収剤
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(製品名:Tinuvin479,BASFジャパン社製)
(D)光安定剤
反応性官能基を有する光安定剤(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート,製品名:サノールLS−3410,日本乳化剤株式会社製)
(E)シリコーン化合物
非反応性シリコーン化合物(ポリエーテル変性シリコーンオイル)
(F)粒子
耐傷フィラー(シリカ粒子,平均粒子径:2μm)
次いで、ハードコート層の面にコロナ放電処理をした上に、下記プライマー層形成用樹脂組成物を塗布して、ブロッキングしない程度に表面を乾燥させてプライマー層(厚さ:3μm)を形成した。

(プライマー層形成用樹脂組成物)
・ ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体*1:100質量部
・ ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*2:17質量部
・ ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*3:13質量部
・ ヒンダードアミン系光安定剤*4:8質量部
・ ブロッキング防止剤*5:9質量部
・ 硬化剤(ヘキサンメチレンジイソシアネート):25質量部
*1,ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるウレタン成分とアクリル成分の質量比は70/30である。
*2,チヌビン400(商品名)、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
*3,チヌビン479(商品名)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
*4,チヌビン123(商品名)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)、BASFジャパン株式会社製
*5,シリカ粒子、平均粒径:3μm
その後、プライマー層上に、アクリル系樹脂(重量平均分子量(Mw):7.6×10)を用いて接着層(厚さ:5μm)を積層させることで、実施例及び比較例の転写用ハードコートフィルムを得た。
<ハードコート層積層体の製造>
厚み5mmのポリカーボネート板を、150℃のホットプレートを用いて加熱した。実施例及び比較例の転写用ハードコートフィルムを用いて、加熱したポリカーボネート板の片面に転写フィルムを接着層がポリカーボネート板側になるように配置した上で、230℃の熱ラミロールにて3回加熱ラミネート加工した。その後、基材フィルムを剥離することにより、ポリカーボネート板、接着層、プライマー層、及びハードコート層がこの順で積層されている実施例及び比較例のハードコート層積層体を得た。
<参考例>
〔参考例1〕樹脂基体のみ
厚み5mmのポリカーボネート板そのものを参考例1とした。
〔参考例2〕樹脂基体+接着層+プライマー層
片面に離形層を設けたPETフィルムの離形層側の面に、上記プライマー層形成用樹脂組成物を塗布して、ブロッキングしない程度に表面を乾燥させてプライマー層(厚さ:3μm)を形成した。その後、プライマー層上に、上記アクリル系樹脂(重量平均分子量(Mw):7.6×10)を用いて接着層(厚さ:4μm)を積層させることで、参考例2の転写用フィルムを得た。
続いて、参考例2の転写用フィルムを用いて、実施例と同様の手法にて、加熱したポリカーボネート板の片面に転写層を転写し、その後、基材フィルムを剥離することにより、ポリカーボネート板、接着層、及びプライマー層がこの順で積層されている参考例2の積層体を得た。
〔参考例3〕樹脂基体+接着層
片面に離形層を設けたPETフィルムの離形層側の面に、上記アクリル系樹脂(重量平均分子量(Mw):7.6×10)を用いて接着層(厚さ:4μm)を積層させることで、参考例3の転写用フィルムを得た。
続いて、参考例3の転写用フィルムを用いて、実施例と同様の手法にて、加熱したポリカーボネート板の片面に転写層を転写し、その後、基材フィルムを剥離することにより、ポリカーボネート板、及び接着層がこの順で積層されている参考例3の積層体を得た。
〔参考例4〕プライマー層の単層膜
片面に離形層を設けたPETフィルムの離形層側の面に、上記プライマー層形成用樹脂組成物を塗布して、ブロッキングしない程度に表面を乾燥させてプライマー層(厚さ:10μm)を形成した。その後、基材フィルムから、プライマー層を剥離することにより、厚さ10μmのプライマー層の単層膜を作製した。
〔参考例5〕接着層の単層膜
片面に離形層を設けたPETフィルムの離形層側の面に、上記接着層形成用樹脂組成物を塗布して、ブロッキングしない程度に表面を乾燥させてプライマー層(厚さ:10μm)を形成した。その後、基材フィルムから、接着層を剥離することにより、厚さ10μmの接着層の単層膜を作製した。
なお、ハードコート層の単層膜を形成することも試みたが、膜が脆く、単層膜化することは、できなかった。
<評価>
実施例、比較例及び参考例の積層体について、常温及び150℃での伸び率、耐燃焼性、透明性、耐傷性、及び耐侯性を評価した。
〔常温及び150℃での伸び率〕
表面が未処理であり、厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)の一方の面に、実施例及び比較例のハードコート層形成用樹脂組成物(参考例2ではプライマー層形成用樹脂組成物、参考例3では接着層形成用樹脂組成物)を塗布し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、厚さ3μmの塗膜を形成した。そして、表面に塗膜が形成されたフィルムを、幅25mm、長さ150mmにカットして試験用シートとし、該試験用シートの伸びを、引張圧縮試験機を用い、常温又は温度150℃の温度環境下にて、引張速度100mm/分、チャック間間隔100mmの条件で、JIS K 7127に準拠した引張試験を行い、ハードコート層が破断する際の伸び率を測定した。ハードコート層の破断は、目視によるクラック発生、及び伸度−応力曲線の変曲点により判断した。結果を表4及び表5に示す。
〔耐燃焼性〕
実施例及び比較例のハードコート積層体について、社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用材料の燃焼試験方法にしたがって、耐燃焼性を評価した(燃焼時間:約90秒)。評価が不燃性となったものについては、耐燃焼性をさらに確認するため、純エチルアルコールの量を0.7ccに増量し、同様の試験を実施し燃焼時間120秒までの状況を観察する、追加試験を実施した。結果を表4及び表5に示す。
燃焼試験時間については、試験開始から、120秒経過しても着火しない場合(不燃性、かつ、追加試験でも着火しない場合)を「AA」とし、試験開始から、90秒以上120秒未満経過したときに着火する場合(不燃性であるが、追加試験では着火した場合)を「A」とした。
試験開始から、60秒以上90秒未満経過したときに着火する場合を「B」、60秒未満で着火する場合を「C」とした。
炭化部については、着火、着炎せず、炭化が発生しない場合を「A」とし、炭化部が30mm未満であるする場合を「B」とした。「B」のサンプルは、上記協会が定める燃焼試験方法において、極難燃性に相当する。炭化部が30mm以上である場合を「C」とした。「C」のサンプルは、上記協会が定める燃焼試験方法において、難燃性に相当する。
〔透明性〕
ヘイズメータ(日本電色工業製NDH−2000)を用いて、JIS K7136に記載の方法に従ってヘイズ値を測定した。結果を表4及び表5に示す。
〔耐傷性〕
学振型摩耗試験機を用いて、前記ハードコート層の表面に対し、スチールウール(製品名:ボンスター#0000(商品名),日本スチールウール株式会社製)で、荷重1000g、1000往復の学振摩耗試験を行った。そして、試験前に対する試験後の曇価(ヘイズ値)の増加量を測定した。曇価(ヘイズ値)の増加量が2%未満である場合を「AA」とし、曇価(ヘイズ値)の増加量が2%以上5%未満である場合を「A」とした。曇価(ヘイズ値)の増加量が5%以上10%未満である場合を「B」とし、曇価(ヘイズ値)の増加量が10%以上である場合を「C」とした。結果を表4及び表5に示す。
〔耐候性〕
サンシャインウェザーメーター(WEL−300型,スガ試験株式会社製)を用いて、JIS K 7350−4(2008)に記載の方法でデイライトフィルタ(屋外)仕様、降雨プロセスありの条件で、2000時間試験を実施した。試験後のサンプルについて、外観(着色、クラックの有無)を評価するとともに、下記密着試験を行った。外観が良好であり、密着試験で剥離が認められなかった場合を「良」とし、外観及び密着試験のいずれかで不良であった場合を「不良」とした。結果を表4及び表5に示す。
Figure 0006728883
(「−」は、現時点では測定していないことを示す。)
Figure 0006728883
(「−」は、現時点では測定していないことを示す。)
ハードコート層に含まれる難燃剤の含有量が20質量部以上35質量部以下であり、ハードコート層の150℃での伸び率が10%以上50%以下であると、耐燃焼性、透明性、耐傷性、耐侯性のいずれにも優れ、熱転写によるハードコート層の剥離も抑えられることが分かる(実施例1〜11)。
中でも、難燃剤の含有量が25質量部以上であると、社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用材料の燃焼規格に基づく区分判定において、不燃性の評価が得られる(実施例2〜11)。そして、難燃剤の含有量が30質量部以上であり、ハードコート層の150℃での伸び率が20%以上30%以下であると、耐燃焼性の追加試験を行っても、ハードコート層への着火が認められない(実施例5〜9)。
また、ハードコート層の150℃での伸び率が40%以下であると、より耐傷性に優れ(実施例1〜10)、ハードコート層の150℃での伸び率が21%以下であると、さらに耐傷性に優れる(実施例1〜3、5、6及び8)。
これに対し、ハードコート層に含まれる難燃剤の含有量が過少であると、十分な耐燃焼性が得られない(比較例1及び2)。
また、ハードコート層に含まれる難燃剤の含有量が過大であると、十分な耐傷性および耐候性が得られない(比較例3)。
また、ハードコート層の150℃での伸び率が小さすぎると、ハードコート層に含まれる難燃剤の含有量が適正であったとしても、十分な耐燃焼性が得られない(比較例4及び5)。樹脂基体上に熱転写によってハードコート層を転写する際、熱によって軟化された樹脂基体にハードコート層が追従できず、ハードコート層が樹脂基体から剥離し得る。そして、剥離したハードコート層に着火するため、十分な耐燃焼性が得られないと推測される。
また、ハードコート層の150℃での伸び率が大きすぎると、十分な耐傷性が得られない(比較例6)。
参考として、ハードコート層を設けず、樹脂基体単体では、十分な耐傷性及び耐候性が得られない(参考例1)。
また、樹脂基体に接着層、プライマー層が積層された積層体(参考例2)、樹脂基体に接着層が積層された積層体(参考例3)は、いずれも良好な耐燃性を有することから、転写フィルムの耐燃性は、ハードコート層の耐燃性に依存するといえる。
また、プライマー層の単層膜(参考例4)、接着層の単層膜(参考例5)では、アルコールの炎に着炎させると、瞬時に着火する。このことから、樹脂基体と一体となった状態では、着火はしない材料においても、薄膜状態では、着火するといえる。
10 転写用ハードコートフィルム
11 基材フィルム
12 ハードコート層
13 プライマー層
14 接着層
20 樹脂基体

Claims (5)

  1. 基材フィルム上に、少なくとも、ハードコート層とプライマー層と接着層とがこの順に配置されており、
    前記ハードコート層は、硬化性樹脂100質量部と、難燃剤20質量部以上35質量部以下とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、
    前記難燃剤は、ハロゲン型化合物、リン系化合物、又は、シリコーン系化合物のいずれかであって、
    前記ハードコート層は、以下の測定方法により、JIS K 7127に準拠して測定した150℃での伸び率が10%以上50%以下である、ポリカーボネート樹脂基体用の転写用ハードコートフィルム。
    (150℃での伸び率の測定方法)
    表面が未処理であり、厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)の一方の面にハードコート層形成用樹脂組成物を塗布し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、厚さ3μmの塗膜を形成する。そして、表面に塗膜が形成されたフィルムを、幅25mm、長さ150mmにカットして試験用シートとし、該試験用シートの伸びを、引張圧縮試験機を用い、温度150℃の温度環境下にて、引張速度100mm/分、チャック間間隔100mmの条件で、JIS K 7127に準拠した引張試験を行い、ハードコート層が破断する際の伸び率を測定する。ハードコート層の破断は、目視によるクラック発生、及び伸度−応力曲線の変曲点により判断する。
  2. 前記硬化性樹脂が電離放射線硬化性樹脂である、請求項1に記載の転写用ハードコートフィルム。
  3. ポリカーボネート樹脂基体上に、少なくとも、接着層とプライマー層とハードコート層がこの順に配置されており、
    前記ハードコート層は、硬化性樹脂100質量部と、難燃剤20質量部以上35質量部以下とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、
    前記難燃剤は、ハロゲン型化合物、リン系化合物、又は、シリコーン系化合物のいずれかであって、
    前記ハードコート層は、以下の測定方法により測定した150℃での伸び率が10%以上50%以下である、ハードコート層積層体。
    (150℃での伸び率の測定方法)
    表面が未処理であり、厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)の一方の面にハードコート層形成用樹脂組成物を塗布し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、厚さ3μmの塗膜を形成する。そして、表面に塗膜が形成されたフィルムを、幅25mm、長さ150mmにカットして試験用シートとし、該試験用シートの伸びを、引張圧縮試験機を用い、温度150℃の温度環境下にて、引張速度100mm/分、チャック間間隔100mmの条件で、JIS K 7127に準拠した引張試験を行い、ハードコート層が破断する際の伸び率を測定する。ハードコート層の破断は、目視によるクラック発生、及び伸度−応力曲線の変曲点により判断する。
  4. 社団法人日本鉄道車両機械技術協会が定める鉄道車両用材料の燃焼規格に基づく区分判定が、不燃性又は極難燃性である、請求項3に記載のハードコート層積層体。
  5. 少なくとも以下の工程を順に有するポリカーボネート樹脂基体用の転写用ハードコートフィルムの製造方法。
    a)基材フィルム上にハードコート層を形成する工程であって、前記ハードコート層は、硬化性樹脂100質量部と、難燃剤20質量部以上35質量部以下と、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、前記難燃剤は、ハロゲン型化合物、リン系化合物、又は、シリコーン系化合物のいずれかであって、前記ハードコート層は、以下の測定方法により測定した150℃での伸び率が10%以上50%以下である。
    b)前記ハードコート層上にプライマー層形成用組成物を用いてプライマー層を形成する工程。
    c)前記プライマー層上に接着層形成用組成物を用いて接着層を形成する工程。
    (150℃での伸び率の測定方法)
    表面が未処理であり、厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)の一方の面にハードコート層形成用樹脂組成物を塗布し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、厚さ3μmの塗膜を形成する。そして、表面に塗膜が形成されたフィルムを、幅25mm、長さ150mmにカットして試験用シートとし、該試験用シートの伸びを、引張圧縮試験機を用い、温度150℃の温度環境下にて、引張速度100mm/分、チャック間間隔100mmの条件で、JIS K 7127に準拠した引張試験を行い、ハードコート層が破断する際の伸び率を測定する。ハードコート層の破断は、目視によるクラック発生、及び伸度−応力曲線の変曲点により判断する。
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