以下、本発明に係る透明賦形フィルムの製造方法について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[透明賦形フィルムの製造方法]
本発明に係る透明賦形フィルム10の製造方法は、図1及び図2に示すように、プラスチック基材1と、プラスチック基材1上に設けられた賦形層2と、賦形層2上に設けられた無機層3とを有する透明賦形フィルム10を製造するための方法である。
そして、その製造方法は、図3に示すように、プラスチック基材1と賦形版24と電子線硬化性樹脂組成物6とを準備する工程(準備工程)と、プラスチック基材1と賦形版24との間に電子線硬化性樹脂組成物6を設ける工程(組成物設置工程)と、電子線硬化性樹脂組成物6に電子線を照射して賦形層2を形成する工程(賦形層形成工程)と、プラスチック基材1と賦形層2とを賦形版24から剥離する工程(剥離工程)と、賦形層2上にイオンプレーティング法又はプラズマ化学的気相成長法で親水性を有する無機層3を形成する工程(無機層形成工程)とを有している。この製造方法において、電子線硬化性樹脂組成物6は、ウレタンアクリレートと紫外線吸収剤とを含有し、ウレタンアクリレートは、ガラス転移温度が17℃以上又はガラス転移温度を示さず、60℃での粘度が2000mPa・s以上、24000mPa・s以下であることに特徴がある。
こうした透明賦形フィルム10の製造方法によれば、賦形性が良く、耐侯性と自浄性を示すことができる透明賦形フィルムを製造することができる。より詳しくは、電子線硬化性樹脂組成物6がウレタンアクリレートと紫外線吸収剤とを含有するので、その電子線硬化性樹脂組成物6で形成された賦形層2は紫外線に対して良好な耐侯性を示すことができる。また、電子線硬化性樹脂組成物6は、60℃での粘度が2000mPa・s以上、24000mPa・s以下のウレタンアクリレートを含有するので、賦形層2を形状精度良く形成することができる。また、電子線硬化性樹脂組成物6はガラス転移温度が17℃以上又はガラス転移温度を示さないウレタンアクリレートを含有するので、形成された賦形層2は耐熱性が増す。その結果、自浄性を持つ親水性を有した無機層3をイオンプレーティング法又はプラズマ化学的気相成長法で成膜する際に、例えばプラズマ放電時に生じる熱によって賦形層2が白化するのを防ぐことができる。
以下、本発明に係る透明賦形フィルムの製造方法の各工程について詳細に説明する。
<準備工程>
準備工程は、プラスチック基材1と、賦形版24と、電子線硬化性樹脂組成物6とを準備する工程である。なお、電子線硬化性樹脂組成物6については、下記の組成物設置工程の説明欄で詳しく説明する。
(プラスチック基材)
プラスチック基材1は、透明性を有し、その上に賦形層2を形成できるものであれば特に限定されない。実使用の見地からは、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィンポリマー、及びトリアセチルセルロース(TAC)等からなるプラスチック基材1を挙げることができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの共重合体、及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等を挙げることができる。ポリエステル系樹脂のうちでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びこれらの共重合体が好ましく、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。シクロオレフィンポリマーとしては、ノルボルネン系ポリマー、シクロペンテン系ポリマー、シクロブテン系ポリマー等を挙げることができ、中でも、ノルボルネン系ポリマーを好ましく挙げることができる。
プラスチック基材1の材質としてポリエステル系樹脂を適用する場合、その全てがポリエステル系樹脂からなるプラスチック基材1であってもよいし、賦形層2が形成される側の面S1(図1及び図2参照)に少なくともポリエステル系樹脂層が形成されている積層型のプラスチック基材1であってもよい。この積層型のプラスチック基材1では、賦形層2が形成されるポリエステル系樹脂層以外の層は、ポリエステル系樹脂層でなくてもよい。ポリエステル系樹脂層以外の層としては、耐熱性、熱膨張及び光透過性等を考慮した各種の樹脂層を選定できる。
プラスチック基材1の厚さは特に限定されないが、10μm以上、500μm以下の程度であることが好ましい。プラスチック基材1は、その厚さによってフィルム状又はシート状と呼ばれることがある。また、プラスチック基材1は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。全光線透過率を80%以上とすることにより、透明性が要求される用途に透明賦形フィルム10を好ましく使用することができる。
こうしたプラスチック基材1は、市販品を購入することにより準備してもよいし、自前で製造することにより準備してもよい。プラスチック基材1の製造方法としては、従来公知の製造方法を適用でき、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等を挙げることができる。プラスチック基材1の表面は、必要に応じて、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、及び易接着処理等から選ばれるいずれか1又は2以上の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。
(プライマー層)
プライマー層は、賦形層2が設けられる側のプラスチック基材1上に、必要に応じて賦形層2の下地層として設けられていてもよい。プライマー層は、必須の構成ではないが、紫外線吸収剤等の耐候剤を含有させて透明賦形フィルム10の耐候性を向上させたり、プラスチック基材1と賦形層2との密着性を向上させたりするために好ましく設けられる。
プライマー層を形成するためのプライマー層形成用樹脂組成物としては、上記した目的を達成できるプライマー層を形成できる樹脂を含むものであれば特に限定されない。中でも、賦形層2との密着性の観点から、ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂を含むことが好ましい。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂としては、後述する賦形層2の形成材料として使用される各種モノマー、オリゴマー及びプレポリマーと同様の樹脂を挙げることができ、さらに、こうしたモノマー、オリゴマー及びプレポリマーが重合したポリマーを挙げることができる。中でも、ウレタンアクリレート系樹脂は、賦形層2との密着性及び耐候性の点で好ましく用いることができる。ウレタンアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体樹脂を好ましく挙げることができる。
プライマー層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂の種類によっては、プライマー層形成用樹脂に硬化剤等を併せて含有させることが望ましい。例えばウレタン系の樹脂とイソシアネート系の硬化剤とを用いることにより、ウレタン結合を生じさせてプライマー層形成用樹脂組成物を硬化させることができる。一例として、例えばポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体樹脂をプライマー層形成用樹脂組成物として用いる場合は、例えばヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系の硬化剤を併せて用いて硬化反応させることが好ましい。
プライマー層形成用樹脂組成物には、賦形層2に含まれるのと同様の紫外線吸収剤が耐候剤として含まれていることが好ましい。また、反応性耐候剤や光安定剤等の他の耐候剤が必要に応じて含まれていてもよい。耐候剤が含まれているプライマー層形成用樹脂組成物で形成されたプライマー層は、透明賦形フィルム10が紫外線に曝される環境下にある場合であっても、プライマー層の光酸化劣化を抑制できる。さらに、賦形層2よりも紫外線が照射される側にプライマー層が設けられている場合には、そのプライマー層が紫外線吸収層として機能して紫外線を吸収するので、賦形層2に紫外線が到達するのを減少させることができる。その結果、紫外線によって賦形層2が光酸化劣化するのをプライマー層の存在によって抑制することができ、透明賦形フィルム10に良好な耐候性を付与することができる。これらの紫外線吸収剤、反応性耐候剤、光安定剤等の耐候剤について、さらに光酸化劣化については、後述する賦形層2の説明欄で説明するのと同様である。
紫外線吸収剤としては、例えばトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等を挙げることができ、中でもトリアジン系紫外線吸収剤を好ましく挙げることができる。また、分子内にアクリロイル基等の反応性官能基を有する紫外線吸収剤を用いることもできる。反応性官能基を有する紫外線吸収剤としては、例えば、(2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン)メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。
プライマー層形成用樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の紫外線吸収能力に応じて任意に設定されるが、プライマー層形成用樹脂組成物を構成する樹脂に対して0.1質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。プライマー層形成用樹脂組成物がこの範囲の紫外線吸収剤を含有することにより、形成されたプライマー層に紫外線がとどく環境下であっても、透明賦形フィルム10に良好な耐候性を付与することができる。紫外線吸収剤の含有量は、0.1質量%以上、15質量%以下であることがより好ましい。なお、プライマー層形成用樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤を2種以上組み合わせた場合の含有量は、それらの合計の含有量である。
プライマー層形成用樹脂組成物には、他の耐候剤として光安定剤が含まれていてもよい。光安定剤は、例えばプライマー層形成用樹脂組成物で形成されたプライマー層に紫外線があたって発生したラジカルを捕捉するように作用するので、上記した紫外線吸収剤と併せてプライマー層形成用樹脂組成物に含有させることが好ましい。光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、特に反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤が好ましく用いられる。具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート等を挙げることができる。
プライマー層形成用樹脂組成物に含まれる光安定剤の含有量は、光安定剤のラジカル捕捉能力に応じて任意に設定されるが、プライマー層形成用樹脂組成物を構成する樹脂に対して、0.1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。プライマー層形成用樹脂組成物がこの範囲の光安定剤を含有することにより、その樹脂組成物で形成されたプライマー層に紫外線がとどく環境下であっても、透明賦形フィルム10に良好な耐候性を付与することができる。なお、プライマー層形成用樹脂組成物に含まれる光安定剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光安定剤を2種以上組み合わせた場合の含有量は、それらの合計の含有量である。
反応性官能基を有する紫外線吸収剤や反応性官能基を有する光安定剤は、その反応性官能基がプライマー層を構成する樹脂成分に結合する。そのため、反応性官能基を有する紫外線吸収剤や光安定剤が、形成された後のプライマー層の表面にブリードアウトするのを抑制でき、ブリードアウトによりプライマー層中の紫外線吸収剤や光安定剤が経時的に減少することを防止できる。さらに、プライマー層と賦形層2との間に紫外線吸収剤や光安定剤が析出してプライマー層と賦形層2との密着性が低下するのを防ぐことができる。
プライマー層の形成方法としては、プライマー層形成用樹脂組成物をプラスチック基材1上に従来公知の方法で塗布した後、塗布されたプライマー層形成用樹脂組成物を硬化させて形成できる。こうした塗布方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスロールコート法、リバースロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、フローコート法、ダイコート法、スクリーン印刷、グラビア印刷等の各種印刷法等を挙げることができる。プライマー層の厚さは、特に限定されず、通常、1μm以上、10μm以下である。
(賦形版)
賦形版24は、種々の凹凸形状を有し、賦形層2に目的とする賦形形状を付与できるものであれば特に限定されない。こうした賦形版24は、通常、板状の版又は円筒状の版を挙げることができる。賦形版24に設けられる凹凸形状は特に限定されず、例えば、上記した透明賦形フィルム10の賦形形状の反転形状になっていればよい。
賦形版24に設けられた形状は、例えば図2(A)〜(C)に示すように、賦形層2に形成されることになる賦形形状の光学特性を考慮して適宜設計される。賦形層2に設けられることになる賦形形状としては、例えば図2(A)に示すプリズム5A、図2(B)に示すフレネルレンズ5B、又は、図2(C)に示すレンチキュラーレンズ5C等を挙げることができる。
賦形層2に図2(A)に示すプリズム5Aが形成される場合、そのプリズム5Aとしては、主切断面(稜線と直交する断面)の形状が三角形又は略三角形で、頂部に稜線を有する単位プリズム4を、その稜線と直交する方向に多数平行に配列してなるものを挙げることができる。この単位プリズム4の断面形状は三角形又は略三角形に限定されず、四角形、五角形、六角形又は八角形等の多角形であってもよいし、扇形や三角形の頂点近傍に曲率を設けた形状等のように直線と曲線との組合せ形状等であってもよい。単位プリズム4の頂部の角度は特に限定されるものではなく、例えば、80°以上、110°以下の程度である。また、配列された単位プリズム4のピッチも特に限定されるものではなく、例えば、10μm以上、300μm以下の程度である。
賦形層2に図2(B)に示すフレネルレンズ5Bが形成される場合、そのフレネルレンズ5Bとしては、凸レンズを分割して平面的に配置した一般的なフレネルレンズ形状を挙げることができる。なお、フレネルレンズ5Bのフレネル中心は、透明賦形フィルム10Bの面内にあってもよいし面外にあってもよい。
賦形層2に図2(C)に示すレンチキュラーレンズ5Cが形成される場合、そのレンチキュラーレンズ5Cとしては、半円筒形状(「かまぼこ形状」ともいう。)であってもよいし、半球レンズ形状(「蠅の目形状」又は「モスアイ形状」ともいう。)であってもよい。半円筒形状のレンチキュラーレンズ5Cは、かまぼこ形状が1次元方向に配列した1次元配列(線型配列)構造であり、半球レンズ形状のレンチキュラーレンズ5Cは、半球レンズ形状が2次元方向(縦横方向)に配列した2次元配列構造である。なお、半円筒形状の代わりに多面筒形状であってもよいし、半球レンズ形状の代わりに多面体レンズ形状であってもよい。
<組成物設置工程>
組成物設置工程は、プラスチック基材1と賦形版24との間に電子線硬化性樹脂組成物6を設ける工程である。この工程は、図3に示すように、電子線硬化性樹脂組成物6を賦形版24に直接接触させるとともに、その電子線硬化性樹脂組成物6を介してプラスチック基材1と賦形版24とを対向させる工程であり、そうした工程であれば特に限定されない。
例えば、図3に示すように、電子線硬化性樹脂組成物6をTダイ型ノズル21から成型ドラム23の表面の賦形版24に塗布し、その後、塗布された電子線硬化性樹脂組成物6にプラスチック基材1を押し当て、押圧ロール22で押圧する。こうすることで、プラスチック基材1と賦形版24との間に電子線硬化性樹脂組成物6を設けることができる。また、図示しないが、プラスチック基材1上に電子線硬化性樹脂組成物6を塗布し、その後、塗布された電子線硬化性樹脂組成物6に賦形版24を押圧してもよいし、プラスチック基材1と賦形版24とを対向するように配置し、その間に電子線硬化性樹脂組成物6を供給してもよい。また、電子線硬化性樹脂組成物6にプラスチック基材1又は賦形版24を押圧しない手段を適用してもよい。例えば、プラスチック基材1と、賦形版24と、電子線硬化性樹脂組成物6とを、任意に積載してもよいし、積置してもよいし、貼り合わせてもよい。
電子線硬化性樹脂組成物6を賦形版24又はプラスチック基材1上に塗布する方法としては、従来公知の塗布方法を適用することができる。塗布方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスロールコート法、リバースロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、フローコート法、ダイコート法、スクリーン印刷、グラビア印刷等の各種印刷法等を挙げることができる。
電子線硬化性樹脂組成物6は、賦形層2を形成するための樹脂組成物である。そして、電子線硬化性樹脂組成物6は、ウレタンアクリレートと紫外線吸収剤とを少なくとも含有する。
(ウレタンアクリレート)
ウレタンアクリレートは、ガラス転移温度(Tg)が17℃以上又はガラス転移温度を示さず、且つ、60℃での粘度が2000mPa・s以上、24000mPa・s以下である。こうした特性を備えたウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレートのモノマー、オリゴマー又はプレポリマーであり、例えば、市販品としては、UV−7000B(日本合成化学工業株式会社製)、UV−7650B(日本合成化学工業株式会社製)、UV−7600B(日本合成化学工業株式会社製)、UV−7630B(日本合成化学工業株式会社製)、UV−7630B(日本合成化学工業株式会社製)、UV−7640B(日本合成化学工業株式会社製)、EBECRYL284(ダイセル・サイテック株式会社製)、及びEBECRYL8701(ダイセル・サイテック株式会社製)等を好ましく挙げることができる。また、これらと同じ又は同様の特性を有し、同じ又は同様の作用効果を奏する他のウレタンアクリレートであってもよい。これらのウレタンアクリレートは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ウレタンアクリレートは、その硬化物が透明性を有することが望ましく、透明賦形フィルムを構成することができる。
なお、本願において、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の「アクリレート」は、ウレタンメタクリレート、エポキシメタクリレート等のメタクリレートを含み、「アクリロイル基」はメタクリロイル基を含む。
ウレタンアクリレートは、ガラス転移温度(Tg)が17℃以上であるか、又はガラス転移温度を示さない。ガラス転移温度が17℃以上のウレタンアクリレート又はガラス転移温度を示さないウレタンアクリレートを含む電子線硬化性樹脂組成物6で形成された賦形層2は、後述の実施例の結果からもわかるように、無機層3を成膜した後であっても白化が生じていなかった。この理由としては、ウレタンアクリレートの耐熱性が向上したためであると考えられる。より詳しくは、透明賦形フィルム10に白化が生じる現象は、無機層3をイオンプレーティング法又はプラズマ化学的気相成長法(プラズマCVD法)で成膜する際に生じるプラズマ放電時の熱により、賦形層2のウレタンアクリレートに由来する構造が流動的になり、賦形層2の表面や内部に微細な歪みや変形が生じることに原因があると考えられる。そのため、透明賦形フィルム10に照射する可視光線が、微細な歪みや変形が生じた賦形層2と無機層3との界面で光散乱したり、無機層3の表面で光散乱したりして、透明賦形フィルム10に白化が生じると考えられる。ガラス転移温度(Tg)が17℃以上であるか、又はガラス転移温度を示さないウレタンアクリレートは耐熱性が高いといえるので、こうしたウレタンアクリレートを用いることで、無機層3の成膜時のプラズマ放電等に由来して生じる熱で賦形層2に微細な歪みや変形が生じるのを防ぎ、白化が生じるのを解決できたと考えられる。その結果、賦形層2の透明性を維持できるので、白化が抑制された高い透明性を有する透明賦形フィルム10を製造できる。
ウレタンアクリレートのガラス転移温度は17℃以上であればよい。ガラス転移温度の測定方法又は測定装置によっては、その測定温度範囲でガラス転移温度として測定できない場合がある。本願では、ガラス転移温度が17℃以上であり且つガラス転移温度を測定できないウレタンアクリレートを、「ガラス転移温度を示さないウレタンアクリレート」という。ガラス転移温度の測定を例えば−50℃から100℃の温度範囲で行った場合、この測定温度範囲でガラス転移温度を示さないウレタンアクリレートは、ガラス転移温度が100℃以上であるということができるとともに、測定温度範囲内でガラス転移温度を示さないということができ、本発明を構成するウレタンアクリレートとして適用できる。ガラス転移温度の上限はガラス転移温度の測定方法又は測定装置に依存するので特に限定されないが、強いて言えば220℃程度を挙げることができる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、示唆熱量分析器(DSC、株式会社島津製作所製、型番:DSC−60)等を用い、JIS K7121に準拠した測定法で求めることができる。
ウレタンアクリレートの粘度は、60℃で、2000mPa・s以上、24000mPa・s以下である。こうした粘度範囲のウレタンアクリレートを含む電子線硬化性樹脂組成物6は、賦形版24によって、目的とする賦形形状の賦形層2を精度良く形成することができる。ウレタンアクリレートの粘度は、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計(例えば、東機産業株式会社製、商品名:VISCOMETER)等を用いて、BLアダプター及びM4ローターを使用して測定開始後30秒後から1分間測定することにより求めることができる。
ウレタンアクリレートの60℃での粘度が2000mPa・s未満の場合は、形成された賦形層2の賦形性が悪化し、例えば、単位プリズム4の頂部の形状が丸まってしまい、賦形層2が賦形版24と同じ形状にならないことがある。この理由としては、60℃での粘度が2000mPa・s未満のウレタンアクリレートは比較的低分子であるので、後述する賦形層形成工程でウレタンアクリレートを硬化させたときのウレタンアクリレートの硬化収縮が大きくなるためであると考えられる。
ウレタンアクリレートの60℃での粘度が24000mPa・sを超える場合は、形成された賦形層2の離型性が悪化することがある。具体的には、賦形層2と賦形版24との密着性が高くなり過ぎ、後述する剥離工程で賦形層2を賦形版24から剥離できなかったり、賦形層2を賦形版24から剥離するときに賦形層2が破断したりして、賦形層2に目的とする賦形形状を形成できないことがある。賦形層2と賦形版24との密着性が高くなり過ぎる理由としては、60℃での粘度が24000mPa・sを超えるウレタンアクリレートは比較的分子量が大きいので、ウレタンアクリレートを含む電子線硬化性樹脂組成物6で形成した賦形層2と賦形版24との密着性が高くなるためであると考えられる。
ウレタンアクリレートはアクリロイル基を持つが、そのアクリロイル基の数は特に限定されない。アクリロイル基の数は、通常、2以上、8以下である。アクリロイル基の数が8を超えると、賦形層2の硬化収縮が大きくなるおそれがあり、賦形性が悪化する可能性がある。
ウレタンアクリレートの数平均分子量も特に限定されないが、500以上、10000以下が好ましく、1000以上、5000以下がより好ましい。ウレタンアクリレートの数平均分子量が1000未満の場合は、通常、硬化後の架橋密度が高くなり易いので、後述する賦形層形成工程でウレタンアクリレートを硬化させたときのウレタンアクリレートの硬化収縮が大きくなり易く、賦形層2の賦形性が悪化するおそれがる。一方、ウレタンアクリレートの数平均分子量が10000を超えると、形成された賦形層2と賦形版24との密着性が高くなるので、離型性が悪化するおそれがある。なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値を用いることができる。
こうしたウレタンアクリレートは、電子線硬化性樹脂組成物6中に50質量%以上含有することが好ましく、65質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。すなわち、ウレタンアクリレートは電子線硬化性樹脂組成物6中に少なくとも半分以上含まれていれば、上記したウレタンアクリレートの作用効果を奏することができ、さらに前記のようにその含有量が多くなるほど、上記したウレタンアクリレートの作用効果をより発揮することができるので好ましい。また、ウレタンアクリレートは柔軟な骨格構造を有しているので、電子線硬化性樹脂組成物6がこうしたウレタンアクリレートを上記含有量で含むことにより、その電子線硬化性樹脂組成物6で形成された賦形層2は、脆くなり難いという利点がある。一方、本発明とは異なるが、アクリル酸樹脂で形成された賦形層は硬くて脆くなる傾向がある。なお、電子線硬化性樹脂組成物6に含まれるウレタンアクリレートは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ウレタンアクリレートを2種以上組み合わせた場合の含有量は、それらの合計の含有量である。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、透明賦形フィルム10の耐候性を高めるための耐候剤の一つとして電子線硬化性樹脂組成物6中に含まれる。電子線硬化性樹脂組成物6が紫外線吸収剤を含有することにより、その電子線硬化性樹脂組成物6で形成された賦形層2に外部から紫外線等が照射した場合であっても、賦形層2が着色したり脆くなったりするのを抑制することができる。賦形層2が着色したり脆くなったりする現象は「光酸化劣化」とも呼ばれている。光酸化劣化した賦形層2にさらに紫外線が当たると、光酸化劣化がさらに促進する場合があるが、本発明では、賦形層2を形成するための電子線硬化性樹脂組成物6が少なくとも紫外線吸収剤を含み、さらにヒンダードアミン系光安定剤等の他の耐候剤を必要に応じて好ましく含むので、その電子線硬化性樹脂組成物6で構成された賦形層2に紫外線が当たっても、賦形層2に含まれる紫外線吸収剤等の耐候剤が作用して光酸化劣化の進行を抑えることができる。
紫外線吸収剤は、自然光等に含まれる紫外線を吸収するためのものである。紫外線吸収剤としては、こうした目的を達成できれば特に限定されず、従来公知のものを使用できる。例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
中でもトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤は、紫外線吸収能力が高く、紫外線等の高エネルギーに対しても劣化し難いという利点がある。トリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリ[{3,5−ビス−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステル等を挙げることができる。
紫外線吸収剤として、分子内にアクリロイル基等の反応性官能基を有する紫外線吸収剤を用いることもできる。反応性官能基を有する紫外線吸収剤としては、例えば、(2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン)メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。
こうした紫外線吸収剤は、電子線硬化性樹脂組成物6中に耐候剤として単独で含まれていてもよいし、下記の反応性官能基を有する紫外線吸収剤や、光安定剤等の他の耐候剤とともに含まれていてもよい。電子線硬化性樹脂組成物6に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の紫外線吸収能力に応じて任意に設定されるが、電子線硬化性樹脂組成物6に対して、0.1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。賦形層2がこの範囲の紫外線吸収剤を含有することにより、形成されれた後の賦形層2に紫外線がとどく環境下であっても、透明賦形フィルム10に良好な耐候性を付与することができる。紫外線吸収剤の含有量は、0.1質量%以上、15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上、10質量%であることが特に好ましい。こうした範囲の紫外線吸収剤を含む電子線硬化性樹脂組成物6を用いて賦形層2を形成することにより、より良好な耐候性を示す透明賦形フィルム10を製造できる。なお、電子線硬化性樹脂組成物6に含まれる紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤を2種以上組み合わせた場合の含有量は、それらの合計の含有量である。
電子線硬化性樹脂組成物6には、他の耐候剤として光安定剤が含まれていてもよい。光安定剤は、形成された後の賦形層2に紫外線があたってラジカルが生じた場合であっても、光安定剤はそのラジカルを捕捉することができる。その結果、ラジカルに起因した賦形層の劣化を抑制することができ、耐候性をより向上させることができる。光安定剤を、上記した紫外線吸収剤を併せて電子線硬化性樹脂組成物6に含有させることが好ましい。光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好ましく、形成された後の賦形層2に酸化反応を引き起こすフリーラジカルが生じた場合、そのフリーラジカルを触媒的に捕捉し、安定化させることができる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、具体的には、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート等を挙げることができる。また、反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤を用いてもよく、具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート等を挙げることができる。
電子線硬化性樹脂組成物6に含まれる光安定剤の含有量は、光安定剤のラジカル捕捉能力に応じて任意に設定されるが、例えばヒンダードアミン系光安定剤は、電子線硬化性樹脂組成物6に対して、0.1質量%以上、20質量%以下含有していることが好ましく、0.1質量%以上、15質量%以下含有することがより好ましく、0.1質量%以上、10質量%以下含有していることが特に好ましい。電子線硬化性樹脂組成物6がこの範囲のヒンダードアミン系光安定剤を含有することにより、形成された後の賦形層2に紫外線がとどく環境下であっても、透明賦形フィルム10に良好な耐候性を付与することができる。なお、電子線硬化性樹脂組成物6に含まれる光安定剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光安定剤を2種以上組み合わせた場合の含有量は、それらの合計の含有量である。
反応性官能基を有する紫外線吸収剤や反応性官能基を有する光安定剤は、その反応性官能基が賦形層2を構成する樹脂成分に結合する。そのため、反応性官能基を有する紫外線吸収剤や光安定剤が、賦形層2の表面にブリードアウトするのを抑制でき、ブリードアウトにより賦形層2中の紫外線吸収剤や光安定剤が経時的に減少することを防止できるので、必要に応じて用いることが好ましい。さらに、賦形層2と無機層3との間に紫外線吸収剤や光安定剤が析出して賦形層2と無機層3との密着性が低下するのを防ぐことができる。また、プライマー層を設けた場合には、プライマー層と賦形層2との間に紫外線吸収剤や光安定剤が析出してプライマー層と賦形層2との密着性が低下するのを防ぐことができる。
以上のように、電子線硬化性樹脂組成物6は、紫外線吸収剤を必須の耐候剤として含み、光安定剤は紫外線吸収剤と併せて配合するのとか好ましい耐候剤として含んでいる。これ以外の耐候剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲内で含有させてもよい。
(離型剤)
離型剤は、必要に応じて電子線硬化性樹脂組成物6に含まれる。この離型剤を電子線硬化性樹脂組成物6に含有させることにより、その電子線硬化性樹脂組成物6で形成された賦形層2を賦形版24から剥がす剥離工程時の離形性を向上させることができる。その結果、賦形層2を剥がす際に起こる可能性のある割れや亀裂の発生を防ぐことができる。離型剤は、この目的が達成できれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、及びリン酸系離型剤等を挙げることができる。中でも、離型性の観点から、リン酸系離型剤を好ましく挙げることができる。リン酸系離型剤としては、リン酸系離型剤とリン酸エステル系離型剤を挙げることができる。リン酸系離型剤としては、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、及びこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド;トリフェニルホスフィン、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、臭素化テトラエチルホスフィン及び塩素化テトラエチルホスフィン等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。また、リン酸エステル系離型剤としては、ジ−2−エチルヘキシルハイドロゼンホスファイト、ジラウリルハイドロゼンホスファイト、ジアルキルハイドロゼンホスファイト、ジオレイルハイドロゼンホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリアルキルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、メチルアシッドホスフェイト及びエチルアシッドホスフェイト等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
離型剤は、電子線硬化性樹脂組成物6に対して、0.01質量%以上、20質量%以下含有していることが好ましく、0.01質量%以上、10質量%以下含有していることがより好ましく、0.01質量%以上、5質量%以下含有していることが特に好ましい。電子線硬化性樹脂組成物6がこうした範囲の離型剤を含むことにより、形成された後の賦形層2の離型性をより向上させることができる。離型剤の含有量は、その離型能力に応じて適宜変更できる。なお、電子線硬化性樹脂組成物6中の耐候剤及び離型剤の定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法で求めることができる。
(他の成分)
電子線硬化性樹脂組成物6は、上記したウレタンアクリレート以外に他の樹脂を含有していてもよい。こうした樹脂としては、電子線の照射により架橋重合が可能なラジカル重合性の化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリロイル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するモノマー(単量体)、オリゴマー及びプレポリマーから選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。こうしたオリゴマー及びプレポリマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート及びポリオールアクリレート等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、単官能モノマー及び多官能モノマーを挙げることができる。単官能モノマーとしては、特に限定されないが、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカブロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー;フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、バラクミルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン等のアクリレートモノマー;アクリルアミド誘導体;等を挙げることができる。多官能モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジアクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリルトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等、及びこれらのエチレンオキシド変性物、プロピレンオキシド変性物、及びカプロラクタン変性物、等を挙げることができる。こうしたモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、そうしたモノマーが結合して生成したオリゴマーであってもよい。
また、電子線硬化性樹脂組成物6には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、熱安定剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素(着色染料、着色顔料)、体質顔料、光拡散剤、カップリング剤等を挙げることができる。なお、電子線硬化性樹脂組成物6は、電子線で硬化する樹脂組成物であるので、紫外線で硬化する樹脂組成物に添加されるアセトフェノン系化合物及びアシルフォスフォンオキサイド系化合物等の光重合開始剤は含まない。
<賦形層形成工程>
賦形層形成工程は、電子線を照射して電子線硬化性樹脂組成物6を硬化させて賦形層2を形成する工程である。この工程では、例えば、図3に示すように、賦形版24とプラスチック基材1との間で、賦形版24とプラスチック基材1に接して設けられている電子線硬化性樹脂組成物6に電子線を照射する。図3の例では、電子線の線源として電子線照射装置26の電子線源27を用い、プラスチック基材1側から電子線を照射している。
電子線源27は、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が用いられる。電子線とは、電子線の他、X線、γ線等の電磁波、α線等の荷電粒子線のことであり、電子線硬化性樹脂組成物6とは、電子線を照射することにより、架橋して硬化する樹脂を含む樹脂組成物のことである。
形成された賦形層2は、単層であっても2層以上であってもよく、いずれの場合も、電子線が照射されて形成される。電子線を照射して形成された賦形層2は、より密に架橋したものになると考えられるため、より良好な耐候性を示す透明賦形フィルム10を製造できる。
賦形層2の厚さは特に限定されず、単層又は2層以上に関わらず、例えば、0.01μm以上、500μm以下の範囲で任意に形成され、通常、0.1μm以上、200μm以下の程度である。なお、賦形層2の厚さとは、賦形層2の厚さが最大になる箇所の値をいう。
本発明では、上述したように、電子線硬化性樹脂組成物6に含まれるウレタンアクリレートの60℃での粘度が2000mPa・s以上であるので、形成された後の賦形層2が良好な賦形性を示すことができる。そのため、形成された賦形層2は、単位プリズム4の頂部の形状が丸まってしまったり、賦形層2が賦形版24と同じ形状にならないという問題が発生しないので、目的とする形状の賦形層2を精度良く形成できる。
<剥離工程>
剥離工程は、プラスチック基材1と賦形層2とを賦形版24から剥離する工程である。図3の例では、剥離ロール25によってプラスチック基材1と賦形層2とを賦形版24から剥離させている。その結果、プラスチック基材1上に賦形層2が設けられた積層体を得ることができる。
本発明では、上述したように、電子線硬化性樹脂組成物6に含まれるウレタンアクリレートの60℃での粘度が24000mPa・s以下であるので、形成された後の賦形層2の離型性を向上することができる。そのため、形成された賦形層2は、賦形層2を賦形版24から剥離できないという問題や、賦形層2を賦形版24から剥離するときに賦形層2が破断したりして、目的とする賦形形状を形成できないという問題等が発生しないので、目的とする形状の賦形層2を精度良く形成できる。
<無機層形成工程>
無機層形成工程は、賦形層2上に無機層3を形成する工程である。無機層3は、透明賦形フィルム10の自浄性を高める機能層として賦形層2上に形成される。その自浄性は、無機層3が親水性を有する場合に好ましく発揮される。
無機層3の形成材料としては、例えば、酸化物、酸化窒化物、窒化物、酸化炭化物、及び酸化炭化窒化物等から選ばれる1又は2以上の無機化合物を挙げることができる。具体的には、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウム、セリウム、及び亜鉛から選ばれる1種又は2種以上の元素を含有する無機化合物を挙げることができ、より具体的には、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化珪素亜鉛及び酸化インジウム合金等の酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、及び窒化チタン等の窒化物、酸化窒化珪素等の酸化窒化物を挙げることができる。特に好ましくは、無機層3が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素亜鉛から選ばれる1種又は2種以上からなる無機化合物層である。無機層3は上記材料を単独で用いてもよいし、本発明の要旨の範囲内で上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
無機層3の厚さは、使用する無機化合物によっても異なるが、通常、5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、クラック等の発生を抑制する見地から、通常5000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。また、無機層3は単層であってもよいし、合計厚さが上記範囲内となる2層以上の無機層3であってもよい。2層以上の無機層3の場合には、同じ材料同士を組み合わせてもよいし、異なる材料同士を組み合わせてもよい。
無機層3は、イオンプレーティング法又はプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)で成膜される。イオンプレーティング法とプラズマCVD法は、成膜時にプラズマ放電が起こり、そのプラズマ放電時に熱が生じる成膜手段で賦形層2上に無機層3を成膜した場合には、従来の賦形層2にはその熱を原因とした白化が生じていた。しかし、本願では、ガラス転移温度が17℃以上又はガラス転移温度を示さない特徴的なウレタンアクリレートを電子線硬化性樹脂組成物6の構成材料として用いたので、プラズマ放電時に熱を生じる成膜手段であっても、そのプラズマ放電時の熱を原因として生じる白化を抑制することができた。したがって、本発明では、無機層3をイオンプレーティング法やプラズマCVD法で成膜する場合に顕著な効果を奏する。また、無機層3に、より親水性を付与するためにプラズマ放電を行った場合であっても、前記した白化を抑制することができる。なお、その他のPVD法であっても、成膜時に熱が生じる場合には、その熱を原因とした白化が生じるおそれがあるので、その場合も同様に好ましく適用できる。なお、こうした各種の形成方法での成膜条件は、得ようとする無機層3の物性及び厚さ等を考慮し、従来公知の成膜条件を適宜調整して行えばよい。
より具体的には、原料をプラズマガンで発生させたプラズマビームで加熱させ、基材に堆積させるイオンプレーティング法、又は、有機珪素化合物等を原料とし、酸化珪素膜を基材に堆積させるプラズマ化学気相成長法、を好ましく利用することができる。特に、無機層3を賦形層2の賦形形状の上に均一に形成する賦形形状追従性の観点からは、プラズマ化学気相成長法が好ましく適用される。
<他の工程>
透明賦形フィルム10の製造方法には、例えば、無機層3上や賦形層2が設けられていない側の面S2上に任意の機能層を形成する工程が含まれていてもよい。任意の機能層としては、本発明の特徴を阻害しない範囲で、従来公知のマット層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等を挙げることができる。こうした機能層の形成工程は、従来公知の形成方法を適用できる。
こうした製造方法で製造された透明賦形フィルム10は、図1に示すように、プラスチック基材1、賦形層2、及び無機層3で少なくとも構成されている。また、透明賦形フィルム10には、上記した機能層を有していてもよい。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
プラスチック基材1として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100)を用い、その片面にプライマー層が設けられたプラスチック基材1を準備した。賦形版24として、賦形形状の断面が二等辺三角形であり、その溝の深さが20μmでピッチ幅が50μmの平行線を刻んだ金型版を準備した。片面S1にプライマー層(図示しない)が設けられたプラスチック基材1は、プラスチック基材1の片面S1に下記の組成のプライマー層形成用樹脂組成物をミヤバーで塗布し、その後、60℃で30秒間乾燥させて、厚さ3μmのプライマー層を設けて作製した。上記した賦形版24に下記の組成の電子線硬化性樹脂組成物Aをアプリケータで塗工した後、塗工された電子線硬化性樹脂組成物Aと上記したプラスチック基材1のプライマー層が設けられた面S1とをローラーで貼り合せた。その後、プラスチック基材側から電子線照射機(岩崎電気株式会社製、商品名:低加速エネルギー照射機)を用い、165keV,10Mrad(100kGy)の条件で電子線を照射し、電子線硬化性樹脂組成物Aを硬化させて厚さ30μmの賦形層2を形成した。
(プライマー層形成用樹脂組成物の組成)
・ポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体樹脂(ポリカーボネート系ウレタンウレタン成分とアクリル成分との質量比=50:50):100質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名:チヌビン479):1.5質量部
・反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、日本乳化剤株式会社製、商品名:サノールLS−3410):3質量部
・硬化剤(ヘキサンメチレンジイソシアネート):6質量部
(電子線硬化性樹脂組成物Aの組成)
・ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:2〜3、数平均分子量:3500、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−7000B):100質量部
・紫外線吸収剤(ヒドロキシフェニルトリアジン系、BASFジャパン株式会社製、商品名:チヌビン479):2質量部
・リン酸エステル系離型剤(SC有機化学株式会社製、商品名:Chelex H−18D):1質量部
次に、無機層3を、プラズマCVD法により形成した。具体的には、賦形層2が形成されたプラスチック基材1の賦形層側を形成する向きにしてプラズマCVD装置にセットし、原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)、酸素ガス及びアルゴンガスを準備した。プラズマCVD法の条件は、成膜圧力を0.4Torrとし、成膜時間を1分間とし、放電電力を200Wとし、各ガスは、オクタメチルシクロテトラシロキサン:酸素ガス:アルゴンガス=1sccm:50sccm:5sccmとなるよう供給して、厚さ80nmの酸化珪素層を無機層3として形成した。なお、実施例1の無機層3の組成比を、X線光電子分光装置(アルバック・ファイ社製、型番:ESCA−5600)を用いてX線光電子分光法により測定した結果、Si:O:C=25:57:18(単位はモル%)であった。また、sccmとは、standard cubic centimeter per minuteの略であり、以下の実施例、比較例においても同様である。
[実施例2]
電子線硬化性樹脂組成物Aに反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、日本乳化剤株式会社製、商品名:サノールLS−3410)を3質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例3]
下記の組成に調製した電子線硬化性樹脂組成物Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の透明賦形フィルムを製造した。電子線硬化性樹脂組成物Bは、紫外線吸収剤の種類を増やしたこと以外は、電子線硬化性樹脂組成物Aと同様のものである。
(電子線硬化性樹脂組成物Bの組成)
・ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:2〜3、数平均分子量:3500、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−7000B):100質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名:チヌビン479):1質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名:チヌビン400):1質量部
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名:チヌビン477):1質量部
・反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、日本乳化剤株式会社製、商品名:サノールLS−3410):3質量部
・リン酸エステル系離型剤(SC有機化学株式会社製、商品名:Chelex H−18D):1質量部
[実施例4]
無機層3を成膜するプラズマCVD法の条件を、成膜圧力を0.1Torrとし、成膜時間を4分間とし、放電電力を200Wとし、各ガスは、オクタメチルシクロテトラシロキサンに代えてヘキサメチルジシロキサンを用い、ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:アルゴンガス=1sccm:50sccm:3sccmとなるよう供給して、厚さ80nmの酸化珪素層を無機層3として形成した。それ以外は、実施例1と同様にして実施例4の透明賦形フィルムを製造した。なお、実施例1と同様にして無機層3の組成比を測定した結果、Si:O:C=24:62:14(単位はモル%)であった。
[実施例5]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:2、数平均分子量:1200、ダイセル・サイテック株式会社製、商品名:EBECRYL284)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例6]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:3、数平均分子量:2000、ダイセル・サイテック株式会社製、商品名:EBECRYL8701)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例7]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:4〜5、数平均分子量:2300、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−7650B)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例7の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例8]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:6、数平均分子量:1400、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−7600B)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例8の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例9]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:6〜7、数平均分子量:2200、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−7630B)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例9の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例10]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:6〜7、数平均分子量:1500、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−7640B)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例10の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例11]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:6、数平均分子量:1000)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして実施例11の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例12]
プラスチック基材にプライマー層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして実施例12の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例13]
プラスチック基材にプライマー層を設けなかったこと以外は、実施例6と同様にして実施例13の透明賦形フィルムを製造した。
[実施例14]
無機層3を蒸着原料として酸化珪素(SiO2)を使用したイオンプレーティング法で形成した以外は、実施例2と同様にして実施例14の透明賦形フィルムを製造した。イオンプレーティング法の条件は、プロセスガスとしてArガスを使用し、成膜圧力を1.2×10−2Pa、成膜パワーを9kWにした。なお、実施例1と同様にして無機層の組成比を測定した結果、Si:O:C=29:57:14(単位はモル%)であった。
[比較例1]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:2、数平均分子量:18000、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−3000B)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の透明賦形フィルムを製造した。
[比較例2]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:1、数平均分子量:236、新中村化学株式会社製、商品名:AMP−20GY)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の透明賦形フィルムを製造した。
[比較例3]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:2、数平均分子量:18000、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−7605B)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の透明賦形フィルムを製造した。
[比較例4]
電子線硬化性樹脂組成物Aのウレタンアクリレートを、ウレタンアクリレート(1分子あたりのアクリロイル基数:3、数平均分子量:3500、日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV−7650B)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4の透明賦形フィルムを製造した。
[測定と評価]
実施例1〜13及び比較例1〜4のウレタンアクリレートについて、(ア)ガラス転移温度の測定、及び(イ)60℃での粘度の測定を行った。また、実施例1〜13及び比較例1〜4の賦形層2について、(ウ)賦形性の評価、及び(エ)離型性の評価を行った。また、実施例1〜13及び比較例1〜4の透明賦形フィルムについて、(オ)外観の観察、(カ)硬度の測定、(キ)製造後、常温で24時間経過したもの、曝露試験6ヶ月経過後のもの、及び耐侯性試験を250時間行ったものそれぞれの自浄性の評価、(ク)製造後常温で24時間経過したものと耐侯性試験を500時間行ったものとの色差測定、及び(ケ)耐侯性試験を500時間行ったものの形状安定性の評価を行った。
ウレタンアクリレートのガラス転移温度の測定は、示唆熱量分析器(DSC、株式会社島津製作所製、型番:DSC−60)を用い、JIS K7121に準拠した測定法で、測定温度範囲を−50℃から100℃とし、昇温速度を10℃/分として測定した。
ウレタンアクリレートの60℃での粘度の測定は、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計(東機産業株式会社製、商品名:VISCOMETER)を用いて、BLアダプター及びM4ローターを使用して測定開始後30秒後から1分間測定することにより求めた。
賦形層2の賦形性の評価は、得られたプラスチック基材1と賦形層2とを断面が観察できるように切断し、測定試料用の台座にカーボンペースト(テッド・ペラ社製、コロイド状カーボン)で貼り付け、パラジウムと白金との合金をターゲットとしたスパッタリングによって前処理を実施した後、走査型電子顕微鏡(株式会社島津製作所製、型番:S−8000)を用いて断面観察をして評価した。賦形層2の賦形形状に欠けがなく、試験片全体にわたり目的とする賦形形状が形成できていたものを「良い」とし、賦形形状の頂部が丸まっていたり、左右対称でないために賦形形状に欠陥が存在したりしたものを「悪い」とした。
賦形層2の離型性の評価は、剥離のし易さを定量的に測定するために、引張試験機(株式会社オリエンテック製、型番:テンシロンSTA−1150)を用い、引張速度10mm/分で15mm幅のプラスチック基材及び賦形層を賦形版から180°の角度で引っ張ることにより、引張強度を測定した。引張強度が1.0N/15mm未満であり、賦形版からの剥離が容易であったものを「良い」とし、引張強度が1.0N/15mm以上であり、賦形版からの剥離が困難であったか、賦形版から剥離できなかったものを「悪い」とした。
透明賦形フィルムの外観観察は、目視及び光学顕微鏡観察により行った。外観変化がなく、高い透明性を有していたものを「良い」とし、白化が生じて透明性が低下したものを「悪い」とした。
透明賦形フィルムの硬度の評価は、鉛筆引掻き硬度試験機(NB型、株式会社東洋精機製作所製)により、3Bから4Hまでの異なる硬度の鉛筆を用いてJIS K5400に準拠した試験法により、傷の有無を目視及び光学顕微鏡で観察して評価した。なお、鉛筆硬度は測定限界が4Hであり、鉛筆硬度試験は荷重500gを加えた状態で実施した。
耐侯性試験は、超促進耐候性試験機(岩崎電気株式会社製、商品名:アイスーパーUVテスター、型番:SUV−W23)を用いて、透明賦形フィルムに下記の(A),(B),(C)を1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことにより行った。例えば、耐候性試験を250時間行った場合は、このサイクルを10回繰り返し、耐候性試験を500時間行った場合は、このサイクルを21回繰り返した。
(A)温度:63℃、湿度:50%RHの雰囲気下で、照度:60mW/cm2、ピーク波長:365nmの紫外線を20時間照射する。
(B)散水処理(シャワー)を30秒間行う。
(C)温度:63℃、湿度:98%RHの雰囲気下で4時間保持する(紫外線の照射は無し)。
曝露試験は、透明賦形フィルムを屋外に6ヶ月間静置させて放置することにより行った。
透明賦形フィルムの自浄性の評価は、自浄性評価試験と水に対する接触角測定により評価した。自浄性評価試験は、その無機層上にオレイン酸と赤色着色料を混合した着色油を滴下し、その後、その滴下された着色油の上から水を滴下し、着色油の水中での浮き具合を目視により観察して評価した。水に対する接触角測定は、透明賦形フィルムの平坦な無機層上に水を滴下し、接触角計(協和界面科学株式会社製、型番:CA−X)により測定した。これらの結果を自浄性の指標とした。自浄性評価試験により、透明賦形フィルム上に滴下された着色油が水に浮いたものであって、接触角測定により、水との接触角が60°未満であったものを「良い」とした。また、自浄性評価試験により、透明賦形フィルム上に滴下された着色油が水に浮かないか、又は、接触角測定により、水との接触角が60°以上のものを「悪い」とした。なお、透明賦形フィルムの平坦な無機層3は、例えば、プラスチック基材1にそれぞれの実施例及び比較例の電子線硬化性樹脂組成物をアプリケータで塗工し、この電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて平坦な有機層を形成し、この有機層上に無機層3を形成することで調製できる。
透明賦形フィルムの色差測定は、分光光度計(株式会社島津製作所製、型番:UV−3100PC)を用い、JIS−K7105の記載に準拠して透過法によりΔE*ab値を測定した。なお、ΔE*ab値は、CIE1976規格の(L*,a*,b*)空間表色系による色差公式:ΔE*ab={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2から求められる値である。ΔE*ab値が1未満であり、外観がまったく変わらないものを「非常に良い」とし、ΔE*ab値が1以上、3未満のものを「良い」とした。ΔE*ab値が3未満のものは、良好な耐候性を示しており、ΔE*ab値が3だと、耐候性の面で実用上問題が生じる。
透明賦形フィルムの形状安定性の評価は、透明賦形フィルムを5cm×5cmに切断して測定試料とし、賦形形状を有する無機層が上になるように5枚載置した。この無機層に、定荷重圧縮試験機(株式会社エー・アンド・ディ製、製品名:テンシロン万能材料試験機、型番:RTG−1210)で40℃の環境下で、直径2.5mmで重さ1.27kgのステンレス鋼材により26kg/cm2の荷重を24時間印加するいわゆる「山つぶれ」試験を行い、その後、目視による外観の観察を行った。また、断面が観察できるように切断した透明賦形フィルムを測定試料用の台座にカーボンペーストで貼り付け、パラジウムと白金との合金をターゲットとしたスパッタリングによって前処理を実施した後、走査型電子顕微鏡(株式会社島津製作所製、品番:S−8000)を用いて断面観察をして評価した。賦形形状に山つぶれがなく、形状の崩れがほとんどないものを「良い」とし、賦形形状に山つぶれがあり、形状が崩れているものを「悪い」とした。
[結果]
実施例1〜13及び比較例1〜4のウレタンアクリレート及び賦形層の評価結果を表1に示す。また、実施例1〜13及び比較例1〜4の透明賦形フィルムの評価結果を表2に示す。なお、「−」は、ガラス転移温度(Tg)を示さなかったものであり、Tgが100℃以上のものである。「※」は、測定を行わなかったものである。
表1,2の結果から、実施例1〜13の透明賦形フィルムの賦形層は、賦形性と離型性が良好であったので、目的とする賦形形状を精度良く製造できた。また、実施例1〜13の透明賦形フィルムは、無機層を形成しても白化が生じていなかったので、良好な透明性を有していた。また、耐侯性がいずれも「非常に良い」又は「良い」であったので、良好な耐候性を有していた。また、良好な自浄性を有していた。さらに、硬度はいずれも2H以上であり、良好な形状安定性を示した。
比較例1の透明賦形フィルムの賦形層は、離型性が悪く、目的とする賦形形状を有する透明賦形フィルムを製造できなかった。また、比較例2〜4の透明賦形フィルムの賦形層は、賦形性が悪く、目的とする賦形形状を有する透明賦形フィルムを製造できなかった。