JP6728813B2 - 電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
より詳しくは、導電性基体上に電荷発生層と電荷輸送層をこの順で有する感光層において、電荷発生層に特定の電子輸送物質を含有する電子写真感光体、該電子写真感光体を使用するカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
本発明中のα型チタニルフタロシアニンは、高感度で温湿度環境変化に強く、塗布液中での結晶安定性にもすぐれているため、多くの種類の感光体に使用され良好な特性を示している。しかしながら、高性能な電荷輸送層との組み合わせによっては、耐光性が劣ることがあった。
即ち、本発明の目的は、自然光や蛍光灯光に曝されても、良好な電気特性と画像特性とを両立する電子写真感光体を提供すること、また該電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することにある。
本発明の要旨は、以下の<1>〜<5> に存する。
<1> 導電性基体上に、少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に有し、該電荷発生層が少なくとも、バインダー樹脂、CuKα線のX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、12.3°、16.3°、25.3°、28.6°にピークを有するα型のチタニルフタロシアニン、及び電子輸送物質を含有し、且つ該電子輸送物質の密度汎関数計算B3LYP/6-31G(d,p)による構造最適化計算の結果得られたLUMOのエネルギーレベルE_lumoが次式
E_lumo (eV) < -3.45
を満足することを特徴とする電子写真感光体。(請求項1)
<2> 該電子輸送物質の含有量が、電荷発生物質1.0質量部に対して0.05質量部以上、1.0質量部以下であることを特徴とする<1>に記載の電子写真感光体。(請求項2)
<3> 該電子輸送物質がジフェノキノン誘導体であることを特徴とする、<1>、<2>いずれか1つに記載の電子写真感光体。
(請求項3)
<4> <1>〜<3>のいずれか1つに記載の電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置からなる群から選ばれる少なくとも1つ、を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジ。(請求項4)
<5> <1>〜<3>いずれか1つに記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置、を備えたことを特徴とする画像形成装置。(請求項5)
一般に、フタロシアニン化合物は、長波長域までの分光感度を有し、電荷発生効率もよく、高感度、高耐久性であるため、電荷発生物質として好適に用いられる。特に、チタニルフタロシアニンは、帯電レベルが高く、感度もよいことから、高性能な感光体を得ることができる。このチタニルフタロシアニン化合物は、同じ分子構造のものであっても、そのスタッキング状態すなわち結晶変態の違いによってキャリアの電気特性が大きく変化する。現在までに、結晶型として、α型、β型、C型、Y型、無定型、それらの混合型が知られている。その中でも、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、12.3°、16.3°、25.3°、28.6°の結晶構造を持つα型チタニルフタロシアニンは、結晶型の安定性が良いことや、温湿度に関わらず良好なキャリア発生効率を示す点で、感光体に便利に使用することができる。
例えば、後述する<合成方法1>に示すような、尿素法やフタロニトリル法で合成された粗合成チタニルフタロシアニンをアシッドペースティング処理して低結晶性チタニルフタロシアニンとし、分散助剤と溶剤による分散にて結晶変態を行ってα型チタニルフタロシアニンを得る方法がある。または後述の<合成方法2>に示すような、ジクロロチタニウムフタロシアニンやジブロモチタニウムフタロシアニンを高沸点のアルコール類と接触させて1段階でα型チタニルフタロシアニンを得る方法などがある。この方法は感光体特性を損ねる強酸を使用しないため、帯電性の良い感光体を得ることができる。一方で、<合成方法1>のアシッドペースティング処理法で得られるフタロシアニンは、比較的粒がそろった細かい粒子が得られるため、感光体塗布液を作製するときの分散性や液安定性にすぐれ、キャリア発生効率もよいという利点がある。近年の洗浄処理技術の進歩で残留酸を低く抑えることができるため、<合成方法1>はより好適な合成方法となっている。
タニルフタロシアニンと同量以下での混合が好ましい。
電荷発生物質として用いられる本発明のフタロシアニン結晶の粒子径は、充分小さいことが好ましい。具体的には、1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下で使用される。
本発明は、電荷発生層に電子輸送物質を含有することを特徴とする。含有する電子輸送物質は、密度汎関数計算B3LYP/6-31G(d,p)による構造最適化計算の結果得られたLUMOのエネルギーレベルE_lumoが次式
E_lumo (eV) < -3.45
を満足する。電荷輸送層との界面で電荷輸送物質との間でトラップを形成しない点から、好ましくは-3.62ev、好ましくは-3.60evより大きいことが好ましい。また、電荷輸送物質の遷移状態に作用するという点から-3.47ev、好ましくは、-3.50evより小さいことが好ましい。
電子輸送物質は上記のエネルギーレベルを満足すれば構造に限定はされないが、前記電荷発生物質と特に良い相性を示す構造は以下の通りである。より効果的に機能する構造は、ジフェノキノン誘導体であり、電子の極在化を抑制できるという観点から、下記式(1)で表される構造が好ましい。
本発明のα型チタニルフタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物は結晶状態に置ける混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
ましくは0.6μm以下の範囲である。電荷発生物質の比率が高過ぎると、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下するおそれがある一方、電荷発生物質の比率が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招くおそれがある。
本発明の電荷発生層は、前述の電子輸送物質を含有する。電子輸送物資対の含有量は、電荷発生物質1質量部に対して、効果の点から0.05質量部以上、好ましくは0.10質量部以上、より好ましくは0.12質量部以上である。また、添加量が多いとキャリアが発生しやすくなって光疲労特性が悪化するため1.0質量部以下が好ましい。また、残留電位などの電気的特性を悪化させないためには0.80質量部以下がより好ましく、塗布液の安定性の点から0.50質量部以下がさらに好ましい。
電子輸送物質の添加方法は、電荷発生物質を微細化処理する工程で添加しても良いし、バインダー樹脂と混合するときに添加してもよく、または電荷発生層塗布液に後から添加しても、いずれの方法で添加しても電荷発生層内で効果的に機能する。
電荷輸送層は、電荷輸送物質とバインダー樹脂を含有する。更に必要に応じてその他の成分を含有してもよい。電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、電荷発生層上に、塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質としては特に限定されず、電子写真感光体に通常使用される物質が用いられる。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子輸送性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、或いはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の正孔輸送性物質等が挙げられる。これらの中でも、電気特性の観点から、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましく、エナミン誘導体が特に好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。電荷輸送物質の具体例を以下に示す。
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、感度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上であり、高解像度及び生産性の観点から、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、更に好ましくは25μm以下である。
導電性支持体と前述した感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などがあげられる。これらは一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層のバインダー樹脂としては、ポリビニルアセタール、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル酸等の樹脂材料を用いることができる。中でも、支持体の接着性に優れ、電荷発生層塗布液に用いられる溶媒に対する溶解性の小さなポリアミド樹脂が好ましい。そして、ポリアミド樹脂の中でも、シクロアルカン環構造を構成成分として有する共重合ポリアミドが好ましく、シクロヘキサン環構造を構成成分として有する共重合ポリアミドがより好ましく、その中でも特に、下記構造式(I)で示されるジアミン成分を構成材料として有する共重合ポリアミド樹脂が好ましい。
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。
下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合してもよい。画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いてもよい。
積層型感光体は、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上に更に別の層を設け、これを表面層としてもよい。例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けても良い。生産工程を少なくすることが出来ることから感光層が表面層
であることが好ましい。
感光体に用いる導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のために。適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/l、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定され
るものではない。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、25〜40℃、好ましくは30〜35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液pHは、4.5〜6.5、好ましくは5.5〜6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることが出来るが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80〜100℃、好ましくは90〜98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。処理時間は10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
本発明の下引き層、及び感光体を構成する各層は、各層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
本発明の電子写真感光体を使用する複写機、プリンター等の画像形成装置は、少なくとも帯電、露光、現像、転写、除電の各プロセスを含むが、どのプロセスも通常用いられる方法のいずれを用いてもよい。図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4を備えて構成され、更に必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真
感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。
<合成方法1>
特開2009−37058号公報中の「実施例1」に記載されている方法と同様にして、アシッドペースティング処理したチタニルフタロシアニンをミリング処理して、α型チタニルフタロシアニンを得た。得られたα型チタニルフタロシアニンの粉末X線回折図を図2に示す。
特開平2−308863号公報中の「実施例1」に記載されている方法と同様の操作を行なうことにより、α型チタニルフタロシアニンを得た。得られたα型チタニルフタロシアニンの粉末X線回折図を図3に示す。
[下引き層の形成]
下引き層用塗布液は以下のように作製した。平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの質量比が7/3の混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、表面処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒及び、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの質量比が7/1/2で、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用塗布液を作製した。この塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート(厚さ75μm)上に、乾燥後の膜厚が1.2μmになるようにワイアバーで塗布、乾燥して下引き層を設けた。
電荷発生物質として、上記<合成方法1>の方法で得られた、図2に示す粉末X線回折スペクトルパターンを有するα型チタニウムフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)の2.5%1,2−ジメトキシエタン溶液400部と、170部の1,2−ジメトキシエタン、さらに下記構造の電子輸送物質―1を4部混合して分散液を調製した。この分散液を、前記下引き層上にバーコーターで塗布して、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を形成した。
電荷輸送層用塗布液は以下のように作製した。下記構造の電荷輸送物質−1を40部、下記繰り返し構造を持つバインダー樹脂−1(粘度平均分子量40,000)を100部、酸化防止剤として下記AD−1を2質量部、着色物質として下記アゾ化合物−1を1質量部、レベリング剤としてシリコーンオイル(信越シリコーン社製:商品名 KF−96)0.05部をテトラヒドロフラン(以下適宜THFと略)とトルエン(以下適宜TLと略)の混合溶媒(THF 80質量%、TL 20質量%)640部に混合し、電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を、上記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が約30μmになるように浸漬塗布して電荷輸送層を形成し、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質を下記構造の電子輸送物質―2に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質を下記構造の電子輸送物質―3に変えた
以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質を下記構造の電子輸送物質―4に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質を下記構造の電子輸送物質―5に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質を下記構造の電子輸送物質―6に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質を下記構造の電子輸送物質―7に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電荷発生物質を上記<合成方法1>の方法で得られたα型チタニルフタロシアニン15部と、図4に示すCuKα線のX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の26.3にピークを有するβ型チタニルフタロシアニン5部の混合に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質−1の添加量を10部にした以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
<実施例10>
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質−1の添加量を2部にした以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷輸送層の電荷輸送物質とバインダー樹脂をそれぞれ、下記構造の電荷輸送物質−2を60部と下記繰り返し構造を持つバインダー樹脂−2(粘度平均分子量36000)にした以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質―1を入れない以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
<比較例2>
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質を下記構造の電子輸送物質―8に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電子輸送物質を下記構造の電子輸送物質−9に代えて、これをα型チタニルフタロシアニンと一緒にサンドグラインドミルで粉砕して調液した以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例1において、電荷発生層の電荷発生物質を特許第5648718号記載の方法で得られた、図5に示すCuKα線のX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°にピークを有するY型チタニルフタロシアニンに代えた以外は実施例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
比較例4において、電荷発生層の電子輸送物質を添加しない以外は比較例4と同様の操作を行い、感光体を作製した。
<比較例6>
実施例11において、電荷発生層の電子輸送物質を添加しない以外は実施例11と同様の操作を行い、感光体を作製した。
比較例1において、電荷輸送層にバインダー樹脂100質量部に対して2質量部の電子輸送物質−1を添加した以外は比較例1と同様の操作を行い、感光体を作製した。
実施例と比較例で使用した電子輸送物質−1〜9のLUMOのエネルギーレベルE_lumoの値を表−1に示す。
実施例と比較例で得られた感光体について、以下の方法で測定、評価を行った。
[電気特性試験1]
特定の光量を照射した時の表面電位の減衰特性を次のように測定した。電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、温度25℃、相対湿度50%の環境下、ドラムを一定回転数95rpmで回転させ、感光体の初期表面電位が約−700Vになるように帯電(スコロトロン帯電器)条件を固定し、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを、NDフィルターを使用して光量を0.74μJ/cm2として露光した際の表面電位VL(単位:−V)を測定した。VLは、値の絶対値が小さいほど好ましい。結果を「表−2」に示す。
続いて、感光体に白色蛍光灯(三菱オスラム社製ネオルミスーパーFL20SS・W/18)の光を、感光体表面での光強度が500ルックスになるように調整後5分間照射し、照射前と直後の、光量エネルギー0.25μJ/cm2で(比較例5の場合は0.14μJ/cm2で)露光した際の表面電位VHの比較を行った。表−2に白色蛍光灯照射前後のVH変化、ΔVHを示した。なお、負の数値は光照射後の各電位の絶対値が光照射前の電位の絶対値に対して小さくなったことを表す。この変化分ΔVLの絶対値が小さいほど、蛍光灯の光のダメージを受けにくい事を示す。
直径30mm、長さ375mm、肉厚0.75mmの3003系アルミニウム合金製チューブ上に、実施例1の下引き層用塗布液を、乾燥後の膜厚が約1.5μmになるように浸漬塗布し、室温で乾燥して下引き層を設けた。続いて、実施例1の電荷発生層用塗布液Aを、上記下引層上に、乾燥後の膜厚が約0.3μmになるように浸漬塗布し、室温で乾燥して電荷発生層を設けた。さらに、実施例1の電荷輸送層用塗布液を、上記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が約18μmになるように浸漬塗布して、感光体ドラム(1)を作製した。
実施例12において、電荷発生層用塗布液の代わりに、電子輸送物質を添加しない比較例1の電荷発生層用塗布液を使用する以外は実施例12と同様の操作を行い、感光体ドラム(2)を作製した。
<画像試験>
実施例12と比較例8で作製した感光体ドラム(1)、(2)を使用して画像試験をおこなった。
4連タンデム
カラー36ppm、モノクロ40ppm
1200dpi
接触ローラ帯電(直流電圧印加)
LED露光
除電光あり
温度25℃、湿度50%の環境で、ハーフトーン画像を印字したところ、感光体(2)の画像は、500ルックスの蛍光灯を照射した部分だけ画像濃度が濃くなった。一方、感光体(1)の画像は、蛍光灯照射有無の部分での濃度差がほとんど見られず、均一なハーフトーン画像が得られた。
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙,媒体)
Claims (5)
- 導電性基体上に、少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に有し、該電荷発生層が少なくとも、バインダー樹脂、CuKα線のX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、12.3°、16.3°、25.3°、28.6°にピークを有するα型のチタニルフタロシアニン、及び電子輸送物質を含有し、且つ該電子輸送物質の密度汎関数計算B3LYP/6-31G(d,p)による構造最適化計算の結果得られたLUMOのエネルギーレベルE_lumoが次式
E_lumo (eV) < -3.45
を満足することを特徴とする電子写真感光体。 - 該電子輸送物質の含有量が、電荷発生物質1.0質量部に対して0.05質量部以上、1.0質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 該電子輸送物質がジフェノキノン誘導体であることを特徴とする、請求項1、2いずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置からなる群から選ばれる少なくとも1つ、を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジ。
- 請求項1〜3いずれか1項に記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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