以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の温熱具は、身体に装着して、身体の加温に用いられるものである。温熱具は一般に扁平な形状を有し、第1面とそれと対向する第2面とを有している。第1面は、温熱具の使用時に使用者の身体側を向く面となる。一方、第2面は、温熱具の使用時に、使用者の身体から遠い側に位置する面となる。
本発明の温熱具は、その内部に発熱部を有している。この発熱部は一般に、被酸化性金属の酸化反応によって生じた熱を熱源として利用している。発熱部は、前記の第1面を含む第1のシート状部材と、前記の第2面を含む第2のシート状部材との間に位置している。第1のシート状部材及び第2のシート状部材のうちの少なくとも一方は、その少なくとも一部が通気性を有している。温熱具は、これら第1及び第2のシート部材と、両シート部材間に位置する前記の発熱部とを有する本体部を備えている。温熱具は、本体部に加えて他の部材を備えていてもよい。そのような他の部材の例としては、後述する耳掛け部が挙げられる。
第1のシート部材及び第2のシート部材は、その双方が通気性の部位を有していてもよく、あるいは一方のシート部材が通気性の部位を有し、他方のシートが非通気性であるか、又は難通気性であってもよい。どちらを採用するかは、温熱具の具体的な用途に応じて決定すればよい。第1のシート部材及び/又は第2のシート部材が通気性の部位を有する場合、該部位は、例えば不織布等の繊維シートや、多孔質の合成樹脂製シートを用いることができる。そのような合成樹脂製シートは、一般に水に対して難透過性であり、水蒸気透過性を有する、いわゆる透湿性シートであることが好ましい。透湿性シートは一般に、熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂に対して相溶性を有さない粉末とを溶融混練し、その混練物をフィルム状に押し出して成形体となし、該成形体を一軸又は二軸延伸することで得られる。
第1のシート部材及び/又は第2のシート部材が透湿性シートからなる部位を有する場合、該部位の外面に不織布等の繊維シートを積層してもよい。こうすることで、温熱具の肌触りを向上させることができる。そのような繊維シートとしては、例えばエアスルー不織布などが好適なものとして挙げられる。
第1のシート部材又は第2のシート部材のいずれか一方が非通気性であるか、又は難通気性である場合、当該シートとしては、例えば熱可塑性樹脂のシートを用いることができる。かかるシートは、水に対して難透過性又は不透過性であり、且つ空気や水蒸気に対しても難透過性又は不透過性である。かかるシートの外面にも、必要に応じて不織布等の繊維シートを積層して、温熱具の肌触りを向上させてもよい。
第1のシート部材及び第2のシート部材のうちの一方が非通気性であるか、又は難通気性である場合、当該シート部材は、温熱具の装着状態において、使用者の身体から遠い側に位置することが好ましい。換言すれば、もう一方のシート部材は少なくとも通気性を有する部位を備え、且つ温熱具の装着状態において、使用者の身体に近い側に位置することが好ましい。このように、非通気性であるか、又は難通気性であるシート部材は、使用者の身体から遠い側に位置する第2面を含み、且つ少なくとも通気性を有する部位を備えたシート部材は、使用時に使用者の身体側を向く第1面を含むことが好ましい。このような形態は、後述する発熱部が、発熱に際して水蒸気の発生を伴うものである場合に特に有利である。
温熱具は、少なくともその本体部が伸縮性を有することが好ましい。本体部が伸縮性を有することで、該本体部が使用者の身体に密着しやすくなり、装着感が向上するとともに、熱が伝わりやすくなる。また、後述する保湿剤が着用者の皮膚に移行しやすくなる。これらの目的のために、温熱具の本体部においては、該本体部を構成する部材である、上述の第1のシート部材及び第2のシート部材がいずれも伸縮性を有することが好ましい。この場合、本体部は少なくとも一方向に沿って伸縮可能であることが好ましい。更に好ましくは、本体部は、第1の方向と、これに直交する第2の方向に沿って伸縮可能である。最も好ましくは、本体部は如何なる方向に沿っても伸縮可能である。第1の方向及び第2の方向は、本体部の平面内において任意に決めることができる。例えば後述する図2に示す実施形態では、本体部の長手方向を第1の方向と定め、長手方向に直交する方向である幅方向を第2の方向と定めている。しかし、この方向に制限されるものではない。
第1のシート部材及び第2のシート部材がいずれも伸縮性を有する場合、該シート部材としては、例えば伸縮性を有する不織布を用いることが、伸縮の容易さや、良好な肌触りの点から好ましい。伸縮性を有する不織布としては、構成繊維として少なくとも弾性繊維を含む不織布、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布及びスパンレース不織布などを用いることができる。
本発明の温熱具において、発熱部が、上述した被酸化性金属の酸化反応によって生じた熱を熱源として利用するものである場合、該発熱部は、被酸化性金属及び水を含有する発熱組成物で構成されることが好ましい。被酸化性金属としては、酸化反応熱を生じる金属を用いることが好ましい。そのような金属の例としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらの金属は、例えば粉末や繊維の形態で用いられる。これらの金属のうち、取り扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄を用いることが好ましく、特に鉄を粉末の形態で、つまり鉄粉の形態で用いることが好ましい。鉄粉としては、例えば還元鉄粉及びアトマイズ鉄粉から選ばれる1種又は2種以上が好適に用いられる。
被酸化性金属が粉末である場合、酸化反応が効率的に行われる観点から、その平均粒径は10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることが一層好ましく、200μm以下あることが好ましく、150μm以下であることが更に好ましい。例えば被酸化性金属の粉末の平均粒径は、10μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましい。なお、被酸化性金属の粒径は、粉体の形態における最大横断長さのことであり、篩による分級、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。
発熱部における被酸化性金属の含有量は、坪量で表して、100g/m2以上であることが好ましく、200g/m2以上であることがより好ましい。また、発熱部における被酸化性金属の含有量は、3000g/m2以下であることが好ましく、1600g/m2以下であることがより好ましい。例えば被酸化性金属の含有量は、100g/m2以上3000g/m2以下であることが好ましく、200g/m2以上1600g/m2以下であることが更に好ましい。これによって、発熱部の発熱温度を所望の温度に上昇させることができる。被酸化性金属の含有量は、JIS P8128(1995年改正版)に準じる灰分試験や、熱重量測定器で求めることができる。その他に、外部磁場を印加すると磁化が生じる性質を利用して振動試料型磁化測定試験等により定量することができる。
発熱部には、被酸化性金属とともに水が含有される。水は、温熱具の保存中に、発熱部以外の部材に移行しやすく、更に前記の第1面に施されている保湿剤組成物に含まれる水と相互に移行しやすいため、発熱部に添加された水の含有量をだけを測定しづらい。一方、酸化反応による発熱では、温熱具に付与されたすべての水が使用される。そこで本発明においては、温熱具全体に含まれる水の量を、発熱部中の被酸化性金属の質量を基準として表すこととする。具体的には、温熱具全体に含まれる水の量は、100質量部の被酸化性金属に対して、40質量部以上150質量部以下であることが好ましく、40質量部以上120質量部以下であることが更に好ましい。この範囲の量で水を含むことで、発熱部が発熱したときに、多量の水蒸気を発生させることができる。
被酸化性金属及び水に加え、発熱部は、保水材を含むことが好ましい。保水材は、水の保持が可能な材料から構成されている。本発明において保水材とは、自重に対して5質量倍以上の純水を吸収・保持できる材料を指す。そのような材料として特に好ましいものは、保水量が極めて高く、熱や塩濃度の変化で放水する性質を有する材料である吸水性ポリマーである。保水材はそれ単独で発熱部に含有させることができるほか、2枚の吸水性シート間に吸水性ポリマーを層状に配置してなる吸水性ポリマーシートの形態で発熱部に含有させることもできる。そのような吸水性ポリマーシートとしては、例えば特開平8−246395号公報に記載のものを用いることができる。
発熱部は更に、保水能、酸素供給能及び触媒能を有する点から炭素成分を含有することが好ましい。炭素成分としては、例えば活性炭、アセチレンブラック及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの炭素成分のうち、湿潤時酸素を吸着しやすいことや、発熱部の水分を一定に保てる観点から活性炭が好ましく用いられる。より好ましくは、椰子殻炭、木粉炭、及びピート炭から選ばれる1種又は2種以上の微細な粉末状物又は小粒状物からなる活性炭が用いられる。発熱部における炭素成分の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して0.3質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
発熱部は、上述した各成分に加えて、反応促進剤を含んでいてもよい。また、必要に応じて、更に界面活性剤、薬剤、凝集剤、着色剤、紙力増強剤、pH調整剤、嵩高剤等を含むこともできる。
反応促進剤は、被酸化性金属の酸化反応を持続させる目的で用いられる。また、反応促進剤を用いることにより、被酸化性金属の酸化被膜を破壊して、酸化反応を促進することができる。反応促進剤には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の硫酸塩、及び塩化物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、第1塩化鉄、第2塩化鉄等の各種塩化物、及び硫酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
発熱部における反応促進剤の含有量は、十分な発熱量が長時間持続する点から被酸化性金属100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。なかでも、2質量部以上15質量部以下とすることが好ましく、更に好ましくは3質量部以上12質量部以下である。
更に発熱部は、上述した各成分に加えて、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤には主として、水分を吸収して稠度を増大させるか、チキソトロピー性を付与する物質を用いることができる。そのような物質の例としては、アルギン酸ソーダ等のアルギン酸塩、アラビアゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガムなどの多糖類系増粘剤;デキストリン、α化澱粉、加工用澱粉などの澱粉系増粘剤;カルボキシメチルセルロース、酢酸エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体系増粘剤;ポリビニルアルコール(PVA)などの増粘剤;ステアリン酸塩などの金属石鹸系増粘剤;ベントナイトなどの鉱物系増粘剤等から選ばれた1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なかでも、発熱部中の水分量を一定に維持する観点から、多糖類系増粘剤が好ましく、特にキサンタンガム又はカルボキシメチルセルロースが好ましい。
発熱部中の増粘剤の含有量は、発熱組成物の塗布しやすさの点から、被酸化性金属100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。また、5質量部以下が好ましく、4質量部以下であることが好ましい。そして、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
発熱部は、発熱時に多量の水蒸気の発生を伴うものであることが好ましい。発生した水蒸気は、第1面を通じて外部に放出され、使用者の皮膚に到達することが好ましい。詳細には、温熱具の使用時に肌側に位置する最外層を通じて発生する水蒸気発生量が、20mg/(25cm2・10min)以上であることが好ましく、30mg/(25cm2・10min)以上であることがより好ましい。また、水蒸気発生量の上限値は、例えば、300mg/(25cm2・10min)以下であることが好ましく、210mg(25cm2・10min)以下であることがより好ましい。なかでも、20mg/(25cm2・10min)以上300mg/(25cm2・10min)以下であることが好ましく、30mg/(25cm2・10min)以上210mg(25cm2・10min)以下であることがより好ましい。このような多量の水蒸気を発生させるためには、例えば発熱部に含まれる水の量を、上述した範囲に設定すればよい。
温熱具からの水蒸気発生量は、図1に示す装置30を用いて次のように測定する。図1に示す装置30はアルミニウム製の測定室(容積2.1L)31と、測定室31の下部に除湿空気(湿度2%未満、流量2.1L/分)を流入させる流入路32と、測定室31の上部から空気を流出させる流出路33とを備えている。流入路32には、入口温湿度計34と入口流量計35とが取り付けられている。一方、流出路33には、出口温湿度計36と出口流量計37とが取り付けられている。測定室31内には温度計(サーミスタ)38が取り付けられている。温度計38としては、温度分解能が0.01℃程度のものを使用した。測定環境温度30℃(30±1℃)において温熱具を包装材から取り出し、その水蒸気放出面を上にして測定室31に載置する。金属球(4.5g)をつけた温度計38をその上に載せる。この状態で測定室31の下部から除湿空気を流す。入口温湿度計34と出口温湿度計36で計測される温度及び湿度から測定室31に空気が流入する前後の絶対湿度の差を求める。更に入口流量計35と出口流量計37で計測される流量から温熱具が放出した水蒸気量を算出する。この装置の詳細は、本出願人の先の出願に係る特開2004−73688号公報に記載されている。水蒸気量の算出には以下の式を用いる。
ここで、U(%RH):相対湿度、e(Pa):水蒸気圧、es(Pa):飽和水蒸気圧、D(g/m
3):絶対湿度、P(L):単位空気容量、S(s):サンプリング周期、A(g):水蒸気量を示す。
発熱部が、被酸化性金属及び水を含有する発熱組成物で構成される場合、該発熱部は、第1の包材と第2の包材との間に配置され、発熱体を構成することが好ましい。この場合には、例えば第1の包材上に発熱部を配置し、更にその上に第2の包材を配置し、第1及び第2の包材のうち、発熱組成物の配置部位から外方に延出する延出部位どうしを接合して、発熱体を製造することができる。第1及び第2の包材のうち少なくとも一方は、少なくともその一部に通気性を有することが好ましい。発熱部の配置は、該発熱部を構成する発熱組成物の性状に応じて適切な方式が採用される。例えば発熱組成物が粘稠体である場合には、コーターなどの塗工装置を用いて包材上に該発熱組成物を配置することができる。発熱組成物が粉粒体である場合には、定量フィーダー等の散布装置を用いて該発熱組成物を包材上に散布することができる。発熱組成物が保形性を有するシート状のものである場合には、転写装置を用いて該発熱組成物を包材上に配置することができる。
前記の第1及び第2の包材としては、該包材が通気性を有するものである場合には、多孔質の合成樹脂製シートを用いることができる。そのようなシートは、先に述べた第1のシート部材及び第2のシート部材に用いることのできるシートである、いわゆる透湿性シートであることが好ましい。透湿性シートは、十分な発熱特性を得る観点から、その通気度が7000秒/100ml以下であることが好ましく、6000秒/100ml以下であることがより好ましく、5000秒/100ml以下であることが更に好ましい。一方で、透湿性シートは、異常発熱を防ぎ、温度を制御する観点から、その通気度が100秒/100ml以上であることが好ましく、250秒/100ml以上であることがより好ましく、500秒/100ml以上であることが更に好ましい。特に、透湿性シートの通気度は、100秒/100ml以上7000秒/100ml以下であることが好ましく、250秒/100ml以上6000秒/100ml以下であることがより好ましく、500秒/100ml以上5000秒/100ml以下であることが更に好ましい。通気度は、JIS P8117(2009年改正版、以下同じ)に準じて測定される。
前記の第1の包材又は第2の包材が通気性を有さない場合には、該包材として、例えば熱可塑性樹脂のシートを用いることができる。かかるシートは、水に対して難透過性又は不透過性であり、且つ空気や水蒸気に対しても難透過性又は不透過性である。
第1の包材及び第2の包材は、その双方が通気性を有していてもよく、あるいはそれらのうちの一方が通気性を有し、且つ他方が非通気性又は難通気性であってもよい。どちらを採用するかは、温熱具の具体的な用途や適用部位に応じて判断すればよい。第1の包材及び第2の包材のうち、通気性を有する包材は、先に述べた第1のシート部材及び第2のシート部材のうち、通気性を有するシート部材と同じ側に配置されることが、発熱特性の点、及び水蒸気発生の点から好ましい。
発熱部は、温熱具中に少なくとも1個配置される。発熱部の配置個数は、温熱具の具体的な用途に応じて適切に選択することができる。例えば温熱具を使用者の顔に装着して使用する場合には、1つの温熱具中に2個の発熱部を配置することができる。
本発明の温熱具においては、使用時に使用者の身体側を向く第1面に保湿剤組成物が施されている。保湿剤組成物は、保湿剤及び水を構成成分として少なくとも含むものである。保湿剤は、使用者の皮膚に施されたときに、皮膚の水分量を増加させるか、又は少なくとも水分量を維持する作用を有する剤のことである。本発明においては、保湿剤として特定の物性を有するものを用いている。詳細には、保湿剤組成物は、25℃での粘度が40Pas以上、特に60Pas以上、とりわけ70Pas以上であることが好ましい。また25℃での粘度が1200Pas以下、特に500Pas以下、とりわけ300Pas以下であることが好ましい。例えば、保湿剤組成物は、25℃における粘度が40Pas以上1200Pas以下であることが好ましく、60Pas以上500Pas以下であることが更に好ましく、70Pas以上300Pas以下であることが一層好ましい。この範囲の粘度を有する保湿剤組成物は比較的高粘度のものである。このような高粘度の保湿剤組成物を第1面に施すことで、該保湿剤組成物が、第1面を含むシート部材内に浸透しづらくなり、第1面上にキープされやすくなる。その結果、使用者の皮膚への移行性が良好になる。保湿剤組成物の粘度を上述の範囲に調整するには、例えば該組成物中に増粘剤等の粘度調整剤を配合し、その配合量を適切に設定すればよい。保湿剤組成物の粘度は、B型粘度計(東機産業製:TVB−10R,5rpm,1分間)を用いて、測定粘度に適応したTバー(T−C:40〜400Pas,又はT−E:200〜2000Pas)を選択することにより測定することができる。
保湿剤組成物は、上述のとおり保湿剤及び水を含むものである。保湿剤組成物における水の割合は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが一層好ましい。また80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが一層好ましい。例えば保湿剤組成物における水の割合は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以上60質量%以下であることが一層好ましい。保湿剤組成物における水の割合をこの範囲に設定することで、第1面上に保湿剤組成物を容易に施すことができ、また第1面上における保湿剤組成物の保持性が良好になり、保湿剤組成物が、第1面を含むシート部材内に浸透しづらくなる。更に、良好な発熱特性が得られる。その上、第1面から使用者の皮膚への保湿剤組成物の移行性が良好になる。保湿剤組成物における水の割合は、赤外線水分計(ケット科学研究所製:FD−240)を用いて、保湿剤組成物を105℃で2時間加熱乾燥させた時の重量減少率から測定することができる。
本発明においては、保湿剤組成物に含まれる水の割合を上述のように調整することに加えて、保湿剤組成物における水分活性を調整することも、第1面上に保湿剤組成物を容易に施す観点、及び第1面上における保湿剤組成物の保持性を高める観点から有利である。また、保湿剤組成物を、第1面を含むシート部材内に浸透しづらくする観点、良好な発熱特性を得る観点、及び第1面から使用者の皮膚への保湿剤組成物の移行性を高める観点からも有利である。水分活性は、食品、化粧品、医薬製剤等における微生物の増殖能を評価するために用いられる指標で、製品中の自由水の割合を表す値である。水分活性(Water Activity:Aw)は、製品を入れた密閉容器内の水蒸気圧(P)と、その温度における純水の蒸気圧(Po)の比:P/Poで定義される。水分活性は、例えば、ロトロニック水分活性測定システム(GSI Creos製)により測定することができる。保湿剤組成物は、20℃での水分活性が0.45以上であることが好ましく、0.6以上であることが更に好ましく、0.7以上であることが一層好ましい。また0.99以下であることが好ましく、0.98以下であることが更に好ましく、0.97以下であることが一層好ましい。例えば保湿剤組成物は、20℃での水分活性が、0.45以上0.99以下であることが好ましく、0.6以上0.98以下であることが更に好ましく、0.7以上0.97以下であることが一層好ましい。保湿剤組成物の水分活性をこの範囲内に調整するためには、例えば保湿剤組成物における水、及び水溶性成分、親水性成分、吸湿性成分、保水性成分などの割合を調整すればよい。
保湿剤組成物に含まれる水の割合は上述したとおりであるところ、保湿剤組成物に含まれる水の坪量が10g/m2以上、特に20g/m2以上、とりわけ30g/m2以上となるように、第1面に保湿剤組成物を施すことが好ましい。また、保湿剤組成物に含まれる水の坪量が240g/m2以下、特に200g/m2以下、とりわけ160g/m2以下となるように、第1面に保湿剤組成物を施すことが好ましい。例えば保湿剤組成物に含まれる水の坪量が10g/m2以上240g/m2以下、特に20g/m2以上200g/m2以下、とりわけ30g/m2以上160g/m2以下となるように、第1面に保湿剤組成物を施すことが好ましい。このように保湿剤組成物を第1面に施すことで、第1面上に保湿剤組成物を容易に施すことができ、また第1面上における保湿剤組成物の保持性が良好となり、保湿剤組成物が、第1面を含むシート部材内に浸透しづらくなる。更に、良好な発熱特性が得られる。その上、第1面から使用者の皮膚への保湿剤組成物の移行性が良好になる。なお、前記の水の坪量は、発熱部と第1面との重なり領域の面積を基準として、該領域内に存在する水の量から算出される値である。以下、水の坪量と言うときには、この定義の坪量のことを意味する。
第1面に施された保湿剤組成物に含まれる水の坪量は上述のとおりであるところ、保湿剤組成物そのものの坪量は、発熱部と第1面との重なり領域の面積を基準として、該領域内において、90g/m2以上であることが好ましく、110g/m2以上であることが更に好ましく、130g/m2以上であることが一層好ましい。また300g/m2以下であることが好ましく、260g/m2以下であることが更に好ましく、240g/m2以下であることが一層好ましい。例えば保湿剤組成物の坪量は、90g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、110g/m2以上260g/m2以下であることが更に好ましく、130g/m2以上240g/m2以下であることが一層好ましい。この範囲の坪量で保湿剤組成物を施すことで、第1面上における保湿剤組成物の保持性が良好になり、保湿剤組成物が、第1面を含むシート部材内に浸透しづらくなる。また良好な発熱特性が得られ、更に、第1面から使用者の皮膚への保湿剤組成物の移行性が良好になる。なお、前記の保湿剤組成物の坪量は、発熱部と第1面との重なり領域の面積を基準として、該領域内に存在する保湿剤組成物の量から算出される値である。以下、保湿剤組成物の坪量と言うときには、この定義の坪量のことを意味する。
第1面において保湿剤組成物を施すパターンに特に制限はない。例えば第1面を含むシート部材である第1のシート部材が通気性を有する場合には、該シート部材の通気性が損なわれない限りにおいて、種々のパターンで保湿剤組成物を施すことができる。特に、発熱部と第1面とが平面視で重なる領域において、保湿剤組成物が、該保湿剤組成物の非存在部が形成されるように施されていることが好ましい。つまり発熱部と第1面とが平面視で重なる領域(以下、この領域のことを「重なり領域」という。)は、保湿剤組成物が施されている部位を含むとともに、保湿剤組成物が施されていない部位も含んでいる。このように、重なり領域は、保湿剤存在部及び保湿剤非存在部を含んで構成されている。このようなパターンで保湿剤組成物を施すことには以下に述べる利点がある。
すなわち、温熱具における本体部が伸縮性を有する場合、該温熱具の着用時に該本体部を伸長させると、その伸長に起因して保湿剤非存在部の面積が増大する。その結果、保湿剤非存在部を通じての発熱部への酸素の供給が円滑になり、該発熱部の発熱特性が更に良好になり、使用者により十分な温感を付与することができる。また、発熱部がより十分に発熱することで多量の水蒸気が発生し、且つ保湿剤非存在部を通じての外部へ向けての水蒸気の発生が円滑になり、使用者の皮膚に水蒸気が効率よく到達する。しかも、重なり領域に多量の保湿剤を保持することが可能なので、多量の保湿剤を使用者の皮膚に移行させることができる。その上、発生した水蒸気の作用で、使用者の皮膚に移行した保湿剤が皮膚内に浸透しやすくなり、保湿効果が一層顕著なものとなる。
上述の効果を一層顕著なものとする観点から、伸長前の状態において、重なり領域の面積に対して、保湿剤存在部の面積の合計の割合が、20%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましく、35%以上であることが一層好ましい。また75%以下であることが好ましく、60%以下であることが更に好ましく、55%以下であることが一層好ましい。特に、重なり領域の面積に対して、保湿剤存在部の面積の合計の割合が、20%以上75%以下であることが好ましく、30%以上60%以下であることが更に好ましく、35%以上55%以下であることが一層好ましい。この面積の割合は、発熱部と第1面とが平面視で重なる領域において、保湿剤存在部の大きさをノギス等で測定して面積を計算し、発熱部の面積に対する割合を算出して測定することができる。
一方、伸長状態においては、重なり領域の面積に対して、保湿剤存在部の面積の合計の割合が、20%以上であることが好ましく、25%以上であることが更に好ましく、30%以上であることが一層好ましい。また65%以下であることが好ましく、50%以下であることが更に好ましく、45%以下であることが一層好ましい。特に、重なり領域の面積に対して、保湿剤存在部の面積の合計の割合が、20%以上65%以下であることが好ましく、25%以上50%以下であることが更に好ましく、30%以上45%以下であることが一層好ましい。ここで言う伸長状態とは、伸長前の本体部2の長さを100としたときに、該本体部2を130まで伸長させたときの状態のことである。
保湿剤組成物に含まれる保湿成分としては、例えば化粧品や医薬品の分野でこれまで用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えば、親水性の成分として水溶性有機酸、水溶性有機酸塩、多価アルコール等が挙げられ、一方、親油性の成分としてセラミド類、コラーゲン類、高級アルコール、高級脂肪酸、エステル油、炭化水素類、シリコーン類などが挙げられる。これらの保湿剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記の水溶性有機酸としては、例えばL−グルタミン、L−グルタミン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、セリン、タンニン酸、L−チロシン、乳酸、尿酸、パラアミノ安息香酸、L−バリン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、DL−ピロリドンカルボン酸、フィチン酸、L−メチオニン、リンゴ酸、L−ロイシン、アジピン酸、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、N−アセチル−L−グルタミン酸、ε−アミノカプロン酸、2−アミノ−2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、γ−アミノ酪酸、アラニン、L−アルギニン、エデト酸、塩化リジン、L−オキシプロリン、カプリル酸、カプロン酸、クエン酸、グルタミン酸、グルコン酸、グルタチオンなどを挙げることができる。
前記の水溶性有機酸塩としては、例えばマロン酸塩、アスパラギン酸ナトリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインヒドロキシアルミニウム、L−グルタミン酸塩、エデト酸カリウム、エデト酸トリエタノールアミン、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二ナトリウムカリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、オレイン酸グリセリルリン酸エステルナトリウム、5−グアニル酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グリシンアルミニウム、グルコン酸カルシウム、L−グルタミン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、シュウ酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、L−ヒスチジン塩酸塩、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸L−アスコルビン酸マグネシウム、リン酸−水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、アルギニンコハク酸塩、グアニジン誘導体などを挙げることができる。
前記の多価アルコールとしては、化粧品等に通常使用されるものであれば特に制限されないが、分子内に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを用いることが、皮膚刺激が低い点や、臭いが弱い点で好ましい。具体的には、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン、グルコース、マンニトール、マルチトール、ショ糖、フルクトース、キシリトース、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトール、エリスリトール、トレハロース、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、澱粉分解糖還元アルコールなどを挙げることができる。
前記のセラミド類としては、例えばセラミド2、セラミド3、N−アシルスフィンゴシン、N−アシルジヒドロスフィンゴシン、N−アシルフィトスフィンゴシン等のセラミドや、スフィンゴミエリン、セレブロシド、ガングリオシド、スルファチド、スフィンゴシン、アシルスフィンゴシン、テトラアセチルフィトスフィンゴシン等のセラミド誘導体や、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、トリヒドロキシパルミタミドヒドロキシプロピルミリスチルエーテル、セチルヒドロキシプロリンパルミタミドなどのセラミド類似物質などを挙げることができる。
前記のコラーゲン類としては、例えばコラーゲン、コラーゲンペプチド、アテロコラーゲンなどを挙げることができる。
前記の高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ラノリン、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールなどを挙げることができる。
前記の高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などを挙げることができる。
前記のエステル油としては、例えばオリーブ油、カルナウバロウ、ラノリン、ホホバ油、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、イソプロピルステアリン酸エステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸コレステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)などを挙げることができる。
前記の炭化水素類としては、例えば流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、スクワレンなどを挙げることができる。
前記のシリコーン類としては、例えばジメチコン、環状シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンなどを挙げることができる。
保湿剤組成物には、保湿成分及び水に加えて、例えば増粘剤、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、美白剤、血行促進剤、皮脂抑制剤、溶解剤収斂剤、その他の油剤、ビタミンや植物エキスなどの薬効成分、pH調整剤、キレート剤、着色料、香料などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して配合することができる。
保湿剤組成物は、保湿成分と水を含み、前記粘度及び水分活性を有するものであれば、ゲル状、乳化物、可溶化物等の形態が好ましい。第1面を含むシート部材への塗布性に優れ、一方シート部材内に浸透しづらくなり、第1面上に適度な厚さをもって保持する観点から、保湿剤組成物は乳化物の形態が好ましい。
図2には、本発明の温熱具の一実施形態が示されている。同図に示す温熱具1は、いわゆるアイマスクタイプの蒸気温熱具であり、図3に示すとおり、ヒトの目及びその周囲に当接させて、所定温度に加熱された水蒸気を目及びその周囲に付与するとともに、保湿剤を皮膚に移行し浸透させるために用いられるものである。図2、図4及び図5に示すとおり、温熱具1は扁平な形状をしており、第1面1aと、これに対向する第2面1bとを有している。また温熱具1は、長手方向Xと、これに直交する幅方向Yとを有し、長手方向Xに沿って長い形状をしている。温熱具1は、その長手方向Xの中央域に本体部2を有している。本体部2も扁平な形状をしており、長手方向Xに沿って長い形状になっている。温熱具1は、長手方向Xの各側部に耳掛け部3,3を有している。耳掛け部3は、本体部2における長手方向Xの端部の位置から、長手方向Xの外方に向けて延びている。各耳掛け部3には、幅方向Yに沿って延びる2本のスリット3a,3bが、長手方向Xに距離を隔てて形成されている。各スリット3a,3bは、長手方向Xの外方に向けて凸の曲線を描くように形成されている。各スリット3a,3bは、温熱具1の着用時に、耳掛け部3を長手方向Xの外方に向けて伸長させたときに開口し、その開口に使用者の耳を通すために用いられる。スリット3a,3bを2つ設けた理由は、使用者の顔のサイズへの適応性を高めるためである。
本体部2は、第1のシート部材4a及び第2のシート部材4bを有している。これらのシート部材は、本体部2の最外面をなす部材であり、第1シート部材4aが、上述した第1面1aを含み、第2シート部材4bが、第2面1bを含んでいる。第1のシート部材4aと第2のシート部材4bとは、幅方向Yに関しては同様の形状を有している。一方、長手方向Yに関しては、第1のシート部材4aの各端縁4a’,4a’を越えて、第2のシート部材4bが長手方向Xの外方へ向けて延出している。そして、その延出部位が、上述した耳掛け部3となっている。第1のシート部材4aと第2のシート部材4bとは、少なくとも、第1のシート部材4aの周縁域が、第2のシート部材4bと接合している。第1のシート部材4aの周縁域よりも内側の領域においては、第1のシート部材4aと第2のシート部材4bとは非接合状態になっていることが、本体部2の伸縮性が損なわれにくい点から好ましい。なお、耳掛け部3は、第2のシートに対して第1のシートを延出させて形成してもよいし、第1のシート及び第2のシートを目及びその周囲を覆う大きさとして耳掛け部3を別部材で取り付けてもよい。
第1及び第2のシート部材4a,4bはいずれも伸縮性を有していることが好ましい。例えば第1及び第2のシート部材4a,4bは、通気性を有する伸縮性不織布から構成されている。したがって、本体部2は伸縮性を有している。同様に耳掛け部3も伸縮性を有している。これらのシート部材4a,4bは、少なくとも長手方向Xに沿って伸縮性を有し、好ましくは幅方向Yに沿っても伸縮性を有している。更に好ましくは、長手方向X及び幅方向Yを含むX−Y平面のあらゆる方向において伸縮性を有している。
第1のシート部材4aと第2のシート部材4bとの間には、発熱体5が配置されている。発熱体5は扁平な形状を有するものであり、平面視して長方形をしている。発熱体5は、第1の包材5aと第2の包材5bとを有している。第1の包材5aは、第1のシート部材4a側に位置しており、第2の包材5bは、第2のシート部材4b側に位置している。第1の包材5aと第2の包材5bとは同形をしている。第1の包材5a及び第2の包材5bはそのいずれもが通気性を有する部位を備えるものであってもよく、あるいはいずれか一方のみが通気性を有する部位を備え、他方が難通気性又は非通気性であってもよい。後者の場合、第1面1a側に位置する包材である第1の包材5aが、通気性を有する部位を備えたものであることが好ましい。
第1の包材5aと第2の包材5bとの間には発熱部6が配置されている。発熱部6も平面視して長方形をしている。第1の包材5a及び第2の包材5bは、発熱部6の縁部から外方に延出した延出部位を有し、各包材5a,5bの延出部位どうしが接合されることで、発熱体5が形成されている。また、この接合によって発熱体6の外部への漏れ出しが防止されている。
本体部2は、発熱体5を2個備えている。2個の発熱体5は、長手方向Xに沿って配置されている。本体部2が長手方向Xに沿って伸縮性を有することは先に述べたとおりなので、2個の発熱体5は、本体部2の伸縮方向に沿って配置されていると言える。各発熱体5は、温熱具1を図3に示す態様で使用者の顔に装着したときに、使用者の眼球上に位置するように配置されていることが好ましい。また各発熱体5は、温熱具1における幅方向Yに沿う中心線CLに対して対称の位置に配置されている。
各発熱体5は、これを構成する第2の包材5bが、該第2の包材5bと対向する部材である第2のシート部材4bと接合して接合部9が形成されていることで、本体部2に固定されている。発熱体5の固定は、該発熱体5を構成する発熱部6における長手方向Xの最外方の位置で行われる。換言すると、温熱具1における幅方向Yに沿う中心線CLから見て、長手方向Xの最も遠い位置に接合部9が設けられている。そして、発熱体5と第1及び第2のシート部材4a,4bとは、接合部9以外の位置では非固定の状態となっている。つまり、発熱体5と第1及び第2のシート部材4a,4bとは、接合部9の位置のみで、すなわち1箇所で固定されている。接合部9は、発熱体と包材5を固定するために、発熱体毎に、周辺部又は中央部の少なくとも1か所に設けることが好ましい。
本体部2を構成する第1のシート部材4aの外表面、すなわち第1面1aには、保湿剤組成物7が施されている。保湿剤組成物7は、発熱部6と第1面1aとの重なり領域において不連続に施されている。すなわち、重なり領域は、保湿剤存在部8a及び保湿剤非存在部8bを含んで構成されている。本実施形態においては、保湿剤存在部8aは幅方向Yに沿って延びるストライプ状になっている。保湿剤存在部8aの延びる方向は、本体部2の伸縮方向と交差する方向であることが好ましい。本実施形態においては、保湿剤存在部8aの延びる方向は、本体部2の伸縮方向と直交する方向になっている。各保湿剤存在部8aは、幅及び長さを有する細長い長方形状をしており、それらの幅はほぼ等しくなっている。隣り合う保湿剤存在部8aの間の領域、すなわち保湿剤非存在部8bの幅は、保湿剤存在部8aの幅と同じであるか、あるいは異なっている。また各保湿剤非存在部8bの幅は、ほぼ等しくなっている。
保湿剤存在部8aは、その幅、すなわち長手方向Xに沿う長さが2mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることが更に好ましく、3mm以上であることが一層好ましい。また7.5mm以下であることが好ましく、6.5mm以下であることが更に好ましく、5.5mm以下であることが一層好ましい。例えば保湿剤存在部8aの幅は、2mm以上7.5mm以下であることが好ましく、2.5mm以上6.5mm以下であることが更に好ましく、3mm以上5.5mm以下であることが一層好ましい。この幅で保湿剤存在部8aを設けることで、十分な量の保湿剤組成物を首尾よく使用者の皮膚に移行させることができる。
同様の観点から、隣り合う保湿剤存在部8a間に位置する保湿剤非存在部8bの幅、すなわち長手方向Xに沿う長さは2.5mm以上であることが好ましく、3.5mm以上であることが更に好ましく、4.5mm以上であることが一層好ましい。また10mm以下であることが好ましく、9mm以下であることが更に好ましく、8mm以下であることが一層好ましい。例えば保湿剤非存在部8bの幅は、2.5mm以上10mm以下であることが好ましく、3.5mm以上9mm以下であることが更に好ましく、4.5mm以上8mm以下であることが一層好ましい。
図5に示すとおり、保湿剤7は、第1面1a上に厚みをもって施されている。このように保湿剤7を施すことで、温熱具1の使用状態において、保湿剤7が使用者の皮膚に首尾よく移行する。保湿剤7を、厚みをもって施すためには、該保湿剤7を、微細構造を形成して構造粘性を調整したり、水溶性高分子を配合して水相の稠度により粘度を調整したりした乳化物とすればよい。なお、保湿剤7が厚みをもって施されていることは、該保湿剤7が、第1面1aを構成する第1のシート部材4a内に非浸透状態になっていることを意味するものではない。保湿剤7は、その一部が第1のシート部材4a内に浸透していてもよい。
なお図には示していないが、使用前の状態の温熱具1においては、保湿剤7の保護を目的として、該保湿剤7を覆うように保護フィルムを第1面1a上に配置してもよい。
図6(a)及び(b)には、本体部2及び耳掛け部3のいずれもが長手方向Xに沿って伸縮性を有する温熱具1を使用するときの状態が示されている。これらの図のうち、図6(a)は、温熱具1を使用する前の状態を示し、図2と同様である。図6(b)は、温熱具1を図3に示す着用状態とするために、長手方向Xに沿って該温熱具1を伸長させた状態を示している。図6(a)に示す状態の温熱具1を着用するときには、左右一対の耳掛け部3をそれぞれ手で把持し、長手方向Xの外方に向けて伸長させる。耳掛け部3は、伸縮性を有する素材である第2のシート部材4bから構成されているので、伸長は容易に行うことができる。この伸長によって、耳掛け部3に設けられている各スリット3a,3bが開口して、耳掛け用開口部3a’,3b’が形成される。
また、前記の伸長によって、温熱具1の本体部2も長手方向Xに沿って伸長する。本体部2は、その外面を構成する第1及び第2のシート部材4a,4bがいずれも伸縮性を有する素材から構成されているので、伸長は容易に行うことができる。本体部2が長手方向Xに沿って伸長することで、本体部2の第1面1aに形成されている保湿剤存在部8a間に位置する保湿剤非存在部8bが、長手方向Xに沿って伸長するとともに、隣り合う保湿剤非存在部8bどうしが互いに離れる方向に移動する。この状態下に、耳掛け部3の開口部3a’,3b’を各耳に掛けつつ、本体部2における第1面を顔面に当接させて、図3に示す装着状態とする。
以上の装着手順によれば、本体部2を長手方向Xに沿って伸長することで、保湿剤非存在部8bの面積が伸長前に比べて増大する。その結果、本体部2の第1面1aに多量の保湿剤組成物を保持させておいても、外部から発熱部6への空気の供給が円滑に行われ、発熱部6が十分に発熱し、使用者に十分な温感を付与することができる。また発熱部6が十分に発熱することで、該発熱部6から十分な量の水蒸気が発生し、且つ発生した水蒸気が保湿剤非存在部8bを通じて使用者の皮膚に円滑に供給され、使用者の皮膚の角層が軟化しやすくなる。更に、本体部2の第1面には十分な量の保湿剤組成物が保持されており、この保湿剤組成物が使用者の皮膚に十分に、且つ皮膚の角層が水蒸気によって軟化している状態下に、皮膚に移行するので、保湿剤組成物が皮膚の深部にまで到達しやすくなり、保湿剤組成物による保湿効果が十分に発現する。
本体部2の長手方向Xに沿う伸長においては、発熱部6と第1面1aとの重なり領域に形成された保湿剤存在部8aが、伸長後に接合部9よりも長手方向Xの外方に移動することはない。この理由は、先に図5に関して述べたとおり、発熱部6を含む各発熱体5が、温熱具1における幅方向Yに沿う中心線CLから見て、長手方向Xの最も遠い位置において接合部9によって接合されているからである。したがって、温熱具1を長手方向Xに沿って伸長させて、伸長状態の該温熱具1を使用者の目及びその周囲に当接させたときに、使用者の目尻又はその近傍の位置に、保湿剤存在部8aが位置しやすくなる。したがって本実施形態の温熱具1は、目もと、特に目尻の保湿に効果的であり、目尻を含む目もとの皺が目立ちにくくなるという利点がある。
図7には、本発明の温熱具1の別の実施形態が示されている。同図に示す温熱具1は、第1及び第2のシート部材4a,4bの形状が相違する以外は、図2ないし図6に示す実施形態の温熱具と同様の構成をしている。したがって、本実施形態に関し特に説明しない点については、先の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。
本実施形態の温熱具1は、長手方向Xと、これに直交する幅方向Yとを有し、長手方向Xに沿って長い形状をしている。本体部2も、長手方向Xに沿って長い形状になっている。先の実施形態の温熱具が、使用者の目及びその周囲を覆う形状をしていたのに対して、本実施形態の温熱具1は、図8に示すとおり、使用者の口、頬、及び鼻翼を覆う形状をしている。この目的のために、本実施形態の温熱具1における本体部2には、第1開口部10a及び第2開口部10bが形成されている。第1及び第2開口部10a,10bは、温熱具1における幅方向Yに沿う中心線CL上に位置し、且つ幅方向Yに沿って配置されている。2つの発熱体5は、第1及び第2開口部10a,10bを挟んで対称の位置に配置されている。第1及び第2開口部10a,10bは、幅方向Yに沿う長さよりも、長手方向Xに沿う長さの方が長くなっている。図8に示すとおり、第1及び第2開口部10a,10bのうち、第1開口部10aは、温熱具1の着用状態において使用者の鼻尖、鼻柱及び鼻孔を露出させるためのものである。一方、第2開口部10bは、温熱具1の着用状態において使用者の口全体を露出させるためのものである。
本体部2における第2開口部10b寄りの下端縁2bは、該下端縁2bにおける中心線CL上に位置する部位及びその近傍の部位が、上端縁2a側に向けて逆V字状に切れ込んでいる。この切れ込みによって、温熱具1の装着状態において、使用者の顎に対応する部位での該温熱具1のフィット性が向上する。
図9は、図7におけるIX−IX線断面図である。図9に示すとおり、各発熱体5は、これを構成する第2の包材5bが、該第2の包材5bと対向する部材である第2のシート部材4bと接合して接合部9が形成されていることで、本体部2に固定されている。発熱体5の固定は、該発熱体5を構成する発熱部6における長手方向Xの最内方の位置で行われる。換言すると、温熱具1における幅方向Yに沿う中心線CLから見て、長手方向Xの最も近い位置に接合部9が設けられている。そして、発熱体5と第1及び第2のシート部材4a,4bとは、接合部9以外の位置では非固定の状態となっている。つまり、発熱体5と第1及び第2のシート部材4a,4bとは、接合部9の位置のみで、すなわち1箇所で固定されている。
本実施形態の温熱具1における本体部2及び耳掛け部3のいずれもが長手方向Xに沿って伸縮性を有する場合、該温熱具1を着用するときには、左右一対の耳掛け部3をそれぞれ手で把持し、長手方向Xの外方に向けて伸長させる。この伸長に連れて本体部2も長手方向Xに沿って伸長する。本体部2の長手方向Xに沿う伸長においては、発熱部6と第1面1aとの重なり領域に形成された保湿剤存在部8aが、伸長後に接合部9よりも長手方向Xの内方に移動することはない。この理由は、上述したとおり、発熱部6を含む各発熱体5が、温熱具1における幅方向Yに沿う中心線CLから見て、長手方向Xの最も近い位置において接合部9によって接合されているからである。したがって、温熱具1を長手方向Xに沿って伸長させて、伸長状態の該温熱具1を使用者の口及び頬並びにそれらの周囲に当接させたときに、使用者の口角若しくは頬又はそれらの近傍の位置に、保湿剤存在部8aが位置しやすくなる。したがって本実施形態の温熱具1は、口角や頬の保湿に効果的であり、頬の毛穴やほうれい線が目立ちにくくなるという利点がある。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の各実施形態においては、発熱部を複数用いたが、温熱具の具体的な用途によっては発熱部を1つだけ用いてもよく、あるいは3つ以上用いてもよい。例えば、中心線CLを挟んで複数個の発熱部を配する場合には、シート部材の伸縮する方向(X−X)に沿って配置することが好ましい。更に各発熱体は、少なくとも1つの接合部を、温熱具を使用する部位に対応した取付け位置に設けることが好ましい。
また前記の各実施形態は、本発明の温熱具を使用者の顔に適用したものであったが、温熱具の適用部位は顔に限られず、身体の他の部位、例えば肩、腰、膝、肘、腕、脚に温熱具を適用してもよい。
また前記の各実施形態では、保湿剤存在部の延びる方向が、本体部の伸縮方向と直交する方向であったが、これらの方向は、0度超90度以下の角度でもって交差していてもよい。
また前記の各実施形態では、保湿剤を幅方向Yに沿ってストライプ状に施したが、発熱部と第1面との重なり領域において、保湿剤非存在部が形成されるように保湿剤が施される限り、保湿剤を施すパターンに制限はない。例えば、保湿剤非存在部が幅方向Xと幅方向Yで直交する「格子状」に形成され、保湿剤存在部が幅方向X、及び幅方向Yに沿ってドット状のようなパターンで配置されるように保湿剤を施すことができる。また、保湿剤の非存在部はランダムに配置されていればよく、各形状は同じであっても異なっていてもよい。
また、前記の各実施形態では、温熱具における本体部及び耳掛け部の双方が伸縮性を有することが好ましかったが、これに代えて、本体部及び/又は耳掛け部が伸縮性を有していなくてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
以下に説明する実施例及び比較例においては、図2ないし図6に示す蒸気温熱具1を、以下の手順で製造した。
(1)発熱部6の調製
表1に示す組成の発熱組成物を、次の手順で調製した。
増粘剤を水に溶解し、次いでリン酸三カリウムを溶解して水溶液を調製した。一方で、鉄粉、活性炭をプレ混合した粉体を用意し、前記水溶液にプレ混合粉体を入れ、ディスクタービン型撹拌羽根で150rpm、10分間撹拌してスラリー状の発熱組成物を得た。前記発熱組成物をポリエチレンフィルムからなる基材シートの上にダイコーティング法により塗工し(塗工坪量600g/m2)、次いで塗工した発熱組成物の上に食塩(局方塩化ナトリウム)を散布し(坪量31.6g/m2)、更に2枚のパルプシート(坪量20g/m2,30g/m2)の間に吸水性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム,平均粒径320μm)を坪量70g/m2となるように挟持して一体化したポリマーシートを積層し、幅方向に裁断(50mm×50mm)して、発熱部6を得た。
(2)発熱体5の製造
発熱体5を構成する第1の包材5aとして、坪量が50g/m2であり、通気度が3500秒/100mlである炭酸カルシウム含有ポリエチレン透湿性フィルム(株式会社興人社製TSF−EU)を用意した。第2の包材5bとして、非通気性で、ポリエチレン100%のフィルムとパルプシートとをラミネートした坪量71g/m2のシートを用意した。第2の包材5bにおけるパルプシート上に、50mm×50mmに裁断した発熱部6を、ポリエチレンフィルムからなる基材側が下になるように積層し、更にその上に第1の包材5aを積層した。そして、第1の包材5a及び第2の包材5bそれぞれの周縁部をヒートシールによって密閉した。このようにして、発熱部6が50mm×50mmである正方形の形状をした発熱体5を得た。
(3)蒸気温熱具の作製
蒸気温熱具を構成する第1のシート部材4aとして、ポリプロピレン/ポリエチレンからなり伸縮性を有する不織布(ダイワボウポリテック株式会社製:MLV−80,坪量80g/m2)を用いた。また第2のシート部材4bとして、ポリエステルからなる伸縮性を有する不織布(ダイワボウポリテック株式会社製:TT−70,坪量70g/m2)を用いた。両シート部材4a,4b間に2つの発熱体5を配置し、且つ両シート部材4a,4bが直接対向する部位にホットメルト粘着剤を塗布して、両シート部材4a,4bを接合した。発熱体5は、第2のシート部材4bにのみ接合した。接合部9の位置は、図5に示すとおりとした。
次に、矩形状に裁断した保護フィルム(帝人デュポン株式会社製:ピューレックスA31,厚み25μm,素材PET)の表面に保湿剤組成物をストライプ状に塗工し、更に保護フィルムの保湿剤塗工面と第1のシート部材4aの表面が対面するように両シート面を重ね合わせ、第1のシート部材4aの表面に、保湿剤組成物を転写させる方法で、保湿剤存在部8aをストライプ状に形成した。保湿剤組成物の組成及び物性は、以下の表2及びに表3に示すとおりであった。また、保湿剤組成物の具体的な塗工のパターンは以下に述べるとおりとした。
更に、保湿剤組成物を形成した蒸気温熱具を非通気性/非透湿性のアルミピロー内に封入し、50℃環境下にて24時間静置して水分移行を平衡化した後、後述する評価を実施するまで、20℃環境下にて静置保管した。
〔実施例1ないし14及び比較例1ないし3〕
表4ないし表6に示す保湿剤組成物を用いた。保湿剤存在部8aは、その幅が4mmとなるようにした。長さは本体部2の幅方向Yのほぼ全域にわたるようにした。保湿剤非存在部8bは、その幅が6mmとなるようにし、保湿剤存在部8aと非存在部8bの合計幅を10mmとして、本体部2の幅方向Yに沿って塗布した。保湿剤存在部8aは、第1のシート部材4aの不織布内部に保湿剤組成物が全て埋没しておらず、隣接する保湿剤非存在部8bの表面よりも、保湿剤存在部8aの表面の方が立体的に高く、段差が目視で確認できる程度の厚みをもって形成した。このようにして目的とする蒸気温熱具を得た。
〔実施例15ないし18〕
保湿剤組成物として、以下の表3の保湿剤組成物12及び15に示す組成及び物性を有するものを用いた(表7参照)。保湿剤12については、保湿剤存在部8aの幅が3mm、5mm、6mmとなるようにし、保湿剤15については、保湿剤存在部8aの幅が6mmとなるようにした。これ以外は実施例1と同様にして蒸気温熱具を得た。
〔実施例19ないし24〕
保湿剤組成物として、以下の表2(保湿剤組成物3)に示す組成及び物性を有するものを用いた(表8参照)。保湿剤存在部8aは、その幅が2.5mmないし7mmとなるようにした。保湿剤非存在部8bは、その幅が3mmないし7.5mmとなるようにした。これ以外は実施例1と同様にして蒸気温熱具を得た。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた蒸気温熱具について、以下の方法で伸長前及び伸長状態での発熱特性(昇温時間、最高温度)を測定した。また以下の方法で、保湿剤組成物の「塗工のしやすさ」、「保持性」、「皮膚への移行性」、「保湿感」、「べたつきのなさ」、及び「蒸気温熱具の温感」を4名のパネラーに評価させ、それぞれの項目についてパネラー4名のスコアを平均することにより評価値とした。それらの結果を、以下の表4ないし表8に示す。なお、表7に記載の実施例11及び14は表5に記載のものと同じである。
〔伸長前の発熱特性(昇温時間、最高温度)〕
作製した蒸気温熱具をアルミピローから取り出し、本体部2が伸長前の状態のまま、直ちにJIS S4100(1996年改正版)に準拠した測定機に蒸気温熱具をセットし、蒸気温熱具の第2のシート部材4bの外面に温度センサーを設置して、測定面の温度を10秒間隔で1時間測定した。得られた温度プロファイルから、伸長前の状態における昇温時間(蒸気温熱具をセットして測定面の温度が35℃に達した時点から、45℃に到達するまでの時間)と、最高温度を計測した。この結果を、表4ないし表8に示す。なお、表8に記載の実施例3は、表4に記載のものと同じである。
〔伸長状態の発熱特性(昇温時間、最高温度)〕
作製した蒸気温熱具をアルミピローから取り出し、本体部2を長手方向Xに沿って、もとの長さの130%になるように伸長した状態のまま、直ちにJIS S4100(1996年改正版)に準拠した測定機に蒸気温熱具をセットし、伸長前の発熱特性の測定と同様に、伸長状態における昇温時間及び最高温度を計測した。この結果を、表7に示す。
〔保湿剤組成物の塗工のしやすさ〕
保護フィルム表面に型枠(ストライプ状のくり抜き部を有するスリット板)を重ね、型枠に保湿剤組成物をゴムヘラを用いて摺り切りで流し込む要領で保湿剤組成物を保護フィルム表面に塗工した時の「塗工しやすさ」を、以下の基準で5段階評価した。
5:保湿剤組成物が極めて伸ばしやすく、とても容易に塗工できる。
4:保湿剤組成物が伸ばしやすく、容易に塗工できる。
3:保湿剤組成物がやや伸びにくいが、塗工できる。
2:保湿剤組成物が伸びにくいが、塗工できる。
1:保湿剤組成物が伸びにくく、塗工が困難。
〔第1のシート部材4a上での保湿剤組成物の保持性〕
蒸気温熱具を50℃環境下で平衡化した後の、保湿剤存在部8aを目視で見た時の「保湿剤組成物の保持性」を、以下の基準で5段階評価した。
5:不織布繊維の凹凸が、全く見えない。
4:不織布繊維の凹凸が、ごく一部に見える。
3:不織布繊維の凹凸が、一部に見える。
2:不織布繊維の凹凸が、半分程度見える。
1:不織布繊維の凹凸が、ほぼ全体に見える。
〔保湿剤組成物の皮膚への移行性〕
アイマスク形態の蒸気温熱具を使用した時の「保湿剤組成物の皮膚への移行性」を、以下の基準で5段階評価した。
5:目の周囲に、保湿剤組成物が十分に付いている感じがする。
4:目の周囲に、保湿剤組成物が明らかに付いている感じがする。
3:目の周囲に、保湿剤組成物が付いている感じがする。
2:目の周囲に、保湿剤組成物が少し付いている感じがする。
1:目の周囲に、保湿剤組成物が殆ど付いていない。
〔保湿剤組成物の保湿感〕
アイマスク形態の蒸気温熱具を使用した時の「保湿剤組成物の保湿感」を、以下の基準で5段階評価した。
5:目の周囲に、十分な保湿感がある。
4:目の周囲に、明らかな保湿感がある。
3:目の周囲に、保湿感がある。
2:目の周囲に、やや保湿感がある。
1:目の周囲に、保湿感がない。
〔保湿剤組成物のべたつきのなさ〕
アイマスク形態の蒸気温熱具を使用した時の「保湿剤組成物のべたつきのなさ」を、以下の基準で5段階評価した。
5:目の周囲が、べたつかない。
4:目の周囲が、殆どべたつかない。
3:目の周囲が、わずかにべたつく。
2:目の周囲が、少しべたつく。
1:目の周囲が、非常にべたつく。
〔蒸気温熱具の温感〕
アイマスク形態の蒸気温熱具を使用した時の「温感」を、以下の基準で5段階評価した。
5:目の周囲に、非常に心地よい温感がある。
4:目の周囲に、心地よい温感がある。
3:目の周囲に、温感がある。
2:目の周囲に、ややぬるい温感がある。
1:目の周囲に、ぬるい温感がある。
表4ないし表8に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた蒸気温熱具は、保湿剤組成物を第1のシート部材4aに塗工しやすいものであり、また第1のシート部材4a上での保湿剤組成物の保持性が良好であることが判る。また、保湿剤組成物の皮膚への移行性が良好なものであることが判る。更に、温感が良好で、使用感(保湿感、べたつきのなさ)も良好であることが判る。
これに対して、保湿剤組成物に含まれる水の割合と水分活性が過度に低く、粘度が過度に高い比較例1、粘度が過度に低い比較例3では、いずれも保湿剤組成物が皮膚へ移行しづらいことが判る。また、保湿剤組成物の水の割合と坪量が過度に多い比較例3では、温熱具の温感が不十分であることが判る。