以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
本実施形態に係る飲料(以下、「本飲料」という。)は、2−オクタノンを0.7mg/L以上、170.0mg/L以下含有する。また、本実施形態に係る飲料の製造方法は、当該飲料における含有量が0.7mg/L以上、170.0mg/L以下となるように2−オクタノンを添加することを含む。
本発明の発明者らは、飲料の香味を向上させる技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、2−オクタノン(CAS登録番号:111−13−7)という特定の化合物を、当該飲料における含有量が特定の範囲となるよう添加することにより、当該飲料の香味が効果的に向上することを独自に見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本実施形態は、飲料における含有量が0.7mg/L以上、170.0mg/L以下となるように2−オクタノンを添加することにより、当該飲料の香味を向上させる方法を含む。
本飲料における2−オクタノンの含有量は、0.7mg/L以上、170.0mg/L以下の範囲内であれば特に限られないが、例えば、2.0mg/L以上、80.0mg/L以下とすることが好ましく、3.0mg/L以上、50.0mg/L以下とすることがより好ましく、4.0mg/L以上、40.0mg/L以下とすることがより一層好ましく、5.0mg/L以上、30.0mg/L以下とすることが特に好ましい。
本飲料が上述した特定の範囲内の量で2−オクタノンを含有することにより、本飲料は優れた香味を有する。具体的に、本飲料は、例えば、優れたコク、なめらかさ及びスパイシーさを含む、優れた香味を有する。
本飲料は、低糖質の飲料であることとしてもよい。この場合、本飲料のエキス分は、例えば、5.0w/v%以下であることとしてもよく、3.0w/v%以下であることが好ましく、1.5w/v%以下であることがより好ましく、1.0w/v%未満であることが特に好ましい。本飲料のエキス分の下限値は、特に限られないが、当該エキス分は、例えば、0.2w/v%以上であることとしてもよい。
なお、本実施形態において、本飲料のエキス分は、次の式により決定される:エキス分(w/v%)=(S−A)×260+0.21。ここで、「S」は本飲料の比重(15/4℃)であり、「A」は本飲料のアルコール分(度)を比重(15/15℃)に換算して算出される値である。アルコール分(度)の比重(15/15℃)への換算は、日本国の国税庁所定分析法(訓令)の第2表「アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」に基づき行う。また、この式による計算の途中においては小数点以下5けた目を四捨五入し、最終的に得られるエキス分の値については小数点以下2けた目を切り捨てる。本飲料の比重(15/4℃)は、振動式密度計を用いて15℃における当該本飲料の密度を測定し、得られた密度の値を0.99997で除することにより算出される。
本飲料のアルコール分は、次のようにして決定される。すなわち、まずメスフラスコを用いて、本飲料の検体100mL〜150mLを15℃において正確に採取し、当該検体を500mL容積の二連フラスコに移す。また、検体の採取に使用したメスフラスコを15mLの水で洗浄し、洗浄後の水を二連フラスコに加える操作を2回行う。次いで、洗浄後のメスフラスコを受器として用い、二連フラスコ内の溶液を蒸留する。二連フラスコ内の溶液の当初量(蒸留開始時の量)の87%以上が留出した後、得られた留液に水を加えて、その体積が当該当初量である15℃の留液を調製する。そして、振動式密度計を用いて、上記当初量の留液の15℃における密度を測定し、アルコール分に換算する。密度のアルコール分への換算は、日本国の国税庁所定分析法(訓令)の第2表「アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」に基づき行う。
本飲料は、高甘味度甘味料をさらに含有することとしてもよい。高甘味度甘味料は、飲料又は食品に添加するために高甘味度甘味料として使用されている甘味料であれば特に限られない。高甘味度甘味料は、例えば、ショ糖の甘味度を1.0とした場合において、その甘味度が100以上(例えば、100以上、3000以下)の甘味料であることとしてもよく、その甘味度が200以上(例えば、200以上、700以下)の甘味料であることが特に好ましい。
高甘味度甘味料は、例えば、合成甘味料及び/又は高甘味度天然甘味料であることとしてもよい。合成甘味料は、例えば、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム及びアセスルファムカリウムからなる群より選択される1以上であることが好ましい。高甘味度天然甘味料は、例えば、ステビア、グリチルリチン及びソーマチンからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
すなわち、高甘味度甘味料は、例えば、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、グリチルリチン及びソーマチンからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
なお、甘味度は、甘さの指標であり、上述のとおり、ショ糖の甘さを基準として決定される。例えば、甘味度が100である甘味料は、ショ糖の甘さの100倍の甘さを示す甘味料である。甘味料の甘味度は、例えば、所定濃度のショ糖の溶液と、様々な濃度の当該甘味料の溶液とを比較して、当該ショ糖の溶液と同等の甘さを示す当該甘味料の溶液の濃度に基づき決定される。また、甘味料の甘味度は、例えば、ショ糖の溶液が甘さを示す閾値と、当該甘味料の溶液が甘さを示す閾値との比較に基づき決定される。
本飲料における高甘味度甘味料の含有量は、特に限られないが、例えば、0.0010w/v%以上、0.0130w/v%以下であることが好ましく、0.0025w/v%以上、0.0090w/v%以下であることが特に好ましい。
本飲料は、特に限られないが、アルコール飲料であることが好ましい。本実施形態において、アルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1体積%以上、20体積%以下であってもよい。
本飲料は、果実酒であることとしてもよい。この場合、本飲料である果実酒(以下、「製品果実酒」という。)は、果汁の発酵酒(以下、「原料果実酒」という。)を含むアルコール飲料である。
製品果実酒の製造方法は、少なくとも原料果実酒と、当該製品果実酒における含有量が上述した範囲内となる量の2−オクタノンとを混合することを含む。原料果実酒は、次の(i)及び/又は(ii)である:(i)果汁のアルコール発酵、又は果汁と糖類との混合物のアルコール発酵により得られる果実酒;、(ii)当該(i)の果実酒と、糖類又は蒸留酒とを混合して得られる甘味果実酒。
具体的に、原料果実酒は、例えば、ブドウ果汁の発酵酒(例えば、ワイン)及び/又はリンゴ果汁の発酵酒(例えば、シードル)であることが好ましく、ブドウ果汁の発酵酒であることが特に好ましい。
製品果実酒における原料果実酒の含有量は特に限られないが、当該製品果実酒は、例えば、当該製品果実酒100体積部に対して、5体積部以上、50体積部以下の原料果実酒を含むこととしてもよく、8体積部以上、15体積部以下の原料果実酒を含むことが好ましい。
すなわち、製品果実酒の製造方法においては、例えば、最終的に製造される当該製品果実酒100体積部に対して、5体積部以上、50体積部以下の原料果実酒を使用することとしてもよく、8体積部以上、15体積部以下の原料果実酒を使用することが好ましい。
製品果実酒は、原料果実酒と、蒸留酒とを含むこととしてもよい。この場合、製品果実酒の製造方法においては、少なくとも原料果実酒と、蒸留酒と、当該製品果実酒における含有量が上述した範囲内となる量の2−オクタノンとを混合する。
蒸留酒は、アルコール含有物の蒸留物である。すなわち、蒸留酒は、アルコール含有物の蒸留により得られる。具体的に、蒸留酒は、例えば、原料用アルコール、焼酎、ブランデー及びスピリッツからなる群より選択される1以上である。蒸留酒のアルコール分は、例えば、45体積%超であることとしてもよい。
製品果実酒における蒸留酒の含有量は特に限られないが、例えば、当該製品果実酒は、当該製品果実酒100体積部に対して、5体積部以上、20体積部以下の蒸留酒を含むこととしてもよく、10体積部以上、15体積部以下の蒸留酒を含むことが好ましい。
すなわち、製品果実酒の製造方法においては、最終的に製造される製品果実酒100体積部に対して、5体積部以上、50体積部以下の原料果実酒と、5体積部以上、20体積部以下の蒸留酒とを使用することとしてもよく、8体積部以上、15体積部以下の原料果実酒と、10体積部以上、15体積部以下の蒸留酒とを使用することが好ましい。
製品果実酒は、原料果実酒と、蒸留酒と、水とを含むこととしてもよい。この場合、製品果実酒の製造方法においては、少なくとも原料果実酒と、蒸留酒と、水と、当該製品果実酒における含有量が上述した範囲内となる量の2−オクタノンとを混合する。
製品果実酒における水の含有量は特に限られないが、当該製品果実酒は、例えば、当該製品果実酒100体積部に対して、25体積部以上、90体積部以下の水を含むこととしてもよく、65体積部以上、85体積部以下の水を含むことが好ましい。
すなわち、製品果実酒の製造方法においては、最終的に製造される当該製品果実酒100体積部に対して、5体積部以上、50体積部以下の原料果実酒と、5体積部以上、20体積部以下の蒸留酒と、25体積部以上、90体積部以下の水とを使用することとしてもよく、8体積部以上、15体積部以下の原料果実酒と、10体積部以上、15体積部以下の蒸留酒と、65体積部以上、85体積部以下の水とを使用することが好ましい。
本飲料が高甘味度甘味料を含有する製品果実酒である場合、当該製品果実酒は、少なくとも原料果実酒と当該高甘味度甘味料とを含む。この場合、製品果実酒の製造方法においては、少なくとも原料果実酒と、高甘味度甘味料と、当該製品果実酒における含有量が上述した範囲内となる量の2−オクタノンとを混合する。製品果実酒の製造方法における高甘味度甘味料の使用量は、当該製品果実酒における当該高甘味度甘味料の含有量が上述した範囲内となる量で使用されることが好ましい。
製品果実酒のアルコール分は特に限られないが、例えば、3体積%以上、20体積%以下であることとしてもよく、6体積%以上、12体積%以下であることとしてもよい。製品果実酒は、非発泡性の果実酒であることとしてもよい。非発泡性の果実酒は、例えば、ビールが有するような、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成されて、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性を有しない果実酒である。
製品果実酒は、例えば、日本国の酒税法で規定される甘味果実酒、リキュール又はスピリッツであることとしてもよい。製品果実酒が、日本国の酒税法で規定される甘味果実酒である場合、当該製品果実酒の製造に使用される原料果実酒は、日本国の酒税法で規定される果実酒又は甘味果実酒であることとしてもよい。また、製品果実酒の製造に使用される蒸留酒は、日本国の酒税法で規定される蒸留酒であることとしてもよい。製品果実酒が、日本国の酒税法で規定されるリキュール又はスピリッツである場合、当該製品果実酒は、上述の原料果実酒を使用して製造される当該リキュール又はスピリッツである。この場合、製品果実酒の製造に使用される原料果実酒は、日本国の酒税法で規定される果実酒又は甘味果実酒であることとしてもよい。
製品果実酒の製造方法においては、アルコール発酵を行うことなく製品果実酒を製造することとしてもよい。すなわち、この場合、予め製造された原料果実酒を使用し、当該原料果実酒を、少なくとも2−オクタノンと混合することにより、製品果実酒を製造する。より具体的に、例えば、予め果汁のアルコール発酵により得られた原料果実酒と、蒸留酒、水及び高甘味度甘味料からなる群より選択される1以上と、最終的に製造される製品果実酒における含有量が上述した範囲内となる量の2−オクタノンとを混合して、当該製品果実酒を得ることとしてもよい。
本飲料は、発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。本実施形態において、発泡性アルコール飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有するアルコール飲料である。すなわち、発泡性アルコール飲料は、例えば、炭酸ガスを含有し、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有するアルコール飲料であることが好ましい。
発泡性アルコール飲料は、その炭酸ガス圧が所定値以上であることとしてもよい。具体的に、発泡性アルコール飲料の炭酸ガス圧は、例えば、1.0kg/cm2以上であることとしてもよく、2.0kg/cm2以上であることとしてもよい。発泡性アルコール飲料の炭酸ガス圧の上限値は、特に限られないが、当該炭酸ガス圧は、例えば、3.0kg/cm2以下であることとしてもよい。
発泡性アルコール飲料は、例えば、NIBEM値が50以上であることとしてもよい。NIBEM値は、ビール等の発泡性アルコール飲料の泡持ち特性を示す指標値として使用されている。NIBEM値は、発泡性アルコール飲料を所定の容器に注いだ際に形成された泡の高さが所定量減少するまでの時間(秒)として評価される。具体的に、発泡性アルコール飲料のNIBEM値は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.29 泡−NIBEM−Tを用いた泡持ち測定法−」に記載の方法に従い測定される。
発泡性アルコール飲料は、ビールテイスト飲料であることとしてもよい。本実施形態において、ビールテイスト飲料は、ビール様の香味を有する発泡性アルコール飲料である。すなわち、ビールテイスト飲料は、例えば、ビール、発泡酒、又は発泡酒とスピリッツ等のアルコール成分とを含有する発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。
発泡性アルコール飲料は、植物原料由来成分を含むこととしてもよい。この場合、本飲料は、例えば、植物原料を使用して調製された原料液のアルコール発酵を行って製造される。
植物原料は、飲料の製造に使用される、植物由来の原料であれば特に限られないが、例えば、次の(i)、(ii)及び(iii)からなる群より選択される1以上であることとしてもよい:(i)穀類(例えば、麦類、米類及びトウモロコシからなる群より選択される1以上)、豆類及びイモ類からなる群より選択される1以上;、(ii)当該群より選択される1以上を発芽させたもの;、及び(iii)当該(i)及び当該(ii)の一方又は両方に由来する成分。
上記(i)及び/又は(ii)の植物原料を使用して調製された原料液、及び当該原料液を使用して製造された発泡性アルコール飲料は、当該(i)及び/又は(ii)の植物原料に由来する成分を含む。上記(iii)の植物原料を使用して調製された原料液、及び当該原料液を使用して製造された発泡性アルコール飲料は、当該(iii)の植物原料を含む。
本飲料は、発泡性麦芽アルコール飲料であることとしてもよい。発泡性麦芽アルコール飲料は、麦芽由来成分を含む。この場合、本飲料は、麦芽を含む原料を使用して製造される。麦芽は、大麦麦芽、小麦麦芽、燕麦麦芽及びライ麦麦芽からなる群より選択される1つ以上であってもよく、大麦麦芽及び小麦麦芽からなる群より選択される1つ以上であることが好ましい。麦芽としては、麦芽エキスを使用してもよい。本飲料は、ホップ由来成分を含む発泡性麦芽アルコール飲料であることとしてもよい。この場合、本飲料は、麦芽及びホップを含む原料を使用して製造される。
本飲料は、発泡性発酵アルコール飲料であることとしてもよい。発泡性発酵アルコール飲料は、例えば、植物原料を使用し、アルコール発酵を行って製造された発泡性アルコール飲料である。
本飲料の製造方法において2−オクタノンを添加するタイミングは、最終的なアルコール飲料が得られる前であれば、特に限られない。すなわち、例えば、本飲料の製造方法が、まず果汁のアルコール発酵を行って原料果実酒を得ること、及び次いで、当該原料果実酒と、蒸留酒、水及び高甘味度甘味料からなる群より選択される1以上とを混合して当該製品果実酒を得ることを含む製品果実酒の製造方法である場合、当該アルコール発酵の開始前、当該アルコール発酵中、及び当該アルコール発酵の終了後からなる群より選択される1以上のタイミングで2−オクタノンを添加することとしてもよい。
また、例えば、本飲料の製造方法が、予め製造された原料果実酒と、蒸留酒、水及び高甘味度甘味料からなる群より選択される1以上とを混合して、アルコール発酵を行うことなく当該製品果実酒を製造する方法である場合には、当該原料果実酒と当該1以上の成分との混合の前、当該混合と同時、及び当該混合後からなる群より選択される1以上のタイミングで2−オクタノンを添加することとしてもよい。
また、例えば、本飲料の製造方法が、植物原料を使用して原料液を調製すること、及び当該原料液のアルコール発酵を行うことを含む発泡性アルコール飲料の製造方法である場合、当該アルコール発酵の開始前、当該アルコール発酵中、及び当該アルコール発酵の終了後からなる群より選択される1以上のタイミングで2−オクタノンを添加することとしてもよく、当該アルコール発酵中、及び当該アルコール発酵の終了後からなる群より選択される1以上のタイミングで2−オクタノンを添加することが好ましい。
本飲料の製造方法において2−オクタノンを添加する方法は特に限られないが、例えば、2−オクタノンを含有する添加用組成物を添加する。添加用組成物における2−オクタノンの含有量は、最終的に製造される本飲料における2−オクタノンの含有量より大きければ特に限られず、適宜設定される。この添加用組成物に含有される2−オクタノンは、人工的に合成されたものであってもよいし、天然由来のものであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
なお、本飲料の製造方法においては、2−オクタノンを外的に添加する。すなわち、例えば、本飲料が果実酒である場合、原料果実酒、蒸留酒、水及び高甘味度甘味料以外の原料として、2−オクタノンを添加する。また、本飲料が発泡性アルコール飲料である場合、植物原料以外の原料として、2−オクタノンを添加する。また、2−オクタノンを外的に添加しなければ、最終的に得られるアルコール飲料における2−オクタノンの含有量が0.0mg/L(0.05mg/L未満)となるような場合には、本飲料の製造方法における2−オクタノンの添加量は、最終的に得られるアルコール飲料に含有されるべき2−オクタノンの量と一致する。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
例1−2〜例1−9においては、原料果実酒と、2−オクタノンと、蒸留酒と、水と、高甘味度甘味料とを含む原料を混合することにより、2−オクタノンの含有量が異なる8種類の製品果実酒を製造した。また、例1−1においては、2−オクタノンを使用しないこと以外は同様にして対照の製品果実酒を製造した。
原料果実酒としては、製品果実酒100体積部に対して、10.2体積部のワインを使用した。2−オクタノンとしては、2−オクタノンを含む組成物を使用した。蒸留酒としては、製品果実酒100体積部に対して、12.5体積部の原料用アルコール(アルコール含有量:65.5体積%)を使用した。高甘味度甘味料としては、製品果実酒に対して0.005w/v%のスクラロースを使用した。また、製品果実酒100体積部に対して、77体積部の水を使用した。なお、例1−1〜例1−9において、製造された製品果実酒は、アルコール含有量が9.4体積%であり、エキス分は0.4w/v%であった。
そして、得られた9種類の製品果実酒の各々について、9人の熟練したパネラーによる官能検査を行った。官能検査においては、コク、なめらかさ及びスパイシーさという各評価項目について、各パネラーが、1点、2点、3点、4点又は5点の点数を付与した。
図1には、例1−1〜例1−9の各々について、製造された製品果実酒における2−オクタノンの含有量(mg/L)と、官能検査の結果とを示す。なお、添加した2−オクタノンを除く、製品果実酒の原料には、2−オクタノンが実質的に含有されていなかったため、図1の各例において、2−オクタノンの添加量は、図1に示す2−オクタノンの含有量と同一であった。
図1において、官能検査結果としては、コク、なめらかさ、及びスパイシーさという3つの評価項目の各々についてパネラーにより付与された点数の合計をパネラーの人数で除することにより算出された平均点数を「点数」として示すとともに、当該3つの評価項目の平均点数の算術平均値に応じて付与された「総合評価」も示している。総合評価においては、3つの評価項目の平均点数が1.4以下の場合には「バツ印」、平均点数が1.5以上、2.4以下の場合には「三角印」、平均点数が2.5以上、3.4以下の場合には「一重丸印」、平均点数が3.5以上の場合には「二重丸印」を付与した。
図1に示すように、2−オクタノンの含有量が200.0mg/L未満(具体的には、1.0mg/L以上、100.0mg/L以下)となるように2−オクタノンを添加して製造された例1−2〜例1−8の製品果実酒は、2−オクタノンを添加せずに製造された例1−1の製品果実酒及び2−オクタノンの含有量が200.0mg/Lとなるように2−オクタノンを添加して製造された製品果実酒に比べて、コク、なめらかさ、スパイシーさ及び総合評価の全てについて優れているとの評価が得られた。
また、2−オクタノンの含有量が1.0mg/L超、100.0mg/L未満(具体的には、3.0mg/L以上、50.0mg/L以下)となるように2−オクタノンを添加して製造された例1−3〜例1−7の製品果実酒は、例1−2及び例1−8の製品果実酒に比べても優れた香味を有すると評価された。
さらに、2−オクタノンの含有量が3.0mg/L超、50.0mg/L未満(具体的には、5.0mg/L以上、30.0mg/L以下)となるように2−オクタノンを添加して製造された例1−4〜例1−6の製品果実酒は、極めて優れた香味を有すると評価された。
例2−1においては、ビール45体積部と炭酸水55体積部とを混合して調製した発泡性アルコール飲料と、2−オクタノンとを混合することにより、2−オクタノンを10.0mg/L含有する発泡性アルコール飲料(アルコール含有量:2.3体積%)を製造した。また、例2−1Cにおいては、2−オクタノンを使用しないこと以外は同様にして対照の発泡性アルコール飲料を製造した。
例2−2においては、ビールと2−オクタノンとを混合することにより、2−オクタノンを10.0mg/L含有する発泡性アルコール飲料(アルコール含有量:5.0体積%)を製造した。また、例2−2Cにおいては、2−オクタノンを使用していない上記ビールをそのまま、対照の発泡性アルコール飲料として使用した。
なお、ビールとしては、麦芽及びホップを使用して製造された市販の麦芽100%ビール(アルコール含有量:5.0体積%)を使用した。2−オクタノンとしては、上述の実施例1と同様、2−オクタノンを含む組成物を使用した。
そして、得られた4種類の発泡性アルコール飲料の各々について、9人の熟練したパネラーによる官能検査を行った。官能検査においては、コク、なめらかさ及びスパイシーさという各評価項目について、各パネラーが、例2−1Cの発泡性アルコール飲料に付与する点数を「1点」とした場合に付与すべき点数として、例2−1、例2−2C及び例2−2の発泡性アルコールに、1点、2点、3点、4点又は5点の点数を付与した。
図2には、例2−1C、例2−1、例2−2C及び例2−2の各々について、製造された発泡性アルコール飲料における2−オクタノンの含有量(mg/L)と、官能検査の結果とを示す。なお、発泡性アルコール飲料の製造に使用されたビール及び炭酸水には2−オクタノンが実質的に含有されていなかったため、図2の各例において、2−オクタノンの添加量は、図2に示す2−オクタノンの含有量と同一であった。
図2に示すように、2−オクタノンの含有量が10.0mg/Lとなるように2−オクタノンを添加して製造された例2―1の発泡性アルコール飲料は、コク、なめらかさ、スパイシーさ及び総合評価の全てについて、2−オクタノンを添加しない以外は同様に製造された例2−1Cの発泡性アルコール飲料に比べて顕著に優れているとの評価が得られた。
また、市販の麦芽100%ビールそのものである例2−2Cの発泡性アルコール飲料は、2−オクタノンを添加しなくても、例2−1Cに比べると優れた香味を有すると評価されたが、当該市販の麦芽100%ビールに、2−オクタノンの含有量が10.0mg/Lとなるように2−オクタノンを添加して製造された例2―2の発泡性アルコール飲料は、コク、なめらかさ、スパイシーさ及び総合評価の全て(特に、コク及びスパイシーさ)について、当該例2―2Cの発泡性アルコール飲料に比べても顕著に優れた香味を有すると評価された。