JP6699242B2 - 熱可塑性樹脂組成物、蓋材及び易開封性容器 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、蓋材及び易開封性容器 Download PDF

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Description

本発明は、ヒートシール強度と易開封性のバランスに優れ、押出ラミネート成形性、剥離外観等に優れたシール層を、良好な成形性で形成することができる熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明はまた、該熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる蓋材及び易開封性容器に関する。
従来、食品、飲料、薬品、化粧品又は医療器具等の包装手法として、ポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂等の樹脂でトレイ状又はカップ状に成形された容器本体に被包装物を入れ、容器本体の開口部に蓋材を当接してヒートシールにより密封する方法が広く採用されている。このような形態の包装物は、被包装物を取り出す際に蓋材を引き剥がす必要があることから、容器から被包装物の漏洩等がないことに加えて、被包装物を取り出す際には、容器本体から蓋材が容易に剥離できる程度のヒートシール強度を有していること、即ち、易開封性であることが必要とされる。
一般に、蓋材に用いられるシーラント(シール材)には、主として層間剥離型と凝集剥離型の2種類がある。層間剥離型の蓋材は、シール層と保持層と基材とで構成されている。このような蓋材において、シール層は被着体(容器の蓋材取付部)と同種の樹脂で形成することで、被着体との熱融着で強固なシール状態を保つようにし、保持層はシール層と異種の樹脂で形成して、シール層と保持層との層間で剥がれ易くすることで易開封性を持たせるものである。
しかし、層間剥離型のシーラントでは、開封時に容器側にシーラントの一部が残ってしまったり、開封時膜残りが起きたりするため、このような問題のない点において凝集剥離型のシーラントが有利である。凝集剥離型のシーラントは、シール層と保持層と基材で形成される点においては層間剥離型と同様であるが、シール層は被着体と同種の樹脂及び保持層と同種の樹脂の2種の樹脂のポリマーブレンドで形成されている。これによりヒートシール時に、シール層は、部分的に被着体と熱融着し、剥離時にはポリマーブレンドした樹脂の界面でシール層自体を凝集破壊しながら剥離する。従って、シール層がシール性と剥離性の両方の機能を担うことになるが、シール層と被着体の熱融着は部分的であるため、一定以上のシール強度を得ることができないといった問題点がある。
従来、凝集剥離型のシーラントとして、例えば、特許文献1には、シール層を、特定の引張破断強度を有する熱可塑性樹脂で構成することにより、開封時の糸引きの問題を解消したものが開示されている。また、特許文献2には、シール層を、ポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂のラッカーで構成し、蓋部に一様な痕跡を残すようにしたものが開示されている。また、特許文献3には、シール層に、発泡粒子を含有させることにより、選択的な凝集剥離を可能とし、また、剥離不良を防止したものが開示されている。更に、特許文献4には、シール層にエチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体と、ポリエステル樹脂とを含む樹脂組成物を用いたものが開示されている。
特開2005−335818号公報 特開2008−7146号公報 特開2013−75718号公報 特開2006−117247号公報
上記特許文献1〜4に開示された技術においてもシール層としてのフィルム成形性を確保した上で易開封性とヒートシール強度とを両立するという要求に対しては、未だ十分なものが提供されていないのが実状であり、更なる改良が望まれる。また、本発明者の検討によれば、易開封性とヒートシール性が両立されたとしても、更に、押出ラミネート成形性が悪くなる場合があるという問題があることがわかった。
本発明は、ヒートシール強度が十分に高く、易開封性、押出ラミネート成形性、剥離外観等に優れたシール層を良好な成形性で形成することができる熱可塑性樹脂組成物と、該熱可塑性樹脂組成物からなるシール層を有する蓋材と該蓋材を有する易開封性容器を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の融着性に寄与する成分と成形性を補助する成分と易開封性に寄与する成分とを配合することにより、上記課題を解決することができることを知見し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[11]の通りである。
[1]下記(A)〜(C)成分を含み、かつこれらの合計量に対し、(A)成分を60〜84重量%、(B)成分を3〜23重量%、(C)成分を3〜28重量%含む熱可塑性樹脂組成物。
(A)成分:脂肪族ジカルボン酸単位を含み、110〜140℃に融解ピーク温度を有する結晶性ポリエステル
(B)成分:ポリオレフィン及び非晶性ポリエステルの少なくとも一方
(C)成分:ビニル芳香族化合物に由来する重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、及び該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも1つのブロック共重合体であり、ブロックQにおける1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計量が60モル%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマー
[2](A)成分のガラス転移温度が−50〜−20℃である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3](A)成分がアジピン酸単位及びテレフタル酸単位を含む、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4](A)成分が1,4−ブタンジオール単位を含む、[1]乃至[3]のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5](C)成分のスチレン含有量が5〜70重量%である、[1]乃至[4]のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6](B)成分として、密度が0.850〜0.980g/cmのポリエチレンを含む、[1]乃至[5]のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7]下記(D)成分を含み、かつその含有量が(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対して1〜15重量部である、[1]乃至[6]のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(D)成分:アミン変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー
[8][1]乃至[7]のいずれか1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるシール層を有する蓋材。
[9]前記シール層が押出ラミネート成形により形成されたものである、[8]に記載の蓋材。
[10][8]又は[9]に記載の蓋材を有する易開封性容器。
[11][8]又は[9]に記載の蓋材とポリエチレンテレフタレート樹脂からなる容器とを有する易開封性容器。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、ヒートシール強度が十分に高く、易開封性、押出ラミネート成形性、剥離外観等に優れたシール層を良好な成形性で形成することができる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、ヒートシール強度が十分に高く、易開封性、押出ラミネート成形性、剥離外観等に優れたシール層を有する蓋材及び易開封性容器が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。なお、本発明において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記(A)〜(C)成分を含み、かつこれらの合計量に対し、(A)成分を60〜84重量%、(B)成分を3〜23重量%、(C)成分を3〜28重量%含むものである。なお、(A)成分のポリエステルに該当するものと解されうるもののうち、(B)成分のポリエステルに該当するものは(A)成分とはみなさず、(B)成分とみなすこととする。
(A)成分:脂肪族ジカルボン酸単位を含み、110〜140℃に融解ピーク温度を有する結晶性ポリエステル
(B)成分:ポリオレフィン及び非晶性ポリエステルの少なくとも一方
(C)成分:ビニル芳香族化合物に由来する重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、及び該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも1つのブロック共重合体であり、ブロックQにおける1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計量が60モル%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマー
本発明において、(A)成分は、ヒートシール性及び押出ラミネート成形性を担う成分として機能するものであり、(B)成分は成形性を改善するための成形性の補助及び押出ラミネート成形性を担う成分として機能する成分であり、(C)成分は易開封性及び押出ラミネート成形性を担う成分である。
[(A)成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる(A)成分は、脂肪族ジカルボン酸単位を含み、110〜140℃に融解ピーク温度を有するポリエステルである。本発明の熱可塑性樹脂組成物は(A)成分を含むことによりヒートシール性と押出ラミネート成形性が付与される。
(A)成分のポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸を少なくとも含むジカルボン酸と多価アルコールとのエステル化反応又は脂肪族ジカルボン酸エステルを少なくとも含むジカルボン酸エステルと多価アルコールとのエステル交換反応により製造されるものである。
(A)成分のポリエステルにおけるジカルボン酸単位における脂肪族ジカルボン酸単位としては、例えば、アジピン酸単位、コハク酸単位、スベリン酸単位及びセバシン酸単位等が挙げられ、これらの中でもアジピン酸単位を含んでいることが好ましい。また、(A)成分は脂肪族ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよく、このようなジカルボン酸単位としては、例えば、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸単位が挙げられ、これらの中でもテレフタル酸単位を含むことが好ましい。(A)成分は特に、ジカルボン酸単位として、アジピン酸単位とテレフタル酸単位とを含んでいることが好ましく、特に、これらの合計量に対してアジピン酸単位を10〜90モル%含むことが好ましく、30〜70モル%含むことがより好ましい。なお、(A)成分がエステル交換反応により得られたものである場合、ジカルボン酸単位は対応するジカルボン酸アルキルエステルに由来する単位である。
また、(A)成分における多価アルコール単位は好ましくはジオール単位であり、ジオール単位としては、例えば、エチレングリコール単位、1,4−ブタンジオール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位、ペンタエチレングリコール単位、2,2−ジメチルトリメチレングリコール単位、ヘキサメチレングリコール単位、ネオペンチルグリコール単位、ポリエチレングリコール単位、ポリプロピレングリコール単位及びポリテトラメチレンエーテルグリコール単位等が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール単位、1,4−ブタンジオール単位又は1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等の炭素数2〜8の脂肪族ジオール単位を含むことが好ましく、特に1,4−ブチレングリコール単位を含むことが好ましい。
本発明に用いる(A)成分のポリエステルは、融解ピーク温度が140℃以下であり、このためにこの温度以下において、低温から被着体へ融着する機能を有する。この機能をより良好なものとする観点から、(A)成分の融解ピーク温度は135℃以下であることが好ましい。一方、(A)成分のポリエステルは、融解ピーク温度が110℃以上であり、このために被着体への融着後、容器(易開封性容器)の加熱処理時又は該容器内への高温物の注入時においてシーラント層が剥離すること(剥離強度が低下すること)を抑制する機能を有する。この機能をより良好なものとする観点から、(A)成分の融解ピーク温度は115℃以上であることが好ましい。
また、(A)成分のガラス転移温度(Tg)は−50℃以上であることが、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるシール層用フィルムの耐ブロッキング性の観点から好ましい。この観点から、(A)成分のガラス転移温度は、−45℃以上であることがより好ましく、−40℃以上であることが更に好ましい。一方、(A)成分のガラス転移温度(Tg)の上限は特に制限されないが、−20℃以下であることが好ましい。
なお、(A)成分の融解ピーク温度及びガラス転移温度はJIS K7121(1987)に従い測定することができる。具体的には、示差走査熱量計(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて以下の工程(1)〜(3)を順に実施してポリエステル樹脂の融解挙動を測定する。各工程において横軸に時間、縦軸に融解熱量をプロットして融解曲線を得、工程(2)において観測されるピークを結晶化ピーク、工程(3)において観測されるピークを融解ピークとする。
工程(1):試料約6mgを室温から100℃/分の速度で170℃まで昇温し、昇温終了後、3分間保持する。
工程(2):170℃から10℃/分の速度で−80℃まで降温し、降温終了後、3分間、保持する。
工程(3):−80℃から10℃/分の速度で170℃まで昇温する。
(A)成分の結晶性ポリエステルは市販品として入手することができる。例えば、BASF社製「ECOFLEX(登録商標)」を用いることができる。なお、(A)成分の結晶性ポリエステルとしては、1種類で用いてもよいが、ジカルボン酸成分若しくはジオール成分又はガラス転移温度等の物性の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
[(B)成分]
本発明で用いる(B)成分は、ポリオレフィン及び非晶性ポリエステルの少なくとも一方であり、成形性を補助する成分及び押出ラミネート成形性を担う成分として機能する。(B)成分としてはポリオレフィンの1種又は非晶性ポリエステルの1種のいずれかのみを用いてもよく、ポリオレフィンの1種又は2種以上と非晶性ポリエステルの1種又は2種以上とを併用してもよいが、(B)成分としては特にポリオレフィンを含むことが押出ラミネート成形性の観点から好ましい。
<ポリオレフィン>
(B)成分として用いることのできるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1若しくはヘキセン−1等の炭素数2〜20程度のオレフィンの単独重合体又は共重合体、或いはこれらのオレフィンと共重合性ビニル単量体、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル若しくは無水マレイン酸等の不飽和有機酸又はその無水物等との共重合体が挙げられる。なお、オレフィンと共重合性ビニル単量体との共重合体において、オレフィン単位の含有量は50重量%以上である。また、ここで、共重合体とはランダム、ブロック及びグラフト共重合体を包含する。
(B)成分として用いることのできるポリオレフィンとしてはより具体的には、例えば、高圧法、中圧法又は低圧法により製造されたポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレンと炭素数5〜12のα−オレフィンと場合により更にエチレン又はブテン−1とからなる共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン・酢酸ビニル共重合体等が好ましく、特に、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又は直鎖状ポリエチレン等のポリエチレンが好ましい。なお、「ポリプロピレン」は構成単位としてプロピレン単位を50重量%より多く含有するものを意味し、また、「ポリエチレン」は構成単位としてエチレン単位を50重量%より多く含有するものを意味する。(B)成分としては成形性の観点から、特にポリエチレンが好ましい。
(B)成分として用いることのできるポリプロピレンとしては、成形性の観点から、JIS K7210(2014)に従って230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が1.0〜60g/10分であることが好ましく、2.0〜40g/10分であることがより好ましい。
また、(B)成分として用いることのできるポリエチレンとしては、成形性の観点から、JIS K7210(2014)に従って190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が1.0〜60g/10分であることが好ましく、2.0〜40g/10分であることがより好ましい。また、ポリエチレンは耐熱性の観点から密度[JIS K7112(1999)]が0.850〜0.980g/cmであることが好ましく、0.855〜0.950g/cmであることがより好ましく、0.860〜0.930g/cmであることが更に好ましい。
更に、(B)成分として用いることのできるエチレン・酢酸ビニル共重合体としては、成形性の観点から、JIS K7210(2014)に従って190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が1.0〜60g/10分であることが好ましく、2.0〜40g/10分であることがより好ましい。
なお、(B)成分のポリオレフィンとしては、以上に挙げたポリオレフィンのうちの1種類を用いてもよいし、原料組成、物性の異なるポリオレフィンの2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分のポリオレフィンは市販品として入手することができる。ポリプロピレンとしては、例えば、日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PPシリーズ及びウィンテック(登録商標)シリーズ等が挙げられ、これらの中から該当品を適宜選択して使用することができる。また、ポリエチレンとしては、例えば、日本ポリエチレン社製ノバテック(登録商標)シリーズ及び旭化成ケミカルズ社製クレオレックス(登録商標)シリーズ等が挙げられ、これらの中から該当品を適宜選択して使用することができる。
<非晶性ポリエステル>
(B)成分として用いることのできる非晶性ポリエステルは、実質的に結晶性を示さないポリエステルである。特に、(A)成分において先に説明した示差走査熱量計による測定において、50℃〜300℃の温度範囲にて明確な融解ピーク温度を有さないポリエステルであり、具体的にはこの温度範囲において、結晶融解熱量(ΔH)が1J/g以下であるものを意味する。
(B)成分に用いることのできる非晶性ポリエステルとしては、例えば、ポリチレンテレフタレートのテレフタル酸単位をその他のジカルボン酸単位で置き換えることにより非晶性としたもの及びポリチレンテレフタレートのエチレングリコール単位の一部をその他のジオール単位で置き換えることにより非晶性としたものの少なくとも一方等が挙げられる。なお、ここでいうジカルボン酸単位とは、エステル化反応により製造された非晶性ポリエステルであれば、ジカルボン酸に由来する単位を意味し、エステル交換反応により製造された非晶性ポリエステルであれば、ジカルボン酸ジエステルに由来する単位を意味するものである。
このような非晶性ポリエステルにおいて、テレフタル酸単位以外のジカルボン酸単位としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸単位及び1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸単位等の脂環式ジカルボン酸単位;フタル酸単位、イソフタル酸単位、フェニレンジオキシジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸単位、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸単位、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位等の芳香族ジカルボン酸単位;コハク酸単位、グルタル酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカジカルボン酸単位及びドデカジカルボン酸単位等の脂肪族ジカルボン酸単位等が挙げられる。以上に挙げたジカルボン酸単位は1種のみが含まれていても2種以上が含まれていてもよい。
また、エチレングリコール単位以外のジオール単位としては、例えば、1,2−シクロペンタンジオール単位、1,3−シクロペンタンジオール単位、1,2−シクロペンタンジメタノールビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン単位及び1,3−シクロペンタンジメタノールビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン単位等の5員環ジオール単位;1,2−シクロヘキサンジオール単位、1,3−シクロヘキサンジオール単位、1,4−シクロヘキサンジオール単位、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−CHDM)単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール(1,3−CHDM)単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)単位及び2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン単位等のシクロヘキサンジメタノール単位;トリメチレングリコール単位、1,4−ブタンジオール単位、ペンタメチレングリコール単位、ヘキサメチレングリコール単位、オクタメチレングリコール単位、デカメチレングリコール単位、ネオペンチルグリコール単位及びジエチレングリコール等の脂肪族ジオール単位;キシリレングリコール単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニル単位、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン単位、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン単位、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン単位及びビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン単位酸等の芳香族ジオール単位等が挙げられる。これらの中でも、ジオール単位としてシクロヘキサンジメタノール単位を含むことが好ましい。以上に挙げたジオール単位は1種のみが含まれていても2種以上が含まれていてもよい。
これらの中でも、(B)成分に用いることのできる非晶性ポリエステルとしては、ジオール単位としてシクロヘキサンジメタノール単位を含むポリエチレンテレフタレートが好ましい。特に、全ジカルボン酸単位に対してテレフタル酸単位を80モル%以上含み、かつ全ジオール単位に対してエチレングリコール単位を60〜80モル%、シクロヘキサンジメタノール単位を20〜40モル%含むものであることが好ましい。
(B)成分の非晶性ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは45℃以上であり、より好ましくは55℃以上である。非晶性ポリエステルのガラス転移温度が上記下限値以上であると、耐熱性の観点から好ましい。また、非晶性ポリエステルのガラス転移温度は、90℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。非晶性ポリエステルのガラス転移温度が上記上限値以下であると、結晶性が低くなることにより透明性が優れたものとなり、また、ヒートシール性に優れたものとなる。なお、ガラス転移温度は前述の(A)成分と同様にして示差走査熱量計(DSC)等を用いることにより常法にて測定することが可能であり、10℃/分の昇温速度で測定した際のヒートフローの変局点の温度を意味する。非晶性ポリエステルのガラス転移温度は、前述したジカルボン酸単位及びジオール単位を適宜選択して用いることで制御することができる。
(B)成分の非晶性ポリエステルの固有粘度(IV)は特に制限されないが、固有粘度が低い方が溶融粘度も低くなるため、成形加工し易い点で好ましい。具体的には、非晶性ポリエステルをフェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)混合液を溶媒として、ウベローデ型粘度計を用いて、30℃で測定することにより求められる固有粘度(IV)が1.5dL/g以下であることが好ましく、強度等の物性の点からは、0.3dL/g以上であることが好ましい。
(B)成分の非晶性ポリエステルとしては市販品として入手することができる。例えば、イーストマンケミカル社製「Easter(登録商標)copolyester」シリーズから該当品を選択して用いることができる。
[(C)成分]
本発明に用いる(C)成分は、ビニル芳香族化合物に由来する重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、及び該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも1つのブロック共重合体であり、ブロックQにおける1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計量が60モル%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーである。本発明において、(C)成分は熱可塑性樹脂組成物の易開封性及び押出ラミネート成形性に寄与する成分である。
(C)成分は、ブロックQの全共役ジエン単位に対する1,2−結合単位即ち1,2−付加構造と、3,4−結合単位即ち3,4−付加構造との合計割合が60モル%であることにより、熱可塑性樹脂組成物の押出ラミネート成形性が良好となる。この観点から1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計の割合は、好ましくは62モル%以上であり、より好ましくは64%以上であり、更に好ましくは66モル%以上である。一方、1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計量の上限は特に制限されず、通常、100モル%である。1,2−結合単位及び3,4−結合単位のそれぞれの割合は13C−NMRにより測定することができる。
(C)成分において、ブロックPを構成する単量体のビニル芳香族化合物は特に限定されないが、スチレン又はα−メチルスチレン等のスチレン誘導体が好ましい。これらの中でも、スチレンを主体とすることが好ましい。ここで、本発明において「主体とする」とは、50重量%以上であることを意味する。なお、ブロックPには、ビニル芳香族化合物以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
上記ビニル芳香族化合物以外の単量体としては、例えば、エチレン及びα−オレフィン等が挙げられる。また、ブロックPが、上記ビニル芳香族化合物以外の単量体を原料として含む場合、その含有量は、好ましくは50重量%未満、より好ましくは40重量%以下である。上記ビニル芳香族化合物以外の単量体の含有量が上記上限以下であることにより耐熱性、圧縮永久歪が良好となる傾向がある。
(C)成分において、ブロックQは共役ジエンに由来するものである。ブロックQに用いることのできる単量体の共役ジエンは特に限定されないが、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも一方を主体とすることが好ましい。なお、ブロックQには、共役ジエン以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
上記共役ジエン以外の単量体としては、例えば、イソブチレン及びスチレン等が挙げられる。また、ブロックQが、上記共役ジエン以外の単量体を原料として含む場合、その含有量は、好ましくは50重量%未満、より好ましくは40重量%以下である。上記共役ジエン以外の単量体の含有量が上記上限以下であることによりブリードアウトが抑制される傾向がある。
(C)成分のブロック共重合体は、上記重合体ブロックPと上記重合体ブロックQとを有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であってもよい。より具体的には、ブロック共重合体のブロックQが有する二重結合を水素添加した水添ブロック共重合体であってもよい。ブロックQの水素添加率は特に限定されないが、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%である。ブロックQを前記範囲で水素添加することにより、得られる熱可塑性樹脂組成物の粘着的性質が低下し、弾性的性質が増加する傾向がある。なお、ブロックPが、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。また、水素添加率は、13C−NMRにより測定することができる。
なお、ブロックQを構成する単量体単位の共役ジエン単位がブタジエン単位である場合、ブタジエン単位は、1,4−付加構造、1,2−付加構造を取りうるが、特に、ブロックQが水素添加誘導体であり、ブタジエンを主体として構成される場合には、ブロックQのブタジエン単位の1,2−付加構造(1,2−結合単位の割合)が60モル%以上である。
ブロックQを構成する単量体の共役ジエン単位がイソプレン単位である場合、イソプレン単位は、1,2−付加構造、1,4−付加構造及び3,4−付加構造を取りうるが、上記と同様に、特に、ブロックQが水素添加誘導体であり、ブロックQがイソプレン単位から構成される場合には、ブロックQのイソプレン単位の1,2−付加構造及び3,4−付加構造の割合(1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計の割合)が60モル%以上である。
以下において、ブロックQにおける1,2−結合単位の割合を「1,2−結合量」と称し、3,4−結合単位の割合を「3,4−結合量」と称す場合がある。
本発明における(C)成分は、ブロックQにおける1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計量が60モル%以上であれば、その構造は特に限定されず、直鎖状、分岐状、放射状等のいずれであってもよいが、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体である場合が好ましい。さらに、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体は、水素添加して得られる水添ブロック共重合体であることがより好ましい。下記式(1)又は(2)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、熱安定性が良好になる。
P−(Q−P) (1)
(P−Q) (2)
(式中、Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ示し、mは1〜5の整数を示し、nは2〜5の整数を示す。)
式(1)又は(2)において、m及びnは、ゴム的高分子体としての秩序−無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
(C)成分のブロック共重合体及び水添ブロック共重合体の少なくとも一方(以下、「(水添)ブロック共重合体」ということがある。)としては、ゴム弾性に優れることから、式(2)で表される(水添)ブロック共重合体よりも式(1)で表される(水添)ブロック共重合体の方が好ましく、mが3以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体がより好ましく、mが2以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体が更に好ましく、mが1である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体が最も好ましい。
(C)成分を構成するブロックPとブロックQとの重量割合は任意であるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械的強度及び熱融着強度の点からはブロックPが多い方が好ましく、一方、柔軟性、ブリードアウト抑制の点からはブロックPが少ない方が好ましい。これらの観点から、(C)成分におけるブロックPの含有量は、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは8重量%以上であり、一方、好ましくは70重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが更に好ましい。
特に、(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーはスチレン含有量が70重量%以下であることが成形性をより良好なものとする観点から好ましく、より好ましくは50重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。一方、スチレン含有量の下限は5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは8重量%以上である。なお、本発明において、(C)成分における「スチレン含有量」とは、スチレン単位のみならず、スチレン単位の芳香環に結合した水素原子に他の原子又は原子団が置換した構成単位の含有量も含む意味で用いられる。スチレン含有量は13C−NMRにより測定することができる。
本発明における(C)成分の製造方法は、上述の構造と物性が得られればどのような方法でもよく、特に限定されない。具体的には、例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法によりリチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによって得ることができる。また、ブロック共重合体の水素添加(水添)は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報及び特開昭60―79005号公報等に記載された方法により、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行うことができる。この水添処理では、重合体ブロック中のオレフィン性二重結合の50%以上が水添されていることが好ましく、80%以上が水添されていることがより好ましい。
(C)成分のメルトフローレート(MFR)は特に制限されないが、MFR[230℃、2.16kgf(JIS K7210)(2014)]で通常、0.1g/10分以上であり、好ましくは0.5g/10分以上であり、より好ましくは1g/10分以上であり、一方、好ましくは50g/10分以下であり、より好ましくは30g/10分以下であり、更に好ましくは15g/10分以下である。MFRが(C)成分の上記範囲であると成形性が良好となる傾向にある。
本発明における(C)成分の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは80,000以上であり、また、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。(C)成分の数平均分子量が上記範囲内であると、成形性と耐熱性が良好となる傾向がある。
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましくは30,000以上、より好ましくは40,000以上、さらに好ましくは50,000以上であり、また、好ましくは550,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは400,000以下である。(C)成分の重量平均分子量が上記範囲内であると、成形性と耐熱性が良好となる傾向がある。
なお、本発明において、(C)成分の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定で求められるポリスチレン換算値であり、その測定条件は以下の通りである。
(測定条件)
機器:東ソー社製「HLC−8120GPC」
カラム:東ソー社製「TSKgel Super HM−M」
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
流速:0.5mL/分
注入量:20μL
濃度:0.1重量%
較正資料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
(C)成分のJIS K6253(1993)による硬度(ショアA)は限定されないが、好ましくは20以上であり、より好ましくは25以上であり、更に好ましくは30以上であり、一方、好ましくは95以下であり、より好ましくは80以下であり、更に好ましくは65以下である。(C)成分の硬度が上記範囲内であると、柔軟性が良好となる傾向にある。
このような水添ブロック共重合体の市販品としては、クレイトンポリマー社製「KRATON(登録商標)−Gシリーズ」、旭化成社製「タフテック(登録商標)シリーズ」等から該当品を適宜選択して使用することができる。
[(D)成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は下記(D)成分を含むことが易開封性及び良好な剥離外観を得る観点から好ましい。これは、(D)成分により、(A)成分及び(B)成分の分散径が微細化されることによるものと考えられる。なお、本発明において、(D)成分と解され得るもののうち、前述の(C)成分に該当するものは(D)成分とはみなさず、(C)成分とみなすこととする。
(D)成分:アミン変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー
アミン変性する原料として用いるスチレン系熱可塑性エラストマーは限定されないが、通常、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、柔軟性を付与する重合体ブロックとを有するものが用いられる。具体的には、例えば、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも一方を主体とする重合体ブロックとを有するブロック共重合体並びに該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体の少なくとも一方が挙げられる。
ここで、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体」とは、ビニル芳香族化合物を主体とする単量体を重合したものを意味し、以下、「重合体ブロックP’」又は「ブロックP’」と略記することがある。また、「ブタジエン及びイソプレンの少なくとも一方を主体とする重合体」とは、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも一方を主体とする単量体を重合したものを意味し、以下、「重合体ブロックQ’」又は「ブロックQ’」と略記することがある。ここで「主体とする」とは、50重量%以上であることを意味する。
また、アミン変性する原料として用いるスチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくとも2個の重合体ブロックP’と、少なくとも1個の重合体ブロックQ’とを有するブロック共重合体及び該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体の少なくとも一方が好ましい。
重合体ブロックP’を構成する単量体のビニル芳香族化合物は限定されないが、スチレン又はα−メチルスチレン等のスチレン誘導体が好ましい。これらの中でも、スチレンを主体とすることが好ましい。なお、当該重合体ブロックには、ビニル芳香族化合物以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
ブロックQ’を構成する単量体は、より好ましくは、ブタジエン単独、イソプレン単独、ブタジエン及びイソプレン、のいずれかである。なお、ブロックQ’には、ブタジエン及びイソプレン以外の単量体が原料として含まれていてもよい。また、ブロックQ’は、重合後に有する二重結合を水素添加した水素添加誘導体であってもよい。ブロックQ’の水素添加率は限定されないが、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましい。ブロックQ’を前記範囲で水素添加することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱安定性が向上する傾向にある。なお、ブロックP’が、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。水素添加率は、13C−NMRにより測定することができる。
スチレン系熱可塑性エラストマーにおけるブロックP’の重量割合は限定されないが、通常5重量%以上であり、8重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、一方、通常55重量%以下であり、50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましい。ブロックP’の重量割合が前記範囲であることにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物の接着性が良好となる傾向にある。
スチレン系熱可塑性エラストマーとして、前記のブロックP’及びブロックQ’を有する共重合体を用いる場合、その化学構造は直鎖状、分岐状又は放射状等の何れであってもよいが、下記式(3)又は(4)で表されるブロック共重合体である場合が好ましく、接着性の観点から、より好ましくは下記式(3)の構造である。
さらに、下記式(3)又は(4)で表されるブロック共重合体は、水素添加誘導体、即ち、水添ブロック共重合体であることが更に好ましい。下記式(3)又は(4)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の接着性が良好となる傾向にある。
P’−(Q’−P’)m’ (3)
(P’−Q’)n’ (4)
(式中、P’は重合体ブロックP’を、Q’は重合体ブロックQ’をそれぞれ表し、m’は1〜5の整数を表し、n’は2〜5の整数を表す。)
式(3)又は(4)において、m’及びn’は、ゴム的高分子体としての秩序−無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
ブロック共重合体又は水添ブロック共重合体(以下、「(水添)ブロック共重合体」ということがある。)としては、ゴム弾性に優れることから、式(4)で表される(水添)ブロック共重合体よりも式(3)で表される(水添)ブロック共重合体の方が好ましく、m’が3以下である式(3)で表される(水添)ブロック共重合体がより好ましく、m’が2以下である式(3)で表される(水添)ブロック共重合体が更に好ましい。
アミン変性する原料として用いるスチレン系熱可塑性エラストマーの製造方法は、上述の構造と物性が得られればどのような方法でもよく、特に限定されず、前述の(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーの製造方法と同様の方法が挙げられる。具体的には、例えば、リチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによって得ることができる。また、ブロック共重合体の水素添加(水添)は、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行う等の公知の方法を採用することができる。
本発明における(D)成分は、上述したスチレン系熱可塑性エラストマーをアミン化合物で変性したものである。スチレン系熱可塑性エラストマーをアミン変性する方法については特に制限されないが、例えば、特開2007−154014号公報に記載されている方法に例示されるように、アミノ基を有する重合開始剤を用いて(水添)ブロック共重合体を重合することによりアミン変性する方法、アミノ基を有する不飽和単量体を共重合する原料として用いることにより(水添)ブロック共重合体をアミン変性する方法、(水添)ブロック共重合体の活性点にアミノ基を有する重合停止剤を反応させることによりアミン変性する方法等が挙げられる。これらの方法は単独で行っても、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
更に、スチレン系熱可塑性エラストマーをアミン変性する方法として、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーの原料として、クロロメチルスチレンを用いてクロロメチルスチレン単位を含有する(水添)ブロック共重合体を合成し、そのクロロメチル基に対してアミン化合物を反応させることによりスチレン系熱可塑性エラストマーをアミン変性する方法も挙げられる。このとき、変性するためのアミン化合物は限定されないが、具体的には、例えば、アルキルアミン類、アルケニルアミン類、アリールアミン類、アリールアルキルアミン類、環状アルキルアミン類及び複素環式アミン類等が挙げられる。アルキルアミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン及びペンチルアミン等が挙げられる。アルケニルアミン類としては、例えば、ドデセニルアミン、オクタデセニルアミン及びドコセニルアミン等が挙げられる。アリールアミン類としては、例えば、アニリン、メチルアニリン、エチルアニリン、p−イソプロピルアニリン及びN−メチルアニリン等が挙げられる。アリールアルキルアミン類としては、例えば、ベンジルアミン、1−フェニルエチルアミン及び2−フェニルエチルアミン等が挙げられる。環状アルキルアミン類としては、例えば、シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。複素環式アミン類としては、例えば、チエニルアミン及びキノリルアミン等が挙げられる。これらのアミン化合物は、1種を単独で用いても2種以上を適宜選択して併用してもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーにアミン化合物を反応させる方法は限定されず、例えば、有機溶媒中で反応させる方法(溶液法)、及び押出機等を用いて溶融混練する方法(溶融混練法)が挙げられる。溶媒法を用いてアミン変性する際の溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)及びN、N−ジエチルホルムアミド等、スチレン系熱可塑性エラストマー及びアミン化合物の双方が可溶な溶媒を好適に用いることができる。アミン変性する際の温度は、使用する溶媒の種類やアミン化合物の種類により適宜定められるが、通常0〜150℃の範囲で行われる。また、変性に際してラジカル発生剤や反応促進剤を添加してもよい。溶融混練法を用いてアミン変性する場合は、通常、スチレン系熱可塑性エラストマー及びアミン化合物のほか、ラジカル発生剤を添加して溶融混練することができる。
(D)成分のアミン変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量(Mn)は限定されないが、通常250,000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは120,000以下、更に好ましくは100,000以下である。また、アミン変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量(Mn)は限定されないが、通常20,000以上、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上である。アミン変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量(Mn)が前記範囲内であると、成形性が良好となる傾向にある。なお、アミン変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量(Mn)は、GPCにより測定したポリスチレン換算の値であり、前述の(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーと同様に測定される。
(D)成分のISO 1133(2011)によるメルトフローレート(MFR)は限定されないが、230℃、荷重2.16kgfでの値として、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、更に好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下である。(D)成分のMFRが上記範囲内であると、成形性が良好となる傾向にある。
(D)成分のISO 11357−2(2013)によるガラス転移温度は限定されないが、好ましくは−80℃以上であり、より好ましくは−70℃以上であり、一方、好ましくは30℃以下であり、より好ましくは20℃以下であり、更に好ましくは0℃以下である。(D)成分のガラス転移温度が上記範囲内であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるシール層用フィルムの耐ブロッキング性が良好となる傾向にある。
(D)成分のISO 868(2003)による硬度(ショアA)は限定されないが、好ましくは50以上であり、より好ましくは60以上であり、更に好ましくは75以上であり、一方、好ましくは95以下であり、より好ましくは90以下であり、更に好ましくは85以下である。(D)成分の硬度が上記範囲内であると、柔軟性が良好となる傾向にある。
(D)成分のISO 1183(2012)による密度は、通常、0.86〜0.93g/cmであり、好ましくは0.87〜0.92g/cmである。(D)成分の密度が上記範囲であると成形性の観点から好ましい。
本発明において、(D)成分として用いるアミン変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーは、市販品を用いることも可能である。市販品としては、例えば、JSR社製「ダイナロン(登録商標)」、旭化成ケミカルズ社製「タフテック(登録商標)」から該当するものを適宜選択して用いることができる。
[その他の成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び必要に応じて用いられる(D)成分以外に、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、スリップ剤、染料・顔料等の着色剤、安定剤、可塑剤(ただし、スリップ剤に該当するものを除く。)、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤及び帯電防止剤等の添加剤;無機充填材及び有機充填材等の充填材;ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂[(A)成分、(B)成分に該当するものを除く。]、塩化ビニル樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー[(C)成分、(D)成分に該当するものを除く。]、ポリエステル系熱可塑性エラストマー[(A)成分、(B)成分に該当するものを除く。]及びポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の樹脂等が挙げられる。
その他の成分のうち、スリップ剤は、成形性の向上に有効である。スリップ剤としては、公知のものを特に限定されることなく用いることができる。具体的には、例えば、パラフィン油及び固形パラフィン等のパラフィン、ステアリン酸及びパルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール及びステアリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム及びパルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸の金属塩、ステアリン酸ブチル、グリセリンモノステアレート及びジエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル、ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オキシステアリン酸のエチレンジアミド、メチロールアミド、オレイルアミド、ステアリン酸アミド及びエルカ酸アミド等の脂肪酸アミド等、並びにカルナウバワックス及びモンタンワックス等のワックス類などが挙げられる。なお、スリップ剤及びワックス類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。この中でもエルカ酸アミドが特に好ましい。
[配合量]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有することにより、ヒートシール強度、易開封性、押出ラミネート成形性等の成形性の効果を得ることができる。これらの効果を良好に得る観点から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)〜(C)成分の合計量に対し、(A)成分を60〜84重量%、(B)成分を3〜23重量%、(C)成分を3〜28重量%含有するものであり、(A)成分を65〜80重量%、(B)成分を7〜23重量%、(C)成分を9〜23重量%含有することが好ましい。
ヒートシール性及び押出ラミネート成形性を担う成分である(A)成分の含有割合が上記下限値以上であるとヒートシール強度がより良好となる傾向があり、上記上限値以下であると相対的に(B)成分と(C)成分の含有割合が多くなることで、易開封性、成形性がより良好となる傾向にある。また、成形性を補助する成分である(B)成分の含有割合が上記下限値以上であると成形性がより良好となる傾向があり、上記上限値以下であると相対的に(A)成分と(C)成分の含有割合が多くなることで、ヒートシール強度、押出ラミネート成形性、易開封性がより良好となる傾向にある。また、易開封性及び押出ラミネート成形性を担う成分である(C)成分の含有割合が上記下限値以上であると易開封性がより良好となる傾向にあり、また押出ラミネート成形性も良好となる傾向があり、上記上限以下であると相対的に(A)成分と(B)成分の含有割合が多くなることで、ヒートシール強度、成形性がより良好となる傾向にある。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物が(D)成分を含む場合、その含有量は、凝集剥離性(易開封性)と剥離外観改良の効果を得る観点から、(A)成分〜(C)成分の合計100重量部に対し、好ましくは1重量部以上であり、より好ましくは3重量部以上であり、さらに好ましくは5重量部以上である。一方、(A)〜(C)成分による前述の機能を有効に得る観点から、(D)成分の含有量は(A)成分〜(C)成分の合計100重量部に対し、好ましくは15重量部以下であり、より好ましくは13重量部、さらに好ましくは10重量部以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が(A)〜(D)成分以外のその他の成分を含有する場合、(A)〜(C)成分による機能を十分に得るために、熱可塑性樹脂組成物中のその他の成分の含有量は合計で、熱可塑性樹脂組成物全体に対し、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることが更に好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物が前述のスリップ剤を含有する場合、その含有量は、通常熱可塑性樹脂組成物中0.01〜2重量%であり、0.05〜0.5重量%の範囲であることが好ましい。
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限されない。即ち、上述の各原料成分を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分散した熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するに当たり、(A)成分〜(C)及び必要に応じて配合される(D)成分、その他の成分を配合して熱可塑性樹脂組成物を得る場合、これらの各成分を種々の公知の手法、例えば、タンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー又はヘンシェルミキサー等を用いて混合し、混合後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー又はニーダー等で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
前記の各原料成分を混合する際の混合方法や混合条件は、各原料成分が均一に混合されれば特に制限は無いが、生産性の点からは、単軸押出機又は二軸押出機のような連続混練機及びミルロール、バンバリーミキサー又は加圧ニーダー等のバッチ式混練機等の公知の溶融混練方法が好ましい。溶融混合時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、本発明においては通常、180〜300℃で行うことができる。
[フィルム成形]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、押出ラミネート成形、Tダイ成形、空冷インフレーション成形等の各種のフィルム成形法によって容易にシール層(シール層用フィルム)として製膜することができる。このシール層用フィルムの厚さは、通常2〜100μm、特に5〜30μmであることが好ましい。シール層の厚さが上記範囲内であることが、十分なヒートシール強度を得る観点、凝集剥離性を得る観点、易開封性容器の蓋材への適用において、蓋材の厚さを適切な範囲とする観点等から好ましい。
[蓋材・易開封性容器]
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるシール層(シール層用フィルム)とすることにより蓋材とすることができる。また、この蓋材は、本発明の熱可塑性樹脂組成物をシール層(シール層用フィルム)として用い、通常、基材と積層一体化することにより、蓋材を有する易開封性容器として好適に使用することができる。この場合、シール層又はシール層用フィルムの厚さは、通常2〜100μm、特に5〜30μmであることが好ましい。シール層の厚さが薄過ぎると十分なヒートシール強度を得ることができず、凝集剥離性も劣るものとなるが、過度に厚さが厚いものは、各種の易開封性容器の蓋材への適用において、蓋材の厚さが厚くなり好ましくない。また、シール層用フィルムと基材との間に保持層としてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂層を介在させることもできる。保持層の厚さは、通常5〜500μm、特に10〜100μm程度である。
蓋材の基材としては、例えば、アルミ箔、紙、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂フィルム(例えば、延伸ポリエステルフィルム)、延伸ナイロンフィルム、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系樹脂フィルム(例えば、延伸ポリプロピレンフィルム)、ポリスチレンフィルム、シリカ蒸着延伸ポリエステルフィルム及びアルミ蒸着延伸ポリエステルフィルム並びにその他バリア性フィルム等、一般に軟包装材の基材として使用されるものであれば適用可能であり、内容物又は用途によって、適宜最適な基材を選定して用いることができる。
このような基材に本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなるシール層用フィルムを積層一体化する方法としては、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系又はポリエーテル系等の接着剤により接着する方法が挙げられる。また、基材フィルムとシール層用フィルムとを共押出ラミネート成形により一体成形してもよい。
また、シール層用フィルムと基材との間に保持層を介在させた蓋材を製造する方法としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物をインフレーション法又はTダイ法等のフィルム成形法により製造する際に、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂よりなる保持層と積層して成形する方法、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂との共押出ラミネート成形で保持層とシール層とを積層成形した後、更に基材を貼り合せる方法、及びアルミ箔、紙、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂又はポリエチレン若しくはポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の各種熱可塑性樹脂からなる基材層にシール層と保持層を押出ラミネート成形することによってラミネートフィルムを形成することにより製造する方法が挙げられる。
得られたシール層/基材或いはシール層/保持層/基材の積層フィルム又は積層シートよりなる蓋材は、各種の容器の開口部に配置し、開口部のフランジ部に沿って加熱加圧してヒートシールすることにより容器の密封に用いることができる。
この際のヒートシール条件としては、用いた(A)成分の融解ピーク温度に応じて、(A)成分の融点ないし融点より50℃程度高い温度、例えば110〜190℃程度で、圧力0.1〜0.3MPa、ヒートシール時間1〜10秒程度とすることが好ましい。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた蓋材を適用する易開封性容器の構成材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリカーボネート樹脂並びにこれらのブレンド材等が挙げられ、これらの中でも易開封性容器は好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂からなるものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるシール層を有する蓋材、及び該蓋材を有する易開封性容器は、蓋材の易開封性が要求されるいずれの用途にも好適に用いることができるが、飲食料品用容器において特に好適に用いることができる。
以下に実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原料]
以下の実施例、参考例及び比較例で用いた原料は、次の通りである。
<(A)成分>
A−1:
BASF社製 結晶性ポリエステル(ポリブチレンアジペートテレフタレート系樹脂)「ECOFLEX(登録商標)」(ジカルボン酸単位:アジピン酸単位54モル%、テレフタル酸単位46モル%、ジオール単位:1,4−ブタンジオール単位100モル%、融解ピーク温度:121℃、ガラス転移温度:−34℃)
a−1(比較用):
東洋紡社製 結晶性ポリエステル「バイロン(登録商標)」GM913(ジカルボン酸単位:テレフタル酸単位66モル%、イソフタル酸単位34モル%、ジオール単位:1,4−ブタンジオール単位82モル%、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位:18モル%、融解ピーク温度:126℃、ガラス転移温度:−70℃)
<(B)成分>
B−1:
日本ポリエチレン社製 低密度ポリエチレン(LDPE)〔密度(JIS K7112)(1999):0.919g/cm、MFR[190℃、2.16kgf(JIS K7210)(2014)]:4g/10分〕
B−2:
日本ポリエチレン社製 低密度ポリエチレン(LDPE)〔密度(JIS K7112)(1999):0.920g/cm、MFR[190℃、2.16kgf(JIS K7210)(2014)]:4g/10分〕
<(C)成分>
C−1:
旭化成ケミカルズ社製 スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体)「タフテック(登録商標)H1221」〔1,2−結合量:78モル%、3,4−結合量:0、スチレン含有量:12重量%、MFR[230℃、2.16kgf(JIS K7210)(2014)]:4.5g/10分、硬度ショアA(JIS K6253)(1993):42、水素添加率:99%以上〕
C−2:
クレイトンポリマー社製 スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体)「KRATON G1645MO」〔1,2−結合量:70モル%、3,4−結合量:0、スチレン含有量:13重量%、MFR[230℃、2.16kgf(JIS K7210)(2014)]:3.5g/10分、硬度ショアA(JIS K6253)(1993):35、水素添加率:98%以上〕
c−1(比較例用):
旭化成ケミカルズ社製 スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体)「タフテック(登録商標)H1043」〔1,2−結合量:30モル%、3,4−結合量:0、スチレン含有量:67重量%、MFR[230℃、2.16kgf(JIS K7210)(2014)]:2g/10分、硬度ショアD(JIS K6253)(1993):72、水素添加率:99%以上〕
<(D)成分>
D−1:
JSR社製 スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体)のアミン変性物「ダイナロン(登録商標)4660P」〔スチレン含有量:10重量%、MFR[230℃、2.16kgf(ISO 1133)(2011)]:10g/10分、密度(ISO 1183)(2012):0.89g/cm、ガラス転移温度(ISO 11357−2)(2013):−56℃、硬度ショアA(ISO 868)(2003):83〕
<その他の成分>
E−1:
スリップ剤(エルカ酸アミド)
[実施例1〜2、参考例3〜6及び比較例1〜5]
<評価用フィルムの作製>
フィルム成形性と易開封性(イージーピール性)を確認するために、各原料成分を表−1に示す配合割合で二軸押出機「TEX30」(株式会社日本製鋼社製)を用い、160〜200℃で混練し、「2種2層テストラミネーター装置」(住友重機械モダン社製)を使用して、ポリエステルフィルムに下記条件で押出ラミネート成形を行い、厚さ約20μmのシーラントフィルムを成膜し、評価フィルムとした。
成形温度:280℃
スクリュー回転数:100rpm
引き取り速度:50m/分
ポリエステルフィルム:東洋紡社製「東洋紡エステル(登録商標)フィルムE5102」(厚さ12μm)
ダイリップ幅:370mm
<押出ラミネート成膜安定性>
押出ラミネート成形によりフィルムを成形した際の成膜安定性を目視にて確認し、以下の基準で評価した。結果を表−1に示す。
○:膜厚変動が生じず、かつ良好な延展性が維持されていた。
△:大きな膜厚変動が生じた。
×:フィルムに穴があき、フィルム形状を維持できなかった。
<押出ラミネート成形性>
・ネックイン(NI)
成形温度、スクリュー回転数、ダイリップ幅を固定とし、表−1中の括弧内の引き取り速度で成形されたフィルムの幅をネックイン(NI)とした。ネックインの値が大きいほど有効製品幅が広くなり、押出しフィルム成形性に優れることを示す。
・ドローダウン(DD)
成形温度、スクリュー回転数、ダイリップ幅を固定とし、引き取り速度を上昇させた場合に、成形フィルムが引き取りロールの成形性に追随できず、フィルムが破断し、フィルム成形が不可能となった場合の引き取り速度をドローダウン(DD)とした。ドローダウンの値が大きいほど、高速での押出ラミネート成形性に優れることを示す。
<剥離強度(ヒートシール強度)>
評価用フィルム及び下記被着体を70mm×100mmの大きさに切り出し、被着体の上にシーラントフィルム側が接するように評価用フィルムを置いた。ヒートシーラー(佐川製作所社製)を用いて以下の条件でヒートシールを行って、評価用フィルムの長さ方向の中央部分を10mmの幅にヒートシールした。
圧力:0.2MPa
時間:1.0秒
シールバー:10mm
温度:130℃、140℃、150℃、又は160℃
被着体:三菱化学製「ノバクリアー(登録商標)SG007」(A−PETシート 厚み:0.3mm)
その後、評価用フィルムのヒートシールされていない部分と被着体のヒートシールされていない部分を互いに離反方向に引っ張って引き剥がすことによりヒートシール強度を測定した。このヒートシール強度は4N/15mm以上25N/15mm未満であることが易開封性とシール強度との両立の面で好ましい。
<剥離外観>
上記の160℃でのヒートシール強度測定の際に、剥離外観の評価を目視にて行った。その時、下記の基準で評価した。
○:剥離した際に、糸引きがなく、外観が良好である。
△:剥離した際に、シーラント層の一部が基材から剥がれきらず、糸引きがみられる。
×:剥離した際に、シーラント層の一部が基材から剥がれきらず、糸引きが多くみられる
上記の評価結果を表−1に示す。
Figure 0006699242
<評価結果>
表−1に示すように、本発明の熱可塑性樹脂組成物に該当する実施例1〜2と参考例3〜6では押出ラミネート成形性、剥離強度に優れることがわかる。特に、(D)成分に該当する「D−1」を使用した実施例1及び2では更に剥離外観も良好であった。
一方、実施例1に対して「C−1」を使用せず、代わりに「c−1」を使用した比較例1ではネックイン(NI)の値が実施例1〜2及び参考例3〜6と比較して劣っていた。また、実施例1に対して「A−1」を使用せず、代わりに「a−1」を使用した比較例2ではネックイン(NI)の値が実施例1〜2及び参考例3〜6と比較して劣っていた。更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりも(A)成分を多く配合した比較例3ではネックイン(NI)の値が実施例1〜2及び参考例3〜6よりも悪く、更には接着強度が強く、イージーピール性にも劣っていた。更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりも(B)成分を多く使用した比較例4及び5では成形性が悪く、各種評価を実施することができなかった。

Claims (10)

  1. 下記(A)〜()成分を含み、かつ(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対し、(A)成分を60〜84重量%、(B)成分を3〜23重量%、(C)成分を3〜28重量%含み、(D)成分の含有量が(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対して1〜15重量部である熱可塑性樹脂組成物。
    (A)成分:脂肪族ジカルボン酸単位を含み、110〜140℃に融解ピーク温度を有する結晶性ポリエステル
    (B)成分:ポリオレフィン及び非晶性ポリエステルの少なくとも一方
    (C)成分:ビニル芳香族化合物に由来する重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、及び該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも1つのブロック共重合体であり、ブロックQにおける1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計量が60モル%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマー
    (D)成分:アミン変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー
  2. (A)成分のガラス転移温度が−50〜−20℃である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. (A)成分がアジピン酸単位及びテレフタル酸単位を含む、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. (A)成分が1,4−ブタンジオール単位を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. (C)成分のスチレン含有量が5〜70重量%である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. (B)成分として、密度が0.850〜0.980g/cmのポリエチレンを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるシール層を有する蓋材。
  8. 前記シール層が押出ラミネート成形により形成されたものである、請求項に記載の蓋材。
  9. 請求項又はに記載の蓋材を有する易開封性容器。
  10. 請求項又はに記載の蓋材とポリエチレンテレフタレート樹脂からなる容器とを有する易開封性容器。
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