JP4618824B2 - 積層容器およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体、スチレン重合体、ポリ塩化ビニルなどを基材とする容器に関する。更に詳しくは、上記重合体を外層とし、これに対し熱接着し、また他の材料と優れた接着性を有するシール材料を内層とする容器及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種飲食品や医薬品の容器として、プラスチック容器が広く使用されている。このような容器材料としてポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどの汎用プラスチック材料は安価であり、また基本的な物性は良好であるため、大量に使用されている。しかし、ガスバリアー性あるいは、より高度な耐熱性、透明性を要求される用途には不十分であり、このような用途に対しては、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体等が使用されている。
【0003】
また、一般にプラスチック容器は、それ自体密封容器とするためのヒートシール性、または蓋材料とのヒートシール性、および場合により、そのシール部分の易開封性が極めて重要な物性として要求される。汎用プラスチックであるポリプロピレン容器の場合は、未延伸PPフィルムでの完全シールが可能であり、また一般的なオレフィン系の易開封性フィルムを用いることにより、易開封性を与えることができる。また例えば、カット豆腐の容器として用いられている汎用ポリスチレン容器は、シート成形時にポリスチレンと熱接着可能な特殊熱ラミフィルム、例えば熱接着樹脂/ポリプロピレンなどの多層フィルムをラミネートすることにより、ポリプロピレン系樹脂側がヒートシール面となり、汎用性の未延伸PPフィルムとの完全シール、あるいは一般的なオレフィン系の易開封性フィルムを蓋材料として用いることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、耐熱性等の高度の物性を要求される容器材料、例えばポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体等の容器に対しては、ヒートシール性材料として適当なものが見出されていない。例えば以前より使用されている延伸ポリエチレンテレフタレート(以下O−PETという)、結晶性ポリエチレンテレフタレート(以下C−PETという)、ポリアクリロニトリル(以下PANという)、特殊なハイインパクトポリスチレン(HIPS)容器などは、フィルムのシール材料として適当なものがなく、強度が弱すぎて、シールの役割を果たしていないものが多く、特殊なホットメルト、ラッカー等のコーティング剤による蓋材でヒートシールしたり、あるいは嵌合蓋式で封をする等の手段が使われてきた。
このように耐熱性、ガスバリアー性等、特殊な物性に優れ、容器としてのすぐれた材料であっても、蓋材とのヒートシール性の問題のために、容器としての使用が制約されているのが現状である。
【0005】
また汎用プラスチック材料の中でも、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどは、ポリプロピレンほど、ヒートシールは簡単ではなく、何らかのヒートシール性付与手段が必要とされるので、これらの材料についても、より簡単で、優れたヒートシール性を有する容器が求められている。
【0006】
このため本発明者は、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(以下A−PETという)、O−PET、C−PET、ポリエチレンナフタレート(以下PENという)などのポリエステル樹脂、あるいはPAN、ポリスチレン、HIPS、ポリ塩化ビニル等の基材に、容器として使用可能な優れた接着強度で熱ラミネートすることができ、かくして得られた積層容器本体が、蓋材との完全ヒートシール性あるいは易開封性ヒートシール性を有するラミネート材料の検討を行った結果、下記特定のエチレン重合体組成物が、このような特性を有していることを見出した。このようなエチレン重合体組成物を内層とし、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体、スチレン重合体、ポリ塩化ビニル等を外層とする積層構造の容器本体とすることにより、ポリオレフィン系樹脂等の汎用の蓋材とのヒートシール性、場合によっては易開封性ヒートシール性の優れた容器を提供することができる。
【0007】
したがって本発明の目的は、それ自体ヒートシール性に問題があり、蓋材とのヒートシールが困難とされていたポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体、スチレン重合体、ポリ塩化ビニル等の基材に、優れたヒートシール性を付与し、容器としての使用を一層容易にすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)ポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体、スチレン重合体及びポリ塩化ビニルから選ばれる外層と、
(2)エチレン系重合体40〜80重量部、A−B−A型ブロック共重合体(Aはポリスチレンブロック、Bはアルキレン共重合体ブロック)5〜40重量部及び水素化炭化水素樹脂系粘着付与樹脂又は水素化テルペン樹脂系粘着付与樹脂5〜30重量部からなるエチレン重合体組成物からなる内層とからなる容器本体である。本発明はまた、かかる積層構造を有する容器本体に、ポリオレフィン系樹脂からなる蓋が熱接着されてなる容器である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の容器本体1は図1に示すように、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体、スチレン重合体又はポリ塩化ビニルからなる基材、すなわち外層2と、それに積層されたエチレン重合体組成物からなる内層3とからなる。
【0010】
容器本体外層を構成するポリエステルとしては、非晶性ポリエチレンテレフタレート、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレートの他、ポリテトラメチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。
【0011】
ポリアクリロニトリル系重合体としては、例えばニトリルゴムにアクリロニトリルとアクリル酸エステルをグラフト重合した商品名BAREXとして知られているものを例示することができる。
【0012】
ポリスチレンとしては任意のグレードのものを使用することができるが、蓋材とのヒートシールが困難とされている材料へのヒートシール性付与という本発明の目的からすれば、ハイインパクトポリスチレン、ABS樹脂などの使用が適している。
【0013】
容器本体の内層として用いられるエチレン重合体組成物の構成成分であるエチレン系重合体は、ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体あるいはエチレンと極性モノマーとの共重合体から選ばれるものである。
【0014】
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンがあるが、とくに高圧法で製造される低密度ポリエチレンの使用が好ましい。高密度ポリエチレンや中密度ポリエチレンはあまり多量に使用すると、外層との高い接着強度が得られなくなる恐れがある。
【0015】
エチレンとα−オレフィンの共重合体は、便宜上密度0.930g/cm3 以下のものを言い、0.930g/cm3 を越えるものは、その密度に基づき中密度ポリエチレンあるいは高密度ポリエチレンに包含される。エチレン・α−オレフィン共重合体としては、マルチサイト触媒あるいはシングルサイト触媒のいずれの触媒系で製造されたものを使用することができる。使用する触媒系によっても若干異なるが、密度が0.870g/cm3 以上、好ましくは0.880g/cm3 以上のいわゆる直鎖低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、プラストマー等と呼称されている領域のものを使用するのが好ましい。
【0016】
エチレン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、炭素数が3〜12程度、とくに炭素数4〜10程度のものを使用するのが好ましい。具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテンなどを例示することができる。
【0017】
もっとも好ましいのは、シングルサイト触媒で製造した、密度が0.880〜0.910g/cm3 、とくに0.885〜0.905g/cm3 のプラストマー領域の共重合体を少なくとも一成分として、とくに好ましくは、少なくとも10重量%以上含有するように使用することである。
【0018】
次にエチレンと極性モノマーの共重合体としては、極性モノマー含量が30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下のものである。エチレン系重合体として極性モノマー含量が多いもののみを用いると、外層として非晶性ポリエステルを使用する場合には、それが結晶化した場合に接着強度に変化が生じる傾向にあるため好ましくなく、そのような場合はポリエチレンやエチレン・α−オレフィン共重合体と併用することが望ましい。いずれにしても、エチレン・極性モノマー共重合体を使用する場合には、エチレン系重合体成分中における平均極性モノマー濃度が15重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下となるように調整することである。
【0019】
極性モノマーとして具体的には、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチルのような不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸のような不飽和カルボン酸、一酸化炭素などを例示することができる。これらの中では酢酸ビニルの使用がもっとも好ましい。
【0020】
これらエチレン系重合体としては、加工性、接着強度等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜500g/10分、とくに1〜150g/10分のものを使用するのが望ましい。
【0021】
エチレン重合体組成物の他の成分として使用されるA−B−A型ブロック共重合体は、Aがスチレン重合体ブロック、Bがアルキレン共重合体ブロック、具体的にはエチレン・ブテン共重合体ブロックあるいはエチレン・プロピレン共重合体ブロックなどである。このようなブロック共重合体は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体あるいはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のブタジエン重合単位あるいはイソプレン重合体単位を水素添加することによって得られるもので、一般にSEBSあるいはSEPSと呼称されているものである。ここにスチレン重合体ブロック含量としては、8〜50重量%、好ましくは10〜40重量%のものである。また230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜500g/10分、とくに1〜100g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0022】
更にこのエチレン重合体組成物には上記エチレン系重合体およびA−B−A型ブロック共重合体に加え、粘着付与樹脂が使用される。粘着付与樹脂としては、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などから選ばれる炭化水素樹脂系粘着付与樹脂又はテルペン樹脂系粘着付与樹脂を水素化したものが使用される。
【0023】
脂肪族系炭化水素樹脂の例としては、ブテン−1、イソブチレン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、ピペリレンなどのC4 〜C5 モノまたはジオレフィンを主成分とする重合体などが挙げられる。脂環族系炭化水素樹脂の例としては、スペントC4 〜C5 留分中のジエン成分を環化二量体化後重合させた樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などが挙げられる。芳香族系炭化水素樹脂の例としては、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC9 〜C10のビニル芳香族炭化水素を主成分とした樹脂などが挙げられる。スチレン系炭化水素樹脂としてはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエン等の重合体である。
【0024】
テルペン系樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン−フェノール共重合体、α−ピネン−フェノール共重合体、水素化テルペン樹脂などが挙げられる。
【0025】
これらの粘着付与樹脂は水素化して、水素化芳香族炭化水素樹脂や水素化テルペン樹脂などの水素添加型樹脂として使用する。
【0026】
エチレン系重合体、上記ブロック共重合体及び粘着付与樹脂の配合割合は、これらの合計量を100重量部とするときに、エチレン系重合体が40〜80重量部、好ましくは50〜75重量部、ブロック共重合体が5〜40重量部、好ましくは10〜30重量部、粘着付与樹脂が5〜30重量部、好ましくは10〜20重量部の範囲である。
【0027】
ブロック共重合体の使用量が前記範囲より少ないと、非晶性ポリエステルが結晶化したときに接着強度の少なからざる低下が起こるので好ましくなく、また上記範囲より多くなるとヘプタン抽出分が多くなりすぎて、油性食品に使用できなくなる。
【0028】
また粘着付与樹脂の使用量が少ないと接着強度が小さくなりすぎるが、過度に使用すると、組成物の耐油性や加工性を損なうことになるので、上記のような範囲内で使用される。
【0029】
エチレン重合体組成物には前記三必須成分に加え、任意の添加剤を配合することができる。このような添加剤として、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤などを挙げることができる。とくに組成物の加工性を向上させるためには滑剤を配合することが望ましい。このような滑剤としては、脂肪酸アミド、高分子量ポリエチレングリコール、水添ひまし油、シリカなどを例示することができる。
【0030】
このような滑剤は、上記三必須成分の合計量100重量部に対し、有機化合物滑剤の場合は0.01〜1.0重量部程度、またシリカのような無機化合物滑剤の場合は0.1〜3.0重量部程度配合すると効果的である。滑剤の使用は、本願発明の重合体組成物を、基材に押出コーティング加工におけるフィルム同志のブロッキングや金属ロールへのスティックを防止するとともに、巻き戻し等の後工程の作業性を高めるという利点を有している。
【0031】
エチレン重合体組成物は、成形性、接着性を考慮すると、メルトフローレート(190℃、2160g荷重)が1〜400g/10分とくに1〜150g/10分となるように調整することが望ましい。
【0032】
このエチレン重合体組成物は非晶性ポリエステルに対し、また結晶性ポリエステルに対しても、同等の接着性を有しているため、いかなるポリエステル容器本体に対しても、実用に供する上で問題のない接着力で熱ラミネートを行うことができ、またたとえ非晶性ポリエステルが結晶化したとしても安定した熱接着強度を得ることができる。
【0033】
本発明の積層構造の容器本体を製造するには、外層と内層の材料を押出ラミネート又はサーマルラミネートにより、積層シート又は積層フィルムを製造し、この積層体から各種成形方法により容器を製造する。いずれも公知の方法により製造することができる。
【0034】
押出ラミネートは、容器本体の外層樹脂となるポリエステル、ポリアクリロニトリル等の樹脂を押出成形機のダイスより溶融押出し、溶融状態にある押出シートと、これと熱接着性のある内層用エチレン重合体組成物フィルムの熱接着面とを、ロール上で溶融外層樹脂の蓄熱とロールによる圧力により密着させ貼り合わせ、巻き取りロールにより巻き取り、押出ラミネートシートが得られる。押出ラミネートの際、内層用熱接着性フィルムは常温でフィードすることもできるが、40〜60℃程度に多少予熱した状態で接触させるのが、強い接着強度を得るためには望ましい。
【0035】
またサーマルラミネートは、ラミネートされる2種またはそれ以上のフィルムまたはシートをまず予備加熱ロール上に供給して積層し、次いで熱圧プレスカレンダーロールによる加熱と加圧により密着貼り合わせられ冷却ロールを経て、製品として巻き取られる。この際、内層となる熱接着性フィルムは、相手シート側へ熱接着面が当たるようにする。
【0036】
本発明の容器本体の内層に用いるエチレン重合体組成物は、外層樹脂と熱接着性を有するので、上記押出ラミネート又はサーマルラミネート法を用いることができる。また押出ラミネートやサーマルラミネートにおいて、熱接着性に乏しい樹脂同士の積層を行う場合は、積層樹脂間に接着剤層を設ける必要がある。一般的に接着剤は有機溶剤に溶解させた状態で積層フィルムの積層面に塗布使用されるため、積層に使用される樹脂が耐溶剤性の悪いものである場合はその使用に制約が生じる場合がある。一方本発明の内層に用いるエチレン重合体組成物からなるフィルムは、上記接着剤を用いずとも外層樹脂と接着可能であるため、作業環境上有利である。
【0037】
上記のごときラミネート法により得られた積層シートまたは積層フィルムから、真空成形、圧空成形等公知の方法により積層容器を製造することができる。
【0038】
本発明の容器本体は、外層にエチレン重合体組成物からなる内層を単層で積層して使用することができるが、エチレン重合体組成物層に更に他の樹脂層を積層することができる。本発明におけるエチレン重合体組成物は、広範囲の種類の材料に対し良好な熱接着性を有するので、種々の材料を積層して使用することができる。このように他の材料を積層した場合は、その材料が最内層となる。これらの材料は単層でも2層以上でもよい。最内層となる樹脂とエチレン重合体組成物とのブレンドからなる中間層を介して該最内層樹脂を積層すると良好な接着性が得られる。
【0039】
上記のように、更に他の樹脂層を積層する目的は、容器強度を向上させるため、ヒートシール性を更に向上させるため、或は、より安価な材料を用い、エチレン重合体組成物の量を減らすことにより経済的な効果を上げること等、種々の目的があり、これらの目的に応じて樹脂の種類を選択できるが、容器材料にヒートシール性を付与するという本発明の目的からすれば、最内層にはヒートシール性の良好な樹脂を積層するのが望ましい。
【0040】
特に本発明の容器本体を、後記するような蓋との組み合わせで用いる場合、蓋材とのヒートシール性、場合によっては易開封シール性が最適な材料を選択し、これを最内層とした積層構造とするのが本発明の目的に対しては極めて有効である。このような、最内層用樹脂に好適な材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン・ビニルアルコール共重合体等を挙げることができる。
【0041】
容器本体の各層の厚みは用途、材料、必要とされる接着強度、積層構造(層の数)によっても異なるが、通常は外層を50〜1000μm、内層を10〜100μm程度とするのが好ましい。
【0042】
容器の形状としては、カップ状容器、トレイ、皿、袋、チューブ等種々の形状のものとして使用することができる。いずれの形態にても、内層樹脂がヒートシール性に優れたエチレン重合体組成物であるため、それ自体のヒートシール、あるいは他の部材、例えば蓋材とのヒートシールが容易であり、密封容器として使用できる。
【0043】
容器の用途としては、ゼリー、豆腐、みそ、めん類等のあらゆる食品容器や医薬品容器、トイレタリー容器、日用品容器等広い範囲にわたって使用することができる。特に本発明の容器は外層としてポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体等の高機能の材料を用いることができ、しかも内層にヒートシール性良好な材料が用いられているので、内容物に関しては制約が少なく、広範囲の用途に使用できる。
【0044】
特に本発明の容器本体は蓋材とのヒートシールが容易であるので、図1に示すように上記積層構造の容器本体1と、容器本体内層に対し、熱接着性を有する樹脂からなる蓋4とを熱接着させた蓋つき容器として使用することができる。
【0045】
このような蓋材としては、ポリオレフィン系樹脂が好適である。蓋材は全体がポリオレフィン系樹脂からなるものでもよいが、容器本体内層と接触する面5が容器内層に対し、熱接着性を有する樹脂である限りにおいて、基材6として任意の材料、例えば紙、アルミ箔、他のプラスチック材料等を用い、これらの積層体を用いることもできる。
【0046】
上記容器本体と蓋材とのヒートシール性については、目的により完全シールあるいは易開封ヒートシール性が必要とされるが、本発明においては、容器内層のエチレン重合体組成物の構成成分の種類および組成、あるいは容器本体を複数層の積層とする場合の最内層樹脂または蓋材のポリオレフィン系樹脂の選択により、適度のヒートシール強度が得られるので、易開封ヒートシール性とすることができる。
【0047】
例えば内層がエチレン重合体組成物の単層で構成されている場合や、シール層にポリエチレン系、あるいはポリプロピレン系樹脂が更に形成されている場合、一般に同種の樹脂では接着力が強く完全シールのものが得やすい。また容器本体最内層と蓋材のシール部分の材料の選択により完全シールから易開封性フィルムまで、自由に選択できる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体など容器材料として優れているが、ヒートシール性に問題があり、ヒートシールが困難とされていた材料にヒートシール性の優れた内層を熱ラミネートすることができ、それ自体のヒートシール性や、汎用樹脂による蓋材とのヒートシール性が優れているので、密封容器として広範囲な用途に利用できる。
【0049】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明の効果を具体的に説明する。なお、実施例、比較例に用いた容器内層、外層用原料樹脂の組成、物性は以下の通りである。
【0050】
1.内層樹脂の各成分
(1)エチレン系重合体
(1-1) エチレン・酢酸ビニル共重合体
酢酸ビニル含量(wt%):6
MFR(g/10min):7.5
【0051】
(1-2) シングルサイト触媒存在下で重合されたエチレン・1−オクテン共重合体
密度 :895kg/m3
MFR:4.0g/10min
【0052】
(1-3) 線状低密度ポリエチレン
三井化学工業(株)社製“ウルトゼックス 1520L”
密度 :915kg/m3
MFR:2.0g/10min
【0053】
(2)A−B−A型ブロック共重合体
商品名: ”セプトン 2002”(株)クラレ製
組成: スチレン・エチレン/プロピレン・スチレントリブロック共重合体(SEPS)
スチレン含量:30wt%
MFR: 70g/10分 (230℃ 2.16kg)
【0054】
(3)粘着付与樹脂
荒川化学(株)社製“アルコン AM−1”
環球法軟化点115℃の脂環族炭化水素樹脂
(芳香族系炭化水素樹脂の核内水添樹脂)
【0055】
2.内層樹脂(エチレン重合体組成物)
上記1.に記載の(1)エチレン系重合体、(2)A−B−A型ブロック共重合体、(3)粘着付与樹脂に、更に(4)エルカ酸アミド、(5)ポリエチレングリコール、(6)シリカを表1記載の配合比で混合した配合物を、単軸押出機にて、樹脂温度150℃の条件下で溶融混合し、エチレン重合体組成物(A)〜(D)を調製した。(ただし(D)は(2)を添加せず)
【0056】
【表1】
【0057】
3.外層用シート
下記表2に記載の(イ)〜(リ)の9種類の重合体を使用した。
【0058】
【表2】
【0059】
[実施例1]
エチレン重合体組成物(A)と密度0.921g/cm3 、メルトフローレート3g/10分のエチレン・4−メチルペンテン−1−共重合体を両外層とし、中間層が両外層樹脂の等量ブレンド層となるように、3層共押し出により厚み比率13/74/13、厚さ30μmの共押出インフレーションフィルムを作成した。
【0060】
かくして得られた3層共押出フィルムのエチレン重合体組成物(A)面と、非晶性ポリエチレンテレフタレート(イ)とをサーマルラミネーションにより積層シートを得た。
【0061】
得られた積層シートを、15mm幅の短冊状にカットし、その熱接着強度を測定した(単位:N/15mm、引張りスピード:300mm/分)。
結果を表3に示す。
【0062】
またエチレン重合体組成物として、(A)の代わりに、エチレン重合体組成物(B)及び(C)を用い、同様の積層物を作成し、その熱接着強度を測定した。
結果を表3に合わせて示す。
【0063】
[実施例2]
実施例1において、非晶性ポリエチレンテレフタレートの代わりに熱処理非晶性ポリエチレンテレフタレート(ロ)を用い、エチレン重合体組成物(A)、(B)及び(C)との積層物の熱接着強度を測定した。結果を表3に示す。
【0064】
[実施例3〜9]
実施例1において、非晶性ポリエチレンテレフタレートの代わりに表1記載の(ハ)〜(リ)の各材料を用い、エチレン重合体組成物(A)との積層物の熱接着強度を測定した。結果を表3に示す。
【0065】
[比較例1〜5]
実施例1〜3、5及び9において、エチレン重合体組成物として、(A)の代わりに、A−B−A型ブロック共重合体を含まないエチレン重合体組成物(D)を用い、同様の積層物を作成し、その熱接着強度を測定した。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3から明らかなように、内層用樹脂であるエチレン系重合体、A−B−A型ブロック共重合体及び粘着付与樹脂を必須成分とするエチレン系重合体は各種ポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体、スチレン重合体やポリ塩化ビニルに対し、実用上充分な接着強度を有することがわかる。これに対し、エチレン系重合体に粘着付与樹脂を添加しただけの樹脂は積層容器としての十分な接着強度をもっていない。
【0068】
[実施例10]
実施例1で用いたエチレン重合体組成物(A)とエチレン・4−メチルペンテン−1共重合体を両外層とする3層共押出インフレーションフィルム(厚さ30μm、厚み比13/74/13)のエチレン・4−メチルペンテン−1共重合体面を、下記表4の構成の蓋材とヒートシールし、そのヒートシール強度を測定した。結果を表5に示す。容器本体に本発明のエチレン重合体組成物を含む内層を形成させることにより、容器蓋材に完全シールまたは易開封性シールができることがわかる。
【0069】
【表4】
シール層樹脂
LLDPE: 三井化学(株)製、”ウルトゼックス2021L ”
アイオノマー:三井・デュポンポリケミカル(株)製、”ハイミラン1702”
引張りスピード:500mm/分
【0070】
[実施例11]
実施例1において、3層共押出インフレーションフィルムの代わりに、エチレン重合体組成物(A)、(B)及び(C)のみからなる、厚さ30μmの単層キャストフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、非晶性ポリエチレンテレフタレート(イ)との積層シートを作成し、それぞれ実施例1と同様にして熱接着強度を測定した。結果を表3に示す。
【0071】
[実施例12]
実施例11で用いた積層シートと実施例10で用いた表4(a)構成の蓋材とをヒートシールし、そのヒートシール強度を測定した。結果を表5に示す。
【0072】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層容器
【符号の説明】
1 容器本体
2 外層
3 内層
4 蓋
5 蓋内面
6 蓋基材
Claims (8)
- (1)ポリエステル、ポリアクリロニトリル系重合体、スチレン重合体及びポリ塩化ビニルから選ばれる外層と、
(2)エチレン系重合体40〜80重量部、A−B−A型ブロック共重合体(Aはポリスチレンブロック、Bはアルキレン共重合体ブロック)5〜40重量部及び水素化炭化水素樹脂系粘着付与樹脂又は水素化テルペン樹脂系粘着付与樹脂5〜30重量部からなるエチレン重合体組成物からなる内層とからなる積層容器本体。 - ポリエステルが、非晶性ポリエチレンテレフタレート、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートから選ばれるポリエステルである請求項1記載の積層容器本体。
- エチレン系重合体が、低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体及びエチレン・極性モノマー共重合体から選ばれるものである請求項1又は2に記載の積層容器本体。
- エチレン系重合体として、シングルサイト触媒で製造した密度が0.880〜0.910g/cm3のエチレン・α−オレフィン共重合体を少なくとも1成分として含有する請求項1〜3のいずれかに記載の積層容器本体。
- エチレン重合体組成物からなる内層に更に他の樹脂層が積層された請求項1〜4のいずれかに記載の積層容器本体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の容器本体にポリオレフィン系樹脂からなる蓋が熱接着されてなる蓋つき容器。
- ポリオレフィン系樹脂からなる蓋が、それと熱接着される容器最内層部に対し易開封性シール材料である請求項6記載の蓋つき容器。
- 容器本体外層用樹脂と内層用樹脂とを押出ラミネート又はサーマルラミネートして得られた積層シート又は積層フィルムから成形することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層容器本体の製造方法。
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