JP2004189916A - ガスバリア性を有する熱可塑性重合体組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性重合体組成物は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなるブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)、並びにエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基を有する変性付加重合体(IV)を含有する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体、有機液体等に対する遮断性に優れ、良好な柔軟性を示す熱可塑性重合体組成物、該重合体組成物からなる成形品および該重合体組成物の用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴム弾性を有する軟質材料であって、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様に成形加工およびリサイクルが可能な熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電部品、電線被覆、医療用部品、雑貨、履物等の分野で多用されている。このような熱可塑性エラストマーの中で、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体」と略記する)は、ゴム用軟化剤が配合されることでその柔軟性が向上し、かつゴム弾性や成形加工性に優れることから、近年その使用量が増大している。
【0003】
しかしながら、一般に上述の水添ブロック共重合体のような熱可塑性エラストマーは、酸素、窒素、二酸化炭素等の気体、またはガソリン、オイル等の有機液体などに対する遮断性に劣り、そのような気体または有機液体への遮断性を必要とするシート、フィルム、飲食品用包装材、容器、容器用パッキング、チューブ、ホース等へ適用することは極めて困難であるのが実状である。
【0004】
一方、エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、気体、有機液体等に対して高度の遮断性を有し、しかも、塩化ビニリデン樹脂や塩化ビニル樹脂のように焼却処分時に有害なガスを発生することがないため、食品包装材等の種々の用途に展開されている。しかしながら、エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、柔軟性に劣っているため、熱可塑性エラストマーが使用されている用途で、かつ遮断性が必要なものには適用できない。
【0005】
そこで、気体、有機液体等に対する遮断性と柔軟性とを併せ持つ材料として、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の層に対して軟質樹脂の層を積層してなる積層体が提案されている。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の軟質樹脂とを溶融条件下に混合して、気体、有機液体等に対する遮断性と柔軟性とを併せ持つ材料を得ようとする試みもなされている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−207097号公報
【特許文献2】特開平10−110086号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の層に対して軟質樹脂の層を積層してなる積層体の場合、エチレン−ビニルアルコール系共重合体層単独に比較して柔軟性が向上しているものの、用途によっては柔軟性が十分とはいえない場合がある。
【0008】
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の軟質樹脂とを溶融条件下に混合した場合(特許文献1、特許文献2参照)、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の他の樹脂に対する親和性が低く相溶性が不良であるために、柔軟性と気体や有機液体等に対する遮断性の両立が不十分であった。
【0009】
本発明の目的は、気体、有機液体等に対する遮断性と柔軟性とを併せ持つ熱可塑性重合体組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、特定のブロック共重合体、ゴム用軟化剤、並びに特定の変性付加重合体とからなる熱可塑性重合体組成物が、遮断性と柔軟性とを両立し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、(1) エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなるブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)、並びにエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基を有する変性付加重合体(IV)から主としてなる熱可塑性重合体組成物であり;
(2) {エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)の含有量}:{ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)の合計含有量}の質量比が、5:95〜80:20であり;
(3) {ブロック共重合体(II)の含有量}:{ゴム用軟化剤(III)の含有量}の質量比が、10:90〜99:1であり;
(4) {ブロック共重合体(II)の含有量}:{変性付加重合体(IV)の含有量}の質量比が、10:90〜90:10である;
ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物である。
【0012】
また、本発明は、上記の熱可塑性重合体からなる成形品およびシートまたはフィルムである。
【0013】
さらに、本発明は、上記の熱可塑性重合体組成物からなる層および他の材料からなる層を有する積層構造体、並びに上記の熱可塑性重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する飲食品用包装材、容器、容器用パッキング、チューブ、ホースである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、気体、有機液体等に対する良好な遮断性を示す成分として、主としてエチレン単位(−CH2CH2−)とビニルアルコール単位(−CH2−CH(OH)−)とからなるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)を含有する。
【0016】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)のエチレン単位の含有量は、気体、有機液体等に対する遮断性の高さと成形加工性の良好さの点から、10〜99モル%であることが好ましく、20〜75モル%であることがより好ましく、25〜60モル%であることがさらに好ましい。
【0017】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)は、後述するように、代表的にはエチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体ケン化物であるが、この場合、脂肪酸ビニルエステル単位のケン化度は、得られるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の遮断性と熱安定性の高さの点から、50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、98モル%以上であることが特に好ましい。
【0018】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)のメルトフローレート(温度210℃、荷重2.16kgの条件下に、ASTM D1238に記載の方法で測定)は、成形加工性の良好さの点から、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.5〜50g/10分であることがより好ましく、1〜20g/10分であることが特に好ましい。
【0019】
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)の極限粘度は、フェノール85質量%および水15質量%の混合溶媒中、30℃の温度において、0.1〜5dl/gであることが好ましく、0.2〜2dl/gであることがより好ましい。
【0020】
本発明に用いられるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)は、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、0.3〜40モル%の下記構造単位(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基等)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基等)を表す。R1、R2、R3およびR4は同じ基でもよいし、異なっていてもよい。また、R3とR4とは結合していてもよい(ただし、R3およびR4がともに水素原子の場合は除かれる)。また、R1、R2、R3およびR4が水素原子以外の基である場合には、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。)
により変性されていてもよい。このような変性エチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用すると、柔軟性に優れた熱可塑性重合体組成物が得られるので好ましい。
【0021】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)は、少量(好ましくは、全構成モノマー単位に対して10モル%以下)であれば、上記で述べた以外の他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位としては、プロピレン、イソブチレン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステル、安息香酸ビニルエステル等のカルボン酸ビニルエステル;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸またはその誘導体(例:塩、エステル、ニトリル、アミド、無水物など);ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;N−メチルピロリドン;等から誘導される単位を挙げることができる。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、アルキルチオ基などの官能基を末端に有していてもよい。
【0022】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)は、常法に従って製造することができる。例えば、主としてエチレンと脂肪酸ビニルエステルとからなるモノマーを、メタノール、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒中、加圧下に、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を用いて重合させることによってエチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体を得、次いで、これを酸触媒またはアルカリ触媒の存在下でケン化することによって製造することができる。ここで、脂肪酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステルなどを使用することができるが、これらの中でも酢酸ビニルエステルが好ましい。
【0023】
また、前述した変性エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタンおよびグリシドール等の数平均分子量500以下の一価エポキシ化合物とを反応させることにより製造することができる。ここで、エチレン−ビニルアルコール共重合体と数平均分子量500以下の一価エポキシ化合物の反応は、押出機を使用した溶融反応、あるいは溶液中における反応など、任意の方法で行うことができる。
【0024】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性エラストマー成分として、主としてビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(II)を含有する。
【0025】
ブロック共重合体(II)は、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックをAで示し、共役ジエン重合体ブロックをBで示した場合に、A−Bで表されるジブロック構造、A−B−AまたはB−A−Bで表されるトリブロック構造、A−B−A−Bで表されるテトラブロック構造、あるいはAとBが5個以上直鎖状に結合しているポリブロック構造をとることができる。それらの内でも、A−Bで表されるジブロック構造、またはA−B−Aで表されるトリブロック構造であることが、得られる熱可塑性重合体組成物の柔軟性および力学特性が良好なものになる点から好ましい。
【0026】
共役ジエン重合体ブロックと共に、ブロック共重合体(II)を構成するビニル芳香族モノマー重合体ブロックの形成に用いられるビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレンなどのビニル芳香族化合物が挙げられる。ビニル芳香族モノマー重合体ブロックは、前記したビニル芳香族化合物の1種のみからなる構造単位を有していても、または2種以上からなる構造単位を有していてもよい。そのうちでも、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックはスチレンに由来する構造単位から主としてなっていることが好ましい。
【0027】
ビニル芳香族モノマー重合体ブロックは、ビニル芳香族化合物からなる構造単位と共に必要に応じて他の共重合性単量体、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等の構造単位を少量有していてもよく、その場合の他の共重合性単量体からなる構造単位の割合は、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックの質量に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共に、ブロック共重合体(II)を構成する共役ジエン重合体ブロックの形成に用いられる共役ジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。共役ジエン重合体ブロックは、これらの共役ジエン化合物の1種から構成されていてもまたは2種以上から構成されていてもよい。共役ジエン重合体ブロックが2種以上の共役ジエン化合物に由来する構造単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、テーパー、一部ブロック状、またはそれらの2種以上の組み合わせなどのいずれであってもよい。
【0029】
そのうちでも、共役ジエン重合体ブロックは、イソプレン単位を主体とするモノマー単位からなるポリイソプレンブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添ポリイソプレンブロック;ブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるポリブタジエンブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添ポリブタジエンブロック;或いはイソプレン単位とブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックであることが好ましい。
【0030】
共役ジエン重合体ブロックの構成ブロックとなり得る上記したポリイソプレンブロックでは、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2−C(CH3)=CH−CH2−;1,4−結合のイソプレン単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH(C(CH3)=CH2)−CH2−;3,4−結合のイソプレン単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH3)(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のイソプレン単位]からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなっており、各単位の割合は特に限定されない。
【0031】
共役ジエン重合体ブロックの構成ブロックとなり得る上記したポリブタジエンブロックでは、その水素添加前には、そのブタジエン単位の70〜20モル%、特に65〜40モル%が2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;1,4−結合ブタジエン単位)であり、30〜80モル%、特に35〜60モル%がビニルエチレン基[−CH(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合ブタジエン単位]であることが好ましい。
【0032】
共役ジエン重合体ブロックの構成ブロックとなり得る上記したイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックでは、その水素添加前に、イソプレンに由来する単位は2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなっており、またブタジエンに由来する単位は2−ブテン−1,4−ジイル基および/またはビニルエチレン基からなっており、各単位の割合は特に制限されない。イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックでは、イソプレン単位とブタジエン単位の配置は、ランダム状、ブロック状、テーパーブロック状のいずれの形態になっていてもよい。そして、イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックでは、イソプレン単位:ブタジエン単位のモル比が1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましい。
【0033】
ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなるブロック共重合体(II)は、熱可塑性重合体組成物の耐熱性および耐候性が良好なものとなる点から、その共役ジエン重合体ブロックにおける不飽和二重結合の一部または全部が水素添加(以下「水添」ということがある)されていることが好ましい。その際の共役ジエン重合体ブロックの水添率は50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
ブロック共重合体(II)において、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックの分子量および共役ジエン重合体ブロックのそれぞれの分子量は特に制限されないが、水素添加前の状態で、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックの数平均分子量が1,000〜100,000の範囲内にあり、共役ジエン重合体ブロックの数平均分子量が10,000〜500,000の範囲内にあることが、熱可塑性重合体組成物の力学的特性、成形加工性などの点から好ましい。なお、本明細書でいう数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値をいう。
【0035】
ブロック共重合体(II)は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などにより製造することができる。例えば、アニオン重合法による場合は、アルキルリチウム化合物等のアニオン重合開始剤の存在下、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、所望の分子構造および数平均分子量を有するブロック共重合体(好ましくは、ジブロック共重合体またはトリブロック共重合体)を製造した後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合を停止させることにより製造することができる。
【0036】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、ゴムを柔軟化あるいは可塑化させる成分として、ゴム用軟化剤(III)を含有する。このようなゴム用軟化剤(III)としては、特に制限はなく、ゴムに一般的に配合されているゴム用軟化剤を使用することができるが、その中でもパラフィン系オイルを好ましく使用できる。一般に、プロセスオイルなどとして用いられるオイルは、ベンゼン環やナフテン環などの芳香族環を有する成分、パラフィン成分(鎖状炭化水素)などが混合したものであり、パラフィン鎖を構成する炭素数が、オイルの全炭素数の50質量%以上を占めるものを「パラフィンオイル」と称している。本発明で用いられるゴム用軟化剤(III)としては、芳香族環を有する成分の含有量が5質量%以下のパラフィンオイルが好ましく用いられる。
【0037】
パラフィン系オイルの40℃における動粘度は、20×10-6〜800×10-6m2/秒であるのが好ましく、50×10-6〜600×10-6m2/秒であるのがより好ましい。また、流動点は、−40〜0℃であるのが好ましく、−30〜0℃であるのがより好ましい。さらに、引火点は、200〜400℃であるのが好ましく、250〜350℃であるのがより好ましい。
【0038】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、気体及び有機液体等に対する遮断性を向上させる成分として、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基を有する変性付加重合体(IV)を含有する。このような変性付加重合体(IV)としては、特に限定されず、単一の付加重合性モノマーからなる付加重合体でかつエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基を有するもの、複数の付加重合性モノマーからなるランダム付加重合体でかつエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基を有するもの、複数の付加重合性モノマーからなるブロック付加重合体でかつエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基を有するものなど、任意の変性付加重合体を使用することができる。
【0039】
その中でも、変性付加重合体(IV)としては、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を含有する付加重合体であることが好ましく、そのような変性付加重合体としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を含有するポリプロピレン、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を含有するポリエチレン、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を含有するαオレフィン共重合ポリエチレン、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を含有するEPDM、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなり、かつα,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を含有するブロックポリマーなどを挙げることができる。この内、変性付加重合体(IV)が、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなり、かつα,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を含有するブロックポリマー(IV−1)であることが、得られる熱可塑性重合体組成物の力学性能が優れたものとなる点で一層好ましい。
【0040】
上記のブロックポリマー(IV−1)を構成するビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックは、ブロック共重合体(II)に関して前述した種々のビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから形成することができるが、特にブロックポリマー(IV-1)を構成するビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックが、ブロック共重合体(II)と同一のブロックから形成されているのが好ましい。
【0041】
また、変性付加重合体(IV)の有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基は、上記したように、その好ましい形態としてα,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体由来の官能基を挙げることができる。α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等のα,β−不飽和モノカルボン酸エステル;無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物などを挙げることができ、この中でも特に、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物、とりわけ無水マレイン酸が好ましい。
【0042】
また、変性付加重合体(IV)にα,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を導入する方法としては特に制限はなく、例えば、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体にラジカル付加させる方法を挙げることができる。
【0043】
本発明の熱可塑性重合体組成物において、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)の含有量が、ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)の合計含有量に基づいて、比較的多い割合を占める場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の遮断性は優れたものになるが、柔軟性は損なわれる傾向にある。一方、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)の含有量が、ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)の合計含有量に基づいて、比較的少ない割合を占める場合には、柔軟性は良好となるが、得られる熱可塑性重合体組成物の遮断性は低下する傾向になる。従って、{エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)の含有量}:{ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)の合計含有量}の質量比を、5:95〜80:20とすることが必要であり、さらに、得られる熱可塑性重合体組成物の遮断性および柔軟性をバランス良く良好なものとするために、10:90〜40:60とすることが好ましい。
【0044】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物では、適度な柔軟性を得る観点から、{ブロック共重合体(II)の含有量}:{ゴム用軟化剤(III)の含有量}の質量比を、10:90〜99:1とすることが必要であり、柔軟性をより良好なものとするために、10:90〜80:20とすることが好ましい。
【0045】
さらに、本発明の熱可塑性重合体組成物では、力学的性能およびガスバリア性の兼ね合いの観点から、{ブロック共重合体(II)の含有量}:{変性付加重合体(IV)の含有量}の質量比を、10:90〜90:10とすることが必要であり、20:80〜80:20とすることがより好ましい。
【0046】
本発明の熱可塑性重合体組成物の製造法は特に限定されず、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)を均一に混合させ得る方法であればいずれでもよく、通常、前記4成分を必要に応じて他の成分と共に溶融混練して製造することができる。その際、使用する装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを挙げることができ、概ね約160〜280℃の範囲で、約30秒〜10分間、溶融混練することにより、本発明の熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
【0047】
上記のようにして得られる熱可塑性重合体組成物は、ブロック共重合体(II)とゴム用軟化剤(III)とからなるマトリックス中に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)が、直径0.1μm〜50μmの粒子径で分散した構造を有する場合に、遮断性と柔軟性とがバランス良く向上したものとなる。
【0048】
また、ブロック共重合体(II)とゴム用軟化剤(III)とからなるマトリックス中に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)が、直径0.1μm〜50μmの粒子径で、層状に分散した構造を有する場合、遮断性と柔軟性が更にバランス良く優れたものとなる。この場合に、層状に分散したエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)の粒子は、粒子の長径をLとし、短径をDとした場合において、L/Dが5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
【0049】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記した成分の他に、必要に応じて、本発明の効果を実質的に損なわない範囲で、他の重合体を含有していてもよい。配合し得る他の重合体の例としては、 ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等の樹脂が挙げられる。
【0050】
さらに、本発明の熱可塑性重合体組成物は、補強、増量、着色などの目的で、必要に応じて無機充填剤や染顔料などを含有することができる。無機充填剤や染顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどを挙げることができる。無機充填剤や染顔料の配合量は、熱可塑性重合体組成物の気体、有機液体等への遮断性が損なわれない範囲であることが好ましく、一般にはエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)の合計100質量部に対して50質量部以下であるのが好ましい。
【0051】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記した成分以外に、必要に応じて架橋剤、架橋助剤、滑剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料などの他の成分の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0052】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、ペレット、粉末などの任意の形態にしておいて、成形材料として使用することができる。さらに本発明の重合体組成物は、熱可塑性を有するので、一般の熱可塑性重合体に対して用いられている通常の成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができる。成形加工法としては、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の方法を採用することができる。このような方法で製造される本発明の重合体組成物からなる成形品にはパイプ、シート、フィルム、円板、リング、袋状物、びん状物、紐状物、繊維状物などの多種多様の形状のものが包含され、また、他の素材との積層構造体または複合構造体も包含される。他の素材との積層構造を採用することによって、成形品に、耐湿性、機械的特性など、他の素材の有する特性を導入することが可能である。
【0053】
本発明の熱可塑性重合体組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造を有する成形品において、該他の素材は、要求される特性、予定される用途などに応じて適切なものを選択すればよい。該他の素材としては、例えば、ポリオレフィン(例:高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン等)、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EEA)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)などの熱可塑性重合体などを挙げることができる。
【0054】
該積層構造を有する成形品においては、本発明の熱可塑性重合体組成物からなる層と他の素材からなる基材層との間に接着剤層を介在させてもよい。接着剤層を介在させることによって、その両側の本発明の熱可塑性重合体組成物からなる層と他の素材からなる基材層とを強固に接合一体化させることができる。接着剤層において使用される接着剤としては、ジエン系重合体の酸無水物変性物;ポリオレフィンの酸無水物変性物;高分子ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール化合物とアジピン酸等の二塩基酸とを重縮合して得られるポリエステルポリオール;酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体の部分ケン化物など)とポリイソシアネート化合物(例えば、1,6−ヘキサメチレングリコール等のグリコール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対2の反応生成物;トリメチロールプロパン等のトリオール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対3の反応生成物など)との混合物等を使用することができる。なお、積層構造形成のために、共押出、共射出、押出コーティング等の公知の方法を使用することもできる。
【0055】
本発明の重合体組成物からなる成形品は、多くの気体、有機液体等に対する優れた遮断性と優れた柔軟性とを兼備しているので、これらの性質が要求される日用品、包装材、機械部品、薬栓などとして使用することができる。本発明の重合体組成物の特長が特に効果的に発揮される用途の例としては、飲食品用包装材、容器、容器用パッキングなどが挙げられる。これらの用途に供するための成形品においては、該重合体組成物は少なくとも1つの層を形成していればよく、該重合体組成物からなる単層構造のもの、および該重合体組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造のものの中から適宜選ぶことができる。上記の飲食品用包装材、容器、および容器用パッキングでは、大気中の酸素ガスの透過と内容物の揮発性成分の透過を阻止できることから、内容物の長期保存性に優れる。
【0056】
なお、本発明の重合体組成物からなる成形品は、廃棄の際に、溶融させて再使用することができる。
【0057】
【実施例】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。また、以下の実施例、比較例で得られた熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、以下のようにして成形品(試験片)をつくり、それらの物性、すなわち、酸素透過係数、硬度、100%モジュラス、引張破断強度、引張破断伸びを次のようにして測定した。
【0058】
(1)酸素透過係数の測定:
以下の実施例、比較例で製造した熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、そのペレットを圧縮成形機により加熱下に圧縮成形し、厚さ100μmのフィルム状試験片を作製し、これらを用いて酸素透過係数(cc・20μm/m2・day・atm)の測定を行った。酸素透過係数の測定はガス透過率測定装置(柳本製作所製「GTR−10」)を用いて、酸素圧0.34MPa、温度35℃、湿度0%RHの条件で行った。
【0059】
(2)硬度の測定:
以下の実施例、比較例で製造した熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、そのペレットを圧縮成形機により加熱下に圧縮成形し、厚さ2mmのシート状試験片を作製し、これらを用いてJIS−K6301に準じてA硬度を測定した。
【0060】
(3)引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスの測定:
以下の実施例、比較例で製造した熱可塑性重合体組成物のペレットを、15トン射出成形機[FANUC社製「ROBOSHOT−α15」]を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件下で成形し、厚み2mm、幅5mmのダンベルを製造した。これにより得られたダンベル試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所社製)を使用して、JIS−K6301に準じて、500mm/分の条件下で引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを測定した。
【0061】
また、以下の実施例、比較例で用いたエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)の内容は次のとおりである。
【0062】
[エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)]
株式会社クラレ製「エバールEP−G110」
【0063】
[ブロック共重合体(II−1)]
株式会社クラレ製「セプトン2005」
【0064】
[ブロック共重合体(II−2)]
株式会社クラレ製「セプトン4055」
【0065】
[ブロック共重合体(II−3)]
株式会社クラレ製「セプトン4077」
【0066】
[ブロック共重合体(II−4)]
株式会社クラレ製「セプトン8006」
【0067】
[ゴム用軟化剤(III)]
出光興産株式会社製「PW−380」
【0068】
[変性ブロック共重合体(IV)]
ポリスチレンブロック−水添ポリブタジエンブロック−ポリスチレンブロックからなり無水マレイン酸により変性されたトリブロック共重合体(スチレン単位含有量30質量%、数平均分子量=10万、酸価5mgCH3ONa/g)
【0069】
《実施例1〜10》
上記したエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)を、下記の表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(Krupp Werner & Pfleiderer社製「ZSK−25WLE」)に供給して、シリンダー温度200℃およびスクリュー回転数350rpmの条件下に溶融混練し、押出し、切断して熱可塑性重合体組成物のペレットをそれぞれ製造した。
【0070】
得られた熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、上記した方法でプレスフィルムおよび成形品(試験片)を製造し、その酸素透過係数、硬度、引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0071】
【表1】
【0072】
《比較例1》
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)のペレットを単独で用いて、上記した方法でプレスフィルムおよび成形品(試験片)を製造した。得られた試験片の酸素透過係数、硬度、引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0073】
《比較例2〜5》
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)およびブロック共重合体(II)のみを、下記の表2に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(Krupp Werner&Pfleiderer社製「ZSK−25WLE」)に供給して、シリンダー温度200℃およびスクリュー回転数350rpmの条件下に溶融混練し、押出し、切断して熱可塑性重合体組成物のペレットをそれぞれ製造した。得られた熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、上記した方法でプレスフィルムおよび成形品(試験片)を製造し、その酸素透過係数、硬度、引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0074】
《比較例6〜9》
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ブロック共重合体(II)およびゴム用軟化剤(III)のみを、下記の表2に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(Krupp Werner&Pfleiderer社製「ZSK−25WLE」)に供給して、シリンダー温度200℃およびスクリュー回転数350rpmの条件下に溶融混練し、押出し、切断して熱可塑性重合体組成物のペレットをそれぞれ製造した。得られた熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、上記した方法でプレスフィルムおよび成形品(試験片)を製造し、その酸素透過係数、硬度、引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0075】
《比較例10》
ブロック共重合体(II)およびゴム用軟化剤(III)のみを、下記の表2に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(Krupp Werner&Pfleiderer社製「ZSK−25WLE」)に供給して、シリンダー温度200℃およびスクリュー回転数350rpmの条件下に溶融混練し、押出し、切断して熱可塑性重合体組成物のペレットをそれぞれ製造した。得られた熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、上記した方法でプレスフィルムおよび成形品(試験片)を製造し、その酸素透過係数、硬度、引張破断強度、引張破断伸びおよび100%モジュラスを上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0076】
【表2】
【0077】
表1の結果から、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)を用いて製造した実施例1〜10の熱可塑性重合体組成物を用いると、酸素透過係数において約3900〜約9200ml・20μm/m2・day・atmの値を示したようにガスバリア性が良好であり、硬度において70A〜91Aと柔軟であり、かつ力学的特性、弾性などの各種物性に優れる高品質の成形品が円滑に得られることがわかる。
【0078】
また、表1および表2の結果から、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)単独からなる比較例1ではガスバリア性に優れるものの、硬度が高すぎてJIS−K6301に準拠したA硬度が測定不可能であった。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)およびブロック共重合体(II)のみからなる比較例2〜5の熱可塑性重合体組成物、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ブロック共重合体(II)およびゴム用軟化剤(III)のみからなる比較例6〜9の熱可塑性重合体組成物、並びにブロック共重合体(II)およびゴム用軟化剤(III)のみからなる比較例10の熱可塑性重合体組成物では、柔軟ではあるものの、ガスバリア性に劣っており、且つ力学的特性の点でも十分には良好ではないことがわかる。
【0079】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、気体、有機液体等に対する遮断性に優れ、しかも柔軟性も良好であるため、これらの性質が要求されるシート、フィルム、飲食品用包装材、容器、容器用パッキング、チューブ、ホースなどの用途において有効に利用される。
Claims (11)
- (1) エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなるブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)、並びにエチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基を有する変性付加重合体(IV)から主としてなる熱可塑性重合体組成物であり;
(2) {エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)の含有量}:{ブロック共重合体(II)、ゴム用軟化剤(III)および変性付加重合体(IV)の合計含有量}の質量比が、5:95〜80:20であり;
(3) {ブロック共重合体(II)の含有量}:{ゴム用軟化剤(III)の含有量}の質量比が、10:90〜99:1であり;
(4) {ブロック共重合体(II)の含有量}:{変性付加重合体(IV)の含有量}の質量比が、10:90〜90:10である;
ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物。 - ブロック共重合体(II)が、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなり、かつ該共役ジエン重合体ブロックが水素添加されたブロック共重合体である請求項1に記載の熱可塑性重合体組成物。
- 変性付加重合体(IV)が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(I)と反応し得る官能基として、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体由来の官能基を有する請求項1または2に記載の熱可塑性重合体組成物。
- 変性付加重合体(IV)が、ビニル芳香族モノマー重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとから主としてなり、かつα,β−不飽和カルボン酸単位および/またはその誘導体単位を含有するブロックポリマーおよび/またはその水素添加物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなる成形品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなるシートまたはフィルム。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなる層および他の材料からなる層を有する積層構造体。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する飲食品用包装材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する容器。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有する容器用パッキング。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体組成物からなる少なくとも1つの層を有するチューブまたはホース。
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