JP2010254968A - 樹脂組成物並びにこれを用いた成形品及び多層構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 バッグインボックス等のように、長期間かけて繰り返し折れ曲がり、変形に曝されるような仕様に対しても、ピンホール等が生じないような柔軟性を有し、しかもフィッシュアイ等の発生が少ないフィルムを得ることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物、芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロックと不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロックとを有するブロック共重合体、芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロックと不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロックとを有するブロック共重合体且つ極性基を含有する変性ブロック共重合体を含有する樹脂組成物において、各ポリマーの配合比率を特定範囲内とした。
【選択図】 なし

Description

本発明は、EVOH樹脂に柔軟性を付与した樹脂組成物に関し、特に、バッグインボックス用バッグに代表される液体用容器など、長期間かけて繰り返し施される変形のような仕様にも耐えることができるフィルム等の成形品を提供できる樹脂組成物、およびこれを用いた成形品、多層構造体に関する。
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(以下、「EVOH樹脂」と称することがある)は、高分子側鎖に存在する水酸基同士の水素結合のため、非常に強い分子間力を有する。それゆえに、結晶性が高く、非晶部分においても分子間力が高いため、気体分子等はEVOH樹脂フィルムを通過することができない。このようなことから、EVOH樹脂を用いたフィルムは優れたガスバリア性を示し、水、飲食料品の包装用フィルム、包装容器素材として利用されている。一方、EVOH樹脂成形品は、その高結晶性故に、柔軟性に欠けるという短所がある。
そこで、柔軟性が必要な用途では、EVOH樹脂成形品に柔軟性を付与するために、軟質樹脂とブレンドして用いることが一般に行われている。
例えば、特開平10−87923号公報(特許文献1)では、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)等に代表されるような、ビニル芳香族モノマー単位からなるポリマーブロックとイソブチレン単位からなるポリマーブロックとのブロック共重合体をブレンドした樹脂組成物が提案されている。
ここでは、EVOH樹脂相とブロック共重合体相とが独立して連続相を構成するように、具体的には、EVOH樹脂:ブロック共重合体=15:85〜85:15、好ましくは80:20〜20:80、より好ましくは65:35〜35:65程度で混合している(段落番号0043)。特許文献1においては、EVOH樹脂からなる相とブロック共重合体からなる相とが相互侵入網目構造をなして分布しているため、網目構造をなすEVOH相に基づいて優れたガスバリア性等の遮断性を発揮し、網目に侵入しているブロック共重合体相に基づき柔軟性を発揮できると説明されている(段落番号0042)。
一方、EVOH樹脂におけるエチレン含有率や溶融粘度、トリブロック共重合体の分子量やブロック成分構成などにより、EVOH樹脂とトリブロック共重合体のブレンド比率が上記範囲内であっても、ガスバリア性が劣ったり、JIS D硬度が高くなったりする場合があることも開示されている(表2の参考例1、参考例2)。
また、特開昭63−304043号公報(特許文献2)では、EVOH樹脂等のポリビニルアルコール系樹脂と、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレンブロック共重合体等のブロック共重合体とは相溶性が悪く、混合性の悪さに起因した不均一性から、所望の特性改善を図ることが困難であるとして、ブロック共重合体に代えて、不飽和カルボン酸で変性した変性ブロック共重合体を用いることが提案されている。変性ブロック共重合体は、未変性ブロック共重合体と比べてポリビニルアルコール系樹脂のような極性熱可塑性樹脂との相溶性に優れることから、これらをブレンドした樹脂組成物では、透明性が改善されることが開示されている。
ここでは、変性ブロック共重合体:極性熱可塑性重合体=98:2〜50:50の樹脂組成物は、変性ブロック共重合体の改質された組成物として有用であり、変性ブロック共重合体:極性熱可塑性重合体=2:98〜50:50の樹脂組成物は、極性熱可塑性重合体の耐衝撃性などが改善されると説明されている。具体的には、EVOH樹脂:変性ブロック共重合体=90:10〜75:25の割合で混合した樹脂組成物は、EVOH樹脂と比べて、アイゾット衝撃強度が大幅に改善されることが示されている(表5)。
さらに特開2004−189916号公報(特許文献3)には、EVOH樹脂、SBS、SIS、SEBSなどのブロック共重合体、不飽和カルボン酸変性ブロック共重合体、ゴム用軟化剤を配合した樹脂組成物が開示されている。
ゴム用軟化剤としては、ゴム成分を柔軟化又は可塑化させる成分として、パラフィンオイルなどが用いられる。また、不飽和カルボン酸変性ブロック共重合体は、ガスバリア性を向上させる成分として配合される。
そして、組成物のガスバリア性と柔軟性のバランスの点から、EVOH樹脂:(ブロック共重合体+不飽和カルボン酸変性ブロック共重合体+ゴム用軟化剤の総量)=10:90〜40:60が好ましいと記載されている(段落番号0043)。また、組成物の力学的性能及びガスバリア性の兼ね合いの観点から、ブロック共重合体:変性ブロック共重合体=20:80〜80:20が好ましいと記載されている(段落番号0045)。
ここで、機械的特性としては、JIS A硬度、引張破断強度が測定評価されている。
特開平10−87923号公報 特開昭63−304043号公報 特開2004−189916号公報
ところで、近年、バッグインボックス用バッグなどの液体を充填するフィルム容器として利用する場合、折りたたむことができたり、さらには中身の液体の変形や減量にしたがって、不規則な折れ曲がりに対応可能な柔軟性が求められる。このような場合に求められる柔軟性は、硬度、耐衝撃性、引張強度とは異なる特性であり、上記のような組成物では、必ずしも求められる特性を有しておらず、不定形物である液体等が充填された状態で長時間かけて輸送されるなどの環境においては、液体の変形に伴うフィルムの折れ曲がりが長時間繰り返されることで、フィルム容器に疲労が蓄積してピンホールが生じたりする場合もある。
また、EVOH樹脂に柔軟成分を配合する場合、柔軟成分を均一に分散させることが重要である。例えば、柔軟成分がEVOH樹脂と反応し得る場合、溶融混練時にEVOH樹脂と反応し、高重合度化物が発生する場合がある。高重合度化物が発生すると、溶融粘度が高くなって成形加工性が低下するため、得られるフィルムにおいて、フィッシュアイが多数発生しやすい傾向がある。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バッグインボックス等のように、長期間かけて繰り返し折れ曲がり、変形に曝されるような仕様に対しても、ピンホール等が生じないような柔軟性を有し、しかもフィッシュアイ等の発生が少ないフィルムを得ることができる樹脂組成物を提供することにある。
本発明の樹脂組成物は、エチレン含有率20〜60モル%のエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A);芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロック(b1)と、不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロック(b2)とを有するブロック共重合体(B);芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロック(c1)と、不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロック(c2)とを有するブロック共重合体で、且つ極性基を含有する変性ブロック共重合体(C)を含有する樹脂組成物であって、前記ブロック共重合体(B)に対する前記エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)の重量比率(A/B)が70/30〜99/1であり、前記ブロック共重合体(B)に対する前記変性ブロック共重合体(C)の重量比率(C/B)が0.01〜10である。
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)とブロック共重合体(B)の230℃、荷重2160gにおけるメルトフローレート値の比(A/B)が0.1〜10であることが好ましい。
また、前記ブロック共重合体(B)におけるビニル芳香族含有率は5〜50重量%であることが好ましく、前記変性ブロック共重合体(C)の極性基の含有量が0.1×10-2〜1ミリモル/gであることが好ましい。さらには前記極性基がカルボキシル基であることが好ましく、該カルボキシル基の含有量は、20mgCHONa/g以下であることが好ましい。
本発明は、上記本発明の樹脂組成物を用いた成形品、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体、当該多層構造体からなる液体容器、バックインボックス用バックも含む。
本発明の樹脂組成物は、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)、柔軟成分となるブロック共重合体(B)、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)及びブロック共重合体(B)の双方に対して親和性を有する変性ブロック共重合体(C)が特定割合で配合されているので、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)が本来有するガスバリア性、溶融成形性を損なうことなく、フィッシュアイが少なく、しかも長期間にかけて変形に曝されるような仕様にも耐えることができる柔軟性を有する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
はじめに本発明の樹脂組成物について説明する。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、エチレン含有率20〜60モル%のエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A);芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロック(b1)と、不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロック(b2)とを有するブロック共重合体(B);芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロック(c1)と、不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロック(c2)とを有するブロック共重合体で、且つ極性基を含有する変性ブロック共重合体(C)を含有する樹脂組成物であって、上記A成分、B成分、C成分を特定割合で配合した樹脂組成物である。
以下、各成分について、順に説明する。
〔EVOH樹脂(A)〕
組成物の主成分となるEVOH樹脂(A)は、非水溶性の樹脂であり、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体をケン化することによって得られる。かかるビニルエステル系モノマーは、代表的には酢酸ビニルである。エチレン−ビニルエステル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂(A)は、ISO14663に基づいて測定したエチレン構造単位の含有率が通常20〜60モル%であり、好ましくは25〜50モル%、さらに好ましくは27〜35モル%である。エチレン構造単位の含有率が少なすぎると、樹脂組成物の溶融成形加工性が低下する傾向にある。一方、エチレン構造単位の含有率が高くなりすぎると、必然的にポリマー鎖中に含まれるOH基の割合が低下しすぎ、ガスバリア性が不足する傾向にある。特に、本発明の樹脂組成物では、EVOH樹脂に基づく高いガスバリア性を確保する必要性から、エチレン含有率を上記範囲に設定する必要がある。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場入手性や製造時の不純物処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。この他、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは4〜7の脂肪族ビニルエステルである。これらは通常単独で用いられるが、必要に応じて、2種以上混合して用いてもよい。
また、ビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値で、通常95モル%以上であり、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。ケン化度が低くなると、ガスバリア性が低下する傾向にあるからである。
さらに、EVOH樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)においては、230℃、荷重2160g条件下で、通常0.1〜200g/10分であり、好ましくは0.5〜100g/10分であり、特に好ましくは1〜40g/10分である。MFRの値が小さすぎる場合、すなわち溶融粘度が高い場合、ブロック共重合体(B)との均一な溶融混練が困難になり、ブロック共重合体(B)の分散性低下の原因となる。一方、MFRの値が大きすぎる場合、溶融粘度が低くなり、安定した溶融押出が困難となる傾向がある。
本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂(A)としては、上記要件を充足するEVOH樹脂であれば、エチレン含有率、ケン化度、MFRが異なる2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明に用いられるEVOH樹脂としては、共重合体中に更に少量のプロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体、不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレン等のコモノマーを共重合したものであっても差し支えない。さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等「後変性」されていても差し支えない。
特にヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOH樹脂は、溶融成形加工性が良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
本発明で用いられるEVOH樹脂(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOH樹脂に配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などが含有されていてもよい。
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)などの塩等の添加剤を添加してもよい。これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
酢酸を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂(A)100重量部に対して通常0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.2重量部、特に好ましくは0.010〜0.1重量部である。酢酸の添加量が少なすぎると、酢酸の含有効果が十分に得られない傾向があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
また、ホウ素化合物を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂(A)100重量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001〜1重量部であり、好ましくは0.002〜0.2重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.1重量部である。ホウ素化合物の添加量が少なすぎると、ホウ素化合物の添加効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の添加量としては、EVOH樹脂(A)100重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部である。かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。尚、EVOH樹脂(A)に2種以上の塩を添加する場合は、その総量が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
EVOH樹脂(A)にホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加する方法については、特に限定されず、i)含水率20〜80重量%のEVOH樹脂(A)の多孔性析出物を、添加物の水溶液と接触させて、添加物を含有させてから乾燥する方法;ii)EVOH樹脂(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法;iii)EVOH樹脂(A)と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法;iv)EVOH樹脂(A)の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)の方法が好ましい。
〔ブロック共重合体(B)〕
本発明で用いられるブロック共重合体(B)は、通常ハードセグメントとなる芳香族ビニルを主とするポリマーブロック(b1)と、通常ソフトセグメントとなる不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水添ブロック(b2)とを有するもので、一般にスチレン系熱可塑性エラストマーとして知られているものを用いることができる。
本発明で用いるブロック共重合体(B)は、芳香族ビニルを主とするポリマーブロック(以下「芳香族ポリマーブロック」という)(b1)と不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック(以下「脂肪族炭化水素ポリマーブロック」という)又はその水添ブロック(b2)とを含有していればよく、b1−b2で表されるジブロック構造、b1−b2−b1またはb2−b1−b2で表されるトリブロック構造、b1−b2−b1−b2で表されるテトラブロック構造、あるいはb1とb2が5個以上直鎖状に結合しているポリブロック構造であってもよい。これらのうち、b1−b2で表されるジブロック構造、またはb1−b2−b1で表されるトリブロック構造、b1−b2−b1−b2で表わされるテトラブロック構造が、柔軟性および力学特性の点から好ましい。
上記芳香族ビニルポリマーブロック(b1)を構成するモノマーとしては、例えば、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体;ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレンなどの芳香族ビニル化合物が挙げられる。さらに、必要に応じて、これらの芳香族ビニルモノマーとともに、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等の他の共重合性モノマーを用いてもよい。このような芳香族ビニルポリマーブロック(b1)を構成するモノマーのうち、好ましくはスチレン及びスチレン誘導体であり、特に好ましくはスチレンである。
芳香族ビニルポリマーブロック(b1)は、上記芳香族ビニルモノマーのホモポリマーブロックであってもよいし、2種以上の芳香族ビニルモノマーのコポリマーブロックであってもよい。
また、他の共重合性モノマーを含む場合、芳香族ビニルポリマーブロック(b1)における他の共重合性モノマーの含有率は、ブロック共重合体(B)のエラストマー性が損なわれないように、ポリマーブロック重量の10重量%以下とすることが好ましく、5重量%以下とすることがより好ましい。
上記脂肪族炭化水素ポリマーブロック(b2)を構成する不飽和脂肪族炭化水素化合物モノマーは、通常、炭素数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素化合物であり、具体的には、炭素数2〜6のアルケン、炭素数4〜10のジエン、共役ジエン化合物が挙げられ、中でも、炭素数4〜6の共役ジエン化合物が好ましく用いられる。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。
上記ジエンとしては、イソブチレン、ヘキサジエンなどが挙げられる。これらのジエンは、上記共役ジエン化合物からなるポリマーブロックの水素添加の結果、得られたものであってもよい。
上記アルケンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。これらのアルケンは、上記共役ジエン又はジエンからなるポリマーブロックの水素添加の結果、得られたものであってもよい。
脂肪族炭化水素ポリマーブロック(b2)は、上記不飽和脂肪族炭化水素モノマーの1種からなるホモポリマーブロックであってもよいし、2種以上の不飽和脂肪族炭化水素からなるランダムコポリマーブロックであってもよい。ソフトセグメントとして、好ましくは、共役ジエンのポリマーブロック又はその水素添加ブロックである。
脂肪族炭化水素ポリマーブロックの水添ブロックとは、ジエン及び/又は共役ジエンのポリマーブロック中の不飽和結合の一部又は全部が水素添加されることにより形成されるものである。例えば、ポリブタジエンブロックは水素添加により、エチレン・ブチレンポリマーブロックやブタジエン・ブチレンポリマーブロック等になる。また、ポリイソプレンブロックは、水素添加により、エチレン・プロピレンポリマーブロック等になる。水素添加は公知の方法で行うことができ、特定のビニル結合部分を選択的に水素添加したものであってもよい。
本発明で用いられるブロック共重合体(B)は、上記芳香族ビニルモノマーのポリマーブロック(b1)と不飽和脂肪族炭化水素のポリマーブロック又はその水素添加ブロック(b2)とが結合したもので、ブロック構造は特に限定せず、例えば、ラジアルテレブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、バイモダルコポリマー、テーパーブロックコポリマーなどが挙げられる。
ブロック共重合体(B)における芳香族ビニル構成単位(ポリマーブロックb1)の含有率は、通常5〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%であり、さらに好ましくは15〜35重量%である。芳香族ビニル構成単位の含有率が適度に大きい場合、EVOH樹脂(A)との屈折率の差が小さくなり、透明性が向上する傾向がある。さらに、芳香族ビニル構成単位の含有率が15重量%以上とすることにより、耐屈曲性の改善効果も大きくなる。
また、ブロック共重合体(B)における、脂肪族炭化水素ポリマーブロック及び/又はその水添ブロックブロック(b2)の含有率は、通常50〜95重量%であり、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは65〜90重量%である。
以上のような構成を有するブロック共重合体(B)の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、SBSの水素添加ブロック共重合体(SEBS)、SISの水素添加ブロック共重合体(SEPS)、SBSのブタジエンブロックのビニル結合部分を水素添加したブロック共重合体(SBBS)、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−結晶ポリオレフィンブロック共重合体(SEBC)などが挙げられる。これらのうち、熱安定性、耐候性に優れているSEBSが好ましく用いられる。SEBSは、ポリブタジエンブロックが水素添加によりエチレン・ブチレンのコポリマーブロックとなっている。
また、ブロック共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)においては、230℃、荷重2160g条件下で、通常0.1〜200g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分であり、特に好ましくは3〜15g/10分である。
EVOH樹脂(A)の溶融粘度とブロック共重合体(B)との溶融粘度が近い程、溶融混練が容易になり、ブロック共重合体(B)がEVOH樹脂中に均一に分散した樹脂組成物が得られやすく、ひいては耐屈曲性、透明性に優れた樹脂組成物が得られやすい。具体的には、230℃、荷重2160g条件下で測定したMFR比(EVOH樹脂(A)/ブロック共重合体(B))が、通常0.1〜10、好ましくは0.5〜4、より好ましくは0.7〜3.0である。
このようなブロック共重合体(B)としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、JSR社製の「ダイナロン」、「JSR−TR」、「JSR−SIS」;クラレ社製の「セプトン」、「ハイプラー」;日本ゼオン社製の「クインタック」、旭化成社製の「タフテック」「タフプレン」;クレイトンポリマー社製の「KratonG」「KratonD」「Cariflex TR」;電気化学社製の「電化STR」;日本エラストマー社製の「アサプレンT」等が挙げられる。
〔変性ブロック共重合体(C)〕
本発明で用いられる変性ブロック共重合体(C)は、芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロック(c1)と、不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロック(c2)とを有するブロック共重合体であり、さらに極性基を有するブロック共重合体である。具体的には、上述のブロック共重合体(B)を極性基含有化合物で、変性したものである。
上記極性基とは、例えば具体的には、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシル基、水酸基、アミド基、エポキシ基などが挙げられる。前記カルボキシル基には、カルボキシル基の誘導体である酸無水物基も含まれる。
変性ブロック共重合体(C)としては、EVOH樹脂(A)と適度に反応性を有することが好ましく、この点から、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基を有する変性ブロック共重合体(C)が好ましく、より好ましくはカルボキシル基を有する変性ブロック共重合体(C)である。
変性ブロック共重合体(C)のブロック共重合体を構成する芳香族ビニルのポリマーブロックに用いられる芳香族ビニル、不飽和脂肪族炭化水素のポリマーブロックに用いられる不飽和脂肪族炭化水素としては、上記ブロック共重合体(B)で用いたものを使用することができる。
変性ブロック共重合体(C)のブロック共重合体と、ブロック共重合体(B)の各ポリマーブロックのモノマー構成(すなわちb1とc1、b2とc2)やブロック構造は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
極性基を有する変性ブロック共重合体(C)は、極性基である水酸基を有するEVOH樹脂(A)との親和性を有する。一方、変性ブロック共重合体(C)のブロック共重合体部分がブロック共重合体(B)と親和性を有することから、変性ブロック共重合体(C)は、EVOH樹脂(A)とブロック共重合体(B)の相溶化剤としての役割を果たすことができる。
変性ブロック共重合体(C)は、例えば極性基を有する化合物で、上記ブロック共重合体を変性することによって得られる。変性方法は特に限定しないが、例えば、ブロック共重合体に共重合又はラジカル付加等することにより行われる。
カルボキシル基変性の場合、変性に用いられる化合物としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体が挙げられ、例えば具体的には、α,β−不飽和カルボン酸やα,β−不飽和カルボン酸無水物が好ましく、例えば具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート等のα,β−不飽和モノカルボン酸エステル;無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物などを挙げることができる。
アミノ基変性の場合、変性に用いられる化合物としては、3−リチオ−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノプロパン、2−リチオ−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノエタン、3−リチオ−2,2−ジメチル−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノプロパン等が挙げられ、例えば不飽和アミン又はその誘導体としては、ビニルアミン等が挙げられる。
アルコキシル基変性の場合、変性に用いられる化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン等のアルコキシシランが挙げられ、例えば不飽和アルコキシド又はその誘導体としては、具体的にはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
水酸基変性の場合、変性に用いられる化合物としては、例えば不飽和アルコール又はその誘導体が挙げられ、例えば具体的には3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール等が挙げられる。
アミド基変性の場合、変性に用いられる化合物としては、例えば不飽和アミド又はその誘導体が挙げられ、例えば具体的にはN−ビニルホルムアミド 、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
エポキシ基変性の場合、変性に用いられる化合物としては、例えば不飽和エポキシド又はその誘導体が挙げられ、例えばビニルエポキシド等が挙げられる。
変性ブロック共重合体(C)における上記極性基の含有量は、通常0.1×10-2〜1ミリモル/g、好ましくは0.5×10-2〜0.5ミリモル/g、より好ましくは1×10-2〜0.2ミリモル/g、更に好ましくは1×10-2〜0.1ミリモル/gである。極性基含有量が多くなりすぎると、EVOH樹脂との親和性が高くなりすぎて、高重合度化物が発生しやすくなり、樹脂組成物のMFRが低下して溶融成形加工性が不足したり、フィッシュアイが発生しやすい傾向にある。また、樹脂組成物内で粘度の偏りが発生し、樹脂組成物をフィルムとしたときにスジが発生しやすくなり、耐屈曲性が低下する傾向にある。
特に変性ブロック共重合体(C)がカルボキシル基を有するものである場合、該カルボキシル基のの含有量は、滴定法で測定した酸価が通常20mgCHONa/g以下であり、好ましくは1〜15mgCHONa/g、更に好ましくは1〜5mgCHONa/gである。
かかる酸価が高すぎると、EVOH樹脂との反応点が多くなるため、高重合度化物が発生しやすくなり、樹脂組成物のMFRが低下して溶融成形加工性が不足し、フィッシュアイが発生しやすい傾向にある。また、高重合度化物が発生することで、樹脂組成物内で粘度の偏りが発生し、樹脂組成物をフィルムとしたときにスジが発生しやすくなり、耐屈曲性が低下する傾向がある。
また、変性ブロック共重合体(C)のメルトフローレート(MFR)においては、230℃、荷重2160g条件下で、通常0.1〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分であり、より好ましくは2〜15g/10分である。
EVOH樹脂(A)の溶融粘度と変性ブロック共重合体(C)との溶融粘度が近いほど、溶融混練が容易になり、耐屈曲性、透明性に優れた樹脂組成物が得られやすい。具体的には、230℃、荷重2160g条件下で測定したMFR比(EVOH樹脂(A)/変性ブロック共重合体(C))が、通常0.1〜10、好ましくは0.5〜4.0、より好ましくは0.7〜3.0である。
かかる変性ブロック共重合体(C)としては市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば旭化成社製の「タフテック」Mシリーズ、クレイトンポリマー社の「Kraton」FGシリーズ、JSR社製の「f−ダイナロン」シリーズが挙げられる。
〔配合比率〕
本発明の樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分が特定割合で配合されているところに特徴があり、特にEVOH樹脂(A)がマトリックスとして存在するところに特徴がある。
本発明の樹脂組成物において、EVOH樹脂(A)とブロック共重合体(B)との重量比率(A/B)が70/30〜99/1、好ましくは70/30〜85/15、より好ましくは70/30〜80/20である。EVOH樹脂(A)を主成分とし、ブロック共重合体(B)の2倍以上の比率で配合することにより、EVOH樹脂(A)がマトリックスとして存在するとともに、EVOH樹脂(A)が本来有するガスバリア性を保持することができる。
ブロック共重合体(B)に対する変性ブロック共重合体(C)の重量比率(C/B)は、変性ブロック共重合体(C)の変性率にもよるが、通常0.01〜10であり、好ましくは0.01〜1であり、より好ましくは0.05〜0.8、更に好ましくは0.1〜0.5であり、特に好ましくは0.1〜0.25、殊に好ましくは0.15〜0.23である。
本発明の樹脂組成物では、変性ブロック共重合体(C)を、EVOH樹脂(A)とブロック共重合体(B)との相溶化剤として用いており、配合比率を上記のように調節することにより、マトリックスであるEVOH樹脂(A)中にブロック共重合体(B)の小さな島を全体にわたって多数分散させることが可能となる。
かかる配合比率(C/B)が高くなりすぎると、耐屈曲性の改善効果が得られにくい反面、EVOH樹脂(A)と変性ブロック共重合体(C)の親和性が高くなることによって高重合度化物が発生しやすくなり、樹脂組成物のMFRが低下して溶融成形加工性が低下し、フィッシュアイが発生しやすい傾向がある。また、高重合度化物の発生は、樹脂組成物内での粘度の偏りの原因となり、成形により得られるフィルムにスジが発生しやすくなり、結果として耐屈曲性改善効果を損なう傾向がある。さらに、樹脂組成物が黄色に着色しやすくなる原因ともなる。
本発明の樹脂組成物の総重量に対する、ブロック共重合体(B)および変性ブロック共重合体(C)が有する芳香族ビニル部位の総含有量は、通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%、殊に好ましくは2〜15重量%である。
さらに、EVOH樹脂(A)に対する(B)成分と(C)成分の和の総量は、重量比率(A)/〔(B)+(C)〕として、通常、50以上/50未満〜99/1、好ましくは60/40〜99/1、特に好ましくは70/30〜99/1である。
以上のような配合比率で配合した本発明の樹脂組成物は、EVOH樹脂(A)をマトリックスとして、ブロック共重合体(B)が均一に分散されており、溶融成形性に優れている。具体的には、210℃、2160gにおけるメルトフローレート(MFR)が、通常0.5〜30g/10分であり、好ましくは0.5〜20g/10分であり、好ましくは1.0〜15g/10分である。樹脂組成物としてのMFRが上記範囲となることにより、押出機に供給した場合に、溶融成型に適した吐出量となり、スジの発生が少ない、外観的にも優れたフィルムを得ることができる。
〔その他の成分〕
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば樹脂組成物の2重量%以下)にて、上記EVOH樹脂(A)、ブロック共重合体(B)、変性ブロック共重合体(C)の他に、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤等の添加剤を適宜含有してもよい。
〔樹脂組成物の調製及びその成形品(単層フィルム)〕
本発明の樹脂組成物は、以上のような成分を混合することによって調製できる。かかる混合方法としては、溶融混合法、溶液混合法等が挙げられる。生産性の点からは溶融混合法が好ましい。
溶融混合方法としては、各成分をドライブレンドした後に溶融して混合する方法や、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミルなどの公知の混練装置を使用して行うことができるが、通常は単軸又は二軸の押出機を用いることが工業上好ましく、また、必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。
溶液混合方法としては、例えば各成分を良溶媒に溶解して混合し、貧溶媒中で析出させる方法等が挙げられる。
以上のような組成を有する本発明の樹脂組成物は、EVOH樹脂(A)が本来有するガスバリア性を保持しつつ、しかも耐屈曲性に優れている。具体的には、厚み30μmのフィルムでの酸素ガス透過量は、通常23℃、65%RHにて、10cc/m・day・atm以下であり、ゲルボフレックステスターで500回捻じっても、面積476cm中のピンホールの発生量を通常10個以下、面積100cm中のフィッシュアイの発生量を通常20個以下とすること、MFR(210℃、2160g)を0.5〜30g/10分にすることが可能である。
つまり、本発明でいう耐屈曲性とは、衝撃のような瞬間的外力に対する耐性ではなく、長時間をかけて徐々に蓄積される疲労に対する耐性である。このような耐性は、1つは、屈曲によって生じるエネルギーを吸収して、蓄積される疲労を軽減することにより得られるもので、本発明の樹脂組成物では全体に均一に分散している柔軟成分であるブロック共重合体(B)が疲労吸収の役割を果たしていると考えられる。
<多層構造体>
本発明の多層構造体は、上記本発明の樹脂組成物からなる層(以下、単に「樹脂組成物層」という)を少なくとも1層有する多層構造体である。
本発明の多層構造体を構成する樹脂組成物層以外の層を構成する樹脂としては、特に限定しないが、EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂が挙げられる。例えば具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、環状ポリオレフィン、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂で構成される層が挙げられる。これらの樹脂の他に、紙、金属箔、1軸又は2軸延伸プラスチックフイルム又はシート、織布、不織布、金属綿条、木質面、アルミやシリカ蒸着と組み合わせた多層構造体であってもよい。中でも機械的強度や溶融成形加工性の点で、好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、特に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンである。
これらのうち、水のバリア性に優れた熱可塑性樹脂層を外表面層として、樹脂組成物層を中間層とする構成の多層構造体が、ガスバリア性を有する包装フィルム、包装容器用途として好ましく用いられる。かかる水のバリア性に優れた熱可塑性樹脂として好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、特に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンである。
該多層構造体の製造方法としては、樹脂組成物を溶融した状態で成形する方法(溶融成形法)と、樹脂組成物を溶媒に溶解して成形する方法(例えば溶液コート法)等に大別される。中でも生産性の観点から、溶融成形法が好ましい。具体的には、例えば、EVOH樹脂組成物の成形品(例えばフィルムやシート)に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、熱可塑性樹脂等の基材に樹脂組成物層を溶融押出する方法、樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層とを共押出する方法、さらには、EVOH樹脂組成物フィルムと熱可塑性樹脂フィルム等の基材とを、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエチレンイミン系化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン系化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、接着性樹脂層を介層させてラミネートする方法等が挙げられる。
接着性樹脂層を構成する接着性樹脂としては特に限定されず、種々のものを使用することができるが、一般的には、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(前述の広義のポリオレフィン系)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
以上のように、本発明の多層構造体は、本発明に係る樹脂組成物層を少なくとも1層含むものであればよく、その構成は特に限定しないが、水分による樹脂組成物のガスバリア能の低下を防ぐ目的で、樹脂組成物層が中間層であることが好ましい。
多層構造体の層構成は、樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、通常3〜20層、好ましくは3〜15層、特に好ましくは3〜10層である。例えば具体的には、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。
また、該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、樹脂組成物とEVOH以外の熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/a/R、R/b/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
さらに上記した多層構造体の層間には公知の接着性樹脂を用いても良い。
中でも、樹脂組成物層のガスバリア性能の低下防止のために、樹脂組成物層への水分の透過を防止できるように、樹脂組成物層が中間層となるような多層構造が最も好ましい。例えば、具体的には、熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層を構成単位とする多層構造体が最も好ましい。
本発明の多層構造体の厚みは、通常1〜1500μm、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは10〜700μmである。また、多層構造体中の熱可塑性樹脂層の厚みは、特に限定しないが、通常0.1〜1000μm、1〜500μmが好ましい。樹脂組成物層の厚みは、特に限定しないが、通常0.1〜500μm、好ましくは1〜100μmである。接着性樹脂層の厚みは、特に限定しないが、通常0.1〜250μm、好ましくは0.1〜100μmである。
また、熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層の厚み比は、各層が複数ある場合は、最も厚みの厚い層同士の比で、通常1超〜30であり、好ましくは2〜30であり、接着性樹脂層/樹脂組成物層の厚み比は、通常0.1〜2であり、好ましくは0.1〜1である。
本発明の多層構造体は、上記のように、他の熱可塑性樹脂や基材と積層しただけの多層構造体であるが、延伸処理されていてもよい。
なお、延伸については、公知の延伸方法でよく、例えば、一軸延伸、二軸延伸等が挙げられる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は、多層構造体の温度(多層構造体近傍温度)で、通常40〜170℃、好ましくは60〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸倍率は、面積比にて、通常2〜50倍、好ましくは2〜20倍である。
<成形品>
本発明の多層構造体は、種々の成形品材料として用いることができる。例えば、本発明の多層構造体を、例えばチューブ状や袋状などの形態に加工して、みりん、醤油、ソース、麺つゆ、食用油等の食品、ワイン、ジュース、牛乳、ミネラルウォーター、日本酒、焼酎、コーヒー、紅茶等の飲料、医薬品、化粧品、次亜塩素酸ソーダ、現像液、バッテリー液等の工業用薬品、液体肥料等の農薬、洗剤等各種の液体の包装材料として広範囲の用途に使用することが可能である。
上述のように、EVOH樹脂(A)本来の有するガスバリア性を損なうことなく、耐屈曲性のように、長期間又は繰り返し施される変形のような蓄積される疲労に対して、耐性を有している。従って、長期間繰り返し変形を受けるような成形品にも適用できることから、バッグインボックス容器に使用されるバックのように、折りたたんだり、内容物の量の変化に伴って変形していくような液体容器に好適である。
上記バッグインボックスとは、折り畳み可能なプラスチックの薄肉内容器と、積み重ね性、持ち運び性、内容器保護性、印刷適性を有する外装箱(バッグインボックス)とを組み合わせた容器のことである。外装箱の基材としては紙やダンボールの他にプラスチックや金属であってもよく、形状についても例えばボックスやカートン(正方形、直方体)、ドラム(円柱)が挙げられ、本明細書においては、これらを総称してバッグインボックスと称する。
以下、バッグインボックス用バッグ等の袋状の液体容器を例に、その製造方法について説明する。
該バッグインボックス用バッグ等の袋状の液体容器は、主に、ヒートシール法及びブロー成形法により製造することができる。
ヒートシール法では、上記共押出法等により製膜された積層体をそのまま、あるいは必要に応じて2重又は3重に重ね合わせて、液体注入口の密封取り付け用の穴を打ち抜き、その穴に、予め射出成形で成形した液体注入口の密封栓をヒートシール法で融着させる。このときに、該積層体と打ち抜き処理のしていない別の積層体とを合わせて四方ヒートシールして袋状の液体容器とすることができる。
ブロー成形法では、複数の押出機から共押出法により押し出された円筒状の上記の多層構造体(パリソン)を金型で型締めして成形する。液体注入口の密封栓は、予め射出成形
で成形したものを金型内にセットしておき、ブロー成形時に成形容器と融着させる。その
後、液体注入口をあけることにより袋状の液体容器とすることができる。
本発明の多層構造体を利用した成形品としては、上記液体容器の他、カップやトレイ状の多層容器であってもよい。このような多層容器の場合、通常絞り成形法が採用され、具体的には真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト式真空圧空成形法等により、成形される。
更に多層パリソン(ブロー前の中空管状の予備成形物)からチューブやボトル状の多層容器を製造してもよい。この場合、ブロー成形法が採用され、具体的には押出ブロー成形法(双頭式、金型移動式、パリソンシフト式、ロータリー式、アキュムレーター式、水平パリソン式等)、コールドパリソン式ブロー成形法、射出ブロー成形法、二軸延伸ブロー成形法(押出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出成形インライン式二軸延伸ブロー成形法等)などが挙げられる。
以上のような成形品は、さらに必要に応じて、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等が施されてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、実施例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
〔測定評価方法〕
(1)ガスバリア性
調製した樹脂組成物で作製した厚み30μmの単層フィルムについて、20℃、65%RH条件下で、MOCON社のOxtran2/20を用いて、厚み30μmあたりの酸素透過度(cc/m2・day・atm)を測定した。
(2)耐屈曲性
乾燥状態でA4サイズ、厚み30μmの乾燥状態の単層フィルムを、23℃、50%RHの条件下で、理学工業社のゲルボフレックステスターを用いて、捻じり試験を行った。
なお、かかるゲルボフレックステスターの捻じり条件は、440°捻じり:3.5インチ、直線水平:2.5インチである。上記捻じり試験を500回(40サイクル/分)加えた後、該単層フィルムの中央部28cm×17cmあたりのピンホール発生数を数えた。かかるテストを5回試行し、その平均値を求めた。
(3)フィッシュアイ
調製した樹脂組成物で作製した厚み30μmの単層フィルムについて、マミヤ・オービー社のデジタル表面欠陥検査システムGX70LT−HSを用いて、10cm×10cmの範囲で直径0.1m以上のフィッシュアイの個数を測定した。さらに、直径0.1mm以上のフィッシュアイ中の直径0.2mm以上のフィッシュアイの個数を数えた。
(4)メルトフローレート測定
樹脂組成物を東洋精機社のメルトインデクサーF−BO1を用いて、荷重2160g、温度210℃にてMFR(g/10分)を測定した。
〔樹脂組成物ペレット及びフィルムの製造〕
EVOH樹脂(A)として、表1に示す2種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH1、EVOH2)を用いた。EVOH1、2は、いずれも表1に示すホウ酸量のホウ素化合物が添加されている。
ブロック共重合体(B)として、表2に示す4種類のSEBS(SEBS1〜4)、及び変性ブロック共重合体(C)として、3種類の変性SEBS(変性SEBS1〜3)を用いた。SEBSとは、SBSの水素添加ブロック共重合体である。また、変性SEBSは、SEBSブロック共重合体において極性基としてカルボキシル基を含有するものである。変性量は表2中、酸価(mgCHONa/g)で示す。ブロック共重合体(B)及び変性ブロック共重合体(C)は、いずれも旭化成ケミカルズ株式会社製の「タフテック」シリーズを用いた。
また、表1及び表2に示すメルトフローレート(MFR)は、いずれも230℃、荷重2160gの測定値である。
Figure 2010254968

Figure 2010254968
表1及び表2に示すEVOH樹脂、SEBS、変性SEBSを、表3に示す割合でドライブレンドし、得られた樹脂組成物を下記条件で溶融混練してストランド状に押し出し、ペレタイザーでカットして、円柱形ペレットの樹脂組成物を得た。
押出機:直径(D)30mm、二軸押出機、L/D=42
スクリーンパック:90/90メッシュ
スクリュ回転数 :160rpm
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6−D=150/200/220/220/220/220−℃
吐出量:18kg/hr
得られたペレットNo.1〜14を、下記条件で製膜(厚み30μm)した。
押出機:直径(D)40mm、L/D=28
スクリュ:フルフライトタイプ 圧縮比=3.5
スクリーンパック:90/120/90メッシュ
ダイ:幅450mm、コートハンガータイプ
設定温度:C1/C2/C3/C4/A/D=190/210/230/230/220/220℃
スクリュ回転数:10rpm
引取速度:3m/min
ロール温度:80℃
エアーギャップ:15cm
各樹脂組成物から得られたフィルムNo.1〜14について、上記評価方法に基づいて、耐屈曲性を測定し、さらにNo.6,10,11,14のガスバリア性、No.1,3,6,7,10,11,13のフィッシュアイ、およびNo.4,6,7,9−11,13のMFRを測定評価した。結果を併せて表3に示す。尚、表3中、「フィッシュアイ〔総数〕」とあるのは所定範囲内での直径0.1mm以上のフィッシュアイの個数を示し、「フィッシュアイ〔0.2〕」とあるのは上記直径0.1mm以上のフィッシュアイのうちの直径0.2mm以上のフィッシュアイの個数を示す。また、配合比(A/B)は、総量100を振り分けた場合の比率に換算した値を示している。
Figure 2010254968
No.1,2は、EVOH樹脂(A)、ブロック共重合体(B)、変性ブロック共重合体(C)の配合比率がいずれも同じであり、ブロック共重合体(B)のスチレン含有率も同程度である。しかしながら、MFR比(A/B)が4.4であるNo.2よりもMFR比(A/B)が1.6であるNo.1の方が耐屈曲性が優れていた。このことは、ブロック共重合体(B)とEVOH樹脂(A)のMFR比が大きくなると、変性ブロック共重合体(C)共存下であっても、ブロック共重合体(B)の分散性が低下し、耐屈曲性が低下する傾向にあることを示している。
No.3−6は、いずれもEVOH樹脂(A)、ブロック共重合体(B)、変性ブロック共重合体(C)の配合割合が同じであり、MFR比(A/B)も同じである。
ブロック共重合体(B)のスチレン含有率が12重量%と低いSEBS3を用いた場合(No.4,5)よりも、ブロック共重合体(B)のスチレン含有率が18重量%と高いSEBS4を用いた場合(No.3,6)の方が、耐屈曲性の向上効果が大きかった。ブロック共重合体(B)のスチレン含有率が高いほど、耐屈曲性が向上する傾向にあることがわかる。
一方、No.3,4,5,6を変性ブロック共重合体(C)に着目してみた場合、スチレン含有率20重量%の変性SEBS1を用いたNo.3,4と、スチレン含有率30重量%の変性SEBS2を用いたNo.5,6とでは、同じブロック共重合体(B)を用いた組み合わせ(No.3,6の組み合わせとNo.4,5の組み合わせ)において、同程度の耐屈曲性を示した。従って、変性ブロック共重合体(C)のスチレン含有率の耐屈曲性に対する影響は、それほど大きくないと思われる。
No.6,7は、EVOH樹脂(A)、ブロック共重合体(B)、変性ブロック共重合体(C)の配合割合が同じで、変性ブロック共重合体(C)のカルボキシル基含有量(酸価)が異なる組み合わせである。カルボキシル基含有量(酸価)が高い変性SEBS2を用いた場合(No.6)よりも、カルボキシル基含有量(酸価)が低いSEBS3を用いた場合(No.7)の方が、耐屈曲性が著しく優れていた。
No.4、8、9は、EVOH樹脂(A)、ブロック共重合体(B)、変性ブロック共重合体(C)が同じであり、ブロック共重合体(B)及び変性ブロック共重合体(C)の配合比率(C/B)が異なる組み合わせである。
ブロック共重合体(B)および変性ブロック共重合体(C)の配合比率(C/B)が0.11であるNo.8では、相溶化剤となる変性SEBSの量が少ないために、EVOH樹脂(A)中におけるブロック共重合体(B)の分散が不十分となるためか、ブロック共重合体(B)および変性ブロック共重合体(C)の配合比率(C/B)が0.2であるNo.4よりも、耐屈曲性が劣る傾向にあった。
一方、ブロック共重合体(B)に対する変性ブロック共重合体(C)の配合比率が0.2である場合(No.4)と0.5である場合(No.9)とを比べると、耐屈曲性評価は、いずれも良好であった。より好ましくは、耐屈曲性の観点から、C/Bを0.15以上としておく方がよいことがわかる。ただし、No.9で得られたフィルムについては、細かいスジが多いことが目視で判別できる程度であったため、実用には足るものであるものの、透明性に改善の余地があった。また、No.9のMFR値は0.8g/10分であり、溶融成形性についても、No.4、8と比べて、低下する傾向にあった。No.9では、ブロック共重合体(B)に対する変性ブロック共重合体(C)の配合比率(C/B)の値が大きくなったため、EVOH樹脂(A)と変性ブロック共重合体(C)が反応して高重合度化物を発生し、それが樹脂組成物内で粘度の偏りを引き起こし、樹脂の均一性が若干不足したためと考えられる。従って、フィルム外観、溶融成形性の観点から、C/Bを0.25未満とすることが好ましいことがわかる。
No.10、11は、EVOH樹脂(A)として、エチレン含有率29モル%のEVOH2を用い、EVOH樹脂(A)及びブロック共重合体(B)の配合比(A/B)を78/22(≒3.6)とした系である。EOVH樹脂(A)として、エチレン含有率32モル%のEVOH1を用い、EVOH樹脂(A)及びブロック共重合体(B)の配合比(A/B)が74/26(≒2.8)であるNo.7と比べて耐屈曲性は若干低下したが、十分に良好な耐屈曲性を示した。若干の耐屈曲性の低下は、EVOH樹脂(A)におけるエチレン含有率の低下に起因すると推測されるが、EVOH樹脂(A)に対するブロック共重合体(B)の配合比率(A/B)が若干小さくなったことも原因の1つ考えられる。
一方、No.10、11は、フィッシュアイ数やMFR値に関しては、No.7よりも優れていた。ガスバリア性、耐屈曲性、フィッシュアイ数、MFR値を総合的に判断すると、No.10、11が、上記特性の全てがバランスよく優れたものであることがわかる。
No.12は、EVOH樹脂(A)にブロック共重合体(B)のみを配合し、相溶化剤となる変性ブロック共重合体(C)を配合しなかった比較例である。No.12の樹脂組成物から得られたフィルムの耐屈曲性評価は21.8となり、実施例に該当するNo.1−11の樹脂組成物から得られたフィルムの耐屈曲性評価(0.2〜6.0)よりも耐屈曲性が低下したことがわかる。No.12では、相溶化剤となる変性ブロック共重合体(C)が共存しなかったため、ブロック共重合体(B)の分散状態が悪く、ブロック共重合体(B)による外力の吸収緩和効果を十分に発揮できなかったためと推測される。
No.13は、EVOH樹脂(A)に変性ブロック共重合体(C)のみを配合し、ブロック共重合体(B)を配合しなかった比較例である。耐屈曲性は良好な値を示したものの、MFR値が0.3g/10分と非常に低い値となり、また、得られたフィルムについてもフィッシュアイが大量に発生していた。これは、変性ブロック共重合体(C)の配合量が多かったため、EVOH樹脂(A)の水酸基と変性ブロック共重合体(C)のカルボキシル基との反応による、高重合度化物が大量に発生したためではないかと推測される。
No.14は、EVOH樹脂(A)とブロック共重合体(B)の配合比(A/B)が57/43(≒1.3)と、ブロック共重合体(B)の含有量が比較的多く、マトリックスを形成しようとするには相対的にEVOH樹脂(A)の含有量が少ない、比較例に該当する樹脂組成物である。相溶化剤となる変性ブロック共重合体(C)が共存しているため、ブロック共重合体(B)は均一分散することができたためか、耐屈曲性を充足することはできた。しかしながら、配合比(A/B)においてEVOH樹脂(A)の含有量が十分と言えないため、ガスバリア性が不足する結果となった。
本発明の樹脂組成物は、EVOH樹脂が本来有するガスバリア性を損なうことなく、耐屈曲性が改善されており、フィッシュアイの発生が抑制され、かつ溶融成形加工に良好なMFR値を有するので、水、飲料等の液体容器として有用である。

Claims (11)

  1. エチレン含有率20〜60モル%のエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A);芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロック(b1)と、不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロック(b2)とを有するブロック共重合体(B);芳香族ビニル単位を主とするポリマーブロック(c1)と、不飽和脂肪族炭化水素を重合してなるポリマーブロック及び/又はその水素添加ブロック(c2)とを有するブロック共重合体で、且つ極性基を含有する変性ブロック共重合体(C)を含有する樹脂組成物であって、
    前記ブロック共重合体(B)に対する前記エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)の重量比率(A/B)が70/30〜99/1であり、
    前記ブロック共重合体(B)に対する前記変性ブロック共重合体(C)の重量比率(C/B)が0.01〜10である樹脂組成物。
  2. エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)とブロック共重合体(B)の230℃、荷重2160gにおけるメルトフローレート値の比(A/B)が0.1〜10である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ブロック共重合体(B)における芳香族ビニル含有率は5〜50重量%である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記変性ブロック共重合体(C)の極性基の含有量は、0.1×10-2〜1ミリモル/gである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 前記変性ブロック共重合体(C)の極性基がカルボキシル基である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 前記ブロック共重合体(C)のカルボキシル基の含有量は20mgCHONa/g以下である請求項5に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体。
  9. 厚みが1〜1500μmである請求項6に記載の多層構造体。
  10. 請求項8又は9に記載の多層構造体からなる液体容器。
  11. 請求項8又は9に記載の多層構造体からなるバックインボックス用バック。
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