JP6680367B2 - α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸の製造方法およびα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents
α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸の製造方法およびα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法 Download PDFInfo
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Description
本発明は、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸の製造方法およびα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法に関する。
α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒としては、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸塩等のヘテロポリ酸又はその塩を主成分とする触媒が知られている。該触媒の製造方法については数多くの検討がなされており、その多くは、まず触媒を構成する各元素を含む水溶液又はスラリーを調製し、その後これを乾燥し、焼成することで触媒を製造している。
このような触媒の基本的な性能は、主に元素組成、結晶構造、粒子径などに依存するが、その制御には、水性スラリーの調製過程の条件、特にpHや温度等の条件を制御することが求められる。ヘテロポリ酸又はその塩を主成分とする触媒としては、一般にカリウム、ルビジウム及びセシウムなどのアルカリ金属の部分中和塩が主成分として用いられている。しかしながら、実際の触媒調製において、単純にアルカリ金属の部分中和塩を形成させるだけでは、α,β−不飽和カルボン酸製造に最適な結晶構造を形成しにくい場合がある。そこで実際の触媒調製においては、アルカリ金属塩とアンモニウム塩などの複合塩を形成させ、焼成によってアンモニウム塩などを分解させることで、アルカリ金属の部分中和塩を形成させることがある。ここで、アンモニウム原料としては、アンモニア水、硝酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムなどが用いられている。しかしながら、前記各アンモニウム原料はそれぞれ課題を有する。一般的にヘテロポリ酸のアンモニウム塩はアルカリ金属塩と比べて粒子径が大きいことが知られている。粒子径が大きいと比表面積が小さくなるため、α,β−不飽和カルボン酸製造の触媒活性は低くなる。
特許文献1には、アンモニウム原料として硝酸アンモニウムを用いることが記載されている。アンモニウム原料として硝酸アンモニウムを用いた場合、ヘテロポリ酸(塩)のスラリーのpHを低い値に抑えることで、α,β−不飽和カルボン酸製造に好ましい結晶構造を形成することができる(非特許文献1)。しかしながら、有機成形助剤を添加する場合、硝酸アンモニウムが共存すると焼成時に大きな発熱を伴う場合があることが知られている(特許文献2)。
特許文献3には、アンモニウム原料として重炭酸アンモニウムを用いることが記載されている。しかしながら、重炭酸アンモニウムを用いた場合は触媒活性が低く、十分なα,β−不飽和カルボン酸収率を得ることができない。
T.OKUHARA,N.MIZUNO,M.MISONO ADVANCES IN CATALYSIS,1996,VOLUME41,113−252.
本発明は、高い収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造できるα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]から[13]である。
[1]α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒の、前駆体の製造方法であって、該前駆体はアンモニウム根を含み、
(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程と、
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、前記前駆体を得る工程と、
を有し、
前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物として、カルバミン酸アンモニウムを30質量%以上含むアンモニウム化合物を使用するα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程と、
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、前記前駆体を得る工程と、
を有し、
前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物として、カルバミン酸アンモニウムを30質量%以上含むアンモニウム化合物を使用するα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
[2]α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒の、前駆体の製造方法であって、該前駆体はアンモニウム根を含み、
(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程と、
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、前記前駆体を得る工程と、
を有し、
前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物が下記式(1)を満たす、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程と、
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、前記前駆体を得る工程と、
を有し、
前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物が下記式(1)を満たす、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
0.048≦W1/W2≦0.2 (1)
(式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。)。
(式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。)。
[3]前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物が下記式(1)を満たす、[1]に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
0.048≦W1/W2≦0.2 (1)
(式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。)。
(式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。)。
[4]下記式(2)で表される組成を有する[1]から[3]のいずれかに記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
PaMobVcCudAeEfGg(NH4)hOi (2)
(前記式(2)中、P、Mo、V、Cu、NH4及びOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、アンモニウムイオン及び酸素を示す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す。Gはカリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム、マグネシウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a〜hは各成分のモル比率を表し、b=12のとき、a=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3、h=0.1〜20、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。)。
(前記式(2)中、P、Mo、V、Cu、NH4及びOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、アンモニウムイオン及び酸素を示す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す。Gはカリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム、マグネシウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a〜hは各成分のモル比率を表し、b=12のとき、a=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3、h=0.1〜20、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。)。
[5]前記工程(ii)において、90℃より高く、105℃以下の温度の前記水性スラリーまたは水溶液(I)に前記アンモニウム化合物を添加する[1]から[4]のいずれかに記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
[6]前記工程(ii)における前記アンモニウム化合物が、カルバミン酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムとの混合物である[1]から[5]のいずれかに記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
[7]前記α,β−不飽和アルデヒドが(メタ)アクロレインであり、かつ前記α,β−不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸である[1]から[6]のいずれかに記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
[8][1]から[7]のいずれかに記載の方法により製造したα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体を熱処理する工程を含むα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[9]前記熱処理の温度が200〜500℃である[8]に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[10][8]または[9]に記載の方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の存在下で、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
[11][8]または[9]に記載の方法によりα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を製造し、前記触媒を用いて、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
[12][10]または[11]に記載の方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸をエステル化するα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
[13][10]または[11]に記載の方法によりα,β−不飽和カルボン酸を製造し、該α,β−不飽和カルボン酸をエステル化するα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
本発明によれば、高い収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造できるα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体を提供することができる。
[α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法]
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体(以下、触媒前駆体とも示す)の製造方法は、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒の、前駆体の製造方法であって、該前駆体はアンモニウム根を含む。該方法は、以下の工程(i)〜(iii)を含む。
(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程。
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程。
(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、前記前駆体を得る工程。
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体(以下、触媒前駆体とも示す)の製造方法は、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒の、前駆体の製造方法であって、該前駆体はアンモニウム根を含む。該方法は、以下の工程(i)〜(iii)を含む。
(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程。
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程。
(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、前記前駆体を得る工程。
前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物は、カルバミン酸アンモニウムを30質量%以上含むか、または下記式(1)を満たす。
0.048≦W1/W2≦0.2 (1)
(式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。)。
(式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。)。
本発明に係る方法では、前記工程(i)〜(iii)を含み、かつ、前記工程(ii)において、カルバミン酸アンモニウムを30質量%以上含むか、または、前記式(1)を満たすアンモニウム化合物を用いることにより、触媒の元素組成や結晶構造、水性スラリーのpHや残存カウンターアニオンなどの化学特性を変化させることなく、水性スラリー中の触媒粒子の粒子径のみを小さくすることができ、比表面積を向上させることができる。これにより、触媒活性が向上し、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に、α,β−不飽和カルボン酸の収率を向上させることができる。すなわち、本発明者らは、触媒を製造する際に用いるアンモニウム原料として、カルバミン酸アンモニウムの含有比率が所定のものを用いることで高収率を達成できることを見出し、本発明を完成した。なお、本発明において「アンモニウム根」とは、アンモニウムイオン(NH4 +)になり得るアンモニア(NH3)、およびアンモニウム塩などのアンモニウム含有化合物に含まれるアンモニウムの総称である。また、本発明に係る方法では、前記工程(ii)において、カルバミン酸アンモニウムを30質量%以上含み、かつ、前記式(1)を満たすアンモニウム化合物を用いてもよい。
本発明に係る方法により製造されるα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体は、少なくともリン及びモリブデンを含むことが好ましく、下記式(2)で表される組成を有することが、α,β−不飽和カルボン酸の製造において高収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造できる観点からより好ましい。なお、触媒前駆体における各元素のモル比は、触媒前駆体をアンモニア水に溶解した成分をICP発光分析法で分析することによって求めた値とする。またアンモニウムイオンのモル比は、触媒前駆体をケルダール法で分析することによって求めた値とする。
PaMobVcCudAeEfGg(NH4)hOi (2)
前記式(2)中、P、Mo、V、Cu、NH4及びOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、アンモニウムイオン及び酸素を示す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す。Gはカリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム、マグネシウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a〜hは各成分のモル比率を表し、b=12のとき、a=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3、h=0.1〜20、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。
前記式(2)中、P、Mo、V、Cu、NH4及びOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、アンモニウムイオン及び酸素を示す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す。Gはカリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム、マグネシウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a〜hは各成分のモル比率を表し、b=12のとき、a=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3、h=0.1〜20、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法は、以下の工程(i)から(iii)を有する。(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程。(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程。(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、触媒前駆体を得る工程。ここで、前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物として、カルバミン酸アンモニウムを30質量%以上含むか、または、前記式(1)を満たすアンモニウム化合物を使用する。また、本発明に係るメタクリル酸製造用触媒前駆体の製造方法は、後述する成形工程をさらに有してもよい。
(工程(i))
工程(i)では、モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する。例えば、調製容器を用いて触媒成分の原料化合物を溶媒に溶解又は懸濁させることにより、水性スラリーまたは水溶液(I)を得ることができる。前記水性スラリーまたは水溶液(I)は、少なくともリン及びモリブデンを含むことが好ましく、前記式(2)で表される組成に含まれる元素を含むことがより好ましい。
工程(i)では、モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する。例えば、調製容器を用いて触媒成分の原料化合物を溶媒に溶解又は懸濁させることにより、水性スラリーまたは水溶液(I)を得ることができる。前記水性スラリーまたは水溶液(I)は、少なくともリン及びモリブデンを含むことが好ましく、前記式(2)で表される組成に含まれる元素を含むことがより好ましい。
使用する原料化合物としては、各触媒元素の硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩等を単独で、又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。モリブデン原料としては、例えばパラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、塩化モリブデン等が挙げられる。リン原料としては、例えば正リン酸、五酸化リン、又は、リン酸アンモニウム、リン酸セシウム等のリン酸塩等が挙げられる。銅原料としては、例えば硫酸銅、硝酸銅、酸化銅、炭酸銅、酢酸銅、塩化銅等が挙げられる。バナジウム原料としては、例えばバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、塩化バナジウム等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、モリブデン、リン、バナジウムの原料としては、モリブデン、リン、バナジウムのうちの少なくとも一つの元素を含むヘテロポリ酸を用いてもよい。ヘテロポリ酸としては、例えばリンモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸、ケイモリブデン酸等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
工程(i)で触媒成分の原料化合物としてアンモニウム塩を使用する場合は、触媒前駆体に含まれる該原料化合物由来のアンモニウム根の量は、モリブデンの量を12モルとしたとき、3モル以下が好ましく、1.5モル以下がより好ましく、1モル以下がさらに好ましく、0.6モル以下が特に好ましい。該原料化合物由来のアンモニウム根の量が、モリブデンの量を12モルとしたときに3モル以下であることにより、本願発明の効果を十分に得ることができる。
水性スラリーまたは水溶液(I)の調製は、水に触媒前駆体を構成する各元素の原料の一部、または全てを加え、加熱しながら攪拌する方法により行うことが簡便であり好ましい。水に触媒前駆体を構成する各元素の原料の水溶液、水性スラリーまたは水性ゾルを添加することもできる。水性スラリーまたは水溶液(I)の加熱温度は、80〜130℃が好ましく、90〜130℃がより好ましい。水性スラリーまたは水溶液(I)の加熱温度を80℃以上とすることで、モリブデン含有ヘテロポリ酸の生成速度を十分に速めることができる。また、水性スラリーまたは水溶液(I)の加熱温度を130℃以下とすることで、水性スラリーまたは水溶液(I)中の水の蒸発を抑制することができる。調製される水性スラリーまたは水溶液(I)のpHは4以下が好ましく、2以下がより好ましい。水性スラリーまたは水溶液(I)のpHを十分低くすることにより、好ましい構造のモリブデン含有ヘテロポリ酸を形成することができる。なお、水性スラリーまたは水溶液(I)のpHの測定は、pHメーター(堀場製作所社製、商品名:D−21)により行うことができる。また、モリブデン含有ヘテロポリ酸が形成されているか否かは、NICOLET6700FT−IR(製品名、Thermo electron社製)を用いた赤外吸収分析により判断することができる。
(工程(ii))
工程(ii)では、前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る。
工程(ii)では、前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る。
アンモニウム化合物としては、カルバミン酸アンモニウムを30質量%以上含むか、または、下記式(1)を満たすアンモニウム化合物を使用する。
0.048≦W1/W2≦0.2 (1)
前記式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。
前記式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。
これにより、得られる触媒の比表面積が大きくなり、α,β−不飽和カルボン酸製造における触媒活性を高めることができ、α,β−不飽和カルボン酸の収率を向上させることができる。アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの含有量は、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。カルバミン酸アンモニウムの含有量は多いほどα,β−不飽和カルボン酸の収率を向上させることができるが、製造コストの観点から、カルバミン酸アンモニウムの含有量の上限は95質量%以下が好ましい。W1/W2の下限は、0.055以上が好ましく、0.078以上がより好ましく、0.085以上がさらに好ましく、0.092以上が特に好ましい。また、W1/W2の上限は、0.15以下が好ましく、0.13以下がより好ましく、0.12以下がさらに好ましい。
アンモニウム化合物として、カルバミン酸アンモニウム以外の他のアンモニウム化合物を併用する場合、他のアンモニウム化合物としては、重炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、アンモニア水等が挙げられるが、目的生成物の収率の観点から重炭酸アンモニウムを併用することが好ましい。すなわち、アンモニウム化合物は、カルバミン酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムとの混合物であることが好ましい。これらの他のアンモニウム化合物は、1種で用いてもよく、複数種を併用してもよい。アンモニウム化合物は、カルバミン酸アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムを合計で80〜100質量%含むことが好ましく、90〜100質量%含むことがより好ましい。なお、本発明における「アンモニウム化合物」は、前記触媒元素を含まないアンモニウム化合物を示す。
アンモニウム化合物を添加する水性スラリーまたは水溶液(I)の温度は、α,β−不飽和カルボン酸を製造する際のホットスポット抑制の観点から、下限は90℃より高く、上限は105℃以下とすることが好ましい。また、下限は93℃以上がより好ましい。
本工程において、アンモニウム化合物以外に前記式(2)におけるG元素の原料も添加して、前記ヘテロポリ酸の少なくとも一部をG元素の塩として析出させても良い。
アンモニウム化合物及び必要に応じて添加されるG元素の原料は、溶媒に溶解または懸濁させて添加することが好ましい。溶媒としては、水、エチルアルコール、アセトン等が挙げられるが、前記工程(i)で得られる水性スラリーまたは水溶液(I)と同じ水を溶媒として用いることが好ましい。アンモニウム化合物及び必要に応じて添加されるG元素の原料を添加した後のスラリー(II)の攪拌時間は、5〜60分が好ましく、下限は10分以上、上限は30分以下がより好ましい。また、攪拌時のスラリー(II)の温度は、80〜100℃が好ましい。攪拌時間を5分以上、温度を80℃以上とすることで、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩及びG元素の塩を十分に形成させることができる。一方、攪拌時間を60分以下、温度を100℃以下とすることで、目的とするヘテロポリ酸のアンモニウム塩及びG元素の塩の形成以外の副反応を抑制することができる。
析出させるヘテロポリ酸のアンモニウム塩及びG元素の塩は、ケギン型構造を有していても、ドーソン型構造等のケギン型以外の構造を有していても構わないが、ケギン型構造を有することが好ましい。析出させるヘテロポリ酸のアンモニウム塩及びG元素の塩がケギン型構造を有する場合、α,β−不飽和カルボン酸の収率がより向上する。ケギン型構造を有するヘテロポリ酸のアンモニウム塩及びG元素の塩を析出させる方法としては、例えばモリブデン原料として三酸化モリブデンを使用して、工程(ii)におけるスラリー(II)のpHを3以下に調整する方法が挙げられる。なお、析出したヘテロポリ酸のアンモニウム塩及びG元素の塩の構造は、NICOLET6700FT−IR(製品名、Thermo electron社製)を用いた赤外吸収分析及びX線回折装置X‘Pert PRO MPD(製品名、PANaltical社製)を用いたX線回折分析により判断することができる。
(工程(iii))
工程(iii)では、前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、触媒前駆体を得る。乾燥方法としては、例えば、ドラム乾燥法、気流乾燥法、蒸発乾固法、噴霧乾燥法等が挙げられる。乾燥温度は120〜500℃が好ましく、下限は140℃以上、上限は350℃以下がより好ましい。乾燥は、スラリー(II)が乾固するまで行うことができる。触媒前駆体の水分含有率は、0.1〜4.5質量%が好ましい。なお、これらの条件は、所望する触媒前駆体の形状や大きさにより適宣選択することができる。
工程(iii)では、前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、触媒前駆体を得る。乾燥方法としては、例えば、ドラム乾燥法、気流乾燥法、蒸発乾固法、噴霧乾燥法等が挙げられる。乾燥温度は120〜500℃が好ましく、下限は140℃以上、上限は350℃以下がより好ましい。乾燥は、スラリー(II)が乾固するまで行うことができる。触媒前駆体の水分含有率は、0.1〜4.5質量%が好ましい。なお、これらの条件は、所望する触媒前駆体の形状や大きさにより適宣選択することができる。
(成形工程)
成形工程では、前記触媒前駆体または後述する熱処理工程で得られる熱処理後の触媒を成形する。成形方法は特に制限されず、公知の乾式又は湿式の成形方法が適用できる。例えば、打錠成形、押出成形、加圧成形、転動造粒等が挙げられる。成形品の形状としては特に制限はなく、球形粒状、リング状、円柱形ペレット状、星型状、成形後に粉砕分級した顆粒状等の任意の形状が挙げられる。触媒の大きさとしては、触媒径が0.1〜10mmであることが好ましい。触媒径が0.1mm以上であることにより、反応管内の圧力損失を小さくすることができる。また、触媒径が10mm以下であることにより、触媒活性がより向上する。成形する際には担体に担持してもよく、その他の添加剤を混合してもよい。
成形工程では、前記触媒前駆体または後述する熱処理工程で得られる熱処理後の触媒を成形する。成形方法は特に制限されず、公知の乾式又は湿式の成形方法が適用できる。例えば、打錠成形、押出成形、加圧成形、転動造粒等が挙げられる。成形品の形状としては特に制限はなく、球形粒状、リング状、円柱形ペレット状、星型状、成形後に粉砕分級した顆粒状等の任意の形状が挙げられる。触媒の大きさとしては、触媒径が0.1〜10mmであることが好ましい。触媒径が0.1mm以上であることにより、反応管内の圧力損失を小さくすることができる。また、触媒径が10mm以下であることにより、触媒活性がより向上する。成形する際には担体に担持してもよく、その他の添加剤を混合してもよい。
[α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法]
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法は、前記工程(iii)で得られた触媒前駆体、または前記成形工程で得られた触媒前駆体の成形物(以下、まとめて触媒前駆体とも示す)を熱処理する工程(以下、熱処理工程とも示す)を含むことが好ましい。
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法は、前記工程(iii)で得られた触媒前駆体、または前記成形工程で得られた触媒前駆体の成形物(以下、まとめて触媒前駆体とも示す)を熱処理する工程(以下、熱処理工程とも示す)を含むことが好ましい。
(熱処理工程)
熱処理工程では、前記触媒前駆体を熱処理し、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を得る。熱処理条件としては、特に限定はないが、例えば空気等の酸素含有ガスおよび不活性ガスの少なくとも一方の流通下で行うことができる。前記熱処理は、空気等の酸素含有ガス流通下で行われることが好ましい。また、「不活性ガス」とは触媒活性を低下させない気体のことを示し、例えば窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を混合して使用してもよい。熱処理温度は200〜500℃が好ましく、下限は300℃以上、上限は450℃以下がより好ましい。また、熱処理時間の下限は0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。また熱処理時間の上限は、40時間以下が好ましい。得られる触媒の比表面積は4.6m2/g以上であることが好ましい。なお、触媒の比表面積は窒素吸着法を用いて求められる値であり、具体的には後述する方法により求められる値である。
熱処理工程では、前記触媒前駆体を熱処理し、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を得る。熱処理条件としては、特に限定はないが、例えば空気等の酸素含有ガスおよび不活性ガスの少なくとも一方の流通下で行うことができる。前記熱処理は、空気等の酸素含有ガス流通下で行われることが好ましい。また、「不活性ガス」とは触媒活性を低下させない気体のことを示し、例えば窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を混合して使用してもよい。熱処理温度は200〜500℃が好ましく、下限は300℃以上、上限は450℃以下がより好ましい。また、熱処理時間の下限は0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。また熱処理時間の上限は、40時間以下が好ましい。得られる触媒の比表面積は4.6m2/g以上であることが好ましい。なお、触媒の比表面積は窒素吸着法を用いて求められる値であり、具体的には後述する方法により求められる値である。
[α,β−不飽和カルボン酸の製造方法]
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸の製造方法は、本発明に係る方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の存在下で、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化する。また、本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸の製造方法は、本発明に係る方法によりα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を製造し、前記触媒を用いて、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化する。
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸の製造方法は、本発明に係る方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の存在下で、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化する。また、本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸の製造方法は、本発明に係る方法によりα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を製造し、前記触媒を用いて、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化する。
本発明に係る方法において、前記α,β−不飽和アルデヒドとしては、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド(β−メチルアクロレイン)、シンナムアルデヒド(β−フェニルアクロレイン)等が挙げられる。中でも、目的生成物の収率の観点から(メタ)アクロレインであることが好ましく、メタクロレインであることがより好ましい。製造されるα,β−不飽和カルボン酸は、前記α,β−不飽和アルデヒドのアルデヒド基がカルボキシル基に変化したα,β−不飽和カルボン酸である。具体的には、α,β−不飽和アルデヒドが(メタ)アクロレインの場合、(メタ)アクリル酸が得られる。なお、「(メタ)アクロレイン」はアクロレイン及びメタクロレインを示し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリル酸を示す。
以下、代表例として、本発明に係る方法により製造されたメタクリル酸製造用触媒の存在下、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法について説明する。
前記方法では、メタクロレインおよび分子状酸素を含む原料ガスと、本発明に係る触媒とを接触させることでメタクリル酸を製造する。この反応では固定床型反応器を使用することができる。反応管内に触媒を充填し、該反応器へ原料ガスを供給することにより反応を行うことができる。触媒層は1層でもよく、活性の異なる複数の触媒をそれぞれ複数の層に分けて充填してもよい。また、活性を制御するためにメタクリル酸製造用触媒を不活性担体により希釈し充填してもよい。
原料ガス中のメタクロレインの濃度は特に限定されないが、1〜20容量%が好ましく、下限は3容量%以上、上限は10容量%以下がより好ましい。原料であるメタクロレインは、低級飽和アルデヒド等の本反応に実質的な影響を与えない不純物を少量含んでいてもよい。
原料ガス中の分子状酸素の濃度は、メタクロレイン1モルに対して0.4〜4モルが好ましく、下限は0.5モル以上、上限は3モル以下がより好ましい。なお、分子状酸素源としては、経済性の観点から空気が好ましい。必要であれば、空気に純酸素を加えて分子状酸素を富化した気体を用いてもよい。
原料ガスは、メタクロレインおよび分子状酸素を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであってもよい。さらに、原料ガスに水蒸気を加えてもよい。水蒸気の存在下で反応を行うことにより、メタクリル酸をより高い収率で得ることができる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1〜50容量%が好ましく、下限は1容量%以上、上限は40容量%がより好ましい。
原料ガスとメタクリル酸製造用触媒との接触時間は、1.5〜15秒が好ましい。反応圧力は、0.1〜1MPa(G)が好ましい。ただし、(G)はゲージ圧であることを意味する。反応温度は200〜450℃が好ましく、下限は250℃以上、上限は400℃以下がより好ましい。
[α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法]
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、本発明に係る方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸をエステル化する。また、本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、本発明に係る方法によりα,β−不飽和カルボン酸を製造し、該α,β−不飽和カルボン酸をエステル化する。これらの方法によれば、α,β−不飽和アルデヒドの気相接触酸化により得られるα,β−不飽和カルボン酸を用いて、α,β−不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。α,β−不飽和カルボン酸と反応させるアルコールとしては特に限定されず、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。得られるα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。反応は、スルホン酸型カチオン交換樹脂等の酸性触媒の存在下で行うことができる。反応温度は50〜200℃が好ましい。
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、本発明に係る方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸をエステル化する。また、本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、本発明に係る方法によりα,β−不飽和カルボン酸を製造し、該α,β−不飽和カルボン酸をエステル化する。これらの方法によれば、α,β−不飽和アルデヒドの気相接触酸化により得られるα,β−不飽和カルボン酸を用いて、α,β−不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。α,β−不飽和カルボン酸と反応させるアルコールとしては特に限定されず、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。得られるα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。反応は、スルホン酸型カチオン交換樹脂等の酸性触媒の存在下で行うことができる。反応温度は50〜200℃が好ましい。
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例中の「部」は質量部を意味する。原料ガスおよび生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。ガスクロマトグラフィーの結果から、メタクリル酸収率を下記式にて求めた。
メタクリル酸収率(%)=(B/A)×100
式中、Aは反応器へ供給したメタクロレインのモル数、Bは生成したメタクリル酸のモル数である。
式中、Aは反応器へ供給したメタクロレインのモル数、Bは生成したメタクリル酸のモル数である。
触媒の比表面積は窒素吸着法を用いて求めた。具体的には、トライスター3000(商品名、Micrometrics社製)を用いて測定した。触媒を1.5g用いて測定を行い、BET5点法により比表面積を算出した。
(実施例1)
純水400部に、三酸化モリブデン100部、メタバナジン酸アンモニウム3.4部、85質量%リン酸水溶液9.4部を純水6.0部で希釈した希釈物、および硝酸銅(II)三水和物2.1部を純水4.5部に溶解した溶解物を添加した。得られた水性スラリーを攪拌しながら25℃から95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ2時間攪拌し、モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリー(I)を得た。該水性スラリー(I)のpHは0.6であった。さらに液温を95℃に保って撹拌しながら、重炭酸セシウム13.5部を純水24部に溶解した溶解物と、カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物を滴下して15分間攪拌し、ヘテロポリ酸のセシウム塩及びアンモニウム塩を析出させた。前記ヘテロポリ酸のセシウム塩及びアンモニウム塩はケギン型構造を有していた。得られたスラリー(II)を140℃の水蒸気で加熱して蒸発乾固させ、触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を加圧成形した後、粉砕したものを空気流通下380℃で5時間熱処理し、触媒を得た。
純水400部に、三酸化モリブデン100部、メタバナジン酸アンモニウム3.4部、85質量%リン酸水溶液9.4部を純水6.0部で希釈した希釈物、および硝酸銅(II)三水和物2.1部を純水4.5部に溶解した溶解物を添加した。得られた水性スラリーを攪拌しながら25℃から95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ2時間攪拌し、モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリー(I)を得た。該水性スラリー(I)のpHは0.6であった。さらに液温を95℃に保って撹拌しながら、重炭酸セシウム13.5部を純水24部に溶解した溶解物と、カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物を滴下して15分間攪拌し、ヘテロポリ酸のセシウム塩及びアンモニウム塩を析出させた。前記ヘテロポリ酸のセシウム塩及びアンモニウム塩はケギン型構造を有していた。得られたスラリー(II)を140℃の水蒸気で加熱して蒸発乾固させ、触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を加圧成形した後、粉砕したものを空気流通下380℃で5時間熱処理し、触媒を得た。
前記触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%および窒素55容量%からなる原料ガスを反応温度285℃、原料ガスとメタクリル酸製造用触媒との接触時間2.4秒で通じた。反応器から得られる生成物を捕集し、ガスクロマトグラフィーで分析してメタクリル酸収率を算出した。また、触媒反応に使用する前に、窒素吸着法により比表面積を算出した。結果を表1に示す。
(実施例2)
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム2.0部とカルバミン酸アンモニウム5.9部との混合物を純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム2.0部とカルバミン酸アンモニウム5.9部との混合物を純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例3)
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム4.6部とカルバミン酸アンモニウム4.6部との混合物を純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム4.6部とカルバミン酸アンモニウム4.6部との混合物を純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例4)
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム5.9部とカルバミン酸アンモニウム4.0部との混合物を純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム5.9部とカルバミン酸アンモニウム4.0部との混合物を純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
(比較例1)
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム8.3部とカルバミン酸アンモニウム2.8部との混合物を純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム8.3部とカルバミン酸アンモニウム2.8部との混合物を純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
(比較例2)
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム14.0gを純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
カルバミン酸アンモニウム6.9部を純水70部に溶解した溶解物の代わりに、重炭酸アンモニウム14.0gを純水70部に溶解した溶解物を用いた以外は、実施例1と同様に触媒前駆体を製造した。得られた触媒前駆体の酸素以外の組成はP1.4Mo12V0.5Cu0.15Cs1.2(NH4)3.6であった。該触媒前駆体を実施例1と同様の方法により成形し、熱処理して触媒を得た。該触媒を用いて、実施例1と同様の方法により反応を行い、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1〜4では、カルバミン酸アンモニウムの質量比率およびW1/W2の値が本発明の範囲内にあり、メタクリル酸収率が高い触媒であることが確認された。一方、比較例1および2は、カルバミン酸アンモニウムの質量比率およびW1/W2の値が本発明の範囲外であるため、実施例と比較してメタクリル酸収率が低かった。なお、本実施例で得られたメタクリル酸をエステル化することで、メタクリル酸エステルを得ることができる。
この出願は、2016年12月12日に出願された日本出願特願2016−240355を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
本発明によれば、α,β−不飽和アルデヒドから高い収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造することができるα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体を提供することができ、工業的に有用である。
Claims (13)
- α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒の、前駆体の製造方法であって、該前駆体はアンモニウム根を含み、
(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程と、
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、前記前駆体を得る工程と、
を有し、
前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物として、カルバミン酸アンモニウムを30質量%以上含むアンモニウム化合物を使用するα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。 - α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒の、前駆体の製造方法であって、該前駆体はアンモニウム根を含み、
(i)モリブデン含有ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液(I)を準備する工程と、
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液(I)にアンモニウム化合物を添加して、ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を得る工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸のアンモニウム塩が析出したスラリー(II)を乾燥し、前記前駆体を得る工程と、
を有し、
前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物が下記式(1)を満たす、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
0.048≦W1/W2≦0.2 (1)
(式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。) - 前記工程(ii)におけるアンモニウム化合物が下記式(1)を満たす、請求項1に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
0.048≦W1/W2≦0.2 (1)
(式(1)中、W1は前記アンモニウム化合物中のカルバミン酸アンモニウムの質量、W2は前記水性スラリーまたは水溶液(I)に含まれるモリブデン元素の質量を示す。) - 下記式(2)で表される組成を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
PaMobVcCudAeEfGg(NH4)hOi (2)
(前記式(2)中、P、Mo、V、Cu、NH4及びOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、アンモニウムイオン及び酸素を示す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す。Gはカリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム、マグネシウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a〜hは各成分のモル比率を表し、b=12のとき、a=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3、h=0.1〜20、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。) - 前記工程(ii)において、90℃より高く、105℃以下の温度の前記水性スラリーまたは水溶液(I)に前記アンモニウム化合物を添加する請求項1から4のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
- 前記工程(ii)における前記アンモニウム化合物が、カルバミン酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムとの混合物である請求項1から5のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
- 前記α,β−不飽和アルデヒドが(メタ)アクロレインであり、かつ前記α,β−不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸である請求項1から6のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体の製造方法。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の方法により製造したα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒前駆体を熱処理する工程を含むα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
- 前記熱処理の温度が200〜500℃である請求項8に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
- 請求項8または9に記載の方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の存在下で、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
- 請求項8または9に記載の方法によりα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を製造し、前記触媒を用いて、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
- 請求項10または11に記載の方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸をエステル化するα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
- 請求項10または11に記載の方法によりα,β−不飽和カルボン酸を製造し、該α,β−不飽和カルボン酸をエステル化するα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
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