JP5593605B2 - メタクリル酸製造用触媒およびその製造方法、ならびにメタクリル酸の製造方法 - Google Patents
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Description
(a)ヘテロポリ酸(塩)は中心に異種元素があり、酸素を共有して縮合酸基が縮合して形成される単核または複核の錯イオンを有している。縮合形態は数種類知られており、リン、ヒ素、ケイ素、ゲルマニウム、チタン等が中心元素となり得る(非特許文献1)。
(b)ヘテロポリ酸は酸性度が高いため、これを単独で触媒として使用するとメタクリル酸の選択率・収率が低くなる。そこで、プロトンの一部を部分中和することにより酸性度を調整した触媒とする(非特許文献2)。
(c)リン、ヒ素を中心元素、モリブデン、バナジウムを配位元素として含み、その比率がモリブデン12グラム原子に対して中心元素が0.5〜3グラム原子、バナジウムが0.01〜2グラム原子であるヘテロポリ酸および/またはその塩を含む触媒とする(特許文献1)。
(d)少なくとも触媒原料を溶媒中で混合して触媒原料混合液を得る工程と、前記触媒原料混合液に含まれる固形分をろ別する工程と、ろ別した前記固形分を減圧乾燥する工程と、得られた乾燥物を焼成する工程を含むことを特徴とする方法でメタクリル酸製造用触媒を製造する(特許文献2)。
(e)モリブデン、リンおよびバナジウムを含む溶液またはスラリー(A液)、アンモニウム根を含む溶液またはスラリー(B液)、およびカリウム、ルビジウムまたはセシウムを含む溶液またはスラリー(C液)を混合する際に、A液、C液、またはA液とC液との混合液にB液を0.1〜15分で混合することを特徴とする方法でメタクリル酸製造用触媒を製造する(特許文献3)。
(i)水中に少なくともモリブデン原料の一部およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する工程と
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、前記ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させる工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーに、残りのモリブデン原料を添加する工程と、
(iv)全ての原料を含む水性スラリーまたは水溶液を乾燥して乾燥物を得る工程と、
(v)前記乾燥物を熱処理する工程と
を有し、
前記工程(v)で熱処理した触媒における水難溶性成分の質量割合をα質量%、前記触媒に含まれるヘテロ原子のうち水難溶性成分に含まれるヘテロ原子の割合をβ原子%としたとき、65≦α≦80および50≦β≦70を満たすことを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法である。
本発明は、リン元素、モリブデン元素およびアルカリ金属元素を含む触媒であり、下記式(1)で表される組成を有することが好ましい。
(式中、Mo、P、V、CuおよびOはそれぞれモリブデン、リン、バナジウム、銅および酸素を示す元素記号である。Xは、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。Yは、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。a、b、c、d、e、fおよびgは、各元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0.01〜3、f=0〜3であり、gは、前記各元素の原子比を満足するのに必要な酸素の原子比である。)
本発明の触媒は、以下の工程を有する製造方法により製造される。
・工程(i):水中に少なくともモリブデン原料の一部およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する(調製工程)。
・工程(ii):前記水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、前記ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させる(析出工程)。
・工程(iii):前記ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーに、残りのモリブデン原料を添加する(モリブデン添加工程)。
・工程(iv):全ての原料を含む水性スラリーまたは水溶液を乾燥して乾燥物を得る(乾燥工程)。
・工程(v):前記乾燥物を熱処理する(熱処理工程)。
この工程では、水中に少なくともモリブデン原料の一部およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する。すなわち、調製工程では、モリブデン原料の一部のみを添加する。そして、得られたスラリーまたは水溶液を用いてヘテロポリ酸塩を析出させた上で、その後に残りのモリブデン原料を添加する。本発明者らは、このようにモリブデン原料をヘテロポリ酸塩の析出前後に分けて添加し、調製工程で添加するモリブデン原料とリン原料の質量比を適宜調整することで、結果として得られる触媒性能を大きく向上することができることを見出した。
この工程では、調製工程で得られた水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させる。アルカリ金属化合物を添加する前に、水性スラリーまたは水溶液を冷却することが好ましい。冷却温度は20〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。
この工程では、ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーに、残りのモリブデン原料を添加する。ここで添加するモリブデン原料は、調製工程で添加したモリブデン原料と同じでもよく、異なっていてもよい。
この工程では、全ての原料を含む水性スラリーまたは水溶液を加熱して乾燥することで、乾燥物を得ることができる。乾燥方法としては、例えば、ドラム乾燥法、気流乾燥法、蒸発乾固法、噴霧乾燥法等の公知の方法が挙げられる。乾燥は、通常、120〜500℃、好ましくは140〜350℃で、水性スラリーまたは水溶液が乾固するまで行う。この際に使用する乾燥機の機種や乾燥温度などの条件は特に限定されず、所望する乾燥品の形状や大きさにより適宜選択することができる。
得られた乾燥物をそのまま熱処理してもよいが、その乾燥物を賦型し、得られた賦型品を熱処理してもよい。また、乾燥物を後述する熱処理工程で熱処理したものを賦型してもよい。乾燥物または熱処理した乾燥物の賦型に用いる装置としては、打錠成形機、押出成形機、転動造粒機等の公知の粉体用成形機が挙げられる。賦型品の形状としては特に制限はなく、球状、リング状、円柱状、星型状等の任意の形状が挙げられる。
この工程では、乾燥物または乾燥物の賦型品を熱処理することで、触媒を得ることができる。熱処理条件としては特に限定はなく、公知の熱処理条件を適用できる。熱処理は、通常、空気等の酸素含有ガス流通下および/または不活性ガス流通下で、200〜500℃、好ましくは300〜450℃で、0.5時間以上、好ましくは1〜40時間で行う。
触媒0.2gを室温の純水100gに溶解させ、超音波溶出処理して、さらに遠心分離機で水溶出部と水不溶解部を分離する。超音波溶出処理は、38〜45kHzで30分行う。続いて、水不溶解部を乾燥・秤量する。そして、この水不溶解部を水難溶性成分とみなして、触媒における水難溶性成分の質量割合を算出する。
触媒全体をアンモニア水に溶解させ、ICP発光分析法と原子吸光分析法で分析する。続いて、触媒における水難溶性成分の質量割合を算出する際に得られた水不溶解部をアンモニア水に溶解させ、同様にICP発光分析法と原子吸光分析法で分析する。そして、水不溶解部を水難溶性成分とみなして、触媒に含まれるヘテロ原子のうち水難溶性成分に含まれるヘテロ原子の割合を算出する。
本発明のメタクリル酸の製造方法は、上記本発明のメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造することを特徴とする。
メタクロレインの反応率(%)=(B/A)×100、
メタクリル酸の選択率(%) =(C/B)×100、
メタクリル酸の収率(%) =(C/A)×100。
式中、Aは供給したメタクロレインのモル数、Bは反応したメタクロレインのモル数、Cは生成したメタクリル酸のモル数である。
純水400部に、三酸化モリブデン64.2部、五酸化バナジウム2.6部、85質量%リン酸水溶液6.7部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。25℃まで冷却後回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した重炭酸セシウム13.5部およびを滴下し25℃で15分間攪拌して、ヘテロポリ酸塩を析出させた。析出したヘテロポリ酸塩の構造は、ケギン型であった。その後、三酸化モリブデン35.8部を添加して50℃で15分間攪拌し、純水20部に溶解した硝酸アンモニウム11.6部を滴下してさらに15分間攪拌した。
この触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%および窒素55容量%の原料ガスを反応温度290℃、接触時間3.6秒で通じた。生成物を捕集し、ガスクロマトグラフィーで分析してメタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
純水400部に、三酸化モリブデン55.8部、五酸化バナジウム2.6部、85質量%リン酸水溶液6.7部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。50℃まで冷却後回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した重炭酸セシウム13.5部およびを滴下し25℃で15分間攪拌して、ヘテロポリ酸塩を析出させた。析出したヘテロポリ酸塩の構造は、ケギン型であった。その後、三酸化モリブデン44.2部を添加して50℃で15分間攪拌し、純水20部に溶解した硝酸アンモニウム11.6部を滴下してさらに15分間攪拌した。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
純水400部に、三酸化モリブデン83.3部、五酸化バナジウム2.6部、85質量%リン酸水溶液6.7部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。50℃まで冷却後回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した重炭酸セシウム13.5部を滴下し25℃で15分間攪拌して、ヘテロポリ酸塩を析出させた。析出したヘテロポリ酸塩の構造は、ケギン型であった。その後、三酸化モリブデン16.7部を添加して50℃で15分間攪拌し、純水20部に溶解した硝酸アンモニウム11.6部を滴下してさらに15分間攪拌した。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
純水400部に、三酸化モリブデン41.7部、五酸化バナジウム2.6部、85質量%リン酸水溶液6.7部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。50℃まで冷却後回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した重炭酸セシウム13.5部を滴下し25℃で15分間攪拌して、ヘテロポリ酸塩を析出させた。析出したヘテロポリ酸塩の構造は、ケギン型であった。その後、三酸化モリブデン58.3部を添加して50℃で15分間攪拌し、純水20部に溶解した硝酸アンモニウム11.6部を滴下してさらに15分間攪拌した。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
純水400部に、三酸化モリブデン100部、五酸化バナジウム2.6部、85質量%リン酸水溶液6.7部および硝酸銅1.5部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。50℃まで冷却後回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、純水20部に溶解した重炭酸セシウム13.5部を滴下し25℃で15分間攪拌して、ヘテロポリ酸塩を析出させた。析出したヘテロポリ酸塩の構造は、ケギン型であった。その後、純水20部に溶解した硝酸アンモニウム11.6部を滴下してさらに15分間攪拌した。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
重炭酸セシウムを滴下する際の冷却温度を50℃から25℃に変更した以外は、比較例1と同様にして混合液を得た。析出したヘテロポリ酸塩の構造は、ケギン型であった。
この触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル酸の製造を行い、メタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率およびメタクリル酸の収率を求めた。結果を表1に示す。
Claims (4)
- メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、モリブデン、リンおよびアルカリ金属を含む触媒の製造方法であって、
(i)水中に少なくともモリブデン原料の一部およびリン原料を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する工程と
(ii)前記水性スラリーまたは水溶液にアルカリ金属化合物を添加して、前記ヘテロポリ酸の少なくとも一部がアルカリ金属塩になったヘテロポリ酸塩を析出させる工程と、
(iii)前記ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーに、残りのモリブデン原料を添加する工程と、
(iv)全ての原料を含む水性スラリーまたは水溶液を乾燥して乾燥物を得る工程と、
(v)前記乾燥物を熱処理する工程と
を有し、
前記工程(v)で熱処理した触媒における水難溶性成分の質量割合をα質量%、前記触媒に含まれるヘテロ原子のうち水難溶性成分に含まれるヘテロ原子の割合をβ原子%としたとき、65≦α≦80および50≦β≦70を満たすことを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。 - 前記工程(i)で添加するモリブデン原料中のモリブデンと、前記工程(i)で添加するリン原料中のリンとの原子比が、6.5:1〜9:1であることを特徴とする請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
- 請求項1または2に記載の方法で製造されるメタクリル酸製造用触媒。
- 請求項3に記載のメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化するメタクリル酸の製造方法。
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