JP6662572B2 - エレベータのガイドレール支持構造 - Google Patents

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Description

本発明は、エレベータのガイドレール支持構造に関し、特に、昇降路壁に設置されるガイドレールの支持構造に関する。
エレベータにおいて、ガイドレールは、文字通り、主ロープによって釣合いおもりとつるべ式に連結されたかごを、昇降路内において、上下方向に案内する。また、ガイドレールは、万一、かごが規定速度を超えて下降した場合に作動する、かごに付設された非常止め装置に把持されて、当該かごから受ける荷重を受け止め、かごの降下を食い止める役割も果たす。
このようなガイドレールは、一般的に、昇降路壁に上下方向に間隔を空けて列設状態で固定された複数のブラケット各々に、当該ブラケット毎に設けられたレールクリップによって取り付けられて、当該昇降路に設置されている。レールクリップは、対応するブラケットとの間でガイドレールの一部を挟んだ状態で、当該ブラケットに固定されることで、ガイドレールをブラケットと把持する器具である。
また、通常、ガイドレールは、その下端を昇降路底部に突き当てた状態で、全てのレールクリップと対応するブラケット各々との間で強固に把持された状態で固定されている。これにより、非常止め装置が作動した場合に、ガイドレールは、ブラケットに対しずれることなく、下降するかごによる荷重を受け止めることができる。
ところで、近年出現した超高層建築物においては、建築物自体の自重や建築物内の家具その他の調度、人間などの重量による荷重が非常に大きいため、当該建築物全体が鉛直方向に徐々に圧縮される。以下、この建築物に働く荷重による当該建築物の経年圧縮を「ビルディングコンプレッション」と称する。ビルディングコンプレッションに伴い、このような建築物に設置されるエレベータの昇降路壁に固定された複数のブラケットが全体的に下方へ変位する(以下、この事象を「ブラケットの下方変位」と言う。)と共に、建築物はその下端に近いほど大きく圧縮されるため、ブラケット間の上下方向における間隔が徐々に縮小される(以下、この事象を「ブラケット間隔の縮小」と言う。)。
この場合に、上述したように、ガイドレールをブラケットとレールクリップとで強固に把持された状態で固定していると、当該ガイドレールは、ブラケット間、および各ブラケットと昇降路底部との間において圧縮荷重を受けることとなり、ガイドレールに曲がりや座屈が生じるといった事態が発生する。
このため、超高層建築物に設置されるエレベータにおいては、従来、ブラケットの下方変位に対処するため、ガイドレールは、ブラケットに、ガイドレールの下端と昇降路底部との間に隙間を空けた状態で取り付けられている。また、ブラケット間隔の縮小に対しては、ガイドレールに対し、ブラケットおよびレールクリップが相対的に滑る程度の把持力を発揮するレールクリップをブラケットに固定している。一方で、この把持力は、非常止め装置が作動し、下降するかごの荷重がガイドレールにかかったときには、ガイドレールがブラケットおよびレールクリップに対し相対的に滑らない程度の大きさに設定される。
しかしながら、ブラケットおよびレールクリップとガイドレールとが相対的に、ブラケット間隔の縮小に対しては滑り、非常止め装置が作動したときには滑らないといった程度に加減された把持力を発揮するようなレールクリップの設計は、非常に面倒なものである。
これに対し、特許文献1には、レールクリップの設計を容易ならしめ得るガイドレールの支持構造が開示されている。
特許文献1では、レールクリップを、非常止め装置が作動したときでも、ブラケットおよびレールクリップとガイドレールとが相対的に滑る程度の把持力のものとしている。また、ガイドレールの下端直下の昇降路底部には、非常止め装置が作動した場合に、下降するかごの荷重によって下方へ滑り落ちる(変位する)ガイドレールの下端を受け止める阻止子(9)(特許文献1の第3図、第4図)を設けた構成としている。阻止子(9)は、具体的には、昇降路底部に置かれた板状の台(3)にねじ込まれたボルト(特許文献1の第3図)や前記台(3)上に積載された複数枚の薄い板体(特許文献1の第4図)とされている。
特許文献1によれば、レールクリップは、上述した面倒な加減を要することなく、ガイドレールの自重を支持等できるだけの必要最小限の把持力とすることを考慮するだけで足りるので、レールクリップの設計が容易になる。
そして、特許文献1には、非常止め装置が作動して、ガイドレールの下端が阻止子(9)に突当った場合、その事後処理として(1)前記ボルトをねじ込んだり、(2)前記複数枚の薄い板体から一部を抜き取ったりすることで、ガイドレールの下端下方に再び隙間が空けられる旨、記載されている。また、前記ボルトのねじ込み代がなくなったときには、ガイドレールの下端部を溶断することによって、再び隙間を形成するとされている。
実開昭59−127080号公報 特開2013−112443号公報 特開2005−132597号公報
しかしながら、狭い昇降路内のしかも底部において、ガイドレールに押圧され、その下端に隠れたボルトをねじ込む作業は非常に煩わしい。また、ガイドレールの下端部を溶断したり、ガイドレールに押圧された薄板の積載体から一部を抜き取ったりするのは、非常に困難であり、現実的ではない。
なお、上記した課題は、昇降体であるかごを案内するガイドレールに関してだけでなく、他の昇降体である、非常止め装置が付設された釣合いおもりを案内するガイドレールに関しても共通する。
本発明は、上記した課題に鑑み、非常止め装置が作動した場合でもガイドレールが下方へ変位することが無く、かつ、クリップの設計が容易な、ガイドレールの支持構造を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る、エレベータのガイドレール支持構造は、建築物に開設された昇降路において、非常止め装置が付設された昇降体を上下方向に案内するガイドレールを昇降路壁に支持する、エレベータのガイドレール支持構造であって、前記昇降路壁に上下方向に間隔を空けて列設状態で固定された複数のレールブラケットと、前記複数のレールブラケット毎に設けられ、当該複数のレールブラケット各々との間で、ガイドレールの一部を挟んだ状態で固定されて、当該ガイドレールをレールブラケット各々とで把持する複数のスライドクリップと、前記ガイドレールの上下方向における一箇所のみを、前記昇降路壁に固定する固定手段と、を有し、前記複数のスライドクリップの各々は、前記建築物に働く荷重による当該建築物の経年圧縮に伴って前記複数のレールブラケット相互の間隔が縮小する際に、各レールブラケットと前記ガイドレールとの間の滑りを許容する程度の把持力で、当該ガイドレールを把持し、前記固定手段は、前記非常止め装置が作動して、前記昇降体の下降が停止される際に前記ガイドレールに掛かる荷重によって、当該ガイドレールが下方へ変位しないよう、前記ガイドレールを前記昇降路壁に固定することを特徴とする。
また、前記一箇所は、前記ガイドレールの上下方向における中程に位置することを特徴とする。
さらに、前記固定手段は、前記昇降路壁に固定された固定ブラケットと、前記ガイドレールの一部を前記固定ブラケットとの間で、てこの原理により把持するリジッドクリップと、を含むことを特徴とする。
あるいは、前記固定手段は、前記昇降路壁に固定された固定ブラケットと、前記固定ブラケットと前記ガイドレールとを締結するボルト・ナットと、を含むことを特徴とする。
上記の構成からなる本発明に係る、エレベータのガイドレール支持構造によれば、ガイドレールは、昇降路壁に上下方向に間隔を空けて列設状態で固定された前記複数のレールブラケット各々と当該複数のレールブラケット毎に設けられた前記スライドクリップとで把持されると共に、前記非常止め装置が作動して、前記昇降体の下降が停止される際に前記ガイドレールに掛かる荷重によって、当該ガイドレールが下方へ変位しないよう、前記固定手段により固定される。よって、前記非常止め装置が作動した場合でも前記ガイドレールが下方へ変位することが無い。
また、前記固定手段による前記ガイドレールの固定は、当該ガイドレールの上下方向における一箇所でなされ、これ以外の箇所は、前記複数のレールブラケットと当該複数のレールブラケット毎に設けられた前記スライドクリップとで把持される。よって、前記建築物に働く荷重による当該建築物の経年圧縮に伴って前記複数のレールブラケット相互の間隔が縮小しても、前記固定手段によって固定された前記ガイドレールの前記一箇所に対して、スライドクリップの各々が相対的に滑るため、当該固定手段とスライドクリップとの間、およびスライドクリップ間で生じる前記ガイドレールの湾曲や座屈を可能な限り回避することができる。
しかも、スライドクリップの設計に際しては、上記「各レールブラケットと前記ガイドレールとの間の滑りを許容する程度の把持力」を発揮できることを考慮すれば良く、非常止め装置が作動したときにガイドレールが下方へ滑らない把持力まで考慮する必要がないため、当該設計が容易になる。
実施形態1に係る支持構造によって支持されたかご用ガイドレールおよび釣合おもり用ガイドレールを有するエレベータの概略構成を示す図である。 (a)は、上記支持構造の一部の概略構成を示す図であり、(b)は、当該支持構造の基本概念を説明するための図である。 (a)は、図2(a)におけるE部拡大図であり、(b)は、(a)の左側面図である。 図2(a)におけるF部拡大図である。 (a)は、図4の左側面図であり、(b)は、(a)におけるA・A線断面図である。 図2(a)におけるG部拡大図である。 (a)は、図6の左側面図であり、(b)は、(a)におけるB・B線断面図である。 (a)は、実施形態2における固定手段を示す図であり、(b)は、(a)におけるC・C線断面図である。 (a)は、実施形態3における固定手段を示す図であり、(b)は、(a)におけるD・D線断面図である。
以下、本発明に係る、エレベータのガイドレール支持構造の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
〔エレベータ全体〕
図1に示すように、エレベータ10において、建築物に開設された昇降路12最上部よりも上の建築物部分に機械室14が設けられており、機械室14には、巻上機16が設置されている。
巻上機16を構成する主シーブ18には、主ロープ20が巻き掛けられており、主ロープ20の一端部には一方の昇降体であるかご22が、他端部には他方の昇降体である釣合おもり24がそれぞれ連結されている。
昇降路12には、かご22を上下方向に案内する一対のかご用ガイドレール26と、釣合おもり24を上下方向に案内する一対の釣合おもり用ガイドレール28とが、それぞれ上下方向に敷設されている。なお、図には、一対のかご用ガイドレール26の一方と一対の釣合おもり用ガイドレール28の一方のみが現れている。
かご22の上下端部には、一対のかご用ガイドレール26に対応させてガイドローラユニット30,32がそれぞれ一対、取り付けられており、これらのガイドローラユニット30,32によって、かご22が上下方向に案内される。同じく、釣合おもり24の上下端部には、一対の釣合おもり用ガイドレール28に対応させて、ガイドローラユニット34,36がそれぞれ一対、取り付けられており、これらのガイドローラユニット34,36によって、釣合おもり24が上下方向に案内される。
また、かご22には、その下部に、一対のかご用ガイドレール26に対応させて、非常止め装置40が一対、付設されており、釣合おもり24には、その下部に、一対の釣合おもり用ガイドレール28に対応させて、非常止め装置42が一対、付設されている。非常止め装置40,42は、例えば、かご用ガイドレール26、釣合おもり用ガイドレール28の一部を一対のくさび部材(不図示)で強固に挟持することによって、降下するかご22または釣合おもり24を制動する公知の装置である。
主ロープ20と平行してガバナロープ44が、かご用調速機46のガバナシーブ48とテンションシーブ50とで張架されている。ガバナロープ44の中間部には、かご22に付設された非常止め装置40を作動させるための非常止めレバー52が固定されている。かご用調速機46は、また、ガバナシーブ48とテンションシーブ50との間で走行するガバナロープ44の一部を把持して、その走行を停止させる把持機構54を有する。
釣合おもり24側にも、これらと同様の装置が設けられている。すなわち、主ロープ20と平行して、釣合おもり用調速機56のガバナシーブ58とテンションシーブ60との間にガバナロープ62が張架されており、ガバナロープ62の中間部には、釣合おもり24に付設された非常止め装置42を作動させるための非常止めレバー64が固定されている。また、釣合おもり用調速機56は、ガバナシーブ58とテンションシーブ60との間で走行するガバナロープ62の一部を把持して、その走行を停止させる把持機構66を有する。
上記の構成を有するエレベータ10において、不図示の電動機からの回転動力が不図示の動力伝達機構を介して、主シーブ18に伝達され、主シーブ18が回転駆動されると、主ロープ20に連結されているかご22と釣合おもり24が、かご用ガイドレール26、釣合おもり用ガイドレール28にそれぞれ案内されて、昇降路12内を昇降する。これに伴い、非常止めレバー52,64がそれぞれ固定されているガバナロープ44,62の各々が走行し、ガバナシーブ48はかご22の昇降速度と同じ速度(周速)で、ガバナシーブ58は釣合おもり24の昇降速度と同じ速度(周速)で回転される。
かご用調速機46は、かご22の昇降速度と同期するガバナシーブ48の回転速度を検知し、かご22が定格速度を超えて降下すると、降下速度が定格速度の1.4倍を超えない内に、把持機構54によりガバナロープ44を把持し、ガバナロープ44の走行を停止させる。かご22が降下し続けているにもかかわらず、ガバナロープ44の走行が停止されると、ガバナロープ44に固定された非常止めレバー52が、かご22に対して相対的に引き上げられる。非常止めレバー52と非常止め装置40との間には、非常止めレバー52の引き上げ動作に連動する公知の機構(不図示)が設けられており、非常止めレバー52が引き上げられると、前記機構を介して、非常止め装置40が作動される。釣合おもり24に付設された非常止め装置42が作動される仕組みも、かご22に付設された非常止め装置40が作動される場合について上記した仕組みと同様なので、その説明については省略する。
続いて、上述したように、非常止め装置40が付設されたかご22を上下方向に案内すると共に、非常止め装置40が作動した場合に、一次的にかご22からの荷重を受け止めるかご用ガイドレール26、および、非常止め装置42が付設された釣合おもり24を上下方向に案内すると共に、非常止め装置42が作動した場合に、一次的に釣合おもり24からの荷重を受け止める釣合おもり用ガイドレール28の構成と昇降路12における支持構造について、図2〜図7を適宜参照しながら説明する。なお、かご用ガイドレール26と釣合おもり用ガイドレール28は、その構成および昇降路12における支持構造は、基本的に同じであるため、かご用ガイドレール26を代表に説明し、釣合おもり用ガイドレール28の説明については、省略することとする。
かご用ガイドレール26(以下、単に「ガイドレール26」と言う。)は、断面が「T」字形をした形鋼材が複数本、連結されてなるものである。図2(a)に示すように、隣接する形鋼材68、70同士は、目板72を介して連結されている。
図3(b)に示すように、形鋼材70の上端部には凸部70Aが形成されており、形鋼材68の下端部には凹部68Aが形成されていて、凹部68Aに凸部70Aを嵌め込んで突合せ、目板72をあてがった状態で、形鋼材68,70と目板72とを、複数組(本例では、8組)のボルト・ナット80で締結することによって、形鋼材68と形鋼材70とが連結されている(図3(a)、図3(b))。例えば、全長50mのガイドレール26の場合、長さ5mの形鋼材が10本、隣接する形鋼材同士が上記したように連結されて構成される。
図2(a)に戻り、上記のように構成されたガイドレール26は、昇降路壁82に支持されている。ガイドレール26は、昇降路壁82に固定された複数のレールブラケット84と一の固定ブラケット106に、それぞれスライドクリップ92(図4、図5)とリジッドクリップ108(図6、図7)といった2種のレールクリップによって取り付けられている。
〔レールブラケットの昇降路壁への固定態様〕
先ず、レールブラケット84の昇降路壁82への固定態様およびレールブラケット84へのスライドクリップ92によるガイドレール26の取付態様について説明する。
H形鋼からなり、建築物を構成する梁B4,B5,B6の一部が、昇降路壁面から昇降路12内に露出している。梁B4,B5,B6は、図2(a)において、昇降路壁82B面と平行に施工されており、紙面に垂直な方向、奥側の昇降路壁82A面と手前側の昇降路壁面(図には現れていない)間で露出している。
梁B4,B6の各々にレールブラケット84が固定されているのであるが、その固定態様は、いずれも同じなので、梁B6に対する固定態様について図4を参照しながら説明する。
図4に示すように、レールブラケット84は、梁B6に、等辺アングル材88とチャンネル鋼材90を介して固定されている。したがって、昇降路壁82に対し、レールブラケット84は、梁B6、等辺アングル材88、およびチャンネル鋼材90を介して固定されていることとなる。
梁B6と等辺アングル材88、等辺アングル材88とチャンネル鋼材90、およびチャンネル鋼材90とレールブラケット84は、それぞれ隅肉溶接によって接合されている。なお、溶接によるビードの図示は省略している。
レールブラケット84は、不等辺アングル材からなる。当該不等辺アングル材の長辺部分がチャンネル鋼材90と溶接されている(溶接によるビードの図示は省略している。)。ガイドレール26は、その一部が、前記不等辺アングル材の短辺部分と一対のスライドクリップ92とで把持されている。
〔スライドクリップ〕
図5に示すように、スライドクリップ92の各々は、クランク状に屈曲した短冊状の金属片からなる。スライドクリップ92は、例えば、ばね鋼で形成されている。スライドクリップ92は、一組のボルト94とナット96によってレールブラケット84に固定される被固定部92Aとガイドレール26の一部を押圧する押圧部92Bとを有する。
スライドクリップ92は、被固定部92Aがレールブラケット84にボルト94とナット96によって強固に固定された状態で、押圧部92Bが弾性的に撓み、その復元力でガイドレール26の一部を押圧する。これにより、ガイドレール26の一部が、レールブラケット84とスライドクリップ92で把持される。この把持によって、レールブラケット84およびスライドクリップ92とガイドレール26との間に生じる摩擦力により、ガイドレール26が保持される。レールブラケット84とスライドクリップ92とによる把持力は、主として、スライドクリップ92の剛性の程度と被固定部92Aがレールブラケット84に固定されたときの押圧部92Bの撓み量とで決まるが、当該把持力は、弾性力学によって求められ、また、実験により確認し得るものである。前記摩擦力はこの把持力に比例するが、当該摩擦力は力学的に求められ、実験により確認し得る。
〔スライドクリップの把持力〕
レールブラケット84とスライドクリップ92とによる把持力の大きさの程度について、図2(b)を参照しながら説明する。図2(b)は、ガイドレール26が、その全長に亘って、昇降路壁82に支持されている様子を模式的に表した図である。ガイドレール26は、複数の(本例では、9本の)梁B1〜B9を介して、昇降路壁82に支持されている。9本の梁B1〜B9は、上下方向に階高に等しい間隔を空けて設けられている。なお、言うまでもなく、ガイドレールを支持する梁の本数は、建築物の高さによって増減する。
本例において、この9本の梁B1〜B9の内、最下位から上側に4本目までの梁B1〜B4および最上位から下側に4本目までの梁B6〜B9に対しては(すなわち、真中の梁B5以外に対しては)、レールブラケット84が設けられている。すなわち、複数のレールブラケット84が、昇降路壁82に上下方向に間隔を空けて列設状態で固定されている。そして、レールブラケット84毎に設けたスライドクリップ92(図5)でガイドレール26の一部を把持して、ガイドレール26を支持している。なお、図2(b)において、スライドクリップ92、および、これとレールブラケット84とを締結するボルト94、ナット96の図示は省略しているが、その代わりに、スライドクリップ92を用いた箇所は、「○」で示している。真中の梁B5に対するガイドレール26の支持の態様については後述する。また、梁B1〜B4、B6〜B9毎に、対応するレールブラケット84を区別する場合は、図2(b)に記すように、符号「84」に「B1」〜「B4」、「B5」〜「B9」の符号を添えることとする。例えば、梁B6に固定されているレールブラケット84は、レールブラケット84(B6)とする。
8個のレールブラケット84(B1)〜84(B4),84(B6)〜84(B9)毎に設けられた一対のスライドクリップ92の把持力は、八対のスライドクリップ92全体で、少なくともガイドレール26の自重を支持できる程度の把持力に設定される。また、スライドクリップ92各々は、「ブラケット間隔の縮小」に対して、各レールブラケット84(B1)〜84(B4),84(B6)〜84(B9)とガイドレール26との間の滑りを許容する程度の大きさに設定される。換言すれば、スライドクリップ92各々は、全体で(八対のスライドクリップ92で)ガイドレール26の自重を支持するための必要最小限の把持力に設定することができる。
このため、把持力を設定するに際し、非常止め装置40(図1)が作動した際にガイドレール26に掛かる荷重を支持するに足りる把持力を考慮する必要がないため、スライドクリップ92の設計が容易になる。
〔リジッドクリップ等によるガイドレールの昇降路壁への固定〕
上述したスライドクリップ92のみの支持では、非常止め装置40(図1)が作動し、降下するかご22の荷重がガイドレール26に掛かった場合、ガイドレール26は、下方へ変位して、その下端が昇降路12の底部12Aに突当ってしまうおそれがある。
そこで、実施形態1では、ガイドレール26の上下方向における中程(本例では真中)の一箇所を、固定手段100によって、昇降路壁82に固定している。
本例では、梁B5が固定手段100の一部を構成している。固定手段100について、図6および図7を参照しながら説明する。
図6に示すように、梁B5に等辺アングル材102が接合されており、等辺アングル材102にはチャンネル鋼材104が接合されている。チャンネル鋼材104には、固定ブラケット106が接合されている。固定ブラケット106は、本例では、等辺アングル材からなる。これらの接合は、例えば、溶接によってなされている。なお、溶接によるビードの図示は省略している。
以上のように、固定ブラケット106は、梁B5、等辺アングル材102、およびチャンネル鋼材104を介して、昇降路壁82に固定されている。
昇降路壁82に固定された固定ブラケット106とリジッドクリップ108とで、ガイドレール26は、その一部が把持されている。
図7(a)に示すように、リジッドクリップ108は、ガイドレール26を挟んで対向する一対が上下に二対設けられている。リジッドクリップ108は、鉄鋼材料からなる鍛造品または鋳造品である。
リジッドクリップ108の各々と固定ブラケット106とは、図7(b)に示すように、ボルト110とナット112によって締結されている。リジッドクリップ108の各々には、ボルト110が挿通される挿通孔(不図示)が開設されており、固定ブラケット106には、リジッドクリップ108各々の取付位置に対応させて、同じくボルト110が挿通される挿通孔(不図示)が開設されている。
そして、ボルト110をリジッドクリップ108側から前記両挿通孔に挿通させた後、ボルト110にナット112を螺合させて、締め付けることにより、ガイドレール26の一部が、リジッドクリップ108によって、固定ブラケット106との間で把持される。この場合、リジッドクリップ108は、図7(b)に示すように、固定ブラケット106との接触部位が支点108A、ボルト110頭部によって押圧される座面が力点108B(図7(a))、力点108Bを挟んで支点108Aと反対側の先端部がガイドレール26を固定ブラケット106に向けて押圧する作用点108Cをなす第3種てことして機能する。すなわち、リジッドクリップ108は、ガイドレール26の一部を固定ブラケット106との間で、てこの原理により把持する。
リジッドクリップ108各々の把持力は、以下のように設定される。すなわち、非常止め装置40(図1)が作動して、かご22の下降が停止される際には、上述したように、ガイドレール26には、かご22からの荷重が掛かるが、当該荷重が掛かったときに、少なくとも、ガイドレール26がリジッドクリップ108と固定ブラケット106とに対して下方へ滑らない程度の把持力に設定される。当該把持力は、力学的に求められ、実験により確認できる。
このように、リジッドクリップ108の把持力は、かご22からの荷重に対して、ガイドレール26が滑らないことを考慮すれば足り、ビルディングコンプレッションに対しては滑るようにすることを考慮する必要が無いため、その設計は容易なものとなる。
梁B5から固定ブラケット106までの部材(梁B5、等辺アングル材102、チャンネル鋼材104、固定ブラケット106)は、かご22からの上記した荷重に耐え得る強度に設計される。
上記のようにして、建築物の梁B1〜B9等を介して昇降路壁82に支持されたガイドレール26の下端は、図2(b)に示すように、当該下端下方に存する障害物(図示例の場合は、昇降路12の底部12A)と所定の間隔Sだけ離間されている。この間隔Sは、少なくとも、梁B5を含む固定手段100の、ビルディングコンプレッションに伴う、下方への変位量を見込んだ大きさである。なお、ガイドレール26の下端下方の昇降路12の底部12Aに何らかの物が置かれている場合は、その物が前記障害物であり、前記間隔Sは、当該障害物との上下方向における間隔である。
なお、図2(b)において、リジッドクリップ108、および、これと固定ブラケット106とを締結するボルト110、ナット112の図示は省略しているが、その代わりに、リジッドクリップ108を用いた箇所は、「◎」で示している。
〔ガイドレールの支持構造における挙動〕
(a)上記のようにしてガイドレール26を昇降路壁82に支持する支持構造では、ビルディングコンプレッションに伴い、梁B1〜B9は徐々に下方へ変位する。これにより、梁B1〜B9を介して支持されているガイドレール26も下方へ変位する。
この場合に、仮に、ガイドレール26の下端を昇降路12の底部12Aに突き当てた状態としていると、ビルディングコンプレッションが進行することによって、ガイドレール26が圧縮されて、湾曲したり座屈を起こしたりするおそれがある。
これに対し、本実施形態では、ガイドレール26の下端と昇降路12の底部12Aとの間には、十分な間隔Sが空けられているため、ガイドレール26の下端が底部12Aに突当ることがないので、ビルディングコンプレッションが進行することによって、ガイドレール26が圧縮されて、湾曲したり座屈を起こしたりするといった事態を招来することがない。
(b)また、ビルディングコンプレッションに伴う、梁B1〜B9の下方への変位量は、下位の梁ほど大きいため、梁相互間の間隔が徐々に狭くなる。よって、仮に、全ての梁B1〜B9に対して、ガイドレール26を強固に固定した場合には、ガイドレール26は、梁相互の間で圧縮荷重を受けて、湾曲したり座屈を起こしたりするおそれがある。
しかし、本実施形態では、ガイドレール26は、真中の梁B5に対しては強固に固定しているものの、残余の梁B1〜B4、B6〜B9に対してはスライドクリップ92を介して固定している。このため、梁B5に対するこれ以外の梁B1〜B4、B6〜B9の間隔が変動したとしても、ガイドレール26に対して梁B1〜B4、B6〜B9に対応するスライドクリップ92が相対的に滑るので、梁相互間で受ける圧縮荷重を大幅に低減することができる。これにより、上記のような湾曲や座屈を可能な限り回避することができる。
(c)さらに、非常止め装置40(図1)が作動して、上述したように、かご22からの荷重がガイドレール26に掛かった場合でも、ガイドレール26は、固定手段100によって昇降路壁82に固定されているため、下方へ変位することは無い。したがって、下端がその下方に存する障害物に突当るまでガイドレールが変位した後、当該下端下方に隙間を再創出するといった特許文献1に記載されたような煩雑な作業が生じることもない。
なお、上下方向において、固定手段100を設ける位置は、梁B5を含む位置に限らず、他の梁B1〜B4、B6〜B9の内のいずれか一つを含む位置でも構わない。例えば、両端の梁B1,B9のいずれかを固定手段としても構わない。ただ、例えば、梁B9を固定手段に選択した場合、梁B5を固定手段に選択した上記の例と比較して、ビルディングコンプレッションに伴って生じる、梁B1に対応するスライドクリップ92におけるガイドレール26の相対的な滑り量が多くなる。このため、当該スライドクリップ92に磨耗が生じやすくなる。
一方、上記の例のように、真中の梁B5を固定手段に選択した場合、梁B1に対応するスライドクリップ92におけるガイドレール26の相対的な滑り量(梁B9に対応するスライドクリップ92におけるガイドレール26の相対的な滑り量も同様)は、梁B9を固定手段に選択した場合よりも低減される。よって、固定手段による昇降路壁への固定位置は、ガイドレール26の長さ方向(上下方向)における中程が好ましい。
以上、説明したように、本実施形態に係るガイドレール26の昇降路壁82への支持構造によれば、(i)ビルディングコンプレッションに起因するガイドレール26の湾曲や座屈を可能な限り抑制することができる。
また、(ii)非常止め装置40が作動した場合でも、ガイドレール26が下方へ変位することがない。
さらに、スライドクリップ92の設計に際し、ガイドレール26の自重を支持するに足りる必要最小限の把持力を発揮できることを考慮すれば良く、非常止め装置40が作動したときにガイドレール26が下方へ滑らない把持力まで考慮する必要がないため、当該設計が容易になる。また、リジッドクリップ108に関しても、ガイドレール26の自重はスライドクリップ92で支持されているとの前提の下、非常止め装置40が作動したときにガイドレール26に掛かるかご22からの荷重だけを考慮すれば足りるため、その把持力を発揮するための設計は容易である。
〔変形例〕
上記の実施形態では、先ず、ガイドレール26(の自重)は、スライドクリップ92の把持力で支持するとの前提の下で、非常止め装置40が作動した場合のかご22からの荷重は、リジッドクリップ108の把持力で支持することとしたが、これに限らず、例えば、以下のようにしても構わない。
先ず、リジッドクリップ108の把持力を、少なくとも、ガイドレール26の自重を支持すると共に、非常止め装置40が作動した場合のかご22からの荷重を支持し得るものとする。そして、この前提の下で、スライドクリップ92は、少なくとも、ガイドレール26の直立姿勢を維持できる程度の把持力とする。
この場合でも、リジッドクリップ108の把持力は、ガイドレール26の自重とかご22からの前記荷重を合計した負荷に耐え得ることを考慮すれば足り、これ以上の大きな荷重(ビルディングコンプレッションに起因する荷重)がガイドレール26に掛かったときに、ガイドレール26をリジッドクリップ108に対して滑らすといったことを考慮する必要がないため、その設計は容易である。
また、スライドクリップ92は、上記実施形態の場合よりも小さい把持力を満足できれば良いため、スライドクリップ92に許容される把持力の幅が広くなるので、その設計が一層容易になる。なお、この把持力がビルディングコンプレッションに伴って、梁B5に対するこれ以外の梁B1〜B4、B6〜B9の間隔が変動したときに、ガイドレール26に対して梁B1〜B4、B6〜B9に対応するスライドクリップ92が相対的に滑る程度のものであることは言うまでもない。
当該変形例に係るガイドレールの支持構造によれば、上記実施形態と同様、ビルディングコンプレッションに伴って梁B5に対するこれ以外の梁B1〜B4、B6〜B9の間隔が変動したとしても、ガイドレール26に対して梁B1〜B4、B6〜B9に対応するスライドクリップ92が相対的に滑り、リジッドクリップを含む固定手段によってガイドレール26が支持されているため、前記(i)(ii)の効果が得られる。
<実施形態2>
上記実施形態1およびその変形例では、ガイドレール26を固定ブラケット106に対しリジッドクリップ108で固定したが(図2(a)、図6、図7)、実施形態2では、図8に示すように、ボルト122とナット124によって固定している。実施形態2は、固定ブラケットに対するガイドレールの固定手段が異なる以外は、基本的に実施形態1と同様である。よって、共通する部分の説明は省略するか簡単に言及するに留め、以下異なる部分を中心に説明する。
実施形態2において固定手段120を構成する固定ブラケット126には、実施形態1と同じ等辺アングル材が用いられる。なお、固定ブラケット126が、梁B5に等辺アングル材102、チャンネル鋼材104を介して固定されているのは、図6に示した実施形態1と同様なので、その図示については省略する。
図8に示すように、ガイドレール26には、2箇所に、座ぐり128が施されたボルト挿通孔(不図示)が開設されており、当該二つのボルト挿通孔に対応させて、固定ブラケット126にもボルト挿通孔(不図示)が開設されている。
ガイドレール26と固定ブラケット126との対応するボルト挿通孔に挿通されたボルト122とこれに螺合したナット124によって、ガイドレール26と固定ブラケット126とが締結されている。
ボルト122には、非常止め装置40が作動し、かご22からの荷重がガイドレール26に掛かった場合でも、ガイドレール26が下方へ変位しない、すなわち、ボルト122が破断しない強度のものが選定される。
なお、図8に示した例では、1組のボルト122・ナット124を一対用いたが、二対以上を用いてガイドレール26と固定ブラケット126とを締結しても構わない。
<実施形態3>
実施形態2では、ボルト122・ナット124で固定ブラケット126にガイドレール26を固定したが、実施形態3では、溶接によって固定している。この固定手段が異なる以外、実施形態3は、実施形態1およびその変形例、並びに実施形態2と同様である。よって、共通する部分の説明は省略するか簡単に言及するに留め、以下異なる部分を中心に説明する。
実施形態3でも、固定手段130を構成する固定ブラケット132には、実施形態1と同じ等辺アングル材が用いられる。なお、固定ブラケット132が、梁B5に等辺アングル材102、チャンネル鋼材104を介して固定されているのは、図6に示した実施形態1と同様なので、その図示については省略する。
図9に、溶接ビード134,136を示すように、ガイドレール26は固定ブラケット132に溶接によって接合されて固定されている。
これにより、ガイドレール26の一部と固定ブラケット132とが一体となり、非常止め装置40が作動し、かご22からの荷重がガイドレール26に掛かった場合でも、ガイドレール26が下方へ変位しない。
以上、本発明に係るエレベータのガイドレール支持構造を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
(1)上記実施形態では、1個のレールブラケット84に付き、一対のスライドクリップ92でガイドレール26を把持したが、1個のレールブラケット84に設ける個数は、これに限らず、二対以上としても構わない。
(2)上記実施形態1では、固定ブラケット106に対し二対のリジッドクリップ108でガイドレール26の一部を把持したが、これに限らず、要求される把持力等に応じて、一対としても良いし、あるいは三対以上としても構わない。
(3)上記実施形態では、昇降路12に建築物の梁B1〜B9が露出しているため、梁B1〜B9を利用して、ガイドレール26を昇降路壁82に支持した。すなわち、等辺アングル材88(図4)、等辺アングル材102(図6)を梁B1〜B9に溶接によって固定したが、建築物によっては、昇降路に梁が露出していない場合もある。その場合は、例えば、等辺アングル材88(図4)、等辺アングル材102(図6)を昇降路壁82に、アンカーボルト(不図示)などを用いて固定しても構わない。
本発明に係る、エレベータのガイドレール支持構造は、例えば、高層ビルに設置されるエレベータの昇降路におけるガイドレールの支持構造として好適に利用可能である。
26 かご用ガイドレール
28 釣合おもり用ガイドレール
84 レールブラケット
92 スライドクリップ
100,120,130 固定手段

Claims (3)

  1. 建築物に開設された昇降路において、非常止め装置が付設された昇降体を上下方向に案内するガイドレールを昇降路壁に支持する、エレベータのガイドレール支持構造であって、
    前記ガイドレールの全長に亘り、前記昇降路壁に上下方向に間隔を空けて列設状態で固定された複数のレールブラケットと、
    前記複数のレールブラケット毎に設けられ、当該複数のレールブラケット各々との間で、ガイドレールの一部を挟んだ状態で固定されて、当該ガイドレールをレールブラケット各々とで把持する複数のスライドクリップと、
    前記ガイドレールの上下方向における一箇所のみを、前記昇降路壁に固定する固定手段と、
    を有し、
    前記複数のスライドクリップの各々は、前記建築物に働く荷重による当該建築物の経年圧縮に伴って前記複数のレールブラケット相互の間隔が縮小する際に、各レールブラケットと前記ガイドレールとの間の滑りを許容する程度の把持力で、当該ガイドレールを把持し、
    前記固定手段は、前記非常止め装置が作動して、前記昇降体の下降が停止される際に前記ガイドレールに掛かる荷重によって、当該ガイドレールが下方へ変位しないよう、前記ガイドレールを前記昇降路壁に固定し、
    前記一箇所は、前記ガイドレールの上下方向における中程に位置することを特徴とするエレベータのガイドレール支持構造。
  2. 前記固定手段は、
    前記昇降路壁に固定された固定ブラケットと、
    前記ガイドレールの一部を前記固定ブラケットとの間で、てこの原理により把持するリジッドクリップと、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載されたエレベータのガイドレール支持構造。
  3. 前記固定手段は、
    前記昇降路壁に固定された固定ブラケットと、
    前記固定ブラケットと前記ガイドレールとを締結するボルト・ナットと、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載されたエレベータのガイドレール支持構造。
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