JP6662399B2 - 疲労強度に優れた回し溶接継手および回し溶接方法 - Google Patents

疲労強度に優れた回し溶接継手および回し溶接方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼構造物を建造する際に広く採用される主板とガセットとの回し溶接の技術に関し、詳しくは優れた疲労特性が要求される鋼構造物(たとえば鋼橋、船舶等)に好適な回し溶接継手および回し溶接方法に関するものである。
一般に、鋼構造物では図7に示すように、ガセット2の周囲を主板1に溶接(いわゆる回し溶接)した回し溶接継手が多数存在する。回し溶接継手においては溶接ビード3がガセット2を取り囲んでおり、その溶接ビード3に欠陥(たとえば割れ等)が発生して、溶接止端部の形状が円滑に形成されなかった場合に、溶接止端部における応力集中が生じ易くなる。
そこで、溶接止端部から主板の表面に到る境界部の領域4(以下、境界領域という)に打撃痕を設けて、溶接止端部の形状を調整する技術が実用化されている。その打撃痕は、高硬度の端子(以下、打撃用端子という)で境界領域4を打撃(いわゆるピーニング)することによって形成される。
しかし、回し溶接した後でピーニングを施して打撃痕を設けると、外力による疲労亀裂の発生および伝播は抑制されるものの、溶接後の作業の手間が発生するという問題は十分に解消されていない。外力は、鋼構造物に外部から繰り返し作用する荷重であり、たとえば鋼構造物が鋼橋である場合は、自然の気象状況(たとえば風等)や車両の通行によって繰り返し生じる荷重であり、鋼構造物が船舶である場合は、風や波によって繰り返し生じる荷重である。
そして近年、鋼構造物の老朽化に伴って、疲労に起因する損傷に関する報告が増加している。そのような損傷を防止するためには、鋼構造物を定期的に検査して、損傷の進行状況を管理し、さらに、損傷の進行に応じて対策を講じる必要がある。とりわけ疲労に起因する損傷(たとえば疲労亀裂等)が鋼橋に発生した場合は、車両の通行を規制することによって鋼橋に作用する外力を軽減することは可能であるが、交通の渋滞や物流の遅延等を引き起こすので社会活動に多大な悪影響を及ぼす。そこで、鋼構造物の回し溶接継手における疲労特性を改善する技術が検討されている。
たとえば特許文献1には、ガセットが主板に当接する矩形の当接面(以下、矩形当接面という)の長辺を主板に隅肉溶接し、次いで室温まで冷却した後に、矩形当接面の角部から短辺を回し溶接することによって、継手疲労強度を安定して高める技術が開示されている。特許文献1の図1、2に開示されている通り、この技術は、矩形当接面の短辺に沿って形成される溶接ビード(以下、短辺ビードという)が、長辺に沿って形成される溶接ビード(以下、長辺ビードという)の上に被せられ、且つ、短辺ビードが長辺ビードを超えて主板上に延伸する。このように、まず長辺ビードを溶接し、その上に短辺ビードを被せて溶接すると、溶接止端部の形状は安定するが、溶接ビードが重なる部位に隙間(すなわち主板、長辺ビード、短辺ビードで囲まれた空間)が生じる。そして、その空間を形成する溶接ビードを起点とする疲労亀裂が容易に発生し、その疲労亀裂の伝播を防止するのは困難である。つまり特許文献1に開示された技術では、回し溶接継手の疲労強度の大幅な向上は期待できない。
特許文献2には溶接ビードの溶接止端部にピーニングを施すことが記載されており、特許文献2の他にも、様々な工夫を加えたピーニングが検討されている。しかし、いずれも溶接止端部の形状によっては、打撃痕を設けていない部位から疲労亀裂が発生する可能性があるという問題が残されている。
非特許文献1には、外力が溶接ビードに及ぼす影響を分散させるために、溶接ビードを延長して、継手疲労強度を改善する技術が開示されている。しかしながら外力の作用を分散させるだけでは、溶接止端部の形状に起因する疲労亀裂の発生を防止できない。しかも、疲労亀裂が発生した場合に、その疲労亀裂の伝播を防止する技術に関する記載はない。
特開平8-19860号公報 特開2004-130316号公報
Study on Fatigue Strength of Boxing Fillet Weldments : 2nd Report : Yasumitsu Tomita, Kiyoshi Hashimoto, Kuniteru Ichikawa, Hiroshi Yamamoto, Tetsuji Fukuoka The Fifth International Offshore and Polare Engineering Conference, Jun 1995, Netherlands
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、疲労強度を安価に且つ安定して向上することができる回し溶接継手および回し溶接方法を提供することを目的とする。
本発明者は、回し溶接継手の疲労強度を高めるために、疲労亀裂の発生および疲労亀裂の伝播を防止する技術について検討した。そして、短辺ビードを長辺ビードに被せることによって生じる隙間を防止し、かつ短辺ビードの溶接止端部にピーニングを施すことによって、ピーニングに要する手間を簡易にした上で疲労亀裂の発生および伝播防止効果をあげられることが分かった。
次に、回し溶接の施工コストの上昇を抑制するために通常の溶接装置、溶接材料を用いて、上記の隙間の発生を防止する技術について詳細に検討した。その結果、
(A)まず短辺ビードを溶接し、次いで長辺ビードを溶接することによって、短辺ビードの上に長辺ビードを被せる、
(B)その際、既に溶接されている短辺ビードを超えて長辺ビードが延伸するように溶接する
ことによって、上記の隙間の発生を防止することが可能となり、ひいては疲労亀裂の発生を防止できることを見出した。また、
(C)短辺ビードが長辺ビードを超えない長さになるように溶接しておく
ことによって、隙間の発生を防止する効果が顕著に現われることが認められた。
さらに、
(D)ピーニングを施して溶接止端部とその周辺に打撃痕を設ける
ことによって、疲労亀裂の発生を防止する効果が大幅に向上することが分かった。
そして、疲労亀裂が発生した場合には、疲労亀裂の起点が2本の延伸した長辺ビードの間に存在するので、疲労亀裂の伝播が2本の長辺ビードの間に制限され、ひいては疲労亀裂が広範囲に伝播するのを防止できることが判明した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。なお以下では、矩形当接面の短辺に沿って形成される溶接ビードを第1溶接ビードと記して、溶接ビードを形成する施工順が上記の短辺ビードとは異なることを明確にする。また、矩形当接面の長辺に沿って形成される溶接ビードを第2溶接ビードならびに第3溶接ビードと記して、溶接ビードを形成するための施工順が上記の長辺ビードとは異なることを明確にする。
すなわち本発明は、ガセットを主板に回し溶接して接合することによって得られる回し溶接継手であって、ガセットが主板に当接する矩形当接面の短辺に沿って形成され且つ矩形当接面の短辺の両側から主板上に延伸して形成される第1溶接ビードと、矩形当接面の長辺に沿って形成され且つ第1溶接ビードに被せて主板上へ延伸して形成される第2溶接ビードならびに第3溶接ビードと、を有し、主板上の第1溶接ビードを超えて延伸する第2溶接ビードと第3溶接ビードとの間隔Mが10.0mm以下であり、かつ第2溶接ビードと第3溶接ビードとの間に位置する第1溶接ビードの溶接止端部から主板の表面に到る境界領域に、間隔Mの50%以上の範囲にわたり打撃痕を有する回し溶接継手である。
本発明の回し溶接継手においては、打撃痕の最大深さが0.03mm以上0.50mm未満であることが好ましい。
また本発明は、ガセットを主板に回し溶接で接合する回し溶接方法において、ガセットが主板に当接する矩形当接面の短辺に沿って第1溶接ビードを、矩形当接面の短辺の両側から主板上に延伸して形成し、次いで、矩形当接面の長辺に沿って第2溶接ビードならびに第3溶接ビードを、第1溶接ビードに被せて且つ第1溶接ビードを超えて主板上へ延伸して形成し、主板上の第2溶接ビードと第3溶接ビードとの間隔Mを10.0mm以下とし、次いで第2溶接ビードと第3溶接ビードとの間に位置する第1溶接ビードの溶接止端部から主板の表面に到る境界領域に、間隔Mの50%以上の範囲にわたり打撃用端子を用いて打撃痕を設ける回し溶接方法である。
本発明の回し溶接方法においては、打撃痕を設けるにあたって、矩形当接面の短辺に平行な方向の長さTが1〜10mmであり、矩形当接面の短辺に垂直な断面における曲率半径Rが1〜10mmである打撃用端子を用いることが好ましく、その打撃用端子を空気圧または高周波電流で駆動することが好ましい。また、打撃痕の最大深さを0.03mm以上0.50mm未満とすることが好ましい。
本発明の回し溶接継手および回し溶接方法においては、主板の応力拡大係数範囲ΔKが15MPa・m1/2である場合に、主板の疲労亀裂伝播速度が1.75×10-8m/cycle以下であることが好ましい。
なお本発明は、鋼構造物を新たに建造する場合のみならず、老朽化した鋼構造物を補修する場合にも適用できる。
本発明によれば、鋼構造物を新たに建造する場合や老朽化した鋼構造物を補修する場合に、回し溶接継手の疲労強度を安価に且つ安定して向上することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
本発明に係る回し溶接継手の例を模式的に示す斜視図である。 図1に示す回し溶接継手を得るための溶接施工の手順を模式的に示す平面図である。 打撃用端子の例を模式的に示す斜視図である。 図2(d)を拡大して示す平面図である。 図2(d)の打撃痕が原因となって導入される圧縮残留応力の範囲を示す平面図である。 回し溶接継手の疲労強度を調査するための試験片の例を模式的に示す平面図である。 従来の回し溶接継手の例を模式的に示す斜視図である。
図1は、本発明に係る回し溶接継手の例を模式的に示す斜視図であり、図2は、その回し溶接継手を得るための溶接およびピーニングの手順を示す平面図である。なお図2において、ガセット2が主板1に当接する矩形当接面2aは、ガセット2を主板1に投影した矩形線の形状と一致する。以下では、図2(a)〜(d)の矩形線(すなわち主板1に投影されたガセット2)の形状を矩形当接面2aとして説明する。
本発明に係る回し溶接継手を得るにあたって、まず、図2(a)に示すように、矩形当接面2aの短辺に沿って第1溶接ビード3aを形成する。この時、第1溶接ビード3aが矩形当接面2aの短辺の両側から主板1上に延伸するように溶接を施工する。したがって第1溶接ビード3aの長さは、矩形当接面2aの短辺よりも長くなる。こうすることによって、後述する第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cを第1溶接ビード3aに被せることができる。
ただし、第1溶接ビード3aが長すぎて、第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cの下側から主板1上に延伸した場合は、主板1、第1溶接ビード3a、第2溶接ビード3bで囲まれた隙間、あるいは主板1、第1溶接ビード3a、第3溶接ビード3cで囲まれた隙間が生じ易く、疲労亀裂が発生し易くなる。
また、第1溶接ビード3aの長さが矩形当接面2aの短辺よりも短い場合は、第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cを第1溶接ビード3aに被せることができず、第1溶接ビード3aと第2溶接ビード3bの間、あるいは第1溶接ビード3aと第3溶接ビード3cの間に隙間が生じるので、疲労亀裂の発生を防止できない。
したがって、矩形当接面2aの短辺から主板1上に延伸した第1溶接ビード3aの部位全体に第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cを被せることができるように、第1溶接ビード3aの長さを調整して施工することが好ましい。
次いで、矩形当接面2aの長辺に沿って第2溶接ビード3bを形成する。こうすることによって、第2溶接ビード3bを第1溶接ビード3aに被せることができる。そして、第2溶接ビード3bを第1溶接ビード3aから更に主板1上に延伸して(すなわち第1溶接ビード3aを超えて)形成する。
次に、矩形当接面2aの長辺に沿って第3溶接ビード3cを形成する。こうすることによって、第3溶接ビード3cを第1溶接ビード3aに被せることができる。そして、第3溶接ビード3cを第1溶接ビード3aから更に主板1上に延伸して(すなわち第1溶接ビード3aを超えて)形成する。
こうして第1溶接ビード3aに第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cを被せることによって、各溶接ビード3a、3b、3cと主板1の間に隙間が生じるのを防止でき、その結果、溶接止端部の形状に関わらず疲労亀裂が発生するのを防止できる。
なお第2溶接ビード3b、第3溶接ビード3cについて、図2(b)(c)では、矩形当接面2aの左側の長辺に沿った溶接ビードを第2溶接ビード3bとし、右側の長辺に沿った溶接ビードを第3溶接ビード3cとしたが、左右を逆にしても問題はない。つまり、矩形当接面2aの右側の長辺に沿った溶接ビードを第2溶接ビード3bとし、左側の長辺に沿った溶接ビードを第3溶接ビード3cとしても、本発明を適用できる。
各溶接ビード3a、3b、3cを形成した後、さらに図2(d)に示すように、打撃用端子で境界領域4を打撃(すなわちピーニング)して打撃痕を設ける。その範囲は、第2溶接ビードと第3溶接ビードの間隔Mの50%以上の範囲である。50%以上の範囲を打撃することにより、打撃痕および周囲に圧縮残留応力が導入され、溶接止端からの疲労亀裂の発生および伝播が抑制される(図5(a)参照)。50%未満では、圧縮残留応力の導入範囲が小さく、溶接止端からの疲労亀裂の早期発生が避けられず、疲労特性の向上が十分でない(図5(b)参照)。
打撃用端子は、図3に示すように、4角柱の下端部を半円形の円弧状に湾曲した曲面に成形したものを使用し、その円弧状の局面で境界領域4を打撃することが好ましい。
図3に示す打撃用端子5を使用する場合は、打撃用端子5の厚さTの方向と矩形当接面2aの短辺とが平行になるように配置して境界領域4を打撃することが好ましい。打撃用端子5の厚さTが小さ過ぎると、打撃痕を起点として疲労亀裂が発生し易くなる。厚さTが大き過ぎると、打撃痕を設けるのが困難になる。したがって打撃用端子5の厚さTは、1〜10mmの範囲内が好ましい。
打撃用端子5の厚さTの方向と矩形当接面2aの短辺とを平行に配置すると、打撃用端子5の幅Wは矩形当接面2aの長辺と平行になる。その幅Wで規定される面(すなわち矩形当接面2aの短辺に垂直な面)の下端は曲率半径Rの半円形とすることが好ましい。曲率半径Rが小さ過ぎると、窪みの幅が狭くなり、打撃痕を起点として疲労亀裂が発生し易くなる。曲率半径Rが大き過ぎると、打撃痕を設けるのが困難になる。したがって曲率半径Rは、1〜10mmの範囲内が好ましい。
打撃用端子5を用いて境界領域4に打撃痕を設ける際には、打撃用端子5を移動させながら上下動させる必要があるので、空気圧または高周波電流で打撃用端子5を駆動することが好ましい。
打撃痕が深すぎると、打撃痕を起点として疲労亀裂が発生し易くなる。打撃痕が浅すぎると、疲労亀裂の発生を防止する効果の大幅な向上は期待できない。最も深い打撃痕の深さ(以下、最大深さという)は、0.03mm以上0.50mm未満の範囲が好ましい。
このような手順で各溶接ビード3a、3b、3cを形成し、さらに打撃痕を設けた例(図2(d)参照)を拡大して図4示す。主板1上に延伸した第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cとの間隔Mが大きすぎると、第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cの間の第1溶接ビード3aの溶接止端部に起点を持つ疲労亀裂が発生し易くなる。したがって、間隔Mは10.0mm以下とする。なお間隔Mは、第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cの間の最も短い距離を指す。
疲労亀裂の発生を防止する観点から、間隔Mは小さいほど好ましい。しかし間隔が存在しない(M=0)場合は、第2溶接ビード3b、第3溶接ビード3cの先端に起点を持つ疲労亀裂が発生し、その疲労亀裂が広範囲に伝播し易くなる。したがって間隔Mは、M>0を満たすことが好ましい。
さらに図4示すように、主板1上に延伸した第2溶接ビード3bの先端と矩形当接面2aの短辺との間隔、および、第3溶接ビード3cの先端と矩形当接面2aの短辺との間隔のうち、短い方を間隔Nとする。その間隔Nが小さ過ぎると、疲労亀裂が伝播し易くなる。一方で間隔Nが大き過ぎると、第2溶接ビード3b、第3溶接ビード3cの形成に長時間を要する。したがって、間隔Nは10〜50mmの範囲内とする
以上に示す方法で溶接継手を作製した後、図1の符号4に示す箇所に打撃痕を形成させる。
図5は、打撃痕4が原因となって圧縮残留応力が導入される範囲6(以下、圧縮残留応力導入範囲という)を示す平面図である。図5中の符号Qは、矩形当接面2aの短辺に平行な方向の打撃痕4の長さ(以下、打撃痕長さという)である。本発明においては、必ずしも図3に示すような打撃用端子5を使用する必要はないので、以下では打撃痕長さをQ(mm)と記す。
図5(a)に示すように、打撃痕長さQと間隔MがQ≧0.5Mを満たす場合は、隙間にも圧縮残留応力があり、疲労亀裂発生の抑制に寄与し、結果として溶接継手の疲労寿命を向上させる。なお、図4に示す打撃痕4は、Q=Mの例である。
一方、図5(b)に示すように、Q<0.5Mである場合は、圧縮残留応力導入範囲6が狭く、打撃されていない溶接止端から疲労亀裂がしやすい状態となる。ただし、Q<0.5Mである場合であっても、全く打撃痕のない状態に比べてある程度の疲労寿命向上は見込めることを付記しておく。
打撃痕の形成方法は、既に述べた半円柱形の先端ピンを空気圧で作動させて溶接止端を狙って打撃する手法を推奨する。ただし、前述の方法に限らず、先端ピンは球形、矩形状あるいはそれに準じた形状のものを用いても構わず、打撃箇所も溶接部の母材側を打撃しても良い。打撃装置についても、高周波電流、超音波など他の駆動力の装置も使用できる。
また、打撃痕4は1箇所(すなわち打撃1回)に限らず、複数個所にわたっても、累積の長さを打撃痕長さQとして、そのQがQ≧0.5Mを満たせば同様の効果が得られることを付記する。
以上に説明した本発明によって得られる回し溶接継手は、溶接止端部の形状に関わらず疲労亀裂の発生を防止できる。そして、疲労亀裂が発生した場合には、その疲労亀裂が広範囲に伝播するのを防止できる。しかも、従来の溶接装置、溶接材料を用いて得ることが可能であるから、施工コストの上昇を抑制できる。
回し溶接を行なう溶接手段は、被覆アーク溶接法、ガスメタルアーク溶接法が主であるが、それ以外の手段についても適宜用いることができ、手動溶接または自動溶接いずれを採用しても良い。
本発明は、鋼構造物を新たに建造する場合のみならず、老朽化した鋼構造物を補修する場合にも適用できる。
鋼種Aを用いて主板1(板厚:14mm、板幅:80mm、長さ:500mm)にガセット2(板厚:14mm、板幅:75mm、高さ:50mm)をガスメタルアーク溶接法で回し溶接し、さらに打撃痕を設けた回し溶接継手(継手番号1)、および、鋼種Bを用いて主板1(板厚:22mm、板幅:80mm、長さ:500mm)にガセット2(板厚:10mm、板幅:100mm、高さ:60mm)を、フラックス入りワイヤを用いてガスメタルアーク溶接法で回し溶接し、さらに打撃痕を設けた回し溶接継手(継手番号2)を用いて、疲労試験を行なった。次に、鋼種Cを用いて主板1(板厚:22mm、板幅:80mm、長さ:500mm)にガセット2(板厚:10mm、板幅:100mm、高さ:60mm)を、フラックス入りワイヤを用いてガスメタルアーク溶接法で回し溶接し、さらに打撃痕を設けた回し溶接継手(継手番号2)を用いて、疲労試験を行なった。その手順を説明する。フラックス入りワイヤは、いずれの溶接継手においても、神戸製鋼所製MZ−Z200(ワイヤ径1.2mm)を用い、溶接条件は240A−32Vとし、脚長は8mm程度を狙った。なお、ガセット2は主板1の中央に配置したので、図6に示すように、矩形当接面2aは主板1の中央に位置する。打撃用端子は、図3に示すような形状(厚さT:5mm、曲率半径R:4.5mm)のものを使用し、空気圧6kg/cm2で90Hzの周波数で往復運動させた。
主板1およびガセット2は表1に示す成分を有する3種類の鋼種(A、B、C)を使用し、表2に示すような組み合わせで疲労試験を行なった。なお表2における試験番号1〜10は、それぞれ同じ成分の主板1とガセット2を使用した。
Figure 0006662399
Figure 0006662399
表2から明らかなように、発明例はいずれも良好な疲労強度を有していた。
1 主板
2 ガセット
2a 矩形当接面
3 溶接ビード
3a 第1溶接ビード
3b 第2溶接ビード
3c 第3溶接ビード
4 境界領域(打撃痕)
5 打撃用端子
6 圧縮残留応力導入範囲

Claims (8)

  1. ガセットを主板に回し溶接して接合することによって得られる回し溶接継手であって、前記ガセットが前記主板に当接する矩形当接面の短辺に沿って形成され且つ前記矩形当接面の前記短辺の両側から前記主板上に延伸して形成される第1溶接ビードと、前記矩形当接面の長辺に沿って形成され且つ前記第1溶接ビードに被せて前記主板上へ延伸して形成される第2溶接ビードならびに第3溶接ビードと、を有し、前記主板上の前記第1溶接ビードを超えて延伸する前記第2溶接ビードと前記第3溶接ビードとの間隔Mが10.0mm以下、前記第2溶接ビードの先端と前記矩形当接面の短辺との間隔および前記第3溶接ビードの先端と前記矩形当接面の短辺との間隔のうちの短い方の間隔Nが10〜50mmであり、かつ前記第2溶接ビードと前記第3溶接ビードとの間に位置する前記第1溶接ビードの溶接止端部から前記主板の表面に到る境界領域に、前記間隔Mの50%以上の範囲にわたり打撃痕を有することを特徴とする回し溶接継手。
  2. 前記打撃痕の最大深さが0.03mm以上0.50mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の回し溶接継手。
  3. 前記主板の応力拡大係数範囲ΔKが15MPa・m1/2である場合に、前記主板の疲労亀裂伝播速度が1.75×10-8m/cycle以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の回し溶接継手。
  4. ガセットを主板に回し溶接で接合する回し溶接方法において、前記ガセットが前記主板に当接する矩形当接面の短辺に沿って第1溶接ビードを、前記矩形当接面の前記短辺の両側から前記主板上に延伸して形成し、次いで、前記矩形当接面の長辺に沿って第2溶接ビードならびに第3溶接ビードを、前記第1溶接ビードに被せて且つ前記第1溶接ビードを超えて前記主板上へ延伸して形成し、前記主板上の前記第2溶接ビードと前記第3溶接ビードとの間隔Mを10.0mm以下、前記第2溶接ビードの先端と前記矩形当接面の短辺との間隔および前記第3溶接ビードの先端と前記矩形当接面の短辺との間隔のうちの短い方の間隔Nを10〜50mmとし、次いで前記第2溶接ビードと前記第3溶接ビードとの間に位置する前記第1溶接ビードの溶接止端部から前記主板の表面に到る境界領域に、前記間隔Mの50%以上の範囲にわたり打撃用端子を用いて打撃痕を設けることを特徴とする回し溶接方法。
  5. 前記打撃痕を設けるにあたって、前記矩形当接面の前記短辺に平行な方向の長さTが1〜10mmであり、前記矩形当接面の前記短辺に垂直な断面における曲率半径Rが1〜10mmである打撃用端子を用いることを特徴とする請求項4に記載の回し溶接方法。
  6. 前記打撃用端子を空気圧または高周波電流で駆動することを特徴とする請求項4または5に記載の回し溶接方法。
  7. 前記打撃痕の最大深さを0.03mm以上0.50mm未満とすることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の回し溶接方法。
  8. 前記主板の応力拡大係数範囲ΔKが15MPa・m1/2である場合に、前記主板の疲労亀裂伝播速度がともに1.75×10-8m/cycle以下であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の回し溶接方法。
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