JP6919640B2 - 疲労強度に優れた回し溶接継手およびその製造方法 - Google Patents

疲労強度に優れた回し溶接継手およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼構造物を建造する際に広く採用される主板とガセットとの回し溶接の技術に関し、詳しくは優れた疲労特性が要求される鋼構造物(たとえば鋼橋、船舶等)に好適な回し溶接継手およびその製造方法に関するものである。
一般に、鋼構造物では図4に示すように、ガセット2の周囲を主板1に溶接(いわゆる回し溶接)した回し溶接継手が多数存在する。回し溶接継手においては溶接ビード3がガセット2を取り囲んでおり、その溶接ビード3に欠陥(たとえば割れ等)が発生して、溶接止端部の形状が円滑に形成されなかった場合に、溶接止端部における応力集中が生じ易くなる。その結果、回し溶接に起因する溶接残留応力と外力に起因する繰り返し応力とが重畳して疲労亀裂を発生させ、さらに、その疲労亀裂が伝播して疲労破壊を引き起こす原因となる。なお外力は、鋼構造物に外部から繰り返し作用する荷重であり、たとえば鋼構造物が鋼橋である場合は、自然の気象状況(たとえば風等)や車両の通行によって繰り返し生じる荷重であり、鋼構造物が船舶である場合は、風や波によって繰り返し生じる荷重である。
そして近年、鋼構造物の老朽化に伴って、疲労に起因する損傷に関する報告が増加している。そのような損傷を防止するためには、鋼構造物を定期的に検査して、損傷の進行状況を管理し、さらに、損傷の進行に応じて対策を講じる必要がある。とりわけ疲労に起因する損傷が鋼橋に発生した場合は、車両の通行を規制することによって鋼橋に作用する外力を軽減することは可能であるが、交通の渋滞や物流の遅延等を引き起こすので社会活動に多大な悪影響を及ぼす。そこで、鋼構造物の回し溶接継手における疲労特性を改善する技術が検討されている。
たとえば特許文献1には、疲労亀裂が発生した後の進展を防ぐためのペーストによって、疲労特性を向上する技術が開示されている。しかしこの技術は、特に溶接部への固定方法について記載されておらず、鋼構造物の全ての回し溶接継手に適用するのは困難である。
また、特許文献2には、溶接ビードのマルテンサイト変態開始温度が350℃以下である溶接材料を用いてガセットの長手方向両端部から各々伸長ビードを主板の上面に形成することによって、回し溶接継手の疲労強度を高める技術が開示されている。この技術は、高価な溶接材料を選択せざるを得ないので、回し溶接の施工コストの上昇、ひいては鋼構造物の建造コストの上昇を招く。また、溶接止端部の形状によっては疲労亀裂が発生する起点となる可能性があるので、溶接止端部の仕上げ状態に応じて疲労強度が変動する惧れがある。
特許文献3には、船体の溶接桁構造について側縁部の両側でやや延長させた一対の肋材付き延長ビードが記載されている。しかしながら、特許文献3には溶接順序、疲労強度向上の効果のある間隔と、それに対する効果が開示されていない。
特許文献4には、角回し溶接部の前まで隅肉溶接を行ない、室温まで冷却した後、角回し溶接部を(リブ板厚+2×隅肉溶接脚長)よりも(2×隅肉溶接脚長)以上長くなるように溶接する方法が記載されている。この方法では、応力集中と引張残留応力が小さくなるものの、溶接止端部の範囲が従来の溶接継手より大きく(長く)なるため、発生・成長した疲労亀裂同士が早い段階で合体する危険性が高い。
特許文献5、特許文献6には、ガセットの長手方向両端部から各々伸長ビードを主板の上面に形成することにより、疲労寿命を向上させる技術が記載されている。この技術では、溶接の回し部をカバーする形で伸長ビードを形成する必要があるため、時間を要するだけでなく、溶接作業員の負担も大きい。
特許文献7には、接着剤を塗布した後に樹脂ブロックを接着させて補強する技術が開示されている。この技術は、鋼構造物の全ての回し溶接継手の形状や寸法に応じて、それぞれに適合する樹脂ブロックを作成しなければならないので、回し溶接の施工管理の負荷が増大する。
非特許文献1には、外力が溶接ビードに及ぼす影響を分散させるために、溶接ビードを延長して、継手疲労強度を改善する技術が開示されている。しかしながら外力の作用を分散させるだけでは、溶接止端部の形状に起因する疲労亀裂の発生を防止できない。しかも、疲労亀裂が発生した場合に、その疲労亀裂の伝播を防止する技術に関する記載はない。
特許第5753528号公報 特開2013-99764号公報 特開平8-155634号公報 特開平8-19860号公報 特開2014-233747号公報 特開2012-110950号公報 特許第4694423号公報
Study on Fatigue Strength of Boxing Fillet Weldments : 2nd Report : Yasumitsu Tomita, Kiyoshi Hashimoto, Kuniteru Ichikawa, Hiroshi Yamamoto, Tetsuji Fukuoka The Fifth International Offshore and Polare Engineering Conference, Jun 1995, Netherlands
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、疲労強度を安価に且つ安定して向上することができる回し溶接継手、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、回し溶接継手の疲労強度を高めるために、疲労亀裂の発生を防止する技術および疲労亀裂の長さと深さの増大(以下、伝播という)を防止する技術について検討するにあたって、溶接ビードの止端部が疲労亀裂の発生起点となり易いことから、図4に示すような回し溶接継手の溶接ビード3の止端部、とりわけ主板1上の溶接ビード3の止端部に着目して、回し溶接継手の疲労強度を高めるための研究を行なった。そして、主板1上の溶接ビード3の止端部に所定の要件を満たす樹脂系コーティング剤を塗布することによって、疲労亀裂の発生ならびに伝播を防止できることを見出した。
本発明で使用する樹脂系コーティング剤は、溶接ビード3の止端部に塗布する時は粘性を有する流動体であり、塗布した後、大気に曝された状態で時間が経過すると乾燥固化するものである。乾燥固化した後の硬さがビッカース硬さで200Hv以上であれば、その樹脂系コーティング剤が止端部の応力集中を緩和することが可能となり、その結果、疲労亀裂の発生ならびに伝播の防止に寄与することが判明した。
以上のように本発明者の研究によって、回し溶接継手の疲労強度を向上するための基本的な技術が確立された。
しかし、図4に示すような回し溶接継手を対象とする本発明者の研究にて新たな検討事項が発生した。つまり、上記技術では、ガセットが主板に当接する矩形の当接面(以下、矩形当接面という)の周囲に形成される溶接ビードの止端部の全長に樹脂系コーティング剤を塗布しなければならない。したがって、1個の回し溶接継手を形成するために長時間を要するので、工事(たとえば新たな鋼構造物の建造、既存の鋼構造物のメンテナンス等)の所要期間の延長、ひいては工費の増大を招く。
このような新たに発生した検討事項に対して、本発明者は、図1に示すような回し溶接継手の疲労強度を高める技術について、さらに研究を重ねた。そして、矩形当接面の短辺に沿って形成される溶接ビード(以下、短辺ビードという)を、長辺に沿って形成される溶接ビード(以下、長辺ビードという)に被せることによって生じる隙間を防止すれば、疲労亀裂の発生を防止できることが分かった。
次に、回し溶接の施工コストの上昇を抑制するために通常の溶接装置、溶接材料を用いて、上記の隙間の発生を防止する技術について詳細に検討した。その結果、
(A)まず短辺ビードを溶接し、次いで長辺ビードを溶接することによって、短辺ビードの上に長辺ビードを被せる、
(B)その際、既に溶接されている短辺ビードを超えて長辺ビードが延伸するように溶接する
ことによって、上記の隙間の発生を防止することが可能となり、ひいては溶接止端部の形状に関わらず疲労亀裂の発生を防止できることを見出した。さらに、
(C)短辺ビードが長辺ビードを超えない長さになるように溶接しておく
ことによって、隙間の発生を防止する効果が顕著に現われることが認められた。
しかも、疲労亀裂が発生した場合には、疲労亀裂の起点が2本の延伸した長辺ビードの間に存在するので、主板側に発生する疲労亀裂の伝播が2本の長辺ビードの間に制限され、ひいては疲労亀裂が広範囲に伝播するのを防止できることが判明した。
したがって、図1に示すような回し溶接継手では、第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cとの間に位置する第1溶接ビード3aの主板1上の止端部に樹脂系コーティング剤を塗布することによって、疲労亀裂の発生ならびに伝播の防止できることを見出した。この技術によれば、樹脂系コーティング剤を塗布する部位が大幅に短縮されるので、工費の増大を抑制できる。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。なお以下では、矩形当接面の短辺に沿って形成される溶接ビードを第1溶接ビードと記して、溶接ビードを形成する施工順が上記の短辺ビードとは異なることを明確にする。また、矩形当接面の長辺に沿って形成される溶接ビードを第2溶接ビードならびに第3溶接ビードと記して、溶接ビードを形成するための施工順が長辺ビードとは異なることを明確にする。
すなわち本発明に係る回し溶接継手は、ガセットを主板に回し溶接して接合することによって得られる回し溶接継手であって、ガセットが主板に当接する矩形当接面の周囲に形成される溶接ビードの主板上の止端部に樹脂系コーティング剤が塗布されてなり、樹脂系コーティング剤の乾燥固化後の硬さがビッカース硬さでHv200以上である回し溶接継手である。
本発明に係る他の回し溶接継手は、ガセットを主板に回し溶接して接合することによって得られる回し溶接継手であって、ガセットが主板に当接する矩形当接面の短辺に沿って形成され且つ矩形当接面の短辺の両側から主板上に延伸して形成される第1溶接ビードと、矩形当接面の長辺に沿って形成され且つ第1溶接ビードに被せて主板上へ延伸して形成される第2溶接ビードならびに第3溶接ビードと、を有し、主板上の第1溶接ビードを超えて延伸する第2溶接ビードと第3溶接ビードとの間隔Mが10.0mm以下であるとともに、第2溶接ビードと第3溶接ビードとの間に位置する第1溶接ビードの主板上の止端部に樹脂系コーティング剤が塗布されてなり、樹脂系コーティング剤の乾燥固化後の硬さがビッカース硬さでHv200以上である回し溶接継手である。
本発明の回し溶接継手においては、樹脂系コーティング剤が鉄粉を含有することが好ましく、樹脂系コーティング剤が接着剤であることが好ましい。
また、本発明に係る回し溶接継手の製造方法は、ガセットを主板に回し溶接で接合する回し溶接継手の製造方法において、ガセットが主板に当接する矩形当接面の周囲に形成される溶接ビードの主板上の止端部に、乾燥固化後の硬さがビッカース硬さでHv200以上である樹脂系コーティング剤を塗布する回し溶接継手の製造方法である。
本発明に係る他の回し溶接継手の製造方法は、ガセットを主板に回し溶接で接合する回し溶接継手の製造方法において、ガセットが主板に当接する矩形当接面の短辺に沿って第1溶接ビードを矩形当接面の短辺の両側から主板上に延伸して形成し、次いで、矩形当接面の長辺に沿って第2溶接ビードならびに第3溶接ビードを第1溶接ビードに被せて且つ第1溶接ビードを超えて主板上へ延伸して形成し、主板上の第2溶接ビードと第3溶接ビードとの間隔Mを10.0mm以下とするとともに、乾燥固化後の硬さがビッカース硬さでHv200以上である樹脂系コーティング剤を第2溶接ビードと第3溶接ビードとの間に位置する第1溶接ビードの主板上の止端部に塗布する回し溶接継手の製造方法である。
本発明の回し溶接継手の製造方法においては、樹脂系コーティング剤が鉄粉を含有することが好ましく、樹脂系コーティング剤として接着剤を使用することが好ましい。
本発明においては、どのような材質の主板やガセットを用いても効果が発揮されるが、特に疲労亀裂が発生する初期段階での主板側における亀裂前縁の大きさを制限できることから、疲労亀裂伝播速度の低い(疲労亀裂が進展しにくい)主板を適用することによって、より一層の長寿命化が期待できる。
なお本発明は、鋼構造物を新たに建造する場合のみならず、老朽化した鋼構造物を補修する場合にも適用できる。
本発明によれば、鋼構造物を新たに建造する場合や老朽化した鋼構造物を補修する場合に、回し溶接継手の疲労強度を安価に且つ安定して向上することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
回し溶接継手の例を模式的に示す斜視図である。 図1に示す回し溶接継手を得るための溶接施工の手順を模式的に示す平面図である。 図2(c)を拡大して示す平面図である。 回し溶接継手の他の例を模式的に示す斜視図である。 図4に示す回し溶接継手に本発明を適用した例を模式的に示す断面図である。 図1に示す回し溶接継手に本発明を適用した例を模式的に示す断面図である。
一般に、回し溶接継手を備えた鋼構造物は、長期間に亘って使用されることによって荷重が繰り返し作用し、溶接ビードの止端部に疲労亀裂が発生する。そして、その後も繰り返し作用する荷重によって、疲労亀裂が伝播していく。
これに対して、回し溶接継手に本発明を適用すれば、疲労亀裂の発生ならびに伝播を防止することが可能となる。そのメカニズムについて説明する。
まず、図4に示す回し溶接継手に本発明を適用する例について説明する。
図5は、図4に示す回し溶接継手に本発明を適用した例を示す断面図である。本発明に係る回し溶接継手においては、図5に示すように、溶接ビード3の主板1上の止端部に樹脂系コーティング剤4が塗布される。
樹脂系コーティング剤4は、溶接ビード3の止端部に塗布する時は粘性を有する流動体であり、塗布する際に所定の位置(すなわち止端部の近傍)に容易に塗布することができる。また、粘性を有する故に、塗布した後も流失することなく所定の位置に残留する。そして、大気に曝されて時間が経過すると乾燥固化する。本発明では、乾燥固化した状態における硬さがビッカース硬さで200Hv以上となる樹脂系コーティング剤4を使用する。なお図5中の符号Qは、樹脂系コーティング剤4と主板1との接触領域を示す。
こうして樹脂系コーティング剤4が乾燥固化することによって、溶接ビード3の主板1上の止端部に集中する応力を接触領域Qに分散させることができる。つまり、従来の回し溶接継手にて溶接ビード3の止端部に発生していた応力集中が、本発明の回し溶接継手では緩和されるのである。そして、乾燥固化した樹脂系コーティング剤4のビッカース硬さが200Hv以上であれば、疲労亀裂の発生を防止することが可能となる。また、疲労亀裂が発生した場合には、疲労亀裂の伝播を防止することができる。
さらに、樹脂系コーティング剤4に鉄粉を含有させることによって、主板1と同等の硬さが得られるので、応力を接触領域Qに分散させる効果(すなわち応力集中を緩和する効果)が顕著に発揮される。
また、樹脂系コーティング剤4として、市販の接着剤(たとえば、アクリル樹脂系接着剤、αオレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤等)が簡便に使用できる。
次に、図1に示す回し溶接継手を得るための溶接技術について説明した後、図1に示す回し溶接継手に本発明を適用する例について説明する。
図1は、本発明に係る回し溶接継手の例を模式的に示す斜視図であり、図2は、その回し溶接継手を得るための溶接施工の手順を示す平面図である。なお図2において、ガセット2が主板1に当接する矩形当接面2aは、ガセット2を主板1に投影した矩形線の形状と一致する。以下では、図2(a)〜(c)の矩形線(すなわち主板1に投影されたガセット2)の形状を矩形当接面2aとして説明する。
本発明に係る回し溶接継手を得るにあたって、まず、図2(a)に示すように、矩形当接面2aの短辺に沿って第1溶接ビード3aを形成する。この時、第1溶接ビード3aが矩形当接面2aの短辺の両側から主板1上に延伸するように溶接を施工する。したがって第1溶接ビード3aの長さは、矩形当接面2aの短辺よりも長くなる。こうすることによって、後述する第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cを第1溶接ビード3aに被せることができる。
ただし、第1溶接ビード3aが長すぎて、第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cの下側から主板1上に延伸した場合は、主板1、第1溶接ビード3a、第2溶接ビード3bで囲まれた隙間、あるいは主板1、第1溶接ビード3a、第3溶接ビード3cで囲まれた隙間が生じ易く、疲労亀裂が発生し易くなる。
また、第1溶接ビード3aの長さが矩形当接面2aの短辺よりも短い場合は、第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cを第1溶接ビード3aに被せることができず、第1溶接ビード3aと第2溶接ビード3bの間、あるいは第1溶接ビード3aと第3溶接ビード3cの間に隙間が生じるので、疲労亀裂の発生を防止できない。
したがって、矩形当接面2aの短辺から主板1上に延伸した第1溶接ビード3aの部位全体に第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cを被せることができるように、第1溶接ビード3aの長さを調整して施工することが好ましい。
次いで、矩形当接面2aの長辺に沿って第2溶接ビード3bを形成する。こうすることによって、第2溶接ビード3bを第1溶接ビード3aに被せることができる。そして、第2溶接ビード3bを第1溶接ビード3aから更に主板1上に延伸して(すなわち第1溶接ビード3aを超えて)形成する。
次に、矩形当接面2aの長辺に沿って第3溶接ビード3cを形成する。こうすることによって、第3溶接ビード3cを第1溶接ビード3aに被せることができる。そして、第3溶接ビード3cを第1溶接ビード3aから更に主板1上に延伸して(すなわち第1溶接ビード3aを超えて)形成する。
こうして第1溶接ビード3aに第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cを被せることによって、各溶接ビード3a、3b、3cと主板1の間に隙間が生じるのを防止でき、その結果、止端部の形状に関わらず疲労亀裂が発生するのを防止できる。
なお第2溶接ビード3b、第3溶接ビード3cについて、図2(b)(c)では、矩形当接面2aの左側の長辺に沿った溶接ビードを第2溶接ビード3bとし、右側の長辺に沿った溶接ビードを第3溶接ビード3cとしたが、左右を逆にしても問題はない。つまり、矩形当接面2aの右側の長辺に沿った溶接ビードを第2溶接ビード3bとし、左側の長辺に沿った溶接ビードを第3溶接ビード3cとしても、本発明を適用できる。
このような手順で各溶接ビード3a、3b、3cを形成した例(図2(c)参照)を拡大して図3に示す。主板1上に延伸した第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cとの間隔Mが大きすぎると、第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cの間の第1溶接ビード3aの止端部に起点を持つ疲労亀裂が発生し易くなる。したがって、間隔Mは10.0mm以下とする。ただし、間隔Mが10.0mmを超えても、通常の回し溶接継手に比べて若干の疲労寿命向上の効果は見込まれることを付記しておく。なお矩形当接面2aの短辺の長さLが10.0mm以下である場合には、間隔Mは、M≦Lを満たすことが好ましい。なお間隔Mは、第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cの間の最も短い距離を指す。
疲労亀裂の発生を防止する観点から、間隔Mは小さいほど好ましい。しかし間隔が存在しない(M=0)場合は、第2溶接ビード3b、第3溶接ビード3cの先端に起点を持つ疲労亀裂が発生し、その疲労亀裂が広範囲に伝播し易くなる。この場合、脚長が長くなる分、若干の疲労寿命向上が見られるものの、本発明ほどの効果は得られない。したがって間隔Mは、M>0を満たすことが好ましい。
さらに図3に示すように、主板1上に延伸した第2溶接ビード3bの先端と矩形当接面2aの短辺との間隔、および、第3溶接ビード3cの先端と矩形当接面2aの短辺との間隔のうち、短い方を間隔Nとする。その間隔Nが小さ過ぎると、疲労亀裂が伝播し易くなる。一方で間隔Nが大き過ぎると、第2溶接ビード3b、第3溶接ビード3cの形成に長時間を要する。したがって、第2溶接ビード3bおよび第3溶接ビード3cが第1溶接ビードを超えて延伸していることを前提に、間隔Nは10〜50mmの範囲内が好ましい。ただし、間隔Nが10〜50mmの範囲外であっても、通常の回し溶接継手に比べて若干の疲労寿命向上の効果は見込まれることを付記しておく。
以上に説明した通り、本発明者の研究によれば、疲労亀裂の発生を抑制する効果を備えた図1に示す回し溶接継手で最も疲労亀裂が発生し易いのは、第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cの間に位置する第1溶接ビード3aの止端部である。そこで、図1に示す回し溶接継手に本発明を適用する場合は、図6に示すように、第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cの間に位置する第1溶接ビード3aの主板1上の止端部に樹脂系コーティング剤4を塗布し、さらに乾燥固化させる。
使用する樹脂系コーティング剤4の材質ならびに機能は、図5に示す例と同じであるから、詳しい説明を省略する。
なお、回し溶接を行なう溶接手段は、被覆アーク溶接法、ガスメタルアーク溶接法が主であるが、それ以外の手段についても適宜用いることができ、手動溶接または自動溶接いずれを採用しても良い。
本発明は、鋼構造物を新たに建造する場合のみならず、老朽化した鋼構造物を補修する場合にも適用できる。
表1に示す鋼板を用いて主板1(板厚:25mm、板幅:80mm、長さ:500mm)とガセット2(板厚:25mm、板幅:75mm、高さ:50mm)を作成した後、フラックス入りワイヤを用いるガスメタルアーク溶接法で、主板1にガセット2を回し溶接して、得られた回し溶接継手(図1参照)を用いて、疲労試験を行なった。その手順を説明する。
Figure 0006919640
フラックス入りワイヤは、神戸製鋼所製MX−Z200(ワイヤ径1.2mm)を用い、溶接条件は240A−32Vとし、脚長は8mm程度を狙った。図1および図4に示すように、ガセット2は主板1の中央に配置したので、矩形当接面2aは主板1の中央に位置する。なお、図1に示す回し溶接継手の各溶接ビード3a、3b、3cを形成する手順は、図2に示す通りである。
こうして得られた図1の回し溶接継手では、第2溶接ビード3bと第3溶接ビード3cとの間に位置する第1溶接ビード3aの主板1上の止端部に樹脂系コーティング剤4を塗布した(図6参照)。これを発明例2、3とする。(M=4.2〜5.3mm)
図4の回し溶接継手では、溶接ビード3の主板1上の止端部の全長に樹脂系コーティング剤4を塗布した。これを発明例1とする。
樹脂系コーティング剤4は、粒径50μm未満の鉄粉(すなわち50μmメッシュを通過した粒子)を混ぜ込んで使用した。樹脂系コーティング剤4は、市販の接着剤を使用した。
次に比較のために、発明例1と同じ溶接条件で回し溶接を行ない、得られた回し溶接継手(図4参照)を用いて疲労試験を行なった。これを比較例とする。比較例では、樹脂系コーティング剤4を使用していない。
疲労試験(応力範囲100MPa、応力比0.1)の結果を表2に示す。なお、表2中の塗布範囲は、試験片の主板側を覆っている面積を示したものである。ただし、1辺が直線でないため、数値には若干の誤差がある。また、表2中の継手番号1は図4に示す回し溶接継手の例、継手番号2は図1に示す回し溶接継手の例である。
表2から明らかなように、発明例は、比較例よりも疲労特性が大幅に向上している。
Figure 0006919640
1 主板
2 ガセット
2a 矩形当接面
3 溶接ビード
3a 第1溶接ビード
3b 第2溶接ビード
3c 第3溶接ビード
4 樹脂系コーティング剤

Claims (8)

  1. ガセットを主板に回し溶接して接合することによって得られる回し溶接継手であって、前記ガセットが前記主板に当接する矩形当接面の周囲に形成される溶接ビードの前記主板上の止端部に樹脂系コーティング剤が塗布されてなり、該樹脂系コーティング剤の乾燥固化後の硬さがビッカース硬さでHv200以上であり、前記樹脂系コーティング剤が鉄粉を含有することを特徴とする回し溶接継手。
  2. ガセットを主板に回し溶接して接合することによって得られる回し溶接継手であって、前記ガセットが前記主板に当接する矩形当接面の短辺に沿って形成され且つ前記矩形当接面の前記短辺の両側から前記主板上に延伸して形成される第1溶接ビードと、前記矩形当接面の長辺に沿って形成され且つ前記第1溶接ビードに被せて前記主板上へ延伸して形成される第2溶接ビードならびに第3溶接ビードと、を有し、前記主板上の前記第1溶接ビードを超えて延伸する前記第2溶接ビードと前記第3溶接ビードとの間隔Mが10.0mm以下であるとともに、前記第2溶接ビードと前記第3溶接ビードとの間に位置する前記第1溶接ビードの前記主板上の止端部に樹脂系コーティング剤が塗布されてなり、該樹脂系コーティング剤の乾燥固化後の硬さがビッカース硬さでHv200以上であることを特徴とする回し溶接継手。
  3. 前記樹脂系コーティング剤が鉄粉を含有することを特徴とする請求項2に記載の回し溶接継手。
  4. 前記樹脂系コーティング剤が接着剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回し溶接継手。
  5. ガセットを主板に回し溶接で接合する回し溶接継手の製造方法において、前記ガセットが前記主板に当接する矩形当接面の周囲に形成される溶接ビードの前記主板上の止端部に、乾燥固化後の硬さがビッカース硬さでHv200以上であり、鉄粉を含有する樹脂系コーティング剤を塗布することを特徴とする回し溶接継手の製造方法。
  6. ガセットを主板に回し溶接で接合する回し溶接継手の製造方法において、前記ガセットが前記主板に当接する矩形当接面の短辺に沿って第1溶接ビードを前記矩形当接面の前記短辺の両側から前記主板上に延伸して形成し、次いで、前記矩形当接面の長辺に沿って第2溶接ビードならびに第3溶接ビードを前記第1溶接ビードに被せて且つ前記第1溶接ビードを超えて前記主板上へ延伸して形成し、前記主板上の前記第2溶接ビードと前記第3溶接ビードとの間隔Mを10.0mm以下とするとともに、乾燥固化後の硬さがビッカース硬さでHv200以上である樹脂系コーティング剤を前記第2溶接ビードと前記第3溶接ビードとの間に位置する前記第1溶接ビードの前記主板上の止端部に塗布することを特徴とする回し溶接継手の製造方法。
  7. 前記樹脂系コーティング剤が鉄粉を含有することを特徴とする請求項6に記載の回し溶接継手の製造方法。
  8. 前記樹脂系コーティング剤として接着剤を使用することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の回し溶接継手の製造方法。
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