JP2014233747A - ガセット板の溶接方法 - Google Patents

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康 森影
片岡 時彦
Tokihiko Kataoka
時彦 片岡
安田 功一
Koichi Yasuda
功一 安田
聡 伊木
Satoshi Iki
聡 伊木
千晃 志賀
Chiaki Shiga
千晃 志賀
平岡 和雄
Kazuo Hiraoka
和雄 平岡
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Abstract

【課題】ガセット板の角回し溶接における溶接ビードの疲労強度を簡便な手段で飛躍的に向上することができる溶接方法を提供する。【解決手段】ガセット板2の長手方向両端部から各々長さ17mm以上の伸長ビード3bを鋼板の上面の2ケ所に形成する。【選択図】図2

Description

本発明は、鋼構造物を構成する部材として使用される鋼板等の鋼材にガセット板を角回し溶接する方法に関するものである。
近年、鋼構造物(たとえば鋼橋、船舶等)の老朽化に伴う損傷事故が増加している。そのような損傷事故を防止するためには、鋼構造物の検査体制を確立することが重要であり、かつ設計および建造の段階で鋼構造物の特性を高めることが必要である。
鋼構造物は、各種の鋼材(たとえば鋼板等)を溶接で接合することによって構築するものであるから、鋼構造物の特性を高めるためには、溶接部の品質向上が求められる。溶接部に欠陥(たとえば割れ等)が生じた場合には、その欠陥の尖端部に応力集中が発生し易い。また、溶接ビードの形状が不適切である場合には、溶接ビードの止端部に応力集中が発生し易くなる。このようにして生じる応力集中が、溶接部に疲労亀裂を生じさせる。
疲労亀裂の原因となる応力集中は、下記(A)(B)が主な要因となって発生することが知られており、これら2つの要因が重畳することによって、疲労亀裂が発生し、さらに進行して疲労破壊を引き起こす。
(A)溶接部に繰り返し加わる外力
(B)溶接部に残留する引張応力
なお、(A)の外力は、鋼橋を通過する車両によって生じるもの、あるいは船舶に反復して作用する波浪によって生じるもの等であり、(B)の引張応力は、溶接によって生じるものである。
とりわけ、鋼構造物を構成する鋼板の表面に、ガセット板を角回し溶接によって接合した部位では、角回し溶接によって形成される溶接ビードの止端部にて応力集中が最も顕著に現われる。したがって、ガセット板の角回し溶接では、溶接ビードの止端部が起点となって疲労亀裂が発生する頻度が極めて高い。
そこで、ガセット板の角回し溶接における溶接部の疲労強度を向上するために、溶接ビードの止端部を平滑化して応力集中を抑制する技術、溶接ビードの止端部に圧縮残留応力を導入して引張残留応力を緩和する技術等が検討されている。
たとえば特許文献1には、溶接ビードに超音波ピーニングを施して、止端部を平滑化し、かつ止端部に圧縮残留応力を導入することによって、溶接部の疲労強度を向上する技術が開示されている。この技術は、超音波ピーニングを行なう設備が不可欠であり、その設備管理の負荷のみならず作業管理の負荷が増大する。
特許文献2には、溶接金属の変態温度が低下する成分の溶接材料を使用し、溶接時にマルテンサイト変態を生起させて、溶接ビードに圧縮残留応力を導入することによって、溶接部の疲労強度を向上する技術が開示されている。この技術は、溶接材料を変更する間は溶接施工を停止せざるを得ないので、作業効率の低下を招く。また、溶接材料の在庫管理の負荷が増大する。
特開2007-283355号公報 特開平11-183290号公報
本発明は、ガセット板の角回し溶接における溶接ビードの疲労強度を簡便な手段で飛躍的に向上することができる溶接方法を提供することを目的とする。
発明者は、ガセット板を鋼板に角回し溶接する際に形成される溶接ビード(以下、角回しビードという)の応力集中について研究し、以下のような知見を得た。
通常の角回し溶接では、ガセット板の下端周囲に幅7mm程度の角回しビードが形成される。ガセット板の長手方向両側面部の角回しビードは、ガセット板の側面に沿って長く形成されるので応力集中が起こり難い。これに対してガセット板の長手方向両端部の角回しビードは短いので、応力集中が生じ易い。したがって、ガセット板の長手方向両端部の角回しビードの形状を改善すれば、応力集中を緩和することが可能となり、その結果、角回しビードの疲労強度を高めることができる。
そこで発明者は、図2に示すように、ガセット板2を鋼板1の上面に角回し溶接した後に、ガセット板2の長手方向両端部の角回しビード3aに重ねて伸長ビード3bを形成して応力集中度を調査した。
使用した鋼板1は、引張強さ780MPa級の高張力鋼(厚さ20mm、幅200mm、長さ1000mm)であり、ガセット板2は、引張強さ780MPa級の高張力鋼(厚さ20mm、幅50mm、長さ200mm)である。
調査結果を図1に示す。図1の横軸は、伸長ビード3bの長さであり、ガセット板2の長手方向端面から伸長ビード3bの先端までの長さL(mm)である(図4参照)。図1の縦軸は、応力集中度であり、伸長ビード3bを設けない角回しビード3aの応力集中度に対する比率で示す。図1から明らかなように、伸長ビード3bの長さLが17mm以上で応力集中度の比率が0.2(=20%)を下回り、さらに20mm以上では応力集中度が安定して低位を維持している。
つまり、ガセット板の長手方向側面部の角回しビードを延伸することによって、応力集中を緩和することが可能となり、その結果、角回しビードの疲労強度を高めることができる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、角回し溶接によってガセット板を鋼板に接合する溶接方法であって、ガセット板の長手方向両端部から各々長さ17mm以上の伸長ビードを鋼板の上面の2ケ所に形成するガセット板の溶接方法である。
本発明の溶接方法においては、角回し溶接によってガセット板の周囲に角回しビードを形成した後に、ガセット板の長手方向両端部から伸長ビードを形成することが好ましい。あるいは、角回し溶接によってガセット板の周囲に角回しビードを形成する際に、角回しビードをガセット板の長手方向両端部から延伸させて伸長ビードを形成することが好ましい。
また、伸長ビードの最大幅を、ガセット板の両側面部に形成された角回しビードと鋼板との境界部の最大距離より大きくすることが好ましく、角回しビードと伸長ビードとの連結部に段差を設けず伸長ビードを形成することが好ましい。
さらに、ガセット板を角回し溶接する鋼板が、鋼構造物を構成する部材であることが好ましい。つまり本発明を適用して、既設の鋼構造物にガセット板を角回し溶接することによって、鋼構造物の疲労強度を高めることが可能となり、その結果、耐用性を向上することができる。
本発明によれば、ガセット板の角回し溶接における溶接ビードの疲労強度を簡便な手段で飛躍的に向上することができ、疲労亀裂が発生するのを抑制できるので、産業上格段の効果を奏する。
伸長ビードの長さと応力集中度との関係を示すグラフである。 本発明を適用した角回し溶接の例を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。 従来の角回し溶接の例を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。 図2の伸長ビード近辺を拡大して示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。 伸長ビードの他の例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。 伸長ビードの他の例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。 疲労試験片の形状を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2は、本発明を適用した角回し溶接の例を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。本発明では、図2に示すように、ガセット板2を鋼板1の上面に角回し溶接して角回しビード3aを形成する。この角回しビード3aは、図3に示す従来の角回し溶接と同様に形成する。
次いで、本発明では、角回しビード3aを形成した後に、ガセット板2の長手方向両端部から伸長ビード3bを鋼板1の上面の2ケ所に形成する。ガセット板2の長手方向端面から伸長ビード3bの先端までの長さL(mm)を伸長ビード3bの長さとして、その長さLが17mm未満では、図1に示すように、応力集中度が、従来の角回しビード(図3参照)に対する比率で0.2(=20%)を超える。したがって、伸長ビード3bの長さLは17mm以上とする。応力集中度を従来の角回しビードの20%以下に低減すれば、疲労強度を飛躍的に向上することができる。
なお、伸長ビード3bの長さLが20mm以上であれば、応力集中度を従来の角回しビードの0.2以下に安定して維持できる。したがって伸長ビード3bの長さLは20mm以上が好ましい。また伸長ビード3bの長さLが150mmを超えると、伸長ビード3bの形成に長時間を要するので、作業効率の低下を招く。したがって伸長ビード3bの長さLは150mm以下が好ましい。
図4は、図2の伸長ビード近辺を拡大して示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。伸長ビード3bの最大幅をW(mm)とし、ガセット板2の両側面部に形成された角回しビード3aと鋼板1との境界部の最大距離をD(mm)として、W<Dである場合には、ガセット板2の長手方向端面の角回しビード3aと伸長ビード3bとの重ね合わせ部に応力集中が起こるので、疲労強度の向上は期待できない。したがって、図4に示すようにW=Dとすることが好ましい。また図5に示すように、W>Dとすれば、伸長ビード3bがガセット板2の長手方向両側面部の角回しビード3aにも重ねられて、疲労強度のさらなる向上を図ることが可能となるので、一層好ましい。
本発明では、角回しビード3aを形成する際に、図6に示すように、ガセット板2の長手方向端面の角回しビード3aを延伸させて伸長ビード3bを形成しても良い。つまり、角回し溶接の施工と同時に形成された伸長ビード3bと、ガセット板2の長手方向両側面部の角回しビード3aとの連結部に段差を設けず、平滑な形状を得ることができる。その場合も、伸長ビード3bの最大幅W(mm)と、ガセット板2の両側面部に形成された角回しビード3aと鋼板1との境界部の最大距離D(mm)とが、W=DまたはW>Dを満たすことが好ましい。
以上のように、本発明を適用して、既設の鋼構造物にガセット板を角回し溶接すれば、鋼構造物の疲労強度を高めることが可能となり、その結果、耐用性を向上することができる。
図2に示すように、ガセット板2を鋼板1に角回し溶接して角回しビード3aを形成し、さらに伸長ビード3bを形成した後に、図7に示すような疲労試験片を切り出した。なお角回し溶接では、例えば図5において、角回しビード3aの幅Mは7mm、伸長ビード3bの長さLは72mm、伸長ビード3bの最大幅Wは34mm、ガセット板2の両側面部に形成された角回しビード3aと鋼板1との境界部の最大距離Dは36mmとなった。これを発明例とする。
一方で、比較例として、図3に示すように、ガセット板2を鋼板1に角回し溶接して角回しビード3aを形成した後に、図7に示すような疲労試験片を切り出した。なお角回し溶接では、角回しビード3aの幅Mは7mm、ガセット板2の両側面部に形成された角回しビード3aと鋼板1との境界部の最大距離Dは36mmであった。
なお図7中では、角回しビード3aと伸長ビード3bは図示を省略する。また図7に示す寸法の単位はmmである。使用した鋼板1とガセット板2は、いずれも引張強さ800MPaの高張力鋼である。
次に、発明例と比較例の試験片を用いて疲労試験を行なった。その結果を表1に示す。
Figure 2014233747
表1から明らかなように、発明例の疲労寿命は比較例の3倍以上であり、簡便な手段で飛躍的に向上することができた。
1 鋼板
2 ガセット板
3a 角回しビード
3b 伸長ビード

Claims (6)

  1. 角回し溶接によってガセット板を鋼板に接合する溶接方法であって、前記ガセット板の長手方向両端部から各々長さ17mm以上の伸長ビードを前記鋼板の上面の2ケ所に形成することを特徴とするガセット板の溶接方法。
  2. 前記角回し溶接によって前記ガセット板の周囲に角回しビードを形成した後に、前記ガセット板の長手方向両端部から前記伸長ビードを形成することを特徴とする請求項1に記載のガセット板の溶接方法。
  3. 前記角回し溶接によって前記ガセット板の周囲に角回しビードを形成する際に、前記角回しビードを前記ガセット板の長手方向両端部から延伸させて前記伸長ビードを形成することを特徴とする請求項1に記載のガセット板の溶接方法。
  4. 前記伸長ビードの最大幅を、前記ガセット板の両側面部に形成された前記角回しビードと前記鋼板との境界部の最大距離より大きくすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガセット板の溶接方法。
  5. 前記角回しビードと前記伸長ビードとの連結部に段差を設けず前記伸長ビードを形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガセット板の溶接方法。
  6. 前記鋼板が、鋼構造物を構成する部材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガセット板の溶接方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020040076A (ja) * 2018-09-07 2020-03-19 Jfeスチール株式会社 疲労強度に優れた回し溶接継手およびその製造方法
JP2020055020A (ja) * 2018-10-03 2020-04-09 Jfeスチール株式会社 疲労強度に優れた回し溶接継手およびその製造方法

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