JP6819432B2 - 溶接継手及び溶接継手の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接継手及び溶接継手の製造方法に関する。
近年、環境保護意識の高まりから、船舶の排ガス中の窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の国際規制が強化されている。このような国際規制への対応として、環境に優しいクリーンなLNG(液化天然ガス)を燃料としたLNG燃料船の需要が高まっている。例えば、特開2014−162430号公報には、液化ガスを燃料として航行する液化ガス燃料船の屋外曝露部に置かれるデッキ置きタンク構造が開示されている。
LNG燃料船の燃料貯蔵タンクは、波浪、タンク内のLNGのスロッシング、タンク内圧等によって作用力が変動するため、溶接部の疲労特性が要求される。
一般的な溶接継手の疲労特性の改善に関して、特開平11−104838号公報には、溶接金属内の平均硬度Aと溶接熱影響部粗粒域の最大硬度Bの差(A−B)を26以上39以下とした、疲労特性に優れる溶接継手が開示されている。一方、LNG燃料船の燃料貯蔵タンクは、LNG温度における脆性破壊防止の観点から、溶接材料としてオーステナイト系70%ニッケル合金等が用いられる。また、母材での脆性破壊を防止するため、溶接金属が母材よりも柔らかい軟質継手(アンダーマッチ継手)が用いられる。そのため、特開平11−104838号公報に記載された構成を適用することはできない。
特開2011−245522号公報には、建築用80〜100キロ級鋼の溶接継手がアンダーマッチ継手となる場合に、溶接部に補強材を付加溶接することが記載されている。
特開2008−290125号公報には、溶接止端の少なくとも一部に、曲率半径が1.0〜10.0mm、鋼部材表面から厚さ方向の深さが1.0mm以下である打撃跡を形成することで、船舶の疲労特性を改善できることが記載されている。
特開2014−162430号公報 特開平11−104838号公報 特開2011−245522号公報 特開2008−290125号公報
矢島浩、他、「LNGタンカー用9%Ni鋼の継手破壊靱性とその評価」、日本造船学会論文集、第137号、1975年、350〜359頁 町田進、他、「破壊評価線図法に基づく9%Ni鋼の延性破壊強度評価」、溶接学会論文集、第12巻、第3号、1994年、432〜439頁 西岡伸之、他、「9%Ni鋼のLNG地上式大容量貯蔵厚板構造への適用」、三菱重工技報、第33巻、第4号、1996年、238〜241頁
特開2011−245522号公報の技術は、溶接継手の引張強度の改善を目標としており、疲労特性は考慮されていない。
特開2008−290125号公報の技術は、疲労亀裂発生寿命を延ばすのには有効であるが、疲労亀裂進展寿命を直接改善するものではない。疲労亀裂進展寿命が長ければ、疲労亀裂が発生した場合でも、亀裂が貫通する前に補修することができる。そのため、疲労亀裂発生寿命だけではなく、疲労亀裂進展寿命も長くできることが好ましい。
本発明の目的は、溶接金属が母材よりも柔らかいアンダーマッチ継手の疲労亀裂進展寿命を延長することである。
本発明の一実施形態による溶接継手は、複数の開先面を有する第1の母材と、複数の開先面を有する第2の母材と、前記第1の母材及び前記第2の母材の前記複数の開先面を覆って形成された、前記第1の母材及び前記第2の母材の硬さよりも小さい硬さを有する溶接金属とを備える。前記第1の母材及び前記第2の母材の各々は、当該母材の表裏の面の一方に隣接する第1の開先面、及び当該母材の表裏の面の他方に隣接する第2の開先面を含み、前記第1の開先面及び前記第2の開先面は、当該母材の厚さ方向となす角度が45°以上である。
本発明の一実施形態による溶接継手の製造方法は、各々が複数の開先面を有する第1の母材及び第2の母材を準備する工程と、前記第1の母材及び前記第2の母材の前記複数の開先面を覆って、前記第1の母材及び前記第2の母材の硬さよりも小さい硬さを有する溶接金属を形成する工程とを備える。前記第1の母材及び前記第2の母材の各々は、当該母材の表裏の面の一方に隣接する第1の開先面、及び当該母材の表裏の面の他方に隣接する第2の開先面を含み、前記第1の開先面及び前記第2の開先面は、当該母材の厚さ方向となす角度が45°以上である。
本発明によれば、溶接金属が母材よりも柔らかいアンダーマッチ継手の疲労亀裂進展寿命を延長することができる。
図1は、実施形態による溶接継手の構成を示す斜視図である。 図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。 図3Aは、図2の溶接部の近傍を拡大して示す図である。 図3Bは、図2の溶接部の近傍を拡大して示す図である。 図4は、溶接継手の製造方法の一例を示すフロー図である。 図5は、比較例の溶接継手の構成を示す断面図である。 図6は、第1の実施形態による溶接継手の構成を示す断面図である。 図7は、溶接継手の変形例の構成を示す断面図である。 図8は、溶接継手の他の変形例の構成を示す断面図である。 図9は、図5とは別の比較例の溶接継手の構成を示す図である。 図10は、図5とは別の比較例の溶接継手の構成を示す図である。 図11は、図5とは別の比較例の溶接継手の構成を示す図である。 図12は、第2の実施形態による溶接継手の構成を示す断面図である。 図13は、第3の実施形態による溶接継手の構成を示す断面図である。 図14は、溶接継手の製造方法の他の例を示すフロー図である。 図15は、疲労試験の結果を示す散布図である。
本発明者らは、アンダーマッチ継手の疲労亀裂進展寿命について調査し、次の知見を得た。
母材よりも溶接金属が柔らかいアンダーマッチ継手では、溶接止端で発生した疲労亀裂が、柔らかい溶接金属に接しながらフュージョンラインに沿って進展する。フュージョンラインに沿った疲労亀裂の進展速度は、母材中を進展する疲労亀裂の進展速度よりも大きい。そのため、疲労亀裂がフュージョンラインに沿って進展すると、疲労亀裂進展寿命が短くなる。
本発明者らは、様々な溶接継手を制作して疲労試験を実施した。その結果、母材の表裏の面と隣接する開先面と母材の厚さ方向とがなす角度を45°以上(開先角度にして90°以上)にすることで、疲労亀裂の進展経路をフュージョンラインから母材に切り替えることができ、疲労亀裂進展寿命を延長できることがわかった。なお、高ニッケル鉄系材料のアンダーマッチ継手の突き合わせ溶接では、通常、開先角度は30〜60°である(非特許文献1〜3を参照)。
本発明は、上記の知見に基づいて完成された。以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による溶接継手1の構成を示す斜視図である。溶接継手1は、母材10及び20と、これらを接続する溶接金属30とを備えている。
溶接金属30の硬さは、母材10及び20の硬さよりも小さい。すなわち、溶接継手1は、溶接金属が母材よりも柔らかいアンダーマッチ継手である。母材10及び20、並びに溶接金属30は、溶接金属30の硬さが母材10及び20の硬さよりも小さいという関係を満足していればよく、化学組成等は特に限定されない。
図1では、母材10及び20を平板形状に図示しているが、母材10及び20の形状は、これに限定されない。母材10及び20は、湾曲していてもよく、また、管状であってもよい。
溶接継手1はさらに、母材10と溶接金属30との溶接止端(境界線)上に、打撃跡41及び42を有している。打撃跡41及び42は、母材10と溶接金属30との溶接止端に沿って、ライン状に形成されている。溶接継手1はまた、母材20と溶接金属30との溶接止端(境界線)上に、打撃跡43及び44を有している。打撃跡43及び44は、母材20と溶接金属30との溶接止端に沿って、ライン状に形成されている。
以下、説明の便宜のため、母材10の表裏の面のうち、打撃跡41が形成された側の面を母材10の表側の面、打撃跡42が形成された側の面を母材10の裏側の面という。同様に、母材20の表裏の面のうち、打撃跡43が形成された側の面を母材20の表側の面、打撃跡44が形成された側の面を母材20の裏側の面という。
図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。溶接継手1は、X形と呼ばれる開先形状を有し、母材10及び20のそれぞれが複数の開先面を有している。具体的には、母材10は、母材10の表側の面に隣接する開先面11と、開先面11及び母材10の裏側の面に隣接する開先面12とを含んでいる。同様に、母材20は、母材20の表側の面に隣接する開先面21と、開先面21及び母材20の裏側の面に隣接する開先面22とを含んでいる。溶接金属30は、これらの開先面を覆って形成されている。
本実施形態では、開先面11が母材10の厚さ方向(z方向:以下、単に厚さ方向と呼ぶ。)となす角度φを45°以上にする。角度φの下限は、より好ましくは50°である。角度φの上限は、好ましくは70°であり、さらに好ましくは60°である。
図3A及び図3Bは、図2の溶接部の近傍を拡大して示す図である。図3A及び図3Bは断面図であるが、見やすくするためにハッチングを省略している。開先面11は、厳密には図3Aに示すように、溶接後は溶込みによって母材10側に後退して接合面11になる。しかし、通常の溶接条件では、溶接前の開先面11と溶接後の接合面11とはほぼ平行になる。したがって、接合面11が厚さ方向となす角度は、開先面11が厚さ方向となす角度φとほぼ等しい。そのため、本明細書では開先面11と接合面11とを区別しないものとする。
ただし、溶接の条件によっては図3Bに示す接合面11**のように、溶接パスに対応した溶込みによって凹凸を有する場合がある。この場合、溶接線と垂直な断面において、母材10側から接合面11**に接する接線TLと厚さ方向とがなす角度を、「開先面11と厚さ方向とがなす角度」φと定義する。開先面12、21、及び22が厚さ方向となす角度についても同様とする。
再び図2を参照して、説明を続ける。本実施形態では、開先面11と開先面12とが対称に形成されている。すなわち、開先面12が厚さ方向となす角度は、開先面11が厚さ方向となす角度φと等しい。本実施形態ではさらに、母材10の開先面11及び12と、母材20の開先面21及び22とが対称に形成されている。すなわち、開先面21が厚さ方向となす角度は、開先面11が厚さ方向となす角度φと等しい。また、開先面22が厚さ方向となす角度は、開先面12が厚さ方向となす角度と等しい。
すなわち、本実施形態では、開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度が、すべて等しい。上述のとおり、開先面11が厚さ方向となす角度φは、45°以上である。したがって、開先面11、12、21、22の各々が厚さ方向となす角度は、いずれも45°以上である。
なお、本実施形態のように母材10の開先形状と母材20の開先形状とが対称である場合、角度φは開先角度θの半分(θ/2)となる。
打撃跡41〜44の各々は、好ましくは、曲率半径Rが10mm以下である。打撃跡41〜44の各々は、より好ましくは、曲率半径Rが2mm以上10mm以下であり、深さDが1.0mm以下である。なお、打撃跡41〜44の深さとは、当該打撃跡が形成された母材の表面(表側の面又は裏側の面)から当該打撃跡の最深部(母材の表面と垂直な方向において、当該表面から最も遠い位置)までの距離である。
曲率半径Rのより好ましい上限は、5mmである。深さDの下限は、上限とは独立して、好ましくは0.1mmである。深さDの上限は、下限と独立して、より好ましくは0.8mmであり、さらに好ましくは0.6mmである。
打撃跡41〜44の曲率半径R及び深さDは、打撃跡41〜44を印象材で型取りし、当該印象材の断面を投影機で拡大して測定することができる。印象材の種類は特に限定しないが、液状又は粘土状の印象材を、打撃跡を含む溶接部に密着した状態で硬化させ、硬化後に型取り試料として剥離させる必要がある。硬化前に打撃跡に隙間無く密着させるための流動性や粘性が必要であり、また硬化後に形状を維持するための硬さも必要となるため、好ましくはシリコーン印象材を用いる。投影機で拡大された断面形状から精度の良い寸法R及びDを得るためには、少なくとも5倍以上に拡大した投影像を用いる。
[溶接継手1の製造方法]
図4は、溶接継手1の製造方法の一例を示すフロー図である。この製造方法は、母材10及び20を準備する工程(ステップS1)と、溶接金属30を形成する工程(ステップS2)と、打撃跡41〜44を形成する工程(ステップS3)とを備えている。
まず、上述した開先面11及び12を有する母材10、並びに開先面21及び22を有する母材20を準備する(ステップS1)。開先面11、12、21、及び22は例えば、機械加工によって形成することができる。
次に、開先面11及び12が形成された母材10の端部と、開先面21及び22が形成された母材20の端部とを突き合わせて、母材10と母材20とを溶接して溶接金属30を形成する(ステップS2)。溶接方法は特に限定されないが、例えば、TIG溶接、MIG溶接、MAG溶接、サブマージアーク溶接、被覆アーク溶接等を用いることができる。溶接材料は、溶接金属の硬さを母材10及び20の硬さより小さくできるものであればよく、化学組成等は特に限定されない。なお、通常の溶接条件であれば、接合面が厚さ方向となす角度は、開先面が厚さ方向となす角度とほぼ同じになる。
溶接金属30を形成した後、母材10と溶接金属30との溶接止端(境界線)、及び母材20と溶接金属30との溶接止端(境界線)をピーニングして、打撃跡41〜44を形成する(ステップS3)。ピーニングの方法は特に限定されないが、例えば、UIT(Ultrasonic Impact Treatment;超音波衝撃処理)、UP(Ultrasonic Peening;超音波ピーニング)、UPT(Ultrasonic Peening Treatment;超音波ピーニング処理)、HiFIT(High Frequency Impact Treatment;高周波衝撃処理)、PIT(Pneumatic Impact treatment;圧縮空気衝撃処理)、UNP(Ultrasonic needle peening;超音波ニードルピーニング)、エアツールによるピーニングやハンマーピーニング等を用いることができる。高周波のピーニング、及び周波数の低いピーニングのいずれであってもよく、周波数の低いピーニングであっても、処理後の形状が高周波でのピーニングと同等であれば、高周波でのピーニングと同等の効果が得られる。
上述のとおり、打撃跡41〜44の各々は、曲率半径Rが10mm以下であることが好ましい。また、曲率半径Rが2mm以上10mm以下であり、深さDが1.0mm以下であることがより好ましい。所望の曲率半径Rの打撃溝を設けるには、前記所望の先端部曲率半径を有する振動端子を用いてピーニングをすればよい。曲率半径Rを2〜10mmにする場合、先端部曲率半径が2〜10mmの振動端子を用いてピーニングをすればよい。曲率半径Rを2〜5mmにする場合、先端部曲率半径が2〜5mmの振動端子を用いてピーニングをすればよい。
以上の工程によって、溶接金属1が製造される。なお、この製造方法はあくまでも一例であり、溶接継手1の製造方法はこれに限定されない。
[溶接継手1の効果]
以下、図5及び図6を参照して、溶接継手1の効果を説明する。
図5は、比較例による溶接継手9の構成を示す断面図である。図5に示すように、母材よりも溶接金属が柔らかいアンダーマッチ継手では、溶接止端で発生した疲労亀裂が、柔らかい溶接金属に接しながらフュージョンラインに沿って進展する。フュージョンラインに沿った疲労亀裂の進展速度は、母材中を進展する疲労亀裂の進展速度よりも大きい。そのため、疲労亀裂がフュージョンラインに沿って進展すると、疲労亀裂進展寿命が短くなる。
本実施形態では、溶接止端に打撃跡41〜44を形成し、かつ、開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度φを、45°以上にする。これによって、図6に示すように、疲労亀裂の進展経路をフュージョンラインから母材に切り替え、溶接継手1の疲労亀裂進展寿命を延ばすことができる。
さらに、打撃跡41〜44の形状を適切に制御することによって、疲労亀裂発生寿命も延ばすことができる。具体的には、打撃跡41〜44の各々の曲率半径Rを10mm以下とすることによって、疲労亀裂発生寿命を延ばすことができる。さらに、打撃跡41〜44の各々の曲率半径を2mm以上10mm以下、深さDを1.0mm以下とすることによって、疲労亀裂発生寿命をより延ばすことができる。これによって、溶接継手1の全体の疲労寿命をさらに延ばすことができる。
以上、本発明の第1の実施形態による溶接継手1の構成、製造方法、及び効果を説明した。本実施形態によれば、溶接継手の疲労亀裂進展寿命を延ばすことができる。
[溶接継手1の変形例]
図7は、溶接継手1の変形例の一つである溶接継手1Aの構成を示す断面図である。溶接継手1Aでは、母材10及び20の開先が、表側の面と裏側の面とで非対称に形成されている。具体的には、母材10及び20の表側の面に形成された開先面11及び21が厚さ方向となす角度はφ1であり、裏側の面に形成された開先面12及び22が厚さ方向となす角度はφ2である。開先面11及び21が厚さ方向となす角度φ1は、開先面12及び22が厚さ方向となす角度φ2よりも小さい。
この場合、小さいほうの角度φ1が45°以上であれば、すべての溶接止端からの疲労亀裂の進展経路を母材にすることができる。
図8は、溶接継手1の変形例の一つである溶接継手1Bの構成を示す断面図である。溶接継手1Bでは、母材10の開先と母材20の開先とが、非対称に形成されている。具体的には、母材10の開先面11及び12が厚さ方向となす角度はφ3であり、母材20の開先面21及び22が厚さ方向となす角度はφ4である。開先面21及び22が厚さ方向となす角度φ4は、開先面11及び12が厚さ方向となす角度φ3よりも小さい。
この場合も、小さいほうの角度φ4が45°以上であれば、すべての溶接止端からの疲労亀裂の進展経路を母材にすることができる。
以上のとおり、溶接継手1A及び1Bの構成によっても、開先面の角度を適切に設定することによって、疲労亀裂の進展経路を母材にして、疲労亀裂進展寿命を延ばすことができる。図示は省略するが、開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度が、すべて異なる場合も同様である。すなわち、開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度のうち、最も小さい角度が45°以上であれば、すべての溶接止端からの疲労亀裂の進展経路を母材にすることができる。換言すれば、開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度が、いずれも45°以上であれば、すべての溶接止端からの疲労亀裂の進展経路を母材にすることができる。
図9〜図11は、仮想的な比較例である溶接継手9A〜9Cの構成を示す断面図である。溶接継手の開先形状としては、溶接継手1(図2)のようなX形の他、溶接継手9A(図9)のようなK形、溶接継手9B(図10)のようなV形、溶接継手9C(図11)のようなレ形がある。しかしこれらの開先形状ではいずれも、図中に矢印で示すように、母材の表面からほぼ垂直に延びるフュージョンラインが存在する。そのため、疲労亀裂の進展経路はフュージョンラインになり、疲労亀裂進展寿命を延ばすことはできない。
[第2の実施形態]
図12は、本発明の第2の実施形態による溶接継手2の構成を示す断面図である。溶接継手2では、母材10及び20は、多段階に形成された開先面を有している。具体的には、母材10は、開先面11及び12に加えて、開先面11に隣接する開先面13、及び開先面12に隣接する開先面14をさらに含んでいる。同様に、母材20は、開先面21及び22に加えて、開先面21に隣接する開先面23、及び開先面22に隣接する開先面24をさらに含んでいる。開先面11、12、21、及び22が厚さ方向となす角度はφ5であり、開先面13、14、23、及び24が厚さ方向となす角度はφ6である。
溶接継手2のような開先形状であっても、母材10及び20の表裏の面と隣接する開先面である開先面11、12、21、及び22が厚さ方向となす角度φ5が45°以上であれば、溶接止端で発生した疲労亀裂の初期の進展方向を母材にすることができる。これによって、その後の疲労亀裂の進展経路も母材にすることができ、疲労亀裂進展寿命を延ばすことができる。
疲労亀裂の初期の進展経路をフュージョンラインから十分に遠ざけるため、開先面11の深さdは、4mm以上であることが好ましい。ここで、開先面11の深さdは、母材10の表側の面から、開先面11と開先面13とが接する位置までの、厚さ方向に沿った距離である。開先面12、21、及び22についても同様である。
疲労亀裂進展寿命の観点では、開先面13、14、23、及び24が厚さ方向となす角度φ6の大きさは任意である。角度φ6は、45°以上であってもよいし、45°未満であってもよい。一方、製造コストの観点では、角度φ6を角度φ5よりも小さくすることが好ましい。角度φ6を角度φ5よりも小さくすれば、溶接金属30の体積を小さくできる。
以上のとおり、溶接継手2の構成によっても、疲労亀裂の進展経路を母材にして、疲労亀裂進展寿命を延ばすことができる。
溶接継手2の場合も、開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度が、一部又は全部異なっていてもよい。開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度が、いずれも45°以上であれば、すべての溶接止端からの疲労亀裂の進展経路を母材にすることができる。
溶接継手2では、母材10及び20が、それぞれ4つの開先面を有している場合を説明した。しかし、母材10及び母材20の開先面の数は、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、母材10の開先面の数と母材20の開先面の数とが異なっていてもよい。
[第3の実施形態]
図13は、本発明の第3の実施形態による溶接継手3の構成を示す断面図である。溶接継手3は、溶接継手1(図2)の溶接金属30に代えて、溶接金属50を備えている。溶接金属50は、表面が母材10及び20の表裏の面と同一面上に形成されている。
溶接金属3においても、母材10の開先面11及び12、母材20の開先面21及び22が厚さ方向となす角度φが、45°以上である。
図14は、溶接継手3の製造方法の一例を示すフロー図である。この製造方法は、図4の製造方法における打撃跡を形成する工程(ステップS3)の前に、溶接金属を研削する工程(ステップS4)を備えている。すなわち、この製造方法では、溶接金属を形成した後、溶接金属の余盛りをグラインダー等で研削して除去する。
溶接金属の余盛りを除去することで、形状に起因する応力集中を緩和することができる。
溶接継手3のように溶接金属の余盛りを除去した場合であっても、疲労亀裂の進展経路を母材にして、疲労亀裂進展寿命を延ばすことが有効である。溶接継手3の構成によれば、開先面11、12、21、及び22が厚さ方向となす角度φが45°以上である。この構成によって、疲労亀裂の進展経路を母材にすることができる。
溶接継手3の場合も、開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度が、一部又は全部異なっていてもよい。開先面11、12、21、及び22の各々が厚さ方向となす角度が、いずれも45°以上であれば、すべての溶接止端からの疲労亀裂の進展経路を母材にすることができる。また、溶接継手2のように、母材10及び20が、多段階に形成された開先面を有していてもよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
板厚20mmの鋼板(JIS規格G3127に準拠するSL7N590及びSL9N590)に様々な形状の開先を形成し、突き合わせ溶接継手を製作した。溶接方法は被覆アーク溶接とし、オーステナイト系70%ニッケル溶接材料(JIS規格Z3225に準拠するD9Ni−1)からなる直径4mmの溶接棒を使用し、電圧25V、電流130A、入熱11〜18kJ/cmの多層盛りとした。一部の溶接継手では、グラインダーを用いて余盛りを平滑に研削し、母材の表裏の面と余盛り研削面とを概略同一平面上とした。
各溶接継手から、試験片の長手方向が溶接線とほぼ直行するように、評価部の長さが80mm、評価部の幅が50mm、掴み部の幅が80mm、長手方向の全長が500mmの板状の疲労試験片を採取した。試験片は、評価部の中央が突き合わせ溶接部となるようにした。
各試験片の母材と溶接金属との境界線上に、UITによるピーニングを施した。振動周波数は27kHz、仕事率は1kWとした。振動端子の先端形状を変えて、複数水準の曲率半径の打撃跡を形成した。打撃跡の曲率半径及び深さは、印象材で型取りして測定した。
疲労試験は、油圧サーボ疲労試験機を用いて、室温・大気中で軸力制御の疲労試験を行った。波形は正弦波、周波数10Hz、公称応力範囲200MPa、応力比0.1とし、試験片が破断・分離するまでの疲労寿命Nを評価した。疲労試験終了、疲労亀裂進展経路を目視で確認した。
結果を表1及び図15に示す。
Figure 0006819432
実施例1〜9の溶接継手は、母材の表裏の面と隣接する開先面が厚さ方向となす角度φが45°以上であった。実施例1〜9の溶接継手の疲労亀裂進展経路は、いずれも母材であった。
実施例1〜5及び8の溶接継手は、母材と溶接金属との境界線上に曲率半径が10mm以下である打撃跡が形成され、かつ、母材の表裏の面と隣接する開先面が厚さ方向となす角度φが45°以上であった。これらの実施例(実施例1〜5及び8)の溶接継手は、良好な疲労寿命を示した。さらに、実施例1〜5の溶接継手は、母材と溶接金属との境界線上に曲率半径が2mm以上10mm以下、深さが1.0mm以下である打撃跡が形成されており、5×10サイクル後も破断せず、良好な疲労寿命を示した。
実施例6及び7の溶接継手は、疲労寿命は比較例と同等であるが、疲労亀裂進展経路が母材である。よって、母材が疲労特性に優れる鋼材であれば、同等のピーニングが施された溶接継手よりも良好な疲労寿命を示すことができる。
比較例10〜15の溶接継手では、いずれもフュージョンラインに沿って疲労亀裂が進展していた。これは、角度φが小さすぎたためと考えられる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示にすぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
本発明によれば、溶接金属が母材よりも柔らかいアンダーマッチ継手の疲労亀裂進展寿命を延ばすことができる。本発明による溶接継手は、例えば、船舶に搭載するLNGタンク用の溶接継手として好適に用いることができる。本発明による溶接継手は、LNG燃料船の燃料貯蔵タンク用の溶接継手として、特に好適に用いることができる
1,1A,1B,1C,2,3,9,9A,9B,9C 溶接継手
10,20 母材
11,12,13,14,21,22,23,24 開先面
30,50 溶接金属
41,42,43,44 打撃跡

Claims (10)

  1. 複数の開先面を有する第1の母材と、
    複数の開先面を有する第2の母材と、
    前記第1の母材及び前記第2の母材の前記複数の開先面を覆って形成された、前記第1の母材及び前記第2の母材の硬さよりも小さい硬さを有する溶接金属とを備え、
    前記第1の母材及び前記第2の母材の各々は、当該母材の表裏の面の一方に隣接する第1の開先面、及び当該母材の表裏の面の他方に隣接する第2の開先面を含み、前記第1の開先面及び前記第2の開先面は、当該母材の厚さ方向となす角度が45°以上である、溶接継手。
  2. 請求項1に記載の溶接継手であって、
    前記第1の母材と前記溶接金属との境界線上、及び前記第2の母材と前記溶接金属との境界線上に打撃跡を有し、
    前記打撃跡の各々は、曲率半径が10mm以下である、溶接継手。
  3. 請求項1又は2に記載の溶接継手であって、
    前記溶接金属は、表面が前記第1の母材及び前記第2の母材の表裏の面と同一面上に形成されている、溶接継手。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶接継手であって、
    前記第1の母材及び前記第2の母材の少なくとも一方は、前記第1の開先面又は前記第2の開先面に隣接した第3の開先面をさらに含む、溶接継手。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶接継手であって、
    前記第1の母材及び前記第2の母材の各々は、前記第1の開先面と前記第2の開先面とが隣接している、溶接継手。
  6. 各々が複数の開先面を有する第1の母材及び第2の母材を準備する工程と、
    前記第1の母材及び前記第2の母材の前記複数の開先面を覆って、前記第1の母材及び前記第2の母材の硬さよりも小さい硬さを有する溶接金属を形成する工程とを備え、
    前記第1の母材及び前記第2の母材の各々は、当該母材の表裏の面の一方に隣接する第1の開先面、及び当該母材の表裏の面の他方に隣接する第2の開先面を含み、前記第1の開先面及び前記第2の開先面は、当該母材の厚さ方向となす角度が45°以上である、溶接継手の製造方法。
  7. 請求項6に記載の溶接継手の製造方法であって、
    前記第1の母材と前記溶接金属との境界線上、及び前記第2の母材と前記溶接金属との境界線上に打撃跡を形成する工程をさらに備え、
    前記打撃跡を形成する工程は、曲率半径が10mm以下の振動端子を使用してピーニングする、溶接継手の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の溶接継手の製造方法であって、
    前記溶接金属を研削して、表面が前記第1の母材及び前記第2の母材の表裏の面と同一面上なるようにする工程をさらに備える、溶接継手の製造方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法であって、
    前記第1の母材及び前記第2の母材の少なくとも一方は、前記第1の開先面又は前記第2の開先面に隣接した第3の開先面をさらに含む、溶接継手の製造方法。
  10. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法であって、
    前記第1の母材及び前記第2の母材の各々は、前記第1の開先面と前記第2の開先面とが隣接している、溶接継手の製造法方法。
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