JP2022086780A - 重ねすみ肉溶接継手、自動車部品、及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法 - Google Patents

重ねすみ肉溶接継手、自動車部品、及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法 Download PDF

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和貴 松田
Kazutaka Matsuda
巧 爲實
Takumi Tamezane
真二 児玉
Shinji Kodama
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Abstract

【課題】止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できる重ねすみ肉溶接継手、自動車部品、及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係る重ねすみ肉溶接継手は、厚さtHの上板と、前記上板に重ねられた、厚さtLの下板と、前記上板の端面と、前記下板の前記上板側の表面とを接合する溶接金属と、を備える重ねすみ肉溶接継手であって、溶接線に垂直な断面で測定される止端角度が、0度超30度未満であり、前記溶接線に垂直な前記断面で測定される溶け込み幅が、2.50×tL以上であり、前記上板と前記下板との重ね面が、前記下板の端部において未溶着部を有し、前記溶接線に垂直な前記断面で測定されるルートと前記溶接金属の表面との間の最短距離が、tH以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、重ねすみ肉溶接継手、自動車部品、及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法に関する。
一般的に、薄板の重ねすみ肉溶接継手では、溶接止端に引張応力が生じるような構造設計がなされる。従って、従来の重ねすみ肉溶接継手においては、止端の疲労強度が重要視されてきた。一方、近年では、重ねすみ肉溶接継手のルートからの疲労亀裂発生に対する懸念が大きくなっている。そのため、止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できる重ねすみ肉溶接継手が求められている。
重ねすみ肉溶接継手に関する従来の技術として、例えば以下に挙げるものがある。
特許文献1には、互いに重ねられた表側の金属板と裏側の金属板とを重ねすみ肉溶接するに際し、表側の金属板と裏側の金属板との互いの接合面が表側の金属板の端面から奥側に向かって溶着されるよう、表側の金属板の端面に高密度エネルギービームを照射するようにしたことを特徴とする金属板同士の重ねすみ肉溶接方法が開示されている。
特許文献2には、第1被溶接部材の平面部に第2被溶接部材の端面部を接触させてT字形状に組み合わせ、前記各被溶接部材の隅部に対して片側から1パスでレーザ溶接及びアーク溶接を行うT字継手の溶接方法であって、レーザ溶接の溶接条件としてのレーザ出力を1~6kWに設定すると共に、レーザビーム角及び前記第2被溶接部材の板厚に基づいてレーザ狙い位置を設定する、ことを特徴とするT字継手の溶接方法が開示されている。
特許文献3には、下板にすみ肉溶接する上板の溶接端面における前記上板の厚み中間部から上方の位置にレーザビームの光軸を合わせ、且つ前記下板の平面に対し前記レーザビームの光軸を約30度から60度の照射角度に保持してプラズマ生成ガス雰囲気中で溶接することを特徴とするレーザによるノン・フィラーすみ肉溶接方法が開示されている。
特許文献4には、2枚の鋼板を、上板となる鋼板の端部が下板となる鋼板の表面に位置するように重ね、該上板の端面に沿って該上板と該下板を溶接してなる鋼板の重ねすみ肉アーク溶接継手において、上板端面と下板の上板側表面が溶接金属を介して接続され、また下板端面と上板の下板側表面も前記溶接金属を介して接続されていることを特徴とする鋼板の重ねすみ肉溶接継手が開示されている。
しかしながら、これら特許文献に記載の技術のいずれも、重ねすみ肉溶接継手のルートの疲労亀裂発生について考慮しておらず、また、そのための特段の構成を有していない。
特開2003-1454号公報 特開2011-36883号公報 特開平4-270084号公報 特開2012-183542号公報
本発明は、止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できる重ねすみ肉溶接継手、自動車部品、及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る重ねすみ肉溶接継手は、厚さtの上板と、前記上板に重ねられた、厚さtの下板と、前記上板の端面と、前記下板の前記上板側の表面とを接合する溶接金属と、を備える重ねすみ肉溶接継手であって、溶接線に垂直な断面で測定される止端角度が、0度超30度未満であり、前記溶接線に垂直な前記断面で測定される溶け込み幅が、2.50×t以上であり、前記上板と前記下板との重ね面が、前記下板の端部において未溶着部を有し、前記溶接線に垂直な前記断面で測定されるルートと前記溶接金属の表面との間の最短距離が、t以上である。
(2)上記(1)に記載の重ねすみ肉溶接継手では、前記上板の前記厚さt、及び前記下板の前記厚さtの一方又は両方が、0.8~4.0mmであってもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の重ねすみ肉溶接継手では、前記溶接線に垂直な前記断面で測定される前記未溶着部の幅が、0.3×t以上であってもよい。
(4)本発明の別の態様に係る自動車部品は、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の重ねすみ肉溶接継手を備える。
(5)本発明の別の態様に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法は、厚さtの上板と、厚さtの下板とを重ね合わせる工程と、前記上板の端面と、前記下板の前記上板側の表面とをレーザ溶接する工程と、前記レーザ溶接の後に、前記上板の前記端面と、前記下板の前記上板側の前記表面とをガスシールドアーク溶接する工程と、を備え、前記レーザ溶接におけるレーザ入射角を10~30度とし、前記ガスシールドアーク溶接におけるトーチの傾斜角を45~70度とし、前記レーザ溶接におけるレーザ溶接出力P(W)及びレーザ溶接速度V(mm/s)、前記ガスシールドアーク溶接における電流値I(A)、電圧値E(V)及びアーク溶接速度V(mm/s)、並びに前記下板の前記厚さt(mm)から算出される(I×E)/(V×t)+P/(V×t)を0.100~0.250kJ/mmとし、前記ガスシールドアーク溶接の入熱量に対する前記レーザ溶接の入熱量の比P/(I×E)を0.8~4.5とし、前記上板と前記下板との重ね面における、前記下板の端部に未溶着部を設ける。
(6)上記(5)に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、前記レーザ溶接及び前記ガスシールドアーク溶接を、レーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接としてもよい。
(7)上記(6)に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、前記ガスシールドアーク溶接における前記トーチの前進角を20度以下とし、前記レーザ溶接におけるレーザ溶接ヘッドの後退角を30度以下としてもよい。
(8)上記(6)又は(7)に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、前記レーザ溶接の狙い位置を、前記上板の前記端面における、板厚中心と、前記下板側の端との間の領域としてもよい。
(9)本発明の別の態様に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、厚さtの上板と、厚さtの下板とを重ね合わせる工程と、前記上板の端面と、前記下板の前記上板側の表面とをガスシールドアーク溶接する工程と、を備える重ねすみ肉溶接継手の製造方法であって、前記ガスシールドアーク溶接の電流値I(A)、電圧値E(V)、及びアーク溶接速度V(mm/s)、並びに前記上板の前記厚さt(mm)から算出される(I×E)/(V×t)を0.200~0.300(kJ/mm)とし、溶接線に垂直な断面における前記下板の前記上板側の表面に沿う方向において、前記上板から離れる方向を正の値とした、前記ガスシールドアーク溶接の狙い位置と、前記上板の前記端面の前記下板側の端との間隔を、-0.20×t~-0.70×tの範囲内とし、前記上板と前記下板との重ね面における、前記下板の端部に未溶着部を設ける。
本発明によれば、止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できる重ねすみ肉溶接継手、自動車部品、及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法を提供することができる。
本発明の一態様に係る重ねすみ肉溶接継手の、溶接線に垂直な断面の模式図である。 未溶着部を有しない重ねすみ肉溶接継手の、溶接線に垂直な断面の模式図である。 未溶着部を有しない重ねすみ肉溶接継手に、上板側に凸の変形又は下板側に凸の変形が生じたときの様子を示す断面模式図である。 未溶着部を有する重ねすみ肉溶接継手に、上板側に凸の変形又は下板側に凸の変形が生じたときの様子を示す断面模式図である。 繰り返し応力が重ねすみ肉溶接継手に印加された際の、ルートにおける応力範囲の模式図である。 重ねすみ肉溶接継手の止端付近の拡大断面図である。 溶接線に垂直な断面における、レーザ・アークハイブリッド溶接の模式図である。 下板の溶接面に垂直であり、且つ溶接方向に沿う断面における、レーザ・アークハイブリッド溶接の模式図である。 ガスシールドアーク溶接のみで重ねすみ肉溶接継手を製造する際の、ガスシールドアーク溶接の狙い位置を示す断面模式図である。
まず、本実施形態において用いられる用語について、以下に説明する。
本実施形態における重ねすみ肉溶接継手は、すみ肉溶接によって製造された重ね継手と定義される。重ね継手とは、部品がお互いに0度≦α≦5度の角度で平行に置かれ、かつ、お互いに重なっている継手である(JIS Z 3001-1:2018)。すみ肉溶接とは、重ね継手、T継手、角継手などにおいて、開先を設けることなく部材間に三角形状の断面をもつ溶接である(JIS Z 3001-1:2018)。従って、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1の溶接金属13は、すみ肉溶接金属である。
溶接金属は、溶接部の一部で、溶接中に溶融凝固した金属(JIS Z 3001-1:2018)のことである。溶着金属とは、溶加材から溶接部に移行した金属(JIS Z 3001-1:2018)のことであり、溶接金属とは異なる概念である。本実施形態における溶接金属13は、溶接中に溶融凝固した上板11、下板12、及び溶着金属を含むものである。
溶接線とは、ビード又は溶接部を一つの線として表すときの仮想線である(JIS Z 3001-1:2018)。本実施形態における止端角度θWTは、下板12の上板11側の表面から上板11側に0.3mm離れた平行線a及び溶接金属13の表面の交点Xと、下板12側の止端131とがなす直線bと、下板12の上板11側の表面に沿った直線cとがなす狭角と定義される(図6参照)。
止端とは、母材の面と、溶接ビードの表面とが交わる点であり(JIS Z 3001-7:2018)、ここで本実施形態における上板11及び下板12の未溶着部が母材に相当し、溶接金属13が溶接ビードに相当する。従って本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1には、上板11側の止端、及び下板12側の止端が存在する。上述した止端角度θWTは、その定義から明らかなように、下板12側の止端の形状を表すものである。以下、特に断りがない限り、単に「止端131」と記載した場合は下板12側の止端131を示すものとする。
本実施形態における溶け込み幅Wは、溶接線に垂直な断面で測定される、下板12側の止端131と、ルート132との間の距離と定義される(図1参照)。本実施形態におけるルート132は、上板11と下板12との重ね面14における、下板12の上板11側の表面と溶接金属13の表面との交点と定義される。ただし、下板12の端部を超えて溶接金属13が形成され、下板12の上板11側の表面と溶接金属13との境界が存在しない場合(図2参照)は、ルート132は便宜上、上板11と下板12との重ね面14における、下板12の上板11側の表面に沿った仮想線と溶接金属13との交点と定義される。
本実施形態におけるのど厚は、溶接線に垂直な断面で測定される、ルート132と、溶接金属13の表面との間の最短距離と定義される値である。なお、のど厚の定義において「溶接金属13の表面」に、溶接金属13と母材金属との境界は含まれない
本実施形態におけるレーザの入射角θは、溶接線に垂直な面における、レーザ光の光軸と、下板12の上板11側の表面とがなす狭角と定義される。トーチ3の傾斜角θは、溶接線に垂直な面における、トーチ3の中心軸と、下板12の上板11側の表面とがなす狭角と定義される。参考のために、図7に、トーチ3の傾斜角θ及びレーザの入射角θを示す。図7は、上板11及び下板12、並びにレーザ溶接ヘッド2及びトーチ3の、溶接線に垂直な面における模式図である。
本実施形態におけるトーチ3の前進角ψは、下板の溶接面に垂直であり、且つ溶接方向に沿う断面における、トーチ3の中心軸と、下板12の上板11側の表面の法線とがなす角であって、溶接方向と反対方向に傾く場合を正とする角と定義される。本実施形態におけるレーザ溶接ヘッド2の後退角ψは、溶接方向に沿う断面における、レーザ光21の光軸と、下板12の上板11側の表面の法線とがなす角であって、溶接方向に傾く場合を正とする角と定義される。参考のために、図8に、トーチ3の前進角ψ及びレーザ溶接ヘッド2の後退角ψを示す。図8は、上板11及び下板12、並びにレーザ溶接ヘッド2及びトーチ3の、下板12の板面に平行な面における模式図である。
レーザ・アークハイブリッド溶接とは、レーザ光及びアークを同時に照射し、一つの溶融池を形成した状態で行う溶接のことであり、溶接方向に対してレーザ光が先行する場合をレーザ先行と称する(JIS Z 3001-5:2013)。
本実施形態におけるガスシールドアーク溶接の狙い位置32は、トーチ3の中心軸と、下板12の上板11側の表面との交点と定義される。一方、本実施形態におけるレーザ溶接の狙い位置は、レーザ光21の光軸と、上板11の端面との交点と定義される。なお、レーザ光21の光軸と現実の上板11の端面とが交わらない場合(即ち、レーザ光21が下板12に照射される場合)があるが、その際は、レーザ光21の光軸と、上板11の端面を含む仮想面との交点をレーザ溶接の狙い位置とみなす。
次に、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の技術思想について説明する。本発明者らは、重ねすみ肉溶接継手の止端の疲労強度を向上させ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制する手段について鋭意検討を重ねた。そして本発明者らは、以下の知見を得た。
(i)止端131の形状
まず、重ねすみ肉溶接継手1の、下板12側の止端131をなだらかな形状にする必要がある。これにより、下板12側の止端131における応力集中を緩和し、その疲労強度を高めることができる。
(ii)溶け込み幅W
しかしながら、上板11と下板12との重ね面14を開くような応力が重ねすみ肉溶接継手1に作用した際には、止端131の形状をなだらかにした場合であっても、ルート132に応力集中が生じるので、ルート132からの疲労亀裂の発生の恐れがある。そこで本発明者らはさらなる検討を重ね、溶け込み幅Wを通常よりも大きくすることにより、ルート132に生じる応力を低減させられることを見出した。
(iii)未溶着部141
ただし、本発明者らが一層の検討を重ねたところ、大きい溶け込み幅Wを有する重ねすみ肉溶接継手1においてもルート132における疲労亀裂が発生しうることが判明した。そして本発明者らは、図2に示されるように下板12の端部を超えて溶接金属13が形成された場合に、ルート132からの疲労亀裂が発生しやすいことを知見した。そして、上板11と下板12との重ね面14において、下板12の端部に未溶着部141を設けることで、ルート132からの疲労亀裂を一層効果的に抑制可能であることを本発明者らは知見した。
未溶着部141がルート132からの疲労亀裂を一層効果的に抑制可能である理由は、以下の通り推定される。
ルート132に応力が印加されるのは、下板12側に凸の変形が重ねすみ肉溶接継手1に生じた場合、及び、上板11側に凸の変形が重ねすみ肉溶接継手1に生じた場合である。下板12側に凸の変形は、重ね面14を開口させ、上板11側に凸の変形は、重ね面14を閉口させる。上板11側に凸の変形と、下板12側に凸の変形とが、繰り返されることで、ルート132を起点として疲労破壊が惹起される場合がある。
下板12側に凸の変形に対しては、未溶着部141が設けられない重ねすみ肉溶接継手1の方が有利であると考えられる。未溶着部141の端部(即ちルート132)において高い応力集中が生じるからである(図3及び図4の左側模式図参照)。一方、上板11側に凸の変形に対しては、未溶着部141が設けられた重ねすみ肉溶接継手1の方が有利であると考えられる。未溶着部141が接触し圧縮応力を分散させるので、ルート132における応力集中が緩和される(図3及び図4の右側模式図参照)。
ここで本発明者らが、ルート132における応力を推定するシミュレーションを行ったところ、未溶着部141が設けられた重ねすみ肉溶接継手1におけるルート132の応力範囲が、未溶着部141が設けられない重ねすみ肉溶接継手1におけるそれよりも小さいことが判明した。応力範囲とは、上板11側に凸の変形が生じたときにルート132に生じる最大圧縮応力(負の値)と、下板12側に凸の変形が生じたときにルート132に生じる最大引張応力(正の値)との差である。なお、ルート132を開く方向の応力を正の応力とみなし、ルート132を閉じる方向の応力を負の応力とみなす。
図5に、繰り返し応力が重ねすみ肉溶接継手1に印加された際の、ルート132における応力範囲の模式図を示す。図5の模式図において、横軸は経過時間であり、縦軸は応力(ルート132を開く方向の応力を正の応力とみなし、ルート132を閉じる方向の応力を負の応力とみなす)である。従って、図5の模式図は、繰り返し応力が重ねすみ肉溶接継手1に印加された際の、ルート132における応力の経時変化を示している。なお、破線で示された曲線が、重ね面が残っている(即ち未溶着部がある)重ねすみ肉溶接継手における応力の経時変化を示し、実線で示された曲線が、重ね面が全て溶融された(即ち未溶着部がない)重ねすみ肉溶接継手における応力の経時変化を示す。上述の応力範囲は、応力変化を示すグラフの上下方向の幅(山と谷との高低差)に等しい。
図5に示されるように、未溶着部141を有する重ねすみ肉溶接継手1では、未溶着部141を有しない重ねすみ肉溶接継手1と比較して、正の応力が大きいが、負の応力が顕著に小さい。そのため、未溶着部141を有する重ねすみ肉溶接継手1の応力範囲は、未溶着部141を有しない重ねすみ肉溶接継手1のそれよりも小さい。その結果、正の応力と負の応力とが交互に生じる繰り返し応力印加環境では、未溶着部141を有する重ねすみ肉溶接継手1は、未溶着部141を有しないものよりも、ルート132における疲労亀裂を効果的に抑制できるものと推定される。
(iv)のど厚
また、止端131の形状、溶け込み幅W、及び未溶着部141を好ましく制御することに加え、十分な量の溶着金属を溶接部に供給して、のど厚を確保することが必要である。のど厚が不足した場合、溶接金属13に生じる応力が増加し、静的強度及び疲労強度が共に低下する恐れがある。
以上の知見により得られた、本発明の一態様に係る重ねすみ肉溶接継手1は、図1に示されるように、厚さtの上板11と、上板11に重ねられた、厚さtの下板12と、上板11の端面及び下板12の上板11側の表面を接合する溶接金属13と、を備え、溶接線に垂直な断面で測定される止端角度θWTが、0度超30度未満であり、溶接線に垂直な断面で測定される溶け込み幅Wが、2.50×t以上であり、上板11と下板12との重ね面14が、下板12の端部において未溶着部141を有し、溶接線に垂直な断面で測定されるルート132と溶接金属13の表面との間の最短距離が、t以上である。以下、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1を詳細に説明する。
本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1は、上板11と、上板11に重ねられた下板12と、上板11の端面および下板12の上板11側の表面を接合する溶接金属13とを備える。
上板11及び下板12の種類は、特に限定されず、重ねすみ肉溶接継手1の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、上板11及び下板12を、繰り返し変位が印加される機械構造部品の材質として用いられる高強度鋼板とすることが好ましい。具体的には、上板11及び下板12の一方又は両方を、引張強さ780MPa級、980MPa級、又は1180MPa級の熱延鋼板としても良い。上板11及び下板12の種類が同一であっても良いし、溶接が可能な範囲内で異なっていても良い。上板11及び下板12の一方又は両方が、亜鉛系めっき、アルミニウム系めっき等を有しても良い。また、重ねすみ肉溶接の完了後に、上板11及び下板12の表面に化成処理皮膜、及び塗装皮膜などを配しても良い。あるいは、上板11及び下板12の表面にショットブラスト等のブラスト処理を実施しても良い。
上板11の厚さt、及び下板12の厚さtも、特に限定されず、重ねすみ肉溶接継手1の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手を自動車部品に適用する場合、上板11の厚さt、及び下板12の厚さtの一方又は両方が、0.8~4.0mmであることが好ましい。上板11の厚さt、及び下板12の厚さtを1.0mm以上、1.2mm以上、または1.8mm以上としても良い。上板11の厚さt、及び下板12の厚さtを3.5mm以下、3.2mm以下、または2.9mm以下としても良い。上板11及び下板12の厚さは同一であっても良いし、異なっていても良い。
溶接金属13の成分も、特に限定されず、上板11及び下板12の成分などに応じて適宜選択することができる。溶接金属13の表面に、ショットブラスト等の各種ブラスト処理を施してもよいし、亜鉛系めっき、アルミニウム系めっき、化成処理皮膜、及び塗装皮膜などを配しても良い。
(i)止端131の形状
本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1では、溶接線に垂直な断面で測定される止端角度θWTが、0度超30度未満とされる。止端角度θWTが30度以上になると、止端131における応力集中が過剰となり、止端131の疲労強度が不足する。そのため、止端角度θWTを30度未満とする。止端角度θWTを28度以下、25度以下、22度以下、または20度以下としても良い。
止端131がなだらかであるほど、その疲労強度が高められる。そのため、止端角度θWTの下限値は特に限定されず、0度超とすれば良い。一方、止端角度θWTを5度以上、8度以上、又は10度以上としても良い。
(ii)溶け込み幅W
本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1では、溶接線に垂直な断面で測定される溶け込み幅Wが、2.50×t以上とされる。上板11と下板12との重ね面14を開くような応力が重ねすみ肉溶接継手1に作用した際には、ルート132に応力集中が生じるので、ルート132からの疲労亀裂の発生の恐れがある。ここで、溶け込み幅Wを大きくすること、具体的には下板の厚さtの2.50倍以上とすることにより、ルート132に生じる応力を低減し、疲労亀裂の発生を抑制することができる。溶け込み幅Wを、下板の厚さtの2.80倍以上、3.00倍以上、又は3.50倍以上としても良い。
一方、溶け込み幅Wが過剰であると、後述する未溶着部141の確保が困難となる。しかしながら、未溶着部141が下板12の端部に設けられる限り、溶け込み幅Wが大きいほど継手強度が高められるので好ましい。そのため、溶け込み幅Wの上限は限定されない。ただし、溶け込み幅Wを、下板の厚さtの6.0倍以下、5.5倍以下、又は5.0倍以下と規定しても良い。
(iii)未溶着部141
本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1では、上板11と下板12との重ね面14が、下板12の端部において未溶着部141を有する。これにより、ルート132からの疲労亀裂を一層効果的に抑制可能である。未溶着部141がルート132からの疲労亀裂を一層効果的に抑制可能である理由は上述したように、未溶着部141を設けることによりルート132における応力範囲が減少し(図5参照)、繰り返し応力印加環境におけるルート132への負荷が抑制されるからであると推定される。
溶接線に垂直な断面で測定される未溶着部141の幅wは、0mm超である限り、特に限定されない。ルート132が閉口する載荷が加わった時に、ルート132に近い位置ほど未溶着部141が接触する圧力は大きくなる。そのため、僅かでも未溶着部141が存在すれば圧縮応力を低減する効果が享受できる。強いて言えば、未溶着部141の幅wを0.3t以上、0.4t以上、又は0.5t以上としても良い。
一方、未溶着部141の幅wが小さいほど、重ね代が小さくなり、重ねすみ肉溶接継手1の重量を減少させることができる。例えば、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1を自動車部品に適用した場合、未溶着部141の幅wが小さいほど、自動車部品の重量が減少し、自動車の燃費が向上するので好ましい。以上の理由により、重ね代を20mm以下、15mm以下、又は10mm以下とすることが好ましい。未溶着部141の幅wの上限値は、溶接前の重ね代を好ましい範囲内とし、且つ上述の所定の溶け込み幅Wを確保できる範囲内で、適宜選択することができる。
(iv)のど厚
本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1では、溶接線に垂直な断面で測定されるルート132と溶接金属13の表面との間の最短距離(のど厚)が、t以上である。tは、上述したように、上板11の厚さである。図1には、ルート132を中心とした、半径tの円弧が記載されている。溶接金属13の表面全てがこの円弧の外側にある重ねすみ肉溶接継手1では、t以上ののど厚が確保されている。
十分な量の溶着金属を溶接部に供給して、のど厚をt以上とすることにより、重ねすみ肉溶接継手1の静的強度と疲労強度を確保することができる。のど厚が大きいほど、溶接金属が受け持つことができる応力が大きくなるので、のど厚を1.1×t以上、1.2×t以上、又は1.3×t以上としても良い。ただし、のど厚が過剰である場合、上板11側の止端において応力集中が著しくなる恐れがある。そのため、のど厚を1.6×t以下、1.5×t以下、又は1.4×t以下としても良い。
なお、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1においては、溶接ビードの全長にわたって上述の諸要件が満たされる必要はない。例えば、1つの重ねすみ肉溶接継手1において、特に強度が要求される箇所に上述の構成を適用し、その他の箇所に通常の構成を適用しても良い。従って、溶接ビードの一部において上述の諸要件が満たされる重ねすみ肉溶接継手は、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1とみなされる。
次に、本発明の別の態様に係る自動車部品について説明する。本発明の別の態様に係る自動車部品は、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1を備える。これにより、本実施形態に係る自動車部品は、止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できる。自動車部品とは、例えばフロントロアアーム、及びサスペンションメンバー(サブフレーム)などである。ただし、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1の用途は特に限定されず、種々の機械構造部品などに適用可能である。
次に、本発明の別の態様に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法について説明する。この製造方法によれば、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手を好適に得ることができる。ただし、以下の記載は、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の範囲を限定するものではない。即ち、上述の要件を満たす重ねすみ肉溶接継手は、その製造方法にかかわらず、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手であるとみなされる。以下に説明する製造方法は、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の好適な製造方法の一例である。
本発明の別の態様に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法は、厚さtの上板11と、厚さtの下板12とを重ね合わせる工程と、上板11の端面及び下板12の上板11側の表面をレーザ溶接する工程と、このレーザ溶接の後に、上板11の端面及び下板12の上板11側の表面をガスシールドアーク溶接する工程と、を備え、レーザ溶接におけるレーザ入射角θを10~30度とし、ガスシールドアーク溶接におけるトーチ3の傾斜角θを45~70度とし、レーザ溶接におけるレーザ溶接出力P(W)及びレーザ溶接速度V(mm/s)、ガスシールドアーク溶接における電流値I(A)、電圧値E(V)及びアーク溶接速度V(mm/s)、並びに下板12の厚さtから算出される(I×E)/(V×t)+P/(V×t)を0.100~0.250kJ/mmとし、ガスシールドアーク溶接の入熱量に対するレーザ溶接の入熱量の比P/(I×E)を0.8~4.5とし、上板11と下板12との重ね面14における、下板12の端部に未溶着部141を設ける。
まず、厚さtの上板11と、厚さtの下板12とを重ね合わせる。上板11及び下板12は、上述の通り特に限定されない。重ね合わせの際に、重ね代(溶接線に垂直な方向で測定される重ね面14の幅)を決定しても良い。本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、上板11と下板12との重ね面14における、下板12の端部に未溶着部141を設ける。重ね代を大きくすることにより、未溶着部141を確保することができる。
ただし、重ね代が小さいほど、重ねすみ肉溶接継手1の重量が小さくなるので好ましい。例えば、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1を自動車部品に適用した場合、重ね代が小さいほど、自動車部品の重量が減少し、自動車の燃費が向上するので好ましい。従って、後述するレーザ溶接及びガスシールドアーク溶接の溶接条件に応じて、未溶着部141を確保するために必要な重ね代を適宜選択することが好ましい。例えば、重ね代を、上板11及び下板12の合計板厚の3倍以下(即ち、3.0×(t+t)以下)と既定してもよい。
次に、上板11の端面と、下板12の上板11側の表面とをレーザ溶接する。ここで、レーザの入射角θを30度以下とすることで、上板11及び下板12の深部まで及ぶ溶融池を生成し、広い溶け込み幅Wを確保することができる。ただし、レーザの入射角θが10度未満であると、狙い位置の僅かなずれによりレーザ照射点が大きく変化するので、安定して溶接することが困難となる。従って、レーザ溶接におけるレーザの入射角θを10~30度とする。
さらに、上板11の端面と、下板12の上板11側の表面とをガスシールドアーク溶接する。なお、ガスシールドアーク溶接の際に、上板11の端面及び下板12の上板11側の表面がレーザ溶接によって溶融池又は溶接金属になっていることがある。この場合、上板11の端面に対応する箇所、及び下板12の上板11側の表面に対応する箇所の間にすみ肉を形成するガスシールドアーク溶接は、上板11の端面と、下板12の上板11側の表面とをガスシールドアーク溶接するものとみなす。
ガスシールドアーク溶接により、溶加材31から、上板11の端面及び下板12の上板11側の表面がなす窪みに、溶着金属を移行させる。ここで、トーチ3の傾斜角θを45度以上とすることにより、溶接金属13ののど厚を確保することができる。また、トーチ3の傾斜角θを70度以下とすることにより、止端131の形状を滑らかにすることができる。従って、ガスシールドアーク溶接におけるトーチ3の傾斜角θを45~70度とする。
ガスシールドアーク溶接は、レーザ溶接の後で行う必要がある。ガスシールドアーク溶接の後でレーザ溶接をすると、溶加材31から溶接部に移行した溶着金属が、上板11及び下板12の深部まで及ぶ溶融池を生成することを妨げるからである。また、ガスシールドアーク溶接における溶加材31の種類は特に限定されず、上板11及び下板12の成分に応じて適宜選択することができる。
本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、レーザ溶接条件及びガスシールドアーク溶接条件が、下記の要件(a)及び(b)を満たす。
(a)レーザ溶接におけるレーザ溶接出力P(W)及びレーザ溶接速度V(mm/s)、ガスシールドアーク溶接における電流値I(A)、電圧値E(V)及びアーク溶接速度V(mm/s)、並びに下板12の厚さtから算出される(I×E)/(V×t)+P/(V×t)を0.100~0.250kJ/mmとする。
(b)ガスシールドアーク溶接の入熱量に対するレーザ溶接の入熱量の比P/(I×E)を0.8~4.5とする。
(I×E)/(V×t)+P/(V×t)は、レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接の合計入熱量を規定するために設けられた指数である。P/(I×E)は、レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接の入熱量の配分を規定するために設けられた指数である。これら両方の指数を、上述の範囲内とすることにより、レーザ溶接に起因する幅広い溶け込み、並びにガスシールドアーク溶接に起因する滑らかな止端131及び大きなのど厚の全てを兼備する溶接金属13を得ることができる。
要件(a)及び(b)が満たされる限り、溶接条件は特に限定されない。好ましい溶接条件を例示すると、以下の通りである。ガスシールドアーク溶接における電流値Iは、50~250Aの範囲内としても良い。ガスシールドアーク溶接における電圧値Eは、18~35Vの範囲内としても良い。ガスシールドアーク溶接におけるアーク溶接速度Vは、0.5~3.0m/minの範囲内としても良い。レーザ溶接におけるレーザ溶接出力Pは、4~10kWの範囲内としても良い。レーザ溶接におけるレーザ溶接速度Vは、0.5~3.0m/minの範囲内としても良い。
本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、好ましくは、レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接を、レーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接とする。レーザ・アークハイブリッド溶接の模式図を、図7に示す。
レーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接においては、ガスシールドアーク溶接をする箇所が予めレーザ溶接によって溶融池とされているので、ガスシールドアーク溶接のアークが安定する。そのため、ガスシールドアーク溶接を単独で行う場合と比べて、レーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接では、アーク溶接速度を大幅に向上させ、重ねすみ肉溶接継手1の製造能率を向上させることができる。なお、通常のレーザ・アークハイブリッド溶接においては、特段の理由がない限り、レーザの入射角θとトーチ3の傾斜角θとを同一とすることが、溶接効率のために最も良いとされる。しかしながら、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法においては、上述のように、レーザの入射角θとトーチ3の傾斜角θとを相違させる必要がある。
レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接を、レーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接とする場合、レーザ溶接ヘッド2とトーチ3との干渉を避けるために、トーチ3の前進角ψ及びレーザ溶接ヘッド2の後退角ψを適宜設定することが好ましい(図8参照)。一方、トーチ3の前進角ψ及びレーザ溶接ヘッド2の後退角ψが大きすぎる場合、溶融池が広くなることによるシールド不良に起因した、気孔欠陥の発生が懸念される。そのため、ガスシールドアーク溶接のトーチ3の前進角ψを20度以下とし、レーザ溶接のレーザ溶接ヘッド2の後退角ψを30度以下とすることが好ましい。
通常の重ね隅肉溶接においては、特段の理由がない限り、上板11の端面と下板12の表面とがなす窪みを狙い位置とすることが、接合強度を確保するために最も良いとされる。一方、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法において、レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接をレーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接とする場合、レーザ溶接の狙い位置を、上板11の端面における、板厚中心と、下板12側の端との間の領域とすることが好ましい。即ち、上板11の端面の下半分の領域内に、レーザ溶接の狙い位置を設定することが好ましい。これにより、所定の溶け込み幅Wを確保することが一層容易となる。一方、ガスシールドアーク溶接の狙い位置32については特に限定されず、通常の重ねすみ肉溶接の条件(例えば上板11の端面と下板12の表面とがなす窪み)を適宜設定すれば良い。
ここまで、レーザ溶接とガスシールドアーク溶接とを併用した重ねすみ肉溶接継手の製造方法について説明したが、ガスシールドアーク溶接のみを用いて、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手を得ることもできる。本発明の別の態様にかかる重ね隅肉溶接継手の製造方法は、厚さtの上板11と、厚さtの下板12とを重ね合わせる工程と、上板11の端面と、下板12の上板11側の表面とをガスシールドアーク溶接する工程と、を備え、ガスシールドアーク溶接の電流値I(A)、電圧値E(V)、及びアーク溶接速度V(mm/s)、並びに上板11の厚さt(mm)から算出されるI×E/(V×t)を0.200~0.300(kJ/mm)とし、溶接線に垂直な断面における下板の上板側の表面に沿う方向において、上板11から離れる方向を正の値とした、ガスシールドアーク溶接の狙い位置32と、上板11の端面の下板12側の端との間隔を、-0.20×t~-0.70×tの範囲内とし、上板と下板との重ね面における、下板の端部に未溶着部を設ける。
まず、厚さtの上板11と、厚さtの下板12とを重ね合わせる。上板11及び下板12は、上述の通り特に限定されない。上述された、レーザ溶接とガスシールドアーク溶接とを組み合わせた重ねすみ肉溶接継手の製造方法と同様に、ガスシールドアーク溶接のみを用いて行われる重ねすみ肉溶接継手の製造方法でも、重ね合わせの際に、後述するガスシールドアーク溶接の溶接条件に応じて、未溶着部141を確保するために必要な重ね代を適宜選択することが好ましい。例えば、重ね代を、上板11及び下板12の合計板厚の3倍以下(即ち、3.0×(t+t)以下)と既定してもよい。
次に、上板11の端面と、下板12の上板11側の表面とをガスシールドアーク溶接する。ガスシールドアーク溶接により、溶加材31から、上板11の端面及び下板12の上板11側の表面がなす窪みに、溶着金属を移行させる。ガスシールドアーク溶接における溶加材31の種類は特に限定されず、上板11及び下板12の成分に応じて適宜選択することができる。
本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、アーク溶接の電流値I(A)、電圧値E(V)、アーク溶接速度V(mm/s)、及び上板11の厚さt(mm)から算出されるI×E/(V×t)を0.200~0.300(kJ/mm)とする。I×E/(V×t)は、ガスシールドアーク溶接の入熱量を規定するために設けられた指数である。
通常のガスシールドアーク溶接による重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、特段の理由がない限り、I×E/(V×t)は0.200kJ/mm未満とされる。I×E/(V×t)を0.200kJ/mm以上にすると、溶融池が下板12を貫通し、溶融金属の溶け落ちが懸念されるからである。また、I×E/(V×t)を0.200kJ/mm未満とした場合でも、十分な量の溶着金属を移行させることができると当業者らには認識されている。しかしながら、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、通常より高い入熱、すなわち高い電流値かつ大きなワイヤ送給量でガスシールドアーク溶接を行い、溶け込み深さ及び溶着金属の移行量を通常より大きくする。これにより、重ねすみ肉溶接継手1において、広い溶け込み幅W及びのど厚を確保することができる。
さらに、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、溶接線に垂直な断面における下板の上板側の表面に沿う方向において、上板11から離れる方向を正の値とした、ガスシールドアーク溶接の狙い位置32と、上板11の端面の下板12側の端との間隔を、-0.20×t~-0.70×tの範囲内とする(図9参照)。図9における水平方向が、「溶接線に垂直な断面における下板の上板側の表面に沿う方向」にあたる。
通常のガスシールドアーク溶接による重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、特段の理由がない限り、ガスシールドアーク溶接の狙い位置32を上板11と下板12との境界付近に設定し、上板11側又は下板12側にアーク、及び溶接金属13が偏らないようにする。しかしながら、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法では、ガスシールドアーク溶接の狙い位置32を上板11側に偏移させる。これにより、溶融池が下板12を貫通し、溶融金属が溶け落ちることを防止する。溶融金属が溶け落ちた場合、空孔が生じ溶接欠陥となる懸念があり、また空孔が生じなかったとしても溶接金属が不足し、所定ののど厚を確保することができない。
なお、いずれの本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法においても、溶接対象となる箇所の全長にわたって上述の諸要件が満たされる必要はない。例えば、1つの重ねすみ肉溶接継手の製造において、特に強度が要求される箇所に上述の溶接条件を適用し、その他の箇所に通常の溶接条件を適用しても良い。従って、溶接対象となる箇所の一部において上述の諸要件が満たされる重ねすみ肉溶接継手の製造方法は、本実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造方法とみなされる。
(実施例1:レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接の併用)
上板と、下板とを重ね合わせる工程と、上板の端面と、下板の上板側の表面とをレーザ溶接する工程と、上板の端面と、下板の上板側の表面とをガスシールドアーク溶接する工程と、を有する重ねすみ肉溶接継手の製造方法によって、種々の重ねすみ肉溶接継手を製造した。ここでは、レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接を、レーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接とした。従って、レーザ溶接速度及びアーク溶接速度は同一の値であった。
表1に、溶接条件を示す。表1において、レーザ溶接速度及びアーク溶接速度を、単に溶接速度Vと表記した。また、表1において、発明範囲外の値には下線を付した(他の表においても同じ)。なお、「(I×E)/(V×t)+P/(V×t)」及び「P/(I×E)」の算出に当たり、表1に記載のレーザ溶接出力(出力P)は、単位がWとなるように換算し、表1に記載の溶接速度Vは、単位がmm/sとなるように換算した。条件1は、レーザ溶接を行わない通常のガスシールドアーク溶接とした。そのため、表1において、条件1のレーザ溶接の出力Pは「0」と記載した。
Figure 2022086780000002
表1に記載されていない溶接条件は、以下の通りとした。
・上板及び下板の種類:980MPa級薄鋼板
・上板の厚さt:2.9mm
・下板の厚さt:2.9mm
・溶加材の種類:JIS Z 3312 YGW16相当
・レーザ入射角θ:30度
・トーチ傾斜角θ:60度
・レーザ溶接ヘッドの後退角ψ:30度
・トーチの前進角ψ:15度
・レーザ溶接の狙い位置:上板の板厚中心
・ガスシールドアーク溶接におけるシールドガス:Ar+20%CO
これにより得られた種々の重ねすみ肉溶接継手の止端角度、溶け込み幅、未溶着部の有無、及びのど厚を測定した。これらの値の測定にあたっては、重ねすみ肉溶接継手を、溶接線に垂直な断面で切断及び研磨し、この研磨面をエッチングすることにより溶接金属を現出させた。これら測定値を表2に記載した。なお、溶け込み幅に関しては、溶け込み幅を下板の厚さtで割った値を表2に記載した。のど厚に関しては、上板の厚さt以上である場合に記号「○」を記載し、それ以外の場合には記号「×」を記載した。
さらに、重ねすみ肉溶接継手の疲労強度を測定した。疲労強度は、重ねすみ肉溶接継手から切り出した溶接ビード長さ20mmの疲労試験片に対する疲労試験によって測定した。疲労試験では、載荷の形態を平面曲げ載荷とし、止端位置に作用する応力集中を考慮しない曲げ応力を基準とし、応力比R=-1とした。疲労限は、1,000万回未破断時点とした。破断条件は、曲げモーメントが初期から50%低下した時点とした。条件1の重ねすみ肉溶接継手は、通常のアーク溶接条件によって得られたものである。この条件1の重ねすみ肉溶接継手の疲労強度を基準値として、各試験片の疲労強度比を求め、表2に記載した。10%以上の疲労強度の向上が見られた重ねすみ肉溶接継手を、発明例とみなした。なお、本疲労試験における疲労亀裂の発生懸念箇所は下板側の止端部とルート部の二箇所である。この二箇所のうち疲労強度が低い方から疲労亀裂が発生し、破断に至る。そのため、本疲労試験では、下板側止端部とルート部との双方の疲労強度を向上させなければ、試験片の疲労強度を向上させることができない。換言すると、本疲労試験において高い疲労強度比を示す重ねすみ肉溶接継手は、止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できる重ねすみ肉溶接継手であるといえる。
Figure 2022086780000003
条件1は、レーザ照射が行われず、さらにガスシールドアーク溶接の入熱が通常の範囲内であったものである。そのため、条件1によって得られた溶け込み幅は発明例よりも小さい。
条件2は、ガスシールドアーク溶接の入熱量に対するレーザ溶接の入熱量の比P/(I×E)が不足したもの、即ちレーザ溶接の入熱量が不足したものである。そのため、条件2によって得られた重ねすみ肉溶接継手では、溶け込み幅が不足し、疲労強度が不足した。
条件7は、(I×E)/(V×t)+P/(V×t)が不足したもの、即ち合計入熱量が不足したものである。そのため、条件7によって得られた重ねすみ肉溶接継では、溶け込み幅が不足し、疲労強度が不足した。
条件9は、上板と下板との重ね面における、下板の端部に未溶着部が設けられなかったものである。そのため、条件9によって得られた重ねすみ肉溶接継では、疲労強度が不足した。
条件10は、ガスシールドアーク溶接の入熱量に対するレーザ溶接の入熱量の比P/(I×E)が過剰であったもの、即ちガスシールドアーク溶接の入熱量が不足したものである。そのため、条件10によって得られた重ねすみ肉溶接継では、のど厚が不足し、疲労強度が不足した。
一方、適切な溶接条件によって得られた重ねすみ肉溶接継手は、溶接金属の形状が適切であり、そのため高い疲労強度比を示した。即ち、本発明による重ねすみ肉溶接継手及びその製造方法は、止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できることが確認された。
(実施例2:ガスシールドアーク溶接の単独使用)
上板と、下板とを重ね合わせる工程と、上板の端面と、下板の上板側の表面とをガスシールドアーク溶接する工程と、を有する重ねすみ肉溶接継手の製造方法によって、種々の重ねすみ肉溶接継手を製造した。表3に、溶接条件を示す。なお、ガスシールドアーク溶接の狙い位置と上板の端面の下板側の端との間隔を、上板の厚さtで割った値を、表3の「狙い位置/t」列に記載した。条件1は、通常のガスシールドアーク溶接とした。
Figure 2022086780000004
表3に記載されていない溶接条件は、以下の通りとした。
・上板及び下板の種類:980MPa級薄鋼板
・上板の厚さt:2.9mm
・下板の厚さt:2.9mm
・溶加材の種類:JIS Z 3312 YGW16相当
・トーチ傾斜角θ:60度
・トーチの前進角ψ:0度
・ガスシールドアーク溶接におけるシールドガス:Ar+20%CO
これにより得られた種々の重ねすみ肉溶接継手の止端角度、溶け込み幅、未溶着部の有無、及びのど厚を測定した。さらに、重ねすみ肉溶接継手の疲労強度を測定した。各パラメータの測定方法、及び疲労強度比の合否基準などは、レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接の併用に関する実施例1に準じた。
Figure 2022086780000005
条件1は、ガスシールドアーク溶接の入熱が通常の範囲内であり、かつガスシールドアーク溶接の狙い位置が通常の範囲内であった(即ち、狙い位置が下板側に寄り過ぎていた)ものである。そのため、条件1によって得られた溶け込み幅は発明例よりも小さい。
条件2~5は、ガスシールドアーク溶接の狙い位置が条件1と同じであり、入熱量が不足したものである。これらの条件によって得られた重ねすみ肉溶接継手では、溶け込み幅が不足しており、疲労強度が不足した。
条件6及び7は、入熱量が不足したものである。これらの条件によって得られた重ねすみ肉溶接継手では、溶け込み幅が不足しており、疲労強度が不足した。
条件11は、入熱量が十分であるが、ガスシールドアーク溶接の狙い位置が条件1と同じであったものである。この条件11の溶接では、下板から溶融金属が溶け落ち、のど厚が不足し、疲労強度が不足した。さらに、条件11によって得られた重ねすみ肉溶接継手では、溶け込み幅も不足した。
条件12は、ガスシールドアーク溶接の狙い位置が上板側に寄りすぎていたものである。この条件12の溶接では、溶接金属が盛り上がることにより止端形状を滑らかにすることができず、疲労強度が不足した。
一方、適切な溶接条件によって得られた重ねすみ肉溶接継手は、溶接金属の形状が適切であり、そのため高い疲労強度比を示した。即ち、本発明による重ねすみ肉溶接継手及びその製造方法は、止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できることが確認された。
(実施例3:溶接角度の影響)
上板と、下板とを重ね合わせる工程と、上板の端面と、下板の上板側の表面とをレーザ溶接する工程と、上板の端面と、下板の上板側の表面とをガスシールドアーク溶接する工程と、を有する重ねすみ肉溶接継手の製造方法によって、種々の重ねすみ肉溶接継手を製造した。ここでは、レーザ溶接及びガスシールドアーク溶接を、レーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接とした。ここで、トーチ傾斜角θ、及びレーザ傾斜角θを適宜変更した。一方、その他の溶接条件は、表1及び表2に記載の条件8のものと同一とした。
各溶接条件におけるトーチ傾斜角θ、レーザ傾斜角θ、及び評価結果を表5に示す。
Figure 2022086780000006
条件8-1は、レーザ入射角が大きすぎたものである。そのため、条件8-1によって得られた重ねすみ肉溶接継手では、溶け込み幅が不足し、疲労強度が不足した。
条件8-5は、トーチ傾斜角が小さすぎたものである。そのため、条件8-5によって得られた重ねすみ肉溶接継手では、止端角度が過剰となり、疲労強度が不足した。
一方、適切な溶接角度によって得られた重ねすみ肉溶接継手は、溶接金属の形状が適切であり、そのため高い疲労強度比を示した。
(実施例4:重ね代と未溶着部との関係)
重ね代以外は表1の条件4と同じ溶接条件で、種々の重ねすみ肉溶接継手を製造して、重ね代が未溶着幅に及ぼす影響を調査した。結果を表6に示す。
Figure 2022086780000007
いずれの重ねすみ肉溶接継手においても、必要な疲労強度比を確保することができた。また、重ね代が大きいほど未溶着部の幅が増大することが確認された。
本発明によれば、止端の疲労強度に優れ、さらにルートからの疲労亀裂発生を抑制できる重ねすみ肉溶接継手、自動車部品、及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法を提供することができる。従って、本発明は高い産業上の利用可能性を有する。
1 重ねすみ肉溶接継手
11 上板
12 下板
13 溶接金属
131 止端
132 ルート
14 重ね面
141 未溶着部
2 レーザ溶接ヘッド
21 レーザ光
3 トーチ
31 溶加材
32 ガスシールドアーク溶接の狙い位置
上板の厚さ
下板の厚さ
W 溶け込み幅
w 未溶着部の幅
θWT 止端角度
θ トーチの傾斜角
ψ トーチの前進角
θ レーザの入射角
ψ レーザ溶接ヘッドの後退角

Claims (9)

  1. 厚さtの上板と、
    前記上板に重ねられた、厚さtの下板と、
    前記上板の端面と、前記下板の前記上板側の表面とを接合する溶接金属と、
    を備える重ねすみ肉溶接継手であって、
    溶接線に垂直な断面で測定される止端角度が、0度超30度未満であり、
    前記溶接線に垂直な前記断面で測定される溶け込み幅が、2.50×t以上であり、
    前記上板と前記下板との重ね面が、前記下板の端部において未溶着部を有し、
    前記溶接線に垂直な前記断面で測定されるルートと前記溶接金属の表面との間の最短距離が、t以上である
    重ねすみ肉溶接継手。
  2. 前記上板の前記厚さt、及び前記下板の前記厚さtの一方又は両方が、0.8~4.0mmである
    ことを特徴とする請求項1に記載の重ねすみ肉溶接継手。
  3. 前記溶接線に垂直な前記断面で測定される前記未溶着部の幅が、0.3×t以上である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の重ねすみ肉溶接継手。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の重ねすみ肉溶接継手を備える自動車部品。
  5. 厚さtの上板と、厚さtの下板とを重ね合わせる工程と、
    前記上板の端面と、前記下板の前記上板側の表面とをレーザ溶接する工程と、
    前記レーザ溶接の後に、前記上板の前記端面と、前記下板の前記上板側の前記表面とをガスシールドアーク溶接する工程と、
    を備える重ねすみ肉溶接継手の製造方法であって、
    前記レーザ溶接におけるレーザ入射角を10~30度とし、
    前記ガスシールドアーク溶接におけるトーチの傾斜角を45~70度とし、
    前記レーザ溶接におけるレーザ溶接出力P(W)及びレーザ溶接速度V(mm/s)、前記ガスシールドアーク溶接における電流値I(A)、電圧値E(V)及びアーク溶接速度V(mm/s)、並びに前記下板の前記厚さt(mm)から算出される(I×E)/(V×t)+P/(V×t)を0.100~0.250kJ/mmとし、
    前記ガスシールドアーク溶接の入熱量に対する前記レーザ溶接の入熱量の比P/(I×E)を0.8~4.5とし、
    前記上板と前記下板との重ね面における、前記下板の端部に未溶着部を設ける
    重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
  6. 前記レーザ溶接及び前記ガスシールドアーク溶接を、レーザ先行のレーザ・アークハイブリッド溶接とする
    ことを特徴とする請求項5に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
  7. 前記ガスシールドアーク溶接における前記トーチの前進角を20度以下とし、
    前記レーザ溶接におけるレーザ溶接ヘッドの後退角を30度以下とする
    ことを特徴とする請求項6に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
  8. 前記レーザ溶接の狙い位置を、前記上板の前記端面における、板厚中心と、前記下板側の端との間の領域とする
    ことを特徴とする請求項6又は7に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
  9. 厚さtの上板と、厚さtの下板とを重ね合わせる工程と、
    前記上板の端面と、前記下板の前記上板側の表面とをガスシールドアーク溶接する工程と、
    を備える重ねすみ肉溶接継手の製造方法であって、
    前記ガスシールドアーク溶接の電流値I(A)、電圧値E(V)、及びアーク溶接速度V(mm/s)、並びに前記上板の前記厚さt(mm)から算出される(I×E)/(V×t)を0.200~0.300(kJ/mm)とし、
    溶接線に垂直な断面における前記下板の前記上板側の表面に沿う方向において、前記上板から離れる方向を正の値とした、前記ガスシールドアーク溶接の狙い位置と、前記上板の前記端面の前記下板側の端との間隔を、-0.20×t~-0.70×tの範囲内とし、
    前記上板と前記下板との重ね面における、前記下板の端部に未溶着部を設ける
    重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
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