JP6661496B2 - 電源回路 - Google Patents

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Description

本発明による実施形態は、電源回路に関する。
従来から、電子機器を構成する多くのデバイスに適切な電源電圧を供給するために、スイッチングレギュレータまたはリニアレギュレータを含む電源回路が用いられる。リニアレギュレータは、アンプの電源電圧の変動やアンプに入力される基準電圧の変動(以下、ノイズともいう)を受けた場合、そのようなノイズを低減する性能が求められる。リニアレギュレータのノイズの除去性能を示す指標として、PSRR(Power Supply ripple Rejection Ratio)特性が知られている。PSRR特性は、電源電圧または基準電圧の変動値と出力電圧の変動値との比で表される。PSRRが高いほど電源電圧または基準電圧の変動(ノイズ)に対する出力電圧の変動値は小さくなり、ノイズへの耐性が高くなる。PSRR特性を高めるには、リニアレギュレータの基準電圧源に安定化電源を挿入したり、開ループの周波数特性を調節したり、あるいは、利得を増大する手法が考えられている。しかし、これらの手法では、リニアレギュレータの回路面積が大きくなり、あるいは、消費電流が増加するという問題が発生する。
特開2013−197858号公報
回路面積の増大および消費電流の増大を抑制しつつ、PSRR特性を向上させることができる電源回路を提供する。
本実施形態による電源回路は、電源入力部からの電力を受けて、第1入力部と第2入力部との電圧差に応じた第1電圧を出力する増幅回路を備える。基準電圧回路は、第1入力部へ基準電圧を供給する。帰還回路は、第1電圧に応じた帰還電圧を前記第2入力部へ入力する。容量素子は、電源入力部と第1入力部との間に設けられている。増幅回路の電源電圧変動除去比(PSRRの逆数(1/PSRR)は容量素子を設けない場合に比べ0に近い。
第1実施形態によるリニアレギュレータの構成の一例を示す回路図。 MISキャパシタの構成の一例を示す断面図。 配線容量の構成の一例を示す図。 ノイズの波形を示すグラフ。 第1実施形態によるリニアレギュレータ1のPSRR特性を示すグラフ。 第2実施形態によるリニアレギュレータの構成の一例を示す回路図。 ノイズの波形を示すグラフ。
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
(第1実施形態)
携帯端末等の電子機器を構成するデバイス(例えば、マイコン、センサ、ドライバ等)には、それぞれ適切な電圧で電力(直流電力)を供給する必要がある。電源電圧を所望の電圧に変換するために、スイッチングレギュレータおよび/またはリニアレギュレータ等の電源回路が用いられる。
スイッチングレギュレータは、電力変換効率が良いため、電源電圧を降圧したときに電力損失が少ない。一方、スイッチングレギュレータは、半導体スイッチング素子のスイッチングにより電源電圧にリップル(電圧変動、以下ノイズともいう)を生じさせる場合がある。
リニアレギュレータは、入力電圧と出力電圧との電圧差を熱として放出するため、電力変換効率においてスイッチングレギュレータに劣る場合がある。一方、リニアレギュレータは、スイッチングによるリップルを電源電圧に生じさせないので、ノイズの少ない電力を供給することができる。
従って、電源回路は、電源に近い上流側からスイッチングレギュレータおよびリニアレギュレータの順に接続する場合がある。この場合、電源電圧は、まずスイッチングレギュレータによって効率良く降圧され、その後、リニアレギュレータにおいて各デバイス(負荷)に適したノイズの少ない電源電圧に変換される。これにより、電源回路は、良好な電力変換効率でノイズの少ない電力を負荷に供給することができる。
尚、電源電圧への入力電圧または電源回路からの出力電圧が小さい場合、あるいは、電源回路からの出力電流が少ない場合、スイッチングレギュレータを介すことなく、リニアレギュレータのみで電力を変換してもよい。この場合、供給電力自体が低いため、電力変換効率はあまり問題にならないからである。
このようなリニアレギュレータは、スイッチングレギュレータからの電力あるいは電源からの電力に含まれているノイズを低減する能力が求められる。尚、スイッチングレギュレータからの電力(または電圧)あるいは電源からの電力(または電圧)も、リニアレギュレータにとってはいずれも電源電力(または電源電圧)であるので、以下、まとめて電源電力(または電源電圧)ともいう。電圧に含まれるノイズを除去する能力は、電源電圧変動除去比(PSRR (Power Supply ripple Rejection Ratio))で表される。PSRRは、電源電圧の変動値と出力電圧の変動値との比で表される。PSRRが高いほど、電源電圧の変動(ノイズ)に対して出力電圧の変動が小さくなり、ノイズ除去性能が高くなる。即ち、PSRRが高いリニアレギュレータは、電源ノイズへの耐性が高いと言うことができる。
図1は、第1実施形態によるリニアレギュレータの構成の一例を示す回路図である。リニアレギュレータ1は、増幅回路AMPと、基準電圧回路REFと、帰還回路FBと、第1容量素子CBPとを備えている。
増幅回路AMPは、第1入力部IN1と、第2入力部IN2と、電源入力部INPOWと、出力部OUTとを備えている。増幅回路AMPは、電源入力部INPOWから電源電力を受けて、第1入力部IN1と第2入力部IN2との電圧差に応じた出力電圧(第1電圧)Voを出力部OUTから出力する。第1入力部IN1は、基準電圧回路REFから基準電圧Vを入力し、第2入力部IN2は、帰還回路FBから帰還電圧Vを入力する。これにより、増幅回路AMPは、帰還電圧Vを基準電圧Vに等しくするように出力電圧Voを調節し、調節された出力電圧Voを維持するように機能する。増幅回路AMPは、例えば、半導体基板上に設けられたトランジスタを用いた差動増幅回路でよい。尚、ZAMPは、増幅回路AMPの出力インピーダンスである。
基準電圧回路REFは、電源電圧および温度に依存しない電圧VDCを生成する回路である。基準電圧回路REFは、増幅回路AMPの第1入力部IN1に接続されており、基準電圧Vを第1入力部IN1へ入力する。基準電圧回路REFは、出力インピーダンスZDCを有するので、生成された電圧VDCを基準電圧Vとして第1入力部IN1へ入力する。基準電圧回路REFは、例えば、バンドギャップ型電源回路等でよい。
帰還回路FBは、出力部OUTと第2入力部IN2との間に接続されており、出力電圧に応じた帰還電圧を第2入力部IN2へ帰還させる。帰還回路FBは、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2を含む。第1および第2抵抗素子R1、R2は、出力部OUTと低電圧源GNDとの間に直列接続されている。第1抵抗素子R1は、低電圧源GNDとノードNDとの間に接続されており、第2抵抗素子R2は、ノードNDと出力部OUTとの間に接続されている。ノードNDは、第2入力部IN2に電気的に接続されており、出力電圧Voを第1および第2抵抗素子R1、R2で分圧した帰還電圧Vを第2入力部IN2へ帰還させる。第1および第2抵抗素子R1、R2は、例えば、配線抵抗、拡散層抵抗等でよい。低電圧源GNDは、電源入力部INPOWへの入力電圧VPOWよりも低い電圧源であればよく、例えば、接地電圧源(グランド)でよい。
第1容量素子CBPは、電源入力部INPOWと第1入力部IN1との間に接続されている。第1容量素子CBPは、寄生容量CSN、CSP、CSOによって増幅回路AMPの出力電圧Voに現れるノイズを抑制し、増幅回路AMPの電源電圧変動除去比(PSRR)を向上させるためにバラスト容量として設けられている。第1容量素子CBPは、例えば、MIS(Metal Insulator Semiconductor)キャパシタであってもよく、あるいは、配線容量であってもよい。
図2は、MISキャパシタの構成の一例を示す断面図である。第1容量素子CBPとしてMISキャパシタを用いる場合、第1容量素子CBPは、基板10と、ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)20と、ゲート電極30とを備える。基板10は、例えば、シリコン基板等の半導体基板であり、不純物を導入することによって導電体となっている。ゲート絶縁膜20は、基板10上に設けられており、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁膜でよい。ゲート電極30は、ゲート絶縁膜20上に設けられており、例えば、ポリシリコン、金属等の導電性材料でよい。第1電極としての基板10は、第1入力部IN1に電気的に接続される。第2電極としてのゲート電極30は、電源入力部INPOWに電気的に接続されている。これにより、第1容量素子CBPは、電源入力部INPOWと第1入力部IN1との間の容量として機能する。第1容量素子CBPの容量は、ゲート絶縁膜20の厚み、および/または、ゲート電極30と基板10との対向面積で調節すればよい。尚、ゲート絶縁膜20は、同一基板10上に設けられたMISFETのゲート絶縁膜と同一材料でよい。また、ゲート電極30は、同一基板10上に設けられたMISFETのゲート電極と同一材料でよい。
図3(A)および図3(B)は、配線容量の構成の一例を示す図である。第1容量素子CBPとして配線容量を用いる場合、第1容量素子CBPは、電力配線40と、第1配線50と、絶縁膜(第2絶縁膜)60とを備える。電力配線40は、電源入力部INPOWから増幅回路AMPまでの配線である。例えば、電力配線40は、電源またはスイッチングレギュレータ(図示せず)から入力電力(電源電力)を受けるリニアレギュレータ1の電源端子と増幅回路AMPの電源端子との間の配線でよい。第1配線50は、基準電圧回路REFと第1入力部IN1との間の配線である。電力配線40および第1配線50は、例えば、ポリシリコン、金属等の導電性材料である。絶縁膜60は、電力配線40と第1配線50との間に設けられており、電力配線40と第1配線50とを電気的に絶縁している。絶縁膜60は、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁膜でよい。電力配線40および第1配線50は、互いに略平行に延伸している。これにより、電力配線40、第1配線50および絶縁膜60は、電源入力部INPOWと第1入力部IN1との間の容量として機能する。第1容量素子CBPの容量は、電力配線40と第1配線50との間の距離(絶縁膜60の厚み)、または、互いに略平行に延伸する電力配線40および第1配線50の長さで調節すればよい。
電力配線40および第1配線50は、図3(A)に示すように、直線状に略平行に延伸していてもよく、あるいは、図3(B)に示すように、ジグザグ状に蛇行して、略平行に延伸していてもよい。
尚、図3(A)および図3(B)に示す電力配線40、第1配線50および絶縁膜60は、増幅回路AMPの設けられた基板10の表面に対して略平行方向(横方向)に並んで配列されていてもよく、あるいは、基板10の表面に対して略垂直方向(縦方向)に積層されていてもよい。即ち、電力配線40および第1配線50は、同一レイヤ内に設けられた配線であってもよく、あるいは、積層された配線であってもよい。第1容量素子CBPの容量については後述する。
以上の構成により、本実施形態によるリニアレギュレータ1は、出力部OUTからほぼ一定の出力電圧Voを負荷(図示せず)へ出力するように機能する。
ここで、寄生容量CSN、CSP、CSOについて説明する。
寄生容量CSNは、電源入力部INPOWと第2入力部IN2との間の寄生容量であり、例えば、増幅回路AMPを構成するトランジスタの電極間容量や配線間容量を含む。入力電圧VPOWのノイズは、寄生容量CSNおよび第2抵抗素子R2を介して出力電圧Voに現れる(混入する)場合がある。
寄生容量CSPは、電源入力部INPOWと第1入力部IN1との間の寄生容量であり、例えば、増幅回路AMPを構成するトランジスタの電極間容量や配線間容量を含む。入力電圧VPOWのノイズは、寄生容量CSPおよび基準電圧回路REFの出力インピーダンスZDCによって分圧されて基準電圧Vに混入する場合がある。この場合、入力電圧VPOWのノイズが出力電圧Voに現れる。
寄生容量CSOは、電源入力部INPOWと出力部OUTとの間の寄生容量であり、例えば、増幅回路AMPを構成するトランジスタの電極間容量や配線間容量を含む。入力電圧VPOWのノイズは、寄生容量CSOおよび増幅回路AMP自身の出力インピーダンスZAMPによって分圧されて出力電圧Voに現れる(混入する)場合がある。
このように入力電圧VPOWのノイズは、寄生容量CSN、CSP、CSOを介して出力電圧Voに現れる場合がある。このようなノイズの混入は、リニアレギュレータのノイズ除去特性(即ち、PSRR)を悪化させる原因となる。
出力電圧Voに現れる電源ノイズは、寄生容量CSN、CSP、CSOに由来するノイズの重ね合わせになる。寄生容量CSN、CSP、CSOを介して伝達するノイズの位相は、入力電圧VPOWのノイズの位相から90度進んでいる。
図4(A)〜図4(E)はノイズの波形を示すグラフである。縦軸はノイズ成分(電圧)の大きさを示し、横軸は位相(時間)を示す。図4(A)は、入力電圧VPOWのノイズを示す。図4(B)は、寄生容量CSPを介して伝達された出力部OUTにおけるノイズを示す。図4(C)は、寄生容量CSNを介して伝達された第2入力部IN2および出力部OUTにおけるノイズを示す。図4(C)の破線が第2入力部IN2におけるノイズを示し、実線が出力部OUTにおけるノイズを示す。図4(D)は、寄生容量CSOを介して伝達された出力部OUTにおけるノイズを示す。図4(E)は、第1容量素子CBPを介して伝達された出力部OUTにおけるノイズ(バラスト用ノイズ)を示している。尚、図4(A)〜図4(E)のノイズの波形は、便宜的に理解し易いように描いたものであり、実際のノイズの波形とは異なる場合がある。
入力電圧VPOWのノイズの位相は、容量(CSP、CSN、CSO、CBP)を介して伝達されると90度進む。しかし、ノイズが図1の第2入力部IN2のように反転入力端子に入力される場合、図4(C)で示すように、ノイズの位相は、出力部OUTにおいて180度反転する。即ち、入力電圧VPOWのノイズの位相は、寄生容量CSNによって90度進み、さらに、増幅回路AMPの反転入力(第2入力部IN2)から180度反転して出力部OUTに伝達される。
一方、図4(B)に示すように、第1入力部IN1におけるノイズの位相は、出力部OUTにおいて反転しない。即ち、入力電圧VPOWのノイズの位相は、寄生容量CSPによって90度進んだ状態で出力部OUTに伝達される。また、図4(D)に示すように、寄生容量CSOを介して出力電圧Voに伝達するノイズの位相も、寄生容量CSOによって90度進んだ状態で出力部OUTに伝達される。
このように、寄生容量CSNに依るノイズの位相は、寄生容量CSP、CSOに依るノイズの位相に対して反転している。寄生容量CSP、CSN、CSOによって出力電圧Voに混入するノイズは、図4(B)の曲線、図4(D)の曲線、および、図4(C)の実線曲線の和となるので、寄生容量CSNに依るノイズと寄生容量CSP、CSOに依るノイズとは互いに打ち消し合うように作用する。
通常、寄生容量CSP、CSN、CSOは、意図的に設けられているものではなく、期せずして発生してしまう容量である。従って、寄生容量CSNに依るノイズの絶対値が寄生容量CSP、CSOに依るノイズの絶対値と等しくなって、出力電圧Voのノイズが無くなることは偶然であり極希である。
そこで、本実施形態では、第1容量素子CBPをバラスト容量として意図的に設け、寄生容量CSP、CSN、CSOによって出力電圧Voに混入するノイズを抑制する。例えば、寄生容量CSNによるノイズが寄生容量CSP、CSOによるノイズよりも絶対値として大きい場合、図1に示すように、第1容量素子CBPを電源入力部INPOWと第1入力部IN1との間に接続し寄生容量CSPに対して並列に設ける。これにより、図4(E)に示すバラスト用ノイズ成分が出力電圧Voにさらに付加され、出力電圧Voに混入するノイズの総和が絶対値として抑制される。
例えば、寄生容量CSPおよび第1容量素子CBPによって出力電圧Voに混入するノイズ成分をNVOPとすると、NVOPは、式1で表される。
NVOP=(1+R/R)×NV (式1)
尚、寄生容量CSPおよび第1容量素子CBPによって第1入力部IN1に混入するノイズ成分をNVとする。また、増幅回路AMPにおいて、帰還電圧Vは、基準電圧Vに等しくなっているものとする。
NVは式2で表される。
NV={ZDC/(ZDC+1/(jω(CSP+CBP)))}×VPOW
(式2)
尚、jは複素数である。ωは2πfである。fはノイズの周波数である。
式1および式2より、式3が成立する。
NVOP=(1+R/R)×[{ZDC/(ZDC+1/(jω(CSP+CBP)))}×VPOW] (式3)
尚、NVOPの位相は、寄生容量CSPおよび第1容量素子CBPによってVPOWよりも90度進んでいる。
寄生容量CSNよって第2入力部IN2から出力電圧Voに混入するノイズ成分をNVONとすると、NVONは、式4で表される。
NVON=−R/(1/(jωCSN))×VPOW (式4)
尚、NVONの位相は、上述の通り、VPOWよりも90度遅れた状態(NVOPの位相に対して反転状態)となる。即ち、VPOWが正電圧である場合、NVONは負電圧成分となる。
寄生容量CSOよって増幅回路AMP自体から出力電圧Voに混入するノイズ成分をNVOOとすると、NVOOは、式5で表される。
NVOO={ZAMP/(ZAMP+1/(jωCSO))}×VPOW (式5)
尚、NVOOの位相は、VPOWよりも90度進んでいる。VPOWが正電圧である場合、NVOOは正電圧成分となる。
寄生容量CSP、CSN、CSOおよび第1容量素子CBPにより出力電圧Voに現れるノイズ成分NV(NVOP+NVON+NVOO)は式6で表される。
NV={(1+R/R)ZDC/(ZDC+1/(jω(CSP+CBP)))−R/(1/(jωCSN))+ZAMP/(ZAMP+(1/jωCSO))}×VPOW (式6)
このノイズ成分NVをゼロに近づけるためには、式6の右辺を絶対値としてゼロに近づければよい。PSRRの逆数(1/PSRR)は、式7で表される。
1/PSRR=∂NV/∂VPOW={(1+R/R)ZDC/(ZDC+1/(jω(CSP+CBP)))−R/(1/(jωCSN))+ZAMP/(ZAMP+(1/jωCSO))} (式7)
式7の右辺を絶対値としてゼロに近づけることによって、高いPSRR特性を得ることができる。
ここで、第1容量素子CBPが設けられていない場合、式7の右辺を絶対値としてゼロに近づけるためには、例えば、CSP、CSN、CSO、ZDC、ZAMPのいずれか1つあるいは複数をゼロに近づける手法がある。しかし、このような手法では、上述のように、回路面積の増大あるいは消費電流の増大を招くおそれがある。
そこで、本実施形態では、式7の正成分(入力電圧VPOWと同一極性のノイズ成分)と負成分(入力電圧VPOWと逆極性のノイズ成分)とが等しくなるように、第1容量素子CBPをバラスト容量として設けている。
式7の右辺のうち寄生容量CSP、CSOおよび第1容量素子CBPに関する第1項および第3項は正成分であり、寄生容量CSNに関する第2項が負成分である。ここで、第1実施形態では、第1容量素子CBPが設けられていない場合に、PSRRの逆数(1/PSRR)が0より小さいものとする。この場合、寄生容量CSP、CSOに関する正成分が、寄生容量CSNに関する負成分よりも小さい。従って、寄生容量CSPに対して並列に第1容量素子CBPを設けることによって、実質的に正成分を増大させる。これにより、第1容量素子CBPが設けられていない場合と比べて、本実施形態によるリニアレギュレータ1は、PSRRの逆数(1/PSRR)の絶対値を0に近付けることができる。
このように、本実施形態によるリニアレギュレータ1は、電源入力部INPOWと第1入力部IN1との間に第1容量素子CBPを接続することによって、寄生容量CSN、CSP、CSOによって出力電圧Voに混入するノイズをゼロに近づける(ほぼキャンセルする)ことができる。これにより、リニアレギュレータ1のPSRR特性が向上する。
図5は、第1実施形態によるリニアレギュレータ1のPSRR特性を示すグラフである。このグラフの縦軸は、PSRR(dB)を示す。横軸は、出力電圧Voに混入する電源ノイズの周波数(Hz)を示す。
ラインL0は、第1容量素子CBPを設けていないリニアレギュレータのPSRR特性を示す。ラインL1は、本実施形態による第1容量素子CBPを備えたリニアレギュレータのPSRR特性を示す。
例えば、10Hzの電源ノイズについて参照すると、ラインL1のPSRRは、ラインL0のPSRRよりも約12dBほど高い。従って、本実施形態のように第1容量素子CBPを設けることによって、PSRR特性が大幅に改善することが分かる。
1/PSRRの絶対値を0に近づけるような第1容量素子CBPの容量は、PSRR特性の実測値、統計値、あるいは、シミュレーションによって設定可能である。第1容量素子CBPの容量は、電源ノイズの正成分と負成分とのバランスを取るために設定されるので、非常に小さい容量でよい。例えば、図5のシミュレーションで設定された第1容量素子CBPの容量は、約20fF程度であり、リニアレギュレータ1のレイアウト面積を左程増大させず、エリアペナルティが小さい。従って、本実施形態によるリニアレギュレータ1は、良好なPSRR特性有し、チップサイズを増大させること無く、低コストで製造することができる。また、本実施形態によるリニアレギュレータ1は、出力インピーダンスZAMP、ZDCも変更していないので、消費電流の増大も抑制することができる。
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態によるリニアレギュレータの構成の一例を示す回路図である。第2実施形態によるリニアレギュレータ1は、第2容量素子CBNを備えている。第2容量素子CBNは、電源入力部INPOWと第2入力部IN2との間に接続されている。第2容量素子CBNは、寄生容量CSN、CSP、CSOによって増幅回路AMPの出力電圧Voに現れるノイズを抑制し、増幅回路AMPの電源電圧変動除去比(PSRR)を向上させるためにバラスト容量として設けられている。第2容量素子CBNは、第1容量素子CBPと同様に、例えば、図2または図3に示すMISキャパシタ、あるいは、配線容量でよい。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。
図7(A)〜図7(E)はノイズの波形を示すグラフである。図7(A)は、入力電圧VPOWのノイズを示す。図7(B)は、寄生容量CSPを介して伝達された出力部OUTにおけるノイズを示す。図7(C)は、寄生容量CSNを介して伝達された第2入力部IN2および出力部OUTにおけるノイズを示す。図7(C)の破線が第2入力部IN2におけるノイズを示し、実線が出力部OUTにおけるノイズを示す。図7(D)は、寄生容量CSOを介して伝達された出力部OUTにおけるノイズを示す。図7(E)は、第2容量素子CBNを介して伝達された第2入力部IN2および出力部OUTにおけるノイズ(バラスト用ノイズ)を示している。図7(E)の破線が第2入力部IN2におけるノイズを示し、実線が出力部OUTにおけるノイズを示す。尚、図7(A)〜図7(E)のノイズの波形は、便宜的に理解し易いように描いたものであり、実際のノイズの波形とは異なる場合がある。
図4(A)〜図4(E)を参照して説明したように、寄生容量CSNに依るノイズの位相は、寄生容量CSP、CSOに依るノイズの位相に対して180度反転している。寄生容量CSP、CSN、CSOによって出力電圧Voに混入するノイズは、図7(B)の曲線、図7(D)の曲線、および、図7(C)の実線曲線の和となるので、寄生容量CSNに依るノイズと寄生容量CSP、CSOに依るノイズとは互いに打ち消し合うように作用する。
上述のように、寄生容量CSNに依るノイズの絶対値が寄生容量CSP、CSOに依るノイズの絶対値と等しくなって、出力電圧Voのノイズが無くなることは偶然であり極希である。
そこで、第2実施形態では、第2容量素子CBNをバラスト容量として意図的に設け、寄生容量CSP、CSN、CSOによって出力電圧Voに混入するノイズを抑制する。例えば、寄生容量CSNによって出力電圧Voに混入するノイズが寄生容量CSP、CSOによって出力電圧Voに混入するノイズよりも絶対値として小さい場合、図6に示すように、第2容量素子CBNを電源入力部INPOWと第2入力部IN2との間に接続し寄生容量CSNに対して並列に設ける。これにより、図7(E)の実線で示すバラスト用ノイズ成分が出力電圧Voにさらに付加され、出力電圧Voに混入するノイズの総和が絶対値として抑制される。
例えば、第2実施形態では、NVは式8で表される。
NV={ZDC/(ZDC+1/(jωCSP))}×VPOW (式8)
式1および式8より、式9が成立する。
NVOP=(1+R/R)×[{ZDC/(ZDC+1/(jωCSP))}×VPOW] (式9)
尚、NVOPの位相は、寄生容量CSPによってVPOWよりも90度進んでいる。
寄生容量CSNおよび第2容量素子CBNによって第2入力部IN2から出力電圧Voに混入するノイズ成分をNVONとすると、NVONは、式10で表される。
NVON=−R/(1/(jω(CSN+CBN)))×VPOW (式10)
尚、NVONの位相は、上述の通り、VPOWよりも90度遅れた状態(NVOPの位相に対して反転状態)となる。即ち、VPOWが正電圧である場合、NVONは負電圧成分となる。
寄生容量CSOよって増幅回路AMP自体から出力電圧Voに混入するノイズ成分NVOOは、上述の式5と同じである。
尚、NVOOの位相は、VPOWよりも90度進んでいる。VPOWが正電圧である場合、NVOOは正電圧成分となる。
寄生容量CSP、CSN、CSOおよび第2容量素子CBNにより出力電圧Voに現れるノイズ成分NV(NVOP+NVON+NVOO)は式11で表される。
NV={(1+R/R)ZDC/(ZDC+1/(jωCSP))−R/(1/(jω(CSN+CBN)))+ZAMP/(ZAMP+(1/jωCSO))}×VPOW (式11)
ノイズ成分NVをゼロに近づけるためには、式11の右辺を絶対値としてゼロに近づければよい。第2実施形態では、PSRRの逆数(1/PSRR)は、式12で表される。
1/PSRR={(1+R/R)ZDC/(ZDC+1/(jωCSP))−R/(1/(jω(CSN+CBN)))+ZAMP/(ZAMP+(1/jωCSO))}
(式12)
式12の右辺を絶対値としてゼロに近づけることによって、高いPSRR特性を得ることができる。
第2実施形態では、式12の正成分(入力電圧VPOWと同一極性のノイズ成分)と負成分(入力電圧VPOWと逆極性のノイズ成分)とが等しくなるように、第2容量素子CBNをバラスト容量として設けている。
式12の右辺のうち寄生容量CSP、CSOに関する第1項および第3項は正成分であり、寄生容量CSNおよび第2容量素子CBNに関する第2項が負成分である。ここで、第2実施形態では、第2容量素子CBNが設けられていない場合に、PSRRの逆数(1/PSRR)が0より大きいものとする。この場合、寄生容量CSNに関する負成分が、寄生容量CSP、CSOに関する正成分よりも小さい。従って、寄生容量CSNに対して並列に第2容量素子CBNを設けることによって、実質的に負成分を増大させる。これにより、第2容量素子CBNが設けられていない場合と比べて、第2実施形態によるリニアレギュレータ1は、PSRRの逆数(1/PSRR)の絶対値を0に近付けることができる。これにより、第2実施形態は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
第1実施形態および第2実施形態は組み合わせてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1・・・リニアレギュレータ、AMP・・・増幅回路、REF・・・基準電圧回路、FB・・・帰還回路、CBP・・・第1容量素子、IN1・・・第1入力部、IN2・・・第2入力部、INPOW・・・電源入力部、OUT・・・出力部

Claims (4)

  1. 電源入力部からの電力を受けて、第1入力部と第2入力部との電圧差に応じた第1電圧を出力する増幅回路と、
    前記第1入力部へ基準電圧を供給する基準電圧回路と、
    前記第1電圧に応じた帰還電圧を前記第2入力部へ入力する帰還回路と、
    前記電源入力部と前記第1入力部との間に設けられた容量素子とを備え、
    前記増幅回路の電源電圧変動除去比(PSRR(Power Supply Rejection Ratio))の逆数(1/PSRR)が、前記容量素子を設けない場合に比べ0に近い電源回路。
  2. 前記帰還回路は、前記電源入力部への入力電圧よりも低い低電圧源に接続可能な低電圧部と前記増幅回路の出力との間に直列接続された第1抵抗素子および第2抵抗素子を含み、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子との間のノードを前記第2入力部に接続し、
    前記増幅回路の電源電圧変動除去比の逆数(1/PSRR)は、
    (1+R/R)×ZDC/(ZDC+1/(jω(CSP+CBP)))−R/(1/(jωCSN))+ZAMP/(ZAMP+1/(jωCSO)) (式)
    (ここで、R、Rは前記第1および第2抵抗素子の抵抗値、ZDC前記基準電圧回路の出力インピーダンス、ZAMPは前記増幅回路の出力インピーダンス、CSPは前記増幅回路の前記電源入力部と前記第1入力部との間の寄生容量、CBPは前記容量素子の容量、CSNは前記増幅回路の前記電源入力部と前記第2入力部との間の寄生容量、CSOは前記増幅回路の前記電源入力部と前記増幅回路の出力との間の寄生容量、ωは、前記入力電圧のノイズ周波数、jは複素数)
    上記式で表される、請求項1に記載の電源回路。
  3. 前記容量素子は、
    前記増幅回路に用いられるトランジスタのゲート絶縁膜と同じ材料の第1絶縁膜と、
    前記第1絶縁膜の下に設けられた第1電極と、
    前記第1絶縁膜上に設けられた第2電極とを含む、請求項1または請求項2に記載の電源回路。
  4. 前記容量素子は、
    前記電源入力部と前記増幅回路との間の電力配線と、
    前記基準電圧回路と前記第1入力部との間の第1配線と、
    前記電力配線と前記第1配線との間の絶縁膜とを含む、請求項1または請求項2に記載の電源回路。
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