JP6658412B2 - 塗装耐久性に優れた構造用鋼材および構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、主に橋梁などの屋外の大気腐食環境下、特には飛来塩分量の多い海上や海岸近傍などの厳しい腐食環境下の構造物に用いられる塗装耐久性に優れた構造用鋼材に関するものである。
橋梁などの屋外で用いられる鋼構造物は、通常、何らかの防食処理を施して用いられる。例えば、飛来塩分量が少ない環境では、耐候性鋼が多く用いられている。
ここで、耐候性鋼は、大気暴露環境で使用する場合に、Cu、P、Cr、Niなどの合金元素が濃化した保護性の高いさび層で表面が覆われ、これによって、腐食速度を大きく低下させた鋼材である。このような耐候性鋼を使用した橋梁は、飛来塩分量が少ない環境では、無塗装のまま数十年間の供用に耐え得ることが知られている。
一方、海上や海岸近傍などの飛来塩分量の多い環境では、耐候性鋼において保護性の高いさび層が形成され難く、耐候性鋼を無塗装のまま使用することは困難である。このため、海上や海岸近傍などの飛来塩分量の多い環境では、普通鋼材に塗装などの防食処理を施した鋼材が一般的に用いられている。
しかしながら、塗装鋼材では、時間の経過による塗膜の劣化やさびの発生、塗膜の膨れ等により、定期的な塗り替えなどの補修が必要となる。塗り替えに伴う塗装作業は、高所での作業となることが多く、作業自体が困難であるとともに、作業にかかる人件費も必要となる。そのため、塗装鋼材を使用する場合には、構造物のメンテナンスコストが増大し、ひいてはライフサイクルコストが増大するという問題がある。
このようなことから、塗り替え塗装の周期を延長することによって、塗装頻度を低減し、構造物のメンテナンスコストを抑制可能な耐食性に優れた鋼材、特には塗装耐久性に優れた構造用鋼材の開発が望まれている。
このような耐食性に優れた鋼材として、例えば、特許文献1には、Pを0.15〜0.30%、Crを2.0%超え3.0%未満含有させた高耐候性鋼材が開示されている。
特許文献2には、Pを0.03〜0.15%、Cuを0.2〜0.5%含有させた超塗装耐久性鋼材が開示されている。
特許文献3には、Cuを0.05〜3.0%、Niを0.05〜6.0%、Tiを0.01〜1.0%含有させた耐久性に優れた塗装鋼材が開示されている。
特許文献4には、Cuを0.05〜3.0%、Niを0.05〜6.0%、Tiを0.025〜0.15%含有させた塗膜耐久性に優れた塗装用鋼材が開示されている。
特許文献5には、Cuを0.30〜1.00%、Niを1.0〜5.5%含有させた高溶接性高耐候性鋼が開示されている。
特許文献6には、Cuを0.05〜1.0%、Niを0.01〜0.5%、Crを0.01〜3.0%、Snおよび/またはSbを0.03〜0.50%含有させた海浜耐候性に優れた鋼材が開示されている。
特許文献7には、Crを0.01〜3.0%、Snを0.03〜0.50%含有させた耐食性およびZ方向の靱性に優れた鋼材の製造方法が開示されている。
特許文献8には、Snを0.15〜0.5%含有させた、塩化物を含む乾湿繰り返し環境下で用いられる耐食性に優れた鋼材が開示されている。
特許文献9には、Crを2.6〜13.0%、Snを0.01〜0.5%含有させた、耐食性に優れた鋼材が開示されている。
特開平6-93372号公報 特開平6-143489号公報 特開平10-330881号公報 特開2000-169939号公報 特開平11-172370号公報 特開2006-118011号公報 特開2010-7109号公報 特許第5879758号公報 特許第5845951号公報
しかしながら、特許文献1および2のようにPの含有量を増加させると、溶接性が大きく低下する。さらに、特許文献1では、塗装した鋼材の耐食性、すなわち塗装耐久性について、何ら考慮が払われていない。
また、特許文献3、4および5のように、CuやNiの含有量を過度に増加させると、合金コストの増大を招く。さらに、特許文献3および4のようにTiを多量に含有させると、鋼材の靱性の劣化を招く。加えて、特許文献6〜9のように、CrやSnなどの含有量を過度に増加させると、やはり合金コストの増大を招くとともに、鋼材の靱性の劣化を招く。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたものであって、合金コストの過度の増大を招くことなく、橋梁などの屋外の大気腐食環境下、特には飛来塩分量の多い海上や海岸近傍などの厳しい腐食環境下で使用する場合であっても、塗り替え塗装にかかる周期を延長して、塗装頻度を低減することが可能な塗装耐久性に優れた構造用鋼材を提供することを目的とする。
なお、「塗装耐久性に優れた」とは、鋼板表面に塗膜を形成し、以下の条件の腐食試験を行ったときの塗膜の膨れ面積が480mm以下であることを意味する。
・腐食試験条件
塗膜に付与する初期欠陥:幅1mm、長さ40mmの直線のカット
人工海塩の付着量:6.0g/m
試験時間:1200サイクル(9600時間)
サイクル条件:(条件1.温度:60℃、相対湿度:35%、保持時間:3時間)、(条件2.温度:40度、相対湿度:95%、保持時間:3時間)、条件1から条件2および条件2から条件1への各移行時間を1時間とする、合計8時間のサイクル
さて、発明者らは、合金コストの増大や靭性の劣化を招くおそれのあるCuやNi、Cr、Snなどを多量に含有させることなく、優れた塗装耐久性を得るべく、種々の成分組成となる鋼材を作製し、その塗装耐久性を調査した。
その結果、Si量を適正な範囲に調整したうえで、CuやNi、Sn、Sbをそれぞれ微量複合添加し、さらにWを添加することによって、塗装耐久性を大幅に向上することを見出した。
この理由については必ずしも明らかではないが、発明者らは次のように考えている。
(1)Si、CuおよびNiは、さび粒子を微細化させることでさび層を緻密化させ、腐食促進因子である酸素や塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、これらの元素は、ナトリウムイオンがさび層を透過して塗膜膨れ先端のカソード部に供給されるのを防止する。
(2)Wは、地鉄表面近傍さび層中にWO 2−として存在することで、腐食促進因子である塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを防止する。さらに、鋼材表面にWを含む化合物が沈殿することでアノード反応を抑制する。
(3)SnおよびSbは、地鉄表面近傍においてさび層中に存在し、さび粒子を微細化することで腐食促進因子である塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、鋼材表面においてアノード反応を抑制する。
(4)そして、耐食性向上効果を最大限発現にさせるには、上記の元素のなかでもSiを積極的に活用することが重要であり、このSi含有量を適正な範囲に調整して、CuやNi、Sn、Sbといった元素をそれぞれ微量に複合添加し、さらにWを添加することによって、各元素の耐食性向上効果が相乗して得られ、CuやNi、Sn、Sbといった元素を大量には含有させずとも、耐食性、特には塗装耐久性が大幅に向上する。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を重ねて完成させたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.020%以上、0.200%以下、
Si:0.05%以上、1.00%以下、
Mn:0.20%以上、2.00%以下、
P:0.003%以上、0.030%以下、
S:0.0001%以上、0.0100%以下、
Al:0.001%以上、0.100%以下、
Cu:0.01%以上、0.50%以下、
Ni:0.01%以上、0.50%以下および
W:0.005%以上、1.000%以下
を含有するとともに、
Sn:0.005%以上、0.200%以下および
Sb:0.005%以上、0.200%以下
のうちから選ばれる1種または2種を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
2.前記成分組成におけるSiの含有量が、0.40%以上、0.60%以下であることを特徴とする前記1に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
3.前記成分組成が、さらに、質量%で、
Mo:0.005%以上、0.500%以下
を含有することを特徴とする前記1または2に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
4.前記成分組成が、さらに、質量%で、
V:0.005%以上、0.200%以下、
Ti:0.005%以上、0.050%以下および
Zr:0.005%以上、0.100%以下
のうちからから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする前記1乃至3のいずれかに記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
5.前記成分組成が、さらに、質量%で、
B:0.0001%以上、0.0050%以下
を含有することを特徴とする前記1乃至4のいずれかに記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
6.前記成分組成が、さらに、質量%で、
Ca:0.0001%以上、0.0100%以下および
Mg:0.0001%以上、0.0100%以下、
のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする前記1乃至5のいずれかに記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
7.前記1乃至6のいずれかに記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材であって、その表面に塗膜を有することを特徴とする塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
8.前記塗膜が、防食下地層、下塗り層、中塗り層および上塗り層を有し、
該防食下地層が無機ジンクリッチペイント、該下塗り層がエポキシ樹脂塗料、該中塗り層がふっ素樹脂上塗り塗料用の中塗り塗料、該上塗り層がふっ素樹脂上塗り塗料をそれぞれ用いてなることを特徴とする前記7に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
9.前記1乃至8のいずれかに記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材を有することを特徴とする構造物。
10.橋梁であることを特徴とする前記9に記載の構造物。
本発明によれば、橋梁などの屋外の大気腐食環境下、特には飛来塩分量の多い海上や海岸近傍などの厳しい腐食環境下で使用する場合であっても、塗り替え周期を延長して塗装頻度を低減することが可能な塗装耐久性に優れた構造用鋼材を、低コストに得ることができる。
そして、本発明の塗装耐久性に優れた構造用鋼材を、橋梁などの屋外の大気腐食環境下、特には飛来塩分量の多い海上や海岸近傍などの厳しい腐食環境下で使用される橋梁などの構造物に好適に用いることにより、かような構造物のメンテナンスコスト、ひいてはライフサイクルコストを低減することが可能となる。
以下、本発明を具体的に説明する。まず、本発明において鋼の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、鋼の成分組成における元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
C:0.020%以上、0.200%以下
Cは、鋼材の強度を上昇させる元素である。このため、Cは、構造用鋼としての所定の強度を確保するため、0.020%以上含有させる必要がある。一方、C含有量が0.200%を超えると、溶接性および靭性が劣化する。したがって、C含有量は0.020%以上、0.200%以下とする。
Si:0.05%以上、1.00%以下
Siは、本発明の塗装耐久性に優れた構造用鋼材において重要な元素であり、さび層全体のさび粒を微細化して緻密なさび層を形成し、鋼材の塗装耐久性を向上させる効果を有する。また、Siは製鋼時の脱酸に必要な元素である。これらの効果を得るため、Siは0.05%以上含有させる必要がある。一方、Si含有量が1.00%を超えると、靭性および溶接性が著しく劣化する。したがって、Si含有量は0.05%以上、1.00%以下とする。好ましくは0.15%以上、0.80%以下である。また、塗装耐久性を一層向上させる観点からは、Si含有量は0.40%以上、0.60%以下とすることがより好ましい。
Mn:0.20%以上、2.00%以下
Mnは、鋼材の強度を上昇させる元素である。このため、Mnは、構造用鋼としての所定の強度を確保するため、0.20%以上含有させる必要がある。一方、Mn含有量が2.00%を超えると、靭性および溶接性が劣化する。したがって、Mn含有量は0.20%以上、2.00%以下とする。好ましくは0.75%以上、1.80%以下である。
P:0.003%以上、0.030%以下
Pは、鋼材の塗装耐久性の向上に寄与する元素である。このような効果を得る観点から、Pは0.003%以上含有させる必要がある。一方、P含有量が0.030%を超えると、溶接性が劣化する。したがって、P含有量は0.003%以上、0.030%以下とする。
S:0.0001%以上、0.0100%以下
Sは、溶接性および靭性を劣化させる元素である。このため、S含有量は0.0100%以下とする必要がある。ただし、S含有量を0.0001%未満にしようとすると、生産コストが増大する。したがって、S含有量は0.0001%以上、0.0100%以下とする。
Al:0.001%以上、0.100%以下
Alは、製鋼時の脱酸に必要な元素である。このような効果を得るため、Alは0.001%以上含有させる必要がある。一方、Al含有量が0.100%を超えると、溶接性に悪影響を及ぼす。したがって、Al含有量は0.001%以上、0.100%以下とする。好ましくは、0.005%以上、0.050%未満とする。より好ましくは、0.010%以上、0.030%未満とする。
Cu:0.01%以上、0.50%以下
Cuは、本発明の塗装耐久性に優れた構造用鋼材において重要な元素であり、さび層のさび粒を微細化することで緻密なさび層を形成し、腐食促進因子である酸素や塩化物イオンの地鉄への透過を抑制する効果を有する。そして、Cuは、Si量を適正な範囲に調整した上で、NiやSn、Sb、さらにはWとともに複合添加することで、これらの元素との相乗効果によって、鋼材の塗装耐久性を大きく向上させる。このような効果は、Cu含有量が0.01%以上で得られる。一方、Cu含有量が0.50%を超えると、合金コストの上昇を招く。したがって、Cu含有量は0.01%以上、0.50%以下とする。好ましくは、0.03%以上、0.40%以下、より好ましくは、0.04%以上、0.30%以下である。さらに好ましくは0.05%以上、0.25%以下である。
Ni:0.01%以上、0.50%以下
Niは、さび層のさび粒を微細化することで緻密なさび層を形成し、腐食促進因子である酸素や塩化物イオンの地鉄への透過を抑制する効果を有する。そして、Niは、Si量を適正な範囲に調整した上で、CuやSn、Sb、さらにはWとともに複合添加することで、これらの元素との相乗効果によって、鋼材の塗装耐久性を大きく向上させる。このような効果は、Ni含有量が0.01%以上で得られる。一方、Ni含有量が0.50%を超えると、合金コストの上昇を招く。したがって、Ni含有量は0.01%以上、0.50%以下とする。好ましくは、0.03%以上、0.40%未満、より好ましくは、0.04%以上、0.30%以下である。さらに好ましくは、0.05%以上、0.15%以下である。
W:0.005%以上、1.000%以下
Wは鋼材のアノード反応に伴って溶出し、さび層中にWO 2−として分布することによって、腐食促進因子の塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを静電的に防止する。さらに、鋼材表面にWを含む化合物が沈殿することで、鋼材のアノード反応を抑制する。そして、Wは、Si量を適正な範囲に調整した上で、CuやNi、Sn、Sbとともに複合添加することで、これらの元素との相乗効果によって、鋼材の塗装耐久性を大きく向上させる。このような効果を十分に得るためには、Wを0.005%以上含有させる必要がある。一方、W含有量が1.000%を超えると、合金コスト上昇を招く。したがって、W含有量は0.005%以上、1.000%以下とする。好ましくは、0.010%以上、0.700%以下、より好ましくは、0.030%以上0.500%以下である。さらに好ましくは0.05%以上、0.30%以下である。
また、本発明の塗装耐久性に優れた構造用鋼材では、Sn:0.005%以上、0.200%以下およびSb:0.005%以上、0.200%以下のうちから選ばれる1種または2種を含有させる。
Sn:0.005%以上、0.200%以下
Snは、地鉄表面近傍においてさび層中に存在し、さび粒子を微細化することで腐食促進因子である塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、Snは、鋼材表面においてアノード反応を抑制する。そして、Snは、Si量を適正な範囲に調整した上で、CuやNi、Sb、さらにはWとともに複合添加することで、これらの元素との相乗効果によって、鋼材の塗装耐久性を大きく向上させる。このような効果を十分に得るためには、Snを0.005%以上含有させる必要がある。一方、Sn含有量が0.200%を超えると、鋼の延性や靭性の劣化を招く。したがって、Sn含有量は、0.005%以上、0.200%以下とする。好ましくは、0.010%以上、0.100%以下である。より好ましくは、0.020%以上、0.050%未満である。
Sb:0.005%以上、0.200%以下
Sbは、地鉄表面近傍においてさび層中に存在し、さび粒子を微細化することで腐食促進因子である塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、Sbは、鋼材表面においてアノード反応を抑制する。そして、Sbは、Si量を適正な範囲に調整した上で、CuやNi、Sn、さらにはWとともに複合添加することで、これらの元素との相乗効果によって、鋼材の塗装耐久性を大きく向上させる。このような効果を十分に得るためには、Sbを0.005%以上含有させる必要がある。一方、Sb含有量が0.200%を超えると、鋼の延性や靭性の劣化を招く。したがって、Sb含有量は0.005%以上、0.200%以下とする。好ましくは、0.010%以上、0.150%以下、より好ましくは、0.020%以上、0.100%以下である。
以上、基本成分について説明したが、本発明では、必要に応じて、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Mo:0.005%以上、0.500%以下
Moは、鋼材のアノード反応に伴って溶出し、さび層中にMoO 2−が分布することで、腐食促進因子である塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、鋼材表面にMoを含む化合物が沈殿することで、鋼材のアノード反応を抑制する。このような効果を十分に得るためには、Moを0.005%以上含有させることが好適である。一方、Mo含有量が0.500%を超えると、合金コストの上昇を招く。したがって、Moを含有する場合、Mo含有量は0.005%以上0.500%以下とする。
V:0.005%以上、0.200%以下
Vは、強度を高める元素である。このような効果を十分に得るためには、Vを0.005%以上含有させることが好適である。一方、V含有量が0.200%を超えると、その強度向上効果が飽和する。したがって、Vを含有する場合、V含有量は0.005%以上、0.200%以下とする。
Ti:0.005%以上、0.050%以下
Tiは、強度を高める元素である。このような効果を十分に得るためには、Tiを0.005%以上含有させることが好適である。一方、Ti含有量が0.050%を超えると、靭性の劣化を招く。したがって、Tiを含有する場合、Ti含有量は0.005%以上、0.050%以下とする。
Zr:0.005%以上、0.100%以下
Zrは、強度を高める元素である。このような効果を十分に得るためには、Zrを0.005%以上含有させることが好適である。一方、Zr含有量が0.100%を超えると、その強度向上効果が飽和する。したがって、Zrを含有する場合、Zr含有量は0.005%以上、0.100%以下とする。
B:0.0001%以上、0.0050%以下
Bは、強度を高める元素である。このような効果を十分に得るためには、Bを0.0001%以上含有させることが好適である。一方、B含有量が0.0050%を超えると、靭性の劣化を招く。したがって、Bを含有する場合、B含有量は0.0001%以上、0.0050%以下とする。
Ca:0.0001%以上、0.0100%以下
Caは、鋼中のSを固定し、溶接熱影響部の靭性を向上させる元素である。このような効果を十分に得るためには、Caを0.0001%以上含有させることが好適である.一方、Ca含有量が0.0100%を超えると、鋼中の介在物の量が増加し、かえって靭性の劣化を招く。したがって、Caを含有する場合、Ca含有量は0.0001%以上、0.0100%以下とする。
Mg:0.0001%以上、0.0100%以下
Mgは、鋼中のSを固定し、溶接熱影響部の靭性を向上させる元素である。このような効果を十分に得るためには、Mgを0.0001%以上含有させることが好適である。一方、Mg含有量が0.0100%を超えると、鋼中の介在物の量が増加し、かえって靭性の劣化を招く。したがって、Mgを含有する場合、Mg含有量は0.0001%以上、0.0100%以下とする。
上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、NやO(酸素)が挙げられ、N:0.010%以下、O:0.010%以下であれば許容できる。
また、本発明の鋼材は、通常、鋼材表面を塗装して使用される。ここで、鋼材表面の塗膜としては、例えば、防食下地層、下塗り層、中塗り層および上塗り層をこの順に有する塗膜が挙げられる。
なお、防食下地層は無機ジンクリッチペイント(例えば、SDジンク1500)、下塗り層はエポキシ樹脂塗料(例えば、エポマリンHB(K))、中塗り層はふっ素樹脂上塗り塗料用の中塗り塗料(例えば、セラテクトF中塗)、上塗り層はふっ素樹脂上塗り塗料(例えば、セラテクトF(K)上塗)を用いて形成することが好ましい。
さらに、本発明の塗装耐久性に優れた構造用鋼材は、上記の成分組成を有する鋼を溶製し、通常の連続鋳造法や分塊法によりスラブ等の鋼素材とし、得られた鋼素材を熱間圧延などの熱間加工により、厚板や形鋼、薄鋼板、棒鋼等の鋼材とすることで、製造することができる。
鋼スラブの加熱条件や熱間圧延条件は特に限定されず、要求される特性などに応じて適宜決定すればよい。なお、制御圧延や加速冷却、再加熱熱処理等の組合せも可能である。
また、鋼における各元素の含有量は、スパーク放電発光分光分析法、蛍光X線分析法、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法または燃焼法等により求めることができる。
表1に示す成分組成になる鋼(残部はFeおよび不可避的不純物である)を溶製し、1150℃に加熱して熱間圧延を施し、空冷後、板厚:12mmの鋼板を得た。
そして、以下の要領にて、塗装耐久性の評価を実施した。
・塗装耐久性の評価
上記のようにして得た鋼板から70mm×50mm×5mmの試験片を採取した。この試験片の表面に、表面粗さがISO Sa 2.5となるようショットブラストを施し、アセトン中での超音波脱脂を5分間行い、風乾した。ついで、試験片の片面を塗装面とし、防食下地として無期ジンクリッチペイント(厚さ:75μm)を塗布し、ついで下塗りとしてエポキシ樹脂塗料(厚さ:120μm)を塗布し、ついで中塗りとしてふっ素樹脂上塗り塗料用の中塗り塗料(厚さ:30μm)を塗布し、ついで上塗りとしてふっ素樹脂塗料上塗り塗料(厚さ:25μm)を塗布し、防食下地層、下塗り層、中塗り層および上塗り層からなる塗膜を形成した。なお、試験片の他方の片面と端面は、溶剤型のエポキシ樹脂塗料にてシールし、さらにシリコン系のシール剤にて被覆した。
塗装後、試験片に形成した塗膜の中央部に、地鉄に到達するように幅:1mm、長さ:40mmの直線のカットを入れ、初期欠陥を設けた。ついで、以下に示す条件にて腐食試験を実施した。
すなわち、試験片表面の人工海塩の付着量が6.0g/mとなるように、人工海塩を純水で所定の濃度に希釈した溶液をスプレーし、試験片に人工海塩を付着させた。ついで、この試験片を用いて、(条件1.温度:60℃、相対湿度:35%、保持時間:3時間)、(条件2.温度:40度、相対湿度:95%、保持時間:3時間)、条件1から条件2および条件2から条件1への各移行時間を1時間とする、合計8時間のサイクルを1サイクルとして、これを1200サイクル繰り返す腐食試験を実施した。なお、人工海塩の付着は、週に1回とした。
そして、腐食試験終了後、塗装における初期欠陥部からの膨れ面積(塗装膨れ面積)を測定し、塗装耐久性を評価した。結果を表2に示す。なお、塗装膨れ面積が480mm以下であれば、塗装の耐久性に優れると判断した。
Figure 0006658412
Figure 0006658412
表2より、発明例ではいずれも塗装の膨れ面積が480mm以下であり、塗装耐久性に優れることがわかる。
一方、比較例では、塗装の膨れ面積が480mmを超えており、十分な塗装耐久性が得られなかった。

Claims (10)

  1. 質量%で、
    C:0.020%以上、0.200%以下、
    Si:0.05%以上、1.00%以下、
    Mn:0.20%以上、2.00%以下、
    P:0.003%以上、0.030%以下、
    S:0.0001%以上、0.0100%以下、
    Al:0.001%以上、0.100%以下、
    Cu:0.01%以上、0.50%以下、
    Ni:0.01%以上、0.09%以下および
    W:0.005%以上、1.000%以下
    を含有するとともに、
    Sn:0.005%以上、0.200%以下および
    Sb:0.005%以上、0.200%以下
    のうちから選ばれる1種または2種を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
  2. 前記成分組成におけるSiの含有量が、0.40%以上、0.60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
  3. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Mo:0.005%以上、0.500%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
  4. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    V:0.005%以上、0.200%以下、
    Ti:0.005%以上、0.050%以下および
    Zr:0.005%以上、0.100%以下
    のうちからから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
  5. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    B:0.0001%以上、0.0050%以下
    を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
  6. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Ca:0.0001%以上、0.0100%以下および
    Mg:0.0001%以上、0.0100%以下、
    のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材であって、その表面に塗膜を有することを特徴とする塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
  8. 前記塗膜が、防食下地層、下塗り層、中塗り層および上塗り層を有し、
    該防食下地層が無機ジンクリッチペイント、該下塗り層がエポキシ樹脂塗料、該中塗り層がふっ素樹脂上塗り塗料用の中塗り塗料、該上塗り層がふっ素樹脂上塗り塗料をそれぞれ用いてなることを特徴とする請求項7に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材。
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の塗装耐久性に優れた構造用鋼材を有することを特徴とする構造物。
  10. 橋梁であることを特徴とする請求項9に記載の構造物。
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