JP2012177168A - 塗装耐食性に優れた船舶用鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、海水飛沫や海水接触環境と乾湿繰り返し環境の期間が交互となる船舶において最も腐食環境として厳しいバラストタンクにおいて、塗装耐食性に優れた船舶用鋼材を提案することを目的とする。
【解決手段】鋼材の化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al、Nを含有し、さらに、A群;Mo、Wの中から選ばれる1種または2種、B群;Cu、Cr、Niの中から選ばれる1種以上、C群;Sb%、Snの中から選ばれる1種または2種であり、A〜C群の中から選ばれる2種以上の群を組み合わせた元素を一定量含有し、該鋼材表面に水性ジンクプライマーの塗膜が形成され、その該塗膜上にエポキシ系塗膜を有することを特徴とする塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
【選択図】なし

Description

本発明は、石炭船、鉱石船、鉱炭兼用船、原油タンカー、LPG船、LNG船、ケミカルタンカー、コンテナ船、ばら積み船、木材専用船、チップ専用船、冷凍運搬船、自動車専用船、重量物船、RORO船、石灰石専用船およびセメント専用船等に用いて好適な塗装耐食性に優れた塗装鋼材に関するものである。船舶の部位としては、船側外板、上甲板等の海上から飛来塩分を受ける部位や、船底部等の海水との接触部のみではなく、海水飛沫や海水接触期間と乾湿繰り返し環境の期間が交互となる船舶において最も腐食環境として厳しいバラストタンクにおいても、塗装耐食性に優れる塗装鋼材に関するものである。
一般に、船舶は厚鋼板、薄鋼板、形鋼や棒鋼等の鋼材を溶接して建造されており、その鋼材の表面には防食塗膜が施されて使用される。例えば、腐食環境として最も厳しいバラストタンク用の鋼材の場合では、この防食塗膜は、一次防錆としてショッププライマー(例えば、亜鉛を含有するようなJIS K 5552に規定するジンクリッチプライマーや機能性ジンクプライマー等)を塗布し、小組み後あるいは大組み後に、二次塗装(本塗装)としてエポキシ系の塗装が施されるのが一般的である。したがって、船舶の鋼材表面の大部分は、ジンクプライマー塗膜とエポキシ系塗膜の2層構造となっている。
原油タンカー等の船舶は、空荷の時でも船体が安定するようにバラストタンクに海水を積載している。バラストタンクは、高温多湿な極めて厳しい腐食環境下におかれている。このため、バラストタンクに用いられる鋼材の防食には、通常ジンクプライマーやエポキシ系塗料などによる防食塗膜と電気防食とが併用されている。しかし、これらの防食対策を講じてもバラストタンクの腐食状態は、依然として厳しい状態である。
それはすなわち、バラストタンクに海水を注入したとき、海水に完全に浸されている部分は、電気防食が機能しているので腐食の進行を抑えることができる。一方、バラストタンクの天井部付近、特に上甲板の裏側部分は海水に浸からず、海水の飛沫を常に浴びる状態におかれているため、電気防食が機能せず、さらに日中においては、太陽熱によって上甲板の温度が上昇するため、非常に過酷な腐食環境となっている。
また、バラストタンクの天井部付近以外の海水に没水する部位である側壁部、底辺部においても、バラストタンクに海水が注入されていない時には、バラストタンク全体で電気防食が全く機能しないため、残留付着塩分の作用によって激しい腐食を受けることとなる。
このような厳しい腐食環境下に長期間曝されたバラストタンクの防食塗膜は、塗膜損傷部、塗膜ピンホール、塗膜薄膜部を起点として大きな膨れを伴い、塗膜劣化が進行していく。その防食塗膜の寿命は、一般的に約10〜15年といわれており、船舶の寿命とされる20〜25年の約半分である。従って、残りの約10年は、補修塗装をすることによって耐食性を維持しているのが実情である。しかし、バラストタンクは、上述したように厳しい腐食環境にあるため、補修塗装を行ってもその効果を長期間持続させることが難しい。また、補修塗装は狭い空間での作業となるため、作業環境としても好ましいものではない。
このような船舶バラストタンクの防食を目的に、次のような技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、C:0.20%以下の鋼に、耐食性改善元素としてCu:0.05〜0.50%、W:0.01〜0.05%未満を添加した耐食性低合金鋼が開示されている。
また、特許文献2には、C:0.20%以下の鋼材に、耐食性改善元素としてCu:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.5%を添加し、さらにGe、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Beのうちの1種もしくは2種以上を0.01〜0.2%添加した耐食性低合金鋼が開示されている。特許文献3には、重量%でC:0.1%以下の鋼に、Cr:0.50〜3.50%を添加することによって耐食性を向上させる低合金鋼が開示されている。
さらに、特許文献4には、Cr、Cu、Ni、Sn、及びSbの含有量から算出されるαが、α=Cr/(Cu+Ni+Sn+Sb)≧0.46で耐海水腐食性に優れた耐海水鋼について開示されている。
その他、特許文献5には、C:0.15%以下の鋼に、耐食性改善元素としてP:0.03〜0.10%、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.2〜1.0%を添加した低合金耐食鋼材に、タールエポキシ塗料、ピュアエポキシ塗料、無溶剤型エポキシ塗料およびウレタン塗料等の防食塗料を塗布し、樹脂被覆したバラストタンクが開示されている。この技術は、鋼材自身の耐食性向上により防食塗装の寿命を延長し、船舶の使用期間である20〜30年に亘ってメンテナンスフリー化を実現しようとするものである。
特許文献6には、C:0.15%以下の鋼に、耐食性改善元素としてCr:0.2〜5%を添加して耐食性を向上し、船舶のメンテナンスフリー化を実現しようとする技術が開示されている。
特許文献7には、C:0.15%以下の鋼に、耐食性改善元素としてCr:0.2〜5%を添加した鋼材を構成材料として使用すると共に、バラストタンク内部の酸素ガス濃度を大気中の値に対する比にして0.5以下とすることを特徴とするバラストタンクの防食方法が開示されている。
特許文献8には、低合金鋼に海水中における浸漬電位が基材よりも卑なる金属粒子(Zn、Mg粉末等)を含み、残部がシリケートからなるプライマー層を有する構造用鋼が開示され、また、特許文献9には、質量%でC:0.003〜0.20%を添加した鋼にCr:0.1〜6.0%、Cu:0.1〜2.0%、Al:0.010〜0.10%が添加された鋼板に無機ジンクプライマー層を有した防錆鋼板が開示されている。
特開昭48−50921号公報 特開昭48−50922号公報 特開平7−310141号公報 特開2005−220394号公報 特開平7−34197号公報 特開平7−34196号公報 特開平7−34270号公報 特開2007−191730号公報 特開2008−144204号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜4では、バラストタンク等を構成する鋼材に対して塗膜存在下での耐食性については検討がなされていない。また、特許文献5〜6では、エポキシ系塗膜存在下での耐食性について検討がなされているが、ジンクプライマーが塗装された際の耐食性については検討がなされていない。
特許文献7では、バラストタンク内部の酸素ガス濃度管理のためには、船舶に膨大な設備投資が必要となる問題があり、実用化が困難である。
また、特許文献8および9では、Zn、Mg粉末等を含んだプライマー層やジンクプライマー層の存在による、犠牲防食作用や錆層中への塩化物トラップ等により、鋼材の腐食が抑制されることが検討されているが、これは通常の有機溶剤系の無機ジンクプライマーについて検討されているが、水性ジンクプライマーを塗布した際の耐食性の検討がなされていない。
バラストタンクは上述したように、厳しい腐食環境であるため、エポキシ塗膜だけでは船舶設計寿命である25年まで補修塗装を行う必要がでてくるため、ジンクプライマーをエポキシ塗膜下に塗装する必要がある。これまで船舶分野で使用されてきたジンクプライマーはシンナー等の有機溶剤を含有した無機ジンクプライマーや有機ジンクプライマーといった塗料であった。しかし現在、造船所を含め、VOC規制が厳しくなっており、有機溶剤用塗料の使用制限がでてくるため、水性塗料である水性ジンクプライマーを用いることが望ましい。
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、海水飛沫や海水接触環境と乾湿繰り返し環境の期間が交互となる船舶において最も腐食環境として厳しいバラストタンクにおいて、耐食鋼と水性ジンクプライマーを併用することで、船舶設計寿命である25年まで補修塗装を行う必要のない、塗装耐食性に優れた船舶用鋼材を提案することを目的とする。言うまでもなく、バラストタンクより腐食環境として緩やかな船側外板、上甲板等の海上から飛来塩分を受ける部位や、船底部等の海水との接触部についても、塗装耐食性に優れる塗装鋼材となっている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、鋼材成分を規定し、また水性ジンクプライマーを用いることで、船舶の耐食寿命を著しく改善できる知見を得た。
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.鋼材の化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.3%、N:0.008%以下を含有し、さらに、
A群 Mo:0.005〜3.0%、W:0.005〜3.0%の中から選ばれる1種または2種、
B群 Cu:0.005〜2.0%、Cr:0.005〜5.0%、Ni:0.005〜5.0%の中から選ばれる1種以上、
C群 Sb:0.005〜1.0%、Sn:0.005〜1.0%の中から選ばれる1種または2種、
であるA〜C群の中から選ばれる2種以上の群を組み合わせた元素を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、該鋼材表面に水性ジンクプライマーの塗膜が形成され、さらにその該塗膜上にエポキシ系塗膜を有することを特徴とする塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
2.前記鋼材が、さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.2%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.002〜0.2%、Zr:0.001〜0.5%、B:0.0002〜0.005%、Ta:0.005〜0.5%、Te:0.005〜0.5%、Co:0.005〜0.5%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする前記1に記載の塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
3.前記鋼材が、さらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.01%、REM:0.0001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.01%、Y:0.0001〜0.1%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする前記1または2に記載の塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
4.前記鋼材が、さらに、質量%で、Se:0.005〜0.5%、Pb:0.005〜0.5%の中から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか一つに記載の塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
本発明によれば、船舶が厳しい海水腐食環境下においても優れた塗装耐食性を発揮して、船舶設計寿命である25年まで補修塗装を行う必要のない、塗装耐食性に優れた塗装鋼材を得ることが可能である。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明で%で表記されているのは、特に表示が無い限り質量%の意味である。
1.水性ジンクプライマーについて
水性ジンクプライマーはバインダーとして、無機系の場合、アルカリ珪酸塩および水分散型コロイダルシリカが挙げられる。有機系の場合は、エポキシ樹脂系エマルション、アクリル系エマルション、ウレタン系エマルションが挙げられる。当然ながら、バインダーは上記に限ったものではなく、水系塗料に配合可能であればよい。また、添加される亜鉛粉末の量は、亜鉛による犠牲防食作用を期待するために20%〜95%が望ましい。さらなる塗装耐食性を向上させるためには、50%〜95%が好ましい。水性ジンクプライマーは通常の有機溶剤系の無機ジンクプライマーや有機ジンクプライマーの塗膜に比べ、水透過性が高く、そのため、塗膜下で生成する亜鉛の保護性の酸化物と腐食過程で地鉄から溶出した鋼材中添加成分起因の保護性錆層、またそれらの保護性複合酸化物が形成しやすく、それによって塗装耐食性が向上しやすくなる。
2.エポキシ系塗膜について
本発明では、水性ジンクプライマーの塗膜の上層にエポキシ系塗膜が形成されている。エポキシ系塗膜の存在により、さらに耐食性が向上するからである。塗膜厚さは特に規定しないが、100〜1000μmが好ましい。エポキシ系塗膜による防食効果は、20μm以上の塗膜厚から顕著な効果を示すが、塗膜厚が100μm未満であると、使用環境によっては、塗膜が船舶寿命の25年もたず、防食効果維持のために、塗り替えが必要となる場合がある。そこで、合計塗膜厚は100μm以上が好ましい。また、1000μmを超えても防食効果が飽和、あるいは、塗膜厚が厚くなるに従い、塗膜の内部応力が大きくなり、密着性等の被膜性能が劣化するため、エポキシ系塗膜の合計塗膜厚は、100〜1000μmが好ましく、100〜500μmであることがさらに好ましい。
3.化学成分について
つぎに、本発明の鋼の化学成分を規定した理由を以下に説明する。
C:0.01〜0.20%
Cは鋼材強度を上昇させるのに有効な元素であり、所望の強度を得るために0.01%以上の添加が必要であるが、0.20%を超えて添加すると、溶接熱影響部の靱性を低下させるため、C量は0.01〜0.20%の範囲とする。好ましくは、0.05〜0.15%の範囲である。
Si:0.01〜2.5%
Siは脱酸剤として、また鋼材の強度向上を目的として添加される元素であり、0.01%以上の添加が必要であるが、2.5%を超えて添加すると鋼の靱性を劣化させるので、Si量は0.01〜2.5%の範囲とする。好ましくは、0.05〜0.50%の範囲である。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、熱間脆性を防止し鋼材の強度向上に有用な元素であるので、0.1%以上の添加が必要であるが、2.0%を超える添加は、鋼の靱性および溶接性を低下させるので、Mn量は0.1〜2.0%の範囲とする。
P:0.03%以下
Pは鋼の母材靱性のみならず、溶接性および溶接部靱性を劣化させる有害な元素であるので極力低減することが望ましい。特にP量が0.03%を超えると、母材靱性および溶接部靱性の低下が大きくなるのでP量は0.03%以下とする。
S:0.01%以下
Sは鋼の靱性および溶接性を劣化させる有害な元素であるので、極力低減することが望ましく、S量は0.01%以下とした。また、Sは耐食性の劣化元素であるため、好ましくは0.005%以下とする。
Al:0.005〜0.3%
Alは脱酸剤として作用し、このためには0.005%以上の添加を必要とするが、0.3%を超える添加は、溶接部靱性を低下させるので、Al量は0.005〜0.3%の範囲とする。
N:0.008%以下
Nは靱性に対して有害な成分であり、靱性の向上を図るためにはできるだけ低減することが望ましく、N量が0.008%を超えると靱性の著しい劣化を招く。よってN量は0.008%以下の範囲とした。
A群 Mo:0.005〜3.0%、W:0.005〜3.0%の中から選ばれる1種または2種
MoおよびWは、耐食元素であり、これらは母材から溶出した際に酸素酸を形成し、これらが塩化物イオンを電気的に反発させ、塩化物イオンが地鉄表面にまで侵入することを防ぎ、耐食性を向上させ、共存または単独で含有してその効果を発揮する。また、MoおよびWは、FeMoOやFeWOといった難溶性の腐食生成物を形成することで、鋼材の耐食性が向上する。その効果は、Mo、Wのいずれも0.005%以上を含有すると発現する。また、これらMo、Wのいずれも、3.0%を超えて含有しても、耐食性効果が飽和するため、Moは0.005〜3.0%、Wは0.005〜3.0%の範囲とした。
B群 Cu:0.005〜2.0%、Cr:0.005〜5.0%、Ni:0.005〜5.0%の中から選ばれる1種以上
Cu、Cr、Niは、耐食元素であり、これらを含有すると鋼材自体の耐食性が向上し、また、保護性のある微細な腐食生成物を塗膜下に形成し、塗装耐食性が向上する。その効果は、Cu、Cr、Niのいずれも0.005%以上を共存または単独で含有すると発現する。また、これらCu、Cr、Niのいずれも、過度の添加は靱性や溶接性を悪化させるため、上限はCuは2.0%、CrおよびNiは5.0%とした。
C群 Sb:0.005〜1.0%、Sn:0.005〜1.0%の中から選ばれる1種または2種
SbおよびSnは、耐食元素であり、これらは鋼材表面のアノード部などpHが低い部位での腐食を抑制し、共存または単独で含有してその効果を発揮する。この効果は、いずれも0.005%以上の添加で発現するが、1.0%を超えて添加すると母材靱性および溶接熱影響部を劣化させるため、Sb量は0.005〜1.0%、Sn量は0.005〜1.0%の範囲とする。
A〜C群から2種群以上を組み合わせて含有
以上述べたA,BおよびCの中から2種以上を組合わせて塗装耐食性に優れた船舶用鋼材とすることが出来る。すなわち、各群を構成する元素の有する効果を適宜勘案して、調整して組合わせることによって達成できるが、2種以上の組み合わせが必要である。ここで、各群の1種類では本発明の効果を安定してえることはできないからである。
本発明では、さらに以下の元素を任意選択元素として添加することができる。
Nb:0.001〜0.2%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.002〜0.2%、Zr:0.001〜0.5%、B:0.0002〜0.005%、Ta:0.005〜0.5%、Te:0.005〜0.5%、Co:0.005〜0.5%の中から選ばれる1種以上
Nb、V、Ti、Zr、B、Ta、Te、Coはいずれも、共存または単独で含有して鋼材強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択してこれら元素の中から選ばれる1種以上を添加することができる。このような効果を得るためには、Nb、V、Zrは0.001%以上、Tiは0.002%以上、Bは0.0002%以上、Ta、Te、Coは0.005%以上を添加する必要がある。しかしながら、一定の範囲を超えて添加した場合、靱性が劣化する。そのため、Nb、V、Ti、Zr、B、Ta、Te、Coの元素から選ばれる1種以上を、Nbは0.001〜0.2%、Vは0.001〜0.5%、Tiは0.002〜0.2%、Zrは0.001〜0.5%、Bは0.0002〜0.005%、Taは0.005〜0.5%、Te:0.005〜0.5%、Co:0.005〜0.5%の範囲とすることが好ましい。
Ca:0.0001〜0.01%、REM:0.0001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.01%、Y:0.0001〜0.1%の中から選ばれる1種以上
Ca、REM、Mg、Yは、介在物の形態制御により鋼の延性向上、あるいは、溶接熱影響部の靱性向上に寄与する元素であり、このような効果を発揮させるためには、Ca、REM、Mg、Yはいずれも0.0001%以上を1種以上添加することが好ましい。しかしながら、一定の範囲を超えて添加した場合、靱性の低下の原因となるため、Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下、Y:0.1%以下とする。なお、本発明において、REM(Rare Earth Metals:希土類金属)とは、原子番号57のLaから71のLuまでのいわゆるランタノイド元素から選択される1種以上を指すものとする。
REMであれば、どの元素であっても、上記の効果は共通して得られる。REMを含有させるにあたっては、たとえば、Ce、Laなどの一種類のREMやその化合物を添加してもよく、また、複数種類のREMを含有する混合物として添加してもよい。混合物としては、たとえば、一般にミッシュメタルと呼ばれる、Ce、La、Ndなどを主成分とする混合物を用いることができ、その混合物の組成によらず、上記の効果が得られる。
Se:0.005〜0.5%、Pb:0.005〜0.5%の中から選ばれる1種または2種
SeおよびPbは、いずれも鋼中に0.005%以上含有することで塗装耐食性を向上させる元素であるが、過度の含有は、靱性の低下の原因となるため、上限はいずれも0.5%とすることが好ましい。これらの元素は、共存または単独で含有してその効果を発揮する
本発明の鋼材は、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物であることが好ましい。ただし、本発明の効果を害しない範囲内であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではないことは勿論である。
次に、本発明にかかわる鋼材の好適な製造方法について説明する。上記した好適成分組成になる溶鋼を、転炉や電気炉等の公知の炉で溶製し、連続鋳造法や造塊法等の公知の鋳造方法でスラブやビレット等の鋼素材とする。なお、溶鋼に、取鍋精錬や真空脱ガス等の処理を付加しても良いことは言うまでもない。
ついで、上記鋼素材を、好ましくは1050〜1250℃の温度に加熱したのち所望の寸法形状に熱間圧延するか、あるいは鋼素材の温度が熱間圧延可能な程度に高温である場合には再加熱することなく、あるいは均熱する程度で直ちに所望の寸法形状の鋼材に熱間圧延することができる。
なお、熱間圧延では、強度を確保するために、熱間仕上圧延終了温度および熱間仕上圧延終了後の冷却速度を適正化することが好ましく、熱間仕上圧延終了温度は、700℃以上、熱間仕上圧延終了後の冷却は、放冷または冷却速度10℃/sec以上の加速冷却を行うことが好ましい。なお、冷却後に再加熱処理を施してもよい。
次に、本発明にかかわる水性ジンクプライマーの塗装方法について説明する。
水性ジンクプライマーは、鋼材表面のスケールをサンドブラスト、ショットブラスト等で除去した後に、鋼材表面へエアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り等の方法が適用できる。
次に、本発明にかかわるエポキシ系塗膜の塗装方法について説明する。
エポキシ系塗膜は、鋼材上層に塗布された水性ジンクプライマー層の上層にエアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り等の方法が適用できる。
表1に示す成分を有する溶鋼を、真空溶解炉で溶製または転炉溶製後、連続鋳造によりスラブとした。なお、表1において、REMと表示したものは市販のミッシュメタルを添加したものである。ついで、スラブを加熱炉に装入して1150℃に加熱後、熱間圧延により30mm厚の鋼板とした。ここで、熱延仕上終了温度は、800℃、熱延後の冷却は放冷とした。
Figure 2012177168
これらの鋼板から、4mmt×100mmW×150mmLの試験片を採取し、その試験片の表面をショットブラストして、表面のスケールや油分を除去したのち、試験片表面に表2に示すジンクプライマーを膜厚15μmとなるようにエアスプレー塗装を施した。なお、表2に示したとおり、発明例の水性ジンクプライマーは、バインダーを無機系としてアルカリ珪酸塩、水分散型コロイダルシリカ、有機系としてエポキシ樹脂系エマルションを用いた。
Figure 2012177168
乾燥塗膜とした時に、亜鉛とバインダーが重量比で8:2となるように配合した。比較例としては、従来の有機溶剤系である無機ジンクプライマーの中国塗料(株)製セラボンド2000を用いた。ジンクプライマー層の上層にエアスプレー塗装にてエポキシ系塗膜を施した。エポキシ系塗膜には、変性エポキシ塗料である中国塗料製ノバ2000を用いた。なおエポキシ系塗膜は、約320μmの膜厚となるよう塗装をおこなった。
耐食性の評価は、塗膜中のピンホールや亀裂からの腐食を想定し、人工的模擬欠陥として塗膜表面にスクラッチを付与した試験片を用いた。スクラッチは、塗膜の上からカッターナイフで地鉄表面まで達する80mm長さの直線のスクラッチ疵を付与した。
耐食性の評価として、2種類の腐食試験を実施した。第一の腐食試験方法は、実船のバラストタンクの上甲板裏に相当する腐食環境を模擬した(35℃、5%NaCl溶液噴霧、2Hr)→(60℃、25%RH、4Hr)→(50℃、95%RH、2Hr)を1サイクルとする試験を最大で1095サイクル行った(これを腐食試験(1)とする)。ここで、RHは相対湿度を意味する。耐食性の評価項目は、相対塗膜膨れ面積率と相対最大腐食深さとした。相対塗膜膨れ面積率は、表2に示す比較例B1(従来鋼に相当)の塗膜膨れ面積を100とした場合の相対値であり、相対最大腐食深さとは、同様にB1の最大腐食深さを100とした場合の相対値である。
第二の腐食試験方法は、実船のバラストタンクで海水に没水する側壁部や底面部に相当する腐食環境を模擬した、海水浸漬(50℃人工海水浸漬)7日間→乾湿繰り返し(60℃、25%RH、4Hr)→(50℃、95%RH、2Hr)を1サイクルとする試験を52サイクル行った(これを腐食試験(2)とする)。評価方法は、第一の腐食試験と同様の項目に対しておこなった。なお、相対最大腐食深さは、腐食試験後に試験片表面に残存している塗膜と錆を完全に除去したのちに、板厚減少量を測定し、腐食深さとしている。
腐食試験の結果を表3に示す。
Figure 2012177168
実施例のうち、本発明の要件を満足している本発明例1〜28は全て、相対腐食減量、相対最大板厚減少量および赤錆発生面積の特性について、比較例1〜8と比較して、いずれも大幅に低減している。このことから、本発明で得られた船舶用鋼材は優れた塗装耐食性を発揮することが明らかである。
本発明の技術は、船舶用鋼材に限られるものではなく、海水腐食環境下において塗装耐食性を求められる部材用途に適用でき、更に、橋梁や建築物などの鋼構造物で腐食環境の厳しい分野で用いられる鋼材にも適用することができる。

Claims (4)

  1. 鋼材の化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.3%、N:0.008%以下を含有し、さらに、
    A群 Mo:0.005〜3.0%、W:0.005〜3.0%の中から選ばれる1種または2種、
    B群 Cu:0.005〜2.0%、Cr:0.005〜5.0%、Ni:0.005〜5.0%の中から選ばれる1種以上、
    C群 Sb:0.005〜1.0%、Sn:0.005〜1.0%の中から選ばれる1種または2種、
    であるA〜C群の中から選ばれる2種以上の群を組み合わせた元素を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、該鋼材表面に水性ジンクプライマーの塗膜が形成され、さらにその該塗膜上にエポキシ系塗膜を有することを特徴とする塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
  2. 前記鋼材が、さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.2%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.002〜0.2%、Zr:0.001〜0.5%、B:0.0002〜0.005%、Ta:0.005〜0.5%、Te:0.005〜0.5%、Co:0.005〜0.5%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
  3. 前記鋼材が、さらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.01%、REM:0.0001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.01%、Y:0.0001〜0.1%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
  4. 前記鋼材が、さらに、質量%で、Se:0.005〜0.5%、Pb:0.005〜0.5%の中から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の塗装耐食性に優れた船舶用鋼材。
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