JP2010229526A - 高耐食性塗装鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.25%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Al:0.10%以下、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0010〜0.0070%を含有し、さらに、W:0.01〜0.5%、Mo:0.02〜0.5%の中から選ばれる1種または2種を含有し、さらに、Sn:0.001〜0.2%、Sb:0.01〜0.2%の中から選ばれる1種または2種を含有し、且つCu、Ni、CrおよびCoの混入量を、それぞれ0.20%未満とし、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材の表面に、付着量でZnを5〜30g/m、Wを0.05〜10g/m含むジンクプライマー塗膜を形成したことを特徴とする耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材。
【選択図】なし

Description

本発明は、石炭船、鉱石船、鉱炭兼用船、原油タンカー、LPG船、LNG船、ケミカルタンカー、コンテナ船、ばら積船、木材専用船、チップ専用船、冷凍運搬船、自動車専用船、重量物船、RORO船、石灰石専用船、セメント専用船等の船舶に用いられる耐食鋼材に関し、特に、海水による厳しい腐食環境下にあるバラストタンク等においても,優れた耐食性を発揮するジンクプライマー処理が施された船舶用鋼材に関するものである.なお、本発明でいう船舶用耐食鋼材とは、厚鋼板、薄鋼板、形鋼、棒鋼を含むものである。
船舶のバラストタンクは、積荷がない時に、海水を注入して船舶の安定航行を可能にする役目を担うものであるため、非常に厳しい腐食環境下におかれている。そのため、バラストタンクに用いられる鋼材の防食には、通常、エポキシ樹脂系塗料による防食塗膜の形成と電気防食とが併用されている。
しかし、これらの防食対策を講じても、バラストタンクの腐食環境は依然として厳しい状態にある。すなわち、バラストタンクに海水を注入した時には、海水に完全に浸されている部分は、電気防食が機能している場合,腐食の進行を抑えることができる。しかし、バラストタンクの最上部付近、特に上甲板の裏側は、海水に漬からず、海水の飛沫を浴びる状態におかれているため、このような部位では、電気防食が機能しない。さらに、このような部位は、太陽光によって鋼板の温度が上昇するため、より厳しい腐食環境となり、激しい腐食を受ける。また、バラストタンクに海水が注入されていない場合、バラストタンク全体で,電気防食が全く働かず、残留付着塩分の作用によって、激しい腐食を受ける。
このような激しい腐食環境下にあるバラストタンクの防食塗膜の寿命は、一般に約10〜15年といわれており、船舶の寿命(20〜25年)の約半分である。従って、残りの約10年は、補修塗装を行うことよって、耐食性を維持しているのが実情である。しかし、バラストタンクは、上記のように厳しい腐食環境にあるため、補修塗装を行ってもその効果を長時間持続させることが難しい。また、補修塗装は狭い空間での作業となるため、作業環境としては好ましいものではない。
そこで、補修塗装までの期間をできる限り延長し、補修塗装作業をできるだけ軽減できる耐食性に優れた鋼材の開発が望まれている。
一方、船舶の建造に際しては、鋼材の一次防錆を主目的として,ジンクプライマーを表面に塗布することが行われている。そして、船舶は,ジンクプライマーの表面に、上塗塗装を施して使用される場合が多い。
一方、バラストタンク等の厳しい腐食環境にある部位に用いられる鋼材自体の耐食性を向上する技術が、いくつか提案されている。なお以下に記載する成分%は、全て質量%を意味するものとする。たとえば、特許文献1には、C:0.20%以下の鋼に、耐食性改善元素として、Cu:0.05〜0.50%、W:0.01〜0.05%未満を添加し,さらに、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Beのうちの1種または2種以上を0.01〜0.2%添加した耐食性低合金鋼が開示されている。
また、特許文献2には、C:0.20%以下の鋼材に、耐食性改善元素として、Cu:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.5%を添加し、さらに、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Beのうちの1種もしくは2種以上を0.01〜0.2%添加した耐食性低合金鋼が開示されている。また、特許文献3には、C:0.15%以下の鋼に、Cu:0.05〜0.15%未満、W:0.05〜0.5%を添加した耐食性低合金鋼が開示されている。
また、特許文献4には、C:0.15%以下の鋼に、耐食性改善元素として、P:0.03〜0.10%、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%を添加した低合金耐食鋼材に、タールエポキシ樹脂塗料、ピュアエポキシ樹脂塗料、無溶剤型エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料等の防食塗料を塗布し、樹脂被覆したバラストタンクが開示されている。この技術は、鋼材自身の耐食性向上により防食塗装の寿命を延長し、船舶の使用期間である20〜30年に亘ってメンテナンスフリー化を実現しようとするものである。
また、特許文献5には、C:0.15%以下の鋼に、耐食性改善元素として、Cr:0.2〜5%を添加して耐食性を向上し、船舶のメンテナンスフリー化を実現しようとする提案がなされている。さらに、特許文献6には、C:0.15%以下の鋼に、耐食性改善元素として、Cr:0.2〜5%を添加した鋼材を構成材料として使用すると共に、バラストタンク内部の酸素ガス濃度を大気中の値に対して0.5以下の比率とすることを特徴とするバラストタンクの防食方法が提案されている。
また、特許文献7には、C:0.1%以下の鋼に、Cr:0.5〜3.5%を添加することで耐食性を向上し、船舶のメンテナンスフリー化を実現しようとする提案がなされている。さらに、特許文献8には、C:0.001〜0.025%の鋼に、Ni:0.1〜4.0%を添加することで、耐塗膜損傷性を向上し、補修塗装などの保守費用を軽減する船舶用鋼材が開示されている。
また、特許文献9には、C:0.01〜0.25%の鋼に、Cu:0.01〜2.00%、Mg:0.0002〜0.0150%を添加することで、船舶外板、バラストタンク、カーゴオイルタンク、鉱炭石カーゴホールド等の使用環境において耐食性を有する船舶用鋼が開示されている。さらに、特許文献10には、C:0.001〜0.2%の鋼において、Mo,WとCuとを複合添加し、不純物であるP,Sの添加量を限定することにより、原油油槽で生じる全面腐食、局部腐食を抑制した鋼が開示されている。
特許文献11には、鋼材成分がW:0.01〜1.0%、Cr:0.01%以上0.20%未満で、海水による厳しい腐食環境下にあるバラストタンク等に用いられる耐食鋼材が開示されている。特許文献12には、Zn系のプライマー塗膜の組成において、Znの付着量が5〜70g/mとし、Ni、Al、Cu、Mo、W、MgおよびTiのうちから選ばれる1種または2種以上をZn含有量に対して0.1〜35%含有することで、原油タンクやバラストタンクの耐食性を向上させるプライマーが開示されている。特許文献13には、Cr:0.1〜6.0%、Cu:0.1〜2.0%の鋼材に金属亜鉛分30質量%以上を含有する5〜100μmの厚みの無機ジンクリッチプライマー層を有することを特徴とする電気防食される船舶バラストタンク用防錆鋼板が開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1〜3には、バラストタンク等を構成する鋼材に対して一般的に塗布されているエポキシ系塗料等の塗膜存在下での耐食性については、検討がなされておらず、従って、上記のような塗膜存在下での耐食性向上については、別途検討の必要がある。
また、特許文献4の鋼材は、下地金属の耐食性を向上させるために、Pを0.03〜0.10%と比較的多量に添加しており、溶接性および溶接部靭性の面からは問題がある。また、特許文献5および特許文献6の鋼材は、Crを0.2〜5%また、特許文献7の鋼材は、Crを0.5〜3.5%と比較的多く含有しており、いずれも溶接性および溶接部靭性に問題がある他、製造コストが高くなるという問題がある。また、特許文献8の鋼材は、C含有量が比較的低く、Ni含有量が比較的高いため、製造コストが高くなるという問題がある。
また、特許文献9の鋼材は、Mgの添加を必須としているが、製鋼歩留りが安定しないため、鋼材の機械的特性が安定しないという問題がある。さらに、特許文献10の鋼材は、原油油槽内というHSが存在する環境下で使用される耐食鋼であり、HSが存在しないバラストタンクでの耐食性は不明であり,さらに,バラストタンク用鋼材に一般的に使用されているエポキシ樹脂系塗料が塗布された状態での耐食性については検討がなされていないため、バラストタンクに適用するには、別途検討の必要がある.特許文献11では、ジンクプライマーの組成までは言及されておらず、さらなる耐食性向上の余地が残されていた。特許文献12では、鋼材との組合せによる耐食性向上の観点から検討の余地が残されていた。特許文献13では、ジンクリッチプライマーの組成による耐食性向上の観点から検討の余地が残されていた。
特開昭48−050921号公報 特開昭48−050922号公報 特開昭48−050924号公報 特開平07−034197号公報 特開平07−034196号公報 特開平07−034270号公報 特開平07−310141号公報 特開2002−266052号公報 特開2000−017381号公報 特開2004−204344号公報 特開2007−254881号公報 特開2007−224344号公報 特開2008−144204号公報
本発明の目的は、船舶のバラストタンク等の厳しい海水腐食環境下においても、耐食性を発揮して、補修塗装までの期間の延長が可能となり、ひいては補修塗装の作業軽減を図ることができる耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材を提供することである。
発明者らは上記の要請に応えるために、塗装耐食性の向上について、鋭意研究、検討を重ねた結果、 鋼材成分を規定し、さらにジンクプライマーに特定の金属成分を特定の範囲で添加することにより、塗装傷などの損傷部からの塗膜劣化を効果的に抑制でき、船舶の耐食寿命を著しく改善できることを知見し、本発明を想到した。
本発明は上記の知見に基づき、さらに検討を加えてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
第一の発明は、質量%で、C:0.01〜0.25%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Al:0.10%以下、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0010〜0.0070%を含有し、さらに、W:0.01〜0.5%、Mo:0.02〜0.5%の中から選ばれる1種または2種を含有し、さらに、Sn:0.001〜0.2%、Sb:0.01〜0.2%の中から選ばれる1種または2種を含有し、且つCu、Ni、CrおよびCoの混入量を、それぞれ0.20%未満とし、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材の表面に、付着量でZnを5〜30g/m、Wを0.05〜10g/m含むジンクプライマー塗膜を形成したことを特徴とする耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材である。
第二の発明は、前記鋼材成分に、さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%、V:0.002〜0.2%の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする第一の発明に記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材である。
第三の発明は、前記鋼材成分に、さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0030%を含有することを特徴とする第一または第二の発明に記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材である。
第四の発明は、前記鋼材成分に、さらに、質量%で、B:0.0002〜0.003%を含有することを特徴とする第一乃至第三の発明の何れかに記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材である。
第五の発明は、前記鋼材成分に、さらに、質量%で、REM:0.0001〜0.015%、Mg:0.0001〜0.01%、Y:0.0001〜0.1%の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする第一乃至第四の発明の何れかに記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材である。
第六の発明は、前記ジンクプライマー塗布鋼材の表面に、さらにエポキシ樹脂塗膜を形成することを特徴とする第一乃至第五の発明の何れかに記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材である。
本発明の鋼材は、鋼の成分および塗膜の組成を吟味したので石炭船等の船舶に用いられる耐食鋼材、特に、海水による厳しい腐食環境下にあるバラストタンク等においても優れた耐食性を発揮する。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.化学成分について
はじめに、本発明の鋼材の化学成分を規定した理由について説明する。なお、成分%は、全て質量%を意味する。
C:0.01〜0.25%
Cは、鋼材強度を上昇させるのに有効な元素であり、本発明では所望の強度を得るために0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.25%を超える含有は、溶接熱影響部の靭性を低下させる。よって、C量は0.01〜0.25%の範囲とする。なお、好ましくは、0.03〜0.20%の範囲であり、さらに好ましくは、0.05〜0.16%の範囲である。
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸剤として、また、鋼材の強度を高めるために添加される元素であり、本発明では、0.05%以上を含有させる。しかしながら、0.50%を超える添加は、鋼の靭性を劣化させるので、Si量の上限は0.50%とする。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、熱間脆性を防止し、鋼材の強度を高める効果がある元素であり、0.1%以上添加する。しかしながら、2.0%を超えるMnの添加は、鋼の靭性および溶接性を低下させるため、Mn量は0.1〜2.0%の範囲とする。好ましくは、0.9〜1.6%の範囲である。
P:0.035%以下
Pは、鋼の母材靭性、さらに溶接性および溶接部靭性を劣化させる有害な元素であり、できるだけ低減するのが好ましい。特に、Pの含有量が0.035%以下を超えると、母材靭性および溶接部靭性の低下が大きくなる。よって、P量は0.035%以下以下とする。好ましくは、0.025%以下である。
S:0.01%以下
Sは、鋼の靭性および溶接性を劣化させる有害元素であるので極力低減することが望ましい。特に、Sの含有量が0.01%を超えると、母材靭性および溶接部靭性の低下が大きくなる。よって、S量は0.01%以下とする。好ましくは、0.006%以下である。
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として添加するが、0.10%を超える含有は、溶接部靭性に悪影響を及ぼすので、Al量は0.10%以下に制限した。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、Nとの親和力が強くTiNとして析出して、溶接熱影響部でのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、あるいはフェライト生成核として溶接熱影響部の高靭性化に寄与する。このような効果は、0.005%以上の含有で認められるが、0.030%を超えて含有するとTiN粒子が粗大化して前記効果が期待できなくなる。このため、Ti量は0.005〜0.030%の範囲とする。
N:0.0010〜0.0070%
Nは、Tiと結合してTiNとして析出して,溶接熱影響部でのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、あるいはフェライト生成核として溶接熱影響部の高靭化に寄与する。このような効果を有するTiNの必要量確保するためにはN量は0.0010%以上含有する必要がある。一方、0.0070%を超えて含有すると、溶接熱によってTiNが溶解する温度まで加熱される領域では固溶N量が増加し、靭性の著しい低下を招く。このため、N量は0.0010〜0.0070%の範囲とする。
W:0.01〜0.5%、Mo:0.02〜0.5%の中から1種または2種
Wは、本発明の鋼材においては、最も重要な耐食性向上元素の1つである。上記効果は、W量が0.01%以上の含有で発現する。しかし、0.5%を超えると、鋼の靭性に悪影響を及ぼす。よって、W量は0.01〜0.5%の範囲とする。
Wが、上記の耐食性向上効果を有する理由は、鋼板が腐食するのに伴って、生成する錆の中にWO 2−が生成し、このWO 2−の存在によって、塩化物イオンが鋼板表面に侵入するのが抑制され、さらに、鋼板表面のアノード部などで、難溶性のFeWOが生成し、このFeWOの存在によっても、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が抑制され、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が抑制されることによって、鋼板の腐食が効果的に抑制されるからである。また、WO 2−の鋼材表面への吸着によるインヒビター作用によっても、鋼の腐食が抑制されるからである。
Moは、本発明の鋼材においては、重要な耐食性向上元素の1つである。上記効果は、Moが0.02%以上の含有で発現する。しかし、0.5%を超えると、鋼の靭性に悪影響を及ぼす。よって、Mo量は0.02〜0.5%の範囲とする。
Moが、上記の耐食性向上効果を有する理由は、鋼板が腐食するのに伴って、生成する錆の中にMoO 2−が生成し、このMoO 2−の存在によって、塩化物イオンが鋼板表面に侵入するのが抑制され、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が抑制されることによって、鋼板の腐食が効果的に抑制されるからである。
WとMoは、酸素酸を形成する点において一致するので、両元素を選択あるいは両方を含有することができるとした。一方、Moに対し、Wは難溶性のFeWOが生成する点および、鋼材表面への吸着によるインヒビター効果が高い利点があり、そのため、WはMoよりもその含有量が少なくても耐食性を発揮する。
Sn:0.001〜0.2%、Sb:0.01〜0.2%の中から1種または2種
Sn、Sbは、耐食性を向上させる効果がある。Sn、Sbの本効果は、鋼板表面のアノード部など、pHが下がった部位での腐食を抑制するためである。この効果は、Snで0.001%以上の含有で、Sbで0.01%以上の含有で発現するが、0.2%超えでは、母材靭性およびHAZ部靭性を劣化させるため、Sn量は0.001〜0.2%、Sb量は0.01〜0.2%の範囲が好ましい。
Cu:0.20%未満、Ni:0.20%未満、Cr:0.20%未満、Co:0.20%未満
Cu、Ni、Cr、Coは長期塗装耐食性を劣化させるため、これらの含有量をできるだけ低減するのが好ましい。しかしながら、スクラップ等を使用した場合の不可避的不純物としての混入が避けられない元素である。そこで、本発明者らは、これらの元素の許容範囲について検討したところ、Cu、Ni、Cr、Co量はいずれも0.20%未満であれば、塗装耐食性に対する悪影響がほとんどなく、許容できることが判明した。より好ましくは、いずれも0.15%以下、さらに好ましくは0.10%以下である。
Nb:0.001〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%、V:0.002〜0.2%の中から1種または2種以上
Nb、Zr、Vは、いずれも、鋼材強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して含有することができる。このような効果を得るためには、Nb、Zrはそれぞれ0.001%以上、Vは0.002%以上含有することが好ましい。しかし、Nb、Zrは0.1%、Vは0.2%を超えて添加すると、靭性が低下するため、 Nb、Zr、Vは、上記値を上限として添加するのが好ましい。
Ca:0.0005〜0.0030%
Caは、硫化物の形態を制御して鋼の溶接部靭性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためには、少なくとも0.0005%含有することが必要である。一方、0.0030%を超えて含有しても、その効果は飽和する。このため、Ca量は0.0005〜0.0030%の範囲とする。
B:0.0002〜0.003%
Bは、鋼材の強度を高める元素であり、必要に応じて含有することができる。上記効果を得るためには、0.0002%以上含有することが好ましいが、0.003%を超えて添加すると、靭性が劣化する。よって、B量は0.0002〜0.003%の範囲とするのが好ましい。
REM:0.0001〜0.015%、Mg:0.0001〜0.01%、Y:0.0001〜0.1%の中から1種または2種以上
REM、Mg、Yは、いずれも、溶接熱影響部の靭性向上に効果のある元素であり、必要に応じて選択して含有することができる。この効果は、REM:0.0001%以上、Mg:0.0001%以上、Y:0.0001%以上の含有で得られるが、REM:0.015%を超えて、Mg:0.01%を超えて、Y:0.1%を超えてそれぞれ含有させると、却って靭性の低下を招くので、REM、Mg、Yの量は、それぞれ上記の値を上限とするのが好ましい。
本発明の鋼材において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。但し、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
2.製造方法について
次に,本発明鋼材の製造方法について説明する。
上記した好適成分組成になる溶鋼を、転炉、電気炉等の公知の方法で溶製し、連続鋳造法や造塊法等の公知の方法でスラブやビレット等の鋳素材とする。なお、溶製に際して、真空脱ガス精錬等を実施してもよい。溶鋼の成分調整方法は、公知の鋼精錬方法に従えばよい。
ついで、上記の鋼素材を所望の寸法形状に熱間圧延する際には、結晶粒粗大化防止の観点から、鋼素材を1050〜1250℃の温度に加熱するのが好ましい。なお、鋼素材の温度が、熱間圧延が可能な程度に高温である場合は、そのまま熱間圧延をしてよい。
なお、熱間圧延では、強度を確保するために、熱間仕上圧延終了温度および熱間仕上圧延終了後の冷却速度、冷却停止温度を適正化することが好ましく、熱間仕上圧延終了温度を700℃以上、熱間仕上圧延終了後の冷却は、空冷または冷却速度150℃/s以下の加速冷却を行うことが好ましい。加速冷却する場合の冷却停止温度は300〜600℃の範囲とすることが好ましい。なお、冷却後、再加熱処理を施してもよい。
3.ジンクプライマーについて
次に,上記鋼材の表面に形成するジンクプライマーについて説明する。
Zn:5〜30g/m
Znは、犠牲防食により塗布した鋼板の耐食性を著しく改善する元素である。この効果を得るためには、鋼材の表面に形成した塗膜中に含まれるZnは5g/m以上であることが必要である。一方、Znの含有量は,犠牲防食による耐食性改善の観点からは、多ければ多いほど好ましいが、30g/mより多くなると,溶接性や溶断性などの基本特性が劣化するため、上限は30g/mとする必要がある。
W:0.05〜10g/m
Wは、上記したように、溶解によりWO 2−を生成し、このWO 2−の存在によって、塩化物イオンが鋼板表面に侵入するのが抑制され、さらに、難溶性のFeWOが生成し、このFeWOの存在によっても、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が抑制され、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が抑制されることによって、鋼板の腐食を効果的に抑制する元素である。鋼へのW添加は、多すぎると鋼靭性への悪影響があるため、その上限は制限される。そこで、ジンクプライマー中に添加することとした。ジンクプライマー中への添加下限は0.05g/mとしたが、これは、ジンクプライマー中でWを均一に分散させるための最低限必要な量である。一方、ジンクプライマー中に10g/mを超えて含有させると、ジンクプライマー膜の鋼板への密着性が低下する。そこで、上限を10g/mとした。
表1、表2に示す成分組成からなる溶鋼を、真空溶解炉で溶製または転炉溶製・連続鋳造によりスラブとした。ついで、スラブを加熱炉に装入して1150℃に加熱後,熱間圧延により30mm厚の鋼板とした。
Figure 2010229526
Figure 2010229526
これらの鋼板について、母材の引張特性(YS、TS、EL)および衝撃特性(シャルピー衝撃試験による−40℃での吸収エネルギー:vE-40)を調査した。また,大入熱溶接部靭性として、入熱200kJ/cmの溶接熱影響部1mm(ヒュージョンラインから母材側に1mm入った箇所)相当の再現熱サイクルを付与し、シャルピー衝撃試験により、−20℃での吸収エネルギー(vE-20)を測定した。
さらに、上記の鋼板から、3mmt×150mmW×150mmLの試験片を採取し、その試験片の表面をショットブラストしたのち、試験片表面にジンクプライマーを約15μm塗布した。その後ジンクプライマーの表面に変性エポキシ樹脂塗料を約350μm塗布した。耐食性は上記塗膜の上からカッターナイフで地鉄表面まで達する80mm長さのスクラッチ疵を一文字状に付与しておき、以下の条件の腐食試験後にスクラッチ疵の周囲に発生した塗膜膨れ面積により評価した。
腐食試験は、実船のバラストタンクの上甲板裏に相当する腐食環境を模擬した、35℃、5%NaCl溶液噴霧、2Hr)→(60℃、RH25%、4Hr)→(50℃、RH95%、2Hr)を1サイクルとする試験を990サイクル行った。表3に腐食試験結果と機械的特性調査結果を示す。
Figure 2010229526
表3から本発明の鋼材成分組成およびジンクプライマーの成分組成を満たす発明例No.1〜23は、ベース鋼であるNo.24に対し、塗膜膨れ面積が50%以下であり、良好な塗装耐食性を有している。これに対して、本発明の鋼材成分組成およびジンクプライマーの成分組成を満たさない比較例No.25〜37の塗膜膨れ面積は、ベース鋼であるNo.24に対して、小さくなっているとはいえ、その面積はベース鋼に対して50%超えであり、十分な塗装耐食性を有しているとは言えない。比較例No.25〜36は、鋼材成分組成が外れているため、比較例No.37とNo.38は、それぞれプライマー中のZn量、W量が下限値未満であるためである。比較例No.39は、本発明の鋼材成分、ジンクプライマー成分とも範囲内であるため,十分な塗装耐食性を有するが、N量が上限を超えているため、溶接部靭性は、25Jと十分な衝撃特性が得られていない。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.25%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Al:0.10%以下、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0010〜0.0070%を含有し、さらに、W:0.01〜0.5%、Mo:0.02〜0.5%の中から選ばれる1種または2種を含有し、さらに、Sn:0.001〜0.2%、Sb:0.01〜0.2%の中から選ばれる1種または2種を含有し、且つCu、Ni、CrおよびCoの混入量を、それぞれ0.20%未満とし、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材の表面に、付着量でZnを5〜30g/m、Wを0.05〜10g/m含むジンクプライマー塗膜を形成したことを特徴とする耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材。
  2. 前記鋼材成分に、さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%、V:0.002〜0.2%の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材。
  3. 前記鋼材成分に、さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0030%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材。
  4. 前記鋼材成分に、さらに、質量%で、B:0.0002〜0.003%を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材。
  5. 前記鋼材成分に、さらに、質量%で、REM:0.0001〜0.015%、Mg:0.0001〜0.01%、Y:0.0001〜0.1%の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材。
  6. 前記ジンクプライマー塗布鋼材の表面に、さらにエポキシ樹脂塗膜を形成することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の耐食性に優れるジンクプライマー塗布耐食鋼材。
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