JP2007231366A - プレコート厚鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接性と1次防錆性を兼備したプレコート厚鋼板と提供する。
【解決手段】C:0.01〜0.20mass%、Si:0.05〜0.50mass%、Mn:0.1〜2.5mass%、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.010〜0.15mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、TiO2、SiO2の1種または2種を合計で2〜30g/m2含有した表面処理被膜を有するプレコート厚鋼板。
【選択図】なし
【解決手段】C:0.01〜0.20mass%、Si:0.05〜0.50mass%、Mn:0.1〜2.5mass%、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.010〜0.15mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、TiO2、SiO2の1種または2種を合計で2〜30g/m2含有した表面処理被膜を有するプレコート厚鋼板。
【選択図】なし
Description
本発明は、船舶や海洋構造物、建築・土木、機械分野等で溶接施工して用いられる厚鋼板に関し、特に、CO2溶接やMAG溶接、レーザー溶接等の溶接性に優れるプレコート厚鋼板に関するものである。
ガスシールドアーク溶接等の溶接施工により構築される構造物では、溶接部のビード形状不良や溶接欠陥のために、グラインダー研削や再溶接あるいは手直し溶接などの付加工程が多々発生することが問題となっている。そこで、隅肉溶接が多く採用されている造船や橋梁、建設機械等の分野では、溶接条件の改善によって、それらを削減することが検討されている。
例えば、特許文献1には、水平隅肉ビード止端部形状が良好なガスシールド溶接用フラックス入りワイヤーが開示されている。この技術は、フラックスの成分を調整することによって、ビード止端部形状を改善して、溶接部の疲労強度の向上を狙ったものである。しかし、このワイヤーは、フラックス中に添加できる単位長さ当たりの酸化物量に限界があるため、溶接条件や溶接姿勢によっては十分な効果が得られない場合がある。また、建設機械分野等で使用されるソリッドワイヤーには利用できないという問題もある。
なお、ソリッドワイヤーに関しては、特許文献2に、ガスシールドアーク溶接用ワイヤーが開示されているが、このワイヤーの成分組成では、溶接条件や溶接時の母材希釈率などの影響を受けるため、安定した溶接性の改善効果を得ることが難しい。
一方、1次防錆用として鋼材表面に塗布されているZnリッチプライマーによって、溶接性が害され、特に隅肉溶接においては、ビード中にブローホールが発生したりビード形状が悪化したりするという問題があることが知られている。
この問題に対しては、例えば、特許文献3には、溶接性が良好な防食塗料が開示されている。これは、それまでのZn粉末含有塗料中の亜鉛末の40〜75mass%を、雲母状の酸化鉄粉末で置き代えた防食塗料である。また、特許文献4には、Znリッチプライマー中に、リン酸塩系顔料と長石を5〜70%含有させた1次防錆塗料組成物が開示されている。しかしながら、上記特許文献3や4に開示の塗料や塗料組成物では、溶接性の改善効果がまだ不十分であり、更なる改善が求められている。
特開平08−281477号公報
特開昭63−199091号公報
特公昭48−022174号公報
特許第2852175号公報
上記のように、溶接部のビード形状や溶接欠陥は、溶接部の金属やスラグの成分組成によって大きく影響を受けることが知られており、従来は、溶接ワイヤーを適正化することによってその改善が試みられてきた。しかし、それだけでは、溶接条件や使用する鋼板によっては、効果が十分に得られない場合がある。また、鋼板の成分を適正化よることによる改善も検討されているが、鋼構造物では、溶接性だけでなく、機械的特性などの他の特性をも満たすことが求められるため、鋼板成分の調整による改善にも限界がある。さらに、厚鋼板では、一般に、一次防錆のためにZnリッチプライマーなどの表面処理を施す場合があり、このZnリッチプライマーによって、溶接性が悪影響を受けるという問題もあった。
そこで、本発明の目的は、溶接性と1次防錆性を兼備したプレコート厚鋼板を提供することにある。
発明者らは、上記問題点を解決するために、鋼板とその鋼板に施された表面処理被膜の相互作用によって溶接性を改善する、特に溶接ビード形状を良好にするとともに溶接欠陥の発生を防止することができないか、さらに、1次防錆性を必要とする場合への対応として、上記表面処理被膜中に、Znなどの防錆剤および防錆補助剤を含有させることよって、溶接性を改善しつつ1次防錆性をも改善できないかを検討することとした。
そこで、発明者らは、発想の転換を図り、厚鋼板の表面に施される表面処理被膜によって、安定かつ高効率の溶接を実現することができないか、検討を重ねた。その結果、鋼板の成分組成と表面処理被膜の成分組成を最適化することにより、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、C:0.01〜0.20mass%、Si:0.05〜0.50mass%、Mn:0.1〜2.5mass%、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.010〜0.15mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、TiO2、SiO2の1種または2種を合計で2〜30g/m2含有した表面処理被膜を有するプレコート厚鋼板である。
本発明の鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Cu:0.01〜2.0mass%、Ni:0.01〜4.0mass%、Cr:0.01〜2.0mass%、Mo:0.01〜1.0mass%、V:0.003〜0.5mass%、W:0.01〜1.0mass%、B:0.0050mass%以下、Mg:0.0001〜0.0060mass%、Sn:0.001〜0.3mass%、Sb:0.001〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明の鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Ti:0.002〜0.10mass%、N:0.0005〜0.01mass%、Nb:0.002〜0.05mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明の鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.0002〜0.01mass%、REM:0.001〜0.01mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする。
さらに、本発明の鋼板における上記表面処理被膜は、Znを30g/m2以下含有し、さらにAl,Mg,Cu,Ni,Mo,Wのうちから選ばれる1種または2種以上を金属換算で合計5g/m2以下含有することを特徴とする。
本発明によれば、1次防錆性に優れるだけでなく、溶接性にも優れたプレコート厚鋼板を提供することができるので、溶接能率の向上や溶接部の品質向上に大いに寄与することができる。さらに、本発明と同じ目的で開発された溶接ワイヤーを本発明鋼板の溶接に適用すれば、ビード形状の改善や溶接欠陥の減少に、より効果を発揮することができる。
本発明のプレコート厚鋼板の成分組成について、その限定理由を説明する。
C:0.01〜0.20mass%
Cは、鋼板の強度を確保するためは、少なくとも0.01mass%は必要である。一方、0.20mass%を超えて添加すると、溶接性が著しく低下する。よって、本発明は、C含有量は0.01〜0.20mass%の範囲とする。
C:0.01〜0.20mass%
Cは、鋼板の強度を確保するためは、少なくとも0.01mass%は必要である。一方、0.20mass%を超えて添加すると、溶接性が著しく低下する。よって、本発明は、C含有量は0.01〜0.20mass%の範囲とする。
Si:0.05〜0.50mass%
Siは、脱酸効果を有するとともに、鋼材強度を高める元素でもあり、これらの効果を得るため、本発明では0.05mass%以上含有させる。しかし、Si含有量が、0.50mass%を超えると、鋼の靭性が低下する。よって、Siは、0.05〜0.50mass%の範囲で添加する。なお、Siは、溶接金属中のスラグメタル反応によって、その一部が酸素と結びついてスラグを酸性化し、高温でのスラグの粘性低下を抑制し、隅肉溶接での2段ビードの発生を抑制する効果がある。そこで、溶接におけるスラグ特性を良好に保つ観点からは、表面処理被膜から供給されるSiO2量とのバランスにもよるが、上記範囲内で高い程好ましい。
Siは、脱酸効果を有するとともに、鋼材強度を高める元素でもあり、これらの効果を得るため、本発明では0.05mass%以上含有させる。しかし、Si含有量が、0.50mass%を超えると、鋼の靭性が低下する。よって、Siは、0.05〜0.50mass%の範囲で添加する。なお、Siは、溶接金属中のスラグメタル反応によって、その一部が酸素と結びついてスラグを酸性化し、高温でのスラグの粘性低下を抑制し、隅肉溶接での2段ビードの発生を抑制する効果がある。そこで、溶接におけるスラグ特性を良好に保つ観点からは、表面処理被膜から供給されるSiO2量とのバランスにもよるが、上記範囲内で高い程好ましい。
Mn:0.1〜2.5mass%
Mnは、Cと同様、鋼板強度を確保するために必要な元素である。また、Mnは、溶融金属の表面に、MnOを形成し易く、スラグの界面張力を低減する効果もあり、ビードの広がりを確保するのに有効である。しかし、過剰に添加すると、溶接性を損なう。よって、本発明では、Mnは0.1〜2.5mass%の範囲で添加する。
Mnは、Cと同様、鋼板強度を確保するために必要な元素である。また、Mnは、溶融金属の表面に、MnOを形成し易く、スラグの界面張力を低減する効果もあり、ビードの広がりを確保するのに有効である。しかし、過剰に添加すると、溶接性を損なう。よって、本発明では、Mnは0.1〜2.5mass%の範囲で添加する。
P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下
PおよびSは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物元素であり、鋼の靭性を劣化させるため、できるだけ低減することが好ましい。特に所定量を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。よって、本発明においては、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下とする。
PおよびSは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物元素であり、鋼の靭性を劣化させるため、できるだけ低減することが好ましい。特に所定量を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。よって、本発明においては、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下とする。
Al:0.010〜0.15mass%
Alは、鋼の脱酸に重要な元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.010mass%以上の添加が必要である。一方、0.15mass%を超えると、靭性を劣化させる恐れがあるので、上限は0.15mass%とする。なお、Alは、溶接時に母材から溶接金属へ希釈した場合には、酸素と結びついてAl2O3の形態で中性スラグとなり、スラグ量を調整することができる。そのため、ソリッドワイヤーを使用する溶接などではスラグ量を確保するため、上記適正範囲内で増量することが好ましい。一方、フラックスワイヤーを使用する溶接では、母材の靭性を確保する観点から、Al含有量は低い方が好ましい。
Alは、鋼の脱酸に重要な元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.010mass%以上の添加が必要である。一方、0.15mass%を超えると、靭性を劣化させる恐れがあるので、上限は0.15mass%とする。なお、Alは、溶接時に母材から溶接金属へ希釈した場合には、酸素と結びついてAl2O3の形態で中性スラグとなり、スラグ量を調整することができる。そのため、ソリッドワイヤーを使用する溶接などではスラグ量を確保するため、上記適正範囲内で増量することが好ましい。一方、フラックスワイヤーを使用する溶接では、母材の靭性を確保する観点から、Al含有量は低い方が好ましい。
なお、本発明の厚鋼板は、上記必須とする成分に加えてさらに、下記の成分を添加することができる。
Cu:0.01〜2.0mass%
Cuは、鋼板の強度を高める効果が大きい元素であり、その効果は0.01mass%以上の添加で得られる。しかし、2.0mass%を超えて添加すると、熱間脆性により鋼板表面の性状を劣化させるおそれがある。よって、添加する場合には、0.01〜2.0mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Cu:0.01〜2.0mass%
Cuは、鋼板の強度を高める効果が大きい元素であり、その効果は0.01mass%以上の添加で得られる。しかし、2.0mass%を超えて添加すると、熱間脆性により鋼板表面の性状を劣化させるおそれがある。よって、添加する場合には、0.01〜2.0mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Ni:0.01〜4.0mass%
Niは、厚鋼板の母材強度を高めると共に、靭性を向上する効果がある。これらの効果は0.01mass%以上の添加で発現する。しかし、4.0mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するので、上限は4.0mass%とするのが好ましい。
Niは、厚鋼板の母材強度を高めると共に、靭性を向上する効果がある。これらの効果は0.01mass%以上の添加で発現する。しかし、4.0mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するので、上限は4.0mass%とするのが好ましい。
Cr:0.01〜2.0mass%、Mo:0.01〜1.0mass%
CrおよびMoは、いずれも0.01mass%以上添加することにより、鋼板強度を高めることができる。しかし、いずれも2.0mass%を超えて添加すると、靭姓を劣化させる。よって、CrおよびMoは、上記範囲で添加するのが好ましい。
CrおよびMoは、いずれも0.01mass%以上添加することにより、鋼板強度を高めることができる。しかし、いずれも2.0mass%を超えて添加すると、靭姓を劣化させる。よって、CrおよびMoは、上記範囲で添加するのが好ましい。
V:0.003〜0.5mass%
Vは、母材の強度と靭性を向上させる元素であり、0.003mass%以上の添加で効果を発揮する。しかし、0.5mass%を超えると、溶接熱影響部の靭性が劣化する。よって、Vは、0.003〜0.5mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Vは、母材の強度と靭性を向上させる元素であり、0.003mass%以上の添加で効果を発揮する。しかし、0.5mass%を超えると、溶接熱影響部の靭性が劣化する。よって、Vは、0.003〜0.5mass%の範囲で添加するのが好ましい。
W:0.01〜1.0mass%
Wは、FeまたはZnと、安定で緻密な複合酸化物を形成して、腐食を抑制する効果があり、使用する腐食環境が厳しい用途に用いられる場合には、添加することが好ましい。上記の効果は、0.01mass%以上の添加で発現するが、1.0mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するので、Wは0.01〜1.0mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Wは、FeまたはZnと、安定で緻密な複合酸化物を形成して、腐食を抑制する効果があり、使用する腐食環境が厳しい用途に用いられる場合には、添加することが好ましい。上記の効果は、0.01mass%以上の添加で発現するが、1.0mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するので、Wは0.01〜1.0mass%の範囲で添加するのが好ましい。
B:0.0050mass%以下
Bは、焼入れ性を向上することにより鋼板の強度を高める効果がある。この効果は0.0005mass%以上の添加で得られるが、0.0050mass%を超えて添加しても、その効果は飽和する。よって、Bは0.0050mass%以下添加することが好ましい。
Bは、焼入れ性を向上することにより鋼板の強度を高める効果がある。この効果は0.0005mass%以上の添加で得られるが、0.0050mass%を超えて添加しても、その効果は飽和する。よって、Bは0.0050mass%以下添加することが好ましい。
Mg:0.0001〜0.0060mass%
Mgは、鋼中のSを固定して。鋼板の勒性を向上する働きがあり、0.0001mass%以上の添加でその効果が発現する。しかし、0.0060mass%を超えて添加すると、鋼中の介在物の量が増加し、却って靭性を劣化させるおそれがある。よって、Mgは0.0001〜0.0060mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Mgは、鋼中のSを固定して。鋼板の勒性を向上する働きがあり、0.0001mass%以上の添加でその効果が発現する。しかし、0.0060mass%を超えて添加すると、鋼中の介在物の量が増加し、却って靭性を劣化させるおそれがある。よって、Mgは0.0001〜0.0060mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Sn:0.001〜0.3mass%、Sb:0.001〜0.3mass%
SnおよびSbは、緻密な腐食生成物や安定な複合酸化物を形成することによって、過電圧を低下し、防食効果を高める効果があり、特に、使用される腐食環境が厳しい場合に、鋼中に添加するのが好ましい。上記効果は、0.001mass%以上の添加で発現するが、0.3mass%を超えると、溶接部の靭性を劣化させる。よって、SnおよびSbは、それぞれ0.001〜0.3mass%の範囲で添加するのが好ましい。
SnおよびSbは、緻密な腐食生成物や安定な複合酸化物を形成することによって、過電圧を低下し、防食効果を高める効果があり、特に、使用される腐食環境が厳しい場合に、鋼中に添加するのが好ましい。上記効果は、0.001mass%以上の添加で発現するが、0.3mass%を超えると、溶接部の靭性を劣化させる。よって、SnおよびSbは、それぞれ0.001〜0.3mass%の範囲で添加するのが好ましい。
さらに、本発明の厚鋼板は、必要に応じて、以下の成分を添加することができる。
Ti:0.002〜0.10mass%
Tiは、鋼材の強度を高める効果があり、0.002mass%以上の添加で、その効果が発現する。しかし、0.10mass%を超える添加は、鋼の靭性を劣化させるおそれがある。よって、Tiは、0.002〜0.10mass%の範囲で添加するのが好ましい。なお、Tiは、溶接金属中のスラグメタル反応によって、その一部が酸素と結びついてスラグを酸性化する効果があり、高温でのスラグの粘性低下を抑制し、隅肉溶接における2段ビード発生を抑制する効果がある。従って、表面処理被膜から供給されるTiO2量とのバランスにもよるが、溶接スラグ特性を良好に保つためには、上記範囲で高い方が好ましい。
Ti:0.002〜0.10mass%
Tiは、鋼材の強度を高める効果があり、0.002mass%以上の添加で、その効果が発現する。しかし、0.10mass%を超える添加は、鋼の靭性を劣化させるおそれがある。よって、Tiは、0.002〜0.10mass%の範囲で添加するのが好ましい。なお、Tiは、溶接金属中のスラグメタル反応によって、その一部が酸素と結びついてスラグを酸性化する効果があり、高温でのスラグの粘性低下を抑制し、隅肉溶接における2段ビード発生を抑制する効果がある。従って、表面処理被膜から供給されるTiO2量とのバランスにもよるが、溶接スラグ特性を良好に保つためには、上記範囲で高い方が好ましい。
N:0.0005〜0.01mass%
Nは、Ti添加鋼では、溶鋼の凝固時にTiNを形成して析出する。この、TiNは、溶接時の加熱によるオーステナイト粒の粗大化を防止し、さらに微細フェライトを多量に生成するため、大入熱溶接の熱影響部における靭性を向上させるのに有効である。Nのこのような効果は、0.0005mass%未満の添加では得られない。一方、Ti添加量にもよるが、N量が0.01mass%を超えると、連続鋳造時における鋳片の割れ発生や、溶接熱影響部における島状マルテンサイトの生成による靭性劣化、母材から溶接金属部への希釈による溶接金属部の靭性劣化を引き起こすおそれがある。よって、Nは、0.0005〜0.01mass%の範囲で含有するのが好ましい。
Nは、Ti添加鋼では、溶鋼の凝固時にTiNを形成して析出する。この、TiNは、溶接時の加熱によるオーステナイト粒の粗大化を防止し、さらに微細フェライトを多量に生成するため、大入熱溶接の熱影響部における靭性を向上させるのに有効である。Nのこのような効果は、0.0005mass%未満の添加では得られない。一方、Ti添加量にもよるが、N量が0.01mass%を超えると、連続鋳造時における鋳片の割れ発生や、溶接熱影響部における島状マルテンサイトの生成による靭性劣化、母材から溶接金属部への希釈による溶接金属部の靭性劣化を引き起こすおそれがある。よって、Nは、0.0005〜0.01mass%の範囲で含有するのが好ましい。
Nb:0.002〜0.05mass%
Nbは、母材の強度と靭性を向上させる元素であり、0.002mass%以上の添加で効果を発揮し、0.05%を超えると熱影響部靭性が著しく劣化する。よって、Nbは、0.0002〜0.05mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Nbは、母材の強度と靭性を向上させる元素であり、0.002mass%以上の添加で効果を発揮し、0.05%を超えると熱影響部靭性が著しく劣化する。よって、Nbは、0.0002〜0.05mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Ca:0.0002〜0.01mass%
Caは、鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.0002mass%以上の添加で、その効果を発現する。しかし、0.01mass%を超えて添加すると、鋼中の介在物の量が増加し、却って靭性を劣化させる。よって、Caは、0.0002〜0.01mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Caは、鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.0002mass%以上の添加で、その効果を発現する。しかし、0.01mass%を超えて添加すると、鋼中の介在物の量が増加し、却って靭性を劣化させる。よって、Caは、0.0002〜0.01mass%の範囲で添加するのが好ましい。
REM:0.001〜0.01mass%
REMは、Caと同様、鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.001mass%以上の添加で、その効果を得ることができる。しかし、0.01mass%を超えて添加すると、鋼中の介在物の量が増加し、却って靭性を劣化させる。よって、REMは、0.0001〜0.01mass%の範囲で添加するのが好ましい。
REMは、Caと同様、鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.001mass%以上の添加で、その効果を得ることができる。しかし、0.01mass%を超えて添加すると、鋼中の介在物の量が増加し、却って靭性を劣化させる。よって、REMは、0.0001〜0.01mass%の範囲で添加するのが好ましい。
次に、本発明の厚鋼板が有すべき表面処理被膜について説明する。
TiO2、SiO2の1種または2種:合計2〜30g/m2
鋼材の表面に塗布・形成される表面処理被膜の成分は、溶接部の溶鋼中に混入して、溶接ビードの特性を変化させるために重要である。TiO2およびSiO2は、スラグを酸性化し、高温でのスラグの粘性低下を抑制して、隅肉溶接における2段ビードの発生を抑制する働きがある。この効果は、TiO2、SiO2の合計添加量が2g/m2以上で得ることができ、その効果は添加量が多いほど大きい。しかし、30g/m2を超えて添加しても、その効果が飽和してしまう。よって、TiO2、SiO2は、合計で2〜30g/m2の範囲で添加する。
TiO2、SiO2の1種または2種:合計2〜30g/m2
鋼材の表面に塗布・形成される表面処理被膜の成分は、溶接部の溶鋼中に混入して、溶接ビードの特性を変化させるために重要である。TiO2およびSiO2は、スラグを酸性化し、高温でのスラグの粘性低下を抑制して、隅肉溶接における2段ビードの発生を抑制する働きがある。この効果は、TiO2、SiO2の合計添加量が2g/m2以上で得ることができ、その効果は添加量が多いほど大きい。しかし、30g/m2を超えて添加しても、その効果が飽和してしまう。よって、TiO2、SiO2は、合計で2〜30g/m2の範囲で添加する。
本発明の厚鋼板に形成された表面処理被膜は、上記成分以外に、下記の成分を含有することが好ましい。
Zn:30g/m2以下
鋼板の1次防錆性を確保するために、鋼板表面に形成される表面処理被膜中にZnを含有させることが一般的に行われている。このZnの含有量は、防錆性を向上する観点からは、多い方が好ましい。しかし、Znは、溶接時にガス化して、ピンホールやブローホールの原因となるばかりでなく、発生するガスによって溶接環境が悪化する。そこで、防錆性と溶接性との兼ね合いから、本発明では、Znの含有量は30g/m2以下とするのが好ましい。
Zn:30g/m2以下
鋼板の1次防錆性を確保するために、鋼板表面に形成される表面処理被膜中にZnを含有させることが一般的に行われている。このZnの含有量は、防錆性を向上する観点からは、多い方が好ましい。しかし、Znは、溶接時にガス化して、ピンホールやブローホールの原因となるばかりでなく、発生するガスによって溶接環境が悪化する。そこで、防錆性と溶接性との兼ね合いから、本発明では、Znの含有量は30g/m2以下とするのが好ましい。
Al,Mg,Cu,Ni,Mo,Wの:1種または2種以上を金属元素換算で合計5g/m2以下
Znによる防錆性を補強する添加成分として、Al,Mg,Cu,Ni,Mo,Wの添加が有効である。これらの成分は、金属あるいは化合物のいずれの形態で添加されてもよい。これらの成分を添加することによって、Znの緻密な腐食生成物を形成したり、ZnまたはFeと安定な複合酸化物を形成したりし、また、発生した錆中に分散したりして、腐食を進行させるClイオンの侵入を抑制する効果があるので、防錆性を確保したままで、溶接性に有害なZn量を低減させることができる。ただし、これらの添加成分を5g/m2以上添加しても、その効果が飽和するため、経済的ではない。
Znによる防錆性を補強する添加成分として、Al,Mg,Cu,Ni,Mo,Wの添加が有効である。これらの成分は、金属あるいは化合物のいずれの形態で添加されてもよい。これらの成分を添加することによって、Znの緻密な腐食生成物を形成したり、ZnまたはFeと安定な複合酸化物を形成したりし、また、発生した錆中に分散したりして、腐食を進行させるClイオンの侵入を抑制する効果があるので、防錆性を確保したままで、溶接性に有害なZn量を低減させることができる。ただし、これらの添加成分を5g/m2以上添加しても、その効果が飽和するため、経済的ではない。
なお、表面処理被膜を形成する時に塗布する塗料は、上記成分と樹脂との混合物であることが好ましい。上記樹脂としては、溶接時の加熱によって発生するガスの量が少ないものを選定すること、具体的には、600℃までの加熱で発生するガス量が500ml/g以下のものあることが好ましい。この要求に適合するものとしては、エチルシリケート樹脂を挙げることができる。
表1に示した成分組成を有する鋼を転炉で溶製し、RH脱ガス処理したのち連続鋳造法で、260mm厚の鋼素材(スラブ)とした。そのスラブを1000〜1200℃に再加熱し、750℃以上の温度で熱間圧延を行い、その後、空冷して板厚16mmの厚鋼板を得た。この厚鋼板から、試験片を採取し、これら試験片の表面に、黒皮や油分などを除去するためのショットブラストを施し、続いて、同じく表1に示した成分組成を含有する塗料を、スプレー塗布または刷毛塗りにて鋼材表面に塗布し、1日以上自然乾燥した。なお、上記塗料には、樹脂としてエチルシリケート樹脂を全含有成分の12.2mass%含有するものを用いた。
その後、上記表面処理被膜を形成した試験片について、下記の条件で、CO2溶接あるいはAr+20%CO2ガスシールド溶接(MAG溶接)で、ビードオンプレートあるいは隅肉溶接を行った。なお、溶接ワイヤーには、下記の市販のソリッドワイヤーあるいはフラックス入りワイヤーを使用した。
・溶接条件:32V−380A−40cm/min
・溶接ワイヤー
<CO2溶接>JIS Z3313に規定された1.4φのフラックスコアードワイヤー:YFW−C50DR
<MAG溶接>JIS Z3312に規定された1.4φのソリッドワイヤー:YGW11,YGW15
その後、溶接後の試験片について、ビード形状および溶接欠陥の発生状況を観察し、表2の基準で評価した。なお、溶接欠陥は、溶接長25cm当たりの欠陥個数を調査した。
・溶接条件:32V−380A−40cm/min
・溶接ワイヤー
<CO2溶接>JIS Z3313に規定された1.4φのフラックスコアードワイヤー:YFW−C50DR
<MAG溶接>JIS Z3312に規定された1.4φのソリッドワイヤー:YGW11,YGW15
その後、溶接後の試験片について、ビード形状および溶接欠陥の発生状況を観察し、表2の基準で評価した。なお、溶接欠陥は、溶接長25cm当たりの欠陥個数を調査した。
上記試験の結果を表3に示した。表3から、本発明に適合する鋼板は、CO2溶接およびMAG溶接のいずれの溶接においても、溶接性が優れていることがわかる。
Claims (5)
- C:0.01〜0.20mass%、Si:0.05〜0.50mass%、Mn:0.1〜2.5mass%、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.010〜0.15mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、TiO2、SiO2の1種または2種を合計で2〜30g/m2含有した表面処理被膜を有するプレコート厚鋼板。
- 上記成分組成に加えてさらに、Cu:0.01〜2.0mass%、Ni:0.01〜4.0mass%、Cr:0.01〜2.0mass%、Mo:0.01〜1.0mass%、V:0.003〜0.5mass%、W:0.01〜1.0mass%、B:0.0050mass%以下、Mg:0.0001〜0.0060mass%、Sn:0.001〜0.3mass%、Sb:0.001〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のプレコート厚鋼板。
- 上記成分組成に加えてさらに、Ti:0.002〜0.10mass%、N:0.0005〜0.01mass%、Nb:0.002〜0.05mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のプレコート厚鋼板。
- 上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.0002〜0.01mass%、REM:0.001〜0.01mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレコート厚鋼板。
- 上記表面処理被膜は、Znを30g/m2以下含有し、さらにAl,Mg,Cu,Ni,Mo,Wのうちから選ばれる1種または2種以上を金属換算で合計5g/m2以下含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレコート厚鋼板。
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JP2006054569A JP2007231366A (ja) | 2006-03-01 | 2006-03-01 | プレコート厚鋼板 |
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
JP2010229526A (ja) * | 2009-03-30 | 2010-10-14 | Jfe Steel Corp | 高耐食性塗装鋼材 |
JP2013151745A (ja) * | 2011-12-26 | 2013-08-08 | Jfe Steel Corp | 石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼 |
CN115485415A (zh) * | 2020-02-28 | 2022-12-16 | 奥钢联钢铁有限责任公司 | 一种生产具有防腐蚀锌处理层的硬化钢构件的方法 |
-
2006
- 2006-03-01 JP JP2006054569A patent/JP2007231366A/ja active Pending
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CN115485415A (zh) * | 2020-02-28 | 2022-12-16 | 奥钢联钢铁有限责任公司 | 一种生产具有防腐蚀锌处理层的硬化钢构件的方法 |
CN115485415B (zh) * | 2020-02-28 | 2023-11-21 | 奥钢联钢铁有限责任公司 | 一种生产具有防腐蚀锌处理层的硬化钢构件的方法 |
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