JP6373550B2 - ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスシールドアーク溶接方法、特に溶接継手部の疲労強度を向上させるガスシールドアーク溶接方法に関するものである。
鋼の溶接施工に用いられるガスシールドアーク溶接法は、CO2単独のガス、あるいはArとCO2との混合ガスを溶融部のシールドに用いる消耗電極式のものが一般的であり、自動車、建築、橋梁、電気機器等の製造分野で幅広く用いられている。
ここで、建機、橋梁分野のように、鋼を素材とする製品において高い疲労強度が要求される場合、溶接ビードおよびその周辺は、機械加工やショットピーニング加工によって滑らかにかつ引張りの残留応力が低減するように仕上げられている。しかし、機械加工やショットピーニング加工には多くの工数を要することから、この工数の低減が強く求められている。
一方、自動車分野では、地球温暖化防止を目的としたCO2排出抑制や衝突時の乗員および歩行者の安全性向上に対する社会的要請が増大してきている。このうち、自動車走行時のCO2排出量削減については、車体重量の軽減効果も大きく、100 kgの軽量化により、平均的には約1 km/lの燃費の節減が可能になるとともに、CO2排出量も削減できる。
一方、衝突安全性については、その基準が年々厳しくなっており、車体強度および剛性の向上や強度の最適配分による乗員および歩行者の安全性の確保が必要となっている。
一般的には、車体強度の向上を図ると車体重量が増加するが、車体に使用される素材の高強度化により車体重量の低減(すなわちCO2排出抑制)と衝突安全性とのバランスをとることが可能である。鉄鋼材料は自動車の重量の約7割を占める主要な素材であり、中でも鋼板の高強度化は年々進行している。ここで、鋼板の高強度化には、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B等の高強度化元素を鋼中に添加し、加工と温度制御により要求される強度を満足させる必要がある。
近年、加工技術の進歩により590 MPa級以上の高張力薄鋼板の適用が検討され始める中で、穴広げ性や伸びに優れるTi添加微細析出鋼が注目されている。このTi添加微細析出鋼は、加工性に優れる反面、微細析出を目的として、Si含有量が0.1%以下に抑制されている。このSi含有量の低減は、亜鉛等のめっき性を向上させる反面、溶接継手部の形状が劣化する問題がある。その結果、溶接端部への応力集中を増加させ、疲労強度の低下を招く。特に780 MPa級以上の高張力薄鋼板においては、鋼板強度に対して疲労強度が低いため、疲労特性が要求される部位への適用が困難であった。
溶接継手部における疲労破壊は、溶接ビードの止端部より発生し、溶接裏面方向に瞬時に進展する。疲労破壊の抑止には溶接ビードの止端部における亀裂の発生の抑止が必要であり、その為には、溶接ビード止端部の形状(以下、「溶接ビード形状」と称する)の平滑化による応力集中の低減、または、溶接ビードの止端部に圧縮の残留応力を付与することが必要となる。
こうした背景の下、特許文献1には、溶接に先立って、鋼板表面上における溶接ビード止端部が形成される個所を、Siを30質量%以上含む物質で被覆し、その後溶接することにより、溶接ビード形状をなだらかにさせて応力集中を低減させることにより、溶接継手部の疲労強度を向上させる技術について記載されている。
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、溶接に先立つ被覆作業のための時間が必要であり、手間も非常にかかる。その結果、コストの上昇のみならず、溶接施工中の被覆作業であるため生産性も低下する等、実用的ではない。さらに、溶接条件によって溶接継手部の形状がばらつく問題があった。
そこで、特許文献2には、鋼板中に質量%でSi:0.2〜2.0%、溶接用フラックス入りワイヤ中に質量%でSi(SiCおよびSiO2中のSiを除く):0.05〜1.2%含有させることにより、溶接ビード形状を平滑化して、疲労強度の向上を図る方法が開示されている。
特開2006−305630号公報 特開2010−120022号公報
特許文献2には、鋼板中のSi含有量が、溶接継手部の疲労強度に本質的であり、Siが鋼板からの電子放出に影響を与えることが記載されている。また、鋼へのTiの添加は、溶鋼の表面張力を強め、より凸な溶接ビードを形成することが記載されている。
しかしながら、フラックス入りワイヤを用いることにより、Si含有量の制御は容易となるが、当初期待されたほど疲労強度が向上しないことが分かった。また、フラックス入りワイヤは通常のソリッド(鋼)ワイヤより高価であり、溶接継手部の疲労強度を向上させる安価なガスシールドアーク溶接方法の開発が希求されていた。
そこで本発明の目的は、溶接ビード形状を平滑化し、溶接継手部の疲労強度を高める安価なガスシールドメタルアーク溶接方法を提供することにある。
発明者らは、特許文献2の技術により、溶接継手部の疲労強度が当初予想されたほど向上しない原因について鋭意検討した結果、次の事実が判明した。即ち、炭素鋼の溶接施工に使用されるガスシールドメタルアーク溶接では、前述した通り、CO2単独またはArに20%程度のCO2を混合した酸化性ガスがシールドに用いられる。この酸化性ガスは、溶接金属の酸素量を増加させ、脱酸元素であるSiと反応してSiO2を形成し、SiO2がスラグとして溶接ビードを覆うため、溶接ビード形状が凸かつ不連続になり、溶接継手部の疲労強度が低下するのである。そこで発明者は、鋭意検討した結果、シールドガスとしてArを主体とする低酸化性ガスを使用することが有効であることを見出した。
しかし、発明者らが更に検討した結果、溶接ビード止端部のスラグ形成を抑制するためには、低酸化性ガスの使用や溶接ワイヤの組成を調整するだけでは不十分であり、上記シールドガス中の酸化性ガスの含有量が所定の要件を満足する必要があることに加えて、鋼板中のSi、TiおよびAl含有量が所定の範囲内となるよう制御することが肝要であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
即ち、本発明のガスシールドアーク溶接方法は、質量%でSi:0.01〜0.10%、Ti:0.05〜0.30%(但し、0.05%は除く)、Al:0.005〜0.30%、C:0.01〜0.3%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005〜0.01%、Cr:0.05〜0.5%およびN:0.005〜0.02%を含み、残部は鉄および不可避的不純物からなる鋼板に対して、溶接ワイヤを用い、不活性ガスと酸化性ガスとからなるシールドガスを供給してガスシールドアーク溶接を行う方法であって、前記シールドガス中に含まれる前記酸化性ガスは、体積%で3〜12%のCO2または1.5〜5.0%のO2もしくはこれらの両方からなり、該酸化性ガスは下記式(A)を満足することを特徴とするものである。

3≦2X+Y≦15 (A)
ただし、X:O2量〔体積%〕、Y:CO2量〔体積%〕である。
また、本発明のガスシールドアーク溶接方法において、前記鋼板は、更にNb、V、Mo、SbおよびWのうちの1種または2種以上を0.005〜0.5%含むことを特徴とするものである。
また、本発明のガスシールドアーク溶接方法において、前記ガスシールドアーク溶接後の溶接継手部は、O:100〜250 ppmを含むことが好ましい。
また、本発明のガスシールドアーク溶接方法において、前記溶接ワイヤは、質量%でS:0.02〜0.05%を含むことが好ましい。
また、本発明のガスシールドアーク溶接方法において、前記ガスシールドアーク溶接における溶接電流がパルス型溶接電流であり、該パルス型溶接電流のピーク値は450〜600A、パルス電流期間は0.4〜1.0 msecであることが好ましい。
本発明によれば、溶接対象となる鋼板のSiおよびTi含有量、並びにシールドガスに含まれる酸化性ガスの組成比を規制することにより、溶接ビード止端部におけるスラグ形成を抑制してアンダーカットおよび不連続ビードを防ぎ、止端部を滑らかにすることで応力集中を抑制する。これにより疲労強度に優れた溶接継手部を形成することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明によるガスシールドアーク溶接方法は、質量%でSi:0.01〜0.10%、Ti:0.05〜0.30%およびAl:0.005〜0.30%を含む鋼板に対して、溶接ワイヤを用い、不活性ガスと酸化性ガスとからなるシールドガスを供給してガスシールドアーク溶接を行う方法である。その際、シールドガス中に含まれる酸化性ガスは、体積%で3〜12%のCO2または1.5〜5%のO2もしくはその両方からなり、該酸化性ガスは下記式(1)を満足することが肝要である。
3≦2X+Y≦15 (1)
ただし、X:O2量〔体積%〕、Y:CO2量〔体積%〕である。
まず、本発明において、アーク溶接を施す鋼板の成分組成から順に説明する。なお、以下、質量%は単に%として記すものとする。
Si:0.01〜0.10%
Siは、溶接金属のぬれ性を良好にさせ、鋼板表面に対する溶接ビード止端部の角度を低減させる効果があるが、0.10%を超えると、鋼板としての亜鉛めっきの均一な付着を妨げる、粗大なSi化合物を生成する。また、微細なTi化合物分散析出を抑制するため、鋼板としての穴広げ性および伸びを確保できない。更に、溶接シールド雰囲気を3〜12%のCO2または1.5〜3.0%のO2に制御してもその酸化物であるSiO2を主体とするスラグの溶接ビード止端部への凝集によって止端部が凸となる。また、溶接線方向の形状の連続性が損なわれることから疲労強度が向上しない。一方、Si含有量が0.01質量%未満では、アーク溶接方法を如何に工夫しても良好な溶接ビード形状を得ることが出来ない。このことから、鋼板中のSi含有量は、0.01〜0.10%とする。
Ti:0.05〜0.30%
Tiは、微細析出による鋼の高強度化と伸び確保に不可欠な元素であり、0.05%未満では、鋼板としての穴広げ性および伸びの確保と、590 MPa以上の強度の確保とを両立させることができない。また、溶けた金属の粘性と表面張力を僅かではあるが強める効果があり、溶接ビードの溶接線方向の均一性確保に有効な元素であるが、これらの効果についても0.05%未満では得られない。一方、0.30%を超えると、脆く、プレス成形性における穴広げ性を著しく低下させる。このことから、鋼板中のTi含有量は、0.05%〜0.30%とする。
Al:0.005〜0.30%
Alは、鋼材中の酸素低減によるミクロ組織の調整、すなわち酸化物、硫化物の介在形態と分布の改善、オーステナイト結晶粒の微細化に効果があり、また、脱酸調整元素としても必要な元素である。上記鋼材中のミクロ組織の調整のためには、0.005%以上の添加が必要である。ただし、Alは、Nと結合してAlNを形成して溶接継手部の疲労強度向上効果を低減させ、含有量が0.30%を超えると、プレス成形性における穴広げ性を著しく低下させる。このことから、鋼板のAl含有量は、0.005〜0.30%とする。
上記Si、TiおよびAl以外の合金元素の成分は、所望とする鋼板の特性に応じて適正範囲だけ添加することができる。
C:0.01〜0.3%
Cは、鋼の強度を向上させ、また、溶接ビードの酸化を抑制する効果を有する。これらの効果を十分に得るためには、0.01%以上添加することが好ましい。しかし、0.3%を超える量を添加すると、常温で時効性を発現させ成形性を低下させる。このため、鋼板中のCの添加量は、0.01%〜0.3%とすることが好ましい。
Mn:0.1〜3.0%
Mnは、強度と靭性の確保に必須な元素であり、0.1%以上の添加を必要とする。しかし、3.0%を超えて添加すると、ミクロ偏析、マクロ偏析が起こりやすく、材料の加工性を大きく劣化させる他、アーク溶接によって形成するスラグが凝集し、溶接ビードの均一性を大きく低下させる。このことから、鋼板中のMnの添加量は、0.1〜3.0%とすることが好ましい。
P:0.05%以下
Pは、フェライトに固溶してその延性を低下させるため、0.05%を超える量の添加は、鋼板のプレス成形性における穴広げ性を著しく低下させる。このことから、鋼板中のPの添加量は、0.05%以下とすることが好ましい。ただし、0.0005%未満まで低下させるためには、非常に生産コストがかかる。
S:0.005〜0.01%
Sは、MnSを形成して破壊の起点として作用し、鋼板のプレス成形性における穴広げ性を著しく低下させるため、鋼板中のSの添加量は、0.01%以下とすることが好ましい。一方、溶鋼の表面張力を低下させ溶接ビード止端部を平滑にする効果がある。しかし、0.005%未満ではこの効果が得られない。よって、Sは、0.005〜0.01%とすることが好ましい。
Cr:0.05〜0.5%
Crは、その添加によって溶接熱影響によってビード止端部の強度を上昇させる効果がある。しかし、0.05%未満の添加量ではこれらの効果がなく、また0.5%を超える量を添加すると、鋼板の成形性を大きく低下させる。このことから、鋼板中のCrの添加量は、0.05〜0.5%とすることが好ましい。
Nb、V、Mo、Sb、W:0.005〜0.5%
Nb、V、Mo、SbおよびWの添加は、それぞれCrと同様の効果を有するが、MoおよびWは原料コストがCrに比べて高く、NbおよびVはTiの微細析出を阻害し、鋼板の成形性を大きく低下させる。このことから、鋼板中のNb、V、Mo、SbおよびWの添加量は、それぞれ0.005〜0.5%とすることが好ましい。
なお、上記Nb、V、Mo、SbおよびWは、組み合わせて用いてもよい。
N:0.005〜0.02%
Nは、鋼のミクロ組織の制御に重要な元素であり、強度の向上に有効であり、通常の鋼には0.003%程度が含まれている。しかしながら、その程度の含有量では、溶接継手部の疲労強度を向上させる効果は低く、溶接継手部の疲労強度を向上させるためには0.005%以上の添加が必要である。一方、0.02%を超える量を添加すると加工性が低下し、プレス加工時に割れを生じる等の問題が生じる。このことから、鋼板のNの添加量は、0.005〜0.02%とすることが好ましい。
なお、上記成分以外の残部は、Feおよび製造工程において混入する不可避的不純物である。
また、本発明によるガスシールドアーク溶接方法が対象とする鋼材の引張り強さは特に限定されないが、特に590〜1480 MPaの鋼材に有効である。
上記組成を有する鋼板に対して、ガスシールドアーク溶接を行う。上述のように、CO2単独またはArに20体積%程度のCO2を混合した活性な酸化性ガスがシールドに用いられるのが一般的である。酸化性ガスは、溶接金属の酸素量を増加させ、脱酸元素であるSiと反応してSiO2を形成し、SiO2はスラグとして溶接ビードを覆うことになる。従って、シールドガスにおける酸化性ガスの比率を低減することにより、スラグとしてのSiO2生成を抑制することが可能である。
そこで、CO2およびO2の量を単独で、または混合の場合は上記式に従って、酸化性ガスを抑制することとした。すなわち、CO2:Yが12体積%を超える場合、O2:Xが5体積%を超える場合、またはこれらの混合ガスが2X+Yで15を超える場合には、SiO2の生成を抑制することができない。一方、CO2:Yが3体積%未満、O2:Xが1.5体積%未満、またはこれらの混合ガス2X+Yが3体積%未満の場合には、鋼板側のアーク点が定まらず均一な溶接ビードを得ることができない。このことから、シールドガスは、主体となる不活性ガスと酸化性ガスとからなり、酸化性ガスとして3〜12体積%のCO2または1.5〜5体積%のO2もしくはこれらの両方からなり、酸化性ガス量が3≦2X+Y≦15(X:O2量〔体積%〕、Y:CO2量〔体積%〕)を満足することが肝要となる。
上記の酸化性ガス量以外の溶接条件に関しては、適宜適切に設定すればよい。以下、酸化性ガス量以外の条件について説明する。
溶金中の酸素は、粘性と表面張力に大きな影響を与え、粘性と表面張力の観点から、溶接金属中の酸素を高くすることで溶接ビード形状を平滑にできる。しかし、250 ppmを超えて含有させると、溶接金属中のSi含有量を低下させ、過剰なスラグ生成とぬれ性の低下により溶接ビード止端部の平滑性を損ねる。一方、100 ppm未満では、粘性と表面張力が下がらないことで溶接ビード形状が凸となり、溶接ビード止端部の平滑性を損ねる。このことから、溶接金属中の酸素添加量は、100〜250 ppmとすることが好ましい。より好ましくは100〜150 ppmである。
高濃度のArのアークに指向性を持たせ、均一な溶接ビード形状を得るとともに、Si含有量が低い鋼の溶接においてアークが広がることで浅くなった溶け込みを確保する必要がある。このためには、溶接電流としてパルス型溶接電流を用いること、および該パルス型溶接電流のピーク値を高めることが有効である。その際、溶接電流のピーク値Ip(A)が450A未満ではこの効果が得られない。また、600Aを超えると、アーク力が強く溶接ビード止端部にアンダーカットを形成し、疲労強度を著しく低下させる。よって、溶接電流のピーク値Ipは、450A〜600Aとすることが好ましい。より好ましくは500〜600Aである。
また、パルス時間Tp(msec)を、Si含有量が低い鋼板の溶接において移行し易く(早く)なった溶滴移行に合わせることが好ましく、Tpが0.4 msec未満または1.0 msec超えの場合には、安定なアークと1パルス1溶滴移行および平滑な溶接ビードを得ることが困難となる。よって、パルス時間Tpは、0.4〜1.0 msecとすることが好ましい。より好ましくは0.4〜0.6 msecである。
更に、IpおよびTpが上記範囲を満足していても、Ip×Tpが250未満、500超えの場合には、安定なアークと1パルス1溶滴移行および平滑な溶接ビードを得ることが難しい。よって、IP×Tpは、250〜500とすることが好ましい。
以上の本発明において、使用する溶接ワイヤの組成が、S:0.020〜0.050%を満足させることにより、溶接継手部の疲労強度を更に向上させることができる。以下、溶接ワイヤの成分組成の限定理由について説明する。なお、以下、質量%は単に%として記すものとする。
S:0.020〜0.050%
Sは、溶鋼の粘性および表面張力を低下させて、溶接ビード形状を平滑にする働きがある。また、生成するスラグを溶接ビード中央に集め、溶接ビード止端部のスラグ形成を抑制し、疲労強度を向上させる効果がある。この効果は0.020%未満の添加量では得られない。一方、0.050%を超えて添加すると、溶接金属の靭性を著しく低下させる。よって、ガスシールドアーク溶接に用いる鋼ワイヤ中のSの添加量は、0.020〜0.050%とすることが好ましい。
また、溶接ワイヤ中のS以外の合金成分は、所望の特性に応じて適宜添加することができるが、以下の範囲とすることがより好ましい。
C:0.10%以下
Cは、溶接金属の強度を確保するために重要な固溶強化元素であることから低く抑制することで溶接金属強度を抑制し溶接割れを抑制することができる。0.10%超えでは、溶接金属のビッカース硬さが270を超え易く応力抑制の効果が得られない。よって、ガスシールドアーク溶接に用いる鋼ワイヤ中のC添加量は、0.10%以下とすることが好ましい。
Si:0.25〜1.00%
Siは、強い脱酸作用を有し、溶接金属の脱酸のためには不可欠な元素であり、かつ、溶接金属の強度を確保するために重要な固溶強化元素である。また、Siは、溶接金属のぬれ性を良好にさせ、鋼板表面に対する溶接ビードの止端部の角度を低減させる効果がある。しかし、この効果は、0.25%未満では得られ難く、反対に1.00%を超えて添加すると、酸化物であるSiO2が溶接ビード止端部に集まって溶接ビード形状の平滑性を阻害し、溶接ビードの平滑性を阻害する。よって、ガスシールドアーク溶接に用いる鋼ワイヤ中のSiの添加量は、0.25〜1.00%とすることが好ましい。より好ましくは0.25%〜0.50%である。
O:0.0005〜0.005%
溶接金属中のOの添加量を高めることにより、溶接ビード形状を平滑にすることができる。しかし、溶接ワイヤ中に0.005%を超えて添加すると、溶接金属中のSi含有量を低下させ、ぬれ性を低下させるため、溶接ビード止端部の平滑性を損ねる。一方、0.0005%未満の添加量では、粘性と表面張力が下がらないため、溶接ビード止端部の平滑性を低下させる。よって、ガスシールドアーク溶接に用いる鋼ワイヤ中のOの添加量は、0.0005〜0.005%とすることが好ましい。より好ましくは0.0010〜0.0035%である。
Mn:0.50〜2.50%
Mnは、Siと同様に、脱酸作用を有し、溶接金属の脱酸のためには不可欠な元素であり、溶接金属の強度を確保するために0.50%以上の添加が好ましい。一方、2.50%を超える過剰な添加は、溶接金属靭性を著しく低下させる。よって、ガスシールドアーク溶接に用いる鋼ワイヤ中のMnの添加量は、0.50〜2.50%とすることが好ましい。
更に、溶接金属の強度、疲労向上を目的としてCu、Cr、Ni、Mo、Alそれぞれ3.0%以下、Ti、V、W、Nb、B、SbおよびNを0.5%以下添加してもよい。
なお、上記成分以外の残部は、製造工程において混入する不可避的不純物およびFeであ
る。
溶接ワイヤは、上記範囲を満足する所望の組成を有する鋼を溶製した後、熱間または冷間において、圧延および引抜き加工を施して所望の径とすることにより得ることができる。
こうして、疲労強度を向上させた溶接継手部を形成することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
引張り強さ590 MPa以上で、穴広げ性、伸びに優れるTi添加微細析出鋼のガスシールドメタルアーク溶接方法に関し、シールドガス中の酸化性ガス量が溶接継手部の形状および疲労強度特性に及ぼす影響を、以下の実施例により明らかにした。
(疲労強度試験片の作製)
まず、供試鋼板として表1に成分を示す2.3 mm厚の熱延鋼板および表2に成分を示す溶接ワイヤ(直径1.2 mm)を用いて、表3に示す溶接条件の下で、パルスマグ溶接法により重ね隅肉溶接を行い、機械加工により溶接ビード止端部を中心とする平行部幅22mm疲労強度試験片を得た。ここで、シールドガスとしては、Arに0〜15%のCO2および0〜6%のO2を加えた混合ガスを用いた。
供試鋼板のうち、記号eの鋼板においては、Si含有量が0.010%未満(比較例1)であり、記号fの鋼板おいては、Si含有量が0.1%超えであった(比較例2)。また、記号gの鋼板においては、Ti含有量が0.005%未満(比較例3)であり、記号iの鋼板においては、Ti含有量が0.3%超えであった(比較例4)。また、記号hの鋼板においては、Al含有量が0.005%未満(比較例5)であり、記号jの鋼板においては、Al含有量が0.3%超えであった(比較例6)。
また、溶接条件については、条件C7およびC9は、本発明において規定したCO2の組成範囲の下限を下回っており、酸化性ガスが不足している(比較例7および9)。一方、条件C8およびC10は、本発明において規定したO2の組成範囲の上限を上回っており、酸化性ガスが酸化性ガスが過多である(比較例8および10)。また、条件C11は、CO2およびO2の組成については、本発明において規定したCO2またはO2の組成範囲内にあるものの、2X+Yの範囲の上限を超えており、酸化性ガスが過多である(比較例11)。
好適条件に関しては、溶接ワイヤ中の成分については、記号w4の溶接ワイヤにおいては、S含有量が0.02%未満、記号w6の溶接ワイヤにおいては、S含有量が0.05%超えであった。
(疲労強度試験)
作製した上記疲労強度試験片の疲労試験として、片振り疲労試験を採用した。ここで、疲労強度試験片に与えた荷重は100〜500 MPa、繰り返し周波数は20 Hzとし、また繰り返し回数は1,000,000回とした。得られた破断応力を表4にまとめる。
表4から、発明例は疲労強度試験片の破断応力は高い値を示しており、本発明のガスシールドアーク溶接方法により疲労強度が向上した溶接継手が得られることが分かる。
また、溶接金属中の酸素含有量を100〜250 ppmとすることにより、破断応力は更に向上し、疲労強度が向上することが分かる。
更に、本発明におけるガスシールドアーク溶接方法において酸化性ガスを制限した条件下にて、本発明において規定したS添加量を有する溶接ワイヤを用いてガスシールドアーク溶接を行うことにより、破断応力が向上し、疲労強度が向上することが分かる。
更にまた、パルス電流を450〜600Aとし、パルス電流期間を0.4〜1.0 msとすることにより、疲労強度が向上することが分かる。

Claims (5)

  1. 質量%でSi:0.01〜0.10%、Ti:0.05〜0.30%(但し、0.05%は除く)、Al:0.005〜0.30%、C:0.01〜0.3%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005〜0.01%、Cr:0.05〜0.5%およびN:0.005〜0.02%を含み、残部は鉄および不可避的不純物からなる鋼板に対して、溶接ワイヤを用い、不活性ガスと酸化性ガスとからなるシールドガスを供給してガスシールドアーク溶接を行う方法であって、
    前記シールドガス中に含まれる前記酸化性ガスは、体積%で3〜12%のCO2または1.5〜5.0%のO2もしくはこれらの両方からなり、該酸化性ガスは下記式(A)を満足することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。

    3≦2X+Y≦15 (A)
    ただし、X:O2量〔体積%〕、Y:CO2量〔体積%〕である。
  2. 前記鋼板は、更にNb、V、Mo、SbおよびWのうちの1種または2種以上を0.005〜0.5%含むことを特徴とする、請求項1に記載のガスシールドアーク溶接方法。
  3. 前記ガスシールドアーク溶接後の溶接継手部は、O:100〜250 ppmを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のガスシールドアーク溶接方法。
  4. 前記溶接ワイヤは、質量%でS:0.02〜0.05%を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接方法。
  5. 前記ガスシールドアーク溶接における溶接電流がパルス型溶接電流であり、該パルス型溶接電流のピーク値は450〜600A、パルス電流期間は0.4〜1.0 msecであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接方法。
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