JP4948710B2 - 高張力厚板の溶接方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、引張強度が780MPa 級以上で、靭性保証温度が−40℃以下の優れた低温靭性が母材、溶接部ともに要求される構造物全般に供される構造物用鋼の溶接方法に関するもので、例えば、低温貯槽タンク、低温圧力容器、海洋構造物、船舶、橋梁、ラインパイプ等の溶接構造物に適用することができる。また、鋼の形態は特に問わないが、構造部材として用いられ、低温靭性が要求される鋼板、特に厚板、鋼管素材において有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、引張強度が780MPa 級以上の高強度鋼においては、再加熱焼入れ・焼戻し処理により製造されることが主流となっている。再加熱焼入れ・焼戻し処理材において、靱性を確保するためには、焼入れ組織を制御するとともに、加熱オーステナイト(γ)粒径を微細化する必要があり、そのためには、再加熱焼入れの加熱温度(焼入れ温度あるいはオーステナイト化温度)を制限する必要がある。しかし、焼入れ温度を低下させることは、強化に有効な元素の十分な固溶が望めなくなり、そのための強度低下や未固溶炭化物による靱性劣化等を招く恐れがあり、強度と靱性とをともに高めることは容易でない。
【0003】
また、再加熱焼入れ・焼戻し処理の場合、特に厚手材においては、焼入れにおける表層と内部との冷却速度の違いから、表層部と内部とで焼入れ組織が大きく異なり、その結果として、材質も表層部と内部とで大きく異なる問題もある。すなわち、表層部の組織を強度・靱性面から最適な下部ベイナイト(BL)あるいは下部ベイナイトとマルテンサイト(M)との混合組織となる化学組成とした場合には、冷却速度の小さい板厚中心部の組織が靱性に好ましくない上部ベイナイト(BU)となり、板厚中心部の強度・靱性確保が困難となる一方、板厚中心部の組織改善のために合金元素を添加すると、冷却速度の大きい表層部の焼入性が過剰となり、マルテンサイト単相組織となってしまうため、表層部の靱性向上が不十分となってしまい、表層〜板厚中心部までの材質を安定的に向上させることが困難である。
【0004】
上記再加熱焼入れ・焼戻し処理における問題点を克服する一つの方策として、加工熱処理を用いた技術が開示されている。例えば、特公昭63−58906号公報においては、表層部の焼入性が過剰となるような化学成分条件において、加工熱処理(直接焼入れ・焼戻し)によって鋼板を製造するに際して、制御圧延によって表層部を伸長オーステナイト粒とすることで、マルテンサイト単相組織となる表層部の靱性改善を図っている。さらに、制御圧延温度を低温化し直接焼入れすることによりさらに靭性改善が図られる可能性もある。
【0005】
このように、母材特性は熱間圧延や熱処理の方法を工夫することによって強度・靭性をある程度調整することは可能であるが、溶接構造物に用いる鋼材に必要な溶接継手特性を母材並に確保するためには別途方策が必要である。
溶接継手の特性は、鋼材が溶接の熱影響を受けた溶接熱影響部(HAZ)の特性に支配されるが、溶接金属と隣接する熱影響部(フュージョンライン:FL)近傍では鋼材が非常な高温に晒されるため、鋼材の製造工程で作り込まれた特性はほぼ完全に解消されてしまう。それゆえ例えば、特開昭63−79921号公報では、鋼材の成分を調整し、焼入性を示すパラメータを適正化することによってHAZ組織中の上部ベイナイトを抑制して、多層盛り溶接HAZの靭性を向上させる方法が開示されている。しかし、この方法では、HAZ靭性に最適な鋼材成分が必ずしも母材特性に最適とは限らず、また、上記の加工熱処理による鋼材製造を更に強化した場合に期待される合金元素の低減もHAZ靭性確保のためには適わず、むしろその場合は母材靭性とHAZ靭性の両立が難しくなる。したがって、母材最適成分系でなお母材同等のHAZ特性が得られる溶接方法が必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、引張強度が780MPa 級以上で、靭性保証温度が−40℃以下の優れた低温靭性を母材、HAZともに達成できる鋼材の溶接方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題解決のための手段を種々実験的に検討し、その結果、加工熱処理により上記の母材特性を満足する鋼材が得られる化学成分範囲に対して、溶接において溶接法、溶接入熱、さらに溶着量を適正化にすることにより、加工熱処理により製造された母材同等のHAZ特性が得られることを詳細な検討から見出した。
【0008】
すなわち、引張強度が780MPa 級以上の高強度鋼のHAZにおいては、融点直下まで加熱されるフュージョンラインの靭性が最も低下するが、これは高温まで加熱され粗大化したオーステナイトから冷却中に粗大なベイナイトあるいはマルテンサイトが変態により生成するためであり、これら粗大なベイナイトあるいはマルテンサイトが破壊の際にそのまま粗大な脆性破壊の破面単位を形成するからである。
【0009】
したがって、高強度鋼の場合は大入熱の1パス溶接は用いられず多層の溶接が用いられるが、このフュージョンラインの靭性が多層の熱サイクルによりどのようになるかがHAZ靭性の鍵である。本発明者らは様々な入熱レベルを想定し、多重の多様な熱サイクル下でのフュージョンラインの靭性を詳細に検討した。その結果、対象となる鋼材の融点をTL とした場合、TL 〜TL −200℃の範囲に溶接の熱影響で加熱された領域は、後続の多重加熱の中で少なくともAc3 +200℃以上の再加熱を受けない限り、初期の粗い組織が残り靭性が回復しないことを見出した。これは従来、特開昭63−79921号公報などでHAZ靭性改善法として示されている鋼材成分の調整をした場合でも起こりうるため、HAZ靭性の根本的改善には鋼材成分のみならず、溶接方法の最適化が不可欠であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.005〜1%、Mn:0.1〜3%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、Ni:1〜5%、B:0.0002〜0.005%、N:0.001〜0.01%を含有し、さらに、Ti:0.003〜0.05%、Nb:0.005〜0.5%、Ta:0.02〜1%、Mo:0.1〜2%、W:0.5〜4%の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、加工熱処理で製造を行った引張強度が780MPa級以上の高張力厚板を、入熱1.35〜3kJ/mm、溶着量8〜20g/minでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする高張力厚板の溶接方法。
(2)質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.005〜1%、Mn:0.1〜3%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、Ni:1〜5%、B:0.0002〜0.005%、N:0.001〜0.01%を含有し、さらに、Cu:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜2%、V:0.01〜0.5%の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、加工熱処理で製造を行った引張強度が780MPa級以上の高張力厚板を、入熱1.35〜3kJ/mm、溶着量8〜20g/minでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする高張力厚板の溶接方法。
(3)質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.005〜1%、Mn:0.1〜3%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、Ni:1〜5%、B:0.0002〜0.005%、N:0.001〜0.01%を含有し、さらに、Ti:0.003〜0.05%、Nb:0.005〜0.5%、Ta:0.02〜1%、Mo:0.1〜2%、W:0.5〜4%の1種または2種以上、および、Cu:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜2%、V:0.01〜0.5%の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、加工熱処理で製造を行った引張強度が780MPa級以上の高張力厚板を、入熱1.35〜3kJ/mm、溶着量8〜20g/minでTI
G溶接にて多層溶接することを特徴とする高張力厚板の溶接方法。
(4)入熱1.35〜2.68kJ/mmでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の高張力厚板の溶接方法。
(5)溶着量8〜18g/minでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の高張力厚板の溶接方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明において、化学組成の限定理由を述べる。
Cは、鋼の強度を向上させる有効な成分として含有するもので、0.01%未満では構造用鋼に必要な強度の確保が困難であるが、0.15%を超える過剰の含有は母材及び溶接部の靭性や耐溶接割れ性を低下させるので、0.01〜0.15%の範囲とした。
【0012】
次に、Siは、脱酸元素として、また、母材の強度確保に有効な元素であるが、0.005%未満の含有では脱酸が不十分となり、また、強度確保に不利である。逆に、1%を超える過剰の含有は粗大な酸化物を形成して延性や靭性の劣化を招く。そこで、Siの範囲は0.005〜1%とした。
【0013】
また、Mnは、母材の強度、靭性の確保に必要な元素であり、最低限0.1%以上含有する必要があるが、過剰に含有すると硬質相の生成や粒界脆化等により母材靱性や溶接部の靭性や溶接割れ性などを劣化させるため、材質上許容できる範囲で上限を3%とした。
【0014】
P、Sは、不純物元素で、延性や靭性を劣化させる元素であり、極力低減することが好ましいが、材質劣化が大きくなく許容できる量として、Pの上限を0.02%、Sの上限を0.01%に限定する。
【0015】
Alは、脱酸やオーステナイト粒径の細粒化等に有効な元素である。その効果を発揮するためには0.001%以上含有する必要がある。一方、0.1%を超えて過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性を極端に劣化させるため、0.001〜0.1%の範囲に限定する必要がある。
【0016】
Niは、靱性確保のために最も有効な元素であり、引張強度780MPa 以上の高強度鋼において靭性の保証温度が−40℃及び更に低温になるようなケースも含めると少なくとも1%以上の含有させる必要がある。一方、Niは高価な合金元素であり、さらに含有量が多くなると加工熱処理によって鋼材を製造する場合の焼入れ性が過剰となるため、上限を5%とする。
【0017】
Bは、固溶状態でオーステナイト粒界に偏析することで、微量で焼入れ性を高めることが可能な元素であるが、粒界に偏析した状態では、オーステナイトの再結晶抑制にも有効である。焼入性、再結晶抑制に効果を発揮するためには0.0002%以上の添加が必要である。一方、0.005%を超える過剰の添加では、BNやFe23(C,B)6 等の粗大な析出物を生じて靱性が劣化するため、0.0002〜0.005%に限定する。
【0018】
Nは、AlやTiと結びついてオーステナイト粒微細化に有効に働くため、微量であれば機械的性質向上に寄与する。また、工業的に鋼中のNを完全に除去することは不可能であり、必要以上に低減することは製造工程に過大な負荷をかけるため好ましくない。そのため、工業的に制御が可能で、製造工程への負荷が許容できる範囲として下限を0.001%とする。過剰に含有すると固溶Nが増加し、延性や靭性に悪影響を及ぼす可能性があるため、許容できる範囲として上限を0.01%とする。
【0019】
さらに、本発明の組織要件を満足するためには、加工熱処理におけるオーステナイトの再結晶抑制に有効なTi,Nb,Ta,Mo,W、焼入れ性の制御に有効なCu,Cr,Vのうち1種または2種以上をさらに含有させる必要がある。各々の元素の添加範囲は以下のように限定する。
【0020】
Tiは、析出強化により母材強度向上に寄与するとともに、高温でも安定なTiNの形成により加熱オーステナイト粒径微細化にも有効な元素であり、加工熱処理を基本とする本発明においては必須の元素である。効果を発揮するためには0.003%以上の含有が必要である。一方、0.05%を超えると、粗大な析出物・介在物を形成して靭性や延性を劣化させるため上限を0.05%とする。
【0021】
Nbは、オーステナイト相中に固溶及び析出状態でオーステナイトの再結晶を抑制するために、また、変態時あるいは焼戻し時にNb(C,N)を形成することで強度の向上に有効な元素であるが、過剰の含有では析出脆化により靭性が劣化する。従って、靭性の劣化を招かずに効果を発揮できる範囲として、0.005〜0.5%の範囲に限定する。
【0022】
Taも、Nbと同一の機構によりオーステナイトの再結晶抑制、強化に有効な元素である。その効果は質量%で比較してNbよりも若干弱く、効果を発揮するためには0.02%以上の含有が必要である。一方、1%を超えると析出脆化や粗大な析出物・介在物による靭性劣化を生じるため上限を1%とする。
【0023】
Moは焼入れ性向上、強度向上、耐焼戻し脆化、耐SR脆化に有効な元素でもあるが、Nbと類似のオーステナイトの再結晶抑制に有効な元素である。その効果を発揮するためには0.1%以上の添加が必要であり、一方、2%を超える添加では逆に靱性、溶接性が劣化するため、0.1〜2%に限定する。
【0024】
Wも、Moと同様の効果を有する元素である。その効果を発揮でき、かつ、質劣化を生じない範囲として、0.5〜4%の範囲に限定する。
【0025】
Cuは、焼入れ性向上、固溶強化、析出強化の効果を有するが、1.5%超では熱間加工性に問題を生じる。したがって、効果を発揮し、かつ、熱間加工性等の問題を生じない範囲として、本発明においては0.05〜1.5%の範囲に限定する。
【0026】
Crは、焼入れ性向上、析出強化により母材の強度向上に有効な元素であるが、明瞭な効果を生じるためには0.05%以上必要である。一方、2%を超えて添加すると靭性及び溶接性が劣化する傾向を有するため、0.05〜2%の範囲とする。
【0027】
Vは、焼入れ性向上とともにVNを形成して強度向上に有効な元素であるが、過剰の含有では析出脆化により靭性が劣化する。従って、靭性の大きな劣化を招かずに効果を発揮できる範囲として0.01〜0.5%の範囲に限定する。
【0028】
このような成分限定の下、鋼材を加工熱処理にて製造することにより、標記のような強度、靭性バランスに優れた鋼材の製造が可能である。加工熱処理の典型的なフローとしては、鋼片をAc3 変態点〜1200℃に加熱し、開始温度が900℃以下、終了温度が650℃以上で、累積圧下率が30〜95%の熱間圧延を行い、引き続き、600℃以上から開始し、500℃以下で終了する冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行う。加熱後、未再結晶域圧延前に厚み、再結晶オーステナイトの粒度を調整するための圧延を加えてもよく、また、必要に応じて、加速冷却後、400℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すこともできる。
【0029】
次に、このように成分調整して製造した母材と同等のHAZ靭性を達成するために、本発明の基本要件である溶接法、溶接入熱、溶着量の限定理由を説明する。
既に上述したごとく、引張強度が780MPa 級以上の高強度鋼のHAZにおいては、融点直下まで加熱されるフュージョンラインの靭性が最も低下するが、これは高温まで加熱され粗大化したオーステナイトから冷却中に粗大なベイナイトあるいはマルテンサイトが変態により生成するためであり、これら粗大なベイナイトあるいはマルテンサイトが破壊の際に、そのまま粗大な脆性破壊の破面単位を形成するからである。
【0030】
本発明者らの詳細な検討の結果、この脆化組織は、多層溶接中に後続の多重加熱サイクルによって少なくともAc3 +200℃以上の再加熱を受けることにより靭性が回復することが知見された。
従来、高強度鋼の多層溶接では後続パスによるテンパー、すなわち400℃〜Ac1 再加熱によって先行パスの靭性が回復するとの知見があったが、これは焼入れ性の高い成分系、すなわち、鋼材製造を再加熱焼入れ・焼戻し処理で行ったケースで有効であり、本発明の対象とする加工熱処理で製造を行った鋼には当てあまらない。
【0031】
すなわち、加工熱処理による高強度鋼製造の特徴は、焼入れ性が従来の高強度鋼よりも低くても強度と高靭性を両立できる点にあり、これにより合金元素の低減や再加熱・再焼入れなどの工程を省略できるメリットが生じるが、他方、このために溶接HAZ組織は完全焼入れ組織よりむしろベイナイトを主体とした組織となるため、多層溶接において後続パスでテンパー域に再熱してもその効果が低いためである。したがって、この場合のHAZ靭性回復手段としては、従来知見とは異なる後続の溶接パスによる再熱温度の制御が必須となる。
【0032】
このような知見のもと、実用で用いられるTIG溶接、MIG溶接、サブマージ(SAW)溶接、被覆アーク溶接、CO2 (MAG)溶接の各溶接法について、種々の溶接条件にて検討した。その結果、TIG溶接によってTL 〜TL −200℃の範囲に加熱されるフュージョンライン近傍の組織は、他の溶接法と比較して多重熱サイクルを受けやすく、特に、入熱を3kJ/mm 以下、溶着量を20g/min 以下にすることにより、TL 〜TL −200℃の範囲に加熱されるフュージョンライン近傍の組織は、ほぼ全域、後続のパスによってAc3 +200℃以上に再加熱することを見出した。
【0033】
そして、それ以上に入熱を増加するとTL 〜TL −200℃の範囲に加熱される領域が拡大するとともにこの領域のγ粒成長も著しくなり、後続のパスによる再加熱効果が不十分になること、また、溶着量を増した場合はTL 〜TL −200℃の範囲に加熱される領域が後続のパスによってAc3 +200℃以上に再加熱される割合が著しく減少することも判明した。
【0034】
これより、標記鋼材を溶接する場合に母材同等のHAZ靭性を得るためには、入熱3kJ/mm以下、溶着量20g/min以下なるTIG溶接で溶接することが極めて重要であるとの結論に至った。なお、その他の溶接法では溶け込み形状が相対的に深く、溶着量を増した場合は後続パスによりAc+200℃以上に再加熱される割合が著しく減少し、入熱が高い場合には後続パスでAc+200℃以上に再加熱される割合は増すものの同時に再度T〜T−200℃の範囲に加熱される領域も生じるため、結局、靭性の低下する領域が残留し、母材同等のHAZ靭性回復までには至らない。
【0035】
【実施例】
以上が本発明の要件についての説明であるが、さらに、実施例に基づいて本発明の効果を示す。
表1に示す化学組成の供試鋼4種を用いて、表2に示す溶接法と溶接条件で溶接継手を作成し、フュージョンラインのHAZ靭性を評価した。鋼A、B、Cは本発明成分範囲の780MPa 鋼、鋼Dは同950MPa 鋼であり、鋼E、Fは本発明成分範囲外の780MPa 鋼である。供試鋼はいずれも実機にて240mm厚のスラブを1100℃に加熱し、50mm厚まで粗圧延後、750〜800℃にて25mm厚まで仕上げ圧延し、その後水冷して作製したものである。母材はいずれも所定の強度を満たしており、また、靭性も所定のレベルを達成していることを予め確認した。
【0036】
この鋼板にレ型(角度45°)の開先を加工し、ルートギャップ3mmで多層溶接により溶接を行った。溶接法はTIG溶接、MIG溶接、SAW溶接を用いた。溶接材料およびSAW溶接におけるフラックスはいずれも市販の780MPa 用の溶接材料を用いた。溶接ワイヤ系はTIG溶接が1.6mm、MIG溶接が2.4mm、SAW溶接が3.2mmである。また、シールドガスはTIG溶接では純Ar、MIG溶接ではAr+2%O2 を用いた。レ型溶接部の垂直なフュージョンラインにおける靭性評価をシャルピー試験にて行い、試験温度と脆性破面率の関係から延性−脆性遷移温度( vTrs)を求めて評価した。
【0037】
表2から、#1〜#4の本発明の鋼材と溶接条件の組み合わせでは、優れたHAZ靭性が得られているのに対し、鋼は本発明範囲ながら溶接入熱や溶着量が本発明範囲外の#5〜#10は靭性が低い。鋼成分が本発明外の#11〜#14は溶接入熱、ワイヤ溶着量が本発明内にあっても本発明には及ばず、溶接入熱や溶着量が本発明範囲外では更に靭性は低下する。これより、加工熱処理によって製造した強度・靭性に優れる鋼板の溶接に本発明の効果は明らかである。
【0038】
【表1】
Figure 0004948710
【0039】
【表2】
Figure 0004948710
【0040】
【発明の効果】
本発明により、引張強度が780MPa 級以上で、母材、HAZの靭性保証温度が−40℃以下の優れた低温靭性を有する鋼の製造が可能となる。さらには、母材、溶接部の靱性保証温度が−100℃以下の鋼や母材の脆性き裂伝播停止特性が必要とされる鋼にも適用可能である。その結果、低温貯槽タンク、低温圧力容器、海洋構造物、船舶、橋梁、ラインパイプ等に安全性に極めて優れた構造材料を提供することが可能となり、産業上の効果は極めて大きいといえる。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.01〜0.15%、
    Si:0.005〜1%、
    Mn:0.1〜3%、
    P :0.02%以下、
    S :0.01%以下、
    Al:0.001〜0.1%、
    Ni:1〜5%、
    B :0.0002〜0.005%、
    N :0.001〜0.01%を含有し、さらに、
    Ti:0.003〜0.05%、
    Nb:0.005〜0.5%、
    Ta:0.02〜1%、
    Mo:0.1〜2%、
    W :0.5〜4%の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、加工熱処理で製造を行った引張強度が780MPa級以上の高張力厚板を、入熱1.35〜3kJ/mm、溶着量8〜20g/minでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする高張力厚板の溶接方法。
  2. 質量%で、
    C :0.01〜0.15%、
    Si:0.005〜1%、
    Mn:0.1〜3%、
    P :0.02%以下、
    S :0.01%以下、
    Al:0.001〜0.1%、
    Ni:1〜5%、
    B :0.0002〜0.005%、
    N :0.001〜0.01%を含有し、さらに、
    Cu:0.05〜1.5%、
    Cr:0.05〜2%、
    V :0.01〜0.5%
    の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、加工熱処理で製造を行った引張強度が780MPa級以上の高張力厚板を、入熱1.35〜3kJ/mm、溶着量8〜20g/minでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする高張力厚板の溶接方法。
  3. 質量%で、
    C :0.01〜0.15%、
    Si:0.005〜1%、
    Mn:0.1〜3%、
    P :0.02%以下、
    S :0.01%以下、
    Al:0.001〜0.1%、
    Ni:1〜5%、
    B :0.0002〜0.005%、
    N :0.001〜0.01%を含有し、さらに、
    Ti:0.003〜0.05%、
    Nb:0.005〜0.5%、
    Ta:0.02〜1%、
    Mo:0.1〜2%、
    W :0.5〜4%の1種または2種以上、および、
    Cu:0.05〜1.5%、
    Cr:0.05〜2%、
    V :0.01〜0.5%の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、加工熱処理で製造を行った引張強度が780MPa級以上の高張力厚板を、入熱1.35〜3kJ/mm、溶着量8〜20g/minでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする高張力厚板の溶接方法。
  4. 入熱1.35〜2.68kJ/mmでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の高張力厚板の溶接方法。
  5. 溶着量8〜18g/minでTIG溶接にて多層溶接することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の高張力厚板の溶接方法。
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